特許第6327151号(P6327151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6327151ポリカーボネート樹脂、その製造方法および光学成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327151
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂、その製造方法および光学成形体
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/16 20060101AFI20180514BHJP
   C08G 64/30 20060101ALI20180514BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   C08G64/16
   C08G64/30
   G02B1/04
【請求項の数】22
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2014-545696(P2014-545696)
(86)(22)【出願日】2013年11月1日
(86)【国際出願番号】JP2013079762
(87)【国際公開番号】WO2014073496
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-245124(P2012-245124)
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-109936(P2013-109936)
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-113966(P2013-113966)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】石塚 裕人
(72)【発明者】
【氏名】西村 喜男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宣之
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 晃司
(72)【発明者】
【氏名】石原 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】白武 宗憲
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−072872(JP,A)
【文献】 特開2008−111047(JP,A)
【文献】 特開平10−007782(JP,A)
【文献】 特開平11−269259(JP,A)
【文献】 特開2005−292184(JP,A)
【文献】 特開平06−025395(JP,A)
【文献】 特開平06−025398(JP,A)
【文献】 特開平07−198901(JP,A)
【文献】 特開平08−109249(JP,A)
【文献】 特開平09−302077(JP,A)
【文献】 特開平10−101787(JP,A)
【文献】 特開平07−109342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00 − 64/42
C08G 63/00 − 63/91
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)で表される構成単位と、一般式(B)で表される構成単位とを含むポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【化2】
(式(B)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【請求項2】
構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比(A/B)が20/80以上99/1以下の範囲である請求項記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
構成単位(A)が下記式
【化3】
で表される構成単位(A1)である請求項またはに記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
構成単位(B)が下記式
【化4】
で表される構成単位(B1)である請求項のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
構成単位(B)が下記式
【化5】
で表される構成単位(B2)である請求項のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項6】
屈折率nDが1.640〜1.680であり且つアッベ数νが24以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項7】
配向複屈折Δnが1.0×10−3以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項8】
昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上である請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項9】
請求項のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化6】
(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【請求項10】
一般式(C)および一般式(D)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む請求項記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化7】
(式(D)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【請求項11】
一般式(C)および一般式(D)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルの反応は、一般式(C)および一般式(D)で表される化合物および炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う、請求項10記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項12】
一般式(A)で表される構成単位と、一般式(B’)で表される構成単位とを含むポリカーボネート樹脂。
【化8】
(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【化9】
(式(B’)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【請求項13】
一般式(A)で表される構成単位が全構成単位中1〜99mol%である請求項12記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項14】
屈折率nDが1.640〜1.680であり且つアッベ数νが24以下である請求項12または13に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項15】
配向複屈折Δnが1.0×10−3以下である請求項1214のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項16】
昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上である請求項1215のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項17】
請求項1216のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化10】
(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【請求項18】
一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む請求項17記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化11】
(式(D’)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【請求項19】
前記一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルの反応は、一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物および炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物の留去をせずに滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う請求項18記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜8および12〜16のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を含む光学成形体。
【請求項21】
請求項1〜8および12〜16のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を含む光学レンズ。
【請求項22】
請求項1〜8および12〜16のいずれか一項に記載のポリカーボネート樹脂を含む光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂およびその製造方法に関する。また、本発明は、ポリカーボネート樹脂を含む光学成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
<背景技術1>
カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料として、光学ガラスあるいは光学用樹脂が使用されている。光学ガラスは、耐熱性、透明性、寸法安定性、耐薬品性等に優れるが、材料コストが高く、成形加工性が悪く、生産性が低いという問題点を有している。
【0003】
一方、光学用樹脂からなる光学レンズは、射出成形により大量生産が可能であるという利点を有している。例えば、カメラ用レンズにおいて、ポリカーボネート樹脂等が使用されている。しかしながら、近年、製品の軽薄短小化により、高い屈折率の樹脂の開発が求められている。一般に光学材料の屈折率が高いと、同一の屈折率を有するレンズエレメントを、より曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0004】
また、光学用樹脂を光学レンズとして用いる場合、屈折率やアッベ数以外にも、耐熱性、透明性、低吸水性、耐薬品性、耐光性、低複屈折性、耐湿熱性等が求められる。そのため、樹脂の物性バランスによって用途が限定されるという弱点がある。特に近年、画素数の向上による解像度のアップに伴い、より結像性能が高く、より複屈折が低いカメラ用レンズが求められている。また、鮮明な画像を映し出すためには、可視光領域の全ての波長において高い透過率を維持する必要がある。
【0005】
そこで、屈折率が高く、複屈折が低く、かつ物性バランスに優れた光学レンズ向け樹脂の開発が行われてきた。例えば、フルオレン含有ジヒドロキシ化合物とナフタレンジカルボン酸からなるポリエステルが提案されている(特許文献1)。しかし、該ポリエステルは高屈折率ではあるものの、複屈折が大きいという問題があった。
【0006】
また、ナフタレン構造を有する(1,1’‐ビナフタレン)‐2,2’‐ジオールから誘導されたポリカーボネート共重合体が提案されている(特許文献2および3)。この樹脂は、複屈折が低いことが記載されている。しかし、(1,1’‐ビナフタレン)‐2,2’‐ジオールの反応性が悪く、その含有量は最大で共重合組成の40モル%が限度であり、良好な物性値を有するホモポリマーの生成には至っていない。
【0007】
また他にも、1,1’‐ビナフタレン構造を有するポリカーボネート共重合体が提案されている(特許文献4および5)。しかし、特許文献4に記載の共重合体は、1,1’‐ビナフタレン構造を有するモノマーを共重合組成の40モル%含有するのが最大であり、共重合体の屈折率はホモポリマーの屈折率に比べ大きく劣ることが推察される。また、共重合体の屈折率および複屈折に関して具体的な数値が示されていない。特許文献5も同様に、重合体の屈折率に関して具体的な数値が述べられていない。
【0008】
また、ビナフタレン構造を有し、高屈折率を発現する4,4’−ジアルコキシ−2,2’−ビナフタレン−1,1’−ジ(メタ)アクリレートモノマーの提案がなされている(特許文献6)。しかし、引用文献6では、モノマーに言及するのみで、樹脂化後の物性等々については述べられていない。また、このモノマーは分子内に2つ以上の重合性基を有するため、重合した場合は熱可塑性樹脂とはならない。
【0009】
<背景技術2>
光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正することが知られている。例えば、アッベ数ν=45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと低アッベ数のビスフェノールAからなるポリカーボネート(nD=1.586、ν=30)樹脂製のレンズを組み合わせて色収差を補正することが行われている。
【0010】
レンズ材料として、光学ガラスや光学用透明樹脂が広く使用されている。光学用透明樹脂は、射出成形により非球面レンズの製造が可能である上に大量生産が可能である利点を有している。射出成形は、樹脂を加熱して軟化させ、射出圧を加えて金型に押込み、型に充填して成形し、樹脂を冷却後に成形体を取り出す方法である。
樹脂を軟化させる温度が高くなるほど樹脂の流動性は向上するものの、樹脂の分解や着色が発生しやすいため、軟化させる温度には制約がある。
現在、多くの成形機で金型の温度が一定に保たれるようになっており、面精度の高い製品を製造できるようになっている。この中で、熱媒として加圧水を使用する金型温調機の場合、金型温度の上限は150℃程度である。従って、この装置で面精度の高い製品を製造しようとする場合、使用出来る樹脂のガラス転移点温度の上限は160℃程度という制約が発生することがある。
【0011】
光学レンズ用透明樹脂としては、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂が広く使用されている。これは、前述のとおり高屈折率および低アッベ数(nD=1.586、ν=30)を有し、なおかつ優れた耐熱性および優れた機械特性を有するためである。
【0012】
ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は、光学レンズ用途に幅広く使用されているが、光学レンズの用途拡大により更なる屈折率の向上が求められている。また、ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は、複屈折が大きいという弱点を有するため、用途に制約がある。このため、高屈折率と低複屈折を兼備する光学レンズ向け樹脂の開発が幅広く行われてきた。
【0013】
例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから誘導される下記繰り返し単位(B2)を有するポリカーボネート樹脂が知られている(特許文献7)。特許文献7の実施例には、屈折率1.646〜1.653を達成したことが記載されている。しかし、得られたレンズは、屈折率が高くなったものの、ガラス転移点は160℃を超えていることが記載されている。
【化1】
【0014】
また、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンから誘導される下記繰り返し単位(B1)を有するポリカーボネート樹脂が知られている(特許文献8)。特許文献8の実施例には、ガラス転移点160℃以下で屈折率1.649を達成したことが記載されているが、屈折率1.650以上の実用的な組成は提案されていない。
【化2】
【0015】
<背景技術3>
さらに、ビスフェノールA型のポリカーボネート構成単位と下記式(E)で表される構成単位との共重合体は、屈折率が向上することが特許文献9に開示されている。特許文献9の実施例には、屈折率1.62〜1.64、アッベ数23〜26を達成したことが記載されている。このように屈折率が向上するのは、式(E)で表される構成単位によるためと考えられる。
【化3】
【0016】
また、フルオレン構造を有する構成単位を含むポリカーボネート樹脂とビスフェノールAの共重合体が、特許文献10に開示されている。この文献の実施例には、屈折率1.616〜1.636を達成したことが記載されている。なお、この文献に開示されている構成単位は、式(E)とは異なる。
【0017】
次に複屈折について述べる。ビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は、光学レンズ用途に幅広く使用されているが、複屈折が大きいという弱点を有するため用途に制約がある。そのため、特に近年の携帯電話用カメラやデジタルカメラ用途においては、画素数の向上による解像度のアップに伴い、結像性能が高く、複屈折が低いカメラ用レンズが求められている。
【0018】
樹脂材料の低複屈折化を実現する方法として、符号の異なる正負の複屈折を持つ樹脂同士で互いの複屈折を打ち消しあう手法が挙げられる(特許文献9)。複屈折の正負は、高分子主鎖方向の分極率と高分子側鎖方向の分極率との差で決定される。例えば、高分子主鎖方向の分極率の方が高分子側鎖方向の分極率より大きいビスフェノールAからなるポリカーボネート樹脂は正の複屈折となり、高分子側鎖方向の分極率の方が大きいフルオレン構造を有するビスフェノールからなるポリカーボネート樹脂は負の複屈折となる。そのため、これら異符号の複屈折を持つ材料の構成比率は非常に重要となる。
【0019】
なお、1,1’−ビナフタレン構造を有するポリマーは、特許文献2〜4および11に記載されている。しかしながら、特許文献2および特許文献3は、下記式(A)に示される構成単位を有する樹脂を開示していない。特許文献4及び特許文献11には、下記式(A)で示される構成単位を含むポリマーが記載されているが、ポリカーボネート樹脂共重合体ではない。
【化4】

(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【0020】
上記のように、高い屈折率および成形に適した流動性を有し、低複屈折で光学歪みが起こりづらいポリカーボネート樹脂共重合体および光学成形体は、未だ提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2006−335974号公報
【特許文献2】特開2000−302857号公報
【特許文献3】特開2000−302858号公報
【特許文献4】特開2001−72872号公報
【特許文献5】特開2005−263778号公報
【特許文献6】特開2011−256119号公報
【特許文献7】特開2010−132782号公報
【特許文献8】特開2011−246583号公報
【特許文献9】国際公開第2007/142149号
【特許文献10】特開平6−25398号公報
【特許文献11】特開2002−332345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明が解決しようとする課題は、高屈折率、低アッベ数、高透明性、射出成形に適したガラス転移温度、低複屈折等の物性を有するポリカーボネート樹脂を提供することである。また、この樹脂を使用することにより、実質的に光学歪みのない優れた光学レンズを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、下記ポリカーボネート樹脂および光学成形体によって、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到達した。
本発明は、例えば以下の通りである。
[1] 一般式(A)で表される構成単位を有するポリカーボネート樹脂。
【化5】

(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[2] 一般式(A)で表される構成単位のみからなる[1]記載のポリカーボネート樹脂。
[3] [1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(I)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化6】

(式(I)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[4] 一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む、[3]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[5] 前記一般式(I)で表される化合物と炭酸ジエステルとの反応は、一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う、[4]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[6] さらに、一般式(B)で表される構成単位を含有する[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
【化7】

(式(B)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[7] 構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比(A/B)が20/80以上99/1以下の範囲である[6]記載のポリカーボネート樹脂。
[8] 構成単位(A)が下記式
【化8】

で表される構成単位(A1)である[6]または[7]に記載のポリカーボネート樹脂。
[9] 構成単位(B)が下記式
【化9】

で表される構成単位(B1)である[6]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[10] 構成単位(B)が下記式
【化10】

で表される構成単位(B2)である[6]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[11] [6]〜[10]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化11】

(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[12] 一般式(C)および一般式(D)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む[11]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化12】

(式(D)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[13] さらに一般式(B’)で表される構成単位を含有する[1]に記載のポリカーボネート樹脂。
【化13】

(式(B’)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[14] 一般式(A)で表される構成単位が全構成単位中1〜99mol%である[13]記載のポリカーボネート樹脂。
[15] 前記一般式(B’)で表される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂。
[16] 屈折率nDが1.640〜1.680であり且つアッベ数νが24以下である[13]〜[15]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[17] 配向複屈折Δnが1.0×10−3以下である[13]〜[16]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[18] 昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上である[13]〜[17]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[19] [13]〜[18]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化14】

(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[20] 一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む[19]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化15】

(式(D’)中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[21] 前記一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルの反応は、一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物および炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物の留去をせずに滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う[20]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[22] [1]、[2]、[6]〜[10]、および[13]〜[18]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学成形体。
[23] [1]、[2]、[6]〜[10]、および[13]〜[18]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学レンズ。
[24] [1]、[2]、[6]〜[10]、および[13]〜[18]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学フィルム。
【発明の効果】
【0024】
本発明のポリカーボネート樹脂は、高屈折率、低アッベ数、高透明性、射出成形に適したガラス転移温度、低複屈折等の物性を示す。また、樹脂を使用することにより、実質的に光学歪みのない優れた光学レンズを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1の態様>
第1の態様は、例えば以下の発明を含む。
[1] 一般式(A)で表される構成単位を有するポリカーボネート樹脂。
【化16】

(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[2] 一般式(A)で表される構成単位のみからなる[1]記載のポリカーボネート樹脂。
[3] 重量平均分子量Mwが20000〜200000である[1]または[2]記載のポリカーボネート樹脂。
[4] [1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学成形体。
[5] [1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学レンズ。
[6] [1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学フィルム。
[7] [1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法であって、一般式(I)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化17】

(式(I)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[8] 一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む、[7]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9] 前記一般式(I)で表される化合物と炭酸ジエステルとの反応は、一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う、[8]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【0026】
以下、上記発明について詳細に説明する。
(1)ポリカーボネート樹脂
第1態様のポリカーボネート樹脂は、式(A)で表される構成単位(以下、「構成単位(A)」という)を有するポリカーボネート樹脂である。このポリカーボネート樹脂は、後述するように一般式(I)で表される化合物をジヒドロキシ成分として使用し、炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質と反応させて生成する化合物である。
【0027】
第1態様第1態様のポリカーボネート樹脂は、基本的に主鎖中にエステル結合を有さないポリカーボネート樹脂であり、ポリエステルカーボネートは含まない。
【0028】
ジヒドロキシ成分としては、一般式(I)の化合物に加えて、芳香族ジヒドロキシ化合物や脂肪族ジヒドロキシ化合物を併用することができる。
【0029】
芳香族ジヒドロキシ化合物として、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等が例示される。
【0030】
中でも、第1態様のポリカーボネート樹脂は、式(A)で表される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂が好適である。
【0031】
第1態様のポリカーボネート樹脂の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、20000〜200000である。
【0032】
より好ましくは、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、25000〜120000である。
【0033】
Mwが20000より小さいと、成形体が脆くなるため好ましくない。Mwが200000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の取り出しが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0034】
第1態様のポリカーボネート樹脂の23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)は、好ましくは1.635〜1.695、より好ましくは1.640〜1.690、さらに好ましくは1.645〜1.685である。第1態様のポリカーボネート樹脂は、屈折率(nD)が高く、光学レンズ材料に適している。屈折率は、厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS−K−7142の方法で測定することができる。
【0035】
第1態様のポリカーボネート樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、さらに好ましくは20以下である。アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0036】
第1態様のポリカーボネート樹脂に他の樹脂をブレンドして、成形体の製造に供することができる。他の樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。
【0037】
さらに第1態様のポリカーボネート樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することができる。
【0038】
成形方法としては、射出成形の他、圧縮成形、注型、ロール加工、押出成形、延伸などが例示されるがこれに限らない。
【0039】
第1態様のポリカーボネート樹脂を射出成形に使用する場合、好ましいガラス転移温度(Tg)は90〜170℃であり、より好ましくは95〜165℃であり、さらに好ましくは100〜160℃である。Tgが90℃より低いと、使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また170℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなるため好ましくない。樹脂のガラス転移温度が高すぎると、汎用の金型温調機では、金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用は難しく、好ましくない。
【0040】
第1態様のポリカーボネート樹脂は、射出成形時の加熱に耐えるための熱安定性の指標として、昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度(Td)が350℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
【0041】
第1態様のポリカーボネート樹脂は、複屈折量の尺度である配向複屈折(Δn)が、好ましくは1.0×10−3以下、より好ましくは0.4×10−3以下である。
Δnは、厚さ0.1mmのキャストフィルムを5.0cm角の正方形に切出した後、フィルムの両端をチャックに挟み(チャック間3.0cm)、ポリカーボネート樹脂のTg+5℃で1.5倍に延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定した後、下記式より求めることができる。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
【0042】
第1態様のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体は、全光線透過率が85%以上であり、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などと比べても遜色ない。
【0043】
(2)ポリカーボネート樹脂の製造方法
第1態様のポリカーボネート樹脂は、上記一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物を原料として使用して製造することができる。具体的には、一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を、塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、または無触媒下において、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。
【0044】
式(I)で表されるジヒドロキシ化合物の例として、2,2’−ビス(1−ヒドロキシメトキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(3−ヒドロキシプロピルオキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシブトキシ)−1,1’−ビナタレン等が挙げられる。なかでも2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフタレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いても良い。
【0045】
第1態様に用いられる炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0.98〜1.10モルの比率である。
【0046】
エステル交換触媒のうち、塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0047】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩もしくは2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩もしくはリチウム塩等が用いられる。
【0048】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0049】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基もしくは塩基性塩等が用いられる。
【0050】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0051】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0052】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
【0053】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下で、さらに常圧または減圧下で、エステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0054】
本組成系での溶融重縮合は、一般式(I)で表される化合物および炭酸ジエステルを反応容器中で溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物を滞留させた状態で、反応を行うことが望ましい。滞留させるために、反応装置を閉塞したり、減圧したり加圧したりするなど圧力を制御することができる。この工程の反応時間は、20分以上240分以下であり、好ましくは40分以上180分以下、特に好ましくは60分以上150分以下である。この際、副生するモノヒドロキシ化合物を生成後すぐに留去すると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂は高分子量体の含有量が少ない。しかし、副生したモノヒドロキシ化合物を反応容器中に一定時間滞留させると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂は高分子量体の含有量が多いものが得られる。
【0055】
溶融重縮合反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であっても、スクリューを装備した押出機型であってもよい。また、重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を適宜組み合わせた反応装置を使用することが好適に実施される。
【0056】
第1態様に係る発明に使用されるポリカーボネート樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、樹脂の耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0057】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を、0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0058】
第1態様のポリカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過等が好適に実施される。フィルターのメッシュは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は、当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0059】
(3)光学成形体
第1態様のポリカーボネート樹脂を用いて光学成形体を製造できる。例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。第1態様のポリカーボネート樹脂は、成形性および耐熱性に優れているので、射出成形が必要となる光学レンズにおいて特に有利に使用することができる。成形の際には、第1態様のポリカーボネート樹脂を他のポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などの他の樹脂と混合して使用することが出来る。また、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等の添加剤を混合しても構わない。
【0060】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
【0061】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0062】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0063】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0064】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0065】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0066】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0067】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0068】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0069】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0070】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0071】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0072】
第1態様のポリカーボネート樹脂は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有する。さらに、低複屈折で光学歪みが起こりづらいため、光学レンズの他に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0073】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0074】
(光学レンズ)
第1態様のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学レンズは、高屈折率であり、耐熱性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせによって球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。第1態様に係る発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0075】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0076】
(光学フィルム)
第1態様のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学フィルムは、透明性および耐熱性に優れるため、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される。
【0077】
光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0078】
<実施例>
以下に第1の態様を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムからMwを算出した。
2)屈折率(nD):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、JIS−K−7142の方法で測定した。
3)アッベ数(ν):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
4)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
5)熱分解開始温度(Td):示差熱天秤(TG−DTA)を用い、空気気流下、重量が5%減少した温度を測定した。昇温速度は10℃/minである。
6)配向複屈折(Δn):厚さ0.1mmのキャストフィルムを5.0cm角の正方形に切出した後、フィルムの両端をチャックに挟み(チャック間3.0cm)、ポリカーボネート樹脂のTg+5℃で1.5倍に延伸した。日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
7)全光線透過率:実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用い、JIS−K−7361−1の方法で測定した。
【0079】
(1)ポリカーボネート樹脂の製造
(実施例1)
2,2’‐ビス(2‐ヒドロキシエトキシ)‐1,1’‐ビナフタレン(以下“BHEBN”と省略することがある)43.1g(0.115モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)25.0g(0.117モル)、および炭酸水素ナトリウム1.1×10−4g(1.3×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で110分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0080】
(比較例1)
1,5−ジ(2‐ヒドロキシエトキシ)ナフタレン(以下“1,5−DHEN”と省略することがある)30.0g(0.121モル)、DPC26.4g(0.123モル)、および炭酸水素ナトリウム6.1×10−5g(7.2×10−7モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で20分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0081】
(比較例2)
比較例1の1,5−DHENを2,3−ジ(2‐ヒドロキシエトキシ)ナフタレン(以下“2,3−DHEN”と省略することがある)に変更し、2,3−DHENの使用量を31.2g(0.126モル)、DPCの使用量を27.6g(0.129モル)、および炭酸水素ナトリウムの使用量を6.3×10−5g(7.5×10−7モル)とする以外は比較例1と同様に行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
生成したポリカーボネート樹脂は、分子量が低く、フィルム製造ができなかった。
【0082】
(比較例3)
比較例1の1,5−DHENを2,6−ジ(2‐ヒドロキシエトキシ)ナフタレン(以下“2,6−DHEN”と省略することがある)に変更し、2,6−DHENの使用量を31.1g(0.125モル)、DPCの使用量を27.4g(0.128モル)、および炭酸水素ナトリウムの使用量を6.3×10−5g(7.5×10−7モル)とする以外は比較例1と同様に行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
生成したポリカーボネート樹脂は、非晶性とはならず、また溶剤に不溶だったため、光学特性が測定できなかった。
【0083】
(比較例4)
比較例1の1,5−DHENを2,7−ジ(2‐ヒドロキシエトキシ)ナフタレン(以下“2,7−DHEN”と省略することがある)に変更し、2,7−DHENの使用量を30.1g(0.121モル)、DPCの使用量を26.5g(0.124モル)、および炭酸水素ナトリウムの使用量を6.1×10−5g(7.3×10−7モル)とする以外は比較例1と同様に行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
生成したポリカーボネート樹脂は、非晶性とはならず、また溶剤に不溶だったため、光学特性が測定できなかった。
【0084】
(比較例5)
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)からなるポリカーボネート樹脂として、商品名「ユーピロンH−4000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;Mw=33,000、Tg=148℃)を用いた。
【0085】
(2)光学フィルムの製造
実施例1および比較例1〜5で得られたポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度5.3重量%の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液から厚み0.1mmのキャストフィルムを作製し、屈折率(nD)、アッベ数(ν)および全光線透過率を評価した。また、得られたキャストフィルムをTg+5℃で1.5倍に延伸し、配向複屈折(Δn)を評価した。
なお、実施例1および比較例1および5のポリカーボネート樹脂以外は、キャストフィルム化できなかった。
【0086】
上述した実施例および比較例で得られた樹脂について、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、熱分解開始温度(Td)、屈折率(nD)、アッベ数(ν)、全光線透過率、配向複屈折(Δn)を測定し、その結果を表1−1に記載した。また、配向複屈折(Δn)の評価基準を表1−2に示した。
【表1-1】
【0087】
【表1-2】
【0088】
<第2の態様>
第2の態様は、例えば以下の発明を含む。
[1]一般式(A)および一般式(B)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂共重合体。
【化18】

(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【化19】

(式(B)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[2] 構成単位(A)と構成単位(B)とのモル比(A/B)が20/80以上99/1以下の範囲である[1]記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[3] 構成単位(A)が下記式
【化20】

で表される構成単位(A1)である[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[4] 構成単位(B)が下記式
【化21】

で表される構成単位(B1)である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[5] 構成単位(B)が下記式
【化22】

で表される構成単位(B2)である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[6] 屈折率nDが1.650以上1.670以下の範囲であり、且つガラス転移温度が120℃〜200℃である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学成形体。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学レンズ。
[9] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学フィルム。
[10] [1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化23】

(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[11] 一般式(C)および一般式(D)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む、[10]記載のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法。
【化24】

(式(D)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【0089】
以下、上記発明について詳細に説明する。
(1)ポリカーボネート樹脂共重合体
第2態様の共重合体は、式(A)で表される構成単位(以下、「構成単位(A)」という)と、式(B)で表される構成単位(以下、「構成単位(B)」という)とを含むポリカーボネート樹脂である(以下、「第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体」とも称する)。
【0090】
上記構成単位(A)および(B)の合計割合は、第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を構成するカーボネート構成単位全量に対し50mol%以上が好ましく、さらには80mol%以上が好ましく、90mol%以上が特に好ましく、100mol%が最も好ましい。第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、上記構成単位(A)および(B)以外の構成単位を含んでいてもよい。
構成単位(A)と構成単位(B)のモル比(A/B)は20/80〜99/1が好ましく、さらには30/70〜95/5が好ましく、40/60〜90/10がより好ましい。
(B)が(B1)の場合は、構成単位(A)と構成単位(B1)のモル比(A/B1)は20/80〜99/1が好ましく、さらには45/55〜95/5が好ましく、75/25〜90/10がより好ましい。
(B)が(B2)の場合は、構成単位(A)と構成単位(B2)のモル比(A/B2)は(B2)の割合は20/80〜99/1が好ましく、さらには40/60〜95/5が好ましい。
【0091】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、ランダム、ブロックおよび交互共重合構造のいずれを含んでもよい。
【0092】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体の23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)は、好ましくは1.640〜1.680である。
(B)が(B1)の場合は、1.666以上が望ましく、1.668以上がより望ましく、1.669以上が極めて望ましい。
(B)が(B2)の場合は、1.650以上が望ましく、1.660以上がより望ましい。
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、屈折率(nD)が高く、光学レンズ材料に適している。屈折率は、第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体からなる厚さ0.1mmのフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS−K−7142の方法で測定することができる。
【0093】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下である。
(B)が(B1)の場合は、22以下が望ましく、20以下がより望ましく、19以下が極めて望ましい。
(B)が(B2)の場合は、23以下が望ましく、19以下が極めて望ましい。
アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0094】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を射出成形に使用する場合、好ましいガラス転移温度(Tg)は120〜190℃である。
(B)が(B1)の場合は、120〜180℃が望ましく、130〜170℃がより望ましく、140〜160℃が極めて望ましい。
(B)が(B2)の場合は、120〜190℃が望ましく、130〜170℃がより望ましく、140〜160℃が極めて望ましい。
Tgが95℃より低いと、使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また200℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなるため好ましくない。樹脂のガラス転移温度が高すぎると、汎用の金型温調機では金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用は難しく、好ましくない。
【0095】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を用いて得られる光学成形体は、全光線透過率が85%以上であることが好ましい。
【0096】
さらに第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することができる。
【0097】
(2)ポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、化合物(C)を原料として使用して製造することができる。具体的には、化合物(C)、化合物(D)および炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を、塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、もしくは無触媒下において、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。
【化25】

(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【0098】
【化26】

(式(D)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
【0099】
式(C)で表されるジヒドロキシ化合物として、例えば2,2’−ビス(1−ヒドロキシメトキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(3−ヒドロキシプロピルオキシ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシブトキシ)−1,1’−ビナタレン等が挙げられる。なかでも2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフタレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いても良い。
【0100】
式(D)で表されるジヒドロキシ化合物として、例えば9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(3−メチルフェニル)フェニル〕フルオレン等から誘導される単位が挙げられる。なかでも9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0101】
第2態様に用いられる炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.20モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0 .98〜1.10モルの比率である。
【0102】
塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0103】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩もしくは2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩もしくはリチウム塩等が用いられる。
【0104】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0105】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基もしくは塩基性塩等が用いられる。
【0106】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0107】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0108】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
【0109】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下で、さらに常圧または減圧下で、エステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0110】
溶融重縮合反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよい。また、重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を適宜組み合わせて使用することが好適に実施される。
【0111】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させてもよい。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類;p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、樹脂の耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0112】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を、0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0113】
第2態様のポリカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過等が好適に実施される。フィルターのメッシュは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は、当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0114】
(3)光学成形体
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を用いて光学成形体を製造できる。例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、成形性および耐熱性に優れているので、射出成形が必要となる光学レンズにおいて特に有利に使用することができる。成形の際には、第2態様のポリカーボネート樹脂を他のポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などの他の樹脂と混合して使用することが出来る。また、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等の添加剤を混合しても構わない。
【0115】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
【0116】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0117】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0118】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0119】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0120】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0121】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0122】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0123】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0124】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0125】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0126】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0127】
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有する。さらに、低複屈折で光学歪みが起こりづらいため、光学レンズの他に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0128】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0129】
(光学レンズ)
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を用いて製造される光学レンズは、高屈折率であり、耐熱性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
さらに、光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。第2態様に係る発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0130】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0131】
(光学フィルム)
第2態様のポリカーボネート樹脂共重合体を用いて製造される光学フィルムは、透明性および耐熱性に優れるため、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される。
【0132】
光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0133】
<実施例>
以下に第2の態様を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムからMwを算出した。
2)屈折率(nD):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、JIS−K−7142の方法で測定した。
3)アッベ数(ν):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
4)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
5)光学歪み:実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ3mmの成形片を二枚の偏光板の間に挟み、直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。より具体的には、実施例1〜9、参考例および比較例で得られたポリカーボネート樹脂を使用し、ファナック(株)製ROBOSHOT S‐2000i30A射出成形機を用いてφ50、厚さ3.0mmの成型片を射出成型した。この成型片を二枚の偏光板の間に挟み、直交ニコル法で後ろからの光漏れを目視することにより評価した。評価は、A:僅かに光漏れが認められる、B:光漏れがある、C:光漏れが顕著であるとした。
6)全光線透過率:実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用いて測定した。
【0134】
(実施例1)
式(E)で示される2,2’‐ビス(2‐ヒドロキシエトキシ)‐1,1’‐ビナフタレン(以下“BHEBN”と省略することがある)4.74kg(12.7モル)、式(F)で示される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン(以下“BPPF”と省略することがある)14.9kg(29.6モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)9.50kg(44.3モル)、および炭酸水素ナトリウム4.3×10−2g(5.1×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気下で180℃に加熱して溶融させた。その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整した。その後、20.0℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、80分かけて0.13kPa以下まで減圧した。更に260℃、0.13kPa以下の条件下で20分間撹拌しながら重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで加圧した後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら取り出した。
【化27】
【0135】
【化28】
【0136】
(実施例2)
BHEBNおよびBPPFの量を、BHEBN9.49kg(25.3モル)およびBPPF8.49kg(16.9モル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0137】
(実施例3)
BHEBNおよびBPPFの量を、BHEBN11.0kg(29.5モル)およびBPPF6.36kg(12.7モル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0138】
(実施例4)
BHEBNおよびBPPFの量を、BHEBN12.6kg(33.8モル)およびBPPF4.24kg(8.44モル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0139】
(実施例5)
BHEBNおよびBPPFの量を、BHEBN14.2kg(38.0モル)およびBPPF2.12kg(4.22モル)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0140】
(実施例6)
BHEBN4.74kg(12.7モル)、式(G)で示される9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BMPF”と省略することがある)11.2kg(29.6モル)、DPC9.50kg(44.3モル)、および炭酸水素ナトリウム4.3×10−2g(5.1×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気下で180℃に加熱して溶融させた。その後、20分かけて減圧度を20kPaに調整した。その後、20.0℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、80分かけて0.13kPa以下まで減圧した。更に260℃、0.13kPa以下の条件下で、20分間撹拌しながら重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで加圧した後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら取り出した。
【化29】
【0141】
(実施例7)
BHEBNおよびBMPFの量を、BHEBN7.91kg(21.2モル)およびBMPF8.00kg(21.2モル)に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0142】
(実施例8)
BHEBNおよびBMPFの量を、BHEBN9.49kg(25.3モル)およびBMPF6.39kg(16.9モル)に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0143】
(実施例9)
BHEBNおよびBMPFの量を、BHEBN14.2kg(38.0モル)およびBMPF1.60kg(4.22モル)に変更した以外は、実施例6と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0144】
(参考例)
BHEBN15.8kg(42.2モル)、DPC9.37kg(43.7モル)、および炭酸水素ナトリウム5.3×10−2g(6.3×10−4モル)を攪拌機および留出装置付きの50リットル反応器に入れ、窒素雰囲気下で180℃に加熱して溶融させた。原料溶融後、110分間撹拌した後に、20分かけて減圧度を20kPaに調整した。その後、20.0℃/hrの速度で260℃まで昇温を行い、10分間その温度で保持した後、80分かけて0.13kPa以下まで減圧した。更に260℃、0.13kPa以下の条件下で20分間撹拌しながら重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで加圧した後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら取り出した。
【0145】
(比較例)
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)からなるポリカーボネート樹脂として、商品名「ユーピロンH−4000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;Mw=33,000、Tg=148℃)を用いた。
【0146】
実施例1〜9、参考例および比較例で得られたポリカーボネート樹脂から厚み0.1mmのフィルムを作製し、屈折率(nD)、アッベ数(ν)および全光線透過率を評価した。
【0147】
上述した実施例、参考例および比較例で得られた樹脂について、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、屈折率(nD)、アッベ数(ν)および全光線透過率を測定し、その結果を表2−1に記載した。
【表2-1】
【0148】
<第3の態様>
第3の態様は、例えば以下の発明を含む。
[1]一般式(A)および一般式(B’)で表される構成単位を含有するポリカーボネート樹脂共重合体。
【化30】

(式(A)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
【化31】

(式(B’)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[2] 一般式(A)で表される構成単位が全構成単位中1〜99mol%である[1]記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[3] 重量平均分子量Mwが20000〜200000である[1]または[2]に記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[4] 屈折率nDが1.640〜1.680であり且つアッベ数νが24以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[5] 配向複屈折Δnが1.0×10−3以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[6] ガラス転移点が110〜160℃である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[7] 昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上である[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[8] 全光線透過率が88%以上である[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学成形体。
[10] [1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学レンズ。
[11] [1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体を含む光学フィルム。
[12] [1]〜[8]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法であって、一般式(C)で表される化合物を原料として使用する製造方法。
【化32】

(式(C)中、Xは炭素数1〜4のアルキレン基である。)
[13] 一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む[12]記載のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法。
【化33】

(式(D’)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[14] 前記一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルの反応は、一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物の留去をせずに滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う[13]記載のポリカーボネート樹脂共重合体の製造方法。
【0149】
[15] 前記一般式(B’)で表される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂。
[16] 重量平均分子量Mwが20000〜200000である[15]に記載のポリカーボネート樹脂。
[17] 屈折率nDが1.640〜1.680であり且つアッベ数νが24以下である[15]または[16]に記載のポリカーボネート樹脂。
[18] 配向複屈折Δnが1.0×10−3以下である[15]〜[17]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[19] ガラス転移点が110〜180℃である[15]〜[18]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[20] 昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度が350℃以上である[15]〜[19]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[21] 全光線透過率が85%以上である[15]〜[20]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
[22] [15]〜[21]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学成形体。
[23] [15]〜[21]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学レンズ。
[24] [15]〜[21]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂を含む光学フィルム。
[25] 上記一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応させ、モノヒドロキシ化合物を留去することを含む[15]〜[21]のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化34】

(式(D’)中、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。)
[26] 前記一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルの反応は、一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物の留去をせずに滞留させた状態で少なくとも30分反応させることにより行う[25]記載のポリカーボネート樹脂の製造方法。
【0150】
以下、上記発明について詳細に説明する。
(1)ポリカーボネート樹脂
第3態様の共重合体は、式(A)で表される構成単位(以下、「構成単位(A)」という)と、式(B’)で表される構成単位(以下、「構成単位(B’)」という)とを含むポリカーボネート樹脂である(以下、樹脂が共重合体である場合には「第3態様のポリカーボネート樹脂共重合体」とも称する)。
【0151】
上記構成単位(A)の割合は、第3態様のポリカーボネート樹脂を構成するカーボネート単位全量に対し1〜99mol%が好ましい。
【0152】
より好ましくは、上記構成単位(A)の割合は、第3態様のポリカーボネート樹脂を構成するカーボネート単位全量に対し30〜90mol%であり、さらに好ましくは40〜80mol%である。
あるいは、第3態様の樹脂は、上記一般式(B’)で表される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂であってもよい。
【0153】
第3態様のポリカーボネート樹脂の好ましいポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、20000〜200000である。
【0154】
より好ましくは、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は25000〜120000である。
【0155】
Mwが20000より小さいと、成形体が脆くなるため好ましくない。Mwが200000より大きいと、溶融粘度が高くなるため製造後の樹脂の取り出しが困難になり、更には流動性が悪くなり溶融状態で射出成形しにくくなるため好ましくない。
【0156】
第3態様のポリカーボネート樹脂共重合体は、ランダム、ブロックおよび交互共重合構造を含むポリカーボネート樹脂共重合体である。
【0157】
第3態様のポリカーボネート樹脂の23℃、波長589nmにおける屈折率(nD)は、好ましくは1.640〜1.680、より好ましくは1.645〜1.675、さらに好ましくは1.650〜1.670である。第3態様のポリカーボネート樹脂は、屈折率(nD)が高く光学レンズ材料に適している。屈折率は、厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用いて、JIS−K−7142の方法で測定することができる。
【0158】
第3態様のポリカーボネート樹脂のアッベ数(ν)は、好ましくは24以下、より好ましくは23以下、さらに好ましくは22以下である。アッベ数は、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0159】
第3態様の樹脂を射出成形に使用する場合、好ましいガラス転移点(Tg)は95〜180℃であり、より好ましくは110〜170℃であり、さらに好ましくは115〜160℃である。Tgが95℃より低いと、使用温度範囲が狭くなるため好ましくない。また180℃を越えると、樹脂の溶融温度が高くなり、樹脂の分解や着色が発生しやすくなるため好ましくない。また、樹脂のガラス転移点が高すぎる場合、汎用の金型温調機では、金型温度と樹脂ガラス転移温度の差が大きくなってしまう。そのため、製品に厳密な面精度が求められる用途においては、ガラス転移温度が高すぎる樹脂の使用は難しく、好ましくない。
【0160】
第3態様のポリカーボネート樹脂は、射出成形時の加熱に耐えるための熱安定性の指標として、昇温速度10℃/minにて測定した5%重量減少温度(Td)が350℃以上であることが好ましい。5%重量減少温度が350℃より低い場合は、成形の際の熱分解が激しく、良好な成形体を得ることが困難となるため好ましくない。
【0161】
第3態様のポリカーボネート樹脂は、複屈折量の尺度である配向複屈折(Δn)が、好ましくは1.0×10−3以下、より好ましくは0.8×10−3以下、さらに好ましくは0.3×10−3以下、特に好ましくは0.2×10−3以下である。
Δnは、厚さ0.1mmのキャストフィルムを5.0cm角の正方形に切出した後、フィルムの両端をチャックに挟み(チャック間3.0cm)、ポリカーボネート樹脂のTg+5℃で1.5倍に延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定することにより、下記式より求めることができる。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
【0162】
複屈折(Δn)の符号は、フィルム延伸方向における屈折率(n//)と延伸方向に垂直な方向における屈折率(n)を用いて下記式で表され、Δnが正になる場合を正の複屈折、負になる場合を負の複屈折と呼ぶ。
【数1】
【0163】
第3態様のポリカーボネート樹脂を用いて得られる光学成形体は、全光線透過率が好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上であり、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などと比べても遜色ない。
【0164】
さらに第3態様のポリカーボネート樹脂には、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、結晶核剤、強化剤、染料、帯電防止剤あるいは抗菌剤等を添加することが好適に実施される。
【0165】
(2)ポリカーボネート樹脂の製造方法
第3態様のポリカーボネート樹脂は、化合物(C)を原料として使用して製造することができる。具体的には、化合物(C)、化合物(D’)および炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を、塩基性化合物触媒もしくはエステル交換触媒もしくはその双方からなる混合触媒の存在下、もしくは無触媒下において、溶融重縮合法により反応させて製造することができる。第3態様のポリカーボネート樹脂が一般式(B’)で表される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂である場合、化合物(C)を使用しないことを除き、上記と同様に製造することができる。
【0166】
式(C)で表されるジヒドロキシ化合物として、2,2’−ビス(1−ヒドロキシメトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(3−ヒドロキシプロピルオキシ)−1,1’−ビナフチル、2,2’−ビス(4−ヒドロキシブトキシ)−1,1’−ビナフチルが挙げられる。なかでも2,2’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,1’−ビナフチルが好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いても良い。
【0167】
式(D’)で表されるジヒドロキシ化合物として、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン等が挙げられる。なかでも9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0168】
第3態様に用いられる炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも特に、ジフェニルカーボネートが好ましい。ジフェニルカーボネートは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.20 モルの比率で用いられることが好ましく、更に好ましくは0 .98〜1.10モルの比率である。
【0169】
塩基性化合物触媒としては、特にアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、および含窒素化合物等が挙げられる。
【0170】
本願発明に使用されるアルカリ金属化合物としては、例えばアルカリ金属の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩もしくは2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩もしくはリチウム塩等が用いられる。
【0171】
アルカリ土類金属化合物としては、例えばアルカリ土類金属化合物の有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物又はアルコキシド等が挙げられる。具体的には、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が用いられる。
【0172】
含窒素化合物としては、例えば4級アンモニウムヒドロキシドおよびそれらの塩、アミン類等が挙げられる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル基、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類;トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類;ジエチルアミン、ジブチルアミン等の2級アミン類;プロピルアミン、ブチルアミン等の1級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類;あるいは、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基もしくは塩基性塩等が用いられる。
【0173】
エステル交換触媒としては、亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛等の塩が好ましく用いられ、これらは単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0174】
エステル交換触媒としては、具体的には、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)等が用いられる。
【0175】
これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で、好ましくは10−7〜10−4モルの比率で用いられる。
【0176】
溶融重縮合法は、前記の原料および触媒を用いて、加熱下で、さらに常圧または減圧下で、エステル交換反応により副生成物を除去しながら溶融重縮合を行うものである。
【0177】
本組成系での溶融重縮合は、一般式(C)および一般式(D’)で表される化合物ならびに炭酸ジエステルを反応容器中で溶融後、副生するモノヒドロキシ化合物の留去をせずに滞留させた状態で、反応を行ってもよい。反応時間は20分以上240分以下であり、好ましくは40分以上180分以下、特に好ましく60分以上150分以下である。この際、副生するモノヒドロキシ化合物を生成後すぐに留去すると、最終的に得られるポリカーボネート樹脂は高分子量体の含有量が少なくなる。
【0178】
溶融重縮合反応は、連続式で行っても良くまたバッチ式で行ってもよい。反応を行うに際して用いられる反応装置は、錨型攪拌翼、マックスブレンド攪拌翼、ヘリカルリボン型攪拌翼等を装備した縦型であっても、パドル翼、格子翼、メガネ翼等を装備した横型であってもスクリューを装備した押出機型であってもよい。また、重合物の粘度を勘案してこれらの反応装置を適宜組み合わせて使用することが好適に実施される。
【0179】
第3態様のポリカーボネート樹脂の製造方法では、重合反応終了後、熱安定性および加水分解安定性を保持するために、触媒を除去もしくは失活させる。公知の酸性物質の添加による触媒の失活を行う方法を好適に実施できる。酸性物質としては、具体的には、安息香酸ブチル等のエステル類;p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸類;p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸ヘキシル等の芳香族スルホン酸エステル類;亜リン酸、リン酸、ホスホン酸等のリン酸類;亜リン酸トリフェニル、亜リン酸モノフェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジn−プロピル、亜リン酸ジn−ブチル、亜リン酸ジn−ヘキシル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸モノオクチル等の亜リン酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノフェニル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノオクチル等のリン酸エステル類;ジフェニルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸等のホスホン酸類;フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類;トリフェニルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等のホスフィン類;ホウ酸、フェニルホウ酸等のホウ酸類;ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等の芳香族スルホン酸塩類;ステアリン酸クロライド、塩化ベンゾイル、p−トルエンスルホン酸クロライド等の有機ハロゲン化物;ジメチル硫酸等のアルキル硫酸;塩化ベンジル等の有機ハロゲン化物等が好適に用いられる。これらの失活剤は、触媒量に対して0.01〜50倍モル、好ましくは0.3〜20倍モル使用される。触媒量に対して0.01倍モルより少ないと、失活効果が不充分となり好ましくない。また、触媒量に対して50倍モルより多いと、樹脂の耐熱性が低下し、成形体が着色しやすくなるため好ましくない。
【0180】
触媒失活後、ポリマー中の低沸点化合物を、0.1〜1mmHgの圧力、200〜350℃の温度で脱揮除去する工程を設けても良い。この工程には、パドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新能の優れた攪拌翼を備えた横型装置、あるいは薄膜蒸発器が好適に用いられる。
【0181】
第3態様のポリカーボネート樹脂は、異物含有量が極力少ないことが望まれ、溶融原料の濾過、触媒液の濾過等が好適に実施される。フィルターのメッシュは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。さらに、生成する樹脂のポリマーフィルターによる濾過が好適に実施される。ポリマーフィルターのメッシュは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。また、樹脂ペレットを採取する工程は当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0182】
(3)光学成形体
第3態様のポリカーボネート樹脂を用いて光学成形体を製造できる。例えば射出成形法、圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。第3態様のポリカーボネート樹脂は、成形性および耐熱性に優れているので射出成形が必要となる光学レンズにおいて特に有利に使用することができる。成形の際には、第3態様のポリカーボネート樹脂を他のポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂などの他の樹脂と混合して使用することが出来る。また、酸化防止剤、加工安定剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、離型剤、紫外線吸収剤、可塑剤、相溶化剤等の添加剤を混合しても構わない。
【0183】
酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の酸化防止剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.3重量部であることが好ましい。
【0184】
加工安定剤としては、リン系加工熱安定剤、硫黄系加工熱安定剤等が挙げられる。リン系加工熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中のリン系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0185】
硫黄系加工熱安定剤としては、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂中の硫黄系加工熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.2重量部が好ましい。
【0186】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸とのエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸とのエステルや、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。上記一価アルコールと脂肪酸とのエステルとしては、炭素原子数1〜20の一価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとしては、炭素原子数1〜25の多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。
【0187】
具体的に、一価アルコールと飽和脂肪酸とのエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等が挙げられる。多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、カプリン酸モノグリセリド、ラウリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これら離型剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005〜2.0重量部の範囲が好ましく、0.01〜0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02〜0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0188】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。すなわち、以下に挙げる紫外線吸収剤は、いずれかを単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0189】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられる。
【0190】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0191】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(オクチル)オキシ]−フェノール等が挙げられる。
【0192】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)および2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0193】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3−ビス−[(2’−シアノ−3’,3’−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3−ビス−[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが挙げられる。
【0194】
紫外線吸収剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜3.0重量部であり、より好ましくは0.02〜1.0重量部であり、さらに好ましくは0.05〜0.8重量部である。かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、ポリカーボネート樹脂に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0195】
第3態様のポリカーボネート樹脂は、高屈折率と優れた耐熱性を示し、しかも成形に適した流動性を有する。さらに、低複屈折で光学歪みが起こりづらいため、光学レンズの他に、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に使用される透明導電性基板、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料または機能材料用途に適した光学用成形体として有利に使用することができる。
【0196】
光学成形体の表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
【0197】
(光学レンズ)
第3態様のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学レンズは、高屈折率であり、耐熱性に優れるため、望遠鏡、双眼鏡、テレビプロジェクター等、従来、高価な高屈折率ガラスレンズが用いられていた分野に用いることができ、極めて有用である。必要に応じて、非球面レンズの形で用いることが好ましい。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
さらに、光学レンズは、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法など任意の方法により成形される。第2態様に係る発明により、ガラスレンズでは技術的に加工の困難な高屈折率低複屈折非球面レンズをより簡便に得ることができる。
【0198】
光学レンズへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
【0199】
(光学フィルム)
第3態様のポリカーボネート樹脂を用いて製造される光学フィルムは、透明性および耐熱性に優れるため、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される。
【0200】
光学フィルムへの異物の混入を極力避けるため、成形環境も当然低ダスト環境でなければならず、クラス6以下であることが好ましく、より好ましくはクラス5以下である。
なお、上記光学成形体以外の用途として、光ファイバー、光ディスク、自動車のテールライトやメーターカバーや、シリカなど適当な充填剤を用いた人工大理石等も挙げられる。
【0201】
<実施例>
以下に第3の態様を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法あるいは装置を用いて測定した。
1)ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw):GPCを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒として、既知の分子量(分子量分布=1)の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。この検量線に基づいて、GPCのリテンションタイムからMwを算出した。
2)屈折率(nD):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、JIS−K−7142の方法で測定した。
3)アッベ数(ν):実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数を算出した。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
4)ガラス転移温度(Tg):示差熱走査熱量分析計(DSC)により測定した。
5)熱分解開始温度(Td):示差熱天秤(TG−DTA)を使用し、空気気流下、重量が5%減少した温度を測定した。昇温速度は10℃/minである。
6)配向複屈折(Δn):厚さ0.1mmのキャストフィルムを5.0cm角の正方形に切出した後、フィルムの両端をチャックに挟み(チャック間3.0cm)、ポリカーボネート樹脂のTg+5℃で1.5倍に延伸した。日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
また複屈折符号は、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用い、上記延伸フィルムの面内で屈折率が最大となる方向を求め、延伸方向との関係から判断した。
複屈折符号が正の場合:延伸方向は、フィルム面内で屈折率が最大となる方向。
複屈折符号が負の場合:延伸方向は、フィルム面内で屈折率が最大となる方向と直交する方向。
7)全光線透過率:実施例で製造したポリカーボネート樹脂からなる厚さ0.1mmフィルムについて、日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用い、JIS−K−7361−1の方法で測定した。
【0202】
(1−1)ポリカーボネート樹脂の製造
(実施例1)
2,2’‐ビス(2‐ヒドロキシエトキシ)‐1,1’‐ビナフチル(以下“BHEBN”と省略することがある)13.4g(0.035モル)、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)35.6g(0.081モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)25.0g(0.117モル)、および炭酸水素ナトリウム8.8×10−5g(1.0×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で110分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃ /hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0203】
(実施例2)
BHEBN、BPEF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN17.1g(0.046モル)、BPEF30.1g(0.069モル)、DPC17.1g(0.046モル)および炭酸水素ナトリウム8.7×10−5g(1.0×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0204】
(実施例3)
BHEBN、BPEF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN30.0g(0.080モル)、BPEF15.1g(0.034モル)、DPC25.0g(0.117モル)、および炭酸水素ナトリウム8.7×10−5g(1.0×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0205】
(実施例4)
BHEBN、BPEF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN38.9g(0.104モル)、BPEF5.07g(0.012モル)、DPC25.0g(0.117モル)、および炭酸水素ナトリウム1.1×10−4g(1.3×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0206】
(実施例5)
窒素雰囲気760mmHgの下で180℃に加熱し、原料の完全溶解を確認後、同条件で110分間攪拌を行う操作を、30分間に短縮した以外は実施例1と同様に行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0207】
(実施例6)
BPEF49.7g(0.113モル)、ジフェニルカーボネート25.0g(0.117モル)、および炭酸水素ナトリウム8.7×10−5g(1.0×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下で180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で20分間攪拌した。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持し反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0208】
(比較例1)
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)からなるポリカーボネート樹脂として、商品名「ユーピロンH−4000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;Mw=33,000、Tg=148℃)を用いた。
【0209】
(1−2)光学フィルムの製造
実施例1〜6および比較例1で得られたポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度5.3重量%の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液をキャストフィルム作成型に流し込み、塩化メチレン揮発後に剥離、乾燥して、厚み0.1mmのキャストフィルムを作製した。そのキャストフィルムについて、屈折率(nD)、アッベ数(ν)および全光線透過率を評価した。また、得られたキャストフィルムをTg+5℃で1.5倍に延伸し、配向複屈折(Δn)を評価した。
なお、実施例5で得られたポリカーボネート樹脂は、分子量が低いため脆くキャストフィルム化できなかった。
【0210】
上述した実施例および比較例で得られた樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、および熱分解開始温度(Td)を測定し、表3−1および表3−2に記載した。また、表3−2における配向複屈折(Δn)の評価基準を表3−3に示した。
【表3-1】
【0211】
【表3-2】
【0212】
【表3-3】
【0213】
(2−1)ポリカーボネート樹脂の製造
(実施例7)
2,2´‐ビス(2‐ヒドロキシエトキシ)‐1,1´‐ビナフタレン(以下“BHEBN”と省略することがある)3.44g(0.009モル)、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン(以下“BEPF”と省略することがある)48.9g(0.083モル)、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)20.3g(0.095モル)、および炭酸水素ナトリウム1.5×10−4g(1.8×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で110分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0214】
(実施例8)
BHEBN、BEPF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN5.17g(0.014モル)、BEPF19.0g(0.032モル)、DPC10.0g(0.047モル)、炭酸水素ナトリウム9.7×10−5g(1.2×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0215】
(実施例9)
BHEBN、BEPF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN13.8g(0.037モル)、BEPF32.6g(0.055モル)、DPC20.0g(0.093モル)、炭酸水素ナトリウム1.5×10−4g(1.8×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0216】
(実施例10)
BHEBN、BEPF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN24.4g(0.065モル)、BEPF16.5g(0.028モル)、DPC20.2g(0.094モル)、炭酸水素ナトリウム1.6×10−4g(1.9×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0217】
(実施例11)
BHEBN、BEPF、DPCおよび炭酸水素ナトリウムの量を、BHEBN31.0g(0.083モル)、BEPF5.4g(0.009モル)、DPC20.0g(0.093モル)、炭酸水素ナトリウム1.5×10−4g(1.8×10−6モル)に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0218】
(実施例12)
BEPF54.3g(0.092モル)、DPC20.2g(0.094モル)、および炭酸水素ナトリウム1.5×10−4g(1.8×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で20分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃/hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0219】
(比較例1)
ビスフェノールA(以下“BPA”と省略することがある)からなるポリカーボネート樹脂として、商品名「ユーピロンH−4000」(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製;Mw=33,000、Tg=148℃)を用いた。
【0220】
(比較例2)
BHEBN24.4g(0.065モル)、BPEF16.5g(0.028モル)、DPC20.2g(0.094モル)、および炭酸水素ナトリウム1.6×10−4g(1.9×10−6モル)を攪拌機および留出装置付きの300ml四口フラスコに入れ、窒素雰囲気760mmHgの下、180℃に加熱した。加熱開始10分後に原料の完全溶解を確認し、その後同条件で20分間攪拌を行った。その後、減圧度を200mmHgに調整すると同時に、60℃/hrの速度で200℃まで昇温を行った。この際、副生したフェノールの留出開始を確認した。その後、20分間その温度に保持して反応を行った。さらに、75℃ /hrの速度で230℃まで昇温し、昇温終了10分後、その温度で保持しながら、1時間かけて減圧度を1mmHg以下とした。その後、60℃/hrの速度で240℃まで昇温し、さらに30分間攪拌下で反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込んで常圧に戻し、生成したポリカーボネート樹脂を取り出した。
【0221】
(2−2)光学フィルムの製造
実施例7〜12、比較例1および2で得られたポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解させ、固形分濃度5.3重量%の樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液をキャストフィルム作成型に流し込み、塩化メチレン揮発後に剥離、乾燥して、厚み0.1mmのキャストフィルムを作製した。そのキャストフィルムについて、屈折率(nD)、アッベ数(ν)および全光線透過率を評価した。また、得られたキャストフィルムをTg+5℃で1.5倍に延伸し、配向複屈折(Δn)を評価した。
なお、比較例2で得られたポリカーボネート樹脂は、分子量が低いため脆くキャストフィルム化できなかった。
【0222】
上述した実施例および比較例で得られた樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、熱分解開始温度(Td)を測定し、表3−4および表3−5に記載した。また、表3−5における配向複屈折(Δn)の評価基準を表3−6に示した。
【表3-4】
【0223】
【表3-5】
【0224】
【表3-6】