【文献】
中川直子,B型インフルエンザウイルス流行株の抗原性の解析,インフルエンザ,日本,2007年 7月 1日,vol. 8, no. 3,page. 203-208
【文献】
SCIENCE,2011年 7月 7日,vol. 333, no. 6044,page. 843-850
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B/山形系統およびB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)に特異的に結合することができ、かつ前記B/山形系統および/または前記B/ビクトリア系統の前記B型インフルエンザウイルス株を中和することができ、A型インフルエンザウイルスのHAに結合せず、
配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号12または配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片。
B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザ感染の診断、予防、および/または治療のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合断片の使用。
B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザ感染の診断、予防、および/または治療のための薬剤の製造における、請求項7に記載の免疫コンジュゲートの使用。
B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザ感染の診断、予防、および/または治療のための薬剤の製造における、請求項8に記載の核酸分子の使用。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用される語の定義が以下に記載される。
【0014】
本明細書で使用される「含まれる」または「含んでいる」という語は、「限定されない」という語が続くものと見なされる。
【0015】
本明細書で使用される「結合分子」という語は、モノクローナル抗体、例えば、キメラ、ヒト化もしくはヒトモノクローナル抗体を含む無傷の免疫グロブリン、または免疫グロブリンの結合パートナー、例えば、HAに対する特異的な結合を無傷の免疫グロブリンと競合する免疫グロブリンの断片を含む抗原結合領域および/または可変領域を指す。構造にかかわらず、抗原結合断片は、無傷の免疫グロブリンによって認識される同じ抗原に結合する。抗原結合断片は、結合分子のアミノ酸配列の少なくとも2つ、5つ、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、または250の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を有するペプチドまたはポリペプチドを含み得る。
【0016】
本明細書で使用される「結合分子」という語は、当分野で公知の全ての免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスを含む。結合分子は、その重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、無傷の抗体の5つの主要クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMに分類することができ、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4にさらに分類することができる。
【0017】
抗原結合断片として、特に、(ポリ)ペプチドに対する特異的な抗原結合性を付与するのに十分である免疫グロブリンの断片を少なくとも含むFab、F(ab’)、F(ab’)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、(ポリ)ペプチドなどが挙げられる。上記断片は、合成によって、または無傷の免疫グロブリンの酵素的もしくは化学的切断によって作製しても良いし、あるいは上記断片は、組換えDNA技術によって遺伝子組み換えしても良い。このような作製方法は、当分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に組み入れられるAntibodies:A Laboratory Manual、E.HarlowおよびD,Lane編(1988)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New Yorkに記載されている。結合分子またはその抗原結合断片は、1つ以上の結合部位を有する。2つ以上の結合部位が存在する場合、結合部位は、互いに同一であっても良いし、または異なっていても良い。
【0018】
結合分子は、裸または非コンジュゲート結合分子であり得るが、免疫グロブリンの一部でもあり得る。裸または非コンジュゲート結合分子は、エフェクター部分またはタグ、例えば、特に毒物、放射性物質、リポソーム、酵素にコンジュゲートしていない、機能的に連結されていない、または他の方法で物理的もしくは機能的に結合していない結合分子を指すものとする。裸または非コンジュゲート結合分子から、安定化された結合分子、多量体化された結合分子、ヒト化された結合分子、ならびにエフェクター部分およびタグの付着以外の任意の他の方法で処置された結合分子が除外されるものではないことを理解されたい。従って、全ての翻訳後修飾された裸および非コンジュゲート結合分子は、この修飾が、組換え結合分子産生細胞によって天然結合分子産生細胞環境で行われ、かつ最初の結合分子の調製の後に人間の手によって導入される場合を含め、本発明に含まれる。もちろん、裸または非コンジュゲート結合分子という語は、体に投与された後にエフェクター細胞および/またはエフェクター分子と機能的な結合を形成する結合分子の能力を排除するものではなく、このような相互作用の一部は、生物学的効果を与えるために必要である。従って、結合したエフェクター群またはタグが存在しないことが、in vivoではなくin vitroでの裸または非コンジュゲート分子の定義に当てはまる。
【0019】
本明細書で使用される「生物学的サンプル」という語は、生物起源の血液および他の液体サンプル、固体組織サンプル、例えば、生検標本もしくは組織培養物、またはそれらに由来する細胞およびそれらの子孫を含む、様々なサンプルの種類を包含する。この語はまた、入手した後に任意の方法、例えば、試薬を用いた処置、可溶化、または特定の成分、例えば、タンパク質もしくはポリヌクレオチドの濃縮によって処置されたサンプルも含む。この語は、任意の種から得た様々な種類の臨床サンプルを包含し、培養中の細胞、細胞上清、および細胞溶解物も含む。
【0020】
本明細書で使用される「相補性決定領域」(CDR)という語は、抗原で認識されるエピトープに対して形状および電荷の分布が相補的である抗原結合部位に通常は大きく寄与する結合分子、例えば、免疫グロブリンの可変領域内の配列を指す。CDR領域は、その自然の立体構造でタンパク質上に存在するか、または、場合によっては、例えば、SDS中での溶解によって変性してタンパク質上に存在する、タンパク質またはその断片の直線状エピトープ、不連続エピトープ、または立体構造エピトープに特異的であり得る。エピトープはまた、タンパク質の翻訳後修飾から構成され得る。
【0021】
本明細書で使用される「欠失」という語は、多くの場合天然に存在する基準分子と比較して1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド残基がそれぞれ存在しないアミノ酸またはヌクレオチド配列の変化を指す。
【0022】
本明細書で使用される「発現調節核酸配列」という語は、特定の宿主生物の機能的に連結されたコード配列の発現に必要かつ/または影響を与えるポリヌクレオチド配列を指す。発現調節核酸配列、例えば、特に適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列、エンハンサー配列;抑制または活性化配列;効率的なRNAプロセシングシグナル、例えば、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル;細胞質mRNAを安定させる配列;翻訳効率を促進する配列(例えば、リボソーム結合部位);タンパク質の安定性を促進する配列;および望ましい場合、タンパク質の分泌を促進する配列は、最適な宿主生物で活性を示す任意の核酸配列であり得、かつ宿主生物に対して同種または異種であるタンパク質をコードする遺伝子に由来し得る。発現調節配列の同定および利用は、当業者にはルーチンである。
【0023】
本明細書で使用される「機能的変異体」という語は、基準核酸分子または結合分子のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列と比較すると、1つ以上のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸が変更されたヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を含む核酸分子または結合分子を指す。本発明による結合分子の機能的変異体は、結合パートナー、即ち、インフルエンザウイルスに対する結合を、基準結合分子と競合し得る。言い換えれば、基準結合分子のアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列における変更は、そのヌクレオチド配列によってコードされるまたはそのアミノ酸配列を含む結合分子の結合特性にそれほど影響を与えない、または結合特性をそれほど変更しない、即ち、結合分子はなお、その標的を認識して結合することができる。機能的変異体は、ヌクレオチドおよびアミノ酸の置換、付加、および欠失を含む保存的な配列の変更を有し得る。これらの変更は、当分野で公知の標準的な技術、例えば、部位特異的突然変異誘発法およびランダムPCR介在突然変異誘発法によって導入することができ、かつ天然および非天然のヌクレオチドおよびアミノ酸を含み得る。
【0024】
保存的なアミノ酸の置換には、アミノ酸残基が、類似の構造または化学特性を有するアミノ酸残基で置換される置換が含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン)が含まれる。当業者には、上で使用された分類以外のアミノ酸残基ファミリーの分類を利用できることが明らかであろう。さらに、変異体は、非保存的なアミノ酸置換、例えば、異なる構造または化学特性を有するアミノ酸残基でのアミノ酸の置換を有し得る。同様の軽微な変化はまた、アミノ酸の欠失もしくは挿入、または両方を含み得る。免疫学的活性を無効にすることなく、どのアミノ酸を置換、挿入、または欠失させることができるかの決定のガイダンスは、当分野で周知のコンピュータプログラムを用いて見つけることができる。
【0025】
ヌクレオチド配列の突然変異は、ある遺伝子座での1つの変化(点突然変異)、例えば、対突然変異またはトランスバージョン突然変異であり得る、あるいは、多数のヌクレオチドを、1つの遺伝子座で挿入、欠失、または変更することができる。加えて、1つ以上の変更を、ヌクレオチド配列内の任意の数の遺伝子座で行うことができる。突然変異は、当分野で公知の任意の適切な方法によって生じさせることができる。
【0026】
A型インフルエンザウイルスに対する「亜型インフルエンザウイルス」という語は、ヘマグルチニン(H)およびノイラミダーゼ(N)ウイルス表面タンパク質の様々な組み合わせによって特徴付けられるA型インフルエンザウイルスの変異体を指す。A型インフルエンザウイルスの亜型は、そのHの数、例えば、「H1もしくはH3亜型のHAを含むインフルエンザウイルス」、または「H1インフルエンザウイルス」もしくは「H3インフルエンザウイルス」などによって、あるいはHの数とNの数の組み合わせ、例えば、「H3N2亜型インフルエンザウイルス」または「H3N2」として表すことができる。「亜型」インフルエンザウイルスという語は、特に、各亜型の範囲内の全ての個々のインフルエンザウイルス「株」を含み、これらは、突然変異から生じ、異なる病原プロフィールを示す。このような株は、亜型ウイルスの様々な「分離株」と呼ばれることもあり得る。従って、本明細書で使用される「株」および「分離株」という語は、互換的に使用することができる。
【0027】
本発明の結合分子に対して本明細書で使用される「中和する」という語は、中和が達成される機序にかかわらず、in vitroおよび/または対象の体内でインフルエンザウイルスの複製を阻害する結合分子を指す。従って、中和は、例えば、ウイルスの細胞表面への付着もしくは接着を阻害することによって、またはウイルスの標的細胞への付着後のウイルス膜と細胞膜との融合を阻害することによって、または感染細胞からのウイルスの放出を阻害することなどによって達成することができる。
【0028】
本発明の結合分子に対して本明細書で使用される「交差中和する」または「交差中和」という語は、B/山形系統およびB/ビクトリア系統の両方に由来するB型インフルエンザウイルス、および/またはこれらの系統の範囲内の異なるB型インフルエンザウイルス株を中和する本発明の結合分子の能力を指す。
【0029】
本明細書で使用される「宿主」という語は、ベクター、例えば、クローニングベクターもしくは発現ベクターが導入される生物または細胞を指すものとする。このような生物または細胞は、原核性でも真核性でも良い。好ましくは、宿主は、単離された宿主細胞、例えば、培養中の宿主細胞である。「宿主細胞」という語は、細胞が、本発明の結合分子の(過剰)発現のために変更されたことを単に意味し、これらの結合分子を本来発現するB細胞を含み、このような細胞は、不死化、増幅、発現の増強などによって結合分子を過剰発現するように変更されている。宿主という語は、特定の対象生物または細胞を指すだけではなく、このような生物または細胞の子孫も指すことを理解されたい。突然変異または環境の影響により世代交代で特定の変更が起こり得るため、このような子孫は、実際には、親生物または親細胞と同一でなくても良く、なお本明細書で使用される「宿主」という語の範囲内に含まれる。
【0030】
「ヒト」という語は、本明細書で定義される結合分子に使用される場合、ヒトに直接由来するか、またはヒト生殖細胞系の配列に基づいた分子を指す。結合分子が、ヒト配列に由来またはヒト配列に基づき、後に変更される場合も、結合分子はなお、本明細書で使用されるヒトと見なされる。言い換えれば、ヒトという語は、結合分子に使用される場合、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する結合分子、またはヒトもしくはヒトリンパ球で産生されてある形態に変更された可変領域または定常領域に基づいた結合分子を含むものとする。従って、ヒト結合分子は、置換および/または欠失(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的突然変異によって、またはin vivoでの体細胞突然変異によって導入される突然変異など)を含む、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。本明細書で使用される「基づく」という語は、核酸配列が、例えば、error−prone PCR法によって鋳型から正確に、もしくは僅かな変異でコピーされ得る、または合成により鋳型に正確に、もしくは僅かな変更で一致させる場合を指す。
【0031】
「付加」とも呼ばれる「挿入」という語は、親配列と比較して、1つ以上のアミノ酸残基の付加となるアミノ酸配列の変化、または1つ以上のヌクレオチド残基の付加となるヌクレオチド配列の変化を指す。
【0032】
「単離された」という語は、本明細書で定義される結合分子に使用される場合、他のタンパク質またはポリペプチドを実質的に含まない、特に異なる抗原特異性を有する他の結合分子を実質的に含まない、かつ他の細胞物質および/または化学物質も実質的に含まない結合分子を指す。例えば、結合分子が組換えにより作製される場合は、このような結合分子は、好ましくは、培地成分を実質的に含まず、結合分子が化学合成により形成される場合は、このような結合分子は、好ましくは、前駆化学物質または他の化学物質を実質的に含まない、即ち、結合分子は、タンパク質の合成に関与する前駆化学物質または他の化学物質から分離されている。「単離された」という語は、本明細書に定義される結合分子をコードする核酸分子に使用される場合、結合分子をコードするヌクレオチド配列が他のヌクレオチド配列、特に他の結合パートナーに結合する結合分子をコードするヌクレオチド配列を含まない核酸分子を指す。さらに、「単離された」という語は、天然宿主における天然の核酸分子を必然的に伴う他の細胞成分、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、または核酸分子が自然に結合するゲノム配列から実質的に分離された核酸分子を指す。さらに、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって作製される場合は他の細胞物質もしくは培地を実質的に含み得ない、または化学合成される場合は前駆化学物質または他の化学物質を実質的に含み得ない。
【0033】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という語は、単一特異性の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は、単一結合特異性および特定のエピトープに対する親和性を示す。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という語は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列に由来もしくは基づいた、または完全に合成の配列に由来する可変領域および定常領域を有する単一結合特異性を示す抗体を指す。モノクローナル抗体を調製する方法は、結合特異性に関係しない。
【0034】
本明細書で使用される「自然発生」という語は、物体に使用される場合、物体または化合物が自然に見られることを意味する。例えば、自然の供給源から単離することができる生物に存在し、かつ実験室で人間が意図的に変更したものでないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は自然発生である。
【0035】
本発明に使用される「核酸分子」という語は、ヌクレオチドの多量体型を指し、RNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方、cDNA、ゲノムDNA、ならびに上記の合成型および混合ポリマーを含む。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、またはヌクレオチドのいずれかの型の修飾型を指す。この語はまた、DNAの一本鎖型および二本鎖型も含む。加えて、ポリヌクレオチドは、自然発生および/または非自然発生のヌクレオチド結合によって互いに結合された自然発生および修飾ヌクレオチドのいずれかまたは両方を含み得る。核酸分子は、当業者には容易に理解できるように、化学的もしくは生化学的に修飾しても良いし、または非天然もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含み得る。このような修飾として、例えば、標識、メチル化、1つ以上の自然発生のヌクレオチドの類似体との置換、ヌクレオチド間修飾、例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジオチオエートなど)、懸垂部分(例えば、ポリペプチド)、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾された結合(例えば、αアノマー核酸など)が挙げられる。上記の語はまた、一本鎖、二本鎖、部分的に二重鎖、三重鎖、ヘアピン、円形、および南京錠の構造を含む任意のトポロジー構造も含むものとする。また、水素結合および他の化学的相互作用によって指定配列に結合することができるポリヌクレオチドに類似した合成分子も含まれる。このような分子は、当分野で公知であり、例えば、分子の骨格におけるペプチド結合がリン酸塩結合の代わりをしている分子を含む。核酸配列について述べる場合、核酸配列は、特段の記載がない限り、その相補体を包含する。従って、特定の配列を有する核酸分子について述べる場合、この核酸分子は、その相補的な配列と共に相補鎖を包含することを理解されたい。相補鎖はまた、例えば、アンチセンス療法、ハイブリダイゼーションプローブ、およびPCRプライマーに有用である。
【0036】
「機能的に連結された」という語は、通常は物理的に連結され、かつ互いに機能的な関係にある2つ以上の核酸配列要素を指す。例えば、プロモーターは、コード配列に機能的に連結され、このプロモーターがコード配列の転写もしくは発現を開始または制御することができると、この場合、コード配列は、プロモーターの「制御下」にあることを理解されたい。
【0037】
「薬学的に許容され得る賦形剤」とは、好ましいまたは便利な剤形を調製するために活性分子、例えば、薬物、作用物質、結合分子と組み合わせられる任意の不活性物質のことである。「薬学的に許容され得る賦形剤」は、使用される用量および濃度ではレシピエントにとって無毒である賦形剤であり、かつ薬物、作用物質、または結合分子を含む製剤の他の成分と適合性である。薬学的に許容され得る賦形剤は、広く利用され、当分野で公知である。
【0038】
結合分子、例えば、抗体とその結合パートナー、例えば、抗原との相互作用に関連して本明細書で使用される「特異的に結合」という語は、この相互作用が、結合パートナーにおける特定の構造、例えば、抗原決定基またはエピトープの存在によって決まることを意味する。言い換えれば、抗体は、たとえ結合パートナーが他の分子または生物の混合物中に存在したとしても、結合パートナーに優先的に結合する、または結合パートナーを優先的に認識する。この結合は、共有結合性もしくは非共有結合性相互作用または両方の組み合わせによって仲介され得る。さらに言い換えれば、「特異的に結合」という語は、抗原決定基またはエピトープへの免疫特異的結合を意味し、他の抗原決定基またはエピトープへの免疫特異的結合を意味するものではない。抗原に免疫特異的に結合する結合分子は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、BIACORE、または当分野で公知の他のアッセイによって決定される親和性が低い他のペプチドまたはポリペプチドに結合することができない。抗原に免疫特異的に結合する結合分子またはその断片は、同じエピトープを有する関連抗原と交差反応性であり得る。好ましくは、抗原に免疫特異的に結合する結合分子またはその断片は、他の抗原と交差反応性ではない。
【0039】
本明細書で使用される「置換」という語は、1つ以上のアミノ酸の異なるアミノ酸による置換、または1つ以上のヌクレオチドの異なるヌクレオチドによる置換を意味する。
【0040】
「治療有効量」という語は、B型インフルエンザウイルスの感染から生じる状態を予防、緩和、および/または治療するのに有効な、本明細書で定義される結合分子の量を指す。本明細書で使用される緩和とは、可視もしくは知覚可能な疾患の症状、ウイルス血症、またはインフルエンザ感染の任意の他の測定可能な兆候の軽減を意味し得る。
【0041】
「治療」という語は、治療処置、および疾患を治癒する、または疾患の進行を停止もしくは少なくとも遅延させる予防手段あるいは防止手段を指す。治療を必要とする対象として、インフルエンザウイルスの感染から生じる状態に既に苦しんでいる対象、およびインフルエンザウイルスの感染が予防されるべき対象が含まれる。インフルエンザウイルスの感染から部分的または完全に回復した対象も治療を必要とすることがある。予防は、インフルエンザウイルスの拡散の防止もしくは軽減、またはインフルエンザウイルスの感染に関連した1つ以上の症状の発症、進展、もしくは進行を包含する。
【0042】
「ベクター」という語は、宿主に導入するために第2の核酸分子を挿入することができる核酸分子を指し、この第2の核酸分子が宿主で複製され、場合によっては発現される。言い換えれば、ベクターは、このベクターに連結された核酸分子を輸送することができる。クローニングベクターおよび発現ベクターは、本明細書で使用される「ベクター」という語に含まれる。ベクターとして、限定されるものではないが、プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人口染色体(YAC)、およびバクテリオファージまたは植物もしくは動物(ヒトを含む)ウイルスに由来するベクターが挙げられる。ベクターは、推奨される宿主によって認識される複製起点を含み、発現ベクターの場合は、発現ベクター、プロモーター、および宿主によって認識される他の調節領域も含む。第2の核酸分子を含むベクターは、形質転換、トランスフェクション、またはウイルス侵入機序の利用によって細胞に導入される。特定のベクターは、導入される宿主で自動的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有するベクターは細菌中で複製することができる)。他のベクターは、宿主への導入時に宿主のゲノムに取り込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製され得る。
【0043】
第1の態様では、本発明は、B/山形系統およびB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニン(HA)に特異的に結合でき、かつB/山形系統およびB/ビクトリア系統の前記B型インフルエンザウイルス株を中和することができる結合分子を提供する。本発明によると、この結合分子は、A型インフルエンザウイルスのHAには結合しない。この結合分子は、in vitroおよびin vivoの両方でB型インフルエンザウイルスを中和することができる。
【0044】
好ましくは、結合分子は、ヒト結合分子である。好ましい一実施形態では、結合分子は、ヒト抗体またはその抗原結合断片である。
【0045】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号116のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号117のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、CR9114(同時係属の欧州特許出願第11173953.8号明細書に記載されている)のエピトープとは異なるエピトープに結合する。CR9114は、系統発生群1および2の両方のA型インフルエンザウイルスならびにB型インフルエンザウイルスに結合し、in vivoで中和できることが示されている。
【0046】
特定の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルスのHAタンパク質の球状部領域、特にB型インフルエンザウイルスのHA1の球状部領域に結合する。
【0047】
特定の実施形態では、結合分子は、細胞受容体のB/山形系統および/またはB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルスへの結合をブロックする。
【0048】
特定の実施形態では、結合分子は、細胞受容体のB/山形系統および/またはB/ビクトリア系統のインフルエンザウイルスへの結合をブロックしない。
【0049】
特定の実施形態では、結合分子は、B型インフルエンザウイルス、特にB/山形系統および/またはB/ビクトリア系統の両方のインフルエンザウイルス株の感染細胞からの放出をブロックする。
【0050】
特定の実施形態では、単離された結合分子は、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質に結合せず、かつ配列番号71に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0051】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号73に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0052】
一実施形態では、結合分子は、配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号73のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0053】
本発明はまた、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質に結合せず、かつ配列番号1に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR1;配列番号2に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR2、および配列番号3に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR3を含む。本発明によると、CDR領域は、Sequences of Proteins of Immunological Interestに記載されているKabatら(1991)によるものである。
【0054】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号4に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号6に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0055】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0056】
本発明は、結合分子と同じB型インフルエンザウイルスHAタンパク質のエピトープに免疫特異的に結合し、かつ配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変配列および配列番号73のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む結合分子をさらに提供する。
【0057】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号17のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0058】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号26のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号27のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号28のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号29のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号30のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0059】
本発明はまた、ヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス株、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株のHAの168位のアミノ酸がプロリン(P)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、かつ、B/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス、特にB/マレーシア/2506/2004のHAの168位のアミノ酸がグルタミン(Q)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株を中和することができない結合分子を提供する。
【0060】
特定の実施形態では、本発明は、ヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/山形系統のB型インフルエンザウイルス株、特にB/フロリダ/04/200のB型インフルエンザウイルス株のHAの38位のアミノ酸がリシン(K)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/フロリダ/04/2006のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、かつ、B/山形系統のB型インフルエンザ株、特にB/フロリダ/04/2006のHAの38位のアミノ酸がグルタミン酸(E)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/フロリダ/04/2006も中和することができる結合分子を提供する。
【0061】
本発明は、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができる結合分子をさらに提供し、この結合分子は、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質には結合せず、かつ、配列番号75に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0062】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号77に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0063】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号75のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号77のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0064】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号78のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号79のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む。
【0065】
特定の実施形態では、本発明は、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができる結合分子を提供し、この結合分子は、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質に結合せず、かつ、配列番号7に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR1;配列番号8に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR2、および配列番号9に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR3を含む。
【0066】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号10に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR1、配列番号11に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号12または13に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0067】
特定の実施形態では、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0068】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0069】
本発明は、結合分子と同じB型インフルエンザウイルスHAタンパク質のエピトープに免疫特異的に結合し、かつ配列番号75のアミノ酸配列を有する重鎖可変配列および配列番号77のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む結合分子をさらに提供する。
【0070】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号21のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号22のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号23のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号25のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0071】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号31のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号32のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号33のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号34のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0072】
特定の実施形態では、本発明は、ヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス株、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株のHAの168位のアミノ酸がプロリン(P)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、かつ、B/ビクトリア系統、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルスのHAの168位のアミノ酸がグルタミン(Q)である場合は、B/ビクトリア系統、特にB/マレーシア/2506/2004のB型インフルエンザウイルス株も中和することができる結合分子を提供する。
【0073】
特定の実施形態では、本発明は、ヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/山形系統のB型インフルエンザウイルス株、特にB/フロリダ/04/200のB型インフルエンザウイルス株のHAの38位のアミノ酸がリシン(K)である場合は、このB型インフルエンザウイルス株、特にB/フロリダ/04/2006のB型インフルエンザウイルス株を中和することができ、かつ、B/山形系統のB型、特にB/フロリダ/04/2006のB型インフルエンザウイルス株のHAの38位のアミノ酸がグルタミン酸(E)である場合は、B/山形系統、特にB/フロリダ/04/2006のB型インフルエンザウイルス株を中和することができない結合分子を提供する。
【0074】
本発明は、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、B/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができる結合分子をさらに提供し、この結合分子は、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質には結合せず、かつ、配列番号113に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。
【0075】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号115に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0076】
一実施形態では、結合分子は、配列番号113のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号115のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0077】
特定の実施形態では、本発明は、B型インフルエンザウイルスのヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつB/ビクトリア/2/87系統およびB/山形/16/88系統の両方のB型インフルエンザウイルス株を中和することができる結合分子を提供し、この結合分子は、A型インフルエンザウイルスの亜型のHAタンパク質に結合せず、かつ、配列番号54に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR1;配列番号55に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR2、および配列番号56に示されているアミノ酸残基の配列を有する重鎖CDR3を含む。
【0078】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号57に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号58に示されているアミノ酸残基の配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0079】
特定の実施形態では、結合分子は、配列番号54のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号55のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号56のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、ならびに配列番号57のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号58のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。
【0080】
特定の実施形態では、結合分子と同じB型インフルエンザウイルスHAタンパク質のエピトープに免疫特異的に結合し、かつ配列番号113のアミノ酸配列を有する重鎖可変配列および配列番号115のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む結合分子をさらに提供する。
【0081】
B型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスと同様に、標的細胞の細胞表面のシアル酸残基に結合し、次いでエンドソーム内に移動し、そしてウイルス膜がエンドソーム膜に融合し、次いでゲノム転写酵素複合体を細胞内に放出することによって細胞に感染する。受容体の結合プロセスおよび膜融合のプロセスの両方が、HA糖タンパク質によって仲介される。A型インフルエンザウイルスおよびB型インフルエンザウイルスの両方のHAは、2つの構造的に異なる領域、即ち、ウイルスの標的細胞への付着に関与し、かつHAの血球凝集活性に関与する受容体結合部位を含む球状部領域、およびウイルスエンベロープと細胞のエンドソーム膜との間の膜融合に必要な融合ペプチドを含む幹領域を有する。HAタンパク質は、各単量体が、前駆体(HA0)のタンパク分解的切断により感染中に産生される2つのジスルフィド結合糖ポリペプチドHA1およびHA2からなる三量体である。切断は、膜融合のためにHAをプライミングして立体構造の変化を可能にするために必要であるため、ウイルス感染に必要である。プライミングされた分子の活性化が、pH5〜pH6の低いpHで、エンドソームで起こり、この活性化には、HA構造の大きな変化が必要である。
【0082】
特定の実施形態では、結合分子は、HAタンパク質のHA1サブユニット、特にHA1サブユニットの球状部領域に特異的に結合することができる。結合分子は、HAタンパク質のHA1サブユニットの線形もしくは構造および/または立体構造エピトープに特異的に結合することができる。HA分子は、ウイルスから精製しても良いし、または組換えにより作製し、任意選択で使用の前に単離しても良い。あるいは、HAは、細胞表面で発現され得る。
【0083】
本発明の結合分子は、生存可能、生きている、および/もしくは感染性である、または不活化/弱毒化された形態のB型インフルエンザウイルスに特異的に結合することができる。ウイルス、例えば、インフルエンザウイルスを不活化/弱毒化する方法は、当分野で周知であり、この方法として、限定されるものではないが、ホルマリン、β−プロピオラクトン(BPL)、メルチオレート、および/または紫外線での処置が挙げられる。
【0084】
本発明の結合分子は、B型インフルエンザウイルスの1つ以上の断片、例えば、特に、B型インフルエンザウイルスの亜型に由来する1つ以上のタンパク質および/もしくは(ポリ)ペプチドの調製物、またはB型インフルエンザウイルスの1つ以上の組換えにより作製されたタンパク質および/もしくはポリペプチドに特異的に結合することができる。様々なB型インフルエンザ株のタンパク質のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列は、GenBankデータベース、NCBIインフルエンザウイルス配列データベース、インフルエンザ配列データベース(ISD)、EMBLデータベース、および/または他のデータベースで見つけることができる。このような配列をそれぞれのデータベースで見つけることは、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0085】
別の実施形態では、本発明の結合分子は、上述のタンパク質および/またはポリペプチドの断片に特異的に結合することができ、この断片は、本発明の結合タンパク質によって認識されるエピトープを少なくとも含む。本明細書で使用される「エピトープ」は、本発明の結合分子に十分に高い親和性で結合して検出可能な抗原−結合分子複合体を形成することができる部分である。
【0086】
本発明の結合分子は、無傷の免疫グロブリン分子、例えば、モノクローナル抗体としても良いし、またはその抗原結合断片としても良く、このような抗原結合断片として、限定されるものではないが、インフルエンザウイルス株に対する特異的な抗原結合性を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも断片を含む重鎖および軽鎖可変領域、Fab、F(ab’)、F(ab’)
2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、ダイアボディ、トライアボディ、テトラボディ、および(ポリ)ペプチドまたはそれらの断片が挙げられる。好ましい一実施形態では、本発明の結合分子は、ヒトモノクローナル抗体および/またはその抗原結合断片である。結合分子はまた、ナノボディ、αボディ、アフィボディ、FN3ドメイン足場、およびAdnectin、Anticalin、Darpinのような(ヒト)反復タンパク質のドメインに基づいた他の足場、またはエピトープ結合配列を含む他の足場としても良い。
【0087】
特定の実施形態では、結合分子は、完全な重鎖および軽鎖可変領域ならびに完全な重鎖および軽鎖定常領域を含む無傷の抗体である。
【0088】
特定の実施形態では、結合分子は、相補体依存性細胞傷害活性(CDC)および/または抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)活性を有する。
【0089】
本発明の結合分子は、非単離形態または単離形態で使用することができる。さらに、本発明の結合分子は、単独で使用しても良いし、または本発明の少なくとも1つの結合分子(またはその変異体もしくは断片)、およびインフルエンザに結合してインフルエンザウイルスを阻害する効果を有する1つ以上の他の結合分子を含む混合物として使用しても良い。言い換えれば、結合分子は、組み合わせて、例えば、2つ以上の結合分子、それらの変異体または断片を含む医薬組成物として使用することができる。例えば、異なるが相補的活性を有する結合分子を単回療法で組み合わせて、所望の予防効果、治療効果、または診断効果を達成することができるが、代替として、同一の活性を有する結合分子を単回療法で組み合わせて、所望の予防効果、治療効果、または診断効果を達成することもできる。任意選択で、混合物は、本発明による少なくとも1つの結合分子および少なくとも1つの他の治療薬も含み得る。好ましくは、治療薬、例えば、M2阻害剤(例えば、アマンチジン、リマンタジン)および/またはノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル、オセルタミビル)は、インフルエンザウイルス感染の予防および/または治療に有用である。
【0090】
典型的には、本発明による結合分子は、その結合パートナー、即ち、B/山形系統および/またはB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス、および/またはそれらの断片に結合することができ、その親和定数(K
d値)は、0.2×10
−4M未満、1.0×10
−5M未満、1.0×10
−6M未満、1.0×10
−7M未満、好ましくは1.0×10
−8M未満、より好ましくは1.0×10
−9M未満、より好ましくは1.0×10
−10M未満、さらに好ましくは1.0×10
−11M未満、特に1.0×10
−12M未満である。親和定数は、抗体のアイソタイプによって異なり得る。例えば、IgMアイソタイプの親和結合は、少なくとも約1.0×10
−7Mの結合親和性を有する。親和定数は、例えば、表面プラズモン共鳴を用いて、例えば、BIACOREシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden)を用いて測定することができる。
【0091】
本発明の結合分子は、中和活性を示す。中和活性は、例えば、本明細書に記載されるよう測定することができる。中和活性を測定する代替のアッセイは、例えば、WHO Manual on Animal Influenza Diagnosis and Surveillance、Geneva:世界保健機関、2005、2002.5版に記載されている。
【0092】
典型的には、本発明による結合分子は、50μg/ml以下、好ましくは20μg/ml以下、より好ましくは10μg/ml以下、さらに好ましくは5μg/ml以下の中和活性を有し、この中和活性は、実施例6に記載されるin vitroウイルス中和アッセイ(VNA)で決定される。本発明による結合分子は、可溶型、例えば、サンプル中もしくは懸濁液中などでインフルエンザウイルスもしくはその断片に結合することができ、または、担体もしくは支持体、例えば、マイクロタイタープレート、膜、およびビーズなどに結合もしくは付着したインフルエンザウイルスもしくはその断片に結合することができる。担体または支持体は、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、多糖、ナイロン、ニトロセルロース、またはテフロンなどから形成することができる。このような支持体の表面は、中実または多孔質として、任意の便利な形状にすることができる。さらに、結合分子は、精製/単離または非精製/非単離の形態でインフルエンザウイルスに結合することができる。
【0093】
上記のように、本発明は、特定の実施形態では、B型インフルエンザウイルスのインフルエンザヘマグルチニンタンパク質(HA)のエピトープを認識して結合することができる単離されたヒト結合分子を提供し、前記結合分子は、B/山形系統および/またはB/ビクトリア系統の両方のB型インフルエンザウイルスに対して、in vitroおよびin vivoの両方で中和活性を有する。本発明によると、本発明の結合分子が、系統発生的に両方の系統に属する亜型インフルエンザウイルスを交差中和することが示された。当業者は、本明細書の記載に基づいて、抗体が実際に、異なる亜型に由来するHAタンパク質と交差反応するか否かを決定することができ、かつ抗体が、異なる亜型のインフルエンザウイルスをin vitroおよび/またはin vivoで中和することができるか否かを決定することもできる。
【0094】
本発明の別の態様は、上記定義された結合分子の機能的変異体を含む。分子は、その変異結合分子が、インフルエンザウイルスまたはその断片への免疫特異的結合を「親」または「基準」結合分子と競合することができる場合は、本発明による結合分子の機能的変異体と見なされる。言い換えれば、分子は、その機能的変異体が、インフルエンザウイルスまたはその断片の同じエピトープまたは重複エピトープになお結合できる場合は、本発明による結合分子の機能的変異体と見なされる。本明細書では、「親」および「基準」は、同義語として使用される、つまり、基準分子もしくは親分子の情報、または物理的な分子自体が、変異体の基礎を形成し得る。機能的変異体として、限定されるものではないが、一次構造配列が実質的に同じである誘導体が挙げられ、このような誘導体として、Fc受容体またはエフェクター機能に関与する他の領域に修飾を有し、かつ/または親結合分子には見られない、例えば、in vitroまたはin vivoでの化学的および/または生化学的な修飾を含む誘導体が挙げられる。このような修飾として、特に、アセチル化、アシル化、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、架橋結合、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、酸化、PEG化、タンパク質分解処理、およびリン酸化などが挙げられる。あるいは、機能的変異体は、親結合分子のアミノ酸配列と比較して、1つ以上のアミノ酸の置換、挿入、欠失、またはこれらの組み合わせを含むアミノ酸配列を含む、本発明で定義された結合分子とすることができる。さらに、機能的変異体は、アミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかまたは両方にアミノ酸配列の切断を含み得る。本発明による機能的変異体は、親結合分子と比較して、同じまたは異なる、高いまたは低い結合親和性を有し得るが、インフルエンザウイルスまたはその断片になお結合することができる。例えば、本発明による機能的変異体は、親結合分子と比較して、インフルエンザウイルスまたはその断片に対して高いまたは低い結合親和性を有し得る。特定の実施形態では、限定されるものではないが、フレームワーク領域、超可変領域、特にCDR3領域を含む可変領域のアミノ酸配列が変更される。一般に、軽鎖および重鎖可変領域は、3つのCDRを含む3つの超可変領域、およびより保存された領域、いわゆるフレームワーク領域(FR)を含む。超可変領域は、CDRのアミノ酸残基および超可変ループのアミノ酸残基を含む。本発明の範囲内に含まれる機能的変異体は、本明細書で定義される親結合分子と少なくとも約80〜約99%、好ましくは少なくとも約70%〜約99%、より好ましくは少なくとも約80%〜約99%、さらに好ましくは少なくとも約90%〜約99%、最も好ましくは少なくとも約95%〜約99%、特に少なくとも約97%〜約99%のアミノ酸配列同一性および/または相同性を有する。コンピュータアルゴリズム、例えば、特に、当業者に公知のGapまたはBestfitを使用して、アミノ酸配列を最適にアラインして、同様または同一のアミノ酸残基を明らかにすることができる。機能的変異体は、当分野で公知の一般的な分子生物学的方法によって親結合分子またはその一部を変更することによって得ることができ、このような分子生物学的方法として、限定されるものではないが、error−prone PCR、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発法、部位特異的突然変異誘発法、ならびに重鎖および/または軽鎖シャッフリングが挙げられる。
【0095】
特定の実施形態では、本発明の機能的変異体は、B型インフルエンザウイルスに対する中和活性を有する。この中和活性は、親結合分子と比較して同一であっても良いし、または高くても低くても良い。本明細書において、(ヒト)結合分子という語が使用される場合、この語は、(ヒト)結合分子の機能的変異体も包含する。変異結合分子が中和活性を有するか否かを検証するアッセイは、当分野で周知である(WHO Manual on Animal Influenza Diagnosis and Surveillance、Geneva:世界保健機関、2005、2002.5版を参照)。
【0096】
特定の実施形態では、機能的変異体は、配列番号71と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む重鎖可変配列、および/または配列番号73と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む軽鎖可変領域を含む結合分子である。
【0097】
特定の実施形態では、機能的変異体は、配列番号75と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む重鎖可変配列、および/または配列番号77と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む軽鎖可変領域を含む結合分子である。
【0098】
特定の実施形態では、機能的変異体は、配列番号113と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む重鎖可変配列、および/または配列番号115と比較して、1つ以上のアミノ酸変異、例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、もしくは15のアミノ酸変異を含む軽鎖可変領域を含む結合分子である。
【0099】
特定の実施形態では、本発明による結合分子は、
(a)配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号60のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(b)配列番号61のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号62のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号18のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号63のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(c)配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号65のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(d)配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号67のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号68のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号69のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(e)配列番号35のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号36のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号37のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(f)配列番号40のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号44のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;
(g)配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号46のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号38のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号49のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3;ならびに
(h)配列番号45のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号50のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、および配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、ならびに配列番号51のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号53のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む結合分子からなる群から選択される。
【0100】
特定の実施形態では、結合分子は、
(a)配列番号119の重鎖可変領域および配列番号121の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(b)配列番号123の重鎖可変領域および配列番号125の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(c)配列番号127の重鎖可変領域および配列番号129の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(d)配列番号131の重鎖可変領域および配列番号133の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(e)配列番号77の重鎖可変領域および配列番号79の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(f)配列番号101の重鎖可変領域および配列番号103の軽鎖可変領域を含む結合分子;
(g)配列番号105の重鎖可変領域および配列番号107の軽鎖可変領域を含む結合分子;ならびに
(h)配列番号109の重鎖可変領域および配列番号111の軽鎖可変領域を含む結合分子からなる群から選択される。
【0101】
特定の実施形態では、本発明による結合分子は、薬剤として使用され、好ましくは、B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザ感染の治療処置および/または予防処置に使用される。本発明による結合分子を用いて治療することができる、インフルエンザ感染を引き起こすインフルエンザウイルスは、B/山形系統および/またはB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルスであり得る。
【0102】
本発明は、本発明による少なくとも1つの結合分子および少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤を含む医薬組成物にも関する。
【0103】
なお別の実施形態では、本発明は、インフルエンザウイルス感染の予防および/または治療用の薬剤の調製における本発明による結合分子の使用に関する。
【0104】
本発明の結合分子を用いて予防および/または治療することができるインフルエンザウイルス感染は、小さい集団で起こり得るが、季節的流行で世界中に広がることもあるし、さらに悪いことに数百万人が危険にさらされる世界的大流行も起こり得る。本発明は、このような季節的流行および潜在的な大流行を引き起こすインフルエンザ株の感染を中和することができる結合分子を提供する。
【0105】
なおさらなる態様では、本発明は、免疫コンジュゲート、即ち、本明細書で定義される少なくとも1つの結合分子および少なくとも1つのタグ、例えば、特に検出可能な部分/作用物質を含む分子を提供する。また、本発明による免疫コンジュゲートの混合物、または本発明による少なくとも1つの免疫コンジュゲートと別の分子、例えば、治療薬もしくは別の結合分子もしくは免疫コンジュゲートの混合物も本発明で企図される。さらなる実施形態では、本発明の免疫コンジュゲートは、2つ以上のタグを含み得る。これらのタグは、互いに同じでも異なっていても良く、かつ結合分子に非共有結合で連結/コンジュゲートすることができる。タグはまた、共有結合によってヒト結合分子に直接的に連結/コンジュゲートすることもできる。あるいは、タグは、1つ以上の連結化合物によって結合分子に連結/コンジュゲートすることができる。タグを結合分子にコンジュゲートする技術は当業者に周知である。
【0106】
本発明の免疫コンジュゲートのタグは、治療薬とすることができるが、検出可能な部分/作用物質とすることもできる。治療および/または予防に適したタグは、毒素もしくはその機能的部分、抗生物質、酵素、食作用を強める他の結合分子、または免疫刺激物とすることができる。検出可能な作用物質を含む免疫コンジュゲートを診断に使用して、例えば、対象がインフルエンザウイルスに感染しているか否かを決定する、または臨床検査手順の一部としてインフルエンザウイルス感染の発症もしくは進行を監視して、例えば、所与の治療計画の有効性を決定することができる。しかしながら、免疫コンジュゲートは、他の検出目的および/または分析目的および/または診断目的にも使用することができる。検出可能な部分/作用物質として、限定されるものではないが、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。検出目的および/または分析目的および/または診断目的用の結合分子を標識するために使用されるタグは、使用される特定の検出/分析/診断技術および/または方法、例えば、特に、(組織)サンプルの免疫組織化学的染色、フローサイトメトリー検出、走査型レーザー細胞数検出、蛍光イムノアッセイ、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、バイオアッセイ(例えば、食作用アッセイ)、ウェスタンブロット法などによって決まる。当分野で公知の検出/分析/診断技術および/または方法に適したタグは、十分に当業者の知識の範囲内である。
【0107】
さらに、本発明のヒト結合分子または免疫コンジュゲートは、インフルエンザウイルスもしくはその断片のin vitroイムノアッセイまたは精製に特に有用な固体支持体に取り付けることもできる。このような固体支持体は、多孔性または無孔性、平面または非平面とすることができる。本発明の結合分子は、マーカー配列、例えば、ペプチドに融合して精製を促進ことができる。例として、限定されるものではないが、ヘキサヒスチジンタグ、ヘマグルチニン(HA)タグ、mycタグ、またはフラッグタグが挙げられる。あるいは、抗体を二次抗体にコンジュゲートさせて抗体ヘテロコンジュゲートを形成することができる。別の態様では、本発明の結合分子は、1つ以上の抗原にコンジュゲート/付着させることができる。好ましくは、これらの抗原は、結合分子−抗原コンジュゲートが投与される対象の免疫系によって認識される抗原である。抗原は、同一とすることができるが、互いに異なっていても良い。抗原と結合分子を付着させるコンジュゲート法は、当分野で周知であり、限定されるものではないが、架橋剤の使用を含む。本発明の結合分子は、インフルエンザウイルスHAに結合し、結合分子に付着した抗原は、コンジュゲートに対して強力なT細胞攻撃を開始し、これにより、インフルエンザウイルスが最終的に破壊されることになる。
【0108】
直接的に、または、例えば、リンカーを介して間接的にコンジュゲートすることによって化学的に免疫コンジュゲートを形成してから、この免疫コンジュゲートを、本発明の結合分子および適切なタグを含む融合タンパク質として作製することができる。融合タンパク質は、当分野で公知の方法、例えば、適切なタグをコードするヌクレオチド配列と共に、結合分子をインフレームでコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を作製し、次いで、この核酸分子を発現させることによって組換えなどにより作製することができる。
【0109】
本発明の別の態様では、本発明による少なくとも1つの結合分子、機能的変異体、または免疫コンジュゲートをコードする核酸分子を提供する。このような核酸分子は、クローニングのために、例えば、上記の親和性成熟プロセスで中間体として使用することができる。好ましい一実施形態では、この核酸分子は、単離または精製される。
【0110】
当業者であれば、これらの核酸分子の機能的変異体も本発明の一部であるとされることを理解されよう。機能的変異体は、標準的遺伝子コードを用いて直接翻訳して、親核酸分子から翻訳されたアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を提供することができる核酸配列である。
【0111】
好ましくは、この核酸分子は、上記のCDR領域を含む結合分子をコードする。さらなる実施形態では、この核酸分子は、本発明の結合分子の2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ全てのCDR領域を含む結合分子をコードする。
【0112】
別の実施形態では、核酸分子は、上記の可変重鎖配列を有する重鎖を含む結合分子をコードする。別の実施形態では、核酸分子は、上記の可変軽鎖配列を有する軽鎖を含む結合分子をコードする。本発明の結合分子の重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が以下に示される。
【0113】
本発明の別の態様では、本発明による1つ以上の核酸分子を含むベクター、即ち、核酸構築物を提供する。ベクターは、プラスミド、特にF、R1、RP1、Col、pBR322、TOL、Tiなど;コスミド;ファージ、例えば、λ、ラムドイド、M13、Mu、P1、P22、Qβ、T−even、T−odd、T2、T4、T7など;植物ウイルスに由来し得る。ベクターは、本発明の結合分子のクローニングおよび/または発現に使用することができ、かつ遺伝子治療目的にさえも使用することができる。1つ以上の発現調節核酸分子に機能的に連結された本発明による1つ以上の核酸分子を含むベクターも本発明に包含される。ベクターの選択は、続く組換え手順および使用される宿主によって決まる。ベクターの宿主細胞への導入は、特に、リン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクション、またはエレクトロポレーションによって行うことができる。ベクターは、自動的に複製することができる、またはベクターが組み込まれる染色体と共に複製することができる。好ましくは、ベクターは、1つ以上の選択マーカーを含む。マーカーの選択は、宿主細胞の選択によって決まり得るが、これは、当業者には周知のように本発明にとってそれほど重要ではない。マーカーとして、限定されるものではないが、カナマイシン、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ゼオシン、単純ヘルペスウイルス由来のチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−TK)、マウス由来のジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)が挙げられる。ヒト結合分子の単離に使用することができるタンパク質またはペプチドをコードする1つ以上の核酸分子に機能的に連結された上記のヒト結合分子をコードする1つ以上の核酸分子を含むベクターも本発明に包含される。これらのタンパク質またはペプチドとして、限定されるものではないが、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、マルトース結合タンパク質、金属結合ポリヒスチジン、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、およびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。
【0114】
上述のベクターの1つ以上のコピーを含む宿主は、本発明のさらなる態様である。好ましくは、宿主は、宿主細胞である。宿主細胞として、限定されるものではないが、哺乳動物、植物、昆虫、真菌、または細菌を起源とする細胞が挙げられる。細菌細胞として、限定されるものではないが、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌、例えば、エシェリキア(Escherichia)属のいくつかの種、例えば、大腸菌(E.coli)およびシュードモナス菌(Pseudomonas)に由来する細胞が挙げられる。真菌細胞の群では、好ましくは、酵母細胞が使用される。酵母での発現は、酵母菌株、例えば、特にピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、およびハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)を用いることによって達成することができる。さらに、昆虫細胞、例えば、ショジョウバエ(Drosophila)およびSf9由来の細胞を宿主細胞として使用することができる。その他に、宿主細胞は、植物細胞、例えば、特に作物、例えば、森林植物由来の細胞、または食物および原料を供給する植物、例えば、穀物用植物もしくは薬用植物由来の細胞、または観葉植物由来の細胞、または球根作物由来の細胞とすることができる。形質転換(トランスジェニック)植物または植物細胞は、公知の方法、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介遺伝子導入、葉片の形質転換、ポリエチレングリコール誘導DNA導入によるプロトプラスト形質転換、エレクトロポレーション、超音波処理、マイクロインジェクション、またはパーティクルガン遺伝子導入法によって作製することができる。加えて、適切な発現系は、バキュロウイルス系とすることができる。哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、NSO細胞、またはBowesメラノーマ細胞を用いる発現系が本発明では好ましい。哺乳動物細胞は、哺乳動物起源の天然分子に極めて類似した翻訳後修飾を有する発現タンパク質を提供する。本発明は、ヒトに投与されることもある分子に対応するため、完全なヒトの発現系が特に好ましいであろう。従って、さらに好ましくは、宿主細胞はヒト細胞である。ヒト細胞の例として、特にHeLa、911、AT1080、A549、293、およびHEK293T細胞が挙げられる。好ましい実施形態では、ヒト産生細胞は、発現可能な形態のアデノウイルスE1領域をコードする核酸配列の少なくとも機能的な部分を含む。さらに好ましい実施形態では、前記宿主細胞は、ヒト網膜に由来し、アデノウイルスE1配列を含む核酸で不死化された細胞、例えば、1996年2月29日に96022940の番号でEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)、CAMR、Salisbury、Wiltshire SP4 OJG、Great Britainに寄託され、PER.C6(登録商標)(PER.C6はCrucell Holland B.V.の登録商標である)という商標で販売されている911細胞または細胞株である。本出願では、「PER.C6細胞」は、96022940の番号で寄託された細胞、または原細胞の上流継代もしくは下流継代、寄託された細胞の原細胞の子孫細胞、およびこれらのあらゆる誘導体を指す。宿主細胞での組換えタンパク質の産生は、当分野で周知の方法に従って行うことができる。目的のタンパク質の産生プラットフォームとしてPER.C6(登録商標)の商標で販売されている細胞の使用は、参照によりその全開示内容が本明細書に組み入れられる国際公開第00/63403号パンフレットに記載されている。
【0115】
本発明による結合分子を生産する方法は、本発明の別の態様である。この方法は、(a)本発明による宿主を、結合分子が発現しやすい条件下で培養するステップと、(b)任意選択で、発現された結合分子を回収するステップと、を含む。発現された結合分子は、無細胞抽出物から回収することができるが、好ましくは、培地から回収される。上記の生産する方法は、本発明の結合分子および/または免疫コンジュゲートの機能的変異体を生産するためにも使用することができる。タンパク質、例えば、結合分子を無細胞抽出物または培地から回収する方法は当業者に周知である。上記の方法によって得られる結合分子、機能的変異体、および/または免疫コンジュゲートも本発明の一部である。
【0116】
あるいは、宿主、例えば、宿主細胞での発現の次に、本発明の結合分子および免疫コンジュゲートを、従来のペプチドシンセサイザーによる合成によって、または本発明によるDNA分子に由来するRNA核酸を用いる無細胞翻訳系で生産することができる。上記の合成による生産方法または無細胞翻訳系によって得られる結合分子および免疫コンジュゲートも本発明の一部である。
【0117】
なお別の実施形態では、本発明の結合分子は、トランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、特にウサギ、ヤギ、またはウシで生産することができ、例えば、その乳に分泌されるようにすることもできる。
【0118】
なお別の代替の実施形態では、本発明による結合分子は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば、トランジェニックマウスまたはウサギによって生産させることができる。好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物は、上記のヒト結合分子の全てまたは一部をコードするヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する。トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、インフルエンザウイルスもしくはその断片の精製調製物または濃縮調製物で免疫化することができる。非ヒト哺乳動物を免疫化するプロトコルは、当分野で十分に確立されている。参照によりその開示内容が本明細書に組み入れられるUsing Antibodies:A Laboratory Manual、E.Harlow、D.Lane編(1998)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、およびCurrent Protocols in Immunology、J.E.Coligan、A.M.Kruisbeek、D.H.Margulies、E.M.Shevach、W.Strober編(2001)、John Wiley & Sons Inc.、New Yorkを参照されたい。免疫化プロトコルは、アジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントを用いる、または用いない多数の免疫化を含む場合が多いが、裸のDNA免疫化も含み得る。別の実施形態では、ヒト結合分子は、トランスジェニック動物に由来するB細胞、形質細胞、および/または記憶細胞によって生産される。なお別の実施形態では、ヒト結合分子は、上記のトランスジェニック非ヒト哺乳動物から得られたB細胞の不死化細胞への融合によって作製されるハイブリドーマによって生産される。上記のトランスジェニック非ヒト哺乳動物から得ることができるB細胞、形質細胞、およびハイブリドーマ、ならびに上記のトランスジェニック非ヒト哺乳動物、B細胞、形質細胞および/または記憶細胞、およびハイブリドーマから得ることができるヒト結合分子も本発明の一部である。
【0119】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明による少なくとも1つの結合分子、好ましくはヒトモノクローナル抗体、少なくとも1つのその機能的変異体、本発明による少なくとも1つの免疫コンジュゲート、および/またはこれらの組み合わせを提供する。これに加えて、本組成物は、特に安定化分子、例えば、アルブミンもしくはポリエチレングリコール、または塩を含み得る。好ましくは、使用される塩は、結合分子の望ましい生物学的活性を保持し、かつ不所望の毒性効果を一切付与しない塩である。必要に応じて、本発明のヒト結合分子を、物質の内外にコーティングして、酸の作用、または結合分子を不活化し得る他の天然もしくは非天然の条件から結合分子を保護することができる。
【0120】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明で定義される少なくとも1つの核酸分子を含む組成物を提供する。この組成物は、水溶液、例えば、塩(例えば、NaClまたは上記の塩)を含む水溶液、界面活性剤(例えば、SDS)、および/または他の適切な成分を含み得る。
【0121】
さらに、本発明は、本発明の少なくとも1つの結合分子、例えば、ヒトモノクローナル抗体(またはその機能的断片もしくは変異体)、本発明による少なくとも1つの免疫コンジュゲート、本発明による少なくとも1つの組成物、またはこれらの組み合わせを含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む。薬学的に許容され得る賦形剤は当分野で周知である。本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの他の治療薬をさらに含み得る。適切な作用物質もまた、当業者に周知である。
【0122】
特定の実施形態では、本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの追加の結合分子を含む、即ち、この医薬組成物は、結合分子のカクテルまたは混合物とすることができる。医薬組成物は、本発明による少なくとも2つの結合分子、または本発明による少なくとも1つの結合分子および少なくとも1つのさらなるインフルエンザウイルス結合分子および/もしくは中和分子、例えば、HAタンパク質もしくはインフルエンザウイルスに存在する他の抗原構造に対する別の抗体、例えば、M2、および/もしくは1つ以上の他の病原体を中和する結合分子を含み得る。別の実施形態では、追加の結合分子は、同時の別個の投与または連続的な投与用に調製することができる。
【0123】
特定の実施形態では、結合分子は、組み合わせて使用されると相乗的な中和活性を示す。本明細書で使用される「相乗的」という語は、組み合わせて使用される場合の結合分子の組み合わせ効果が、個々に使用される場合のそれぞれの相加効果よりも大きいことを意味する。相乗的に作用する結合分子は、インフルエンザウイルスの同じまたは異なる断片の様々な構造に結合することができる。相乗効果を計算する方法は、併用指数を用いる。併用指数(CI)の概念は、ChouおよびTalalay(1984)に記載されている。本組成物は、例えば、中和活性を有する1つの結合分子および1つの非中和結合分子を含み得る。非中和結合分子および中和結合分子も、インフルエンザウイルスの中和で相乗的に作用し得る。
【0124】
特定の実施形態では、医薬組成物は、本発明による少なくとも1つの結合分子、および少なくとも1つのさらなる結合分子、好ましくは、さらなるインフルエンザウイルスを中和する結合分子を含み得る。医薬組成物中の結合分子は、好ましくは、インフルエンザウイルスの様々な亜型と反応することができる。結合分子は、高い親和性および広い特異性を有し得る。好ましくは、両方の結合分子は、それぞれがインフルエンザウイルスの様々な亜型を中和するという点で交差中和分子である。加えて、好ましくは、結合分子は、様々なインフルエンザウイルス亜型の可能な限り多くの各株を中和する。
【0125】
特定の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも1つの他の予防薬および/または治療薬を含む。好ましくは、前記さらなる治療薬および/または予防薬は、インフルエンザウイルス感染および/またはこのような感染から生じる状態を予防および/または治療することができる作用物質である。治療薬および/または予防薬として、限定されるものではないが、抗ウイルス薬が挙げられる。このような作用物質は、結合分子、小分子、有機または無機化合物、酵素、ポリヌクレオチド配列、抗ウイルスペプチドなどであり得る。インフルエンザウイルスに感染した患者を治療するために現在使用されている他の作用物質は、M2阻害剤(例えば、アマンチジン、リマンタジン)および/またはノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル、オセルタミビル)である。これらは、本発明の結合分子と併用することができる。本明細書の「併用」は、別個の製剤としての、もしくは1つの組み合わせ製剤としての同時投与、または別個の製剤としての連続投与計画に従った任意の順序での投与を意味する。実験段階にある、インフルエンザウイルス感染および/またはこのような感染から生じる状態を予防および/または治療することができる作用物質は、本発明に有用な他の治療薬および/または予防薬として使用される可能性もある。
【0126】
本発明の結合分子または医薬組成物は、ヒトに使用する前に適切な動物モデル系で試験することができる。このような動物モデル系として、限定されるものではないが、マウス、フェレット、およびサルが挙げられる。
【0127】
典型的には、医薬組成物は、滅菌され、製造および保存の条件下で安定しなければならない。本発明の結合分子、免疫コンジュゲート、または組成物は、送達の前または送達時に適切な薬学的に許容され得る賦形剤中で戻される粉末形態にすることができる。滅菌注射液の調製用の滅菌粉末の場合には、調製の好ましい方法は、事前に滅菌濾過された溶液から活性成分と追加の所望の成分の粉末を形成する真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0128】
あるいは、本発明の結合分子、免疫コンジュゲート、または組成物は、溶液に溶解することができ、適切な薬学的に許容され得る賦形剤を、送達の前または送達時に添加および/または混合して、1回量の注射可能な形態にすることができる。好ましくは、本発明で使用される薬学的に許容され得る賦形剤は、高い薬物濃度に適し、適切な流動性を維持することができ、必要に応じて吸収を遅らせることができる。
【0129】
医薬組成物の投与の最適な経路の選択は、組成物内の活性分子の物理化学的特性、臨床的症状の緊急性、および活性分子の血漿濃度と所望の治療効果との関係を含むいくつかの因子による影響を受ける。例えば、必要に応じて、本発明の結合分子は、この結合分子の迅速な放出を防止する担体、例えば、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む徐放製剤を用いて調製することができる。特に、生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグルコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。さらに、ヒト結合分子の不活化を防止する物質もしくは化合物で結合分子をコーティングする、またはこのような物質もしくは化合物を結合分子と同時投与する必要があろう。例えば、結合分子は、適切な担体、例えば、リポソームまたは希釈剤に含めて対象に投与することができる。
【0130】
投与の経路は、経口投与と非経口投与の2つに大きく分けることができる。好ましい投与経路は、静脈内または吸入である。
【0131】
経口剤形は、特に、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、カプセル、ソフトゼラチンカプセル、シロップもしくはエリキシル剤、ピル、糖衣錠、液体、ゲル、またはスラリーとして製剤することができる。これらの製剤は、限定されるものではないが、不活性希釈剤、造粒剤および崩壊剤、結合剤、潤滑剤、保存剤、着色剤、香料もしくは甘味剤、植物油もしくは鉱油、および増粘剤を含む薬学的に許容され得る賦形剤を含み得る。
【0132】
本発明の医薬組成物は、非経口投与用に製剤することもできる。非経口投与用の製剤は、特に、水性もしくは非水性かつ等張性の滅菌非毒性注射もしくは注入溶液または懸濁液の形態にすることができる。この溶液または懸濁液は、利用される用量および濃度では賦形剤に対して非毒性である作用物質、例えば、1,3−ブタンジオール、リンガー溶液、ハンクス溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、油、脂肪酸、局所麻酔薬、保存薬、バッファー、増粘剤もしくは溶解度増加剤、水溶性酸化防止剤、油溶性酸化防止剤、および金属キレート剤を含み得る。
【0133】
さらなる態様では、結合分子、例えば、本発明のヒトモノクローナル抗体(その機能的断片および機能的変異体)、免疫コンジュゲート、組成物、または医薬組成物は、薬剤または診断薬として使用することができる。従って、本発明の結合分子、免疫コンジュゲート、組成物、または医薬組成物を用いてインフルエンザウイルスの感染を診断、治療、および/または予防する方法は本発明の別の態様である。上述の分子は、特に、B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイルス感染の診断、予防、治療、またはこれらの組み合わせに使用することができる。これらは、インフルエンザウイルスに感染している未治療患者およびインフルエンザウイルス感染の治療を受けた、または治療を受けている患者の治療に適している。
【0134】
上述の分子または組成物は、診断、予防、および/または治療に有用な他の分子と併用することができる。これらは、in vitro、ex vivo、またはin vivoで使用することができる。例えば、結合分子、例えば、本発明のヒトモノクローナル抗体(もしくはその機能的変異体)、免疫コンジュゲート、組成物、または医薬組成物は、インフルエンザウイルスのワクチン(利用可能な場合)と同時投与することができる。あるいは、このようなワクチンは、本発明の分子の投与前または投与後に投与しても良い。ワクチンの代わりに、抗ウイルス薬を、本発明の結合分子と併用しても良い。適切な抗ウイルス薬は上述されている。
【0135】
これらの分子は、典型的には、治療有効量または診断有効量で本発明の組成物および医薬組成物中に製剤される。あるいは、これらの分子は、別個に製剤し、別個に投与しても良い。例えば、他の分子、例えば、抗ウイルス薬は、全身投与することができ、一方、本発明の結合分子は、静脈内に投与することができる。
【0136】
治療は、インフルエンザに感染しやすい患者群を標的とすることができる。このような患者群として、限定されるものではないが、高齢者(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは≧65歳)、若者(例えば、≦5歳、≦1歳)、入院患者、および抗ウイルス化合物で治療されたが十分な抗ウイルス反応を示さない既に感染している患者が挙げられる。
【0137】
投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を得るために調整することができる。適切な用量範囲は、0.01〜100mg/kg 体重、好ましくは0.1〜50mg/kg 体重、好ましくは0.01〜15mg/kg 体重とすることができる。さらに、例えば、単回ボーラス投与することができる、時間をかけて数回に分けて投与することができる、または用量を、治療状態の緊急性によって示されるように比例的に増減させることができる。本発明による分子および組成物は、好ましくは無菌である。これらの分子および組成物を無菌にする方法は当分野で周知である。診断、予防、および/または治療に有用な他の分子は、本発明の結合分子に提案されるものと同様の投与計画で投与することができる。他の分子が別個に投与される場合、これらは、本発明の1つ以上のヒト結合分子または医薬組成物の投与の前(例えば、2分前、5分前、10分前、15分前、30分前、45分前、60分前、2時間前、4時間前、6時間前、8時間前、10時間前、12時間前、14時間前、16時間前、18時間前、20時間前、22時間前、24時間前、2日間前、3日間前、4日間前、5日間前、7日間前、2週間前、4週間前、または6週間前)に、同時に、または投与の後(例えば、2分後、5分後、10分後、15分後、30分後、45分後、60分後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、14時間後、16時間後、18時間後、20時間後、22時間後、24時間後、2日間後、3日間後、4日間後、5日間後、7日間後、2週間後、4週間後、または6週間後)に投与することができる。正確な投与計画は、通常は、ヒト患者の臨床検査中に選択される。
【0138】
ヒト結合分子およびこのヒト結合分子を含む医薬組成物は、投与される抗体に対するレシピエントの免疫応答が、モノクローナルネズミ、キメラ、またはヒト化結合分子の投与によって引き起こされる免疫応答よりも実質的に弱い場合が多いため、in vivo治療薬としてヒトに投与されると特に有用であり、好ましい場合が多い。
【0139】
別の態様では、本発明は、インフルエンザウイルス感染、特にB型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザウイル感染の診断、予防、治療、またはこれらの組み合わせ用の薬剤の調製における、本発明による結合分子、例えば、中和ヒトモノクローナル抗体(その機能的断片および機能的変異体)、免疫コンジュゲート、核酸分子、組成物、または医薬組成物の使用に関する。
【0140】
次いで、本発明による少なくとも1つの結合分子、例えば、中和ヒトモノクローナル抗体(その機能的断片および機能的変異体)、少なくとも1つの免疫コンジュゲート、少なくとも1つの核酸分子、少なくとも1つの組成物、少なくとも1つの医薬組成物、少なくとも1つのベクター、少なくとも1つの宿主、またはこれらの組み合わせを含むキットも本発明の一態様である。任意選択で、本発明のキットの上述の構成要素は、適切な容器に入れられ、示された症状の診断、予防、および/または治療のラベルが貼られる。上述の構成要素は、水溶液、好ましくは滅菌溶液として、または元に戻される凍結乾燥製剤、好ましくは滅菌製剤として1回用または複数回用の容器に保存することができる。このような容器は、様々な材料、例えば、ガラスまたはプラスチックから形成することができ、かつ滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、皮下注射針によって刺入可能なストッパーを有する静脈注射溶液バッグまたはバイアルとすることができる)。キットは、薬学的に許容され得るバッファーを含む別の容器をさらに含み得る。キットは、商業的およびユーザーの観点から望ましい他の材料、例えば、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、1つ以上の適切な宿主用の培地、および場合により少なくとも1つの他の治療薬、予防薬、または診断薬さえもさらに含み得る。キットには、治療製品、予防製品、または診断製品の市販のパッケージに慣習的に含められる取扱説明書が付随し、この取扱説明書は、このような治療製品、予防製品、または診断製品の使用上の指示、使用法、用量、製造、投与、禁忌、および/または警告を含む。
【0141】
本発明による結合分子は、インフルエンザウイルスの検出のin vitro法における診断薬として有利に使用することもできる。従って、本発明は、サンプル中のB型インフルエンザウイルス亜型を検出する方法に関し、この方法は、
(a)本発明による結合分子および/または本発明による免疫コンジュゲートを用いて生物学的サンプル中のB型インフルエンザウイルス抗原のレベルをアッセイするステップと、
(b)B型インフルエンザウイルス抗原のレベルを対照のレベルと比較し、B型インフルエンザウイルス抗原のアッセイレベルが、B型インフルエンザウイルス抗原の対照のレベルよりも高い場合は、B型インフルエンザウイルスの感染を示すステップと、を含む。
【0142】
生物学的サンプルは、限定されるものではないが、(潜在的に)感染した対象に由来する血液、血清、便、痰、鼻咽頭吸引物、気管支洗浄液、尿、組織、もしくは他の生物学的物質を含む生物学的サンプル、または非生物学的サンプル、例えば、水、飲料などとすることができる。(潜在的に)感染した対象は、ヒト対象とすることができるが、インフルエンザウイルスの保菌動物として疑われる動物も、本発明のヒト結合分子または免疫コンジュゲートを用いてウイルスの存在について検査することができる。サンプルは、検出方法に対してより適切となるように最初に処置することができる。処置とは、ウイルスが抗原成分、例えば、タンパク質、(ポリ)ペプチド、または他の抗原断片に分解するようにウイルスを含む疑いのあるサンプルおよび/またはウイルスを含むサンプルを処置することを意味する。好ましくは、本発明のヒト結合分子または免疫コンジュゲートは、ヒト結合分子とサンプル中に存在し得るウイルスまたはその抗原成分との間の免疫複合体の形成を可能にする条件下でサンプルに接触させる。免疫複合体の形成は、存在する場合は、サンプル中のウイルスの存在を示し、次いで検出され、適切な手段によって測定される。このような方法として、特に、同種および異種結合イムノアッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学、FACS、BIACORE、およびウェスタンブロット分析が挙げられる。
【0143】
特に患者の血清、血液、および血液由来産物の大規模臨床スクリーニングの好ましいアッセイ技術は、ELISAおよびウェスタンブロット技術である。ELISA試験が特に好ましい。本発明の結合分子または免疫コンジュゲートは、これらのアッセイで試薬として使用される場合、マイクロタイターウェルの内面に好都合に結合する。本発明の結合分子または免疫コンジュゲートは、マイクロタイターウェルに直接結合することができる。しかしながら、本発明の結合分子または免疫コンジュゲートのウェルに対する最大の結合は、本発明の結合分子または免疫コンジュゲートの添加の前にウェルをポリリシンで前処理することによって達成され得る。さらに、本発明の結合分子または免疫コンジュゲートは、公知の手段によってウェルに共有結合させることができる。一般に、結合分子または免疫コンジュゲートは、コーティング用に0.01〜100μg/mlの濃度で使用されるが、これよりも高い濃度でも低い濃度でも使用することができる。次いで、サンプルが、本発明の結合分子または免疫コンジュゲートでコーティングされたウェルに添加される。
【0144】
本発明は、対象のB型インフルエンザウイルス感染を治療または防止する方法をさらに提供し、この方法は、治療有効量または予防有効量の本発明の結合分子、免疫コンジュゲート、および/または医薬組成物を対象に投与するステップを含む。特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
【0145】
さらに、本発明の結合分子を使用して、インフルエンザウイルスの特異的な結合構造を同定することができる。この結合構造は、タンパク質および/またはポリペプチド上のエピトープであり得る。これらは、線形でも良いが、構造および/または立体構造でも良い。一実施形態では、結合構造は、PEPSCAN分析(特に、国際公開第84/03564号パンフレット、同第93/09872号パンフレット、Slootstraら、1996を参照されたい)によって分析することができる。あるいは、インフルエンザウイルスのタンパク質由来のペプチドを含むランダムペプチドライブラリーを、本発明の結合分子に結合できるペプチドについてスクリーニングすることができる。
【0146】
本発明は、以下の実施例および図面にさらに例示される。実施例は、本発明の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0147】
実施例1
記憶B細胞から抽出されたRNAを用いたscFvファージディスプレイライブラリーの構築
末梢血を、EDTA抗凝固サンプル管の静脈穿刺により健常なドナーから採取した。一本鎖Fv(scFv)ファージディスプレイライブラリーを、参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2008/028946号パンフレットに記載されているように得た。最終ライブラリーを、挿入されたVH−VL領域(100〜150の単一コロニー)に隣接したプライマーセットを使用するコロニーPCRを用いて挿入頻度についてチェックした。典型的には、95%を超えるコロニーが、正確な長さのインサートを示した(表1を参照)。コロニーPCR産物を、後のDNA配列分析に使用して配列変異体をチェックし、完全なORFを示すコロニーのパーセンテージを算定した。これは、典型的には70%を超えていた(表1を参照)。V領域の突然変異の頻度も分析した。約95%の配列は、成熟プロセスを示す生殖系列配置ではなく、ライブラリーのRNA源として使用されるB細胞の記憶表現型と一致していた。
【0148】
国際公開第2008/028946号パンフレットに示されているプライマーセットを利用して2回のPCR増幅法を行って、それぞれのドナーレパートリーから免疫グロブリンVHおよびVL領域を単離した。
【0149】
それぞれのcDNAに対する1回目の増幅により、VH領域、Vkappa領域、およびVlambda領域に対してそれぞれ、7つ、6つ、および9つの約650塩基対の産物が得られた。IgM記憶B細胞VH領域の増幅では、OCM定常プライマー(IgM定常重鎖特異的)をOH1〜OH7と組み合わせて使用した。第1回の増幅の熱サイクルプログラムは:96℃で2分間(変性ステップ)、96℃で30秒間/60℃で30秒間/72℃で50秒間を35サイクル、72℃で10分間の最後の伸長、6℃で冷蔵、とした。産物を添加し、ゲル抽出カラム(Macherey−Nagel、MN)を使用して1%アガロースゲルから単離し、50μlの5mM Tris−HCl pH 8.0で溶出した。1回目の産物の10%(5μl)に対して2回目の増幅を行った。これらのプライマーを制限部で伸長させて、それぞれのVL領域およびVH領域のファージディスプレイベクターPDV−C06への方向性クローニングを可能にした。2回目の増幅のPCRプログラムは、次の通りとした:96℃で2分間(変性ステップ)、96℃で30秒間/60℃で30秒間/72℃で50秒間を30サイクル、72℃で10分間の最後の伸長、6℃で冷蔵。2回目の産物(約350塩基対)をまずゲルに添加し、上記のようにアガロースゲルから抽出した。次いで、免疫グロブリン遺伝子産物に見られるJセグメントの自然発生に従って断片をプールし、表1および表2に示されているように、VH可変領域、Vkappa可変領域、およびVlambda可変領域に対してそれぞれ、7つ、6つ、および9つのプールを得た。
【0150】
免疫ライブラリーにおける免疫グロブリン配列の正規化分布を得るために、6つのVkappa軽鎖プールおよび9つのVlambda軽鎖プールを、表1に示されているパーセンテージに従って混合した。この単一最終VLプール(5μg)を、SalIおよびNotI制限酵素で消化し、添加し、MN抽出カラムを用いて1.5%アガロースゲルから単離し(約350塩基対)、次のようにSalI−NotI cut PDV−C06ベクターでライゲーションした(約5000塩基対):500ngのPDV−C06ベクター、70ngのVLインサート、5μlの10×ライゲーションバッファー(NEB)、2.5 T4 DNAリガーゼ(400 U/μl)(NEB)、および超純水を添加して総量を50μlにした(ベクターとインサートの比は1:2)。ライゲーションを、16℃の水槽で一晩行った。次いで、総量を水で2倍にし、等量のフェノール−クロロホルム−イソアミルアルコール(75:24:1)(Invitrogen)で抽出し、次いで、クロロホルム(Merck)抽出し、1μlのPellet Paint(Novogen)、10μlの酢酸ナトリウム(3M pH5.0)、および100μlのイソプロパノールを用いて−20℃で2時間沈殿させた。次に、得られたサンプルを20,000×g、4℃で30分間遠心分離した。得られた沈殿物を、70%エタノールで洗浄し、20,000×g、室温で10分間遠心分離した。エタノールを除去し、ペレットを数分間乾燥させ、次いで、10mM Tris−HCl、pH8.0を含む50μlのバッファーで溶解した。2μlのライゲーション混合物を、1.7kV、200Ω、25μF(時定数:約4、5秒)に設定されたGenepulser II装置(Biorad)を用いて、冷却された0.1cmのエレクトロポレーションキュベット(Biorad)内の40μlのTG−1エレクトロコンピテントセル(Agilent)の形質転換に使用した。パルスの直後に、細菌を、37℃の5%(w/v)グルコース(Sigma)を含む750μlのSOC培地(Invitrogen)を含むキュベットから洗い流し、培養管に添加した。別の750μlのSOC/グルコースを使用して、残った細菌をキュベットから洗い流し、培養管に添加した。シェーカーインキュベーターで、220rpm、37℃で正確に1時間培養することによって細菌を回収した。形質転換細菌を、50μg/ml アンピシリンおよび5%(w/v)グルコース(Sigma)が添加された、200mlの2TY寒天(16g/l bacto−tryptone、10g/l bacto−yeast extract、5g/l NaCl、15g/l 寒天、pH7.0)を含む大きい240mmの正方形ペトリ皿(NUNC)にプレーティングした。1000分の1の希釈物および10,000分の1の希釈物を、同じ培地を含む15cmペトリ皿に計数目的でプレーティングした。この形質転換手順を連続20回繰り返し、完全なライブラリーを、合計10の大きな正方形のペトリ皿にプレーティングし、37℃の培養ストーブで一晩増殖させた。典型的には、1×10
7cfuが上記プロトコルを用いて得られた。細菌を優しく擦り取ってプレート当たり12mlの2TY培地に入れ、中間VL軽鎖ライブラリーをプレートから回収した。細胞集団をOD600測定によって決定し、500ODの2倍の細菌を、製造者の取扱説明書に従って2つのmaxiprepカラム(MN)を用いてmaxiプラスミドDNA調製物に使用した。
【0151】
VL可変領域と同様に、2回目のVH−JH産物を、最初に互いに混合して正常なJセグメント使用分布(表2を参照)を得て、PH1〜PH7と呼ばれる7つのVHサブプールにした。これらのプールを、表2に示されているパーセンテージで混合して正規化配列分布を得て、SfiIおよびXhoI制限酵素で消化し、上記のように得られたSfiI−XhoI cut PDV−VL中間ライブラリーでライゲーションして1つのVH断片を得た。ライゲーションの準備、精製方法、次のTG1の形質転換、および細菌の回収は、使用した240mmのプレートの数を除いて、VL中間ライブラリーについて上記の通りとした(上記を参照)。最終ライブラリーに20のプレートを使用した場合は、約2×10
7のcfuが得られた。最終ライブラリーを、挿入VH−VL領域(100〜150の単一コロニー)に隣接するプライマーセットを用いてコロニーPCRによりインサートの頻度をチェックした。典型的には、95%を超えるコロニーが、正確な長さのインサートを示した(表3を参照)。コロニーPCR産物を次のDNA配列の分析に使用して、配列変異体をチェックし、完全なORFを示すコロニーのパーセンテージを算定した。これは、典型的には70%を超えた(表3を参照)。V遺伝子の突然変異の頻度も分析した。配列の約95%が、天然のプロセスを示す生殖系列配置ではなく、ライブラリーのRNA源として使用されるB細胞の記憶表現型に一致した。最後に、ライブラリーを回収して、CTヘルパーファージ(国際公開第02/103012号パンフレット)を用いることによって増幅し、後述されるパニング法によるファージ抗体の選択に使用した。
【0152】
実施例2
B型インフルエンザに対する一本鎖Fv断片を有するファージの選択
B型インフルエンザ(B/オハイオ/01/2005、B/フロリダ/04/2006、およびB/ブリスベン/60/2008)の組換えヘマグルチニン(HA)に対する抗体ファージディスプレイライブラリーを用いて選択を行った。HA抗原をPBS(5.0μg/ml)で希釈し、管当たり2mlをMaxiSorp(商標)Nunc−Immuno Tubes(Nunc)に添加し、回転ホイール上で、4℃で一晩インキュベートした。イムノチューブを空にして、ブロックバッファー(PBS中2%非脂肪粉末乳(ELK))で3回洗浄した。次に、イムノチューブをブロックバッファーで完全に満たし、室温で1〜2時間インキュベートした。ファージディスプレイライブラリーのアリコート(350〜500μl、CTヘルパーファージを用いた増幅(国際公開第02/103012号パンフレットを参照))を、室温で1〜2時間、ブロッキングバッファー(任意選択で:10%非熱不活化ウシ胎児血清および2%マウス血清を添加)でブロックした。ブロックされたファージライブラリーをイムノチューブに添加し、室温で2時間インキュベートし、洗浄バッファー(PBS中0.05%(v/v)Tween−20)で洗浄して結合していないファージを除去した。結合したファージを、室温で10分間、1mlの100mM トリエチルアミン(TEA)と共にインキュベートすることによって各抗原から溶離した。次に、溶離したファージを0.5mlの1M Tris−HCl pH7.5と混合してpHを中和した。この混合物を使用して、約0.3のOD600nmまで37℃で増殖された5mlのXL1−Blue大腸菌(E.Coli)培地を感染させた。ファージにより、37℃で30分間、XL1−Blue細菌を感染させた。次いで、混合物を室温で、3000×gで10分間遠心分離し、細菌ペレットを0.5mlの2−trypton yeast extract(2TY)培地に再懸濁した。得られた細菌懸濁液を、テトラサイクリン、アンピシリン、およびグルコースが添加された2つの2TY寒天プレートに分けた。37℃のプレートで一晩インキュベートした後、コロニーをプレートから擦り取り、De Kruifら(1995a)および国際公開第02/103012号パンフレットに基本的に記載されているように濃縮ファージライブラリーの調製に使用した。簡単に述べると、擦り取った細菌を使用して、アンピシリン、テトラサイクリン、およびグルコースを含む2TY培地に接種し、約0.3のOD600になるまで37℃の温度で増殖させた。CTヘルパーファージを添加し、細菌に感染させ、次いで、培地を、アンピシリン、テトラサイクリン、およびカナマイシンを含む2TYに代えた。接種を、30℃で一晩続けた。翌日、細菌を2TY培地から遠心分離によって除去し、次いで、培地中のファージを、ポリエチレングリコール(PEG)6000/NaClを用いて沈殿させた。最後に、ファージを、1%ウシ血清アルブミン(BSA)が添加された2mlのPBSに溶解し、濾過滅菌し、次の回の選択に使用した。2回目の選択は、同じHA亜型または異なるHA亜型のいずれかで行った。
【0153】
個々の一本鎖ファージ抗体の単離の前に、2回続けて選択を行った。2回目の選択の後、個々の大腸菌(E.coli)コロニーを使用して、モノクローナルファージ抗体を調製した。基本的に、個々のコロニーを96ウェルプレート形式で対数増殖させ、VCS−M13ヘルパーファージで感染させ、次いで、ファージ抗体産物を一晩インキュベートした。ファージ抗体を含む上清を、HA抗原への結合についてのELISAで直接使用した。あるいは、ファージ抗体を、PEG/NaCl沈殿させ、ELISAおよびフローサイトメトリー分析(通常は、ELISAで陽性のクローンで行われる)の両方のために濾過滅菌した。
【0154】
実施例3
HA特異的一本鎖ファージ抗体の検証
上記のスクリーニングで得られた一本鎖ファージ抗体を含む選択された上清を、特異性、即ち、異なるHA抗原に対する結合についてELISAで検証した。このために、バキュロウイルス発現組換えB型インフルエンザHA(B/オハイオ/01/2005、B/マレーシア/2506/2004、B/吉林/20/2003、B/ブリスベン/60/2008、およびB/フロリダ/04/2006)(Protein Sciences、CT、USA)を、Maxisorp(商標)ELISAプレートにコーティングした(0.5μg/ml)。コーティング後、プレートを、0.1% v/v Tween−20を含むPBSで3回洗浄し、2%ELKを含むPBSで、室温で1時間ブロックした。選択された一本鎖ファージ抗体を、4%ELKを含む等量のPBSで1時間インキュベートしてブロックされたファージ抗体を得た。プレートを空にして、PBS/0.1%Tween−20で洗浄し、ブロックされた一本鎖ファージ抗体をウェルに添加した。1時間インキュベートし;プレートをPBS/0.1%Tween−20で5回洗浄した。結合したファージ抗体を、ペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗−M13抗体を用いて検出した(OD492nm測定を用いて)。対照として、この手順を、一本鎖ファージ抗体を用いずに、無関係の陰性対照一本鎖ファージ抗体を用いて同時に行った。
【0155】
免疫ライブラリーを用いた異なるHA抗原に対する選択から、山形様およびビクトリア様B型インフルエンザHAの両方に対して特異的な14のユニークな一本鎖ファージ抗体を得た(sc08−031、sc08−032、sc08−033、sc08−034、sc08−035、sc08−059、sc10−023、sc10−032、sc10−049、sc10−051、sc11−035、sc11−036、sc11−038、およびsc11−039)。表4を参照されたい。
【0156】
これらの14のファージ抗体を、さらなる特徴付けのための完全なヒト免疫グロブリンの構築に使用した(実施例4を参照)。
【0157】
実施例4
選択された一本鎖Fvsからの完全なヒト免疫グロブリン分子(ヒトモノクローナル抗体)の構築
選択された特異的な一本鎖ファージ抗体(scFv)クローンからプラスミドDNAを得て、ヌクレオチド配列を、標準的な配列決定技術を用いて決定した。scFvのVHおよびVL遺伝子の特性を、IMGT/V−QUESTの検索ページ(Brochetら(2008))で決定した(表5を参照)。
【0158】
scFvの重鎖可変領域(VH)を、同じ酵素で消化されたIgG発現ベクターpIg−C911−HCgamma1での発現のために制限消化(SfiI/XhoI)によってクローニングした。軽鎖可変領域(VL)も、国際公開第2008/028946号パンフレットに既に記載されているように、インサート断片用のSalI/NotIおよび標的ベクター用のXhoI/NotIを用いて、そのIgG指定発現ベクターpIG−C909−Ckappa、またはpIg−C910−Clambdaにクローニングした。
【0159】
抗体(CR8059)の1つにおける潜在的な脱アミド化部位を除去するために、単一アミノ酸変異抗体(CR8071)をアセンブリPCRによって作製した。それぞれが所望の変異を含む2つの重複PCR断片を作製した。これらの断片を等モル比で混合し、これらの断片が2回目のPCRの鋳型として機能し、完全長LC配列を得た。全ての構築物のヌクレオチド配列を、標準的な配列決定技術を用いて検証した。ヒトIgG1重鎖および軽鎖をコードする得られた発現構築物を、HEK293T細胞で一緒に一時的に発現させた。1週間後、ヒトIgG1抗体を含む上清を得て、標準的な精製手順で処理した。ヒトIgG1抗体を、B型インフルエンザHA抗原に対して10〜0.003μg/mlの濃度範囲で滴定した(データは不図示)。無関係の抗体を対照抗体として含めた。
【0160】
選択された免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の両方のCDRのアミノ酸配列が表5に示されている。重鎖および軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列が以下に示される。
【0161】
実施例5
抗B型インフルエンザIgGの交差結合反応性
選択された抗B型インフルエンザ抗体を用いて、FACS分析によって結合の幅を検査した。このために、HAをコードする完全長組換えB型インフルエンザ発現ベクター(B/ミシシッピ/04/2008、B/ヒューストン/B60/1997、B/ナッシュビル/45/1991、B/フロリダ/01/2009、B/ミシシッピ/07/2008、およびB/オハイオ/01/2005)を、リポフェクタミン(Invitrogen)を用いて1対5の比でPER.C6(登録商標)細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後に、表面でB型インフルエンザHAを発現するPER.C6(登録商標)細胞をFACS(CantoII、BD bioscience)によって分析した。これに関して、細胞を、IgG抗体と共に1時間インキュベートし、次いで、0.1%BSAを含むPBSで連続して3回の洗浄ステップを行った。結合した抗体を、同様に1時間インキュベートしたPE−コンジュゲート二次抗ヒト抗体を用いて検出した。陰性対照として、非トランスフェクトPER.C6(登録商標)細胞を使用し、二次抗体と共にインキュベートした。FACSの結果は、B型インフルエンザ結合抗体CR8033、CR8059、CR8071、CR10032、およびCR10051が、6つ全ての検査したB型インフルエンザHAに結合することを示した(表6)。
【0162】
実施例6
交差反応性抗B型インフルエンザのIgGのHAへの結合の競合
上記の抗B型インフルエンザIgG抗体を、B型インフルエンザHAのエピトープに対する競合について検証した。これに関して、B/ブリスベン/60/2008、B/フロリダ/04/2006、およびB/吉林/20/2003を、EZ−link Sulpho−NHS−LC−LC−ビオチンキット(Pierce)を用いてビオチンで標識した。1μlの10mM ビオチン溶液を、ビオチンの6倍過剰のモル濃度である110μgの組換えHAに添加し、室温で30〜40分間インキュベートした。取り込まれなかった遊離ビオチンを、Amicon Ultra遠心分離フィルター(0.5ml、10K Ultracel−10K膜;Millipore、cat#:UFC501096)を用いて除去した。これに関して、サンプル(300μl)をカラムに添加し、Eppendorf卓上遠心分離機(20800rcf)で、14000RPMで10分間回転させた。流動トラフを廃棄して、0.4mlのDPBSバッファーをカラムに添加し、再び回転させた。このステップを2回繰り返した。標識サンプルを、カラムを裏返して新たな収集管に入れることによって回収し;次いで、200μlのDPBSを添加し、卓上遠心分離機で、1000rpmで1分間回転させた。Nanodrop ND−1000装置(Thermo Scientific)を用いてHA濃度を測定した。
【0163】
実際の競合実験を、室温で動態バッファーで事前に30分間湿潤されたストレプトアビジン被覆バイオセンサ(ForteBio、cat# 18−5019)を用いて表7の設定に従ってOctet−QK bio−layer干渉計(ForteBio)で行った。二次抗体が、一次抗体の存在下でB型インフルエンザHAに結合できる場合は、非競合と見なした(表8を参照)。対照として、幹結合抗体CR9114(同時係属の欧州特許出願第11173953.8号明細書に記載されている)および非結合抗体CR8057(国際公開第2010/130636号パンフレットに記載されている)を使用した。
【0164】
抗体CR10023およびCR10049は、CR8033と結合を競合する。抗体CR10032およびCR10051は、CR8059と結合を競合する。抗体CR10049は、CR10032と結合を競合する。試験した抗体はいずれも、幹結合抗体CR9114と競合しない。これらの結果は、B型インフルエンザHAに少なくとも3〜4の異なるエピトープが存在することを示している(
図1)。
【0165】
実施例7
IgGの交差中和活性
選択されたIgGが、多数のB型インフルエンザ株をブロックできたかを決定するために、in vitroウイルス中和アッセイ(VNA)を行った。VNAは、MDCK細胞培地(10%(v/v)ウシ胎児血清が添加された、20mM Hepesおよび0.15%(w/v)重炭酸ナトリウムが添加されたMEM培地(完全MEM培地))で培養されたMDCK細胞(ATCC CCL−34)に対して行った。アッセイに使用したB型インフルエンザ山形様(B/ハルピン/7/1994およびB/フロリダ/04/2006)株およびB型インフルエンザビクトリア様(B/マレーシア/2506/2004およびB/ブリスベン/60/2008)株を全て、5.7×10
3 TCID50/ml(1ml当たり50%組織培養感染用量)の力価に希釈した。この力価は、Spearman−Karber法によって計算した。IgG調製物(100μg/ml)を、4連のウェル内の完全MEM培地で段階2倍希釈した(1:2〜1:512)。50μlの各IgG希釈液を50μlのウイルス懸濁液(100 TCID50/35μl)と混合して、37℃で1時間インキュベートした。次いで、この懸濁液を、100μlの完全MEM培地中にコンフルエントなMDCK培養物を含む96ウェルプレートに4連で移した。使用の前に、MDCK細胞を、MDCK細胞培地に1ウェル当たり2×10
4の細胞で播種し、細胞がコンフルエントになるまで増殖させ、300〜350μlのPBS、pH7.4で洗浄し、最後に100μlの完全MEM培地を各ウェルに添加した。接種された細胞を37℃で3〜4日間培養し、細胞変性効果(CPE)の発生について毎日観察した。CPEを陽性対照と比較した。
【0166】
CR8032、CR8033、CR8034、CR8035、CR8059、CR8071、CR10023、CR10032、CR10049、CR10051、CR11035、CR11036、CR11038、およびCR11039が全て、山形様およびビクトリア様B型インフルエンザウイルス株の両方の代表的な株に対して交差中和活性を示した。表9を参照されたい。
【0167】
実施例8
IgGの受容体結合ブロック活性
選択されたIgGが、受容体に媒介されるB型インフルエンザ株の宿主細胞への結合をブロックすることができるか否かを決定するために、ヘマグルチニン阻害(HI)アッセイを行った。B型インフルエンザ山形様(B/ハルピン/7/1994およびB/フロリダ/04/2006)およびビクトリア様(B/マレーシア/2506/2004およびB/ブリスベン/60/2008)ウイルス株を、HAUアッセイで決定される8HA単位まで希釈し、等量の段階希釈IgGと混合し、室温で1時間インキュベートした。等量の0.5%七面鳥血球(TRBC)をウェルに添加し、30分間インキュベーションを続けた。ボタンの形成を、赤血球凝集の証拠として記録した。
【0168】
CR8059、CR8071、CR10032、CR10051、およびCR11036は、試験したB型インフルエンザウイルス株のいずれに対してもHI活性を示さず(CR11036が10μg/ml未満、他の抗体が50μg/ml未満)、これらが、受容体結合をブロックしないことを示している。抗体CR8033およびCR10023は、山形様B型インフルエンザウイルス株の代表的な株に対してのみHI活性を示し、ビクトリア様B型インフルエンザウイルス株に対してHI活性を示さない。抗体CR11035は、ビクトリア様B型インフルエンザウイルス株の代表的な株に対してのみHI活性を示し、山形様B型インフルエンザウイルス株に対してはHI活性を示さない。抗体CR10049、CR11038、およびCR11039は、山形様およびビクトリア様B型インフルエンザウイルス株の両方の代表的な株に対してHI活性を示す。表10を参照されたい。
【0169】
あるいは、免疫蛍光侵入アッセイを、所与の抗体が受容体の結合およびウイルスの取り込みをブロックする能力を分析するようにデザインした。従って、ウイルスを、段階2倍希釈ステップで抗体と共に2〜3時間プレインキュベートしてから、96ウェル皿の感染培地(DMEM+200mM グルタミン)にプレーティングされたMDCK細胞のコンフルエントな単層に添加した。次に、接種材料を除去して、示された濃度の抗体に代えて、37℃、5%CO2で16〜18時間インキュベートした。次いで、上清を除去し、プレートを、マウスモノクローナル抗NP一次抗体(Santa Cruz、sc−52027)およびAlexa488結合抗マウス二次抗体(Invitrogen A11017)を用いて感染細胞を標識し、続く細胞核のDAPI標識によって後の免疫蛍光検出のために80%アセトンで固定した(
図2aを参照)。HIアッセイから分かるように、抗体CR8033は、山形様ウイルスB/フロリダ/04/2006のウイルス侵入は特異的にブロックしたが、ビクトリア様ウイルスB/マレーシア/2506/2004のウイルス侵入はブロックしなかった。抗体CR8059は、試験したB型インフルエンザウイルスの侵入をブロックしなかった。次に、一部のプレートを、BD Pathway 855 bioimagerを用いて分析した。侵入の阻害のレベルを評価するために、定義された背景よりも高い所与のウェル当たりの蛍光強度および感染細胞(DAPI染色を用いて細胞を決定)の量を、BD Pathway画像分析ツールを用いて分析した。非結合対照抗体で処置した感染細胞と比較した、示された希釈の抗体で処置された感染細胞のパーセンテージが
図2bに示されている。
【0170】
実施例9
抗HA IgGの放出阻害
抗体の動作の機序を調べるために、放出アッセイを、抗体処置条件下で感染の18時間後に上清に放出されたウイルス粒子の量を分析するようにデザインした。このような上清のゲル電気泳動法およびこれに続くウェスタンブロット後の抗HAシグナルの検出(または非存在)は、放出されたウイルス粒子の存在(または非存在)を示すとみなされる。
【0171】
実験の4時間前に、1ウェル当たり40,000のMDCK細胞を96ウェルプレートのDMEM/グルタミンに播種した。90〜100%の感染を達成するために必要なウイルスの量を、別の実験で滴定した。必要な量のウイルスを細胞に添加し、37℃、5%CO2でインキュベートした。3時間後、上清を除去し、細胞を、PBSで3回洗浄して、取り込まれなかったウイルス粒子を除去した。細胞に、mAbを含む感染培地を補充した(20μg/mlで段階希釈を開始)。37℃、5%CO2で16〜18時間後、上清を回収し、残った細胞を溶解した(Tris−HCl pH7.5、150mM NaCl、5mM EDTA、1%(v/v)Triton−X)。サンプルをSDS−PAGE/ウェスタンブロットにかけて、ウサギポリクローナル抗HA染色(Protein Sciences)およびこれに続くHRP結合抗ウサギF(ab’)2−断片(Jackson Immuno Research Laboratories、111−036−047)を用いたWBの開発によって測定される、上清に放出されたビリオンの量を分析した。
図3に示されているように、抗体CR8033およびCR8059の両方が、濃度依存的にウイルス粒子の放出を阻害する。さらなる実験は、少なくともCR8071およびCR10051もウイルス粒子の放出を阻害することを示している。
【0172】
細胞の適切な感染を、同一に処置されたウェルを80%アセトンで固定することによってチェックした。感染の量を、マウスモノクローナル抗NP一次抗体(Santa Cruz、sc−52027)およびAlexa488結合抗マウス二次抗体(Invitrogen A11017)を用いる免疫蛍光標識で算定した。次に、プレートを、BD Pathway 855 bioimagerを用いて分析した(結果は不図示)。
【0173】
実施例10
B型インフルエンザ感染細胞の走査型電子顕微鏡法
MDCK細胞を、実験の1日前にガラスカバースリップに播種した。翌日、細胞を異なる量のウイルスで感染させて、感染の18時間後に90〜100%の感染細胞を生じさせる量を決定した。最初の感染から3時間後に、上清を除去し;細胞をPBSで3回洗浄してから、示された濃度の抗体を含む培地を添加した。さらに15〜18時間が経過したら、細胞培地を除去し、細胞を2.5%グルタルアルデヒドバッファーに固定し、次の分析まで4℃で保存した。サンプルを、グルタルアルデヒド(GA)および/または四酸化オスミウム(OsO4)を用いてさらに化学的に固定した。SEMイメージングの前に、標本をアセトン脱水し、臨界点乾燥を行った。最後に、細胞を、アルミナスタブ(alumina stub)に取り付けて、炭素の薄層で被覆し、Zeiss Ultra 55 SEM顕微鏡で検査した。
【0174】
B型インフルエンザ感染MDCK細胞の表面が、非感染対照(
図4a)とは異なり、電子密度の高い球形粒子(
図4b)で覆われた。抗体CR8059とのインキュベーションは、これらの球体粒子の形成を妨げないが(
図4c)、抗体CR8033とのインキュベーションは、粒子の形成を大幅に減少させる(
図4d)。CR8059と共にインキュベートされた細胞とは対照的に、出芽ビリオンは、CR8033と共にインキュベートされた細胞では容易に検出することができない(
図4eおよび
図4f)。
【0175】
実施例11
in vivoでの致死性B型インフルエンザ暴露に対するヒトIgGモノクローナル抗体の予防活性
in vivoでの2種類のB型インフルエンザウイルスを用いた致死性暴露に対するモノクローナル抗体CR8033およびCR8071の予防効果を検査するために研究を行った。mAb CR8033およびCR8071を、マウス用に適合されたインフルエンザB/フロリダ/04/2006ウイルスを用いたマウス致死性暴露モデルでの予防効果について試験した。B/フロリダ/04/2006ウイルスは、5回の肺−肺通過後にマウスに適合した。マウス適合B型インフルエンザ5回通過ウイルスを、孵化鶏卵で増殖させた。実験開始前に少なくとも4日間、全てのマウス(Balb/c、雌、6〜8週齢、1群当たりn=8)を順応させて維持した。マウス1匹当たりの平均体重を18g、固定投与量を0.2mlと仮定して、0.06mg/kg、0.2mg/kg、0.6mg/kg、1.7mg/kg、および5mg/kgのmAb CR8033およびCR8071を、暴露の1日前に尾静脈(尾骨静脈)に注射した。対照群を、ビヒクル対照群と共に投与した。次いで、マウスを、0日目に、鼻腔内接種により25LD
50マウス適合B/フロリダ/04/2006 B型インフルエンザウイルスに暴露した。
図5は、mAb投与後のマウスの生存率を示している。CR8033が0.2mg/kg、CR8071が0.6mg/kgの低用量で投与されたマウスは、ビヒクル処置対照動物よりも有意に高い生存率を示した。
【0176】
あるいは、mAb CR8033およびCR8071を、マウス用に適合されたインフルエンザB/マレーシア/2506/2004ウイルスを用いたマウス致死性暴露モデルでの予防効果について試験した。B/マレーシア/2506/2004ウイルスは、4回の肺−肺通過後にマウスに適合した。マウス適合B型インフルエンザ4回通過ウイルスを、孵化鶏卵で増殖させた。実験開始前に少なくとも4日間、全てのマウス(Balb/c、雌、6〜8週齢、1群当たりn=8)を順応させて維持した。マウス1匹の平均体重を18g、固定投与量を0.2mlと仮定して、0.06mg/kg、0.2mg/kg、0.6mg/kg、1.7mg/kg、および5mg/kgのmAb CR8033およびCR8071を、暴露の1日前に尾静脈(尾骨静脈)に注射した。対照群を、ビヒクル対照群と共に投与した。次いで、マウスを、0日目に、鼻腔内接種により25LD
50マウス適合B/マレーシア/2506/2004 B型インフルエンザウイルスに暴露した。
図5は、mAb投与後のマウスの生存率を示している。CR8033が0.2mg/kg、CR8071が0.6mg/kgの低用量で投与されたマウスは、ビヒクル処置対照動物よりも有意に高い生存率を示した。
【0177】
これらの結果は、本明細書に開示されるように同定され、開発されたヒト抗インフルエンザ抗体CR8033およびCR8071が、感染の1日前にそれぞれ0.2mg/kgまたは0.6mg/kg以上の用量で投与された場合に、B/山形系統および/またはB/ビクトリア系統の両方の致死量のB型インフルエンザウイルスに対してin vivoで防御できることを示している。
【0178】
【表1-1】
【0179】
【表1-2】
【0180】
【表1-3】
【0181】
【表2-1】
【0182】
【表2-2】
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【0185】
【表5A】
【0186】
【表5B】
【0187】
【表6】
【0188】
【表7】
【0189】
【表8】
【0190】
【表9】
【0191】
【表10】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【化61】
【化62】
【化63】
【化64】
【0192】
参考文献
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De Kruif J et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:3938(1995)
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Wrammert et al.,Nature 453:667−672(2008)
本願発明は以下の態様を包含し得る。
[1] B/山形系統およびB/ビクトリア系統のB型インフルエンザウイルス株のヘマグルチニンタンパク質(HA)に特異的に結合することができ、かつ前記B/山形系統および前記B/ビクトリア系統の前記B型インフルエンザウイルス株を中和することができ、A型インフルエンザウイルスのHAに結合しない結合分子。
[2] 前記B型インフルエンザウイルスの前記HAタンパク質の球状部領域、特に前記B型インフルエンザウイルスのHA1の球状部領域に結合する、上記[1]に記載の結合分子。
[3] 配列番号71に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、上記[1]または[2]に記載の結合分子。
[4] 配列番号73に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[3]に記載の結合分子。
[5] 配列番号71のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号73のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[3]または[4]に記載の結合分子。
[6] 配列番号75に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、上記[1]または[2]に記載の結合分子。
[7] 配列番号77に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[6]に記載の結合分子。
[8] 配列番号75のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号77のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[6]または[7]に記載の結合分子。
[9] 配列番号78のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号79のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[6]または[7]に記載の結合分子。
[10] 配列番号113に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、上記[1]または[2]に記載の結合分子。
[11] 配列番号115に示されているアミノ酸配列、あるいは少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%以上または少なくとも約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[10]に記載の結合分子。
[12] 配列番号113のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域および配列番号115のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、上記[10]または[11]に記載の結合分子。
[13] B型インフルエンザウイルスHAタンパク質のエピトープへの結合を、上記[1]〜[12]のいずれか1項に記載の結合分子と免疫特異的に競合する結合分子。
[14] B型インフルエンザウイルスの感染細胞からの放出を阻害する、上記[1]〜[13]のいずれか1項に記載の結合分子。
[15] ヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である、上記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の結合分子。
[16] 上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの結合分子、および少なくとも1つのタグを含む免疫コンジュゲート。
[17] 上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の結合分子をコードする核酸分子。
[18] 薬剤として使用される、好ましくは、B型インフルエンザウイルスによって引き起こされるインフルエンザ感染の診断、予防、および/または治療に使用される上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の結合分子、上記[16]に記載の免疫コンジュゲート、および/または上記[17]に記載の核酸分子。
[19] 上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の結合分子の機能的変異体。
[20] 上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の結合分子、および/または上記[16]に記載の免疫コンジュゲート、および薬学的に許容され得る担体もしくは賦形剤を含む医薬組成物。
[21] B型インフルエンザウイルス感染を検出する方法であって、
(a)上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の結合分子および/または上記[16]に記載の免疫コンジュゲートを用いて生物学的サンプル中のB型インフルエンザウイルス抗原のレベルをアッセイするステップと、
(b)前記B型インフルエンザウイルス抗原のアッセイしたレベルを対照のレベルと比較し、B型インフルエンザウイルス抗原の前記アッセイしたレベルが、前記B型インフルエンザウイルス抗原の前記対照のレベルよりも高い場合は、B型インフルエンザウイルス感染を示すステップと、を含む、方法。