(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、手振りを光学的に検出する装置において、夫々特性が異なる光を手振り域に出射する複数の発光素子と、各発光素子から出射された光による手からの反射光を受光する受光素子と、各発光素子から出射された光による手からの反射光の前記受光素子の受光量の差及び和の経時変化に基づいて、手振りの移動方向と移動速度を検出する検出器とを備える手振り検出装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の手振り検出装置によれば、手振りに対してその移動方向及び移動速度を検出することができ、例えば自動車を運転中に、運転手がカーステレオの音量調節、空調機器の温度調節等をそれらの機器に目を向けることなく行うことができる。
【0004】
また、特許文献2には、検出領域から入射されるパルス光を直流光でバイアスした光を受光する受光素子と、パルス光を検出領域に向けて投光する第1の投光素子と、直流光を直接受光素子に向けて投光する第2の投光素子とを備える光電センサが記載されている。
【0005】
特許文献2に記載の光電センサによれば、受光素子に直接光を照射する光源(第2の投光素子)を備えることにより、光電センサの応答速度を向上させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の手振り検出装置では、複数の発光素子から受光素子に直接光が照射されると誤動作する可能性があるものの、その対策が示されていない。また、カーステレオや空調機器の操作を対象としているため、センサの応答速度の改善については特に考慮されていない。
また、特許文献2に記載の装置では、センサの応答速度を考慮した内容となっているものの、パルス光を検出領域に向けて投光する第1の投光素子が基本的に1個であるため、手振りの移動方向と移動速度を検出する構成になっていない。また、直接光を照射する光源から検出領域に漏れた光が検出物体から反射し、この反射光が受光素子によって検出されると誤動作する可能性があるものの、その対策が示されていない。
【0008】
そこで、本発明は、手の動き等を光学的に検出するモーションセンサの応答速度の向上を図りつつ、センサの誤動作の問題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく成された本発明は、以下の構成を有する。
すなわち、請求項1の発明は、被検知体の移動を検知するモーションセンサであって、
被検知体の移動方向に間隔を置いて配置され、前記被検知体の移動領域に互いに特性が異なる光を出射する複数の第一発光素子と、
前記複数の第一発光素子から出射され前記被検知体によって反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子に向けて光を出射する第二発光素子と、
前記複数の第一発光素子の間に配置され、前記第二発光素子から出射された光が前記被検知体の移動領域を介さずに前記受光素子に照射されるように導光する導光部と、前記導光部から延出され前記複数の第一発光素子からの光が前記受光素子に直接照射されないように遮光する遮光部とを具備する隔離部材と、
前記受光素子の受光量の変化を利用して前記被検知体の移動を検知する検知回路が搭載された回路基板と、
を備え
、
前記回路基板は、前記被検知体の移動方向に対して略平行に配され、
前記複数の第一発光素子、前記受光素子および前記隔離部材は、前記回路基板の表面に配され、
前記第二発光素子は、前記回路基板に形成された貫通孔を塞ぐように前記回路基板の裏面に配されており、
前記隔離部材の前記導光部は、前記貫通孔の上方に位置し一側面に開口を有する有底筒状を成し、
前記受光素子は、前記開口に対面する位置に配されている、
ことを特徴としているものである。
【0012】
また、請求項
2の発明は、前記隔離部材の前記遮光部は、前記開口の縁部から延出され、前記第一発光素子と前記受光素子との間に配された壁体を備えることを特徴としているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモーションセンサによれば、第二発光素子によって応答速度の向上を図ることができる。それに加え、複数の第一発光素子の直接光と、第二発光素子に由来する被検知体からの反射光が、受光素子に照射されてしまうのを効果的に抑制することができ、誤動作を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のモーションセンサの実施形態例を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態例は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態例を適宜に変形可能である。
【0016】
(第1の実施形態例)
本発明の第1の実施形態例に係るモーションセンサ1Aについて、
図1から
図3を用いて説明する。
本例のモーションセンサ1Aは、回路基板10、2つの第一発光素子21、22、1つの第二発光素子30、1つの受光素子40、隔離部材50およびカバー部材60を備えている。
このモーションセンサ1Aは、第一発光素子21、22からカバー部材60を通して被検知体Mの移動領域に光を投射し、被検知体Mからの反射光を再びカバー部材60を通して受光素子40で受け、被検知体Mの存在や移動を検知できるように構成されている。
【0017】
回路基板10は、第一発光素子21、22と第二発光素子30を駆動する駆動回路と、受光素子40の受光量の変化を利用して被検知体Mの存在や移動を検知する検知回路と、制御回路等を備えている。また、回路基板10には、カバー部材60をビス等で固定するための複数の取付孔11が設けられている。この回路基板10は、被検知体Mの移動方向に対して概ね平行に取り付けられる。
【0018】
第一発光素子21、22は、赤外光を出射するLEDからなり、回路基板10上に被検知体Mの移動方向に間隔を置いて配置される。これらの第一発光素子21、22は、駆動回路によって互いに特性が異なる光を被検知体Mの移動領域に出射するように駆動される。本例の第一発光素子21、22は、互いに位相(タイミング)が異なるパルス光を被検知体Mの移動領域に出射する。
【0019】
受光素子40は、フォトダイオードまたはフォトトランジスタからなり、回路基板10上に配置されている。この受光素子40は、第一発光素子21、22から出射され被検知体Mによって反射された反射光と、第二発光素子30から出射された光を受光できる位置に配されている。
【0020】
第二発光素子30は、赤外光を出射するLEDからなり、受光素子40に向けて光を出射するものである。この第二発光素子30は、回路基板10上の第一発光素子21と第一発光素子22の間に配されている。
【0021】
回路基板10上には、赤外光を透過せずに反射する金属加工品もしくは樹脂成型品からなる隔離部材50が固定されている。この隔離部材50には、導光部51と遮光部52が一体に形成されている。
【0022】
導光部51は、第二発光素子30から出射された光が、被検知体Mの移動領域を介さずに受光素子40に照射されるように導光する部分であり、第一発光素子21、22の間に配されている。この導光部51は、一側面(
図2では下側)に開口を有する有底筒状に形成されており、内部に第二発光素子30が収容されている。また、受光素子40は導光部51の一側面の開口部分に対面する位置に配されており、第二発光素子30から出射された光は、被検知体Mの移動領域に照射されることはなく、導光部51の開口部分から受光素子40に照射される。
【0023】
遮光部52は、第一発光素子21、22から出射された光が、受光素子40に直接照射されないように遮光する部分である。この遮光部52は、導光部51の開口部分から
図2の左右2方向に延出された壁体となっている。この2つの遮光部52は、それぞれ第一発光素子21、22と受光素子40との間に位置し、第一発光素子21、22および受光素子40よりも回路基板10の表面からの高さが高く形成されることで、第一発光素子21、22から出射された光が受光素子40に直接照射されないようになっている。
【0024】
カバー部材60は、回路基板10に取り付けるための平板部61と、第一発光素子21、22、第二発光素子30、受光素子40、隔離部材50および不図示の各種回路を覆って保護する円筒状の収容部62を備えている。平板部61には、カバー部材60を回路基板10にビス等で固定するための複数の取付孔63が設けられている。
【0025】
本例では、赤外光以外の光が受光素子40に極力入射しないよう、カバー部材60には可視光をほとんど吸収し、赤外光を透過させる赤外線透過フィルタを用いている。
【0026】
以上のように本例のモーションセンサ1Aは、被検知体Mの移動方向に間隔を置いて配置され、被検知体Mの移動領域に互いに特性が異なる光を出射する複数の第一発光素子21、22と、この第一発光素子21、22から出射され被検知体Mによって反射された反射光を受光する受光素子40と、この受光素子40に向けて光を出射する第二発光素子30とを備えている。また、本例のモーションセンサ1Aは、第一発光素子21、22の間に配置され、第二発光素子30から出射された光が被検知体Mの移動領域を介さずに受光素子40に照射されるように導光する導光部51と、第一発光素子21、22からの光が受光素子40に直接照射されないように遮光する遮光部52とが一体形成された隔離部材50を備えている。さらに、本例のモーションセンサ1Aは、受光素子40の受光量の変化を利用して被検知体Mの移動を検知する検知回路が搭載された回路基板10を備えている。
【0027】
本例のモーションセンサ1Aは、特許文献1に記載の検出装置と同様の原理で被検知体Mの存在や移動を検知することができる。
本例のモーションセンサ1Aにおける検出動作を簡単に説明する。
先ず、2つの第一発光素子21、22から被検知体Mの移動領域に向けて互いに位相が異なるパルス光が出射される。
第一発光素子21、22から出射されたパルス光は、その光路に被検知体Mが存在すると反射し、この反射光を受光素子40が受光する。第一発光素子21、22から出射された光は互いに位相が異なるパルス光であるため、受光素子40で受光した光から第一発光素子21と第一発光素子22に由来する反射光を容易に分離して検出することができる。具体的には、第一発光素子21、22の駆動を制御するパルス信号に同期して受光素子40の受光信号をサンプリングすることにより、各第一発光素子に由来する反射光を識別することができる。
そして、例えば第一発光素子21と第一発光素子22のそれぞれに由来する反射光の経時変化に基づいて、被検知体Mの存在や移動を検知することができる。
【0028】
なお、
図3では被検知体Mの移動領域における第一発光素子21から出射されたパルス光の照射領域S1と第一発光素子22から出射されたパルス光の照射領域S2とが僅かに重なっているが、これらは完全に分離されていてもよい。また、照射領域S1、S2は、第一発光素子自体の指向性を利用したり、レンズを利用して調整したりすることもできるが、隔離部材50を利用することもできる。すなわち、隔離部材50は、被検知体Mの移動方向に間隔を置いて配置されている2つの第一発光素子21、22の間に配置されているため、隔離部材50の平面的な大きさや高さを適宜設定することによって照射領域S1、S2を調整することができる。
【0029】
本例のモーションセンサ1Aでは、被検知体Mによって反射された反射光を受光する受光素子40に向けて光を出射する第二発光素子30を備えることにより、受光素子40の応答速度を向上させることができる。
【0030】
また、本例のモーションセンサ1Aでは、第一発光素子21、22からの光が受光素子40に直接照射されないように遮光する遮光部52を備えているため、第一発光素子21、22から受光素子40に直接光が照射されることがなく、この直接光の検出による誤動作を確実に防止することができる。
【0031】
また、本例のモーションセンサ1Aでは、第二発光素子30から出射された光が被検知体Mの移動領域を介さずに受光素子40に照射されるように導光する導光部51を備えているため、第二発光素子30から出射され被検知体Mによって反射された反射光が受光素子40に照射されるのを効果的に抑制でき、より一層確実に誤動作を防止することができる。
【0032】
また、本例のモーションセンサ1Aでは、導光部51と遮光部52を1つの部材である隔離部材50により構成しているため、部材の増加を最小限に抑えつつ、誤動作を確実に防止することができる。
【0033】
また、本例のモーションセンサ1Aでは、第一発光素子21、22、第二発光素子30、受光素子40および隔離部材50は、回路基板10の表面に配されている。そして、隔離部材50の導光部51は、一側面に開口を有する有底筒状を成し、この導光部51に第二発光素子30を収容すると共に、導光部51の開口に対面する位置に受光素子40を配している。このため、モーションセンサ全体の大きさを最小限に抑えつつ、誤動作を確実に防止することができる。
【0034】
(第2の実施形態例)
本発明の第2の実施形態例に係るモーションセンサ1Bについて、
図4から
図6を用いて説明する。なお、
図4から
図6において
図1から
図3中と同じ符号を付しているものは同等の構成要素を示しており、再度の説明は省略する。
【0035】
本例のモーションセンサ1Bと第1の実施形態例に係るモーションセンサ1Aとの主な違いは、本例のモーションセンサ1Bでは第二発光素子30を回路基板10の裏面に設けた点である。このために本例のモーションセンサ1Bでは、回路基板10に貫通孔12を設け、この貫通孔12を塞ぐように回路基板10の裏面に第二発光素子30を配している。
【0036】
貫通孔12は、第一発光素子21と第一発光素子22の中間の位置に設けられている。一方、隔離部材50の導光部51は、貫通孔12を覆うように貫通孔12の上方に位置し、一側面(
図5では下側)に開口を有する有底筒状に形成されている。また、受光素子40は導光部51の開口部分に対面する位置に配されており、第二発光素子30から出射された光は、貫通孔12を通って導光部51の開口部分から受光素子40に照射される。
【0037】
本例のモーションセンサ1Bにおいても、モーションセンサ1Aと同様に、第二発光素子30によって応答速度の向上を図ることができると共に、第一発光素子21、22の直接光と第二発光素子30に由来する被検知体Mからの反射光が受光素子40に照射されることがなく、誤動作を効果的に防止することができる。
【0038】
さらに本例のモーションセンサ1Bでは、第二発光素子30を回路基板10の裏面に設けているため、各素子の配置の自由度を高めることができる。このため、例えば用途に応じて複数の第一発光素子21、22の間隔を狭めたり、モーションセンサ全体の平面的な大きさを設計変更することができ、より汎用性が高いものとなる。
【0039】
(第3の実施形態例)
本発明の第3の実施形態例に係るモーションセンサ1Cについて、
図7から
図9を用いて説明する。なお、
図7から
図9において
図1から
図3中と同じ符号を付しているものは同等の構成要素を示しており、再度の説明は省略する。
【0040】
本例のモーションセンサ1Cと第1の実施形態例に係るモーションセンサ1Aとの主な違いは、隔離部材50の形状である。
【0041】
本例の隔離部材50では、2つの遮光部52が導光部51の開口部分から受光素子40側(
図8では下側)に延出された壁体となっており、これらの遮光部52の間に受光素子40が配されている。これらの遮光部52は、第一発光素子21、22および受光素子40よりも回路基板10の表面からの高さが高く形成されていることで、第一発光素子21、22から出射された光が受光素子40に直接照射されないようになっている。
【0042】
本例のモーションセンサ1Cにおいても、モーションセンサ1Aと同様に、第二発光素子30によって応答速度の向上を図ることができると共に、第一発光素子21、22の直接光と第二発光素子30に由来する被検知体Mからの反射光が受光素子40に照射されることがなく、誤動作を効果的に防止することができる。
【0043】
さらに本例のモーションセンサ1Bでは、遮光部52が導光部51を補助する機能を併せ持ち、第二発光素子30から出射された光を極めて効率良く受光素子40に照射させることができる。このため、第二発光素子30に由来する被検知体Mからの反射光が受光素子40に照射される可能性が極めて低くなり、より一層確実に誤動作を防止することができる。
【0044】
(第4の実施形態例)
本発明の第4の実施形態例に係るモーションセンサ1Dについて、
図10から
図12を用いて説明する。なお、
図10から
図12において
図1から
図3中と同じ符号を付しているものは同等の構成要素を示しており、再度の説明は省略する。
【0045】
本例のモーションセンサ1Dと第1の実施形態例に係るモーションセンサ1Aとの主な違いは、第一発光素子の数と隔離部材50の形状である。
【0046】
本例のモーションセンサ1Dでは、被検知体の2次元の移動を検出するために4つの第一発光素子21、22、23、24を用いている。これらの第一発光素子は、駆動回路によって互いに位相が異なるパルス光を被検知体Mの移動領域に出射するように構成されている。第一発光素子21、22、23、24は等間隔に正方形の頂点位置に配されており、受光素子40はこれらの第一発光素子の中心部分に配されている。なお、本例のモーションセンサ1Dにおける被検知体Mの存在や2次元移動の検出は、例えば特許文献1に記載の検出装置と同様の原理で行うことができる。
【0047】
本例の隔離部材50には、一側面に開口を有する有底筒状に形成された2つの導光部51が設けられており、一方の導光部51の内部に第二発光素子30が収容されている。
また、2つの導光部51の開口部分を連絡するように2つの遮光部52が設けられており、この2つの遮光部52の間に導光部51の開口に対面するように受光素子40が配されている。これらの遮光部52は、第一発光素子21、22、23、24および受光素子40よりも回路基板10の表面からの高さが高く形成されていることで、第一発光素子21、22、23、24から出射された光が受光素子40に直接照射されないようになっている。
さらに、2つの遮光部52から外方に隔壁53が延出されている。一方の隔壁53は、第一発光素子21、23の中間に位置し、第一発光素子21、23の照射領域を調整している。他方の隔壁53は、第一発光素子22、24の中間に位置し、第一発光素子22、24の照射領域を調整している。
【0048】
本例のモーションセンサ1Dにおいても、モーションセンサ1Aと同様に、第二発光素子30によって応答速度の向上を図ることができると共に、第一発光素子21、22の直接光と第二発光素子30に由来する被検知体Mからの反射光が受光素子40に照射されることがなく、誤動作を効果的に防止することができる。
【0049】
さらに本例のモーションセンサ1Dでは、遮光部52が導光部51を補助する機能を併せ持ち、第二発光素子30から出射された光を被検知体Mの移動領域を介さずに極めて効率良く受光素子40に照射させることができる。
【0050】
以上、本発明のモーションセンサの4つの実施形態例を説明したが、例えば第一発光素子の数、各素子の配置、隔離部材の形状などは、センサの用途に応じて適宜変更することができる。また、被検知体Mの存在や移動方向の検出方法も特に限定されるものではなく、例えば受光素子40の受光信号を或る一定のレベルまで補完するように第二発光素子30を制御し、この第二発光素子30の制御信号に基づいて被検知体Mの存在や移動方向を検出することもできる。
【0051】
また、本発明のモーションセンサを、例えば車両のドアやトランクなどの開閉体を開放する際のセンサとして従来のキーレスエントリーシステムやスマートエントリーシステムに組み込む場合には、ドアハンドルの内側等にモーションセンサを設置し、被検知体Mの検出信号によってドアの開閉を行うアクチュエータが作動するように構成すればよい。