(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るレーザ計測作業のシミュレーション装置(以下単に「シミュレーション装置」という)が備えるディスプレイ1(
図2参照)に表示される画面の表示例を示す図である。
図1に示す例では、ディスプレイ1の最上部に3D−CAD表示部11、中間部に2D−CAD表示部12、最下部にメッセージ表示部13がそれぞれ表示されている。なお、各表示部11〜13の配置はこれに限定されない。
【0013】
3D−CAD表示部11には、プラントの計測対象エリアに配置されている機器21〜24及び各機器を接続する図示しない配管等(以下適宜、機器及び配管等を「部品」という)と、地点A,Bにそれぞれ設置されたレーザ計測装置31,33とが3次元で表示されている。なお、3D−CAD表示部11では、水平面をXY平面で示し、垂直軸をZ軸で示している。レーザ計測装置31,33は、それぞれ脚立32,34によって所定の高さに保持され、水平面上を360度回転しながらレーザ計測を行う。部品21〜24の各表面のうち、レーザ計測装置31,32から出射されるレーザが到達できる範囲(以下、計測可能範囲という)21a,22a,23a,24aは無模様で表示され、レーザが到達できない範囲(以下「計測漏れ範囲」という)21b,22b,23b,24bはクロスハッチングで表示されている。なお、計測可能範囲及び計測漏れ範囲の表示方法はこれに限られず、例えば計測漏れ範囲のみを点滅表示するなど、計測可能範囲と計測漏れ範囲とを判別できる限り、どのような方法を用いても良い。
【0014】
2D−CAD表示部12には、3D−CAD表示部11に表示されている計測対象エリアに配置された部品21〜24の所定高さにおけるXY断面が表示されている。部品21〜24の各表面のうち、計測ポイントA,Bにそれぞれ設置されたレーザ計測装置31,32の計測可能範囲21a,22a,23a,24aは実線で表示され、計測漏れ範囲21b,22b,23b,24bは破線で表示されている。なお、計測可能範囲及び計測漏れ範囲の表示方法はこれらに限られず、計測可能範囲と計測漏れ範囲とを判別できる限り、どのような方法を用いても良い。
【0015】
メッセージ表示部13には、3D−CAD表示部11及び2D−CAD表示部12に表示されている計測可能範囲と計測漏れ範囲とに基づいたメッセージが表示されている。
【0016】
次に、本実施形態に係るシミュレーション装置の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るシミュレーション装置の構成を示す図である。シミュレーション装置500は、ディスプレイ1と、キーボード2と、マウス3と、インタフェース部4と、設定処理部100と、表示処理部200と、演算処理部300と、記憶装置400とを備えている。
【0017】
設定処理部100は、計測対象エリア設定処理部101と、レーザ計測装置仕様設定処理部102と、計測ポイント設定処理部103とを有する。
【0018】
表示処理部200は、計測可能/漏れ範囲表示処理部201と、メッセージ表示処理部202とを有する。
【0019】
演算処理部300は、計測可能範囲演算処理部301と、メッセージ演算処理部302とを有する。
【0020】
記憶装置400は、3D−CADデータ記憶部401と、レーザ計測装置情報記憶部402と、メッセージテンプレート記憶部403とを有する。各記憶部401〜403が保持するデータの構成については後述する。
【0021】
次に、シミュレーション装置500の処理フローを説明する。
図3は、演算処理部300による処理フローを示す図である。演算処理部300は、計測対象エリアを設定するステップS100、レーザ計測装置の仕様を設定するステップS200、レーザ計測装置の計測ポイントを設定するステップS300、計測可能範囲を算出するステップS400、メッセージを表示するステップS500の順に実行する。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0022】
(ステップS100)
ステップS100では、まず、オペレータがシミュレーション装置500を起動し、3D−CAD表示部11又は2D−CAD表示部12上でキーボード2又はマウス3を操作してレーザ計測対象エリアを選択する。
図4は、3D−CAD表示部11に表示される計測対象エリアの選択画面の一例を示す図である。
図4に示す例では、B1F,1F,2Fからなる建屋Xの1Fが計測対象エリアとして選択されている。ここで、建屋Xの1Fには、
図1で示した3D−CAD表示部11及び2D−CAD表示部12に表示されている機器21〜24及び配管等が配置されているものとする。
【0023】
選択された計測対象エリアの情報は、インタフェース部4を介して設定処理部100の計測対象エリア設定処理部101で処理され、記憶装置400の3D−CADデータ記憶部401に設定される。
図5は、計測対象エリアの選択情報が設定された3D−CADデータ記憶部401のデータ構成の一例を示す図である。3D−CADデータ記憶部401は、プラントを構成する全ての部品の情報を保持しており、各部品の情報には、部品ID、部品名称、部品表面を構成する点(1)〜点(N)のX,Y,Z座標、接続部品ID、計測対象エリアフラグ、及び点(1)〜点(N)に対応する計測フラグが含まれる。点(1)〜点(N)のX,Y,Z座標及び点(1)〜点(N)に対応する計測フラグについては後述する。
図5に示す例では、計測対象エリア(建屋Xの1F)に配置されている機器21〜24(部品ID101〜ID104)及び配管(部品ID201〜ID204)の計測対象エリアフラグ(破線で示す)に「1」が設定されている。
【0024】
(ステップS200)
ステップS200では、まず、オペレータがキーボード2又はマウス3を操作してレーザ計測装置の仕様情報を入力する。レーザ計測装置の仕様情報には、レーザの最大到達距離(以下「計測半径」という)と、及びレーザ計測装置が搭載される脚立の高さ(以下「脚立高さ」という)が含まれる。
【0025】
入力されたレーザ計測装置の仕様情報は、インタフェース部4を介して設定処理部100のレーザ計測装置仕様設定処理部102で処理され、記憶装置400のレーザ計測装置情報記憶部402に設定される。
図6は、レーザ計測装置の仕様情報が設定されたレーザ計測装置情報記憶部402のデータ構成の一例を示す図である。レーザ計測装置情報記憶部402は、レーザ計測装置の情報として、計測装置ID、計測半径及び脚立高さ(仕様情報)、ならびに脚立の設置ポイント(X,Y,Z座標)等を保持する。
図6に示す例では、計測半径が10mで脚立高さが1mのレーザ計測装置、計測半径が20mで脚立高さが2mのレーザ計測装置、及び計測半径が30mで脚立高さが3mのレーザ計測装置の各仕様情報(計測半径、脚立高さ)が設定されている。
【0026】
(ステップS300)
ステップS300では、まず、オペレータが、キーボード2又はマウス3を操作してレーザ計測装置を支持する脚立の設置ポイント(X,Y,Z座標)を入力する。
【0027】
入力された設置ポイントは、インタフェース部4を介して設定処理部100の計測ポイント設定処理部103で処理され、記憶装置400のレーザ計測装置情報記憶部402に設定される。
図7は、脚立の設置ポイントが設定されたレーザ計測装置情報記憶部402のデータ構成の一例を示す図である。
図7に示す例では、計測半径が10mで脚立高さが1mのレーザ計測装置(計測装置ID001)について2箇所、計測半径が20mで脚立高さが2mのレーザ計測装置(計測装置ID002)について2箇所、計測半径が30mで脚立高さが3mのレーザ計測装置(計測装置ID003)について3箇所の設置ポイントが設定されている。ここで、脚立の設置ポイントのX座標及びY座標は、それぞれレーザ計測装置の計測ポイントのX座標及びY座標となり、脚立の設置ポイントのZ座標に脚立高さを加算したものがレーザ計測装置の計測ポイントのZ座標となる。
【0028】
(ステップS400)
図8は、ステップS400の詳細な処理フローを示す図である。ステップS400は、計測可能範囲を算出するステップS410と、計測フラグを設定するステップS420と、計測可能範囲及び計測漏れ範囲を表示するステップS430とで構成される。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0029】
(ステップS410)
ステップS410では、演算処理部300の計測可能範囲演算処理部301が計測可能範囲を算出する。計測可能範囲演算処理部301は、
図5に示す3D−CADデータ記憶部401において計測対象エリアフラグに「1」が設定されている部品ごとに、部品表面を構成する点(1)〜点(N)の座標とレーザ計測装置の計測半径及び脚立の設置座標とに基づいて、計測可能範囲の算出(以下適宜「シミュレーション」という)を行う。
図9は、計測エリアに配置されている部品21〜24の全表面が網羅的に計測されるまで、計測ポイントの設定とシミュレーションを繰り返した場合のプロセスをXY平面上で示す図である。
【0030】
図9(a)は、地点Aに一つ目の計測ポイントを設定した状態を示す図であり、
図9(b)は、
図9(a)に示す状態でシミュレーションを行った結果を示す図である。
図9(a)に示すように、地点Aを中心とする計測半径R内にすべての部品21〜24が収まる場合、
図9(b)に示すように、地点Aから放射状に伸ばした直線が最初に各部品21〜24と交わる表面部分が計測可能範囲21a1,22a1,23a1として算出される。なお、
図9中、各部品21〜24の計測可能範囲を実線で示し、計測漏れ範囲を点線で示している。
図9(c)は、
図9(b)に示す状態からさらに地点Bに計測ポイントを設定してシミュレーションを行った結果を示す図であり、部品21〜23の表面の一部が新たに計測可能範囲21a2,22a2,23a2として算出されている。
図9(d)は、
図9(c)に示す状態からさらに地点Cに計測ポイントを設定してシミュレーションを行った結果を示す図であり、部品22〜24の表面の一部が新たに計測可能範囲22a3,23a3,24a1として算出されている。
図9(e)は、
図9(d)に示す状態からさらに地点Dに計測ポイントを設定してシミュレーションを行った結果を示す図であり、部品24の表面の残りの一部が新たに計測可能範囲24a2として算出されている。以上のシミュレーション結果(b)〜(e)から、地点A〜Dに設置したレーザ計測装置によって、部品21〜24の全表面の点群データを取得できることが確認できる。
【0031】
なお、
図9に示す例では、2D−CAD表示部12に表示されたXY平面におけるシミュレーションについて説明したが、3D−CAD表示部11に表示されたXYZ空間におけるシミュレーションも同様のアプローチで実施することができる。ただし、その場合は、各部品の高さや脚立高さなどZ軸方向の位置関係も考慮する必要がある。また、
図9に示す例では、計測ポイントを一つ追加する毎にシミュレーションを実行しているが、複数の計測ポイントを追加した後で実行しても良い。
【0032】
(ステップS420)
ステップS420では、計測フラグを設定する。ここでいう計測フラグとは、各部品の表面を構成する複数の点のそれぞれが計測可能範囲に含まれるか否かを示すフラグである。
【0033】
計測フラグの情報は、記憶装置400の3D−CADデータ記憶部401に設定される。
図10は、計測フラグの情報が設定された3D−CADデータ記憶部401のデータ構成を示す図である。
図10に示す例では、各部品がN個の点(点(1)〜点(N))で構成されるものとし、点(1)〜点(N)のうちステップS410で算出した計測可能範囲に含まれる点に対応する計測フラグに「1」を設定し、計測可能範囲に含まれない点に対応する計測フラグに「0」が設定されている。なお、
図10に示す例では、説明を簡略化するため、各部品の表面がN個の点で構成されるものとしているが、部品の表面を構成する点の数はその部品の大きさや形状に応じて異なる。また、表面を構成する点の数Nを大きくするほど、計測可能範囲及び計測漏れ範囲の形状をより正確に算出することが可能となる。なお、
図10は、
図9(e)に示す状態(計測対象エリアに配置されている各部品の表面が全て計測可能範囲として算出された状態)でのデータ構成を示しており、計測エリアフラグに「1」が設定された部品の点(1)〜点(N)に対応する計測フラグ(破線で示す)に全て「1」が設定されている。
【0034】
(ステップS430)
ステップS430では、ステップS420で実施したシミュレーションの結果を3D−CAD表示部11及び2D−CAD表示部12に表示する。表示処理部200の計測可能/漏れ範囲表示処理部201は、3D−CAD表示部11上において、計測フラグに「1」が設定されている点で構成される表面部分を無模様で表示し、計測フラグに「0」が設定されている点で構成される表面部分をクロスハッチングを付して表示するとともに、2D−CAD表示部12上において、計測フラグに「1」が設定されている点で構成される表面部分を直線で表示し、計測フラグに「0」が設定されている点で構成される表面部分を破線で表示する(
図1参照)。
【0035】
(ステップS500)
図11は、ステップS500の詳細な処理フローを示す図である。ステップS500は、計測のカバー率を算出するステップS510と、メッセージを作成、表示するステップS520とで構成される。以下、各ステップについて詳細に説明する。
【0036】
(ステップS510)
ステップS510では、ステップS420で設定した計測フラグを基に計測カバー率を算出する。ここでいう計測カバー率とは、計測対象エリアに配置されている部品の部品点数に対する計測漏れ範囲を含まない部品の部品点数の割合を示す指標値である。計測カバー率の算出方法について、
図12を用いて説明する。
図12は、
図9(c)に示す状態での3D−CADデータ記憶部401のデータ構成を示す図である。
図12に示す例では、計測対象エリアに配置されている部品(計測対象エリアフラグに「1」が設定されている部品)の点数は、8(部品ID101〜104,201,202,203,601)である。一方、計測漏れ範囲を含まない部品(点(1)〜点(N)に対応する計測フラグの全てに「1」が設定されている部品)の点数は、2(部品ID101,201)である。従って、計測カバー率は2/8=25%となる。
【0037】
(ステップS520)
ステップS520では、計測カバー率を通知するメッセージを作成し、メッセージ表示部13に表示する。メッセージ表示処理部202は、計測カバー率を通知するメッセージのテンプレートをメッセージテンプレート記憶部403から読み出す。
図13は、各種メッセージテンプレートが記憶されたメッセージテンプレート記憶部403のデータ構成の一例を示す図である。
図13に示す例では、メッセージテンプレート記憶部403は、3種類のメッセージテンプレート(計測カバー率を通知するためのメッセージテンプレート403a、計測漏れ箇所を含む部品を通知するためのメッセージテンプレート403b及び計測回数と作業工数を通知するためのメッセージテンプレート403c)をテンプレートIDとともに記憶している。メッセージ表示処理部202は、メッセージテンプレート403aの不定部分「??」にステップS510で算出した計測カバー率を示す文字列「25%」を挿入して「現在の計測カバー率は25%です。計測対象エリアの計測漏れを解消したい場合は、計測ポイントの追加又は変更を行ってください」というメッセージを作成し、ディスプレイ1のメッセージ表示部13に表示する(
図1参照)。
【0038】
なお、
図11に示すステップS500の処理フローは、計測カバー率を通知するメッセージを表示する場合のものであるが、計測漏れ範囲を含む部品を通知するメッセージを表示する場合は、
図12に示す3D−CADデータ記憶部401を参照して計測漏れ箇所を含む部品(計測対象フラグに「1」が設定され、かつ点(1)〜点(N)に対応する計測フラグのいずれかに「0」が設定されている部品)を特定した後、メッセージテンプレート403bの不定部分「??」に計測漏れ範囲を含む部品を示す文字列を挿入してメッセージを作成し、メッセージ表示部13に表示する、という処理フローとなる。また、計測回数と作業工数を通知する場合は、
図7に示すレーザ計測装置情報記憶部402を参照して計測ポイントの数(
図7に示す例では7個)を特定し、この計測ポイントの数に基づいて作業工数を算出した後、メッセージテンプレート403cの2箇所の不定部分「??」に計測ポイントの数と計測作業を示す文字列をそれぞれ挿入してメッセージを作成し、メッセージ表示部13に表示する、という処理フローとなる。
【0039】
以上のように構成した本実施の形態におけるシミュレーション装置500によれば、計測可能範囲と計測漏れ範囲とを区別して表示するとともに、計測カバー率、計測漏れ範囲を含む部品、又は計測回数と作業工数をオペレータに通知することにより、計測漏れ範囲を的確に解消できる計測ポイントを設定することが容易になり、効率的なレーザ計測作業の計画立案が可能となる。
【0040】
なお、本実施形態では、発電プラントや化学プラントといったプラントの保守のために実施されるレーザ計測作業に本発明を適用した例を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られず、例えばビルの建設や保守のために実施されるレーザ計測作業にも適用可能である。
【0041】
また、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。