特許第6327498号(P6327498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6327498解探索装置、解探索方法及びプログラム、スケジュール生成装置、スケジュール生成方法及びプログラム、並びに充電制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327498
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】解探索装置、解探索方法及びプログラム、スケジュール生成装置、スケジュール生成方法及びプログラム、並びに充電制御システム
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20100101AFI20180514BHJP
【FI】
   G06N99/00 180
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-31187(P2013-31187)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160399(P2014-160399A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年9月18日
【審判番号】不服2017-6339(P2017-6339/J1)
【審判請求日】2017年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】藤島 泰郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 直人
(72)【発明者】
【氏名】二橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】小川 清光
【合議体】
【審判長】 辻本 泰隆
【審判官】 山崎 慎一
【審判官】 須田 勝巳
(56)【参考文献】
【文献】 高濱 徹行ほか,ε制約遺伝的アルゴリズムによる制約付き最適化,情報処理学会論文誌 第47巻 第6号,2006年6月,pp.1861−1871
【文献】 掛水 貴之ほか,TS法によるコンタクトセンター要員シフト作成法,第68回(平成18年)全国大会講演論文集(2) 人工知能と認知科学,2006年3月,pp.2−133〜2−134
【文献】 特開2012−213316号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力受給に係るスケジュールについて制約条件を満たす解を探索する解探索装置であって、
前記制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、
前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、
前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更する条件変更部と、
前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出す解導出部と
を備えることを特徴とする解探索装置。
【請求項2】
前記世代計算部は、前記仮制約条件の少なくとも1つの条件に違反しない範囲で、前記遺伝的操作を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の解探索装置。
【請求項3】
前記世代計算部は、前記遺伝的操作において突然変異操作を行う場合に、前記個体のうち前記評価値が変動しやすい部分が前記遺伝的操作の対象となる確率が高くなる所定の確率に基づいて前記遺伝的操作を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の解探索装置。
【請求項4】
電力受給に係るスケジュールについて制約条件を満たす解を探索する解探索装置を用いた解探索方法であって、
個体生成部が、前記制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成するステップと、
評価値算出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、
世代計算部が、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行するステップと、
条件変更部が、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更するステップと、
前記評価値算出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、
解導出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出すステップと
を有することを特徴とする解探索方法。
【請求項5】
コンピュータを、
電力受給に係るスケジュールに係る個体であって所定の制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部、
前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部、
前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部、
前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更する条件変更部、
前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出す解導出部
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
二次電池を備える設備における当該二次電池の充電スケジュールを生成するスケジュール生成装置であって、
単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い電力である仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、
前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部と、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記充電スケジュールを生成する解導出部と
を備えることを特徴とするスケジュール生成装置。
【請求項7】
前記設備は、前記二次電池及び当該二次電池を充電する充電器を複数備え、
前記仮制約条件は、前記充電器それぞれが同時に複数の二次電池を充電してはならないという条件を含み、
前記世代計算部は、前記遺伝的操作において交叉操作または突然変異操作を行う場合に、前記充電器単位で操作を行う
ことを特徴とする請求項6に記載のスケジュール生成装置。
【請求項8】
前記世代計算部は、前記遺伝的操作において突然変異操作を行う場合に、前記個体のうち電気代が安い時間帯が前記遺伝的操作の対象となる確率が高くなる所定の確率に基づいて前記遺伝的操作を行う
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のスケジュール生成装置。
【請求項9】
二次電池を備える設備における当該二次電池の充電スケジュールを生成するスケジュール生成装置を用いたスケジュール生成方法であって、
個体生成部が、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い値の仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成するステップと、
評価値算出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、
世代計算部が、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行するステップと、
条件変更部が、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更するステップと、
前記評価値算出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、
解導出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記充電スケジュールを生成するステップと
を有することを特徴とするスケジュール生成方法。
【請求項10】
コンピュータを、
二次電池を備える設備が単位時間に電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い値の仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部、
前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により、前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部、
前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記二次電池の充電スケジュールを生成する解導出部
として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
二次電池を備える設備における当該二次電池の充電を制御する充電制御システムであって、
単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い電力である仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、
前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、
前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部と、
前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記二次電池の充電スケジュールを生成する解導出部と
を備えるスケジュール生成装置と、
前記解導出部が生成した充電スケジュールに従って前記二次電池の充電を行う充電器と
を備えることを特徴とする充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制約条件を満たす解を探索する解探索装置、解探索方法及びプログラム、二次電池を備える設備の電力制御スケジュールを生成するスケジュール生成装置、スケジュール生成方法及びプログラム、並びに二次電池の充電を制御する充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー管理システム(Energy Management System:EMS)を用いて消費電力を削減する技術が研究されている。また、近年は、電気自動車(Electric Vehicle)に搭載された二次電池の電力を用いて家庭内・企業内の電力を調整する技術が研究されている。これらの技術では、一般的に、電気代が比較的安価な夜間にEVの二次電池を充電し、電気代が比較的高価な日中にEVの二次電池を放電させることで、電気代の調整を行っている。
【0003】
ここで、企業など、複数のEVを有する場合に電気代の削減をしようとすると、夜間に全てのEVを充電すると、夜間のピーク電力が増大し、契約電力を挙げる必要が生じ、結果として電気代が高くなってしまうという問題がある。
【0004】
この問題に対し、特許文献1には、多数のEVの充放電を制御する方法として、数理最適化を行うことで、適正な充放電パターンを得る技術が開示されている。
【0005】
数理最適化の一手法として、遺伝的アルゴリズムが知られている。遺伝的アルゴリズムとは、解の候補である個体をランダムに複数生成し、ある世代の個体について遺伝的操作を行い、次の世代の個体を生成する処理を繰り返し実行し、最後に得られた世代の個体の中で、最も適正度が高い個体を、解とするアルゴリズムである。ここで、遺伝的操作とは、選択、突然変異、交叉の操作のことをいい、遺伝的アルゴリズムでは、解としての適正度が高い個体ほど、遺伝的操作の対象となる確率を高くする。
【0006】
選択操作とは、個体を1つ選択して当該個体をコピーする操作をいう。突然変異操作とは、個体を1つ選択して当該個体の一部を変化させる操作をいう。交叉操作とは、個体を2つ選択してその一部を入れ替える操作をいう。
なお、本明細書では、次の世代の個体を生成する計算を世代計算という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−213316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法のように、数理最適化を用いて解を探索する場合、制約条件を満たす初期解(遺伝的アルゴリズムにおける第1世代の個体)を生成する必要があり、制約条件が厳しい場合に、初期解を生成することが困難であるという問題がある。
本発明の目的は、上述した課題を解決する解探索装置、解探索方法及びプログラム、スケジュール生成装置、スケジュール生成方法及びプログラム、並びに充電制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、電力受給に係るスケジュールについて制約条件を満たす解を探索する解探索装置であって、前記制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更する条件変更部と、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出す解導出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明において前記世代計算部は、前記仮制約条件の少なくとも1つの条件に違反しない範囲で、前記遺伝的操作を実行することを特徴とする。
【0012】
また、本発明において前記世代計算部は、前記遺伝的操作において突然変異操作を行う場合に、前記個体のうち前記評価値が変動しやすい部分が前記遺伝的操作の対象となる確率が高くなる所定の確率に基づいて前記遺伝的操作を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、電力受給に係るスケジュールについて制約条件を満たす解を探索する解探索装置を用いた解探索方法であって、個体生成部が、前記制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成するステップと、評価値算出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、世代計算部が、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行するステップと、条件変更部が、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更するステップと、前記評価値算出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、解導出部が、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出すステップとを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、コンピュータを、電力受給に係るスケジュールに係る個体であって所定の制約条件より緩い条件である仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなるまで、前記個体が前記制約条件を満たす値に近く、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮制約条件を前記制約条件に近い条件に変更する条件変更部、前記仮制約条件が前記制約条件と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値に基づいて、前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体から解を導き出す解導出部として機能させるためのプログラムである。
【0015】
また、本発明は、二次電池を備える設備における当該二次電池の充電スケジュールを生成するスケジュール生成装置であって、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い電力である仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部と、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記充電スケジュールを生成する解導出部とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明において前記設備は、前記二次電池及び当該二次電池を充電する充電器を複数備え、前記仮制約条件は、前記充電器それぞれが同時に複数の二次電池を充電してはならないという条件を含み、前記世代計算部は、前記遺伝的操作において交叉操作または突然変異操作を行う場合に、前記充電器単位で操作を行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明において前記世代計算部は、前記遺伝的操作において突然変異操作を行う場合に、前記個体のうち電気代が安い時間帯が前記遺伝的操作の対象となる確率が高くなる所定の確率に基づいて前記遺伝的操作を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、二次電池を備える設備における当該二次電池の充電スケジュールを生成するスケジュール生成装置を用いたスケジュール生成方法であって、個体生成部が、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い値の仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成するステップと、評価値算出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、世代計算部が、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行するステップと、条件変更部が、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更するステップと、前記評価値算出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出するステップと、解導出部が、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記充電スケジュールを生成するステップとを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、コンピュータを、二次電池を備える設備が単位時間に電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い値の仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により、前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記二次電池の充電スケジュールを生成する解導出部として機能させるためのプログラムである。
【0021】
また、本発明は、二次電池を備える設備における当該二次電池の充電を制御する充電制御システムであって、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力が所定の契約電力より高い電力である仮契約電力を超えないようにする、という条件を含む仮制約条件を満たす個体を生成する個体生成部と、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなるまで、単位時間に前記設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値が小さく、かつ電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出し、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記仮評価関数と異なる関数であって電気代が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する評価関数を用いて、前記個体について評価値を算出する評価値算出部と、前記評価値算出部が算出した評価値に基づく確率に基づいて前記個体を選択して、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により前記仮制約条件を満たす新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する世代計算部と、前記世代計算部が前記世代計算を実行したときに、前記仮契約電力を前記契約電力に近い値に変更する条件変更部と、前記仮契約電力が前記契約電力と等しくなった後に、前記評価値算出部が前記評価関数を用いて算出した評価値および前記世代計算部の前記世代計算によって生成された個体に基づいて、前記二次電池の充電スケジュールを生成する解導出部とを備えるスケジュール生成装置と、前記解導出部が生成した充電スケジュールに従って前記二次電池の充電を行う充電器とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、解探索装置及びスケジュール生成装置は、初期解となる個体を容易に生成しつつ、制約条件を満たす適正な解を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置の構成を示す概略ブロック図である。
図2】制約条件の変更方法の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の第3の実施形態に係る充電制御システムの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
《第1の実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100(解探索装置)は、二次電池を搭載する複数のEVと当該EVを充電する複数の充電器とを備える設備において、契約電力の条件を満たしつつ全体の電気代を抑えるための、二次電池の充電スケジュールを生成する装置である。ここで、契約電力とは、単位時間に電力系統から供給を受けることができる電力の上限値として、電力会社との契約で定められた電力のことである。なお、第1の実施形態に係る設備には、複数の充電器が備えられており、1つの充電器は同時に2以上のEVの二次電池を充電することができない。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100の構成を示す概略ブロック図である。
スケジュール生成装置100は、仮制約条件記憶部101、個体生成部102、シミュレータ部103、評価値算出部104、世代計算部105、条件変更部106、解導出部107を備える。
【0026】
仮制約条件記憶部101は、充放電スケジュールが満たすべき制約条件より緩い条件である仮制約条件を記憶する。なお、本実施形態における制約条件は、単位時間に設備が電力系統から供給を受ける電力が仮契約電力を超えないようにするという条件と、充電器それぞれが同時に複数の二次電池を充電してはならないという条件とを有する。本実施形態において仮契約電力とは、実際の契約電力より大きい電力である。
【0027】
個体生成部102は、仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を満たす個体を、初期解として生成する。本明細書において「個体」とは、解の候補、すなわち二次電池の充電スケジュールの候補のことをいう。
【0028】
シミュレータ部103は、設備の電力消費スケジュールとして、各EVを走行させる時刻及び時間、設備内の機器を使用する時刻及び時間を予め定めておき、当該電力消費スケジュールと個体生成部102または世代計算部105が生成した個体とを用いて、設備の電力制御をシミュレートする。シミュレータ部103は、シミュレーションの結果として、単位時間ごとの消費電力と電気代とを出力する。
【0029】
評価値算出部104は、シミュレータ部103によるシミュレーション結果と所定の評価関数または仮評価関数を用いて、各個体について評価値を算出する。本実施形態において評価関数は、電気代が安くなる個体ほど高い評価値を導出する関数である。また、本実施形態において仮評価関数は、電気代が安くかつピーク電力が小さい個体ほど高い評価値を導出する関数である。ここで、ピーク電力とは、単位時間に設備が電力系統から供給を受ける電力の最大値を示す。なお、評価値は、高い値であるほど適正度、評価が高いことを示す。
【0030】
世代計算部105は、評価値算出部104が算出した評価値に基づく確率に基づいて個体を選択し、遺伝的アルゴリズムに係る遺伝的操作により新たな個体を生成する世代計算を繰り返し実行する。評価値に基づく確率とは、評価値が高い個体ほど選択される可能性が高い確率である。また、世代計算部105は、仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を満たすように個体を生成する。
【0031】
条件変更部106は、世代計算部105が世代計算を実行したときに、仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を、もとの制約条件に近い条件に変更する。具体的には、条件変更部106は、仮制約条件で設定された仮契約電力を減少させ、契約電力に近い値に変更する。なお、条件変更部106は、世代計算の実行回数と仮契約電力とが単調非増加(広義単調減少)となるように制約条件を変更する。
【0032】
解導出部107は、仮制約条件が制約条件と等しくなった後に、世代計算部105の世代計算によって生成された個体のうち、評価値が最も高い個体を解として導き出し、当該個体に基づいて充放電スケジュールを生成する。
【0033】
ここで、条件変更部106による制約条件の変更方法について説明する。
図2は、制約条件の変更方法の例を示す図である。
例えば、条件変更部106は、図2(A)に示すように、世代計算部105による世代計算を1回行うごとに、一定の電力(例えば、契約電力と初期の仮契約電力の差を整数値で除算して得られる電力)だけ仮契約電力を減少させても良い。
【0034】
また、条件変更部106は、図2(B)に示すように、世代計算がある程度繰り返し実行されるまでは、仮契約電力の値を変更せず、世代計算がある程度繰り返し実行されてから仮契約電力を減少させても良い。この場合、条件変更部106は、例えば予め定められた回数だけ世代計算が行われたときに仮契約電力を減少させても良いし、各個体のピーク電力が所定電力以下になったときに仮契約電力を減少させても良い。
【0035】
また、条件変更部106は、図2(C)に示すように、世代計算がある程度繰り返し実行されるたびに仮契約電力を減少させても良い。この場合、条件変更部106は、例えば予め定められた回数だけ世代計算が行われたときに仮契約電力を減少させても良いし、各個体のピーク電力が所定電力以下になったときに仮契約電力を減少させても良い。
【0036】
また、条件変更部106は、上記変更方法を状況に応じて使い分けても良い。なお、条件変更部106が、各個体のピーク電力を監視して仮契約電力を減少させるか否かを判断する場合、各個体の収束度合いに応じて制約条件を厳しくすることができるため、適切に最適解探索を行うことができる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100の動作について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100の動作を示すフローチャートである。
まず、スケジュール生成装置100の個体生成部102は、仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を満たす個体をN個生成する(ステップS1)。なお、個体生成部102は、乱数に基づいて固体を生成しても良いし、利用者の手入力などによって個体を生成しても良い。
【0038】
次に、シミュレータ部103は、個体生成部102が設定した個体ごとに、設備の電力制御をシミュレートし、単位時間ごとに電力系統から供給を受けた電力と電気代とを算出する(ステップS2)。次に、評価値算出部104は、現在の仮制約条件と、実際の制約条件とが等しいか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、評価値算出部104は、仮契約電力と実際の契約電力とが等しいか否かを判定する。
【0039】
評価値算出部104は、仮契約電力と実際の契約電力とが異なると判定した場合(ステップS3:NO)、シミュレータ部103によるシミュレーション結果と、上述した仮評価関数を用いて、個体ごとに評価値を算出する(ステップS4)。次に、条件変更部106は、仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を、制約条件に近い条件に書き換える(ステップS5)。
【0040】
次に、世代計算部105は、各個体について、遺伝的アルゴリズムに基づく遺伝的操作を行う。つまり、世代計算部105は、個体生成部102が生成し、または世代計算部105が生成したある世代の個体の中から、評価値が高い個体が残るように、選択、交叉、または突然変異の操作を行い、次の世代の個体を生成する世代計算を行う。世代計算部105は、以下に示すステップS6〜ステップS11の操作を繰り返し実行することで、世代計算を行う。
【0041】
まず、世代計算部105は、選択、交叉、突然変異の何れの操作を行うかを、ランダムに決定する(ステップS6)。なお、通常、遺伝的アルゴリズムでは、何れの処理を行うかを決定する確率は、交叉操作を行う確率≧選択操作を行う確率≧突然変異操作を行う確率の順に設定される。
【0042】
世代計算部105は、交叉操作を行うことを決定した場合(ステップS6:交叉)、複数の個体の中から、評価値算出部104が算出した評価値に応じた重みに基づく確率に従って、2つの個体を選択する(ステップS7)。すなわち、評価値が高い個体ほど重みが大きく、世代計算部105によって選択されやすくなる。
【0043】
次に、世代計算部105は、選択した2つの個体の一部を入れ替えて、新たな個体を生成する(ステップS8)。交叉の方法としては、世代計算部105が2つの個体で、充電器単位に充電スケジュールを入れ替えることが好ましい。これにより、充電器単位で交叉を行うことで、仮制約条件の一つである、充電器それぞれが同時に複数の二次電池を充電してはならないという条件に違反しない範囲で新たな個体を得ることができる。
【0044】
また、世代計算部105は、ステップS6で突然変異操作を行うことを決定した場合(ステップS6:突然変異)、複数の個体の中から、評価値算出部104が算出した評価値に応じた重みに基づく確率に従って個体を1つ選択する(ステップS9)。
【0045】
次に、世代計算部105は、選択した個体の一部を書き換えることで、調整値のパターンを新たに生成する(ステップS10)。突然変異の方法としては、選択した個体において、ある充電器がある二次電池を充電するという部分をランダムに選択し、当該選択した部分と当該充電器が何れの二次電池も充電しない部分とを入れ替えることが好ましい。これにより、仮制約条件の一つである、充電器それぞれが同時に複数の二次電池を充電してはならないという条件に違反しない範囲で新たな個体を得ることができる。
【0046】
また、世代計算部105は、ステップS6で選択操作を行うことを決定した場合(ステップS6:選択)、複数の個体の中から、評価値算出部104が算出した評価値に応じた重みに基づく確率に従って1つの個体を抽出する(ステップS11)。
【0047】
世代計算部105は、上述したステップS6〜ステップS11の処理により個体を抽出すると、当該個体について仮制約条件記憶部101が記憶する仮制約条件を満たすか否かを判定する(ステップS12)。そして、世代計算部105は、仮制約条件を満たす個体をN個抽出するまで、上記ステップS6〜ステップS11の処理を繰り返し実行する。
他方、世代計算部105は、仮制約条件を満たす個体をN個抽出すると、ステップS2に戻り、各個体について電力制御シミュレーションを行う。
【0048】
上記処理を繰り返し実行することで、ステップS3において仮制約条件と制約条件とが等しくなると(ステップS3:YES)、評価値算出部104は、シミュレータ部103によるシミュレーション結果と、上述した評価関数を用いて、個体ごとに評価値を算出する(ステップS13)。そして、解導出部107は、所定の終了条件を満たしたか否かを判定する(ステップS14)。終了条件の例としては、例えば仮制約条件と制約条件とが等しくなってから所定回数の世代計算が行われた場合や、評価値算出部104が算出した評価値の最大値と最小値の差が所定値未満になることなどが挙げられる。
【0049】
解導出部107は、終了条件を満たしていないと判定した場合(ステップS14:NO)、ステップS6〜ステップS12に係る世代計算を実行する。他方、解導出部107は、終了条件を満たすと判定した場合(ステップS14:YES)、世代計算部105が生成した個体のうち、評価値が最も高い個体を特定し、当該個体に基づいて充電スケジュールを生成する(ステップS15)。
【0050】
このように、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100によれば、個体生成部102は、制約条件より相対的に緩い条件である仮制約条件を満たす個体を初期解として生成する。これにより、スケジュール生成装置100は、制約条件が厳しい場合であっても、初期解を容易に生成することができる。また、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100によれば、解導出部107は、仮制約条件と制約条件とが等しくなった後で、解となる個体を特定する。これにより、スケジュール生成装置100は、制約条件を満たす適正な解を得ることができる。
【0051】
また、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100によれば、評価値算出部104は、仮制約条件が制約条件と等しくなるまで、ピーク電力が小さいほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて評価値を算出する。すなわち評価値算出部104は、仮制約条件が制約条件と等しくなるまで、個体が制約条件を満たす値に近いほど高い評価を示す評価値を導出する仮評価関数を用いて評価値を算出する。これにより、世代計算によって得られる個体を、世代計算を経るごとに制約条件を満たす個体に近づけることができる。
【0052】
また、本発明の第1の実施形態に係るスケジュール生成装置100によれば、世代計算部105は、仮制約条件の少なくとも1つの条件に違反しない範囲で、遺伝的操作を実行する。これにより、無条件に遺伝的操作を行う場合と比較して、世代計算部105による遺伝的操作の回数を相対的に減らすことができ、全体の計算時間を短くすることができる。
【0053】
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
一般に、夜間の電気代は、日中の電気代と比較して安価に設定されることが多い。そのため、二次電池の充電を夜間に行うことで、電気代を安価に抑えられる可能性が高い。第2の実施形態に係るスケジュール生成装置100は、このように個体のうち評価値が変動しやすい部分が経験則として分かっている場合に、当該部分が操作の対象となる確率が高くなるように操作を行うことで、短い計算時間で、適正な充電スケジュールを得るものである。
【0054】
具体的には、第2の実施形態に係る世代計算部105は、個体について非充電部分を充電部分に変更する突然変異を行う場合に、電気代が安い時間帯の非充電部分が選択される可能性が高い確率に基づいて、突然変異操作を行う。
【0055】
このように、本発明の第2の実施形態によれば、世代計算部105における突然変異操作の対象となる部分が選択される確率が、時間帯によって異なる。これにより、世代計算部105が、電気代を安くするという評価関数に基づく評価値が高い個体を生成する確率を高めることができ、全体の計算時間を短くすることができる。
【0056】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る充電制御システム10の構成を示す概略ブロック図である。
充放電制御システムは、第2の実施形態に係るスケジュール生成装置100と、複数の充電器200とを備え、スケジュール生成装置100と各充電器200とは有線または無線で接続される。各充電器200は、充電制御部201と使用情報取得部202とを備える。
【0057】
充電制御部201は、スケジュール生成装置100の解導出部107が生成した充電スケジュールを取得し、当該充電スケジュールに従ってEVの二次電池を充電する。
【0058】
使用情報取得部202は、利用者からスケジュール生成装置100がスケジュールの生成に用いる各パラメータを取得する。パラメータの例としては、例えば契約電力、仮契約電力、設備の単位時間ごとの消費電力などが挙げられる。また、使用情報取得部202は、二次電池と接続されている時間や二次電池の充電率を取得し、これらの情報に基づいて、EVが使用されている時間帯やEVの消費電力を推定し、当該情報をシミュレータ部103によるシミュレーションのパラメータとして用いても良い。
【0059】
このように、第3の実施形態に係る充放電制御システムによれば、第2の実施形態に係るスケジュール生成装置100が生成した充電スケジュールに従って二次電池の充電を行うことができる。また第3の実施形態に係る充放電制御システムによれば、充電スケジュールの生成のための情報をスケジュール生成装置100に入力することができる。
【0060】
なお、本発明の第3の実施形態では、使用情報取得部202が充電器200に設けられる場合について説明したが、これに限られず、例えばスケジュール生成装置100が使用情報取得部202を備えていても良い。
【0061】
また、本発明の第3の実施形態では、スケジュール生成装置100と充電器200とを別個に備える場合について説明したが、これに限られず、複数の充電器200のうち1つがスケジュール生成装置100の機能を備えるものであっても良い。
【0062】
以上、図面を参照してこの発明のいくつかの実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0063】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係る解探索装置をスケジュール生成装置100に実装する場合について説明したが、これに限られず、遺伝的アルゴリズムを用いる他の装置に解探索装置を実装しても良い。具体的には、経路探索において適正な経路を探索する装置、工場の生産計画を策定する装置、部材断面積を最小化する構造物の構造を策定する装置などに、本発明に係る解探索装置を実装しても良い。
【0064】
また、上述した実施形態では、設備が充電器200を複数備える場合について説明したが、これに限られず、スケジュール生成装置100は、充電器200を1つだけ備える設備について充電スケジュールを生成しても良い。
【0065】
また、上述した実施形態では、充電器200がEVに搭載された二次電池を充電する場合について説明したが、これに限られず、充電器200は無停電源装置などその他の二次電池に充電を行うものであっても良い。
【0066】
また、上述した実施形態では、スケジュール生成装置100が、二次電池の充電スケジュールを生成する場合について説明したが、これに限られず、スケジュール生成装置100は、これに加えて二次電池の放電を制御する放電スケジュールを生成しても良い。
【0067】
なお、上述のスケジュール生成装置100は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0068】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
10…充電制御システム 100…スケジュール生成装置 101…仮制約条件記憶部 102…個体生成部 103…シミュレータ部 104…評価値算出部 105…世代計算部 106…条件変更部 107…解導出部 200…充電器 201…充電制御部 202…使用情報取得部
図1
図2
図3
図4