特許第6326984号(P6326984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6326984流量制御機構およびこれを備えた流体軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326984
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】流量制御機構およびこれを備えた流体軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/02 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   F16J3/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-115543(P2014-115543)
(22)【出願日】2014年6月4日
(65)【公開番号】特開2015-230022(P2015-230022A)
(43)【公開日】2015年12月21日
【審査請求日】2017年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高明
(72)【発明者】
【氏名】若園 賀生
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−231857(JP,A)
【文献】 特開2012−107744(JP,A)
【文献】 実開昭60−008492(JP,U)
【文献】 特開昭60−108240(JP,A)
【文献】 特開2012−251467(JP,A)
【文献】 特開2002−303347(JP,A)
【文献】 特開2003−148547(JP,A)
【文献】 特表平06−503399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから圧送される流体の流量を制御する流量制御機構であって、
前記流量制御機構は、弁筺と、弁筺の内部室を吐出室と背圧室とに区画するダイアフラムとを備え、
前記ダイアフラムには、前記ダイアフラムに連結され、かつ前記ダイアフラムの変形に追従して前記弁筺と相対移動する延伸部材が前記ダイアフラムの面に直交する方向に延びて配設され、
前記弁筺と前記延伸部材との間には、前記ダイアフラムの振動を抑制する減衰部材が配設されていることを特徴とする流量制御機構。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御機構であって、
前記延伸部材は、前記弁筺を貫通して突出され、
前記延伸部材の突出部分には鍔部又は凹部が形成される一方、前記弁筺側には、前記鍔部又は凹部に対し、前記延伸部材の移動方向に所定距離を隔てて対向する内周フランジが形成され、
前記鍔部又は凹部と前記内周フランジとの間に挟持された状態で前記減衰部材が配設されていることを特徴とする流量制御機構。
【請求項3】
請求項2に記載の流量制御機構であって、
前記内周フランジは、前記弁筺に固定される固定筒部材の内周面に形成されていることを特徴とする流量制御機構。
【請求項4】
請求項3に記載の流量制御機構であって、
前記固定筒部材は、前記弁筺に対し、高さ調整機構によって高さ調整可能に配設されていることを特徴とする流量制御機構。
【請求項5】
請求項4に記載した流量制御機構であって、
前記高さ調整機構は、前記弁筺の取付面に対し、前記固定筒部材を締結固定する複数の締結ボルトと、前記弁筺の取付面に対する前記固定筒部材の高さ位置を調整する調整ねじとを備えていることを特徴とする流量制御機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載した流量制御機構であって、
前記減衰部材は、前記延伸部材よりも剛性が低くかつ減衰性は高い特性を有していることを特徴とする流量制御機構。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の流量制御機構によって流量が制御された流体を流体軸受のポケットに供給することを特徴とする流体軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流量制御機構およびこれを備えた流体軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静圧流体軸受装置においては、ポンプから圧送される流体の流量を流量制御機構によって制御して静圧流体軸受の静圧ポケットに供給するように構成されたものが知られている。また、流量制御機構においては、弁筺と、弁筺の内部室を吐出室と背圧室とに区画するダイアフラムとを備えたダイアフラム式の流量制御機構が知られている。ダイアフラム式の流量制御機構においては、吐出室と背圧室との圧力差に応じてダイアフラムが変形(撓み変形)し、これによって、弁筺の流出口の開度を増減させて流体の供給流量を制御している。このようなダイアフラム式の流量制御機構が用いられた静圧流体軸受装置においては、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−107744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイアフラム式の流量制御機構が用いられた静圧流体軸受装置においては、外乱などによりダイアフラムが急激に変形すると、これに伴って背圧室の圧力が変動する。背圧室の圧力の変動によってダイアフラムが不測に変動し、このような働きが繰り返されることでダイアフラムの不測の振動が増幅され、流体軸受機能が低下する。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、ダイアフラムの不測の振動を抑制することができる流量制御機構およびこれを備えた流体軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の第1の発明に係る流量制御機構は、ポンプから圧送される流体の流量を制御する流量制御機構であって、前記流量制御機構は、弁筺と、弁筺の内部室を吐出室と背圧室とに区画するダイアフラムとを備え、前記ダイアフラムには、前記ダイアフラムに連結され、かつ前記ダイアフラムの変形に追従して前記弁筺と相対移動する延伸部材が前記ダイアフラムの面に直交する方向に延びて配設され、前記弁筺と前記延伸部材との間には、前記ダイアフラムの振動を抑制する減衰部材が配設されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によると、ダイアフラムが急激に変形しようとすると、ダイアフラムの変形に追従する延伸部材の動きが、弁筺と延伸部材との間に配設された減衰部材によって減衰される。このため、ダイアフラムの急激な変形や、ダイアフラムの不測の振動を抑制することができる。
【0008】
第2の発明に係る流量制御機構は、第1の発明の流量制御機構であって、前記延伸部材は、前記弁筺を貫通して突出され、前記延伸部材の突出部分には鍔部又は凹部が形成される一方、前記弁筺側には、前記鍔部又は凹部に対し、前記延伸部材の移動方向に所定距離を隔てて対向する内周フランジが形成され、前記鍔部又は凹部と前記内周フランジとの間に挟持された状態で前記減衰部材が配設されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明によると、延伸部材の突出部分に形成された鍔部又は凹部と、弁筺側に形成された内周フランジとの間に減衰部材を容易に配設することができる。
【0010】
第3の発明に係る流量制御機構は、第2の発明の流量制御機構であって、前記内周フランジは、前記弁筺に固定される固定筒部材の内周面に形成されていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明によると、弁筺に内周フランジを形成する場合と比べ、内周フランジを固定筒部材の内周面に容易に形成することができる。
【0012】
第4の発明に係る流量制御機構は、第3の発明の流量制御機構であって、前記固定筒部材は、前記弁筺に対し、高さ調整機構によって高さ調整可能に配設されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明によると、弁筺に対し、高さ調整機構によって固定筒部材を高さ調整することで、固定筒部材の内周フランジと、延伸部材の鍔部との間に減衰部材を適切な状態で配設することができる。例えば、減衰部材によってダイアフラムの変形を阻害したり、減衰部材の減衰機能が低下することを抑制することができる。
【0014】
第5の発明に係る流量制御機構は、第4の発明の流量制御機構であって、前記高さ調整機構は、前記弁筺の取付面に対し、前記固定筒部材を締結固定する複数の締結ボルトと、前記弁筺の取付面に対する前記固定筒部材の高さ位置を調整する調整ねじとを備えていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明によると、弁筺の取付面に対し、調整ねじによって固定筒部材の高さ位置を調整した後、弁筺の取付面に対し、複数の締結ボルトによって固定筒部材を締結固定することで、固定筒部材を所望とする高さ位置に容易に調整することができる。
【0016】
第6の発明に係る流量制御機構は、第1〜5の発明のいずれかの発明の流量制御機構であって、前記減衰部材は、前記延伸部材よりも剛性が低くかつ減衰性は高い特性を有していることを特徴とする。
【0017】
第6の発明によると、延伸部材よりも剛性が低くかつ減衰性は高い特性を有している減衰部材によって、ダイアフラムの急激な変形を良好に抑制することができる。
【0018】
第7の発明に係る流体軸受装置は、第1〜6の発明のいずれかの発明の流量制御機構によって流量が制御された流体を流体軸受のポケットに供給することを特徴とする。
【0019】
第7の発明によると、安定した流体軸受機能が得られる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によると、ダイアフラムの不測の振動を抑制することができ、安定した流体軸受機能が得られる。すなわち、流体軸受の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の実施例1に係る静圧流体軸受装置の概略を示す説明図である。
図2】静圧流体軸受装置の流量制御機構を示す縦断面図である。
図3】流量制御機構の要部を拡大して示す縦断面図である。
図4】高さ調整機構の締結ボルトと調整ねじとの配設状態を示す平面図である。
図5】制圧ポケットの圧力が低下してダイアフラムが変形した状態を示す縦断面図である。
図6】この発明の実施例2に係る流量制御機構を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0023】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。図1に示すように、静圧流体軸受装置は、ポンプPから圧送される流体(液体や気体)の流量を流量制御機構10によって制御して、静圧流体軸受1の軸受体2に形成された静圧ポケット4に供給し、可動体6(回転体又はスライド体)の案内面7を非接触状態で移動案内する。
【0024】
図2に示すように、流量制御機構10は、弁筺20と、弁筺20の内部室を吐出室70と背圧室71とに区画する鋼板製のダイアフラム60とを備える。
【0025】
この実施例1において、弁筺20は、第1の弁筺体21と、第2の弁筺体41とを備える。第1の弁筺体21の上面の中央部には、底面側が小径で開口側が大径の段差状凹部21aが形成され、その段差面をダイアフラム60の設置面24としている。そして、段差状凹部21aの底面側に吐出室70が形成され、段差状凹部21aの開口側を嵌合凹部22としている。また、第1の弁筺体21の段差状凹部21aの底面には、突出部26が形成され、この突出部26の突出端面には、設置面24上に設置されるダイアフラム60との間に、設定された隙間を隔てる弁座面27が形成されている。また、突出部26の中心部には流体の流出口30が貫通状に形成されている。また、第1の弁筺体21の側部には、ポンプPに通じる供給管が接続される流入口31が形成され、この流入口31の奥側には、吐出室70に通じる吐出側流入孔32と、背圧室71に通じる背圧側流入孔33とが平行状に形成されている。
【0026】
第2の弁筺体41の下面の中央部には、嵌合凹部22に嵌合される嵌合凸部42が形成されている。そして、第1の弁筺体21の設置面24上にダイアフラム60が設置された後、嵌合凹部22に対し嵌合凸部42が嵌合される。さらに、第1の弁筺体21の周壁211上面に対し、第2の弁筺体41の周壁411の下面が当接した状態で、第2の弁筺体41から第1の弁筺体21に向けて複数の連結ボルト50がねじ込まれることで第1の弁筺体21に対し第2の弁筺体41が締結される。この締結状態において、段差状凹部21aの底面側に吐出室70が、嵌合凸部42の端面側に背圧室71が構成される。また、嵌合凸部42の突出方向の中央部外周には環状溝43が形成され、この環状溝43には嵌合凹部22の内周壁面に密接するOリング45が配設されてシール性が確保されている。
【0027】
図2図3に示すように、第2の弁筺体41の上面には、小径の深底面47と、大径の浅底面48とを備えた段差凹部49が形成されている。さらに、小径の深底面47の中心部から嵌合凸部42の下端面にわたって、後述する延伸部材80を移動案内する案内孔49aが形成されている。また、案内孔49aの内周面には、環状溝49bが形成され、この環状溝49bには、Oリング49cが配設されて後述する延伸部材80の本体軸部81と案内孔49aとのシール性が確保されている。
【0028】
また、この実施例1において、第1の弁筺体21の嵌合凹部22と、第2の弁筺体41の嵌合凸部42とは、横断面円形で嵌合している。すなわち、嵌合凹部22は円筒孔に形成され、嵌合凸部42は円柱形に形成されている。また、設置面24上に設置されるダイアフラム60は円板状に形成されている。
【0029】
図3に示すように、ダイアフラム60の一側面(図3では上側面)には、上方へ延びる延伸部材80が配設されている。この実施例1において、延伸部材80は、軸状をなす本体軸部81と、本体軸部81の下端から下向きに延出され、かつ本体軸部81よりも小径の接合軸部82と、この接合軸部82の下端から下向きに延出されたかしめ軸部83とを同一中心線上に有している。さらに、延伸部材80の本体軸部81の上半部外周面には、第1の鍔部85と第2の鍔部86とが軸方向(上下方向)に所定間隔を隔てて形成されている。そして、延伸部材80の本体軸部81の下半部は、かしめ軸部83を下向きにして第2の弁筺体41の案内孔49aの上方から案内孔49aを通して上下方向へ移動可能に嵌挿され、かしめ軸部83がダイアフラム60の中心部に形成された貫通孔に挿入される。その後、ダイアフラム60の下面に突出するかしめ軸部83端部がかしめられてかしめ部84が形成されることで、延伸部材80がダイアフラム60と一体状をなして連結され、ダイアフラム60の変形に追従して上下方向へ移動される。この状態において、本体軸部81の上半部は、案内孔49aから上方に突出し、第1の鍔部85と第2の鍔部86とが第2の弁筺体41の段差凹部49内に配置される。
【0030】
図3に示すように、弁筺20と延伸部材80との間には、ダイアフラム60の振動を抑制する減衰部材95が配設されている。この実施例1において、第2の弁筺体41の段差凹部49の浅底面48上には、浅底面48を取付面として筒状の固定筒部材90が高さ調整機構92によって高さ調整可能に取り付けられている。
【0031】
固定筒部材90は、第1の鍔部85及び第2の鍔部86の外径寸法よりも大きい内径寸法を有する円筒状に形成され、その内周面には、第1の鍔部85と第2の鍔部86との中間部に配置される内周フランジ91が形成されている。そして、第1の鍔部85と内周フランジ91との間、及び内周フランジ91と第2の鍔部86との間にそれぞれ挟持された状態で減衰部材95が配設されている。
【0032】
減衰部材95は、延伸部材80よりも剛性が低くかつ減衰性は高い特性を有する部材、例えば、防振ゴム、防振ゲル等の減衰性に富む部材によって構成されている。なお、固定筒部材90の内周フランジ91を、延伸部材80の第1の鍔部85と第2の鍔部86との中間部に配置するため、例えば、第1の鍔部85と第2の鍔部86とのうち、少なくとも一方の鍔部を延伸部材80の本体軸部81とは別体に形成し、その後、別体の鍔部をねじ、クリップ、かしめ等の結合手段によって本体軸部81の外周面の所定位置に固定することも可能である。
【0033】
また、この実施例1において、高さ調整機構92は、複数の締結ボルト93と、複数の調整ねじ94とを備えて構成される。すなわち、図3図4に示すように、固定筒部材90には、複数のボルト孔が周方向に所定角度を隔てて貫設され、これら複数のボルト孔の各中間位置に複数の雌ねじが周方向へ所定角度を隔てて形成されている。そして、複数の雌ねじに対し調整ねじ94がねじ込まれ、これら調整ねじ94の下端が取付面として浅底面48に当接した状態で浅底面48に対し固定筒部材90を高さ調整した後、複数の締結ボルト93が固定筒部材90の複数のボルト孔を通して取付面として浅底面48にねじ込まれることで、第2の弁筺体41の取付面としての浅底面48に対し固定筒部材90が高さ調整されて締結固定される。
【0034】
この実施例1に係る静圧流体軸受装置は上述したように構成される。したがって、ポンプPにより加圧された流体は、流量制御機構10の流入口31を経て吐出側流入孔32と背圧側流入孔33とに分岐して流れる。吐出側流入孔32に流れた流体は、ダイアフラム60と弁座面27との可変絞り流路を通過して流出口30に流れた後、軸受体2の静圧ポケット4に供給される。静圧ポケット4に供給された流体により、軸受体2の軸受面と、可動体6の案内面7との間に所定の厚さの流体膜が形成され、案内面7が支持される。流体膜は動的に形成された後、ドレン及び排出流路(図示しない)へ排出されることを繰り返すことにより維持されている。
【0035】
また、吐出室70と背圧室71とに圧力差が生じたときには、この圧力差に応じてダイアフラム60が比較的緩やかに変形(撓み変形)することで、ダイアフラム60と弁座面27との間の可変絞り流路の開度が調整される。ダイアフラム60が変形する際、その変形に追従して延伸部材80が上下動する。延伸部材80は、ダイアフラム60に接合される接合軸部82が本体軸部81よりも小径に形成されるため、ダイアフラム60の変形が阻害されることを軽減することができる。
【0036】
静圧流体軸受1に加わる外乱負荷により流体膜に外乱力が作用すると、静圧ポケット4の圧力が変動する。例えば、静圧ポケット4の圧力が急激に低下すると、これに伴って吐出室70側の圧力が急激に低下する。すると、吐出室70と背圧室71との圧力差によって、ダイアフラム60は下方へ向けて急激に変形(撓み変形)しようとする。すると、ダイアフラム60の変形に追従する延伸部材80の動きが、減衰部材95によって減衰される。このため、ダイアフラム60の急激な変形を抑制することができ(図5参照)。この結果、ダイアフラム60の不測の振動を抑制することができ、安定した流体軸受機能が得られる。すなわち、流体軸受の剛性を高めることができる。
【0037】
また、この実施例1において、延伸部材80の第1の鍔部85と、固定筒部材90の内周フランジ91との間、及び固定筒部材90の内周フランジ91と延伸部材80の第2の鍔部86との間にそれぞれ挟持された状態で減衰部材95を容易に配設することができる。
【0038】
また、この実施例1において、内周フランジ91は、第2の弁筺体41に固定される固定筒部材90の内周面に形成されている。このため、第2の弁筺体41に内周フランジを形成する場合と比べ、内周フランジ91を固定筒部材90の内周面に容易に形成することができる。
【0039】
また、この実施例1において、第2の弁筺体41に対し、高さ調整機構92によって固定筒部材90を延伸部材80の移動方向へ高さ調整することで、固定筒部材90の内周フランジ91と、延伸部材80の第1の鍔部85及び第2の鍔部86との間に減衰部材95を適切な状態で配設することができる。例えば、減衰部材95によってダイアフラム60の変形を阻害したり、減衰部材95の減衰機能が低下することを抑制することができる。
【0040】
また、この実施例1において、高さ調整機構92は、第2の弁筺体41の取付面としての浅底面48に対し、固定筒部材90を締結固定する複数の締結ボルト93と、第2の弁筺体41の浅底面48に対する固定筒部材90の高さ位置を調整する複数の調整ねじ94とを備えている。そして、先ず、第2の弁筺体41の浅底面48に対し、複数の調整ねじ94によって固定筒部材90の高さ位置を調整した後、第2の弁筺体41の浅底面48に対し、複数の締結ボルト93によって固定筒部材90を締結固定することで、固定筒部材90を所望とする高さ位置に容易に調整することができる。
【0041】
また、この実施例1において、減衰部材95は、延伸部材80よりも剛性が低くかつ減衰性は高い特性を有する部材、例えば、防振ゴム、防振ゲル等の減衰性に富む部材によって構成されているため、ダイアフラム60の急激な変形を良好に抑制することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、この発明の実施例2を図6にしたがって説明する。この実施例2においては、図6に示すように、延伸部材180の形状と、減衰部材の構成を変更したものであり、延伸部材180は、軸状をなす本体軸部181と、本体軸部181の下端から下向きに延出され、かつ本体軸部181よりも小径の接合軸部182と、この接合軸部182の下端から下向きに延出されたかしめ軸部183とを同一中心線上に有している。本体軸部181の上端には、凹部を形成するために上方へ垂直状に延びる小径軸部185が同一中心上に形成されている。さらに、小径軸部185の先端面には、後述する減衰部材195a、195bを小径軸部185の回りに保持するために、座金197を介してボルト196が締め付けられている。
【0043】
一方、第2の弁筺体41の浅底面48を取付面として、筒状の固定筒部材190が実施例1で述べた高さ調整機構92によって高さ調整可能に取り付けられている。この固定筒部材190の下部内周面には、延伸部材180の小径軸部185の軸方向中間部で嵌合されるて配置される中心孔を有する内周フランジ191が形成されている。そして、延伸部材180の本体軸部181の上端面と、小径軸部185の外周面と、内周フランジ191の下面とで囲まれた凹部198内には、例えばゴム製のOリングよりなる減衰部材195aが挟持された状態で配設されている。さらに、内周フランジ191の上面と、小径軸部185の外周面と、座金197の下面とで囲まれた凹部199内には、、例えばゴム製のOリングよりなる減衰部材195bが挟持された状態で配設されている。この実施例2のその他の構成は実施例1と同様に構成されるため、同一構成部分に対し同一符号を付記してその説明は省略する。したがって、この実施例2においても実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0044】
なお、この発明は前記実施例1および2に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。例えば、前記実施例1においては、第2の弁筺体41の取付面としての浅底面48に対し、固定筒部材90を高さ調整機構92によって高さ調整可能に装着したが、高さ調整機構92は必ずしも設けなくてもよい。また、前記実施例1においては、延伸部材80の本体軸部81の外周面に第1の鍔部85と第2の鍔部86との複数の鍔部を形成したが、鍔部は一つであってもよい。また、前記実施例1においては、延伸部材80の第1の鍔部85及び第2の鍔部86に対する内周フランジ91が固定筒部材90に形成される場合を例示したが、第2の弁筺体41に形成することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 静圧流体軸受
10 流量制御機構
20 弁筺
21 第1の弁筺体
22 嵌合凹部
41 第2の弁筺体
42 嵌合凸部
48 浅底面(取付面)
60 ダイアフラム
70 吐出室
71 背圧室
80 延伸部材
85 第1の鍔部
86 第2の鍔部
90 固定筒部材
91 内周フランジ
92 高さ調整機構
93 締結ボルト
94 調整ねじ
95 減衰部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6