特許第6327449号(P6327449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327449
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】カップ部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/12 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   A41C3/12 A
   A41C3/12 C
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-67558(P2014-67558)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190079(P2015-190079A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100103056
【弁理士】
【氏名又は名称】境 正寿
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】金澤 麻梨子
(72)【発明者】
【氏名】石井 圭子
(72)【発明者】
【氏名】安井 麻子
(72)【発明者】
【氏名】一場 綾
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−214916(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0237156(US,A1)
【文献】 特開平11−172504(JP,A)
【文献】 特開2005−023497(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3143921(JP,U)
【文献】 特開2012−052270(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3118742(JP,U)
【文献】 実公昭47−003454(JP,Y1)
【文献】 特開2006−132044(JP,A)
【文献】 特開2013−213304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ部を有する衣類であって、
一対のカップ部、カップ支持部、肩ストラップ、およびバック布を備え、
前記カップ支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記肩ストラップは、前記一対のカップ部の上部に設けられ、
前記バック布は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記カップ部は、立位におけるバージスラインに沿う形状のカップくりを有し、前記カップくりの内側下部にサポート部材が設けられており、
前記カップ部のカップくりの形状は、仰臥位におけるバージスラインに沿う形状に変化可能であり、
前記サポート部材は、
下記で定義される内バージス点とバストトップ点と下記で定義される下カップ点とを順に結び形成される角の二等分線とバージスラインとの交点と、
下記で定義される脇バージス点と
を少なくとも通り、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿って前記カップ部の下部に設けられており、かつ、
前記サポート部材の下縁部は、前記カップ部のカップくりまたは前記カップ支持部に取り付けられており、前記サポート部材のバストトップ点側の縁部は、前記衣類を構成する他の部材に固定されていない
ことを特徴とするカップ部を有する衣類。
内バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの前中心側の
バージスラインとの交点
下カップ点 :バストトップ点を通る垂線と下部バージスラインとの交点
脇バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの脇側の
バージスラインとの交点
【請求項2】
前記カップ部のカップくりは、前中心側において、前記内バージス点よりも上方まで延びている、請求項1記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
さらに、前側サポート部材を備え、
前記前側サポート部材は、
前記内バージス点と、前記角の二等分線とバージスラインとの交点とを少なくとも通り、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿って前記カップ部の前中心側に設けられており、かつ、
前記前側サポート部材のバストトップ点側の縁部は前記衣類を構成する他の部材に固定されていない、請求項1または2記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記サポート部材と前記前側サポート部材とは、下部バージスラインにおいて少なくとも一部が重なるように配置されている、請求項記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記サポート部材と前記前側サポート部材とで、バストの膨らみの周縁部を一周取り囲んでいる、請求項または記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
衣類がブラジャーである、請求項1からのいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項7】
前記カップ部は、バストを露出させた状態で保持するように形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項8】
カップ部を有する衣類の設計方法であって、
カップ部は、その内側にサポート部材が設けられており、
前記カップ部として、着用者の立位におけるバージスラインに沿う形状のカップくりを有するカップ部を用意し、
前記カップ部のカップくりの形状は、仰臥位におけるバージスラインに沿う形状に変化可能であり、
前記サポート部材を、
着用者において、下記で定義される内バージス点とバストトップ点と下記で定義される下カップ点とを順に結び形成される角の二等分線とバージスラインとの交点と、
下記で定義される脇バージス点とを少なくとも通り、着用者のバストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿って前記カップくりの内側下部に配置するように前記カップ部の下部に設け、かつ、
前記サポート部材の下縁部を前記カップ部のカップくりまたは前記カップ支持部に取り付け、前記サポート部材のバストトップ点側の縁部は、前記衣類を構成する他の部材に固定しない
ことを特徴とするカップ部を有する衣類の設計方法。
内バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの前中心側の
バージスラインとの交点
下カップ点 :バストトップ点を通る垂線と下部バージスラインとの交点
脇バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの脇側の
バージスラインとの交点
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関し、特に、就寝時において好適に着用することができるブラジャー等のカップ部を有する衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラジャー等のカップ部を有する衣類は、日中の起きている間に着用され、就寝時には外されている場合が多かったが、近年では就寝時にブラジャーが着用される場合も増えている。就寝時にブラジャーを着けている理由は、「バストが垂れて型崩れをさせないようにするため。」、「着けないとバストが移動して安定せず、落ち着かない。」等である。しかし、ブラジャーを着けていることにより、「アンダーバスト部分の締め付け感がある。」、「ワイヤーが肌に当たって不快感がある。」等の問題点が挙げられた。
【0003】
市販されている大半のブラジャーは、立ち姿勢を基準として設計され、立ち姿勢時にバストを引き上げると共に前方に寄せて、美しく外観を保持する構成とされている。即ち、立ち姿勢でのバスト膨出部の外輪線の下縁から左右両側縁に沿ってワイヤーを取り付け、該ワイヤーでバストを垂れ下がらずに上向きとなるように肩ストラップによって支持すると共に脇側に流れないように前向きに寄せる構成とされ、かつ、背面の留め具で土台部を背面側に引っ張ってカップ部を位置決め保持している。
【0004】
前記した一般的なブラジャーは、就寝時に着用することを意図していないため、就寝時に着用すると締付感や窮屈感が生じることとなる。そこで、就寝時に着用することを前提としたブラジャーが提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−23497号公報
【特許文献2】特開2009−228146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の就寝時用ブラジャーは、就寝時の仰向け姿勢(仰臥姿勢)や横向き姿勢(側臥姿勢)でのバージスラインを基準とした設計がなされていた。そのため、就寝時における窮屈感や締付感はない一方で、就寝時用ブラジャー着用開始時から実際に就寝するまでの間、すなわち立位状態においては、安定支持が不十分となりやすい。就寝時用ブラジャー着用者に対する調査を行ったところ、全体の80%以上が入浴後に着用し、2時間以上たってから就寝するとの結果が得られており、「就寝時用ブラジャーは就寝直前に着用する」割合よりも、「入浴の際に就寝時の衣類に着替え、その着衣のまま就寝までの時間を過ごす」割合が高くなっている。
【0007】
本発明は、特に、就寝姿勢においてここちよく眠るための着け心地の良さを維持しつつ、さらに、サポート感を実感できるよう着用安定性を向上させた、カップ部を有する衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明のカップ部を有する衣類は、
一対のカップ部、カップ支持部、肩ストラップ、およびバック布を備え、
前記カップ支持部は、前記一対のカップ部の下縁に設けられ、
前記肩ストラップは、前記一対のカップ部の上部に設けられ、
前記バック布は、前記カップ部の脇側に設けられ、
前記カップ部は、立位におけるバージスラインに沿う形状のカップくりを有し、前記カップくりの内側下部にサポート部材が設けられており、
前記カップ部のカップくりの形状は、仰臥位におけるバージスラインに沿う形状に変化可能であり、
前記サポート部材は、
下記で定義される内バージス点とバストトップ点と下記で定義される下カップ点とを順に結び形成される角の二等分線とバージスラインとの交点と、
下記で定義される脇バージス点と
を少なくとも通り、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿って前記カップ部の下部に設けられており、かつ、
前記サポート部材の下縁部は、前記カップ部のカップくりまたは前記カップ支持部に取り付けられており、前記サポート部材のバストトップ点側の縁部は、前記衣類を構成する他の部材に固定されていない
ことを特徴とする。
内バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの前中心側の
バージスラインとの交点
下カップ点 :バストトップ点を通る垂線と下部バージスラインとの交点
脇バージス点:バストトップ点を通る水平線と、バストの膨らみの脇側の
バージスラインとの交点
【発明の効果】
【0009】
本発明のカップ部を有する衣類は、カップ部を有する衣類において、ここちよく眠るための着け心地の良さを維持しつつ、サポート感を実感できるよう着用安定性を向上させることができる。また、衣類のサイズ設定において、例えば、JIS規格における各サイズ区分の境目近傍のボデイサイズに該当する着用者においても、バストの膨らみの周縁部(以下、「バスト裾野」と呼ぶ場合がある。)を安定して保持することができ、衣類のアンダーバスト部分がズレ上がるといった着崩れを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るブラジャーを示す斜視図である。左側のバストを覆うカップ部は、表カップ布を外した状態を示す。
図1B図1Bは、本発明のカップ部を有する衣類の一例である、第一の実施形態に係るブラジャーの表カップ布を装着した状態を示す斜視図である。
図2図2(a)は、立位(立っている状態)におけるヌード状態でのバスト部分の部位を説明する図であり、図2(b)は、図2(a)において本発明のブラジャーを装着した状態での衣類の部位を説明する図である。
図3図3は、本発明におけるサポート部材の配置位置を説明する図である。
図4図4は、第一の実施形態の変形例に係るブラジャーを示す斜視図である。
図5図5(a)〜(c)は、本発明におけるサポート部材の形状の他の例を示す図である。
図6図6(a)〜(c)は、比較例のサポート部材の配置位置の例を示す図である。
図7図7は、ヌード状態における右バスト周辺部分を、正面斜め右側から見た図である。図7(a)は、立位におけるバスト周辺部分、図7(b)は仰臥位におけるバスト周辺部分である。
図8図8は、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第五の実施形態に係るキャミソールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカップ部を有する衣類について、例をあげて説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。
【0012】
(第一の実施形態)
図1Aおよび図1Bに、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態に係るブラジャー100を示す。本実施形態のブラジャー100は、一対のカップ部101、一対の肩ストラップ102、バック布103、および、カップ支持部105を主要構成要素とする、就寝時用ブラジャーである。本実施形態のブラジャー100は、バック布103が連結係止部を有していない、被って着用するタイプのブラジャーである。一対の肩ストラップ102は、一対のカップ部101の上部に設けられている。本実施形態においては、一対の肩ストラップ102は、背中側においてバック布103と一体に形成されている。前記一対のカップ部101は、カップ支持部105によって前中心部分で連結され、一体となっている。前記一体となったカップ部の両脇部には、カップ支持部105を介してバック布103が取り付けられている。
【0013】
図1Aにおいて、左側のバストを覆うカップ部101は、構造をわかりやすくするために、表カップ布104を外した状態で図示している。図1Bは表カップ布104を装着した状態である。カップ部101は、立位におけるバージスラインVに沿う形状のカップくりCを有し、カップくりCの内側下部にサポート部材110が設けられている。サポート部材110は、内バージス点Iとバストトップ点Tと下カップ点Uとを順に結び形成される角の二等分線とバージスラインVとの交点Xと、脇バージス点Oとを少なくとも通るように位置し、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿ってカップ部101の下部に設けられている。
【0014】
ここで図2を参照し、前記の各点について説明する。図2(a)は、立位(立っている状態)におけるヌード状態でのバスト部分の部位を説明する図であり、図2(b)は、図2(a)において本発明のブラジャーを装着した状態での衣類の部位を説明する図である。内バージス点Iは、バストトップ点Tを通る水平線L1と、バストの膨らみの前中心側のバージスラインVとの交点である。下カップ点Uは、バストトップ点Tを通る垂線L2と下部バージスラインVとの交点である。脇バージス点Oは、バストトップ点Tを通る水平線L1と、バストの膨らみの脇側のバージスラインVとの交点である。前記において、水平とは立位における左右方向を、垂直とは立位における上下方向を、それぞれ指す。
【0015】
サポート部材110は、下縁部においてカップ部101のカップくりC部分またはカップ支持部105に取り付けられている。そして、図1の態様においては、サポート部材110の上端部は肩ストラップ102に取り付けられている。サポート部材110のバストトップ点T側の縁部、すなわち、カップ部110内を亘るように設けられている縁部は、ブラジャー100を構成する他の部材に固定されておらず、遊離した状態となっている。
【0016】
ここで、姿勢によるバストの動きについて説明する。図7は、ヌード状態における右バスト周辺部分を、正面斜め右側から見た図である。図7(a)は、立位におけるバスト周辺部分、図7(b)は仰臥位におけるバスト周辺部分である。各図においては、バストの動きをわかりやすくするために、基準線および基準点を付与してある。
【0017】
立位でのバストトップ点Tと内バージス点Iとの距離をA、仰臥位でのバストトップ点Tと内バージス点Iとの距離をA’とする。また、立位でのバストトップ点Tと脇バージス点Oとの距離をB、仰臥位でのバストトップ点Tと脇バージス点Oとの距離をB’とする。前記距離については、立位、仰臥位のいずれもバストトップ点Tと内バージス点Iとの距離の方がバストトップ点Tと脇バージス点Oとの距離よりも短く、A<BおよびA’<B’の関係となっている。このとき、バスト内側については変化が小さく、A≒A’であるが、バスト外側については、B<B’となっている。すなわち、バストトップ点Tを基準とすると、バスト内側よりもバスト脇側の方が広がりを有しており、姿勢変化時の変化量が大きいことがわかる。さらに、脇バージス点Oと内バージス点Iとの2点間の距離を破線で示す。仰臥位においては、バストが立位よりも広がってバージス間隔が広くなっていることがわかる。ここで、バージス間隔とは、バストトップ点Tと脇バージス点Oとの距離、および、バストトップ点Tと内バージス点Iとの距離を足し合わせた長さを意味する。そして、図中の矢印で示す箇所は、皮膚の移動が大きく生じている一方、内バージス点Iから図中の黒色星印の位置にかけては、皮膚の移動等の変化が小さいことがわかる。なお、この黒色星印の位置は、内バージス点Iとバストトップ点Tとバージスラインの最下点(下カップ点U)とを順に結び形成される角の二等分線とバージスラインとの交点X付近であることがわかった。発明者らは、このようなバストの形状変化に追随・対応してバストボリュームをサポートするには、姿勢変化において変化の大きい部分をサポートすることがより効果的であることを見出して本発明に至った。
【0018】
このようなバストの形状変化に追随・対応したバストボリュームのサポートが可能である本発明のカップ部を有する衣類は、さらには、衣類のサイズ設定において境界サイズに該当する着用者においても、バストボリュームのサポートを良好に行い、着崩れ等を防ぐことが可能である。ここで、境界サイズとは、各サイズ区分で想定されている寸法範囲のうち上限近傍または下限近傍に位置する寸法を意味している。具体的には、例えば、JIS規格では、Sサイズ(72cm〜80cm)、Mサイズ(79cm〜87cm)、Lサイズ(86cm〜94cm)、LLサイズ(93cm〜101cm)、3L(100cm〜108cm)と規定されている。これらのS〜3Lの各サイズ範囲のうち、異なる2つのサイズに重複して設定されている寸法、例えば、SサイズとMサイズでは、79cm〜80cmが境界サイズに該当する。なお、ここでは、境界サイズとしてJIS規格に定められたS〜3Lの区分を用いた場合を説明したが、これに限定されるものではなく、他の規格によって定められたサイズ区分における境界サイズにも適用可能である。
【0019】
図3は、本発明におけるサポート部材の配置位置を説明する図である。立位・仰臥位間での姿勢変化におけるバージスラインおよびバストの形状変化に追随・対応し、バストボリュームをサポートできる構造とするためには、サポート部材は、前記変化の小さい部位(図中二点鎖線で囲んだ領域S1)を起始部とし、前記変化の大きい部位(図中二点鎖線で囲んだ領域S2)を覆うように設けるとよい。すなわち、本発明のカップ部を有する衣類は、交点X、下カップ点Uおよび脇バージス点Oを少なくとも通るように、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿ってカップ部101の下部にサポート部材110が設けられている。これにより、前記変化の大きい部分をサポートする構造とすることができる。また、サポート部材110は、バストトップ付近を押さえつけないため、着用時に圧迫感がなく、バストの造形も保つことができ、美しいバストシルエットを得ることができる。さらに、カップ部101のカップくりCの形状は、仰臥位におけるバージスラインに沿う形状に変化可能である。
【0020】
カップくりCの形状は、通常の昼間用のブラジャーのカップくりの形状と異なり、前中心側において、内バージス点Iよりも上方まで延びていることが好ましい。仰臥位では、バストの隆起部は上方(首側方向)に移動するため、より上部までカップくりがあることで、良好な着用感を得ることができる。
【0021】
本実施形態において、ブラジャー100は、さらに、前側サポート部材120を備えている。前側サポート部材120は、内バージス点Iと、前記角の二等分線とバージスラインVとの交点Xとを少なくとも通り、バストの膨らみの周縁部に対応する部分に沿ってカップ部101の前中心側に設けられている。そして、前側サポート部材120のバストトップ点T側の縁部はブラジャー100を構成する他の部材に固定されていない。
【0022】
サポート部材110と前側サポート部材120とは、下部バージスラインにおいて少なくとも一部が重なるように配置されていることが好ましい。また、サポート部材110と前側サポート部材120とで、バストの膨らみの周縁部を一周取り囲んでいることが好ましい。
【0023】
なお、本発明において前側サポート部材120は任意に備えられる部材であるが、前側サポート部材120を有していることで、衣類の前中心側での浮きを抑制して、仰臥位に加え、特に側臥位でのバストボリュームの移動や衣類の着崩れを防ぐことができるので、好ましい。
【0024】
また、サポート部材110と前側サポート部材120とは、バストトップ点T側の縁部が固定されておらず、カップくりの広がりにともない左右に開くことが可能な構造となっているので、広範なバストサイズに対応させることができる。なお、前側サポート部材120の方がサポート部材110よりも肌側に配置されている方が好適である。
【0025】
サポート部材110に用いることのできる素材としては、パワーネット、ツーウェイトリコット、ワンウェイトリコネット等があげられる。前側サポート部材120にも同様の素材を用いることができる。
【0026】
カップ部101本体(サポート部材110、および前側サポート部材120以外の部分)を構成する表カップ布104としては、伸縮性のある素材を使用することができる。表カップ布104は、左右別々に用意したものを前中心部分で連結してもよいし、左右のバストを含む胸部を覆うような一体のデザインのものを用いてもよい。
【0027】
本実施形態のブラジャー100においては、一対の肩ストラップ102は、背中側においてバック布103と一体に形成されている。ここで、肩ストラップ102は、カップ部101を肩から吊り下げるものであればよく、本実施形態のブラジャー100のようにタンクトップのような幅の広い、いわゆるラウンドタイプのストラップには限定されず、紐や布テープであってもよい。肩ストラップ102の態様は、一対のカップ部101に対応して一対の肩ストラップ102がそれぞれカップ部上部とバック布103とに連結される態様に限定されず、例えば、背中側で2本の肩ストラップ102が一体となりバック布103に取り付けられる態様であってもよい。また、カップ部101のみに肩ストラップ102が取り付けられている、いわゆる「ホルターネック」タイプであってもよい。肩ストラップ102の取り付け位置は、カップ部101の形状やカップ部を有する衣類のデザインによって決定することができる。
【0028】
本例のブラジャーでは、連結係止部を有していないバック布103を使用しているが、着脱自在な連結係止部を背中心付近に有している態様とすることもできる。前記連結係止部としては、ホック(例えば、フック・アンド・アイ(鈎ホック))、グリッパー、ボタン、紐、面ファスナーなどを、デザインや用途に応じて適宜選択して使用することができる。なお、上記のフック・アンド・アイやグリッパー、ボタンを用いる場合には、複数の留め位置を予め設けておくことにより、締め付け具合を微調整できるようにしておくことも好ましい。なお、上記以外の他の種類の係止具を使用してもよい。また、バック布が連結係止部を有さないフロントホックタイプや、バック布を結んで係止するタイプであってもよい。
【0029】
図4に、本発明のカップ部を有する衣類の第一の実施形態の変形例に係るブラジャー100Aの斜視図を示す。本変形例のブラジャー100Aは、第一の実施形態に係るブラジャー100において、表カップ布104を有していない構成である。本変形例においては、カップ部101は、実質的にサポート部材110および前側サポート部材120のみから構成され、バストの一部を露出させた状態で保持するように形成されている。なお、本変形例においても、前側サポート部材120は任意に備えられる部材であるが、前側サポート部材120を有していることで、側臥位でのバストボリュームの移動や衣類の着崩れを防ぐことができるので、好ましい。
【0030】
(第二の実施形態)
図5(a)に、本発明のカップ部を有する衣類の第二の実施形態に係るブラジャー200におけるサポート部材210の形状を示す。本実施形態でのサポート部材210は、その上縁部が脇バージス点Oの上方の位置と前記交点Xとを結ぶ線上になるような形状である。本実施形態におけるサポート部材210は、第一の実施形態におけるサポート部材110とは異なり、上端部は肩ストラップまで延びていない。しかし、本実施形態のブラジャー200は、立位・仰臥位間での姿勢変化におけるバージスラインおよびバストの形状変化に追随・対応し、バストボリュームをサポートすることができた。
【0031】
(第三の実施形態)
図5(b)に、本発明のカップ部を有する衣類の第三の実施形態に係るブラジャー300におけるサポート部材310の形状を示す。本実施形態でのサポート部材310は、前中心側の端部は前記交点X付近であり、前記実施形態と同様であるが、脇側の上縁部は前中心側におけるカップくりの高さと略同一の高さまで延びている。本実施形態のブラジャー300も、同様に、立位・仰臥位間での姿勢変化におけるバージスラインおよびバストの形状変化に追随・対応し、バストボリュームをサポートすることができた。
【0032】
(第四の実施形態)
図5(c)に、本発明のカップ部を有する衣類の第四の実施形態に係るブラジャー400におけるサポート部材410の形状を示す。本実施形態でのサポート部材410は、前中心側の端部は前記交点X付近であり、前記実施形態と同様であるが、脇側の上縁部は肩ストラップの上端まで延びている。本実施形態のブラジャー400も、同様に、立位・仰臥位間での姿勢変化におけるバージスラインおよびバストの形状変化に追随・対応し、バストボリュームをサポートすることができた。本実施形態においては、サポート部材410が上方まで延びていることで、バストボリュームの大きい場合にもバスト上部をより良好にサポートすることができる。
【0033】
(比較例)
図6(a)〜(c)は、比較例のサポート部材の配置位置の例を示す図である。各図において、サポート部材の位置に斜線を付与している。図6(a)のサポート部材は、交点Xは通っているが脇バージス点Oには至っていない。図6(b)のサポート部材は、交点Xは通り脇バージス点Oには至っていないが、前中心側は内バージス点Iまで延びている。図6(c)のサポート部材は、脇側においては脇バージス点Oの上方まで延びているが、前中心側は交点Xを含まない位置に形成されている。これらのサポート部材を備えたブラジャーは、いずれも、立位・仰臥位間での姿勢変化におけるバージスラインおよびバストの形状変化への追随・対応が十分ではなく、バストボリュームのサポートも不十分なものであった。図5(a)に示すサポート部材の形状と比較すると、カップくりCの周上の長さが確保されているだけでは効果が得られず、交点Xおよび脇バージス点Oを含むようにサポート部材が形成されていることが必要であることがわかる。
【0034】
(第五の実施形態)
図8に、本発明のカップ部を有する衣類のその他の例である、第五の実施形態に係るキャミソール500の斜視図を示す。このキャミソール500のブラジャー相当部分は、図1で説明した第一の実施形態のブラジャー100とほぼ同一の概念のもとに設計されている。本態様においては、キャミソール500は、カップ支持部105の下側に、胸下部身頃530を有している。その他の態様は図1に示したブラジャー100と実質上同一であり、同一部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略している。ここでは、第一の実施形態に係るブラジャー100とほぼ同一概念のもとに設計されたブラジャー相当部分を有するキャミソールについて説明したが、本発明はこれに限定されず、他の実施形態に係るブラジャー相当部分を有するキャミソールとすることもできる。本例においては、バック布103がない態様としてもよい。
【0035】
本実施形態においては、ブラジャー相当部分の下側に身頃を設ける態様に限られず、キャミソールの身頃内側にブラジャー相当部分を設けてもよい。この場合、キャミソールは、ブラジャー相当部分を覆うように身頃を有している。このような構成にすることにより、本発明の効果を有しつつ、着用時の外観のバリエーションを多様にすることができる。また、カップ部を、よりアウターにひびかなくすることもできる。
【0036】
(着用主観評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100を作製し、着用評価を行った。複数名のモニターに、前記ブラジャー100、および、従来品のブラジャーAまたは従来品のブラジャーBを、それぞれ2日間ずつ着用してもらい、着用感のコメントを求めた。従来品のブラジャーAは、特許文献1に記載のブラジャーの一態様である。すなわち、左右バストの隆起部の外輪郭線を仰臥姿勢時の脇側広がりで且つ上広がりの外輪郭線で規定し、外輪郭線に囲まれた内部の左右カップ部には、その中央部を大略逆U字状に囲む前側サポート部、上側サポート部、脇側サポート部を設け、これらサポート部のうち前側サポート部のサポート力を最も大とした特許文献1に記載のブラジャーの一態様である。従来品のブラジャーBは、特許文献2に記載のブラジャーの一態様である。すなわち、バストを覆うフルカップ状とした左右カップ部のトップ部より前中央寄りの左右カップ前側部を前中央部を挟んで連続させた部位に、前中央サポート部を設け、前中央サポート部の上下両側部は、左右カップ部のトップ部を囲む上部側および下部側へと延在するように左右方向に広げ、上側部は少なくともストラップとの連続位置まで位置させている一方、前中央サポート部に連続してトップ部を覆う左右カップ部の中央部は、前中央サポート部よりも保持力が弱いカップ中央弱サポート部とし、かつ、カップ中央弱サポート部は前中央サポート部よりも伸びやすくしている特許文献2に記載のブラジャーの一態様である。モニターの内訳は、従来品のブラジャーAのMサイズのモニターが10名、従来品のブラジャーBのLサイズのモニターが9名、LLサイズのモニターが10名の、計29名である。この内7名がMサイズとLサイズとの境界サイズである。
【0037】
上記の結果、バストが安定していたのは、29名中22名が本発明のブラジャーであると回答した。特に、境界サイズの7名については、6名が本発明のブラジャーがバストが安定していたと回答し、1名は本発明品と従来品とは同等であったと回答した。着崩れなかったのは、29名中14名が本発明のブラジャーであると回答し、10名が本発明品と従来品とは同等であったと回答した。快適に眠れたのは、29名中15名が本発明のブラジャーであると回答し、6名が本発明品と従来品とは同等であったと回答した。また、生活を考慮したときの満足度を訊ねたところ、満足度が高いのは29名中19名が本発明のブラジャーであると回答し、3名が本発明品と従来品とは同等であったと回答した。本発明のブラジャーで満足度が高いと回答したモニターからは、「支え感があるのに楽である」、「着け心地がよく苦しくない」、「全体的にバストが優しく包まれている」、「就寝時以外でも使える」、「起きているときも快適」、「アウターにひびかない」等の意見が得られた。
【0038】
(着用客観評価)
図1に示すタイプの本発明に係るブラジャー100について、着用客観評価を行った。日中用のブラジャーの着用状態と本発明品の着用状態とを比較すると、仰向けに寝ている状態(仰臥位)および横向きに寝ている状態(側臥位)においては、日中用のブラジャーを着用した場合は、バストがカップからはみ出してしまったが、本発明品では、ストレスのないベストな位置にバストがキープできていた。また、立位においても、良好な形状になっていた。
【0039】
本発明のブラジャーは、主観、客観ともに、就寝時等の仰臥位および側臥位におけるバストを安定保持しており、着用時の立位のバストシルエットも美しくなっていることがわかった。
【0040】
以上、実施の形態の具体例として、ブラジャーおよびキャミソールをあげて本発明を説明したが、本発明のカップ部を有する衣類は、これらの具体例で記載されたもののみに限定されるものではなく、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ボディースーツ、ブラスリップ、水着、レオタード、その他各種のカップ部を有する衣類に適用できる。また、前中心を係脱自在のホックで連結するフロントホックタイプの衣類にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のカップ部を有する衣類は、種々の態様が可能である。例えば、上記の実施形態のような衣類以外にも、ファンデーション衣類、スポーツ衣類、アウターなど、各種のカップ部を有する衣類に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
100、100A、200、300、400 ブラジャー
500 キャミソール
101 カップ部
102 肩ストラップ
103 バック布
104 表カップ布
105 カップ支持部
110、210、310、410 サポート部材
120 前側サポート部材
530 身頃

I 内バージス点
O 脇バージス点
U 下カップ点
X 交点
T バストトップ点
V バージスライン
C カップくり
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8