(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記DC/DCコンバータ及び前記DC/ACインバータに含まれる半導体スイッチング素子の少なくとも1つにSiC素子を用いる請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の要旨]
本発明の実施形態の要旨としては、少なくとも以下のものが含まれる。
【0010】
(1)これは、直流電源から提供される直流電力を交流電力に変換して負荷に給電する変換装置であって、前記負荷と接続され、交流リアクトル及び第1のコンデンサを含むフィルタ回路と、前記フィルタ回路を介して前記負荷と接続されるDC/ACインバータと、前記直流電源と前記DC/ACインバータとの間に設けられるDC/DCコンバータと、前記DC/ACインバータと前記DC/DCコンバータとの間に設けられる第2のコンデンサと、前記交流電力の電圧、前記交流リアクトルを流れる電流及びインピーダンスによる電圧変化、前記第1のコンデンサ及び前記第2のコンデンサをそれぞれ流れる無効電流、並びに、前記直流電力の電圧に基づいて、前記DC/DCコンバータの電流目標値を、前記交流電力の電流と同期するように設定する制御部と、を備えている。
【0011】
上記(1)のように構成された変換装置では、DC/ACインバータとDC/DCコンバータとが、それぞれに、必要最低限の回数で高周波スイッチングを行う。また、AC/DCコンバータは、交流電圧の絶対値のピーク及びその近傍を避けて動作し、DC/DCコンバータは交流電圧のゼロクロスとその近傍を避けて動作することになるので、高周波スイッチングを行う際に、それぞれコンバータの半導体素子及びリアクトルに印加される電圧が相対的に低くなる。このことも、半導体素子のスイッチング損失及びリアクトルの鉄損の低減に寄与する。こうして、変換装置全体としての損失を低減することができる。
なお、上記「必要最小限の回数」となるために、理想的にはDC/ACインバータとDC/DCコンバータとで、交互に高周波スイッチングを行い、高周波スイッチングの時期が重ならないことが好ましいが、実際には若干の重なりが生じても、それぞれの停止期間があれば、損失は低減され、高効率化に寄与する。
【0012】
また、DC/DCコンバータの電流目標値を、交流電力の電圧、交流リアクトルを流れる電流とインピーダンスによる電圧変化、第1及び第2のコンデンサを流れる無効電流、及び直流電力の電圧に基づいて、交流電力の電流と同期するように設定することで常に歪みのない交流電力を発生することができる。特に、負荷が交流系統と連系しているときには、交流電源の電圧、周波数、及び出力電流が変化しても常に系統電圧と同期した(あるいは系統電圧に対して任意の位相角に制御された)歪みのない電流を交流系統との間で、受け渡しすることができる。
【0013】
(2)また、(1)の変換装置において、前記制御部は、前記負荷への出力電流目標値をIa*、前記第1のコンデンサの静電容量をCa、前記交流電力の電圧値をVa、前記直流電源側の電圧をV
DC、ラプラス演算子をsとするとき、前記フィルタ回路と前記DC/ACインバータとの回路接続点での前記DC/ACインバータの交流出力電流目標値Iinv*を、
Iinv*= Ia*+s CaVa
に設定し、さらに、前記交流リアクトルのインピーダンスをZaとするとき、前記回路接続点での前記DC/ACインバータの交流出力電圧目標値Vinv*を、
Vinv*= Va+ZaIinv*
に設定し、前記電圧V
DC、及び、前記DC/ACインバータの交流出力電圧目標値Vinv*の絶対値のいずれか大きい方を、前記DC/DCコンバータの出力電圧目標値Vo*に設定し、前記第2のコンデンサの静電容量をCとするとき、前記DC/DCコンバータの電流目標値Iin*を、
Iin*={(Iinv* × Vinv*)+(s C Vo*)×Vo*}/V
DC
に設定する、ことが好ましい。
【0014】
上記(2)の変換装置は、(1)の変換装置を実現するより具体的な制御の態様を示した一例である。上記のDC/DCコンバータの電流目標値Iin*は、交流電力の電圧、交流リアクトルを流れる電流とインピーダンスによる電圧変化、第1及び第2のコンデンサを流れる無効電流、及び直流電力の電圧を全て反映しており、従って、直流電源の電圧や、交流出力電流が変化したときでも、常に交流出力電流に同期した電力を出力することができる。このため、DC/DCコンバータ及びDC/ACインバータは必要最低限の回数の高周波スイッチングで、交流から直流への変換を行うことができる。その結果、半導体スイッチング素子のスイッチング損失、交流及び直流リアクトルの鉄損が大幅に低減され、高い変換効率を得ることができる。さらに、出力される交流電力は品質が高く、商用系統への連系にも十分な低歪みの電流を得ることができる。
【0015】
なお、ラプラス演算子sに代えて、時間tでの微分を用いた表現とすれば、上記の式は以下のようになる。
Iinv*=Ia* − Ca×(d Va/dt)
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) +C×(d Vo*/dt)×Vo*} / V
DC
【0016】
また、予め変換装置の電力損失P
LOSSを測定しておけば、電流目標値Iin*は、以下の式で表すこともできる。
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) + C×(d Vo*/dt)×Vo* + P
LOSS}/V
DC
この場合、電力損失P
LOSSを考慮することにより、より厳密にIin*の値を求めることができる。
【0017】
(3)また、(2)の変換装置において、前記DC/DCコンバータは直流リアクトルを含み、前記直流電源の電圧をVg、前記直流リアクトルのインピーダンスをZ、前記DC/DCコンバータの電流値をIinとするとき、(Vg−ZIin)を前記電圧V
DCとしてもよい。
(4)前記DC/DCコンバータの電流値Iinには、電流センサによる検出値(直流リアクトルの電流検出値)または、
Iinv*×Vinv*/Vg
によって得られる計算値を用いることができる。
上記(3)、(4)の場合、直流リアクトルの電流とインピーダンスによる電圧降下も考慮しているため、DC/DCコンバータを流れる電流が変化したときも常に正確な制御を行うことができる。
【0018】
(5)また、(1)〜(4)のいずれかの変換装置において、前記DC/ACインバータの交流出力電流の目標値及び検出値に基づく参照値と、前記DC/DCコンバータの出力電圧目標値の比較に基づいて前記DC/ACインバータを制御し、前記DC/DCコンバータの電流目標値及び検出値に基づく参照値と、前記DC/DCコンバータの出力電圧目標値の比較に基づいて前記DC/DCコンバータを制御することができる。
このように、DC/ACインバータとDC/DCコンバータを同じ電圧目標値に基づいて制御することによって、交流出力電流の歪み率を低減することができる。
【0019】
(6)また、前記負荷に並列に交流電源を接続することができる。
上記(6)のように構成された変換装置は、直流電源から供給された電力を交流に変換し、商用電力系統等の交流電源と連系した並列運転をして、負荷に交流電源を供給することができる。
(7)また、前記直流電源を直流負荷、前記負荷を交流電源として、当該交流電源から当該直流負荷に電力を供給することができる。
【0020】
上記(7)のように構成された変換装置は、交流から直流への変換を行うことができる。
交流から直流への変換では、DC/ACインバータがAC/DCコンバータとして動作する。また、DC/DCコンバータは、直流から交流への変換とは逆方向に電流が流れるDC/DCコンバータとして動作する。交流から直流への変換においても、AC/DCコンバータ及びDC/DCコンバータは必要最低限の回数の高周波スイッチングとなるため、半導体スイッチング素子のスイッチング損失、交流リアクトル及び直流リアクトルの鉄損が大幅に低減され、高い変換効率を得ることができる。
【0021】
なお、(2)の各計算式は、出力電流目標値Ia*の位相を反転させればそのまま交流から直流への変換の際の目標値を与える式となる。このときDC/DCコンバータの電流目標値Iin*は直流電圧Vgに対して負の値となる。よって、(1)から(7)に記載された変換装置は、実は、直流から交流への変換、交流から直流への変換を共通の装置で行うことができる。
【0022】
(8)前記DC/DCコンバータ、前記DC/ACインバータに含まれる半導体スイッチング素子の少なくとも1つにSiC素子を用いることが望ましい。
(1)〜(7)のいずれかに記載された変換装置は、高周波スイッチングの回数を低減することによって半導体素子のスイッチング損失と直流リアクトル及び交流リアクトルの鉄損を低減することができるが、半導体素子の導通損失まで低減することはできない。この点、半導体素子としてSiC素子を用いれば導通損失を低減することができるため、(1)〜(7)のいずれかの変換装置にSiC素子を用いることで、両者の相乗効果により、高い変換効率を得ることができる。
【0023】
[実施形態の詳細]
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
《系統連系機能を備えた、直流から交流への変換装置》
まず、系統連系機能を備えた、直流から交流への変換装置(以下、単にインバータ装置という。)について詳細に説明する。
【0025】
〔1. 第1実施形態〕
〔1.1 全体構成について〕
図1は、第1実施形態に係るインバータ装置を備えたシステムの一例を示すブロック図である。図中、インバータ装置1の入力端には、直流電源としての太陽光発電パネル2が接続され、出力端には、交流の商用電力系統3(交流系統)が接続されている。このシステムは、太陽光発電パネル2が発電する直流電力を交流電力に変換し、商用電力系統3に出力する連系運転を行う。
【0026】
インバータ装置1は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力が与えられる昇圧回路(DC/DCコンバータ)10と、昇圧回路10から与えられる電力を交流電力に変換して商用電力系統3に出力するインバータ回路(DC/ACインバータ)11と、これら両回路10,11の動作を制御する制御部12とを備えている。
【0027】
図2は、インバータ装置1の回路図の一例である。
昇圧回路10は、直流リアクトル15と、ダイオード16と、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等からなるスイッチング素子Qbとを備えており、昇圧チョッパ回路を構成している。
昇圧回路10の入力側には、第1電圧センサ17、第1電流センサ18、及び平滑化のためのコンデンサ26が設けられている。
第1電圧センサ17は、太陽光発電パネル2が出力し、昇圧回路10に入力される直流電力の直流入力電圧検出値Vg(直流入力電圧値)を検出し、制御部12に出力する。第1電流センサ18は、直流リアクトル15に流れる電流である昇圧回路電流検出値Iin(直流入力電流値)を検出し、制御部12に出力する。なお、直流入力電流検出値Igを検出するために、コンデンサ26の前段に、さらに電流センサを設けてもよい。
制御部12は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pinを演算し、太陽光発電パネル2に対するMPPT(Maximum Power Point Tracking:最大電力点追従)制御を行う機能を有している。
【0028】
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbは、後述するように、インバータ回路11と合わせた合計のスイッチング動作を行う回数が最低限になるように制御され、停止期間が発生する。よって、昇圧回路10は、スイッチング動作を行っている期間は、昇圧された電力をインバータ回路11に出力し、スイッチング動作を停止している期間は、太陽光発電パネル2が出力して昇圧回路10に入力される直流電力の直流入力電圧値を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0029】
昇圧回路10と、インバータ回路11との間には、平滑用のコンデンサ19(平滑コンデンサ)が接続されている。
インバータ回路11は、FET(Field Effect Transistor)からなるスイッチング素子Q1〜Q4を備えている。これらスイッチング素子Q1〜Q4は、フルブリッジ回路を構成している。
各スイッチング素子Q1〜Q4は、制御部12に接続されており、制御部12により制御可能とされている。制御部12は、各スイッチング素子Q1〜Q4の動作をPWM制御する。これにより、インバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を交流電力に変換する。
【0030】
インバータ装置1は、インバータ回路11と、商用電力系統3との間にフィルタ回路21を備えている。
フィルタ回路21は、2つの交流リアクトル22と、交流リアクトル22の後段に設けられたコンデンサ23(出力平滑コンデンサ)とを備えて構成されている。フィルタ回路21は、インバータ回路11から出力される交流電力に含まれる高周波成分を除去する機能を有している。フィルタ回路21により高周波成分が除去された交流電力は、商用電力系統3に与えられる。
【0031】
このように、昇圧回路10及びインバータ回路11は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を、フィルタ回路21を介して商用電力系統3へ出力する変換部を構成している。
【0032】
また、フィルタ回路21には、インバータ回路11による出力の電流値であるインバータ電流検出値Iinv(交流リアクトル22に流れる電流)を検出するための第2電流センサ24が接続されている。さらに、フィルタ回路21と、商用電力系統3との間には、商用電力系統3側の電圧値(系統電圧検出値Va)を検出するための第2電圧センサ25が接続されている。
【0033】
第2電流センサ24及び第2電圧センサ25は、検出した系統電圧検出値Va(交流系統の電圧値)及びインバータ電流検出値Iinvを制御部12に出力する。なお、第2電流センサ24は、図のように、コンデンサ23の前段に設けるが、コンデンサ23の後段にインバータ装置1の出力電流を検出する第3電流センサを追加してもよい。
制御部12は、これら系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvと、上述の直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iinに基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0034】
〔1.2 制御部について〕
図3は、制御部12のブロック図である。制御部12は、
図3に示すように、制御処理部30と、昇圧回路制御部32と、インバータ回路制御部33と、平均化処理部34とを機能的に有している。
制御部12の各機能は、その一部又は全部がハードウェア回路によって構成されてもよいし、その一部又は全部が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)をコンピュータによって実行させることで実現されていてもよい。制御部12の機能を実現するソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータの記憶装置(図示省略)に格納される。
【0035】
昇圧回路制御部32は、制御処理部30から与えられる目標値及び検出値に基づいて、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御し、前記目標値に応じた電流の電力を昇圧回路10に出力させる。
また、インバータ回路制御部33は、制御処理部30から与えられる目標値及び検出値に基づいて、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御し、前記目標値に応じた電流の電力をインバータ回路11に出力させる。
【0036】
制御処理部30には、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、系統電圧検出値Va及びインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinから入力電力Pin及びその平均値〈Pin〉を演算する。
制御処理部30は、入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流目標値Ig*(後に説明する)を設定して太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行うとともに、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0037】
直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinは、平均化処理部34、及び制御処理部30に与えられる。
【0038】
平均化処理部34は、第1電圧センサ17及び第1電流センサ18から与えられる直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを、予め設定された所定の時間間隔ごとにサンプリングし、それぞれの平均値を求め、平均化された直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを制御処理部30に与える機能を有している。
【0039】
図4は、直流入力電圧検出値Vg、及び昇圧回路電流検出値Iinの経時変化をシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
また、直流入力電流検出値Igは、コンデンサ26よりも入力側で検出される電流値である。
【0040】
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電流検出値Igは、系統電圧の1/2の周期で変動していることが判る。
【0041】
図4に示すように、直流入力電圧検出値Vg、及び直流入力電流検出値Igが周期的に変動する理由は、次の通りである。すなわち、昇圧回路電流検出値Iinは、昇圧回路10、及びインバータ回路11の動作に応じて、交流周期の1/2周期でほぼ0Aからピーク値まで大きく変動する。そのため、コンデンサ26で変動成分を完全に取り除くことができず、直流入力電流検出値Igは、交流周期の1/2周期で変動する成分を含む脈流となる。一方、太陽光発電パネルは出力電流によって出力電圧が変化する。
このため、直流入力電圧検出値Vgに生じる周期的な変動は、インバータ装置1が出力する交流電力の1/2周期となっている。
【0042】
平均化処理部34は、上述の周期的変動による影響を抑制するために、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinを平均化する。
【0043】
図5は、平均化処理部34が行う、直流入力電圧検出値Vgを平均化する際の態様を示す図である。
【0044】
平均化処理部34は、あるタイミングt1から、タイミングt2までの間の期間Lにおいて、予め設定された所定の時間間隔Δtごとに、与えられる直流入力電圧検出値Vgについて複数回サンプリング(図中、黒点のタイミング)を行い、得られた複数の直流入力電圧検出値Vgの平均値を求める。
【0045】
ここで、平均化処理部34は、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定する。また、平均化処理部34は、時間間隔Δtを、商用電力系統3の1/2周期の長さよりも十分短い期間に設定する。
これにより、平均化処理部34は、商用電力系統3の周期と同期して周期的に変動する、直流入力電圧検出値Vgの平均値を、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、精度よく求めることができる。
なお、サンプリングの時間間隔Δtは、例えば、商用電力系統3の周期の1/100〜1/1000、或いは、20マイクロ秒〜200マイクロ秒等に設定することができる。
【0046】
なお、平均化処理部34は、期間Lを予め記憶しておくこともできるし、第2電圧センサ25から系統電圧検出値Vaを取得して商用電力系統3の周期に基づいて期間Lを設定することもできる。
また、ここでは、期間Lを商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定したが、期間Lは、少なくとも、商用電力系統3の1/2周期に設定すれば、直流入力電圧検出値Vgの平均値を精度よく求めることができる。直流入力電圧検出値Vgは、上述のように、昇圧回路10、及びインバータ回路11の動作によって、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さで周期的に変動するからである。
よって、期間Lをより長く設定する必要がある場合、商用電力系統3の1/2周期の3倍や4倍といったように、期間Lを商用電力系統3の1/2周期の整数倍に設定すればよい。これによって、周期単位で電圧変動を把握できる。
【0047】
上述したように、昇圧回路電流検出値Iinも、直流入力電圧検出値Vgと同様、商用電力系統3の1/2周期で周期的に変動する。
よって、平均化処理部34は、
図5に示した直流入力電圧検出値Vgと同様の方法によって、昇圧回路電流検出値Iinの平均値も求める。
制御処理部30は、直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値をそれぞれ、期間Lごとに逐次求める。
【0048】
平均化処理部34は、求めた直流入力電圧検出値Vgの平均値及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値を制御処理部30に与える。
【0049】
本実施形態では、上述のように、平均化処理部34が、直流入力電圧検出値Vgの平均値(直流入力電圧平均値〈Vg〉)及び昇圧回路電流検出値Iinの平均値(昇圧回路電流平均値〈Iin〉)を求め、制御処理部30は、これら値を用いて、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御するので、太陽光発電パネル2による直流電流が変動し不安定な場合にも、制御部12は、太陽光発電パネル2からの出力を、インバータ装置1の動作による変動成分を取り除いた直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉として精度よく得ることができる。この結果、MPPT制御を好適に行うことができ、太陽光発電パネル2の発電効率が低下するのを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、上述したように、インバータ装置1の動作によって、太陽光発電パネル2が出力する直流電力の電圧(直流入力電圧検出値Vg)や電流(昇圧回路電流検出値Iin)に変動が生じる場合、その変動周期は、インバータ回路11が出力する交流電力の1/2周期(商用電力系統3の1/2周期)と一致する。
この点、本実施形態では、商用電力系統3の周期長さの1/2の長さに設定された期間Lの間に、直流入力電圧検出値Vg及び昇圧回路電流検出値Iinのそれぞれについて、交流系統の1/2周期よりも短い時間間隔Δtで複数回サンプリングし、その結果から直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を求めたので、直流電流の電圧及び電流が周期的に変動したとしても、できるだけサンプリングの期間を短くしつつ、直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉を精度よく求めることができる。
【0051】
制御処理部30は、上述の入力電力平均値〈Pin〉に基づいて、直流入力電流目標値Ig*を設定し、この設定した直流入力電流目標値Ig*や、上記値に基づいて、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれに対する目標値を求める。
制御処理部30は、求めた目標値を昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33に与え、昇圧回路10及びインバータ回路11それぞれをフィードバック制御する機能を有している。
【0052】
図6は、制御処理部30による昇圧回路10、及びインバータ回路11のフィードバック制御を説明するための制御ブロック図である。
制御処理部30は、インバータ回路11の制御を行うための機能部として、第1演算部41、第1加算器42、補償器43、及び第2加算器44を有している。
また、制御処理部30は、昇圧回路10の制御を行うための機能部として、第2演算部51、第3加算器52、補償器53、及び第4加算器54を有している。
【0053】
図7は、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を示すフローチャートである。
図6に示す各機能部は、
図7に示すフローチャートに示す処理を実行することで、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
以下、
図7に従って、昇圧回路10及びインバータ回路11の制御処理を説明する。
【0054】
まず、制御処理部30は、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求め(ステップS9)、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、直流入力電流目標値Ig*を設定する(ステップS1)。なお、入力電力平均値〈Pin〉は、下記式(1)に基づいて求められる。
入力電力平均値〈Pin〉=〈Iin×Vg〉 ・・・(1)
【0055】
なお、式(1)中、Iinは昇圧回路電流検出値、Vgは直流入力電圧検出値(直流入力電圧値)であり、平均化処理部34によって平均化された値である直流入力電圧平均値〈Vg〉及び昇圧回路電流平均値〈Iin〉が用いられる。
また、式(1)以外の以下に示す制御に関する各式においては、昇圧回路電流検出値Iin、及び直流入力電圧検出値Vgは、平均化されていない瞬時値が用いられる。
また、「〈 〉」は、括弧内の値の平均値を示している。以下同じである。
【0056】
制御処理部30は、設定した直流入力電流目標値Ig*を、第1演算部41に与える。
第1演算部41には、直流入力電流目標値Ig*の他、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaも与えられる。
【0057】
第1演算部41は、下記式(2)に基づいて、インバータ装置1としての出力電流目標値の平均値〈Ia*〉を演算する。ηはインバータ装置1の変換効率を表す定数である。
出力電流目標値の平均値〈Ia*〉=η〈Ig*×Vg〉/〈Va〉 ・・・(2)
【0058】
さらに、第1演算部41は、下記式(3)に基づいて、出力電流目標値Ia*を求める(ステップS2)。
ここで、第1演算部41は、出力電流目標値Ia*を系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求める。
出力電流目標値Ia*=(√2)×〈Ia*〉×sinωt ・・・(3)
【0059】
以上のように、第1演算部41は、入力電力平均値〈Pin〉(直流電力の入力電力値)及び系統電圧検出値Vaに基づいて出力電流目標値Ia*を求める。
次いで、第1演算部41は、下記式(4)に示すように、インバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流目標値Iinv*(インバータ回路の電流目標値)を演算する(ステップS3)。
インバータ電流目標値Iinv*=Ia* + s CaVa ・・・(4)
【0060】
ただし、式(4)中、Caは、コンデンサ23(出力平滑コンデンサ)の静電容量、sはラプラス演算子である。
上記式(4)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Iinv*=Ia* + Ca×(d Va/dt) ・・・(4a)
となる。また、コンデンサ23に流れる電流を検出してこれをIcaとすれば、
Iinv*=Ia* + Ica ・・・(4b)
となる。
式(4),(4a),(4b)中、右辺第2項は、フィルタ回路21のコンデンサ23に流れる電流を考慮して加算した値である。
なお、出力電流目標値Ia*は、上記式(3)に示すように、系統電圧検出値Vaと同位相の正弦波として求められる。つまり、制御処理部30は、インバータ装置1が出力する交流電力の電流Ia(出力電流)が系統電圧(系統電圧検出値Va)と同位相となるようにインバータ回路11を制御する。
【0061】
第1演算部41は、インバータ電流目標値Iinv*を求めると、このインバータ電流目標値Iinv*を第1加算器42に与える。
インバータ回路11は、このインバータ電流目標値Iinv*によって、フィードバック制御される。
【0062】
第1加算器42には、インバータ電流目標値Iinv*の他、現状のインバータ電流検出値Iinvが与えられる。
第1加算器42は、インバータ電流目標値Iinv*と、現状のインバータ電流検出値Iinvとの差分を演算し、その演算結果を補償器43に与える。
【0063】
補償器43は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて演算を行い、さらに第2加算器44によって系統電圧Vaと加算することにより、この差分を収束させインバータ電流検出値Iinvをインバータ電流目標値Iinv*とし得るインバータ電圧参照値Vinv#を求める。このインバータ電圧参照値Vinv#を第1演算部41から与えられるDC/DCコンバータの出力電圧目標値Vo*と比較することにより得られる制御信号をインバータ回路制御部33に与えることで、インバータ回路11に、インバータ電圧参照値Vinv#に従った電圧を出力させる。
インバータ回路11が出力した電圧は、交流リアクトル22に与えられ、新たなインバータ電流検出値Iinvとしてフィードバックされる。そして、第1加算器42によってインバータ電流目標値Iinv*とインバータ電流検出値Iinvとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいてインバータ回路11が制御される。
【0064】
以上のようにして、インバータ回路11は、インバータ電流目標値Iinv*と、インバータ電流検出値Iinvとによって、フィードバック制御される(ステップS4)。
【0065】
一方、第2演算部51には、直流入力電圧検出値Vg、系統電圧検出値Vaの他、第1演算部41が演算したインバータ電流目標値Iinv*が与えられる。
第2演算部51は、下記式(5)に基づいて、インバータ出力電圧目標値Vinv*(インバータ回路の電圧目標値)を演算する(ステップS5)。
インバータ出力電圧目標値Vinv*=Va+ZaIinv* ・・・(5)
【0066】
ただし、式(5)中、Zaは、交流リアクトルのインピーダンス、sはラプラス演算子である。
上記式(5)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Vinv*=Va + RaIinv*+La× (d Iinv*/dt)
・・・(5a)
となる。ただし、Raは交流リアクトルの抵抗、Laは交流リアクトルのインダクタンスで、(Za=Ra+sLa)である。
式(5)の右辺第2項、(5a)の右辺第2項および第3項は、交流リアクトル22の両端に発生する電圧を考慮して加算した値である。
このように、本実施形態では、インバータ装置1が出力する交流電力の電流位相が系統電圧検出値Vaと同位相となるようにインバータ回路11を制御するための電流目標値であるインバータ電流目標値Iinv*に基づいてインバータ出力電圧目標値Vinv*を設定する。
【0067】
上記のように、交流側の目標値であるインバータ回路11の出力目標値(Iinv*,Vinv*)は、インバータ回路11のブリッジ出力端すなわち、インバータ回路11とフィルタ回路21との回路接続点Pで設定される。これにより、本来の系統連系点(商用電力系統3とフィルタ回路21との回路接続点)より目標値の設定点を前に移動し、最終的に適切な系統連系に落ち着くような系統連系が行われる。
【0068】
インバータ出力電圧目標値Vinv*を求めると、下記式(6)に示すように、第2演算部51は、直流電源側の電圧V
DCとしての電圧Vg又は好ましくは下記の直流電圧Vgfと、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値とを比較して、大きい方を昇圧回路電圧目標値Vo*に決定する(ステップS6)。直流電圧Vgfとは、Vgに直流リアクトル15のインピーダンスZによる電圧降下を考慮した電圧であり、昇圧回路電流をIinとして、Vgf=Vg−ZIinである。従って、
Vo*=Max(Vg−ZIin,Vinv*の絶対値) ・・・(6)
とすることができる。
上記式(6)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Vo*=Max(Vg−(RIin+L(d Iin/dt),Vinv*の絶対値)
・・・(6a)
である。ただし、Rは直流リアクトルの抵抗、Lは直流リアクトルのインダクタンスで、(Z=R+sL)である。
【0069】
さらに、第2演算部51は、下記式(7)に基づいて、昇圧回路電流目標値Iin*を演算する(ステップS7)。
昇圧回路電流目標値Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) +(s C Vo*)×Vo*} / (Vg−ZIin)
・・・(7)
【0070】
ただし、式(7)中、Cは、コンデンサ19(平滑コンデンサ)の静電容量、sはラプラス演算子である。
上記式(7)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) +C×(d Vo*/dt)×Vo*} /
{Vg−(R+sL)Iin} ・・・(7a)
となる。また、コンデンサ19に流れる電流を検出してこれをIcとすれば、
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) +Ic×Vo*} / {Vg−ZIin}
・・・(7b)
となる。
【0071】
式(7),(7a),(7b)中、インバータ電流目標値Iinv*と、インバータ出力電圧目標値Vinv*との積に加算されている項は、コンデンサ19を通過する無効電力を考慮した値である。すなわち、インバータ回路11の電力目標値に加えて、無効電力を考慮することにより、より正確にIin*の値を求めることができる。
【0072】
さらに、予めインバータ装置1の電力損失P
LOSSを測定しておけば、上記式(7a)は、以下のようにも表すことができる。
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) + C×(d Vo*/dt)×Vo* + P
LOSS}/{Vg−ZIin} ・・・(7c)
同様に、上記式(7b)は、以下のようにも表すことができる。
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) +Ic×Vo* + P
LOSS} / {Vg−ZIin}
・・・(7d)
この場合、インバータ回路11の電力目標値に加えて、無効電力及び電力損失P
LOSSを考慮することにより、より厳密にIin*の値を求めることができる。
【0073】
なお、コンデンサ19の静電容量C及び電力損失P
LOSSが、(Iinv*×Vinv*)に比べて十分小さい場合、下記式(8)が成立する。この式(8)によって求まるIin*を式(6)、(6a)、(7)、(7a)、(7b)、(7c)および(7d)の右辺に含まれるIinとして用いることができる。
昇圧回路電流目標値Iin*=(Iinv*×Vinv*)/Vg・・・(8)
【0074】
第2演算部51は、昇圧回路電流目標値Iin*を求めると、この昇圧回路電流目標値Iin*を第3加算器52に与える。
昇圧回路10は、この昇圧回路電流目標値Iin*によって、フィードバック制御される。
【0075】
第3加算器52には、昇圧回路電流目標値Iin*の他、現状の昇圧回路電流検出値Iinが与えられる。
第3加算器52は、昇圧回路電流目標値Iin*と、現状の昇圧回路電流検出値Iinとの差分を演算し、その演算結果を補償器53に与える。
【0076】
補償器53は、上記差分が与えられると、比例係数等に基づいて演算を行い、さらに第4加算器54によって直流入力電圧検出値Vgからこれを減算することにより、この差分を収束させ昇圧回路電流検出値Iinを昇圧回路電流目標値Iin*とし得る昇圧回路電圧参照値Vbc#を求める。この昇圧回路電圧参照値Vbc#を第1演算部41から与えられるDC/DCコンバータの出力電圧目標値Vo*と比較することにより得られる制御信号を昇圧回路制御部32に与えることで、昇圧回路10に、昇圧回路電圧参照値Vbc#に従った電圧を出力させる。
昇圧回路10が出力した電力は、直流リアクトル15に与えられ、新たな昇圧回路電流検出値Iinとしてフィードバックされる。そして、第3加算器52によって昇圧回路電流目標値Iin*と昇圧回路電流検出値Iinとの間の差分が再度演算され、上記同様、この差分に基づいて昇圧回路10が制御される。
【0077】
以上のようにして、昇圧回路10は、昇圧回路電流目標値Iin*と、昇圧回路電流検出値Iinとによって、フィードバック制御される(ステップS8)。
【0078】
上記ステップS8の後、制御処理部30は、上記式(1)に基づいて、現状の入力電力平均値〈Pin〉を求める(ステップS9)。
【0079】
制御処理部30は、前回演算時の入力電力平均値〈Pin〉と比較して、入力電力平均値〈Pin〉が最大値となるように(最大電力点に追従するように)、直流入力電流目標値Ig*を設定する。
【0080】
以上によって、制御処理部30は、太陽光発電パネル2に対するMPPT制御を行いつつ、昇圧回路10及びインバータ回路11を制御する。
【0081】
制御処理部30は、上述したように、インバータ回路11及び昇圧回路10を電流目標値によってフィードバック制御する。
図8(a)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電流目標値Iin*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電流検出値Iinをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフであり、(b)は、制御処理部30が上記フィードバック制御において求めた昇圧回路電圧目標値Vo*、及びこれに従って制御した場合の昇圧回路電圧検出値Voをシミュレーションにより求めた結果の一例を示すグラフである。
【0082】
図8(a)に示すように、昇圧回路電流検出値Iinは、制御処理部30によって、昇圧回路電流目標値Iin*に沿って制御されていることが判る。
また、
図8(b)に示すように、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上記式(6)によって求められるため、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間では、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。
昇圧回路電圧検出値Voは、制御処理部30によって、昇圧回路電圧目標値Vo*に沿って制御されていることが判る。
【0083】
図9は、インバータ出力電圧目標値Vinv*の一例を示す図である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。破線は、商用電力系統3の電圧波形を示しており、実線は、インバータ出力電圧目標値Vinv*の波形を示している。
インバータ回路11は、
図7のフローチャートに従った制御によって、
図9に示すインバータ出力電圧目標値Vinv*を電圧目標値として電力を出力する。
よって、インバータ回路11は、
図9に示すインバータ出力電圧目標値Vinv*の波形に従った電圧の電力を出力する。
【0084】
図に示すように、両波は、電圧値及び周波数は互いにほぼ同じであるが、インバータ出力電圧目標値Vinv*の位相の方が、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相している。
【0085】
本実施形態の制御処理部30は、上述のように、昇圧回路10及びインバータ回路11のフィードバック制御を実行する中で、インバータ出力電圧目標値Vinv*の位相を、商用電力系統3の電圧位相に対して約3度進相させている。
インバータ出力電圧目標値Vinv*の位相を商用電力系統3の電圧位相に対して進相させる角度は、数度であればよく、後述するように、商用電力系統3の電圧波形との間で差分を求めたときに得られる電圧波形が、商用電力系統3の電圧波形に対して90度進んだ位相となる範囲で設定される。例えば、0度より大きくかつ10度より小さい値の範囲で設定される。
【0086】
上記進相させる角度は、上記式(5)に示すように、系統電圧検出値Va、交流リアクトル22のインダクタンスLa、及びインバータ電流目標値Iinv*によって定まる。この内、系統電圧検出値Va、交流リアクトル22のインダクタンスLaは、制御対象外の固定値なので、進相させる角度は、インバータ電流目標値Iinv*によって定まる。
インバータ電流目標値Iinv*は、上記式(4)に示すように、出力電流目標値Ia*によって定まる。この出力電流目標値Ia*が大きくなるほど、インバータ電流目標値Iinv*における進相した成分が増加し、インバータ出力電圧目標値Vinv*の進み角(進相させる角度)が大きくなる。
【0087】
出力電流目標値Ia*は、上記式(2)から求められるため、上記進相させる角度は、直流入力電流目標値Ig*によって調整される。
【0088】
〔1.3 昇圧回路及びインバータ回路の制御について〕
昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング素子Qbを制御する。また、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4を制御する。
【0089】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、それぞれ昇圧回路用搬送波及びインバータ回路用搬送波を生成し、これら搬送波を制御処理部30から与えられる目標値である昇圧回路電圧参照値Vbc#、及びインバータ電圧参照値Vinv#で変調し、各スイッチング素子を駆動するための駆動波形を生成する。
【0090】
昇圧回路制御部32及びインバータ回路制御部33は、上記駆動波形に基づいて各スイッチング素子を制御することで、昇圧回路電流目標値Iin*、及びインバータ電流目標値Iinv*に近似した電流波形の交流電力を昇圧回路10及びインバータ回路11に出力させる。
【0091】
図10(a)は、昇圧回路用搬送波と、昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図10(a)では、理解容易とするために、昇圧回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
昇圧回路制御部32が生成する昇圧回路用搬送波は、極小値が「0」である三角波であり、振幅A1が制御処理部30から与えられる昇圧回路電圧目標値Vo*とされている。
また、昇圧回路用搬送波の周波数は、制御処理部30による制御命令によって、所定のディーティ比となるように、昇圧回路制御部32によって設定される。
【0092】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、昇圧回路用搬送波の振幅A1も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0093】
なお、本実施形態では、直流入力電圧検出値Vgが、250ボルトであり、商用電力系統3の電圧振幅が288ボルトであるとする。
【0094】
昇圧回路電圧参照値Vbc#の波形(以下、昇圧回路用参照波Vbc#ともいう)は、制御処理部30が昇圧回路電流目標値Iin*に基づいて求める値であり、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vgよりも大きな期間W1において、正の値となっている。昇圧回路用参照波Vbc#は、期間W
1では、昇圧回路電圧目標値Vo*が成す波形状と近似するような波形となっており、昇圧回路用搬送波に対して交差している。
【0095】
昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波と昇圧回路用参照波Vbc#とを比較し、直流リアクトル15の両端電圧の目標値である昇圧回路用参照波Vbc#が昇圧回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形を生成する。
【0096】
図10(b)は、昇圧回路制御部32が生成したスイッチング素子Qbを駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図10(a)の横軸と一致するように示している。
この駆動波形は、スイッチング素子Qbのスイッチング動作を示しており、スイッチング素子Qbに与えることで、当該駆動波形に従ったスイッチング動作を実行させることができる。駆動波形は、電圧が0ボルトでスイッチング素子のスイッチをオフ、電圧がプラス電圧でスイッチング素子のスイッチをオンとする制御命令を構成している。
【0097】
昇圧回路制御部32は、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Qbを制御する。
また、各パルス幅は、三角波である昇圧回路用搬送波の切片によって定まる。よって、電圧が高い部分ほどパルス幅が大きくなっている。
【0098】
以上のように、昇圧回路制御部32は、昇圧回路用搬送波を昇圧回路用参照波Vbc#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。昇圧回路制御部32は、生成した駆動波形に基づいて昇圧回路10のスイッチング素子QbをPWM制御する。
【0099】
ダイオード16に並列にダイオードの順方向に導通するスイッチング素子Qbuを設置する場合、スイッチング素子Qbuは、スイッチング素子Qbの駆動波形と反転した駆動波形を用いる。ただし、スイッチング素子Qbとスイッチング素子Qbuが同時に導通することを防ぐため、スイッチング素子Qbuの駆動パルスがオフからオンに移行するときに1マイクロ秒程度のデッドタイムを設ける。
【0100】
図11(a)は、インバータ回路用搬送波と、インバータ電圧参照値Vinv#の波形とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。なお、
図11(a)においても、理解容易とするために、インバータ回路用搬送波の波長を実際よりも長くして示している。
【0101】
インバータ回路制御部33が生成するインバータ回路用搬送波は、振幅中央が0ボルトの三角波であり、その片側振幅が、昇圧回路電圧目標値Vo*(コンデンサ23の電圧目標値)に設定されている。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2は、直流入力電圧検出値Vgの2倍(500ボルト)の期間と、商用電力系統3の電圧の2倍(最大576ボルト)の期間とを有している。
また、周波数は、制御処理部30による制御命令等によって、所定のデューティ比となるように、インバータ回路制御部33によって設定される。
【0102】
なお、昇圧回路電圧目標値Vo*は、上述したように、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1では、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値に倣い、それ以外の期間である期間W2では直流入力電圧検出値Vgに倣うように変化している。よって、インバータ回路用搬送波の振幅A2も昇圧回路電圧目標値Vo*に応じて変化している。
【0103】
インバータ電圧参照値Vinv#の波形(以下、インバータ回路用参照波Vinv#ともいう)は、制御処理部30がインバータ電流目標値Iinv*に基づいて求める値であり、概ね商用電力系統3の電圧振幅(288ボルト)と同じに設定されている。よって、インバータ回路用参照波Vinv#は、電圧値が−Vg〜+Vgの範囲の部分で、
インバータ回路用搬送波に対して交差している。
【0104】
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波とインバータ回路用参照波Vinv#とを比較し、電圧目標値であるインバータ回路用参照波Vinv#がインバータ回路用搬送波以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子Q1〜4を駆動するための駆動波形を生成する。
【0105】
図11(b)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q1を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。横軸は、
図11(a)の横軸と一致するように示している。
インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#の電圧が−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q1を制御する。
【0106】
図11(c)は、インバータ回路制御部33が生成したスイッチング素子Q3を駆動するための駆動波形である。図中、縦軸は電圧、横軸は時間である。
インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q3については、図中破線で示しているインバータ回路用参照波Vinv#の反転波と、搬送波とを比較して駆動波形を生成する。
この場合も、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用参照波Vinv#(の反転波)の電圧が、−Vg〜+Vgの範囲W2でスイッチング動作が行われるように駆動波形を生成する。よって、それ以外の範囲では、スイッチング動作を停止させるようにスイッチング素子Q3を制御する。
【0107】
なお、インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q2の駆動波形については、スイッチング素子Q1の駆動波形を反転させたものを生成し、スイッチング素子Q4の駆動波形については、スイッチング素子Q3の駆動波形を反転させたものを生成する。
【0108】
以上のように、インバータ回路制御部33は、インバータ回路用搬送波をインバータ回路用参照波Vinv#で変調し、スイッチングのためのパルス幅を表した駆動波形を生成する。インバータ回路制御部33は、生成した駆動波形に基づいてインバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4をPWM制御する。
【0109】
本実施形態の昇圧回路制御部32は、直流リアクトル15に流れる電流が昇圧回路電流目標値Iin*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、概ね直流入力電圧検出値Vg以上となる期間W1(
図10)で昇圧回路10にスイッチング動作を行わせる。昇圧回路10は、期間W1で直流入力電圧検出値Vg以上の電圧をインバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値に近似するように電力を出力する。一方、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が概ね直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路制御部32は、昇圧回路10のスイッチング動作を停止させる。よって、直流入力電圧検出値Vg以下の期間では、昇圧回路10は、太陽光発電パネル2が出力する直流電力の直流入力電圧値を昇圧することなくインバータ回路11に出力する。
【0110】
また、本実施形態のインバータ回路制御部33は、交流リアクトル22に流れる電流が、インバータ電流目標値Iinv*に一致するように電力を出力させる。この結果、インバータ出力電圧目標値Vinv*が概ね−Vg〜+Vgの期間W2(
図11)でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。つまり、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が直流入力電圧検出値Vg以下の期間でインバータ回路11にスイッチング動作を行わせる。
よって、インバータ回路11は、昇圧回路10がスイッチング動作を停止している間、スイッチング動作を行い、インバータ出力電圧目標値Vinv*に近似する交流電力を出力する。
なお、インバータ回路用参照波Vinv#と、インバータ出力電圧目標値Vinv*とは近似するので、
図11(a)においては重複している。
【0111】
一方、インバータ出力電圧目標値Vinv*の電圧が概ね−Vg〜+Vgの期間W2以外の期間では、インバータ回路制御部33は、インバータ回路11のスイッチング動作を停止させる。この間、インバータ回路11には、昇圧回路10により昇圧された電力が与えられる。よって、スイッチング動作を停止しているインバータ回路11は、昇圧回路10から与えられる電力を降圧することなく出力する。
【0112】
つまり、本実施形態のインバータ装置1は、昇圧回路10とインバータ回路11とを交互に切り替わるようにスイッチング動作させ、それぞれが出力する電力を重ね合わせることで、インバータ出力電圧目標値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を出力する。
【0113】
このように、本実施形態では、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも高い部分の電圧を出力する際には昇圧回路10を動作させ、インバータ出力電圧目標値Vinv*の絶対値が、直流入力電圧検出値Vgよりも低い部分の電圧を出力する際にはインバータ回路11を動作させるように制御される。よって、インバータ回路11が、昇圧回路10によって昇圧された電力を降圧することがないので、電圧を降圧する際の電位差を低く抑えることができるため、昇圧回路のスイッチングによる損失を低減し、より高効率で交流電力を出力することができる。
さらに、昇圧回路10及びインバータ回路11は、共に制御部12が設定したインバータ出力電圧目標値Vinv*に基づいて動作するため、交互に切り替わるように出力される昇圧回路の電力と、インバータ回路の電力との間で、ずれや歪が生じるのを抑制することができる。
【0114】
図12は、参照波、及びスイッチング素子の駆動波形の一例とともに、インバータ装置1が出力する交流電力の電流波形の一例を示した図である。
図12において、最上段から順に、インバータ回路の参照波Vinv#及び搬送波、スイッチング素子Q1の駆動波形、昇圧回路の参照波Vbc#及び搬送波、スイッチング素子Qbの駆動波形、及びインバータ装置1が出力する交流電力の電流波形の目標値及び実測値を示すグラフを表している。これら各グラフの横軸は、時間を示しており、互いに一致するように示している。
【0115】
図に示すように、出力電流の実測値Iaは目標値Ia*と一致するように制御されていることが判る。
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbのスイッチング動作の期間と、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作の期間とは、概ね互いに交互に切り替わるように制御されていることが判る。
【0116】
また、本実施形態では、
図8(a)に示すように、
昇圧回路は直流リアクトル15を流れる電流が上記式(7)に基づいて求められる電流目標値Iin*に一致するように制御される。この結果、昇圧回路とインバータ回路の電圧が、
図8(b)に示す波形となり、昇圧回路10、及びインバータ回路11の高周波スイッチング動作にそれぞれ停止期間があり、概ね交互にスイッチング動作を行う運転が可能になる。
【0117】
なお、理想的には昇圧回路10とインバータ回路11とで「交互に」高周波スイッチングを行い、高周波スイッチングの時期が重ならないことが好ましいが、実際には若干の重なりが生じても、それぞれの停止期間があれば、損失は低減され、高効率化に寄与する。
【0118】
〔1.4 出力される交流電力の電流位相について〕
本実施形態の昇圧回路10及びインバータ回路11は、制御部12による制御によって、インバータ出力電圧目標値Vinv*に近似した電圧波形の交流電力を、その後段に接続されたフィルタ回路21に出力する。インバータ装置1は、フィルタ回路21を介して商用電力系統3に交流電力を出力する。
【0119】
ここで、インバータ出力電圧目標値Vinv*は、上述したように、制御処理部30によって商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相として生成される。
従って、昇圧回路10及びインバータ回路11が出力する交流電圧も、商用電力系統3の電圧位相に対して数度進相した電圧位相とされる。
【0120】
すると、フィルタ回路21の交流リアクトル22(
図2)の両端には、一方が昇圧回路10及びインバータ回路11の交流電圧、他方が商用電力系統3と、互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかることなる。
【0121】
図13(a)は、インバータ回路11から出力された交流電圧、商用電力系統3、及び交流リアクトル22の両端電圧、それぞれの電圧波形を示したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。
図に示すように、交流リアクトル22の両端が互いに数度電圧位相がずれた電圧がかかると、交流リアクトル22の両端電圧は、交流リアクトル22の両端にかかる互いに数度電圧位相がずれた電圧同士の差分となる。
【0122】
よって、図に示すように、交流リアクトル22の両端電圧の位相は、商用電力系統3の電圧位相に対して90度進んだ位相となる。
【0123】
図13(b)は、交流リアクトル22に流れる電流波形を示したグラフである。図中、縦軸は電流、横軸は時間を示している。横軸は、
図13(a)の横軸と一致するように示している。
交流リアクトル22の電流位相は、その電圧位相に対して90度遅延する。よって、図に示すように、交流リアクトル22を通して出力される交流電力の電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対して同期することとなる。
【0124】
従って、インバータ回路11が出力する電圧位相は、商用電力系統3に対して数度進相しているが、電流位相は、商用電力系統3の電流位相に対して一致する。
よって、
図12の最下段に示すグラフのように、インバータ装置1が出力する電流波形は、商用電力系統3の電圧位相と一致したものとなる。
この結果、商用電力系統3の電圧と同位相の交流電流を出力することができるので、当該交流電力の力率が低下するのを抑制することができる。
【0125】
図22(a)は第1実施形態に係るインバータ装置1の交流出力波形の一例である。この場合の昇圧回路電流目標値Iin*は、例えば式(7)により与えられる。
このように、系統電圧に同期した正弦波状の交流出力電流が得られている。このときの力率は0.997、総合電流歪率は4.6%であり、それぞれ一般に0.95以上、5%以下とされる系統連系の基準値に適合している。なお、その他、2次歪率は2.6%(3%以下に適合)、3次歪率は2.9%(3%以下に適合)、5次歪率は0.3%(3%以下に適合)となっている。
【0126】
一方、
図22(b)は前述の特許文献2に記載されている以下の式(9)で規定される昇圧回路電流目標値に従ってインバータ装置1を制御したときに得られる交流出力波形の一例である。
Iin*=Ia*×Va/Vg ・・・(9)
このとき交流出力電流はピークが明らかに歪んだ波形となっており、力率は0.947(0.95以上に不適合)、総合電流歪率は8.3%(5%以下に不適合)であり、いずれも上記の系統連系の基準値に適合しない。また、その他、2次歪率は3.5%(3%以下に不適合)、3次歪率は4.3%(3%以下に不適合)、5次歪率は4.6%(3%以下に不適合)となっている。
【0127】
〔2. 第2実施形態〕
図14は、第2実施形態に係るインバータ装置1の回路図の一例である。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4としてIGBTを用いている点である。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0128】
本実施形態では、インバータ回路制御部33が上記第1実施形態で用いたインバータ回路用搬送波と異なる搬送波を用いる。
図15は、第2実施形態におけるインバータ回路用搬送波と、参照波とを比較したグラフである。図中、縦軸は電圧、横軸は時間を示している。
参照波、及び昇圧回路用搬送波は、第1実施形態と同様である。
一方、本実施形態のインバータ回路用搬送波は、下限値が0ボルト、上限値が昇圧回路電圧目標値Vo*に設定された三角波である。
またこの場合、インバータ回路制御部33は、スイッチング素子Q1の駆動波形については、インバータ回路用参照波Vinv#とインバータ回路用搬送波との比較によって生成し、スイッチング素子Q3の駆動波形については、インバータ回路用参照波Vinv#の反転波とインバータ回路用搬送波との比較によって生成する。
【0129】
本実施形態の場合も、インバータ回路制御部33(昇圧回路制御部32)は、インバータ回路用搬送波(昇圧回路用搬送波)とインバータ回路用参照波Vinv#とを比較し、電圧目標値であるインバータ回路用参照波Vinv#(又は反転波)がインバータ回路用搬送波(昇圧回路用搬送波)以上となる部分でオン、搬送波以下となる部分でオフとなるように、スイッチング素子を駆動するための駆動波形を生成する。
【0130】
図16は、第2実施形態における、各スイッチング素子Qb、Q1〜Q4の駆動波形の一例とともに、インバータ装置1が出力する交流電力の電流波形の一例を示した図である。
図16において、最上段から順に、スイッチング素子Q1の駆動波形、スイッチング素子Q4の駆動波形、スイッチング素子Q3の駆動波形、スイッチング素子Q2の駆動波形、スイッチング素子Qbの駆動波形、及びインバータ装置1が出力する交流電力の電流波形を示すグラフを表している。これら各グラフの横軸は、時間を示しており、互いに一致するように示している。
【0131】
本実施形態では、インバータ回路用参照波Vinv#の電圧が−Vg〜+Vgの範囲において、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q3とがスイッチングを行うように制御される。
本実施形態においても、図に示すように、昇圧回路10のスイッチング素子Qbのスイッチング動作の期間と、インバータ回路11のスイッチング素子Q1〜Q4のスイッチング動作の期間とは、互いに交互に切り替わるように制御されていることが判る。
【0132】
また、本実施形態のインバータ装置1が出力する交流電力の電流波形は、
図16に示すように、商用電力系統3の電圧位相と一致したものとなっている。よって、上記第1実施形態と同様に、商用電力系統3に対して電流位相が同位相の交流電力を出力することができ、当該交流電力の力率が低下するのを抑制することができる。
【0133】
〔3. 第3実施形態〕
図17は、第3実施形態に係るインバータ装置1の回路図の一例である。
本実施形態と第1実施形態との相違点は、昇圧回路10とインバータ回路11の間の中間電圧を検出する第3電圧センサ27を備えている点である。その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0134】
上記第1実施形態では、昇圧回路電圧目標値Vo*(中間電圧の目標値)を搬送波の振幅としたが、本実施形態では、第3電圧センサ27で検出した電圧検出値Voを搬送波の振幅に用いる。
【0135】
図18は、第3実施形態における、参照波、及びスイッチング素子の駆動波形の一例とともに、インバータ装置1が出力する交流電力の電流波形の一例を示した図である。
図18において、最上段から順に、インバータ回路の参照波Vinv#及び搬送波、スイッチング素子Q1の駆動波形、昇圧回路の参照波Vbc#及び搬送波、スイッチング素子Qbの駆動波形、及びインバータ装置1が出力する交流電力の電流波形の目標値Ia*及び実測値Iaを示すグラフを表している。これら各グラフの横軸は、時間を示しており、互いに一致するように示している。
【0136】
図に示すように、本実施形態においても、出力電流の実測値Iaは目標値Ia*と一致するように制御されていることが判る。
また、昇圧回路10のスイッチング素子Qbのスイッチング動作の期間と、インバータ回路11のスイッチング素子Q1のスイッチング動作の期間とは、概ね互いに交互に切り替わるように制御されていることが判る。
【0137】
また、本実施形態のように、搬送波の振幅に電圧検出値Voを用いることによって、太陽光発電パネル2、あるいは商用電力系統3の電圧が変動したときの応答がより速くなり、インバータ装置1の出力電流を安定化することができる。
【0138】
〔4. 付記〕
なお、上記実施形態における各シミュレーションについては、実機を用いた検証によっても同様の結果が得られることが確認されている。
【0139】
《交流から直流への変換装置》
〔全体構成について〕
次に、交流から直流への電力変換を行う変換装置1Rの一実施形態について説明する。
図19は、このような変換装置1Rを備えた蓄電システムの一例を示すブロック図である。図中、変換装置1Rの出力端には、蓄電池2が接続され、入力端には商用電力系統3(交流系統)が接続されている。この蓄電システムは、商用電力系統3から提供される電力を、交流から直流に変換して、蓄電池2に蓄えることができる。
【0140】
変換装置1Rは、商用電力系統3から受電した交流を直流に変換するAC/DCコンバータ11uと、AC/DCコンバータ11uの出力電圧を降圧する降圧回路(DC/DCコンバータ)10dと、これら両回路10
d,11
uの動作を制御する制御部12とを備えている。
図1との比較により明らかなように、エネルギーの流れが逆方向になっている。
【0141】
図20は、変換装置1Rの回路図の一例である。
図2,
図14,
図17(以下、
図2等という。)との違いは、まず、
図2等における太陽光発電パネル2が蓄電池2Bに置き換わっている点である。また、変換装置1Rとしては、
図2等の昇圧回路10が降圧回路10dに置き換わり、
図2等ではインバータ回路11であった回路が、構成要素は同じであるが、交流リアクトル22と協働して昇圧も可能なAC/DCコンバータ11uになる。
【0142】
降圧回路10dは、
図2等と同様のダイオード16と並列に、スイッチング素子Qb2を用いている。スイッチング素子Qb2としては、例えば、図示のIGBT又は、FETを用いることができる。
【0143】
変換装置1Rのその他の構成は、
図2等のインバータ装置1と基本的に同様である。従って、この変換装置1Rは双方向性があり、太陽光発電パネルを接続すれば
図2等のインバータ装置1と同じ動作を行うことができる。また、蓄電池2Bの直流電力を交流電力に変換して自立運転を行うこともできる。
なお、変換装置1Rがインバータ装置として動作する場合は、スイッチング素子Qb2は、常時オフの状態となるか(IGBTの場合)又は、スイッチング素子Qbと交互にオン動作するように(FETの場合)、制御部12により制御される。また、降圧回路10dは昇圧回路になり、AC/DCコンバータ11uはインバータ回路となる。
【0144】
商用交流系統3の交流電力に基づいて蓄電池2Bを充電する場合、制御部12は、各スイッチング素子Q1〜Q4の動作を制御し、同期整流をすることができる。また、交流リアクトル22が存在する下でPWM制御を行うことにより、昇圧しつつ整流を行うことができる。こうして、AC/DCコンバータ11uは、商用交流系統3から与えられる交流電力を直流電力に変換する。
【0145】
降圧回路10dは、降圧チョッパ回路を構成している。スイッチング素子Qb,Qb2は、制御部12によって制御される。
また、降圧回路10dのスイッチング動作は、AC/DCコンバータ11uとの間でスイッチング動作を行う期間が交互に切り替わるように制御される。よって、降圧回路10dは、スイッチング動作を行っている期間には、降圧した電圧を蓄電池2Bに出力し、スイッチング動作を停止(スイッチング素子Qbがオフ、Qb2がオン)している期間は、AC/DCコンバータ11uが出力して降圧回路10dに入力した直流電圧を、直流リアクトル15を介して蓄電池2に与える。
【0146】
〔電圧波形の概要〕
図21は、変換装置1Rの動作を概念的に示した電圧波形の図である。
(a)は、AC/DCコンバータ11uへの交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値の一例を示す。これは、概ね、商用交流の全波整流波形である。二点鎖線は、充電のための直流電圧Vgを示す。(b)に示すように、直流電圧Vgの方が交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値より高い区間(t0〜t1,t2〜t3,t4〜)では、AC/DCコンバータ11uがスイッチング動作し、交流リアクトル22との協働により昇圧動作する。
【0147】
一方、これらの区間(t0〜t1,t2〜t3,t4〜)において降圧回路10dはスイッチング素子Qbがオフ、Qb2がオンの状態となり、降圧動作は停止している。なお、(b)に示す細いストライプは、実際にはPWMパルス列であり、交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値に応じてデューティが異なる。従って、仮に、この状態の電圧がDC/DCコンバータに印加されたとすると、DC/DCコンバータの入力電圧、すなわちコンデンサ19の電圧は(c)に示すような波形となる。
【0148】
一方、直流電圧Vgの方が交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値より低い区間(t1〜t2,t3〜t4)では、AC/DCコンバータ11uはスイッチングを停止し、代わりに、降圧回路10
dが動作する。なお、ここで言うスイッチングとは、例えば20kHz程度の高周波スイッチングを意味し、同期整流を行う程度(商用周波数の2倍)の低周波なスイッチングのことではない。なお、AC/DCコンバータ11uのスイッチング停止によりスイッチング素子Q1〜Q4が全てオフであるとしても、各スイッチング素子Q1〜Q4の内蔵ダイオードを通して整流された電圧が降圧回路10dに入力される。但し、導通損失を低減するためには、同期整流を行うことが好ましい。
【0149】
同期整流を行う場合のAC/DCコンバータ11uは、制御部12の制御により、AC/DCコンバータ11uの電流の符号が正の期間では、スイッチング素子Q1,Q4をオン、スイッチング素子Q2,Q3をオフとし、また、AC/DCコンバータ11uの電流の符号が負の期間では、これらのオン/オフを反転する。この反転の周波数は、商用周波数の2倍であるため、高周波スイッチングに比べると、周波数が非常に小さい。従って、オン/オフによる損失も極めて少ない。
【0150】
一方、上記の区間(t1〜t2,t3〜t4)において降圧回路10dは降圧動作する。(d)に示す細いストライプは、実際にはPWMパルス列であり、交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値に応じてデューティが異なる。降圧の結果、(e)に示す所望の直流電圧Vgが得られる。
【0151】
以上のように、交流電圧に基づく交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値が直流電圧Vgより低い期間のみAC/DCコンバータ11uが動作し、その他の期間ではスイッチングを停止させることで、AC/DCコンバータ11uのスイッチング損失を低減することができる。
同様に、交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値が直流電圧Vgより高い期間のみ降圧回路10dが動作し、その他の期間ではスイッチングを停止させることで、降圧回路10dのスイッチング損失を低減することができる。
【0152】
こうして、AC/DCコンバータ11uと降圧回路10dとが、交互にスイッチング動作することになり、一方が動作するときは他方はスイッチングを停止している。すなわちAC/DCコンバータ11u及び降圧回路10dのそれぞれに、スイッチングの停止期間が生じる。また、AC/DCコンバータ11uは、交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値のピーク及びその近傍を避けて動作することになるので、スイッチングを行う際の電圧が相対的に低くなる。このことも、スイッチング損失の低減に寄与する。こうして、変換装置1R全体としてのスイッチング損失を大幅に低減することができる。
【0153】
〔制御の仕様〕
上記変換装置1Rの制御は、
図2等のインバータ装置1による系統連系の制御を逆方向に見た類似の制御として考えることができる。これは、インバータ装置1と同じ系統連系をさせ得る変換装置1Rを用いて、逆方向の動作においても変換装置1Rの効率を高めることに好適な制御である。
【0154】
インバータ装置1における諸量とそれぞれ対応する変換装置1Rにおける諸量は、以下のようになる。
Ia*:商用電力系統3からの入力電流目標値
Iin:降圧回路電流検出値
Iin*:降圧回路電流目標値
Iinv*:AC/DCコンバータ11uへの交流入力電流目標値
Ig*:蓄電池2Bへの直流入力電流目標値
Ic:コンデンサ19に流れる電流
Ica:コンデンサ23に流れる電流
【0155】
Va:系統電圧検出値
Vg:蓄電池電圧値
Vinv*:AC/DCコンバータ11uへの交流入力電圧目標値
Vo*:降圧回路10dへの入力電圧目標値
Pin:蓄電池2Bへの入力電力
P
LOSS:変換装置1Rの電力損失
η:変換装置1Rの電力変換効率
【0156】
従って、
図2等のインバータ装置1における前述の式(1)〜(8)と対応した以下の関係が適用できる。
式(1)と対応する蓄電池2Bへの入力電力Pinの平均値〈Pin〉は、
〈Pin〉=〈Iin×Vg〉 ・・・(R1)
である。
式(2)に対応する商用電力系統3からの入力電流目標値の平均値〈Ia*〉は、
〈Ia*〉=〈Ig*×Vg〉/(η×〈Va〉) ・・・(R2)
である。
式(3)に対応する入力電流目標値Ia*は、
Ia*=(√2)×〈Ia*〉×sinωt ・・・(R3)
である。
【0157】
式(4)に対応する交流入力電流目標値Iinv*は、
Iinv*=Ia* − s CaVa ・・・(R4)
である。
上記式(R4)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Iinv*=Ia* − Ca×(d Va/dt) ・・・(R4a)
となる。また、コンデンサ23に流れる電流を検出してこれをIcaとすれば、
Iinv*=Ia* − Ica ・・・(R4b)
となる。
【0158】
また、式(5)に対応する交流入力電圧目標値Vinv*は、
Vinv*=Va−Za Iinv* ・・・(R5)
である。
上記式(R5)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Vinv*=Va − {RaIinv*+La× (d Iinv*/dt) ・・・(R5a)
となる。
【0159】
上記のように、交流側の目標値であるAC/DCコンバータ11uへの入力目標値(Iinv*,Vinv*)は、AC/DCコンバータ11uとフィルタ回路21との回路接続点Pで設定される。従って、系統連系を行う場合と同様に、商用電力系統3と変換装置1Rの回路接続点より目標値の設定点を前(AC/DCコンバータ11u側)に移動していることになる。このような、いわば「逆」系統連系により、交流と直流との適切な連系が行われる。
【0160】
また、式(6)に対応する降圧回路10dへの入力電圧目標値Vo*は、式(6)におけるVgfすなわち(Vg−Z Iin)が、Vgrすなわち(Vg+Z Iin)に置き換わり、
Vo*=Max(Vg+Z Iin,Vinv*の絶対値) ・・・(R6)
とすることができる。
上記式(R6)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Vo*=
Max(Vg+R Iin+L(d Iin/dt),Vinv*の絶対値)
・・・(R6a)
となる。
【0161】
また、降圧回路電流目標値Iin*は、
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*)−(s C Vo*)×Vo*} /
(Vg+ZIin) ・・(R7)
である。
上記式(R7)は、時間tでの微分を用いた表現とすれば、
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) − C×(d Vo*/dt)×Vo*} /
{Vg+RIin+L(dIin/dt)) ・・・(R7a)
となる。また、コンデンサ19に流れる電流を検出してこれをIcとすれば、
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) −Ic×Vo*} / (Vg+ZIin)
・・・(R7b)
となる。
【0162】
式(R7),(R7a),(R7b)中、交流入力電流目標値Iinv*と、交流入力電圧目標値Vinv*との積に加算されている項は、コンデンサ19を通過する無効電力を考慮した値である。すなわち、AC/DCコンバータ11uの電力目標値に加えて、無効電力を考慮することにより、より正確にIin*の値を求めることができる。
【0163】
さらに、予め変換装置1Rの電力損失P
LOSSを測定しておけば、上記式(R7a)は、以下のようにも表すことができる。
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) − C×(d Vo*/dt)×Vo* − P
LOSS}/(Vg+ZIin) ・・・(R7c)
同様に、上記式(R7b)は、以下のようにも表すことができる。
Iin*=
{(Iinv*×Vinv*) −Ic×Vo* − P
LOSS} / (Vg+ZIin)
・・・(R7d)
この場合、AC/DCコンバータ11uの電力目標値に加えて、無効電力及び電力損失P
LOSSを考慮することにより、より厳密にIin*の値を求めることができる。
【0164】
なお、コンデンサ19の静電容量C及び電力損失P
LOSSが、(Iinv*×Vinv*)に比べて十分小さい場合、下記式(R8)が成立する。この式(R8)によって求まるIin*を式(R6)、(R6a)、(R7)、(R7a)、(R7b)、(R7c)および(R7d)の右辺に含まれるIinとして用いることができる。
Iin*=(Iinv*×Vinv*)/Vg・・・(R8)
【0165】
以上のようにして、制御部12は、AC/DCコンバータ11uへの交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値が、直流電圧(Vg+Z Iin)よりも高い部分の電圧を出力する際には、降圧回路10dを動作させ、AC/DCコンバータ11uのへ交流入力電圧目標値Vinv*の絶対値が、直流電圧(Vg+Z Iin)よりも低い部分の電圧を出力する際にはAC/DCコンバータ11uを動作させるように制御される。そのため、AC/DCコンバータ11uによって昇圧する際の電位差を低く抑えることができるとともに、AC/DCコンバータ11u及び降圧回路10dのスイッチング損失を低減し、より高効率で直流電力を出力することができる。
【0166】
さらに、降圧回路10d及びAC/DCコンバータ11uは、ともに制御部12が設定した目標値に基づいて動作するため、両回路の高周波スイッチング期間が交互に切り替わるように動作を行っても、AC/DCコンバータ11uに入力される交流電流に位相ずれや歪みが生じるのを抑制することができる。
【0167】
また、前述のように、変換装置IRは、
図2等のインバータ装置1と同様の系統連系の動作を行わせることができる。従って、系統連系を行う直流/交流の変換、及び、交流/直流の変換の双方向に使用可能で効率の良い変換装置を実現することができる。
【0168】
〔その他〕
なお、
図20では、AC/DCコンバータ11uを構成するスイッチング素子としてFETを用いた例を示したが、
図14のようにFETに代えてIGBTを用いることもできる。但し、IGBTでは同期整流ができない。従って、AC/DCコンバータ11uの高周波スイッチング停止状態では、素子内蔵のダイオードによって、フルブリッジ整流回路として動作することになる。
【0169】
《補記》
なお、
図2,
図14,
図20の回路構成において、DC/DCコンバータ10に含まれる半導体スイッチング素子の少なくとも1つ、及び、DC/ACインバータ11(又はAC/DCコンバータ11u)に含まれる半導体スイッチング素子に、SiC素子を用いることが望ましい。
上述の変換装置1は、高周波スイッチングの回数を低減することによって半導体素子のスイッチング損失と直流リアクトル15及び交流リアクトル22の鉄損を低減することができるが、半導体素子の導通損失まで低減することはできない。この点、半導体素子としてSiC素子を用いれば導通損失を低減することができるため、上述のように制御される変換装置1にSiC素子を用いることで、両者の相乗効果により、高い変換効率を得ることができる。
【0170】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。