(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326868
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】クッション装置およびマットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
A47C27/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-42961(P2014-42961)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-167632(P2015-167632A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3103137(JP,U)
【文献】
国際公開第2013/076628(WO,A1)
【文献】
特開2000−201775(JP,A)
【文献】
特表2015−501678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00−27/22
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する台座部と、
前記台座部に支持される伝熱性の弾性部材と、
前記台座部と前記弾性部材との間に配設され、前記弾性部材を暖めるヒータ部と、を備え、
前記弾性部材は、荷重を受けて弾性変形した際、互いに接触可能な状態で複数配置され、
前記ヒータ部は、前記複数の弾性部材の一部に接触してあるクッション装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクッション装置を複数備え、
夫々の前記クッション装置に備えた前記ヒータ部を個別に通電操作できるよう構成してあるマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱性を有する台座部と、台座部に支持される伝熱性の弾性部材と、ヒータ部とを備えたクッション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡ウレタンで形成された台座部と、この台座部に支持される伝熱性の弾性部材とを含む弾性ユニットを構成し、この弾性ユニットとは別に、ウレタン樹脂の内部にヒータ線を内包した発熱部材を、弾性ユニットの下に配設したクッション装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このクッション装置を、ベースに形成された凹部にセットし、キルト部材や布で覆うことで、寝具用のマットレスとしている。
【0003】
また、特許文献1のクッション装置は、利用者の足側が最も密となるように、一体化されたヒータ線を粗密配列にしている。これにより、「頭寒足熱」と言われる理想的な暖房就寝形態を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−22901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のクッション装置にあっては、断熱材である発泡ウレタンで形成された台座部(弾性ユニット)の下に発熱部材を配設しているので、発熱部材と弾性部材との熱の受渡しが阻害され、弾性部材を暖めるのに時間を要してしまう。その結果、マットレスの利用者が、弾性部材を介して温熱を体感し難く改善の余地がある。また、就寝時からマットレスを暖かい状態にするために、予熱期間を長く設ける必要があり、多くの電力を消費してしまう。さらに、マットレスを温度調節する際、発熱部材の温度変化に対応する弾性部材の温度追従性が良好でない。
【0006】
そこで、本発明は、利用者が快適に使用できる温熱効果の高いクッション装置およびマットレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクッション装置の特徴構成は、断熱性を有する台座部と、前記台座部に支持される伝熱性の弾性部材と、前記台座部と前記弾性部材との間に配設され、前記弾性部材を暖めるヒータ部と、を備え
、前記弾性部材は、荷重を受けて弾性変形した際、互いに接触可能な状態で複数配置され、前記ヒータ部は、前記複数の弾性部材の一部に接触してある点にある。
【0008】
本構成によれば、台座部・ヒータ部・伝熱性弾性部材の順番で弾性ユニットが構成される。つまり、ヒータ部の発熱を、断熱性を有する台座部を介さず直接的に、弾性部材へ伝達することができる。このため、従来のように、発泡ウレタンで構成される台座部によって、ヒータ部と弾性部材との熱の受渡しが阻害されることがない。よって、弾性部材は速やかに加温され、利用者は快適に温熱効果を感受することができる。
【0009】
また、弾性部材を直接暖めることで、短時間で装置の設定温度に到達させることが可能となり、消費電力を節約することができると共に、従来に比べてヒータ部の最高温度を低く設定することができるので、ヒータ部の耐久性が向上する。さらに、ヒータ部の温度変化に対応して、弾性部材の温度追従性を向上させることができるので、利用者が在床位置を変更した場合でもクッション装置が即座に温まり、不快感を覚えることがない。
【0011】
本構成における複数の弾性部材は、クッション装置に乗った利用者の荷重によって弾性変形し、隣接する部材どうしが接触する形態となる。このため、ヒータ部に接触している弾性部材の熱がヒータ部に接触していない弾性部材に受渡されると共に、弾性部材が圧縮されることによりヒータ部と弾性部材の受圧面との距離が短縮されるので、ヒータ部からの熱が弾性部材の受圧面まで速やかに行き渡ることとなる。よって、利用者の荷重のかかる場所、すなわち利用者の身体が存在する場所は、弾性部材の端面が全体的に加温されるので、利用者に対する温熱効果を高めることができる。また、ヒータ部の配設面積が少なくて済むので、組付工数や材料コストを低減することができる。
【0012】
本発明に係るマットレスの特徴構成は、前記クッション装置を複数備え、夫々の前記クッション装置に備えた前記ヒータ部を個別に通電操作できるよう構成してある点にある。
【0013】
本構成のように、複数のクッション装置の夫々のヒータ部を個別に通電操作することで、例えば足元だけ暖めたい場合、足元にあるクッション装置のみ電源をONにして、それ以外のクッション装置はOFF制御することが可能となる。また、利用者の体型に合わせて、荷重のかからないクッション装置の電源をOFFにすれば、省エネ効果が期待できる。このように、本構成におけるマットレスは、利用者の使用形態や体型などに応じて最適な体感温度を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本実施形態におけるマットレスの側断面図である。
【
図3】本実施形態における弾性ユニットの平面図である。
【
図5】本実施形態における各弾性ユニットを組み合わせた平面図である。
【
図6】別実施形態における各弾性ユニットを組み合わせた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係るクッション装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態におけるクッション装置としての弾性ユニットXが、ベッドYのマットレス3に用いられる例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0016】
図1に示すように、脚部1を有したベッドフレーム2と、このベッドフレーム2に載せ付けられるマットレス3とを備えたベッドYが構成されている。マットレス3は、発泡ウレタンで構成されるベース部31と、ベース部31の中央付近に形成された凹部32に挿入されるクッション装置としての弾性ユニットXとを備えている。
【0017】
図2には、ベッドYの長手方向におけるマットレス3の側断面図が示される。本実施形態におけるマットレス3は、3つの弾性ユニットXを備え、これら弾性ユニットXが挿入されたベース部31の上面と側面とは、発泡ウレタンで構成されるキルト部4で覆われている。また、キルト部4の表面に沿って表布地5を設けると共に、ベース部31の下面側は底布地6を設けている。この表布地5及び底布地6は、化繊織物で構成されている。
【0018】
夫々の弾性ユニットXは、断熱性を有するプレート状の台座部34と、台座部34に支持される複数の柱状部材35(弾性部材の一例)と、台座部34と柱状部材35との間に配設され、柱状部材35を暖める電熱ヒータ線36(ヒータ部の一例)とを備えている。また、夫々の弾性ユニットXの周囲を、弾性変形可能なフィルム材または布地の袋体37で覆うことで、一体的にベース部31の凹部32に挿入することができる。
【0019】
図3には、1つの弾性ユニットXの平面図が示される。台座部34は、プレート状の発泡ウレタンで形成され、夫々の柱状部材35は、円柱状の低硬度エラストマー樹脂で形成されている。本実施形態における柱状部材35は、スチレン系ベースポリマーにオイルを含有させた押出成形品を切断して製造される。なお、スチレン系のエラストマー樹脂に代えて、ウレタン系、エチレン系などの他のエラストマー樹脂としても良く、特に限定されない。
【0020】
図4には、
図3のIV−IV方向の側断面図が示される。台座部34と柱状部材35とは、低硬度エラストマー樹脂を溶剤に溶かした接着剤(接着層38の一例)を用いて接合される。この時、電熱ヒータ線36は、台座部34と柱状部材35との間の接着層38に内包して固定される。
【0021】
図3に示すように、本実施形態における柱状部材35は、図の縦方向(列方向)に6個並べた12列の列群を形成することで、台座部34の上に合計72個配設する構成となっている。隣接する柱状部材35の列群は、互いに両端が半ピッチずれた千鳥状に配置している。
【0022】
台座部34と柱状部材35との間に配設される電熱ヒータ線36は、横方向(行方向)に沿って一行置きに連続して設けられる。つまり、斜め方向には、電熱ヒータ線36に接触する柱状部材35と、電熱ヒータ線36に接触しない柱状部材35とが交互に現れる形態となっている。換言すると、電熱ヒータ線36は、最も近接する柱状部材35間の中心間隔cより大きい間隔で配設される構成となっている。このように、電熱ヒータ線36を複数の柱状部材35の一部に接触させているので、電熱ヒータ線36の組付け工数や材料コストを低減することができると共に、消費電力も節約することができる。
【0023】
これら柱状部材35は、荷重による沈み込み量を一定の範囲に制限できる。つまり、荷重を受けた柱状部材35は、側面に膨らむことで受圧面積が増大していくが、ある程度圧縮された時点で隣接する柱状部材35どうしが接触して、受圧面積の増大が防止される。また、受圧面積の増大によって、単位面積あたりの荷重が減少するので、柱状部材35の沈み込み速度も徐々に緩やかになる。このように、本実施形態における弾性ユニットXは、急激な沈み込みを抑制し、利用者に快適なクッション機能を提供することができる。
【0024】
一方、本実施形態における弾性ユニットXを温熱効果の観点から考察すると、以下のようになる。隣接する柱状部材35どうしが未接触のとき、オイルより熱伝導率の小さい空気が間に介在して断熱層の役割を果たすので、柱状部材35に伝達された熱は、水平方向の移動が阻害され、柱状部材35の高さ方向に沿って速やかに移動して受圧面(端面)まで暖められる。
【0025】
次いで、利用者の荷重がかかるにつれて、柱状部材35が次第に沈み込んで、隣接する柱状部材35どうしが接触する。この時、電熱ヒータ線36に接触する柱状部材35からの熱が、電熱ヒータ線36に接触しない柱状部材35へ伝達されることで、荷重のかかった全ての柱状部材35が暖められる。これによって、利用者の荷重がかかった受圧面は均等に暖かくなり、且つ、受圧面積が増大しているので、利用者の身体全域を大きな面で暖めることができる。しかも、柱状部材35は、荷重により高さが減少しているので、電熱ヒータ線36と受圧面との距離が短縮されて、受圧面は素早く伝熱される。よって、電熱ヒータ線36を温度変化させたとき、受圧面の温度追従性が良好である。
【0026】
図5に示すように、3つの弾性ユニットXは、マットレス3の長手方向に沿って並んで配置される。夫々の弾性ユニットXには、電熱ヒータ線36が個別に形成されており、独立してON・OFF制御や温度調節ができるようになっている。このマットレス3の長手方向に沿って人が横たわると、3つの弾性ユニットXは、夫々肩部、臀部、足部に対応する。例えば、足部だけ暖めたいときは、足部の位置の弾性ユニットXをONにして、残り2つの弾性ユニットXをOFFにすればよい。また、足部、肩部、臀部の順番で温度を下げたいときは、夫々の弾性ユニットXの電流量を調整して温度勾配を設けることができる。さらに、利用者の体型が小柄で、2つの弾性ユニットXのみの使用で足りるときは、残り1つの弾性ユニットXを常にOFF設定にすれば良い。このように、複数の弾性ユニットXに、電熱ヒータ線36を個別に設けることで、利用者の使用形態や体型に応じて、最適な体感温度を適宜設定することができる。
【0027】
[別実施形態]
別実施形態について、上述した実施形態と異なる構成のみ
図6を用いて説明する。なお、図面の理解を助けるため、上述した実施形態と同じ部材について同一の符号を付して説明する。
【0028】
本実施形態では、3つの弾性ユニットXを、マットレス3の短手方向にさらに3分割して、9つの弾性ユニットXを形成している。これにより、例えば、利用者が主として使用するマットレス3の図面中央ラインのみ電熱ヒータ線36をONにして、他の電熱ヒータ線36をOFFとすることで、更なる省エネ効果が期待できる。
【0029】
ところで、従来、ベッドYの4つの脚部1とベッドフレーム2との間に荷重センサを取り付けて、睡眠者の在床位置を推定する判定装置が知られている(例えば、特開2011−250950号公報)。本実施形態では、この判定装置と連動して、睡眠者の現在位置に応じて電熱ヒータ線36をON・OFF制御することも考えられる。例えば、睡眠者が図面左側ラインに寝返りをした場合、左側ラインの電熱ヒータ線36をONにし、図面中央及び右側ラインの電熱ヒータ線36をOFFにしたり、睡眠者が暑がって寝返りをした場合を想定して、動いた側の電熱ヒータ線36をOFFにしたりしてもよい。これにより、消費電力を節約することができると共に、上述した実施形態同様、柱状部材35の良好な温度追従性により在床位置は速やかに暖められる。このように、本実施形態では、複数の弾性ユニットXを細分化することで、利用者の寝姿勢に応じて、必要となる加温位置を適宜制御することが可能となる。よって、睡眠者の寝返りに対応し、快適な睡眠を提供することができる。
【0030】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態における柱状部材35の数量や形状、配置態様は特に限定されない。例えば、円柱形状に代えて、多角柱状、断面視楕円形状や球形状などにしても良い。また、複数の柱状部材35の配置態様も、千鳥状ではなく、行列方向に直交した格子状に配置しても良い。さらに、柱状部材35に代えてプレート状の伝熱性弾性部材としても良い。
(2)上述した実施形態では、電熱ヒータ線36を一行置きに配設したが、例えば、二行置きとしても良い。この場合でも、電熱ヒータ線36に接触しない柱状部材35の一側面は、電熱ヒータ線36に接触する柱状部材35から伝熱されて暖められる。つまり、隣接する複数の柱状部材35のうち、少なくとも一つの柱状部材35が電熱ヒータ線36に接触する構成としていれば良く、電熱ヒータ線36の配設態様は特に限定されない。
(3)上述した実施形態では、電熱ヒータ線36を用いて説明したが、空気や流体で暖めるヒータ部としても良く、特に限定されない。
(4)上述した実施形態では、柱状部材35に低硬度エラストマー樹脂を用いたが、発泡ゴムを用いるなど、立体形状を維持しつつ利用者の荷重がかかった状態で変位が可能であれば特に限定されない。
(5)上述した実施形態では、弾性ユニットXをキルト部4で覆ったが、カバーがなくても良い。
(6)上述した実施形態では、マットレス3を例に挙げたが、車両の座席や座布団、介護用シートなどに弾性ユニットXを適用できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、寝具のマットレスや車両の座席などに用いられるクッション装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
3 マットレス
34 台座部
35 柱状部材(弾性部材)
36 電熱ヒータ線(ヒータ部)
X 弾性ユニット(クッション装置)