(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)であり、この自車両1に、ドライバの運転操作に対して自律的な自動運転を含む運転支援制御を実行する運転支援装置2が搭載されている。運転支援装置2は、自車両1を取り巻く周囲の外部環境を認識する各種デバイスからなる外部環境認識部を備え、また、自車両1の運転状態を検出する各種センサ類からの信号が入力される。
【0012】
本実施の形態においては、運転支援装置2は、外界環境をセンシングするためのデバイスとして、車両1の前方の物体の3次元位置を検出するステレオカメラユニット3、車両1の前側方の物体を検出する側方レーダユニット4、車両1の後方の物体を検出するマイクロ波等による後方レーダユニット5を備え、更に、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって交通情報を取得する交通情報通信ユニット6を備えている。これらのユニット4〜6により車両1の外部環境を認識する外部環境認識部が形成されている。
【0013】
ステレオカメラユニット3は、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に設置される左右2台のカメラ3a,3bで構成されるステレオカメラを主としている。左右2台のカメラ3a,3bは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラであり、所定の基線長で固定されている。また、このステレオカメラユニット3には、左右のカメラ3a,3bで撮像した一対の画像をステレオ画像処理して、先行車両等の前方の物体の実空間における3次元位置情報を取得する画像処理部が一体的に備えられている。物体の3次元位置は、ステレオ画像処理によって得られる物体の視差データと画像座標値とから、例えば、ステレオカメラの中央真下の道路面を原点として、車幅方向をX軸、車高方向をY軸、車長方向(距離方向)をZ軸とする3次元空間の座標値に変換される。
【0014】
側方レーダユニット4は、自車両周辺に存在する比較的近距離の物体を検出する近接レーダであり、例えば、フロントバンパの左右コーナー部に設置され、マイクロ波や高帯域のミリ波等のレーダ波を外部に送信して物体からの反射波を受信し、ステレオカメラユニット3の視野外となる自車両の前側方に存在する物体までの距離や方位を測定する。また、後方レーダユニット5は、例えば、リヤバンパの左右コーナー部に設置され、同様にレーダ波を外部に送信して物体からの反射波を受信し、自車両後方から後側方にかけて存在する物体までの距離や方位を測定する。
【0015】
尚、後方物体は、リヤビューカメラを用いた画像認識、或いは画像認識と他のセンシングデバイスとのセンサフュージョンによって検出するようにしても良い。
【0016】
交通情報通信ユニット6は、ステレオカメラユニット3、側方レーダユニット4、後方レーダユニット5からは見通せない(センシングできない)エリアや交差道路等の交通情報を、道路付帯設備を介した路車間通信や他車両との車車間通信によって取得する。尚、交通情報通信ユニット6は、専用の装置としても良いが、交差点や信号機等の位置、道路の車線数、道路の曲率半径、制限速度、追い越し禁止区間等の走行環境の地図情報を保有するナビゲーション装置等の測位装置に設けられている通信装置を利用するようにしても良い。
【0017】
一方、自車両1の運転状態を検出するセンサ類としては、車速を検出する車速センサ10、操舵角を検出する操舵角センサ11、加速度を検出するGセンサ12等がある。運転支援装置2は、各ユニット4〜6で取得した自車両1を取り巻く交通環境情報と、車速センサ10や操舵角センサ11やGセンサ12等の各種センサ類で検出した自車両1の運転状態情報とに基づいて、車両1の運転支援制御を実行する。
【0018】
運転支援装置2の運転支援制御には、主要機能の一つとして先行車両に対する適応走行制御(ACC:Adaptive Cruise Control)があり、このACCに係る機能として、先行車両の追い越し制御がある。運転支援装置2による追い越し制御では、自車両前方に先行車両を認識し、その先行車両の車速が自車両の設定車速よりも低い場合、自車両の走行位置や先行車両との相対速度、自車両周囲の交通情報等に基づいて、先行車両を追い越し可能か否かを判断する。そして、追い越し可能と判断した場合、先行車両の追い越しを自動操縦で実行する。
【0019】
以下では、運転支援装置2の追い越し制御について説明する。ここでの追い越し制御は、自車両が先行車両を追い越すために現在の走行車線から隣の車線(追い越し車線)に移動し、先行車両を追い抜いた後、元の走行車線に戻る(先行車両の前に移動する)制御であり、追い越し車線としては、センターライン片側の複数の車線のうちの現在の走行車線の隣の車線と、センターラインを超えた反対側の対向車線との双方を想定している。運転支援装置2は、このような追い越し制御に係る機能部として、追い越し判断部20、追い越し環境監視部30、追い越し実行/中止判断部40、自動操舵部50、加減速制御部60、追い越し情報出力部70を備えている。
【0020】
追い越し判断部20は、ステレオカメラユニット3で認識した道路白線(区画線)の状態や交通情報通信ユニット6を介して取得した交通情報から、現在の走行区間が追い越し禁止区間でなく、また、工事や事故発生、料金所、信号機若しくは交差点等の追い越しの障害となるようなものが無いことを前提として、自車両の速度より遅い速度で走行する先行車両に追いついた場合や先行車両が減速してきた場合、先行車両の追い越しを実行するか否かを判断する。
【0021】
尚、道路白線の検出は、ステレオカメラユニット3で撮像した画像の画像平面における道路の幅方向の輝度変化を評価して白線の候補となる点群を抽出し、これらの白線候補点の時系列データを処理して、自車両(ステレオカメラユニット3)を原点とするXYZ座標空間における白線形状を近似したモデルを用いて行うことができる。白線の近似モデルとしては、ハフ変換によって求めた直線成分を連結した近似モデルや、2次式等の曲線で近似したモデルを用いることができる。
【0022】
追い越しを実行するか否かは、例えば、ステレオカメラユニット3及び車速センサ10の出力から取得した、自車両の走行速度、自車両と先行車両との相対速度、自車両と先行車両との間の車間距離、後方レーダユニット5の出力から取得した自車両後方の追い越し車線上の後続車両の有無を条件として判断する。そして、例えば、自車両後方の追い越し車線上に接近する後続車両が無く、自車両の設定車速と実走行速度との間の差が所定値以上、且つ車間距離が所定距離未満の場合には、先行車両の適切な追い越しが可能と判断して、自動操舵部50及び加減速制御部60に追い越し制御の開始を指示する。
【0023】
尚、自車両の走行速度と先行車両の走行速度との間の差が極めて大きくなった場合(例えば、先行車両が急ブレーキを掛けた場合等)には、追い越し判断を行うことなく、衝突防止制御を優先的に実行させ、自車両と先行車両との衝突を回避する。
【0024】
追い越し環境監視部30は、追い越し判断部20による追い越し判断を受けて追い越し制御を開始し、自車両が追い越し車線に移動したとき、追い越し車線を中心とする走行環境の変化を監視する。具体的には、先行車両を追い越すため自車両が追い越し車線に移動したとき、突然出現する後続車両の有無、自車両と後続車両との車間距離や対向車両の車速変化等を監視する。また、追い越し環境監視部30は、自車両周辺の周辺車両(元の車線上の追い越し対象の先行車両、この先行車両の前の先先行車両等)の位置や車速(相対速度)、追い越し車線の路面状態等の走行環境を監視する。追い越し車線の路面状態としては、ステレオカメラユニット3を介した画像認識や交通情報通信ユニット6を介して取得した交通及び気象情報から、雨や雪等の天候条件によって路面摩擦係数μが乾燥路よりも低下している低μ路、進行方向の道路勾配等を認識する。
【0025】
尚、低μ路は、気象条件のみならず、車両の走行制御パラメータから推定した路面摩擦係数μを用いて判断するようにしても良い。
【0026】
追い越し実行/中止判断部40は、自車両の追い越し制御が開始されると、追い越し環境監視部30によって後続車両が検出されたか否かを調べ、後続車両の検出結果に応じて、追い越しを中止するか、そのまま追い越しを実行するかを判断する。すなわち、追い越し車線に後続車両が検出されない場合は、そのまま追い越しを実行させて先行車両の前方の走行車線に戻り、追い越しを完了させる。一方、追い越し車線に後続車両が突然現れ、後続車両が検出された場合には、自車両と後続車両及び周辺車両との位置関係や相対速度に応じて、そのまま追い越しを実行して先行車両の前方の走行車線に戻るか、追い越しを中止して先行車両の後方の走行車線に戻るかを判断する。
【0027】
この場合、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、
図2に示すように、自車両が走行車線P1から追越車線P2に移動するとき(すなわち、自車両がA0の状態からA1の状態に車線変更するとき)、追越車線P2の後方に自車両に向かって進行する後続車両C1が出現すると、主として、自車両の車速Vaと後続車両C1の車速Vcとの関係に基づいて、追い越し制御(車線変更)を中止するか否かを判断する。より具体的には、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、後続車両の車速Vcが設定閾値Vcth1以上であり、自車両の加速によって後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判定を行う。また、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、自車両の車速Vaと後続車両C1の車速Vcとに基づいて、設定時間t1後における後続車両C1との車間距離Lcを推定する。そして、追い越し実行/中止判断部40は、推定した車間距離Lcが設定閾値Lcth1以下であり、自車両の加速によって後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判定を行う。また、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、自車両の車速Vaと後続車両C1の車速Vcとに基づいて、後続車両C1との車間距離を所定の車間距離に維持するための目標加速度Atを算出する。そして、追い越し実行/中止判断部40は、算出した目標加速度Atが設定閾値Atth以上であり、自車両の加速によって後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判定を行う。
【0028】
また、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、
図2に示すように、自車両が追越車線P2に移動し、先行車両B1に対する追い抜きを行うとき(すなわち、自車両がA1の状態からA2の状態に移動するとき)、追越車線P2の後方に自車両に向かって進行する後続車両C1が出現すると、主として、自車両の車速Vaと後続車両C1の車速Vcとの関係に基づいて、追い越し制御(追い抜き)を中止するか否かを判断する。より具体的には、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、後続車両C1の車速Vcに基づいて設定時間t2後における後続車両C1の車速Cceを推定し、この推定車速Vceが設定閾値Vceth以上であるとき、追い抜きを中止する旨の判定を行う。また、追い越し実行/中止判断部40は、例えば、先行車両B1の車速Vbに基づいて設定時間t3後における先行車両B1の車速Vbeを推定し、この推定車速Vbeが設定閾値Vbeth以上である場合には、仮に、後続車両C1が存在しない場合等であっても、追い抜きを中止する旨の判定を行う。
【0029】
自動操舵部50は、追い越し判断部20からの追い越し制御開始の指示を受けて、自動操舵部50で方向指示灯を点滅させると共に、自車両を走行車線から対向車線に移動させるべく、パワーステアリング装置(図示せず)を制御する。また、加減速制御部60は、追い越し判断部20からの追い越し制御開始の指示を受けて、電子スロットル装置(図示せず)を制御して自車両を加速させながら追い越し車線に移動させる。
【0030】
このとき、追い越し実行/中止判断部40からの追い越し中止の指示がない場合には、加減速度制御部60は、自車両の加速度を増加させて先行車両を追い越す。そして、先行車両との距離が適切な距離になったとき、自動操舵部50は、元の走行車線に戻って先行車両の前に出るための車線変更を行う。また、加減速制御部60は、元の走行車線に復帰後の自車両の車速Vaを、ドライバ等によって設定されたセット車速等に制御する。これにより、追い越し制御が完了する。
【0031】
一方、追い越し実行/中止判断部40から追い越し中止を指示された場合には、自車両を減速させて元の走行車線の先行車両の後方に戻るように操舵及び加減速制御を行う。
【0032】
追い越し情報出力部70は、追い越し制御における各種情報をドライバに提示するための音声出力や画像出力を行う。例えば、追い越し動作の開始、後続車両の存在、又は、追い越しの開始等に関する音声案内を出力し、また、後続車両の出現による追い越し中止、後続車両が出現しても安全な追い越しが可能であることが確認された場合の追い越し実行といった状況の変化に応じた制御内容をドライバに報知する。
【0033】
次に、以上の追い越し制御を実現する運転支援装置2のプログラム処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0034】
このルーチンは、追い越し判断部20において、例えば先行車両の追い越し制御の開始が指示されたことをトリガとして設定時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、運転支援装置2は、ステップS101において、現在、追い越し実行/中止判断部40において追い越し制御を中断する旨の判断がされているが否かを調べる。
【0035】
そして、ステップS101において中止判断がされていない場合、運転支援装置2は、ステップS107に進む。
【0036】
一方、ステップS101において中止判断がなされていると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS102に進み、現在、自車両が走行車線P1から追越車線P2への車線変更中であるか否かを調べる。
【0037】
そして、ステップS102において、車線変更中であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS103に進み、車線変更を中止するか否かの判断を行った後、ステップS105に進む。
【0038】
一方、ステップS102において、車線変更中でないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS104に進み、追い抜きを中止するか否かの判断を行った後、ステップS105に進む。
【0039】
ここで、ステップS102からステップS103に進むと、運転支援装置2は、主として追い越し実行/中止判断部40において、現在実行中の車線変更を中止するか否かの判断を行う。この車線変更中止判断は、例えば、
図4,5に示す車線変更中止判断サブルーチンのフローチャートに従って実行されるものであり、サブルーチンがスタートすると、運転支援装置2は、ステップS201において、各種閾値の設定を行う。
【0040】
すなわち、運転支援装置2は、追越車線P2に後続車両C1が検出された際に車線変更を中止するか否かの判断を行うための閾値として、後続車両C1の車速(後続車速)Vcに対する閾値Vcth1,Vcth2、設定時間t1後の後続車両との車間距離(後続者間距離)Lcに対する閾値Lcth1,Lcth2、及び、後続車両C1との車間距離を一定に保つために必要な目標加速度Atに対する閾値Atth1,Atth2を設定する。
【0041】
この場合において、閾値Vcth1は、例えば、追越車線P2の法定速度Vlに基づいて設定されるものであり、例えば、Vcth1=Vl、或いは、Vcth1=Vl−α1に設定されている。また、閾値Vcth2は、閾値Vcth1以下の値であり、例えば、Vcth2=Va(自車両の車速)、或いは、Vcth2=Va+α2に設定されている。
【0042】
閾値Lcth1は、例えば、後続車両の追突を回避するために必要最小限の車間距離であり、予め設定されたマップ等を参照して自車両の車速Vaが高くなるほど小さな値に設定されている。また、閾値Lcth2は、閾値Lcth1以上の値に設定されている。なお、設定時間t1は、例えば、自車両の現在の車速Va及び舵角等に基づいて推定される車線変更終了までの所要時間である。
【0043】
閾値Atth1は、例えば、設定時間t1後の自車両の車速Vaを法定速度Vl未満に抑えるための加速度の上限値に設定されている。また、閾値Atth2は、閾値Atth1以下の値に設定されている。
【0044】
ステップS201からステップS202に進むと、運転支援装置2は、現在、追越車線P2上に後続車両が検出されているか否かを調べる。
【0045】
そして、ステップS202において、追越車線P2上に後続車両が検出されていないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS211に進む。
【0046】
一方、ステップS202において、追越車線P2上に後続車両が検出されていと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS203に進み、後続車速Vcが設定閾値Vcth1以上であるか否かを調べる。
【0047】
そして、ステップS203において、後続車速Vcが設定閾値Vcth1以上であると判定した場合、運転支援装置2は、自車両を現在の自車速度Vaよりも加速させることは法規上困難であり、このまま車線変更を継続すると自車両に対する後続車両の接近を回避することが困難であると判断し、ステップS210に進む。
【0048】
一方、ステップS203において、後続車速Vcが設定閾値Vcth1未満であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS204に進み、設定時間t1後の後続車間距離Lcが設定閾値Lcth1以下であるか否かを調べる。
【0049】
そして、ステップS204において、設定時間t1後の後続車間距離Lcが設定閾値Lcth1以下であると判定した場合、運転支援装置2は、自車両を加速させても後続者間距離Lcを十分に確保することは困難であり、このまま車線変更を継続すると自車両に対する後続車両の接近を回避することが困難であると判断し、ステップS210に進む。
【0050】
一方、ステップS204において、設定時間t1後の後続車間距離Lcが設定閾値Lcth1よりも大きいと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS205に進み、目標加速度Atが設定閾値Atth1以上であるか否かを調べる。
【0051】
そして、ステップS205において、目標加速度Atが設定閾値Atth1以上であると判定した場合、運転支援装置2は、自車両を現在の目標加速度Atによって加速させることは法規上困難であり、このまま車線変更を継続すると自車両に対する後続車両の接近を回避することが困難であると判断し、ステップS210に進む。
【0052】
一方、ステップS205において、目標加速度Atが設定閾値Atth1未満であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS206に進み、後続車速Vcが設定閾値Vcth2以上であるか否かを調べる。
【0053】
そして、ステップS206において、後続車速Vcが設定閾値Vcth2以上であると判定した場合、運転支援装置2は、このまま車線変更を継続すると自車両に対して後続車両が接近する可能性が高く、自車両をさらに加速させる必要があると判断し、ステップS209に進む。
【0054】
一方、ステップS206において、後続車速Vcが設定閾値Vcth2未満であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS207に進み、後続者間距離Lcが設定閾値Lcth2以下であるか否かを調べる。
【0055】
そして、ステップS207において、後続車間距離Lcが設定閾値Lcth2以下であると判定した場合、運転支援装置2は、このまま車線変更を継続すると自車両に対して後続車両が接近する可能性が高く、自車両をさらに加速させる必要があると判断し、ステップS209に進む。
【0056】
一方、ステップS207において、後続者間距離Lcが設定閾値Lcth2よりも大きいと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS208に進み、目標加速度Atが設定閾値Atth2以上であるか否かを調べる。
【0057】
そして、ステップS208において、目標加速度Atが設定閾値Atth2以上であると判定した場合、運転支援装置2は、このまま車線変更を継続すると自車両に対して後続車両が接近する可能性が高く、自車両をさらに加速させる必要があると判断し、ステップS209に進む。
【0058】
一方、ステップS208において、目標加速度Atが設定閾値Atth2未満であると判定した場合、運転支援装置2は、このまま車線変更を継続しても自車両に対して後続車両が接近する可能性は低いと判断し、ステップS211に進む。
【0059】
上述のステップS206、ステップS207、或いは、ステップS208からステップS209に進むと、運転支援装置2は、現在の自車両の車速Vaが追越車線P2の法定速度Vl未満であるか否かを調べる。
【0060】
そして、ステップS209において、車速Vaが法定速度Vl未満であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS212に進む。
【0061】
一方、ステップS209において、車速Vaが法定速度Vl以上であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS210に進む。
【0062】
また、上述のステップS203、ステップS204、ステップS205、或いは、ステップS209からステップS210に進むと、運転支援装置2は、もとの走行車線P1における先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在するか否かを調べる。
【0063】
そして、ステップS210において、先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在すると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS213に進み、追越車線P2への車線変更を中止して元の走行車線P1に復帰すべき旨の判断をした後、サブルーチンを抜ける。
【0064】
一方、ステップS210において、先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在しないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS211に進む。
【0065】
そして、ステップS202、ステップS208、或いは、ステップS210からステップS211に進むと、運転支援装置2は、後続車両に対して加速しないで車線変更を行う旨の判断をした後(すなわち、通常の車線変更時に必要な加速状態を維持する旨の判断をした後)、サブルーチンを抜ける。 また、上述のステップS209からステップS212に進むと、運転支援装置2は、追越車線P2の法定速度Vlを限度として車速Vaを加速しながら車線変更を行う旨の判断をした後、サブルーチンを抜ける。
【0066】
なお、このような車線変更の中止判断としては、後続車速Vc、後続車間距離Lc、及び、目標加速度Atをシリーズで判定し、これらの判定結果に基づいて各種判断を行う上述の制御に代えて、これらのパラメータを総合的に用いた判定結果に基づいて各種判断を行うことも可能である。この場合、運転支援装置2は、例えば、自車両と後続車両との相対車間(車間距離Lc)S、自車両と後続車両との相対速度V、及び、自車両と後続車両との相対加速度Aを用い、以下の(1)式を用いて後続車両が自車両に追いつくまでの予想時間Tを算出する。
【0067】
S=V・T+(1/2)・A・T
2 …(1)
そして、運転支援装置2は、例えば、自車両が先行車両を追い越すまでの推定所要時間等から各種閾値(余裕時間)を設定し、この閾値と予想時間Tと比較することにより、上述の各種判断を行うことも可能である。
【0068】
図3のメインルーチンにおいて、ステップS102からステップS104に進むと、運転支援装置2は、主として追い越し実行/中止判断部40において、現在実行中の先行車両に対する追い抜きを中止するか否かの判断を行う。この追い抜き中止判断は、例えば、
図6に示す追い抜き中止判断サブルーチンのフローチャートに従って実行されるものである。サブルーチンがスタートすると、運転支援装置2は、ステップS301において、追越車線P2を走行中の自車両が走行車線P1を併走する先行車両B1を追い抜いたか否かを調べる。
【0069】
そして、ステップS301において、自車両が先行車両B1を追い抜いたと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS308に進む。
【0070】
一方、ステップS301において、自車両が先行車両B1を追い抜いていないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS302に進み、現在、追越車線P2上に後続車両が検出されているか否かを調べる。
【0071】
そして、ステップS302において、追越車線P2上に後続車両が検出されていないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS305に進む。
【0072】
一方、ステップS302において、追越車線P2上に後続車両C1が検出されていると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS303に進み、設定時間t2後における後続車両C1の車速Vceを推定するとともに、この推定車速Vceに対する閾値Vcethを設定する。
【0073】
ここで、運転支援装置2は、例えば、現在の自車両の車速Vaと先行車両B1の車速Vbとに基づいて、自車両と先行車両B1との相対位置関係が所定の関係となるまでの所要時間(例えば、自車両が先行車両B1を追い抜くまでの所用時間)を設定時間t2として設定し、この設定時間t2における後続車両C1の車速Vcの変化等に基づいて推定車速Vceを算出する。また、運転支援装置2は、推定車速Vceに対する閾値Vcethとして、例えば、追越車線P2の法定車速Vlを設定する。なお、設定閾値Vcethとしては、例えば、法定速度Vlを超えない範囲内において、現在の自車両の車速Vaに、所定車速を加算した値を設定することも可能である。
【0074】
そして、ステップS303からステップS304に進むと、運転支援装置2は、推定車速Vceが設定閾値Vceth以上であるか否かを調べる。
【0075】
そして、ステップS304において、後続車両C1の推定車速Vceが設定閾値Vceth以上であると判定した場合、運転支援装置2は、自車両が先行車両B1を追い抜いている間に後続車両C1が自車両に対して異常接近する可能性があると判断し、ステップS307に進む。
【0076】
一方、ステップS304において、後続車両C1の推定車速Vceが設定閾値Vcrth未満であると判定した場合、運転支援装置2は、先行車両B1を追い抜いている間に後続車両C1が自車両に対して異常接近する可能性が低いと判断し、ステップS305に進む。
【0077】
ステップS302、或いは、ステップS304からステップS305に進むと、運転支援装置2は、設定時間t3後における先行車両B1の車速Vbeを推定するとともに、この推定車速Vbeに対する閾値Vbethを設定する。
【0078】
ここで、運転支援装置2は、例えば、上述の設定時間t2と同様の演算によって設定時間t3を設定し、この設定時間t3における先行車両B1の車速Vbの変化等に基づいて推定車速Vbeを算出する。また、運転支援装置2は、推定車速Vbeに対する閾値Vbethとして、例えば、追越車線P1の法定車速Vlを設定する。なお、設定閾値Vbethとしては、例えば、法定速度Vlを超えない範囲内において、現在の自車両の車速Vaに、所定車速を加算した値を設定することも可能である。
【0079】
そして、ステップS305からステップS306に進むと、運転支援装置2は、推定車速Vbeが設定閾値Vbeth以上であるか否かを調べる。
【0080】
そして、ステップS306において、先行車両B1の推定車速Vbeが設定閾値Vbeth以上であると判定した場合、運転支援装置2は、先行車両B1が加速を開始したため追い抜くことが困難となる虞があり、当該先行車両B1を追い越すよりも、むしろ元の追従状態に戻った方が好ましいと判断し、ステップS307に進む。すなわち、本実施形態の運転支援装置2は、後続車両C1との関係のみならず、先行車両B1との関係をも考慮して追い越し中止の判断を行う。
【0081】
一方、ステップS306において、先行車両B1の推定車速Vbeが設定閾値Vbeth未満であると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS308に進む。
【0082】
上述のステップS304、或いは、ステップS306からステップS307に進むと、運転支援装置2は、もとの走行車線P1における先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在するか否かを調べる。
【0083】
そして、ステップS307において、先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在すると判定した場合、運転支援装置2は、ステップS309に進み、先行車両B1に対する追い越し(追い抜き)を中止して元の走行車線P1に復帰すべき旨の判断をした後、サブルーチンを抜ける。
【0084】
一方、ステップS307において、先行車両B1の後方に自車両の復帰スペースが存在しないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS308に進む。
【0085】
ステップS306、或いは、ステップS307からステップS308に進むと、運転支援装置2は、先行車両B1に対する追い越し制御を継続する旨の判断をした後、サブルーチンを抜ける。
【0086】
図3のメインルーチンにおいて、ステップS103、或いは、ステップS104からステップS105に進むと、運転支援装置2は、ステップS103或いはステップS104において追越制御を中止する旨の判断(すなわち、車線変更を中止する旨の判断、或いは、先行車両B1の追い抜きを中止する旨の判断)を行ったか否かを調べる。
【0087】
そして、ステップS105において、追越制御を中止する旨の判断がされなかった判定した場合、運転支援装置2は、ステップS106に進み、自動操舵部50及び加減速制御部60等を通じて追越制御を実行した後、ステップS108に進む。
【0088】
一方、ステップS101或いはステップS105からステップS107に進むと、運転支援装置2は、自動操舵部50及び加減速制御部60等を通じて元の走行車線P1に復帰するための追越中止制御を実行した後、ステップS108に進む。
【0089】
ステップS106或いはステップS107からステップS108に進むと、運転支援装置2は、上述の追越制御或いは追越中止制御が完了したか否かを調べる。
【0090】
そして、ステップS108において、追越制御或いは追越中止制御が完了していないと判定した場合、運転支援装置2は、ステップS101に戻る。
【0091】
一方、ステップS108において、追越制御或いは追越中止制御が完了したと判定した場合、運転支援装置2は、ルーチンを終了する。
【0092】
このような実施形態によれば、先行車両B1を追越可能と判断して自車両1が追越車線P2に車線変更を行う際に、追い越し環境監視部30により追越車線P2に後続車両C1が検出されたとき、後続車両C1の走行状態に基づいて車線変更を中止するか否かの判断を追い越し実行/中止判断部40によって行うことにより、先行車両B1に対する追い越し開始後の状況変化に対応して追い越しの中止又は実行を適切に判断し、運転者に不安を与えることのない車両の運転支援を実現することができる。
【0093】
この場合において、具体的には、追い越し実行/中止判断部40は、後続車両C1の車速Vcが設定閾値Vcth1以上であり、自車両の加速によっては後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判断を行うことにより、運転者の感覚に合致した車線変更の中止判断を実現することができる。
【0094】
また、追い越し実行/中止判断部40は、後続車両C1との設定時間t1後における車間距離Lcが設定閾値Lcth1以上であり、自車両の加速によっては後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判断を行うことにより、運転者の感覚に合致した車線変更の中止判断を実現することができる。
【0095】
また、追い越し実行/中止判断部40は、後続車両C1との車間距離を維持するための目標加速度Atが設定閾値Atth1以上であり、自車両の加速によって後続車両C1の接近を回避することが困難であると判定したとき、車線変更を中止する旨の判断を行うことにより、運転者の感覚に合致した車線変更の中止判断を実現することができる。
【0096】
さらに、追い越し実行/中止判断部40は、自車両の加速によって後続車両C1との接近を回避することが困難であると判定した場合であっても、元の走行車線P1に復帰スペースがないと判定したとき、次善の策として車線変更を中止する旨の判断を行わないことにより、運転者の感覚に合致した車線変更の中止判断を実現することができる。
【0097】
同様に、先行車両B1を追い越し可能と判断して自車両1が追越車線P2に移動し先行車両B1の追い抜きを行う際に、追い越し環境監視部30により追越車線P2に後続車両C1が検出されたとき、後続車両C1の走行状態に基づいて追い抜き(追い越し)を中止するか否かの判断を追い越し実行/中止判断部40によって行うことにより、先行車両B1に対する車の追い越し開始後の状況変化に対応して追い越しの中止又は実行を適切に判断し、運転者に不安を与えることのない車両の運転支援を実現することができる。
【0098】
この場合において、具体的には、追い越し実行/中止判断部40は、設定時間t2後における後続車両C1の車速を推定し(推定車速Vceを算出し)、推定車速Vceが設定閾値Vceth以上であるとき、追い抜きを中止する旨の判断を行うことにより、運転者の感覚に合致した追い抜きの中止判断を実現することができる。
【0099】
また、追い越し実行/中止判断部40は、推定車速Vceが設定閾値Vceth以上であっても、元の走行車線P1に復帰スペースがないと判定したとき、追い抜きを中止する旨の判断を行わないことにより、運転者の感覚に合致した追い抜きの中止判断を実現することができる。
【0100】
また、追い越し実行/中止判断部40は、設定時間t3後における先行車両B1の車速を推定し(推定車速Vbeを算出し)、推定車速Vbeが設定閾値Vbeth以上であるとき、追い抜きを中止する旨の判断を行うことにより、運転者の感覚に合致した追い抜きの中止判断を実現することができる。
【0101】
また、追い越し実行/中止判断部40は、推定車速Vbeが設定閾値Vbeth以上であっても、元の走行車線P1に復帰スペースがないと判定したとき、追い抜きを中止する旨の判断を行わないことにより、運転者の感覚に合致した追い抜きの中止判断を実現することができる。
【0102】
なお、本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲内である。