(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、微粉炭バーナにおいて、燃焼性能を良好に保つためには、ノズル出口での微粉炭濃度の偏りを無くす必要がある。従来では、ノズルの接線から微粉炭を流入させるダクトを使用し、内部での旋回を抑えるために外筒の内側に突起を設けていた。しかしこの構成では、構造が複雑で製造に手間がかかり、また、微粉炭との衝突による突起の摩耗が問題となっていた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、摩耗を抑え且つ構造を簡略化し、製造が容易な微粉炭バーナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、微粉炭と燃焼用空気との混合流体を噴出する噴出口及び前記噴出口に至る前記混合流体の搬送流路を備えるバーナノズルと、前記バーナノズルの側部に接続され、前記搬送流路に前記混合流体を流入する混合流体流入管と、前記搬送流路において前記混合流体流入管の接続位置よりも下流側に設けられ、前記混合流体流入管が接続される側の流路面積に対してその反対側の流路面積を相対的に小さくする微粉炭濃度分布調整部材と、を有する、微粉炭バーナを採用する。
【0008】
また、本発明においては、前記微粉炭濃度分布調整部材は、前記搬送流路の流路断面の外縁輪郭とは非接触で設けられている、という構成を採用する。
【0009】
また、本発明においては、前記バーナノズルは、筒状の内スリーブと外スリーブとを有し、前記搬送流路は、前記内スリーブと前記外スリーブとの間に形成されており、前記微粉炭濃度分布調整部材は、前記内スリーブに支持されている、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明においては、前記微粉炭濃度分布調整部材は、前記バーナノズルの軸心に対して偏心した円形若しくは楕円形の外縁輪郭を有する、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明においては、前記微粉炭濃度分布調整部材は、外縁部にテーパが形成された板体で形成されている、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明においては、前記微粉炭濃度分布調整部材は、球体若しくは楕円体で形成されている、という構成を採用する。
【0013】
また、本発明においては、前記微粉炭濃度分布調整部材は、前記搬送流路において上流側が球体から形成され、下流側が楕円体から形成されている、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、バーナノズルの側部に混合流体流入管を接続し、単純な円管の組み合わせ構造とする。この構造を採用すると、混合流体は屈曲して流通し噴出口に至るが、この屈曲する際に、混合流体に含まれる微粉炭が遠心力により混合流体流入管が接続される側と反対側に偏る。そこで、本発明では、微粉炭濃度分布調整部材を設け、混合流体流入管が接続される側と反対側の流路面積を相対的に絞り、当該反対側に向かう微粉炭の一部を、混合流体流入管が接続される側に移動させ、微粉炭の粒子濃度の均一化を図る。
したがって、本発明によれば、摩耗を抑え且つ構造を簡略化し、製造が容易な微粉炭バーナが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における微粉炭バーナ1の断面構成図である。
図2は、
図1における矢視A図である。
微粉炭バーナ1は、微粉炭(
図1において模式的に黒点で示す)と燃焼用空気との混合流体Fを不図示の火炉に噴出し、微粉炭を燃焼させるものである。本実施形態の微粉炭バーナ1は、バーナノズル10と、混合流体流入管20と、微粉炭濃度分布調整部材30と、を有する。
【0018】
バーナノズル10は、混合流体Fを噴出する噴出口11と、噴出口11に至る混合流体Fの搬送流路12と、を有する。バーナノズル10は、筒状に形成されており、その一端に噴出口11が形成されている。搬送流路12は、バーナノズル10の軸心C1に沿って、噴出口11まで直線的に延在している。本実施形態では、バーナノズル10の噴出口11側の端部が絞られ、軸心C1に向かって混合流体Fを噴射可能な構成となっている。
【0019】
バーナノズル10は、同心で設けられた筒状の内スリーブ13と外スリーブ14とを有し、二重筒構造となっている。内スリーブ13の内部には、オイルバーナ15が設けられている。オイルバーナ15は、微粉炭の燃焼初期の着火のために油を噴出するものである。このオイルバーナ15は、進退自在に設けられており、着火時において内スリーブ13から突出して油を噴出し、燃焼中においては焼損を防止するため内スリーブ13内に退避するようになっている。
【0020】
搬送流路12は、内スリーブ13と外スリーブ14との間に形成されている。搬送流路12の流路断面は、
図2に示すように、リング状に形成されている。搬送流路12の流路断面の内縁輪郭12aは、内スリーブ13の外周面によって形成されている。また、搬送流路12の流路断面の外縁輪郭12bは、外スリーブ14の内周面によって形成されている。
【0021】
混合流体流入管20は、
図1に示すように、バーナノズル10の側部(外スリーブ14の外周面)に接続されている。混合流体流入管20は、搬送流路12に混合流体Fを流入するものである。混合流体流入管20は、外スリーブ14に対し直角方向に混合流体Fを流入させるようになっている。混合流体流入管20の上流側には、不図示の微粉炭供給装置及び送風装置が設けられており、微粉炭と燃焼用空気とが予め混合された混合流体Fが導入されてくる。
【0022】
微粉炭濃度分布調整部材30は、
図1に示すように、搬送流路12において混合流体流入管20の接続位置よりも下流側に設けられている。微粉炭濃度分布調整部材30は、その設置場所において、混合流体流入管20が接続される側(
図1において紙面下側)の流路面積S1に対してその反対側(
図1において紙面上側)の流路面積S2を相対的に小さくするものである。
【0023】
詳しくは、
図2に示すように、バーナノズル10の軸心C1を通る直線L1によって搬送流路12を二分割し、混合流体流入管20が接続される側(
図2において紙面下側)を流路面積S1と規定し、混合流体流入管20が接続される側の反対側(
図2において紙面上側)を流路面積S2と規定することができる。
図2に示すように、微粉炭濃度分布調整部材30は、混合流体流入管20が接続される側の反対側の搬送流路12を絞り、流路面積S1>流路面積S2の関係を形成するようになっている。
【0024】
微粉炭濃度分布調整部材30は、搬送流路12の流路断面の外縁輪郭12bとは非接触で設けられている。微粉炭濃度分布調整部材30は、内スリーブ13の外周面側に支持されている。本実施形態では、バーナノズル10を内スリーブ13と外スリーブ14との2重筒構造としているため、内スリーブ13に微粉炭濃度分布調整部材30を支持させることにより、微粉炭濃度分布調整部材30を搬送流路12の流路断面の外縁輪郭12bと非接触で設けることができる。
【0025】
微粉炭濃度分布調整部材30は、
図2に示すように、バーナノズル10の軸心C1に対して偏心した楕円形の外縁輪郭30aを有する。本実施形態では、外縁輪郭30aの中心C2が、軸心C1に対し、混合流体流入管20が接続される側の反対側(
図2において紙面上側)に偏心している。この外縁輪郭30aを形成する楕円形の短軸は、搬送流路12を二分割する直線L1と平行に配置され、この楕円形の長軸は、この直線L1と直交するような配置となっている。
【0026】
微粉炭濃度分布調整部材30は、
図1に示すように、外縁部にテーパ31が形成された板体で形成されている。テーパ31は、搬送流路12において、上流側の板体表面側と、下流側の板体裏面側とにそれぞれ設けられている。テーパ31を形成することによって、微粉炭濃度分布調整部材30の厚みは、中央部が大きく、外縁部が小さくなる。微粉炭濃度分布調整部材30の板面は、混合流体流入管20から流入する混合流体Fの流れに対して平行になり、搬送流路12における混合流体Fの流れに対して垂直になる向きで配置されている。
【0027】
続いて、上記構成の微粉炭バーナ1の作用について、
図3を追加参照して説明する。
図3は、微粉炭濃度分布調整部材30が設けられていない場合のバーナノズル10と混合流体流入管20との円管の組み合わせ構造における混合流体Fの流れと、噴出口11における微粉炭の粒子濃度との関係を説明するための概念図である。
【0028】
本実施形態の微粉炭バーナ1は、従来技術のウインドボックスを採用せずに、筒状のバーナノズル10の側部に混合流体流入管20を接続し、単純な円管の組み合わせ構造としている。この構造を採用すると、
図3に示すように、略L字の流路が形成され、この流路を流通する混合流体Fは、噴出口11に至る前に屈曲部16を流通することとなる。混合流体Fには、燃焼用空気よりも比重の重い微粉炭が含まれている。このため、混合流体Fが屈曲部16を流通する際に、その中の微粉炭が遠心力によって、混合流体流入管20が接続される側と反対側(屈曲部16の外側に対応する側)に偏る(
図3に示す噴出口粒子濃度参照)。
【0029】
そこで、本実施形態では、
図1に示すように、搬送流路12において混合流体流入管20の接続位置よりも下流側に微粉炭濃度分布調整部材30を設けている。微粉炭濃度分布調整部材30は、混合流体流入管20が接続される側の流路面積S1に対してその反対側の流路面積S2を相対的に小さくする。このように、微粉炭濃度分布調整部材30の存在によって流路面積S2を相対的に小さくすると、混合流体流入管20が接続される側と反対側の流路抵抗が増加し、
図2において点線矢印で示すような流れが形成される。
【0030】
この流れによって、混合流体流入管20が接続される側と反対側に向かう微粉炭の一部を、混合流体流入管20が接続される側に移動させることができる。したがって、
図3に示す微粉炭濃度分布調整部材30が設けられていない場合と比較して、混合流体流入管20が接続される側の微粉炭の粒子濃度を増加させることができ、全体で噴出口11における微粉炭の粒子濃度の均一化を図ることができる。したがって、本実施形態の微粉炭バーナ1によれば、単純な円管の組み合わせ構造を採用し、従来技術のウインドボックスを採用せずとも、燃焼状態を良好に保つことができる。
【0031】
また、本実施形態の微粉炭濃度分布調整部材30は、
図2に示すように、バーナノズル10の軸心C1に対して偏心した楕円形の外縁輪郭30aを有する。この構成によれば、微粉炭濃度分布調整部材30を、バーナノズル10の軸心C1に対して偏心させることで、混合流体流入管20が接続される側と反対側の流路面積S2を容易に絞ることができ、また、
図2において点線矢印で示すように、当該反対側に向かう微粉炭の一部の混合流体流入管20が接続される側への移動も容易になる。
【0032】
また、本実施形態の微粉炭濃度分布調整部材30は、搬送流路12の流路断面の外縁輪郭12bとは非接触で設けられている。混合流体Fに含まれる微粉炭は、
図3に示すように、屈曲する際に受ける遠心力によって、搬送流路12の外側を形成する外スリーブ14の内周面(壁面)に沿って流れる。このため、微粉炭濃度分布調整部材30を、搬送流路12の流路断面の外縁輪郭12bと非接触で設けることにより、微粉炭との衝突頻度を低減させ、微粉炭濃度分布調整部材30の摩耗を抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態の微粉炭濃度分布調整部材30は、
図1に示すように、外縁部にテーパ31が形成された板体から形成されている。微粉炭との衝突頻度の高い板体の外縁部の角を落とさないと、その角が微粉炭との衝突により積極的に削れてしまい、微粉炭濃度分布調整部材30が偏摩耗し、流路面積S1と流路面積S2の比率が経時的に変化してしまう場合がある。したがって、外縁部にテーパ31を形成することで、微粉炭の粒子濃度の調整機能を長い間一定に維持することができるようになる。
【0034】
このように、上述の本実施形態によれば、微粉炭と燃焼用空気との混合流体Fを噴出する噴出口11及び噴出口11に至る混合流体Fの搬送流路12を備えるバーナノズル10と、バーナノズル10の側部に接続され、搬送流路12に混合流体Fを流入する混合流体流入管20と、搬送流路12において混合流体流入管20の接続位置よりも下流側に設けられ、混合流体流入管20が接続される側の流路面積S1に対してその反対側の流路面積S2を相対的に小さくする微粉炭濃度分布調整部材30と、を有する、という構成を採用することによって、摩耗を抑え且つ構造を簡略化し、製造が容易な微粉炭バーナ1が得られる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0036】
図4は、本発明の第2実施形態における微粉炭バーナ1の断面構成図である。
図5は、
図4における矢視B図である。
第2実施形態では、
図4に示すように、微粉炭濃度分布調整部材30が厚みのある立体形状を有している点で、上記実施形態と異なる。
【0037】
第2実施形態の微粉炭濃度分布調整部材30は、搬送流路12において上流側が球体から形成され、下流側が楕円体から形成されている。詳しくは、
図4に示すように、立体の最大外径を通る直線L2を境として、搬送流路12の上流側が球体(符号32で示す)となり、搬送流路12の下流側が楕円体(符号33で示す)となっている。換言すると、微粉炭濃度分布調整部材30は、半分にした球体と、半分にした楕円体とを切断面で接合したような形状を有する。
【0038】
また、第2実施形態の微粉炭濃度分布調整部材30は、
図5に示すように、バーナノズル10の軸心C1に対して偏心した円形の外縁輪郭30bを有する。本実施形態では、外縁輪郭30bの中心C3が、軸心C1に対し、混合流体流入管20が接続される側の反対側(
図5において紙面上側)に偏心している。これにより、上記実施形態と同様に、混合流体流入管20が接続される側の流路面積S1に対してその反対側の流路面積S2を相対的に小さくすることができる。
【0039】
上記構成の第2実施形態によれば、微粉炭濃度分布調整部材30が丸い立体形状を有しているため、微粉炭との衝突により積極的に削れる角がなく、微粉炭濃度分布調整部材30の偏摩耗を抑制することができる。したがって、微粉炭濃度分布調整部材30の微粉炭の粒子濃度の調整機能をより長い間一定に維持することができる。
【0040】
また、微粉炭濃度分布調整部材30の前半分は球体から形成されている。球体は、物理的に安定した形状であり、微粉炭との衝突耐性を高めることができる。このため、微粉炭濃度分布調整部材30の上流側で発生する摩耗をより低減することができる。また、微粉炭濃度分布調整部材30の後半分は楕円体から形成されている。楕円体は、下流側に滑らかに長く延び、微粉炭濃度分布調整部材30の下流側における渦や淀みの発生を抑制することができる。このため、微粉炭濃度分布調整部材30の下流側における混合流体Fの流れの安定化を図ることができる。
このように、上述した第2実施形態によれば、上記実施形態と同様の作用効果に加えて、微粉炭濃度分布調整部材30の摩耗耐性をより高め、また、微粉炭濃度分布調整部材30の通過後の混合流体Fの流れをより安定化させることができる。
【0041】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、微粉炭濃度分布調整部材を、板体若しくは球体と楕円体とを組み合わせた立体から形成した構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、微粉炭濃度分布調整部材を、単に球体若しくは楕円体で形成しても良い。
【0043】
また、例えば、上記実施形態では、微粉炭濃度分布調整部材がバーナノズルの軸心に対して偏心した円形若しくは楕円形の外縁輪郭を有する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、混合流体流入管が接続される側の流路面積に対してその反対側の流路面積を相対的に小さくすることができれば、異形の外縁輪郭を有する構成であっても良い。この異形の外縁輪郭は、角がないものを採用することが好ましい。
【0044】
また、例えば、上記実施形態では、微粉炭濃度分布調整部材を内スリーブに支持させる構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、バーナノズルが2重筒構造を採用しない場合、微粉炭濃度分布調整部材をバーナノズルの軸心に沿って延ばした棒体の先端に支持させる構成を採用しても良い。
【0045】
また、例えば、上記実施形態では、混合流体流入管が外スリーブに対し直角方向に混合流体を流入する構成について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば、搬送流路の中で旋回流を形成するべく、混合流体流入管が外スリーブの内周面の接線方向に混合流体を流入させる構成を採用しても良い。