特許第6327679号(P6327679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6327679アルカリ土類金属を含むアリール基含有シロキサン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327679
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属を含むアリール基含有シロキサン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20180514BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20180514BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20180514BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20180514BHJP
   C08L 85/00 20060101ALI20180514BHJP
   C08G 77/58 20060101ALI20180514BHJP
   C08G 79/00 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20180514BHJP
【FI】
   C08L83/14
   C08K3/22
   C08L83/07
   C08L83/05
   C08L85/00
   C08G77/58
   C08G79/00
   H01L33/52
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-500589(P2016-500589)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公表番号】特表2016-516111(P2016-516111A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】US2014020216
(87)【国際公開番号】WO2014149670
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】61/789,881
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ランドール シュミット
(72)【発明者】
【氏名】竹内 香須美
(72)【発明者】
【氏名】シュヨンチーン シュイ
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−085497(JP,A)
【文献】 特開2005−070409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
85/00−85/14
C08G 77/00−77/62
79/00−79/14
C08K 3/00−3/40
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール基含有シロキサン組成物であって、
(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン、及び
(C)アルカリ土類金属を含む熱安定化組成物
の(D)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物を含み、
成分(A)又は(B)の少なくとも1つが少なくとも1つのアリール基を含み、
前記アルカリ土類金属がバリウム又はストロンチウムである、アリール基含有シロキサン組成物。
【請求項2】
前記熱安定化組成物が、
(i)式M(OH)pHOを含み、式中、Mがバリウム又はストロンチウムを表し、pが0〜8の範囲にある、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物、及び
(ii)成分(i)と反応性の官能基を有する少なくとも1種のケイ素含有化合物の反応生成物を含み、
式中、前記バリウム又はストロンチウムが前記熱安定化組成物の全重量の0.1〜25重量パーセントの範囲の量で存在する、請求項1に記載のシロキサン組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のケイ素含有化合物が、シラノール官能性シロキサン、シラノール官能性シラン、アルコキシ官能性シラン、アルコキシ官能性シロキサン、又はその任意の組合せから選択される、請求項2に記載のシロキサン組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種のケイ素含有化合物が、クロロ官能性シロキサン、クロロ官能性シラン、又はその任意の組合せから選択される、請求項2に記載のシロキサン組成物。
【請求項5】
前記熱安定化組成物が、
(i)酸化バリウム又は酸化ストロンチウム、及び
(ii)クロロ官能性シラン又はクロロ官能性シロキサン又はその組合せを含む少なくとも1種のクロロ官能性ケイ素含有化合物の反応生成物を含む、請求項1に記載のシロキサン組成物。
【請求項6】
アリール基含有シロキサン組成物であって、
(A1)M、D、T及び/又はQ単位を含み、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有し、前記少なくとも2つのアルケニル基がM単位経由及び/又はD単位経由のみで結合しているアルカリ土類金属含有オルガノポリシロキサン、
(B1)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンの
(C1)ヒドロシリル化触媒の存在下での反応生成物を含み、
成分(A1)又は(B1)の少なくとも1つが少なくとも1つのアリール基を含み、
前記アルカリ土類金属がバリウム又はストロンチウムである、アリール基含有シロキサン組成物。
【請求項7】
前記少なくとも2つのアルケニル基の少なくとも20モル%が前記M単位経由で結合し、前記少なくとも2つのアルケニル基の残りが前記D単位経由で結合する、請求項6に記載のシロキサン組成物。
【請求項8】
成分(A1)が、
(i)酸化バリウム又は酸化ストロンチウム、或いは、式M(OH)pHOを含み、式中Mがバリウム又はストロンチウムを表し、pが0〜8の範囲にある、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物、及び
(ii)式 R11(XSiO((4−n−y)/2)の少なくとも1種のケイ素含有化合物の反応生成物を含み、
式中、
前記添え字nが0.8〜2.2の範囲にあり、
前記添え字yが0.01〜3の範囲にあり、
各Xが加水分解性基を個別に表し、
脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含む任意のR11がM単位経由及び/又はD単位経由で結合するという前提で、各R11が水素原子又は脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和炭素−炭素結合を有する一価炭化水素基を個別に表す、請求項6又は請求項7に記載のシロキサン組成物。
【請求項9】
SiH/Viモル比1:1〜3:1を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシロキサン組成物。
【請求項10】
発光素子の封入層用の請求項1〜9のいずれか一項に記載のアリール基含有シロキサン組成物。
【請求項11】
アリール基含有シロキサン組成物の形成方法であって、
請求項2〜5のいずれか一に記載の熱安定化組成物と(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化触媒の存在において一緒に反応させる工程を含み、成分(A)又は(B)の少なくとも1つが少なくとも1つアリール基を含む、方法。
【請求項12】
アリール基含有シロキサン組成物の形成方法であって、
(a)アルカリ土類金属を含み、及びM、D、T及び/又はQ単位を含み、及び1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有し、前記少なくとも2つのアルケニル基がM単位経由及び/又はD単位経由のみで結合し、前記アルカリ土類金属がバリウム又はストロンチウムである、アルカリ土類金属含有オルガノポリシロキサンを形成する工程、及び
(b)成分(a)と(i)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンとを(ii)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させる工程を含み、成分(a)又は(i)の少なくとも1つが少なくとも1つアリール基を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、アリール基含有シロキサン組成物、より詳しくはアルカリ土類金属を含むアリール基含有シロキサン組成物に関する。
【0002】
発光素子をディスプレイの背後に置く場合、発光素子がバックライト業界で主として使用されて、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイのより良好な視認性を提供してきた。近年、発光素子が一般の照明業界でライトバルブ、ランプ、フラッシュライトなどでの使用に利用されてきた。従来の発光素子は、バックライト業界及び一般の照明業界の双方でクールな白色光を呈する。クールな白色光は、暖かい色合いを有する傾向のある自然の太陽光又は白熱灯の光と比較して、青味を有することを特徴とする。
【0003】
従来の発光ダイオード(LED)は複数のLEDを含む。LEDは様々な形式のものがあり得る。LEDは、また、当業界では半導体ダイオード、チップ又はダイと呼ばれることもある。特定の実施形態では、発光素子は、LEDから間隔をおいた少なくとも1つ補助的な発光ダイオードを更に含むことができる。素子はLEDから間隔をあけた発光層を更に含む。そのような配置は、当業界では「リモートパッケージ」コンストラクトと呼ばれることもある。そのようなパッケージは、様々なLED及び/又は発光層の異なる組合せを有することもあり、それは同一であるか又は相互に異なってもよい。
【0004】
加えて、発光素子は、典型的には、LEDと発光層との間に配置される介在層を更に含む。介在層はLED、及び/又は発光層の少なくとも1つ(又は全部)と直接接触することができる。典型的には、介在層は、LEDと発光層との間に挟まれる。
【0005】
特定の素子では、介在層は光学的に透明(又は非散乱性)であり、従って封入層とも呼ばれてもよく、あるいは時には、封入材又は封入材層と呼ばれることがある。典型的には、封入層は、LED及び/又は発光層により発せられる光に散乱/干渉しないように、いかなる発光化合物も含まないが、他の素子では、封入層は所望なように光に散乱/干渉するように発光化合物を含む。封入層は発光層及び/又はLEDの保護に有用である。ある素子では、封入層は発光層の上及び発光ダイオードに対向して配置される。発光素子はLEDの各々又は全部に上に配置された1つ以上の封入層を更に含むことができることは認識されるべきである。
【0006】
加えて、発光素子は、また、LEDに対向する発光層の上に配置された光透過性カバーを含むこともある。使用される場合には、光透過性カバーは、典型的には、発光層から間隔をあけられて配置される。光透過性カバーは様々な材料から形成されてもよく、発光層のホスト材料の材料と同一であるか異なる材料から形成されてもよい。例えば、光透過性カバーは、ガラス、エポキシ、又はポリカーボネートから形成されてもよい。使用される場合には、光透過性カバーは、発光層及びLEDの保護に有用である。
【0007】
発光素子は、また、LEDの少なくとも1つ又は全部に隣接して配置される少なくとも1つ反射体を含んでもよい。反射体は、典型的には、発光層の少なくとも一部から間隔をあけられて配置される。反射体は、様々な形状のものであることができ、典型的には、皿状、パラボラ状、又は円錐台状の形状を有する。LEDは、典型的には、反射体の中間に配置されるが、LEDは、また、中心からずらして配置されてもよい。反射体は金属などの様々な材料から形成することができる。様々な形の金属を反射体の形成に使用することができ、ある程度の反射をもたらすならば、他の材料も使用してもよい。反射体は、LED及び所望によって発光層により発せられる光を素子から外向きに向けるのに有用である。
【0008】
加えて、発光素子は、また、従来の発光素子と概ね関連する任意の数の他の追加の成分を含むことができる。例えば、発光素子はヒートシンクを含むことができる。加えて、発光素子は、回路基板、ワイヤーボンド、サブマウント、及び/又はレンズであることができる。使用される場合には、回路基板は、ディミング、光センシン及びプリセットタイミングなどの照明コントローを含むようにプログラムすることができる。そのようなコントロールは、リモートパッケージには特に有用である。
【0009】
上記のように、使用される場合には、封入層は、好ましくは光学的に透明であり、及び/又は非散乱性である。そのような性質を達成するためには、封入層は、発光層のホスト材料と同一であるか又は異なる材料を含む、様々な材料から形成され得る。封入層の形成に使用され得る1つの代表的な組成物は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンとのヒドロシリル化触媒の存在における反応生成物として形成され、オルガノポリシロキサンの一方又は双方がアリール基官能基を含むアリール基含有シロキサン組成物である。ヒドロシリル化触媒は、時には概括的に白金触媒又は白金型触媒と呼ばれ、ケイ素に結合した水素基の不飽和結合へのヒドロシリル化(付加)反応を促進する。
【0010】
そのようなアリール基含有シロキサン組成物から形成される封入層は、150℃以下の温度で硬化し、約1.55の屈折率を有し、またLEDを水、酸化、又は他の腐食性化合物から保護するようなバリア性をもたらすために望ましい。
【0011】
しかしながら、これらのアリール基含有シロキサン組成物の1つの難点は、これらが170℃以上の温度及び空気中で変色(すなわち、黄変)するということである。そのような変色は、これらの組成物のアリール成分が酸化して発色団を形成する原因となると考えられる。そのような発色団の存在は、特定の波長の光を吸収するように作用し、従って発光素子に対する光出力を低減するか、出力光の色を変化させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン;(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン;及び(C)アルカリ土類金属を含む熱安定化組成物の(D)ヒドロシリル化触媒の存在における反応生成物を含み;成分(A)又は(B)の少なくとも1つが少なくとも1つのアリール基を含む、アリール基含有シロキサン組成物を提供する。
【0013】
本発明は、また、(A1)M、D、T及び/又はQ単位を含み、及び1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有し、ここで少なくとも2つのアルケニル基がM単位経由及び/又はD単位経由のみで結合されている、アルカリ土類金属含有オルガノポリシロキサン;及び(B1)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンの(Cl)ヒドロシリル化触媒の存在における反応生成物を含み、ここで成分(A1)又は(B1)の少なくとも1つが少なくとも1つアリール基を含む、アリール基含有シロキサン組成物を提供する。
【0014】
これらのアリール基含有シロキサン組成物の中へのアルカリ土類金属の組み込みは、そのような組成物を硬化させたとき、空気中170℃以上の温度での生成組成物の変色を低減する。加えて、これらの組成物の中へのアルカリ土類金属の組み込みは、そのような組成物の形成のための硬化条件を変更又は変化させず、そのような硬化組成物の物理的性質に悪影響を及ぼさない。従って、アリール基含有シロキサン組成物は、一貫した光透過が所望される場合、発光素子中のLEDを保護するための封入層としての使用に理想的に適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、それぞれ明細書の文脈により別段記載のない限り、1つ以上を指す。本明細書に記載される全ての量、比率、及びパーセンテージは、別段記載のない限り重量による。
【0016】
本発明は、そのような硬化組成物の硬化条件を変更又は他に変化することなく、生成する硬化組成物の物理的性質に悪影響を及ぼすことなく、付加硬化されたアリール基含有シロキサン組成物の高温での変色を低減するための方法に関する。本発明はまたアリール基含有シロキサン組成物に関する。加えて、本発明は、また、一貫した光学的透過性(すなわち、一貫した光透過率)が所望される場合に発光素子中のLEDを保護するための封入層としてのそのようなアリール基含有シロキサン組成物の使用に関する。
【0017】
空気中170℃以上などの高温での付加硬化されたアリール基含有シロキサン組成物のそのような変色の低減(すなわち、安定化)を達成するためには、アルカリ土類金属が形成時にアリール基含有シロキサン組成物に導入される。特定の実施形態では、アルカリ土類金属は、アリール基含有シロキサン組成物の形成に通常使用される成分と共反応される熱安定化組成物の形でアリール基含有シロキサン組成物に導入される。あるいは、アルカリ土類金属は、アリール基含有シロキサン組成物の形成に通常使用される成分の1つの作製時に共反応する。アルカリ土類金属を導入して、アリール基含有シロキサン組成物を形成する各方法を下記に述べる。
【0018】
1つの代表的な実施形態では、本発明のアリール基含有シロキサン組成物は、(A)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン;(B)1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン;(C)アルカリ土類金属を含む熱安定化組成物;及び(D)ヒドロシリル化触媒の少なくとも成分を含み、ここで成分(A)又は成分(B)のいずれか、又は成分(A)及び成分(B)の両方が少なくとも1つアリール基を含む。
【0019】
より具体的には、アリール基含有シロキサン組成物は、(D)の存在における成分(A)、(B)及び(C)の反応生成物を含む。
【0020】
特定の実施形態では、成分(A)中のアルケニル基に対する成分(B)中ケイ素に結合した水素原子のモル比(すなわち、SiH/Viモル比)は、1/1以上、あるいは1/1〜3/1以上、あるいは1/1〜1.2/1以上である。
【0021】
アリール基含有シロキサン組成物の成分(A)は、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を含むオルガノポリシロキサンである。成分(A)のアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル基により表されてもよく、その中でビニル基が最も好ましい。成分(A)中のアルケニル基の結合位置は、分子末端及び/又は分子鎖面でよい。成分(A)中に含まれ得るアルケニル以外のケイ素に結合した基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニル、インドリル、チエニル、又は類似のアリール又は芳香族基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;フェニルチオフェニル基、フェノキシフェニル基、スチルベンジル基、ベンゾフェニル基及び/又はクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3、3、3−トリフルオロプロピル基、又は類似のハロゲン化アルキル基を含んでもよい。これらの中で、最も好ましいのはメチル基及びフェニル基である。
【0022】
成分(A)は、式RSiO1/2(「M単位」)及び/又は式RSiO2/2(「D単位」)及び/又は式RSiO3/2(「T単位」)及び/又は式SiO4/2(「Q単位」)のシロキシ単位を含む、線状、分岐、環状、網様、又は部分分岐した線状の構造を有する。これらの式中で、Rは、前述のアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、及びハロゲン化アルキル基によりより具体的に代表される一価炭化水素基を表す。
【0023】
前述の成分(A)は次の化合物により代表されてもよい:トリメチルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、トリメチルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルビニルポリシロキサン、トリメチルシロキシ基によりブロックされた両分子末端を有するメチルアリールシロキサン、メチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルビニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチルビニルシロキシ基により、あるいはフェニルメチルビニルシロキサン基又はジフェニルビニルシロキサン基によりキャップされた両分子末端を有するメチルアリールシロキサン、メチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー、式RSiO1/2、RSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO2/2、及びRSiO3/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO2/2、及びRSiO3/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;又は2つ以上の前述のオルガノポリシロキサンの混合物。上記の式で、Rは、前述のアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などのアルケニル基以外の一価炭化水素基を表してもよい。更に、上記の式で、Rは上述のものに類似のアルケニル基を表してもよい。上記の式中のアルケニル基は特に限定されないが、典型的にはビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル又はシクロヘキセニル基の1つ以上として定義される。それぞれのアルケニル基は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、かつそれぞれは、他のもの全てから独立に選択されてもよい。
【0024】
成分(B)は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。成分(B)中のケイ素に結合した水素原子の結合位置は、分子末端及び/又は分子鎖面でよい。成分(B)のケイ素に結合した基は、前述のアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などの脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない一価炭化水素基により例示されてもよい。メチル及びフェニル基が最も好ましい。成分(B)は、式R’SiO1/2及び/又は式R’SiO2/2及び/又は式R’SiO3/2及び/又は式SiO4/2のシロキシ単位(すなわち、M、D、T及び/又はQ単位)を含む、線状、分岐、環状、網様、又は部分分岐線状の構造を有する。上記の式では、R’は、水素原子又は前述のアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などの脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない一価炭化水素基を表す。成分(A)が式RSiO3/2のシロキシ単位及び/又は式SiO4/2のシロキシ単位から構成される場合には、(B)成分は好ましくは線状又は部分分岐線状分子鎖構造を有するべきである。
【0025】
成分(B)の25℃における粘度に関しては特別な制約はない。しかしながら、硬化ケイ素体の機械的強度及び硬化型ケイ素組成物の取扱い条件を改善するためには、5〜100,000mPa・sの範囲内の25℃における粘度を有することが推奨される。
【0026】
前述の成分(B)は次の化合物により代表されてもよい:トリメチルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチル水素ポリシロキサン、トリメチルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチル水素ポリシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、トリメチルシロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチル水素ポリシロキサン、トリメチルシロキシ基によりブロックされた両分子末端を有するメチルアリールシロキサン、メチル水素シロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチル水素シロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するジメチルポリシロキサン、ジメチル水素シロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルアリールシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチル水素シロキシ基によりキャップされた両分子末端を有するメチルフェニルポリシロキサン、式RSiO1/2、RHSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RHSiO2/2、及びRSiO3/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RHSiO2/2、及びHSiO3/2により表されるシロキシ単位から構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;又は2つ以上の前述のオルガノポリシロキサンの混合物。上記の式で、Rは上述のものなどのアルケニル基以外の一価炭化水素基を表してもよい。上記の式中のアルケニル基は特に限定されないが、典型的にはビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル基又はシクロヘキセニル基の1つ以上として定義される。それぞれのアルケニル基は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、かつそれぞれは、他のもの全てから独立に選択されてもよい。
【0027】
本発明の組成物では、成分(B)は、成分(A)中のアルケニル官能基と反応し、それを消費するのに充分なSiH基を提供するように、組成物の硬化に充分な量で使用されなければならない。機械的強度の減少無しで充分な硬化を確保するために、成分(B)は、成分(A)の各100重量部に対して0.1〜100重量部の量で使用されなければならない。
【0028】
成分(C)は、白金触媒で生成するアリール基含有シロキサン組成物の170℃以上の温度及び空気中での変色を低減するのに充分な量で添加される熱安定化組成物である。
【0029】
特定の実施形態では、熱安定化組成物(C)は、(i)アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物と(ii)アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物と反応性の官能基を有する少なくとも1つケイ素含有化合物との反応生成物として形成される。
【0030】
成分(C)のアルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物(i)は、一般に、式(I)M(OH)pHOにより表されることもあり、式中、Mはアルカリ土類金属を表し、pは0〜8の範囲にある。
【0031】
特定の実施形態では、アルカリ土類金属Mはバリウム又はストロンチウム、あるいはバリウムである。特定の実施形態では、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物(i)は式(II)Ba(OH)pHOのものであり、式中、pは0〜2である。
【0032】
特定の実施形態では、ケイ素含有化合物(ii)は、シラノール官能性シラン又はシロキサンなどのシラノール官能性ケイ素含有化合物であってもよい。他の実施形態では、ケイ素含有化合物(ii)は、アルコキシ官能性シラン又はシロキサンなどのアルコキシ官能性ケイ素含有化合物であってもよい。更に他の実施形態では、ケイ素含有化合物(ii)は、クロロ官能性シラン又はシロキサンなどのクロロ官能性ケイ素含有化合物であってもよい。更に他の実施形態では、ケイ素含有化合物(ii)は、シラノール官能性ケイ素含有化合物及びアルコキシ官能性ケイ素含有化合物の任意の組合せを含む。更に他の実施形態では、ケイ素含有化合物(ii)はクロロ官能性ケイ素含有化合物の任意の組合せを含む。
【0033】
特定の実施形態では、成分(ii)は、式(III)R(X)ySiO((4−n−y)/2)の少なくとも1つケイ素含有化合物を含む。これらの実施形態では、添え字nは0.8〜2.2で変わり、添え字yは0.01〜3の範囲にある。更に、Rは、水素原子又はアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などの脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない一価炭化水素基を個別に表してもよい。特定の実施形態では、各Rは個別にメチル基又はアリール基である。これらの実施形態のあるものでは、アリール基はフェニル基である。加えて、Rは、ビニル基を含むアルケニル基などの脂肪族型不飽和炭素−炭素結合を有する一価炭化水素基を個別に表してもよい。
【0034】
加えて、式(III)のXは、成分(i)と反応性であり、H、ハライド基、−OR、−NHR、−NR、−OOC−R、O−N=CR、O−C(=CR)R、及び−NRCORから選択される独立に選択された加水分解性基である官能基を含む。式中、R、R及びRはH及びC−C22炭化水素基から各々独立に選択され、R及びRはアルキルアミノ基中で環状アミンを所望により形成することができる。
【0035】
ケイ素含有化合物(ii)がシラノール官能性ケイ素含有化合物である、これらの実施形態のあるものでは式(III)のXは少なくとも1つのOH基を含む。関連する実施形態では、式(III)の各個別のXはOH基である。
【0036】
ケイ素含有化合物(ii)がアルコキシ官能性ケイ素含有化合物であるこれらの実施形態のあるものでは、式(III)のXは少なくとも1つC−Cアルコキシ基を含む。関連する実施形態では、式(III)の各個別のXはC−Cアルコキシ基である。
【0037】
ケイ素含有化合物(ii)がクロロ官能性ケイ素含有化合物である実施形態では、加水分解性基XはClに限定される。
【0038】
式(III)の加水分解性基XがClである(すなわち、成分(ii)がクロロ官能性ケイ素含有化合物である)特定の実施形態では、熱安定性組成物(C)は、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物と対立してクロロ官能性ケイ素含有化合物とアルカリ土類金属酸化物(i’)との反応生成物として形成されてもよい。アルカリ土類金属酸化物(i’)の例としては酸化バリウム又は酸化ストロンチウムが挙げられる。
【0039】
成分(C)を形成するには、ケイ素含有化合物(ii)及び成分(i)又は(i’)を混合し、成分(i)又は(i’)をケイ素化合物(ii)の中に分散させるのに充分な温度、例えば70℃〜200℃まで加熱する。この温度で、成分(i)又は(i’)及び(ii)は反応して、縮合型反応経由で(アルカリ土類金属−O−Si)結合を形成し、これはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)により確認することができる(例えば、アルカリ土類金属がバリウムである場合には、Ba−O−Si結合が新しい吸光度ピークとして918cm−1に出現する)。縮合型反応の副生成物(シラノール基に対しては水、アルコキシ基に対してはアルコール、又はクロロ基に対してはHCl)は揮発させるか、この反応の間に他の方法で除去する。形成される副生成物は、ケイ素含有化合物(ii)上の加水分解性基Xの官能性に依存する。70℃〜200℃の温度でのケイ素含有化合物(ii)及び成分(i)又は(i’)の反応は、生成組成物(C)のアルカリ金属含有量が成分(C)の全重量の0.1〜25重量パーセントであるときに完結し、アルカリ金属含有量は誘導結合プラズマ質量分析法(ICP)により測定することができる。組成物(C)中のアルカリ土類金属は、(アルカリ土類金属−O−Si結合)中、又は残存する未反応成分(i)又は結合されたアルカリ土類金属に近接する(i’)中に存在してもよい。
【0040】
特定の実施形態では、アリール基含有シロキサン組成物中の成分(C)の量は、アルカリ土類金属含有量がアリール基含有シロキサン組成物の全重量の約0.1〜5重量パーセント、あるいはアリール基含有シロキサン組成物の全重量の約1重量パーセントを占めるように設定される。換言すれば、アルカリ土類金属含有量はアリール基含有シロキサン組成物の1〜5000ppmを占める。
【0041】
成分(D)は、本発明のアリール基含有シロキサン組成物の付加硬化を促進するヒドロシリル化触媒である。
【0042】
(D)ヒドロシリル化触媒は特に限定されず、当該技術分野において既知のものであってもよい。
【0043】
一実施形態では、(D)ヒドロシリル化触媒としては、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、又はイリジウムから選択される白金族金属、これらの有機金属化合物、又はこれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態では、(D)ヒドロシリル化触媒は、白金金属微粉末、白金黒、白金ジクロリド、白金テトラクロリド;塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸六水和物;並びにオレフィンの白金錯体、カルボニルの白金錯体、アルケニルシロキサンの白金錯体、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、低分子量有機ポリシロキサンの白金錯体、例えば、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、塩化白金酸とβ−ジケトンとの錯体、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、及び塩化白金酸と1、3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体などのかかる化合物の錯体として更に定義される。
【0044】
あるいは、(D)ヒドロシリル化触媒は、ロジウム化合物、例えば式RhX[(RS];(RP)Rh(CO)Q、(RP)Rh(CO)H、Rh2Y、HfRh(En)Cl、又はRh[O(CO)R]3−j(OH)で表されるものとして更に定義されてもよく、式中、各Qは独立して水素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、各Yは独立してメチル基、エチル基、又は類似のアルキル基、CO、C14、又は0.5 C12であり;各Rは独立してメチル、エチル、プロピル、又は類似のアルキル基;シクロヘプチル、シクロヘキシル、シクロペンチル、又は類似のシクロアルキル基;又はフェニル、キシリル、若しくは類似のアリール基であり;各Rは独立してメチル基、エチル基、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;メトキシ、エトキシ、又は類似のアルコキシ基であり、式中、「En」はエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、又は類似のオレフィンであり;下付き文字「f」は0又はであり;下付き文字「g」は1又は2であり;下付き文字「h」は1〜4の整数であり;下付き文字「i」は2、3、又は4であり;並びに下付き文字「j」が0又は1である。ロジウム化合物の特に好適であるが非限定的な例は、RhCl(PhP)、RhCl[S(C、[Rh(OCCH、Rh(OCCH、Rh(C15、Rh(C、Rh(C)(CO)、及びRh(CO)[PhP](C)である。
【0045】
(D)ヒドロシリル化触媒は、また、以下の式で表されるイリジウム族化合物として更に定義されてもよい:Ir(OOCCH、Ir(C、[Ir(Z)(En)、又は[Ir(Z)(Dien)]、式中、各「Z」は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はメトキシ基、エトキシ基、若しくはアルコキシ基であり、各「En」はエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、又は類似のオレフィンであり、「Dien」は(シクロオクタジエン)テトラキス(トリフェニル)である。(D)ヒドロシリル化触媒は、また、パラジウム、パラジウム黒とトリフェニルホスフィンとの混合物であってもよい。(D)ヒドロシリル化触媒及び/又は前述の化合物は、樹脂マトリックス若しくはコアシェル型構造内にマイクロカプセル化されるか、又はメチルメタクリレート樹脂、カーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、若しくは類似の樹脂などの熱可塑性有機樹脂粉末中に混合され、組み込まれてもよい。
【0046】
使用され得る2つの非限定的な代表的なヒドロシリル化触媒はSpeier触媒((C)PtIICl)又はKarstedt触媒(白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体溶液)である。
【0047】
典型的には、(D)ヒドロシリル化触媒は、(A)及び(B)及び(C)の全重量基準で0.1〜1,000ppm、(パーツパーミリオン)、あるいは0.1〜500ppm、あるいは1〜500ppm、あるいは2〜100ppm、の量で存在/利用される。
【0048】
別の代表的な実施形態では、上記のように、前の実施形態のように熱安定化組成物(C)経由でのアルカリ土類金属の導入と対照的に、アルカリ土類金属は、アリール基含有シロキサン組成物の形成に既に使用された成分の1つの作製時の共反応を通して組み込まれる。
【0049】
このようにして、特定の実施形態では、本発明のアリール基含有シロキサン組成物は、(A1)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するM、D、T及び/又はQ単位を含み、少なくとも2つのアルケニル基がM単位経由及び/又はD単位経由のみで結合しているアルカリ土類金属含有オルガノポリシロキサン、(B1)1分子当たり少なくとも2つケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン、及び(C1)ヒドロシリル化触媒の成分を含み、ここで成分(A1)又は成分(B1)、又は成分(A1)及び成分(B1)の両方が少なくとも1つアリール基を含む。
【0050】
より詳細には、アリール基含有シロキサン組成物は、(C1)の存在における成分(A1)及び(B1)の反応生成物を含む。
【0051】
成分(A1)は、上記のように、1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を有するM、D、T及び/又はQ単位を含み、少なくとも2つのアルケニル基がM単位経由及び/又はD単位経由のみで結合しているアルカリ土類金属含有オルガノポリシロキサンである。
【0052】
特定の実施形態では、成分(Al)は、(a)アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物と(b)式(IV)R11(XSiO((4−n−y)/2の少なくとも1つケイ素含有化合物との反応生成物として形成される。
【0053】
成分(Al)のアルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物(a)は、一般に、式(V)M(OH)pHOにより表され、ここでMはアルカリ土類金属を表し、及びpは0〜8の範囲である。
【0054】
特定の実施形態では、アルカリ土類金属Mはバリウム又はストロンチウム、あるいはバリウムを含む。特定の実施形態では、水酸化バリウム又は水酸化バリウム水和物は式(VI)Ba(OH)pHO、pが0〜2のものである。
【0055】
特定の実施形態では、上記のように、成分(b)は式(IV)R11(XSiO((4n−4)/2のケイ素含有化合物である。これらの実施形態では、添え字nは0.8〜2.2の範囲であり、添え字yは0.01〜3の範囲である。更に、R11は、水素原子又はアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などの脂肪族不飽和炭素−炭素結合を含まない一価炭化水素基を個別に表してもよい。特定の実施形態では、各R11は個別にメチル基又はアリール基である。これらの実施形態のあるものでは、R11のアリール基はフェニル基である。加えて、M単位及び/又はD単位経由でケイ素原子に結合する少なくとも2つのR11基は、アルケニル基又はより好ましくはビニル基などの脂肪族不飽和炭素−炭素二重結合を有する一価炭化水素である。特定の実施形態では、少なくとも2つのアルケニル基の各々はビニル基である。
【0056】
特定の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物に含まれるアルケニル基の少なくとも20モル%はM単位経由で結合し、アルケニル基の残りはD単位経由で結合する。より詳細には、特定の実施形態では、式(V)のシロキサンに含まれるビニル基の少なくとも20モル%はM単位経由で結合し、ビニル基の残りはD単位経由で結合する。
【0057】
加えて、式(IV)のXは、H、ハライド基、−OR12、−NHR12、−NR1213、−OOC−R12、O−N=CR1213、O−C(=CR1213)R14、及び−NR12COR13から選択される成分(a)と反応性であり、独立に選択された加水分解性基である官能基を含む。ここで、R12、R13及びR14は各々H及びC−C22炭化水素基から独立に選択され、R12及びR13は所望によってアルキルアミノ基中で環状アミンを形成することができる。
【0058】
式(IV)のケイ素含有化合物がシラノール官能性ケイ素含有化合物である、これらの実施形態の特定のものでは、式(IV)のXは少なくとも1つのOH基を含む。関連する実施形態では、式(IV)の各個別のXはOH基である。
【0059】
式(IV)のケイ素含有化合物がアルコキシ官能性ケイ素含有化合物である、これらの実施形態のあるものでは、式(IV)のXは少なくとも1つC−Cアルコキシ基を含む。関連する実施形態では、式(IV)の各個別のXはC−Cアルコキシ基である。
【0060】
特定の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物は、シラノール官能性シラン又はシロキサンなどのシラノール官能性ケイ素含有化合物であってもよい。他の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物は、アルコキシ官能性シラン又はシロキサンなどのアルコキシ官能性ケイ素含有化合物であってもよい。更に他の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物は、クロロ官能性シラン又はシロキサンなどのクロロ官能性ケイ素含有化合物であってもよい。更に他の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物は、シラノール官能性ケイ素含有化合物及びアルコキシ官能性ケイ素含有化合物の任意の組合せを含む。更に他の実施形態では、式(IV)のケイ素含有化合物は、クロロ官能性ケイ素含有化合物の任意の組合せを含む。
【0061】
式(IV)のケイ素含有化合物がクロロ官能性ケイ素含有化合物である実施形態では、加水分解性基XはClに限定される。
【0062】
前述の成分(b)は、次の化合物により例示されもよい。トリメチルシロキシ基によりキャップされた両方の分子末端を有するメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、トリメチルシロキシ基によりキャップされた両方の分子末端を有するメチルビニルポリシロキサン、トリメチルシロキシ基によりブロックされた両方の分子末端を有するメチルアリールシロキサン、メチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両方の分子末端を有するメチルビニルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両方の分子末端を有するジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされた両方の分子末端を有するメチルビニルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ基によりキャップされたメチルビニルシロキサン及びジメチルシロキサンのコポリマー、ジメチルビニルシロキシ基によりブロックされた両方の分子末端を有するメチルアリールシロキサン、メチルビニルシロキサン、及びジメチルシロキサンのコポリマー、式RSiO1/2、RSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位により構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO1/2、及びSiO4/2により表されるシロキシ単位により構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO2/2、及びRSiO3/2により表されるシロキシ単位により構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー;式RSiO2/2、及びRSiO3/2により表されるシロキシ単位により構成されるオルガノポリシロキサンコポリマー、又は前述のオルガノポリシロキサンの2つ以上の混合物。上記の式で、Rは、前述のアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びハロゲン化アルキル基などのアルケニル基以外の一価炭化水素基を表してもよい。更に、上記の式でRは、上記に掲げたものに類似のアルケニル基を表してもよい。上記の式中のアルケニル基は特に限定されないが、典型的にはビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、又はシクロヘキセニル基の1つ以上として定義される。それぞれのアルケニル基は、同一であってもよく、又は異なっていてもよく、かつそれぞれは、他のもの全てから独立に選択されてもよい。
【0063】
式(IV)の加水分解性基XがClである特定の実施形態では、成分(A1)は、アルカリ土類金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物水和物(a)と対照的に、成分(b)とアルカリ土類金属酸化物(a’)との反応生成物として形成されてもよい。代表的なアルカリ土類金属酸化物(a’)は酸化バリウム又は酸化ストロンチウムを含む。
【0064】
成分(B1)は、1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサンである。成分(B1)の組成物は成分(B)に上述したのと同一の組成物であり、ここでは繰り返さない。
【0065】
本発明の組成物では、成分(B1)は、成分(A1)中のアルケニル官能基と反応し、それを消費するのに充分なSiH基を提供するように、組成物の硬化に充分な量で使用されなければならない。機械的強度の減少無しで充分な硬化を確保するために、成分(B1)は、成分(A1)の各100重量部に対して0.1〜100重量部の量で使用されなければならない。
【0066】
成分(C1)は本発明の組成物の硬化を促進するヒドロシリル化触媒である。成分(C1)の組成物は成分(D)に上述したのと同一の組成物であり、ここでは繰り返さない。
【0067】
本発明の組成物では、成分(C1)は、アリール基含有シロキサン組成物の硬化を促進するのに充分な量で使用されなければならない。特に、本発明の組成物では、成分(C1)中に含有される金属形白金の量が、重量単位で、0.1〜500ppmの範囲、より好ましくは1〜50ppmの範囲に留まる量で成分(C1)を使用することが好ましい。
【0068】
特定の実施形態では、成分(A1)中のアルケニル基に対する成分(B1)中のケイ素に結合した水素原子のモル比(すなわち、SiH/Viモル比)は、1/1以上、あるいは1/1〜3/1、あるいは1/1〜1.2/1である。
【0069】
これらのアリール基含有シロキサン組成物の中へのアルカリ土類金属の組み込みは、上述の実施形態のいずれでも、170℃以上の温度及び空気中での付加硬化されたアリール基含有シロキサン組成物の変色を低減する。これらのアリール基含有シロキサン組成物の中へのアルカリ土類金属の組み込みは、そのような硬化組成物の形成のための硬化条件を変えるか、又は他の方法で変化させず、かつそのような硬化組成物の物理的性質に悪影響を及ぼさない。換言すれば、本発明のアリール基含有シロキサン組成物から形成される付加硬化組成物は、安定化された付加硬化アリール基含有シロキサン組成物である。顕著なこととしては、本発明によるアルカリ土類金属を含むアリール基含有シロキサン組成物は、150℃以下の温度でなお硬化し、硬化組成物は、約1.55の屈折率をなお有し、LEDを水、酸化、又は他の腐食性化合物から保護するバリア性をなお提供する。このように、本発明によるアリール基含有シロキサン組成物は、一貫した光透過率が望まれる発光素子中でLEDを保護するための封入層としての使用に理想的に適している。
【0070】
特定の追加の実施形態では、例えばアリール基含有シロキサン組成物が発光素子で使用するための封入材組成物として使用されるか(すなわち、封入材組成物が発光素子中でLEDを保護するための封入層を形成する場合)、又は半導体成分の形成に別法で使用される実施形態では、典型的には追加の成分が組成物中に含まれる。そのような追加の成分は、硬化封入層に追加の物理的性質を提供するか、又は適用及び硬化に先立ってアリール基含有シロキサン組成物に追加の取扱い性を提供することもある。
【0071】
本発明のアリール基含有シロキサン組成物中に独立に含まれてもよい追加の成分の非限定的な一覧としては、ヒドロシリル化阻害剤、無機蛍光体、スペーサー、熱伝導性及び/又は熱不導性充填剤、補強性及び/又は非補強性充填剤、電導性及び/又は非電導性充填剤、充填剤処理剤、接着促進剤、可塑剤、溶媒又は希釈剤、湿潤剤、界面活性剤、表面不動化剤、フラックス剤、殺菌剤、シリコーン流体、シリコーンワックス、増粘剤又はチクソトロピー剤などの流動性改善剤又は堆積防止剤又は垂れ下がり防止剤、粘着剤、酸受容剤、ヒドロシリル化安定剤、熱安定剤などの安定剤及び/又はUV安定剤、顔料、染料などが挙げられるが、これに限定されない。前述の添加物の例は、参照により本明細書中に組み込まれているBhagwagarらへのWO2012/102852A1に記述されているが、本発明を限定するものでない。本発明のゲル及び/又は電子物品は、前述の添加剤のいずれかの任意の1つ以上を含まなくてもよいことも企図される。これらの添加物のいくつかを下記に詳述する。
【0072】
ヒドロシリル化阻害剤が、本発明のアリール基含有シロキサン組成物のポットライフを調整するのに添加されてもよい。そのような阻害剤は、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オル、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オル、3−メチル−1−ペンテン−3−オル、フェニルブチノールなどのアセチレン系アルコール、アセチレン系アルコール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート、ポリビニルシロキサン、及び有機リン化合物、及びフマレート又はマレエートであってもよい。ヒドロシリル化阻害剤は、アリール基含有シロキサン組成物の1〜1000ppm、あるいは5〜2000ppm、あるいは10〜500ppmのヒドロシリル化阻害剤を含み得る。
【0073】
任意の無機蛍光体を白色光発光半導体コンポーネントの製造のためにアリール基含有シロキサン組成物の中に添加することができ、CeドープされたYAG蛍光体、YAG:Ce(YAl12:Ce3+)などのY、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つ元素及びAl、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素を含有するセリウムドープされたガーネット蛍光体、及びYGa12:Ce3+、Y(AlGa)12:Ce3+及びY(AlGa)12:Tb3+などの希土類によりドープされた他のガーネット、並びにSrS:Ce3+、Na、SrS:Ce3+、Cl、Srs:CeCl、CaS:Ce+3及びSrSe:Ce3+などの希土類によりドープされたアルカリ土類金属硫化物、例えばCaGa:Ce3+及びSrGa:Ce3+などの希土類によりドープされたチオガレート、及び例えばYAlO:Ce3+、YGaO:Ce3+、Y(AlGa)O:Ce3+などの希土類によりドープされたアルミネート、及び例えばYSiO:Ce、及びイットリウム化合物、スカンジウム化合物又はランタン化合物の全てなどの希土類によりドープされたオルトシリケートMSiO:Ce3+(M:Sc、Y、Sc)が挙げられる。
【0074】
この蛍光体固体は、ミクロンサイズ又はナノメートルサイズの粉末(物体)であることができる。表面は変成又は非変成であってよい。それらは配合物の中に使用される混合物又は単一のものであることができる。それらはシリコーン配合物に可溶性又は不溶性であることができる。それらは、他の固体キャリア上にドープし、次いで固体配合物の中に添加することができる。
【0075】
蛍光体含有量は、アリール基含有シロキサン組成物の全重量の0〜60重量パーセント、あるいは1〜60重量パーセント、あるいは3〜50重量パーセントであってもよい。
【0076】
本発明のアリール基含有シロキサン組成物で使用され得る代表的な充填剤としてはヒュームドシリカ、沈降シリカ、及びシリカエアロゲルなどのシリカ粉末が挙げられる。特定の実施形態では、シリカ粉末の表面は、オルガノクロロシラン、オルガノジシラザン及び環状オルガノポリシラザンなどの様々な剤により処理することができる。本発明のアリール基含有シロキサン組成物中に含まれ得る他の代表的な充填剤は、表面処理又は非処理のアルミナ粉末を含む。充填剤は、アリール基含有シロキサン組成物の全重量の0.1〜20重量パーセントであってもよい。
【0077】
更に、アリール基含有シロキサン組成物は、アリール基含有シロキサン組成物の全重量の0.1〜20重量パーセントの量で添加されるガラスマイクロカプセルを含んでもよい。
【0078】
アリール基含有シロキサン組成物は、ニートで又は処理及び適用のために組成物の粘度を低減するために添加される1つ又は多数の溶媒又は希釈剤の存在下で作製されてもよい。溶媒又は希釈剤の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn−プロパノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、例えば、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、ヘプタン、ヘキサン、又はオクタンなどの脂肪族炭化水素、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、又はエチレングリコールn−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル、例えば、ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、又は塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、クロロホルム、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、揮発油、石油スピリット、又はナフサが挙げられる。使用される場合、溶媒又は希釈剤は、アリール基含有シロキサン組成物の全重量の5%〜70%を占めてもよい。
【0079】
本発明による硬化型アリール基含有シロキサン組成物は、成分(A)〜(D)又は(A1)〜(C1)及び任意の追加の添加物を単純に混合することにより形成されてもよい。貯蔵安定性の理由により硬化型組成物を二液以上、好ましくは二液で提供することが好ましいが、硬化型アリール基含有シロキサン組成物は一液で提供されてもよい。次いで、使用に先立って、二液組成物を必要とされる比率で混合してもよい。成分を二液以上の硬化型アリール基含有シロキサン組成物に正しい方法で分配して、貯蔵安定性を促進することが重要である。従って、ヒドロシリル化触媒((D)又は(C1)のいずれか)が1分子当たり少なくとも2つのケイ素に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン((B)又は(B1)のいずれか)から分離して貯蔵されるならば、アリール基含有シロキサン組成物は多くの方法で配合することができる。それぞれの成分及び添加物各々の予備反応させた組合せも二液システムで使用することができる。例えば、上述の成分(B)及び/又は(A)及び/又は(C)との混合に先立ち、特定の実施形態で説明した成分(A)及び(D)及び/又は(C)を予備形成及び貯蔵してもよい。別の例として、上述の成分(B1)及び/又は(A1)との混合に先立ち、成分(A1)及び(C1)を予備形成及び貯蔵してもよい。
【0080】
これらの実施形態のあるものでは、そのような成分及び/又は添加物の混合物が実質的に非反応性であり、従って貯蔵安定性であれば、主成分及び/又は添加物の組合せを以降の使用のために予備混合及び貯蔵してもよい。
【0081】
発光素子用に封入層を形成するために、任意の追加の成分を含む上述のアリール基含有シロキサン組成物の形成に使用される成分の各々を機械的ミキサーで一緒に混合して、混合物を形成することができ、あるいはスパチュラにより手混合して、混合物を形成してもよい。機械的混合は、プラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー、パドルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ダブルコーンブレンダー、高剪断ミキサー、歯科用ミキサーを含むドラムブレンダー、ブルテックスミキサー、ニーダー及びローラーミキサーなどの混練ミキサーなどの任意の好適な形式の工業用ミキサーであってもよい。
【0082】
次いで、注型、又はコーティング機械(ブラシ、スプレー)、又はスプルーピッカー、コンプレッサー、注入機、押し出し機などの工業用分注機により、得られた液体混合物を基板(発光素子上のLED上など)上、又は金型又は素子の中に分注することができる。
【0083】
次いで、液体混合物を、熱及び/又は光、及び/又は水分、及び/又は輻射線、及び/又は乾燥により固体に固化してもよい。次いで、固化した混合物を50〜250℃、あるいは70〜200℃、あるいは100〜160℃の硬化温度に2分間〜10時間、あるいは10分間〜2時間加熱することにより、混合物を硬化して安定化アリール基含有シロキサン組成物を形成する。
【0084】
当業者ならば本明細書で教示された本発明を理解及び評価することができるので、以下の例が提示され、これらの例を使用して、添付の特許請求の範囲に見出される本発明の範囲の限定に使用すべきでないことが理解される。
比較例
1.PhMeシロキサン流体(Dow Corning710)中のバリウム含有熱安定化組成物の評価
A.バリウム熱安定化組成物の作製
【0085】
メカニカルスターラー及び加熱油浴を備えたオープンフラスコ中で設定量のBa(OH)・8HO固体を約50グラムのジメチルシラノール末端フェニルメチルシロキサン流体(MOH−DPh2.8−MOH)の中に添加し、混合して分散物を形成する。この混合分散物を130〜140℃で30〜45分間保持して、無色の均一な溶液を形成し、次いで冷却して、生成物(下記の表1中に示す試料1〜7)を得た。ミキサーが12.5重量%バリウムまで増加したとき、無色の試料は透明な無色の液体から混濁したペーストに転換された。新しいピークが918cm−1に出現したとき、FTIRスペクトルは生成物の分子中にBa−O−Si結合の存在を確認した。バリウム含有量をICP分光計により測定した。
【0086】
反応条件及び生成物のキーの特徴を下記の表1に要約する。
【表1】
【0087】
表1は、試料1及び2が下記で更に説明するアリールシロキサン組成物中で評価されるべき充分な光学透明性をもたらたことを確認した。
B.フェニルシロキサン流体を備えたバリウム熱安定化組成物の変色に対する評価
【0088】
0.6グラムの試料1又は試料2を20グラムのフェニルシロキサン流体(Dow Corning(登録商標)710流体)の中に導入して、34ppm(試料1)及び310ppm(試料2)のバリウム含有量を得た。5パーツパーミリオンの白金((1)Speier触媒:イソプロパノール中のPt(II)錯体((HPtClxHO)、[(C)PtIICl)又は(2)Karstedt触媒:Pt(0)錯体、Pt(DVTMDS))の添加又は無添加で試料を作製した。作製した試料を下記の表2に要約した。
【0089】
生成試料(実施例A1〜A3、B1〜B3、及びC1〜C3)は室温で全てクリアで、無色の液体混合物であった。生成試料を空気の存在下で235℃に5時間暴露した。UV−Vis分光計(Shimazu UV−2401)を使用して、エージングした液体試料の光透過率を測定した。液体試料の450nmでの透過率(この領域での吸光度は黄変と一致する)を800nmでの透過率(黄変材料でも高透過率領域)に正規化した。各試料のパーセント透過率(%T@450/800)を変色評価に対して使用した。高%T@450/800値は450nmでの低吸光度、従って低黄色外観を示す。
結果を下記の表3に示す。
【表2】

【表3】
【0090】
表3中の結果は、実施例A1〜A3に示すようにPhMeシロキサン流体(Dow Corning(登録商標)710流体)が高温エージング時、白金の不存在下又は熱安定性添加物無しで、色が安定することを示した。しかしながら、白金触媒の存在下では、付加硬化されたフェニルシロキサン封入層配合物用の触媒として使用される通常の装填量では、PhMeシロキサン流体(Dow Corning(登録商標)710流体)はエージング時に黄変した(実施例B1及びC1を参照)。しかしながら、実施例B2〜B3及びC2〜C3に示すように、熱安定性添加物の添加は、黄変の量を大きく低減した。
2.封入層向けのバリウム熱安定性組成物へのビニル基導入の評価
A.バリウム含有ビニルシロキサン(RVi1)の作製
【0091】
300グラムのジフェニルジシラノール、90グラムのフェニルトリメトキシシラン、75グラムのジビニルジメトキシシラン、51.6グラムのビニルジメチルメトキシシラン、1.17グラムのBa(OH)・HO及び120グラムのキシレンを、メカニカルスターラー、冷却コンデンサー、温度計及び加熱浴を備えたフラスコに添加した。混合物を還流まで加熱し、還流温度で5〜6時間保持した。冷却しながら、液体を活性炭により精製し、次いで0.22μm孔径の1つのフィルターで濾過した。濾過後溶液を減圧下85℃で3時間ストリッピングした。最終生成物(RVi1)として、29Si NMRでキャラクタリゼーションして組成:DPh20.46ph0.20Vi0.19Vi0.15を有する、透明な、無色の粘稠な液体を得た。
B.バリウム含有ビニルシロキサン(RVi2)の作製
【0092】
300グラムのジフェニルジシラノール、72グラムのビニルトリメトキシシラン、93グラムのジビニルジメトキシシラン、1.17gのBa(OH)・HO及び160グラムのキシレンを、メカニカルスターラー、冷却コンデンサー、温度計及び加熱浴を備えたフラスコに添加した。混合物を還流まで加熱し、還流温度で5〜6時間保持した。冷却しながら、液体を活性炭により精製し、次いで0.22μm孔径の1つのフィルターで濾過した。濾過後溶液を減圧下85℃で3時間ストリッピングした。最終の生成物(RVi2)として、Si NMRでキャラクタリゼーションして最終生成物(RVi2)及び組成:DPh20.54Vi0.27Vi0.19を有する、透明な、無色の粘稠な液体を得た。
C.RVi1又はRVi2を含む封入材組成物の作製
【0093】
次に、20重量パーセントのRVi1又はRVi2を市販の封入材(Dow Corning(登録商標)OE6630シリコーンLED封入材)に添加することにより、封入材組成物を作製した。追加のSiH含有シロキサン(M0.6Ph0.4)をこの混合物に添加して、RVi1又はRVi2いずれかにより導入された追加のビニルとバランスをとり、このようにして1.02の全体のSiH/Viモル比を維持した。
【0094】
3グラムの生成配合物(2ppmの白金触媒装填量の)を作製し、小さいアルミニウムパンに加え、熱風乾燥器中120℃で硬化させた。120℃でのゲル化時間(試料表面を小さい木製だぼにより周期的に探りを入れることによりモニターした固化までの時間)を求め、試料を高温エージングに先立ち150℃で30分間後硬化させた。次いで、試料を空気中234℃に70時間暴露し(高温エージング)、BYK比色計を用いて、黄変をb値(b値が高い程、より黄変が検出される)として光学的に定量化する黄変(変色)度を求めた。ゲル化時間及び黄変の試験結果を下記の表4に示す。
【表4】
【0095】
表4中の結果は、封入材組成物(試料E及びF)へのバリウムの導入が、コントロール試料(試料D)と比較して封入材組成物の変色を低減したということを確かに示す。
【0096】
更に、M単位経由でのビニル官能基の導入(試料E)はゲル化時間に著しく影響せず、Tシロキシ単位経由でのビニル官能基の組み込み(試料F)はゲル化時間に著しく影響した。
3.バリウムにより変成された封入材組成物の変色に対する評価
A.バリウム含有ビニルシロキサン(RVi3)の作製
【0097】
100.0グラムの部分縮合したフェニルシルセキオキサン樹脂(5重量パーセントOH基を含むTPh)、28グラムのビニルジメチルメトキシシラン(ViMeSiOMe))、0.38グラムの水酸化バリウム水和物(Ba(OH)・HO)、及び80グラムのキシレンをスターラー、温度計、冷却コンデンサー、ガス入口/出口及び油浴を備えたフラスコ中に添加した。窒素により10分間パージした後、システムを還流温度(80〜81℃)まで加熱し、5時間保持した。透明な溶液を約40℃まで冷却し、2.0グラムの活性炭粉末を添加した。撹拌を室温で一夜維持し、混合物を0.45μm孔径のナイロン膜から濾過した。次いで、溶液を減圧において85〜87℃、約3時間蒸発させて、全ての揮発性化合物を除去した。最終生成物(RVi3)を屈折率1.5504(80℃)の透明な、無色の固体として得、TPh0.75Vi0.25の分子組成を29Si NMRスペクトル分析により求めた。
B.低減したバリウム含有量のバリウム含有ビニルシロキサン(RVi4)の作製
【0098】
水酸化バリウム水和物(Ba(OH)・HO)含有量を0.15グラムまで低減したことを除いて、上記のRVi3と同一の方法でRVi4を作製した。
C.RVi3又はRVi4を含む硬化フェニルシロキサン封入組成物の作製及び評価
【0099】
RVi3及びRVi4を表5に示す次の組成によりフェニルシロキサン封入組成物の中に配合した。
【表5】
【0100】
表5のフェニルシロキサン封入組成物を評価するために、3グラムの配合物(2ppmの白金触媒装填量の)を作製し、小さいアルミニウムパンに入れ、熱風乾燥器中120℃で硬化させた。120℃でのゲル化時間(試料表面を小さい木製だぼにより周期的に探りを入れることによりモニターした固化までの時間)を求め、試料を高温エージングに先立ち150℃で30分間後硬化させた。次いで、試料を空気中234℃に70時間暴露し(高温エージング)、BYK比色計を用いて、黄変をb値(b値が高い程、より黄変が検出される)として光学的に定量化する黄変(変色)度を求めた。ゲル化時間及び黄変の試験結果を下記の表6に示す。
【表6】
【0101】
試料G及びHが示すように、上記の表4中の試料Dと比較すると、硬化封入層の作製に使用される封入組成物の合成へのバリウムの添加は、ゲル化時間に著しい影響を及ぼさずに、封入層のエージング時の低減した黄変をもたらした。
【0102】
本開示は代表的に記載したものであり、使用されている用語は、限定ではなく、記述の語の本質にあるように意図されているということを理解すべきである。明らかに本発明の多くの改良及び変更が上記教示から可能である。それゆえ、本開示は、添付の特許請求の範囲内で、具体的な説明以外の方法で実施され得るということを理解すべきである。