(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記洗浄手段は、前記ろ過膜をスクラビングするための曝気ブロアを有し、前記ろ過膜をスクラビングする気体は、前記膜ろ過槽に供給される被処理液に混合され、この気液混合物が前記膜ろ過槽に供給される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膜分離メタン発酵処理装置。
メタン発酵を行うメタン発酵槽と、当該メタン発酵槽の被処理液が供給され、この被処理液からろ液を分離する膜ろ過槽と、前記膜ろ過槽に供給される被処理液を加温する加温手段と、前記膜ろ過槽に設けられたろ過膜の洗浄を行う洗浄手段と、前記膜ろ過槽の被処理液を前記メタン発酵槽に返送する返送配管と、を有する膜分離メタン発酵処理装置による膜分離メタン発酵処理方法であって、
前記加温手段から、前記膜ろ過槽の前段において前記メタン発酵槽の温度制御に必要な熱量の全部を供給し、前記膜ろ過槽に供給される被処理液を前記メタン発酵槽の設定温度よりも高い温度に加温して、前記メタン発酵槽の温度を制御する
ことを特徴とする膜分離メタン発酵処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る膜分離メタン発酵処理装置及び膜分離メタン発酵処理方法について図を参照して詳細に説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置の概略図である。
図1に示すように、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1は、メタン発酵槽2、膜ろ過槽3、熱交換器4を有する。
【0016】
メタン発酵槽2は、メタン菌によるメタン発酵を行う。メタン発酵槽2には、被処理液が供給される配管5と、メタン発酵槽2を循環する被処理液の一部を膜ろ過槽3へ供給する供給配管6が設けられる。この供給配管6には、循環ポンプ7及び熱交換器4が設けられる。なお、配管5には、必要に応じて熱交換器(図示せず)が設けられ、メタン発酵槽2に供給される被処理液が加温される。
【0017】
メタン発酵槽2での発酵法として、例えば、36〜38℃で発酵を行う中温発酵法と、50〜60℃で発酵を行う高温発酵法がある。高温発酵法は、高温メタン菌が、36〜38℃で活性が大きくなる中温メタン菌と比較して2〜3倍の活性を有しており、高温メタン菌でメタン発酵を行うことで分解速度の向上と消化率の向上を図ることができる。このように、高温発酵法は有機物の分解効率が高いので、メタン発酵槽2を小さくできる。高温発酵法は高速処理が可能であるが、通常、温度が高いとメタン菌の死滅速度が上昇し、特に高温側で60℃を超えた場合には、著しくメタン菌が死滅することとなる。このため、高温発酵法では、メタン発酵槽2内の温度を常時一定範囲内に管理して、高温によるメタン菌の死滅を防いでいる。
【0018】
熱交換器4は、膜ろ過槽3に供給される被処理液を加温する。熱交換器4として、例えば、温水を循環して熱交換を行うスパイラル熱交換器などが用いられる。熱交換器4は、被処理液を加温できる周知の熱交換器が選択して用いられ、特に、詰まりにくく、耐食性に優れたものが好ましい。
【0019】
膜ろ過槽3は、メタン発酵槽2を循環する被処理液の一部が供給され、被処理液のろ過処理を行う。膜ろ過槽3の下部には、被処理液が供給される供給配管6が設けられ、膜ろ過槽3の上部には、膜ろ過槽3からオーバーフローする被処理液とともにスクラビング用の気体をメタン発酵槽2に返送する返送配管8が設けられる。また、膜ろ過槽3の被処理液に浸漬してろ過膜9が設けられ、このろ過膜9の下方に散気装置10が設けられる。
【0020】
ろ過膜9は、膜ろ過槽3内の被処理液のろ過を行う。ろ過膜9には、吸引ろ過されたろ液が排出される排出配管11が設けられる。つまり、排出配管11には、図示省略の吸引ポンプが設けられ、この吸引ポンプで被処理液に浸漬されたろ過膜9を吸引することで、ろ過膜9で吸引ろ過されたろ液が排出配管11を通って系外に移送される。ろ過膜9のろ過面積は、設計ろ過流量に基づいて適宜設定される。ろ過膜9は、例えば、セラミック平膜である。セラミック平膜を複数設ける場合は、膜面を対向させて各セラミック平膜を並列して設け、この並列に設けられたセラミック平膜間を被処理液が流通するようにセラミック平膜が膜ろ過槽3内に配置される。なお、ろ過膜9は、セラミック平膜に限定されるものではなく、有機中空糸膜、有機平膜、無機平膜、無機単管膜などを用いることができる。ろ過膜9の材質としては、セラミックの他に、セルロース、ポリオレフィン、ポリスルホン、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)などが例示される。また、ろ過膜9に形成される孔径は、固液分離の対象となる物質の粒径に応じて選択される。例えば、活性汚泥の固液分離に用いるならば、0.5μm以下の孔径を有するろ過膜が用いられ、また、浄水のろ過のように、除菌が必要な場合は0.1μm以下の孔径を有するろ過膜9が用いられる。
【0021】
散気装置10は、ろ過膜9の下方に設けられ、ろ過膜9のスクラビングを行う。散気装置10としては、例えば、配管に適当な間隔をあけて散気孔が形成されたものが用いられ、メタン発酵槽2で発生した気体が曝気ブロア12により供給される。散気装置10は、ろ過膜9にスクラビング用の気体を供給できるものであれば適宜周知の散気装置を用いればよいが、膜ろ過槽3内の被処理液は有機物濃度や粘度が高いので、散気孔の目詰まりや散気量の減少が生じにくい散気装置を用いることが好ましい。
【0022】
実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1では、メタン発酵槽2を循環する被処理液が加温されて膜ろ過槽3の下部から供給される。膜ろ過槽3に供給された被処理液は散気装置10のスクラビングによる上昇流に乗ってろ過膜9を通過し、ろ過膜9で被処理液の固液分離が行われる。ろ過膜9を通過後の被処理液のオーバーフロー分は膜ろ過槽3の上部にて回収されるスクラビング用の気体とともに返送配管8を通ってメタン発酵槽2に返送される。なお、返送配管8は、被処理液のオーバーフロー分の返送専用とし、メタン発酵槽2へのスクラビング用の気体の返送は、別途メタン発酵槽2と膜ろ過槽3に連通管を設けて行ってもよい。
【0023】
[膜分離メタン発酵処理装置の温度制御]
ここで、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1の温度制御方法について説明する。
【0024】
膜分離メタン発酵処理装置1では、メタン発酵槽2、熱交換器4、膜ろ過槽3の温度がそれぞれ制御される。メタン発酵槽2の槽内設定温度をT
1(℃)とし、メタン発酵槽2の容積をV
1(m
3)とする。また、熱交換器4の制御温度をT
2(℃)とし、熱交換器4による供給熱エネルギーをJ(J/hr)、熱交換器4の循環量をQ(m
3/hr)とする。そして、膜ろ過槽3の管理温度をT
3(℃)とする。膜ろ過槽3には、熱交換器4で加温された被処理液が供給されるので、T
3≒T
2である。
【0025】
メタン発酵槽2で、中温発酵を行う場合、メタン発酵槽2内の温度が、36〜38℃の範囲内となるように制御される。例えば、37℃を設定温度T
1として、この設定温度T
1を管理目標とした熱交換器4の加温制御が行われる。また、メタン発酵槽2で、高温発酵を行う場合、メタン発酵槽2内の温度が、50〜60℃の範囲内となるように制御される。例えば、55℃を設定温度T
1として、この設定温度T
1を管理目標として熱交換器4の加温制御が行われる。
【0026】
メタン発酵槽2での発酵温度を維持するのに必要とされる熱エネルギーを熱交換器4から供給する場合、熱交換器4から供給する供給熱エネルギーJは、メタン発酵槽2へ流入する被処理液の加温エネルギーと膜ろ過槽3から流出するろ液による損失熱エネルギー、外気温との関係にて変動する放熱による損失(各槽の外壁・配管などから)などのエネルギー収支から決定される。
【0027】
そして、メタン発酵槽2の容積V
1、循環量Qにより決定されるメタン発酵槽2内の被処理液の入替え率である循環比率(Q/V
1)を適切に制御(循環量Qを適切に制御)することで、メタン発酵槽2内の設定温度T
1と熱交換器4の制御温度T
2との温度差(ΔT=T
2−T
1)を維持したシステム制御を行うことができる。例えば、ΔTを5℃程度とすることができる。
【0028】
一般的に、化合物の溶解度は、液温が高くなるほど(溶解度)が高くなるので、ΔTは、大きくするほどろ過膜に析出する結晶(リン成分などの無機成分の結晶)を抑制する効果がある。制御温度T
2は、ろ過膜9のメンテナンス周期やメタン菌が生存できる温度(例えば、60℃を超えない範囲内)などを考慮して設定される。
【0029】
しかし、循環量Qが少なくなり循環比率が小さくなる場合には、供給熱エネルギーJを一定とするために、熱交換器4の制御温度T
2をより高く設定してΔTを大きくする必要がある。その結果、熱交換器4を通過後の被処理液の温度が60℃を超えた場合には、著しくメタン菌が死滅する。高温発酵法の場合、制御温度T
2がメタン菌が生存できる温度を超える場合が想定されるが、被処理液の温度が上昇することで、メタン菌の増殖速度も著しく増加する。よって、循環比率(Q/V
1)が小さく、高温発酵法によりメタン発酵を行う場合には、制御温度T
2を60℃以上に設定可能であり、メタン菌の死滅する速度とメタン菌の増殖速度とのバランスを考慮して、ΔTが決定される。
【0030】
なお、膜分離メタン発酵処理装置1では、膜ろ過槽3におけるろ液取り出しに支障のない範囲で循環量Qを設定すればよく、必要となる供給熱エネルギー量Jは、すべて熱交換器4にて供給する必要はない。そのため、別途加温専用の熱交換器を併設して、複数の熱交換器によりメタン発酵槽2を加温し、熱交換器4が供給する熱エネルギーだけでは不足する熱エネルギー量を補う形態としてもよい。
【0031】
以上のように、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1によれば、膜ろ過槽3に供給される被処理液をメタン発酵槽2の設定温度よりも高い温度となるように加温することで、リン成分などの無機物質の結晶がろ過膜9に析出することを抑制し、ろ過膜9の透水性を維持することができる。
【0032】
ろ過膜9の目詰まりを抑制することで、ろ過膜9に析出した無機物質を洗浄する洗浄工程を行う周期を長くすることができ、膜分離メタン発酵処理装置1の稼働率が向上する。さらに、ろ過膜9の洗浄を行う薬剤のコスト及び薬剤注入作業などのメンテナンスコストを低減することができる。
【0033】
また、膜ろ過槽3に加温した被処理液を供給することで、膜ろ過槽3内の温度制御を容易に行うことができる。
【0034】
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13の概略図である。実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13は、メタン発酵槽2から膜ろ過槽3供給される被処理液にろ過膜9のスクラビングを行う気体を混合すること以外は、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1と同じである。よって、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1と同じ構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0035】
図2に示すように、実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13は、メタン発酵槽2、膜ろ過槽3、熱交換器4を有する。
【0036】
メタン発酵槽2を循環する被処理液の一部を膜ろ過槽3へ供給する供給配管6には、循環ポンプ7及び熱交換器4が設けられる。また、供給配管6には気体供給配管14が接続され、メタン発酵槽2で発生した気体が曝気ブロア12により供給配管6に供給される。そして、加温された被処理液とスクラビング用の気体を混合した気液混合物が膜ろ過槽3の下部から供給される。
【0037】
膜ろ過槽3には、ろ過膜9が設けられ、このろ過膜9の下方には、散気板15が設けられる。散気板15は供給配管6から供給された気液混合物を分散させる。気液混合物が分散板15で分散されることで、供給配管6から供給される被処理液とスクラビング用の気体がろ過膜9により均等に供給される。
【0038】
以上のように、実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13によれば、膜ろ過槽3に供給される被処理液にスクラビング用の気体を混合することで、実施形態1に係る膜分離メタン発酵処理装置1の効果に加えて、膜ろ過槽3内の攪拌が十分に行われるとともに、ろ過膜9面を流通する膜面流速を確保することができる。
【0039】
[実施形態3]
図3は、本発明の実施形態3に係る膜分離メタン発酵処理装置16の概略図である。実施形態3に係る膜分離メタン発酵処理装置16は、供給配管6から膜ろ過槽3に供給される気液混合物が加温後に膜ろ過槽3に供給されること以外は、実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13と同じである。よって、実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13と同じ構成については、同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0040】
図3に示すように、実施形態3に係る膜分離メタン発酵処理装置16は、メタン発酵槽2、膜ろ過槽3、熱交換器4を有する。
【0041】
メタン発酵槽2を循環する被処理液の一部を膜ろ過槽3へ供給する供給配管6には気体供給配管14が接続され、メタン発酵槽2で発生した気体が曝気ブロア12により供給配管6に供給される。また、供給配管6には、循環ポンプ7及び熱交換器4が設けられる。この熱交換器4は、気体供給配管14が接続部される接続部(混合点)より下流に設けられる。
【0042】
つまり、供給配管6の接続部でメタン発酵槽2から膜ろ過槽3に供給される被処理液とスクラビング用の気体が混合され、この気液混合物が熱交換器4で加温された後、膜ろ過槽3の下部から供給される。
【0043】
膜ろ過槽3には、ろ過膜9が設けられ、このろ過膜9の下方には、散気板15が設けられる。散気板15は供給配管6から供給された気液混合物を分散させ、被処理液とスクラビング用の気体がろ過膜9に均等に供給される。
【0044】
以上のように、実施形態3に係る膜分離メタン発酵処理装置16によれば、熱交換器4により温度制御された気液混合物が膜ろ過槽3に供給されるので、被処理液とスクラビング用の気体との温度差の影響を受けず膜ろ過槽3に所定の温度に制御された気液混合物を供給することができる。その結果、実施形態2に係る膜分離メタン発酵処理装置13の効果に加えて、安定したろ過操作を行うことができる。
【0045】
[参考例]
発明者らは、
図4に示す参考例に係る膜分離メタン発酵処理装置17で実下水処理場の消化汚泥を用いた膜ろ過試験を行い、被処理液の液温とセラミック平膜23の膜差圧との関係について検討した。
【0046】
膜分離メタン発酵処理装置17は、原液槽18と、膜ろ過槽19と、ろ過水槽20とを有する。
【0047】
原液槽18の被処理液には、調温コントローラにより制御されるクーラとヒータを浸漬し、被処理液の温度が20℃(または40℃)となるように温度制御を行った。原液槽18の被処理液を原液供給ポンプ21で膜ろ過槽19へ4.5〜1.0m/dで供給し、膜ろ過槽19からのオーバーフローは、返送配管22を通して原液槽18へ返流した。
【0048】
膜ろ過槽19は、アクリル製であり、幅100mm×奥行50mm×高さ500mm(有効容積2.5L)のものを用いた。膜ろ過槽19の被処理液に浸漬してセラミック平膜23を設け、セラミック平膜23の下方にスクラビング用のエアの散気を行う散気管24を設けた。エアポンプ25で散気管24にエアを供給してセラミック平膜23のスクラビングを行い、セラミック平膜23をろ過吸引ポンプ26により吸引し、ろ過流速0.3〜1.0m/dで被処理液のろ過を実施した。セラミック平膜23の膜面積は、0.036m
2であり、その仕様を表1に示す。
【0050】
セラミック平膜23の膜差圧は、圧力計PI(長野計器株式会社製、型式GC61−174)で測定し、セラミック平膜23のろ過流量は、流量計FI(株式会社キーエンス製、型式FD−SS02A)で計測した。
【0051】
試験に用いた消化汚泥は、都市下水を処理する下水処理場の消化槽の出口から採取し、目開き2mmのスリットを通過させて夾雑物を除去したものを供試汚泥として、原液槽18に供給した。供試汚泥の性状を表2に示す。また、原液槽18から膜ろ過槽19に供給される被処理液及び、セラミック平膜23でろ過されたろ液(ろ過水槽20のろ液)の性状を表3に示す。
【0054】
表2及び表3の項目における記号は、それぞれ、COD:化学的酸素要求量、BOD:生物化学的酸素要求量、T−N:全窒素量、T−P:全リン量、TS:全固形物量、VS:焼却減量である。
【0055】
セラミック平膜23におけるろ過処理は、原液供給ポンプ21を動作させて被処理液を膜ろ過槽19に供給し、エアポンプ25で散気管24にエアを供給してセラミック平膜23のスクラビング(25〜100m/d)を行いながら、ろ過吸引ポンプ26を動作させて行った。ろ過処理を10分行う毎に1分間セラミック平膜23の逆洗浄工程を行った。逆洗浄工程は、動作時の状態から、ろ過吸引ポンプ26を停止し、返送ポンプ27で、ろ過水槽20のろ液をセラミック平膜23に返液(0.3〜1.0m/d)して行った。
【0056】
図5は、原液槽18の温度を20℃に設定した場合のろ過処理時間に対するセラミック平膜23の膜差圧及び膜ろ過槽19の被処理液の温度の関係を示す特性図である。また、
図6は、原液槽18の温度を40℃に設定した場合のろ過処理時間に対するセラミック平膜23の膜差圧及び膜ろ過槽19の被処理液の温度の関係を示す特性図である。なお、
図5、6では、周期的にセラミック平膜23の膜差圧が低下しているが、これは、セラミック平膜23の逆洗浄を行った後の膜差圧である。
【0057】
図5に示すように、原液槽18の温度を20℃に設定した場合、セラミック平膜23の膜差圧は、18kPaから徐々に増加し、最終的(ろ過操作継続時間約240分間)には87kPaまで上昇した。そして、ろ過処理工程−逆洗浄工程周期の11分間で、セラミック平膜23の膜差圧の変動が激しく不安定であった。また、膜ろ過槽19の温度は、原液槽18の制御温度と同じ20℃付近であった。
【0058】
このように、実際のメタン発酵槽の中温発酵温度(37℃)より低い温度にて、ろ過処理を行うと、セラミック平膜23の逆洗浄工程の影響が大きく、逆洗浄工程を行うことでセラミック平膜23の膜差圧が大きく減少する。
【0059】
一方、
図6に示すように、原液槽18の温度を40℃に設定した場合、セラミック平膜23の膜差圧は4kPaでほぼ一定(ろ過操作継続時間約240分間)で安定していた。そして、膜ろ過槽19の温度は、原液槽18の制御温度とほぼ同じ40℃であった。
【0060】
このように、実際のメタン発酵槽の中温発酵温度(37℃)と同じ程度の温度でろ過処理を行うと、ろ過処理によるセラミック平膜23の膜差圧の上昇が少なく、逆洗浄工程を行うことでセラミック平膜23の膜差圧はほとんど変化しない。
【0061】
図5、
図6に示したように、膜ろ過槽19内の温度差により、ろ過処理継続時間に対するセラミック平膜23の膜差圧の挙動が大きく異なる。
【0062】
膜差圧の挙動に影響を及ぼす因子として、被処理液の粘度の影響が想定される。一般的に液体の粘度は温度が上昇すると低下する。つまり、膜ろ過槽19内の温度が高いほど、被処理液の粘度が低下して、レイノルズ数の値も高くなる。しかし、レイノルズ数の値の変化は、セラミック平膜23の膜差圧の変化に対して、それほど顕著な数値の差とならなかった。
【0063】
表2に示すように、下水汚泥等には、多量のリンが含まれていることが知られており、下水や下水汚泥からのリンの回収・活用の研究開発が進められている。また、表3に示すように、ろ過水槽20のろ液でも高い濃度のリンが含まれている。ゆえに、セラミック平膜23の透水性を低下させる要因は、被処理液中に含まれるリン成分によるセラミック平膜23の閉塞であるものと考えられる。
【0064】
よって、リン成分などの無機成分の析出によるセラミック平膜23の閉塞を低減することで、セラミック平膜23の膜差圧の上昇を抑制することができるものと考えられる。
【0065】
これら無機成分は、薬剤を用いて除去することができる。しかし、リン成分などの無機成分を薬剤で除去する場合、付着した無機成分の結晶を除去することはできても、セラミック平膜23に無機成分の結晶が付着すること抑制することはできない。セラミック平膜23に付着した無機成分は、結晶成長の核となり無機成分の結晶の成長速度を増加させ、セラミック平膜23の閉塞を促進する。
【0066】
これに対して、本発明の実施形態に係る膜分離メタン発酵処理装置1,13,16は、ろ過膜9に供給される被処理液を加温しているので、ろ過膜9のろ過に供される被処理液中の無機成分の溶解度が高くなる。その結果、ろ過膜9に無機成分が析出することを抑制するだけでなく、ろ過膜9に無機成分の結晶が付着することを抑制することができる。つまり、ろ過膜9の膜差圧の増加をより低減することができる。