特許第6328069号(P6328069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328069
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】ロープ駆動式進退ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20180514BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20180514BHJP
   F16H 19/02 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   F16H25/24 B
   F16H25/20 Z
   F16H19/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-64408(P2015-64408)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183733(P2016-183733A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】507418692
【氏名又は名称】トヨフレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近野 一郎
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−17292(JP,A)
【文献】 実開昭58−51658(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第0684407(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/24
F16H 19/02
F16H 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ部が設けられた円柱状基体と、
前記円柱状基体のねじ部に螺合したねじ部を内周面に備え、かつ外周面にロープ巻回用溝が螺旋状に設けられ、前記円柱状基体の軸心と同軸上に配置された円筒状中空体と、
一端が前記円筒状中空体に固定され、前記円筒状中空体のロープ巻回用溝に沿って巻き付けられた第一の駆動用ロープと、
一端が前記円筒状中空体に固定され、巻き付け方向が前記第一の駆動用ロープと逆になるように前記円筒状中空体のロープ巻回用溝に沿って巻き付けられた第二の駆動用ロープと、を備え、
前記第一の駆動用ロープ及び前記第二の駆動用ロープのうちいずれか一方の駆動用ロープの他端が引張されて当該駆動用ロープのみがロープ巻回用溝から引き出されることに伴い、前記円筒状中空体が、前記円柱状基体の軸心を中心に正回転しつつ前記円柱状基体の軸心方向に沿って一方向へ移動し、
いずれか他方の駆動用ロープの他端が引張されて当該駆動用ロープのみがロープ巻回用溝から引き出されることに伴い、前記円筒状中空体が、前記軸心を中心に逆回転しつつ前記軸心方向に沿って他方向へ移動する
ことを特徴とするロープ駆動式進退ユニット。
【請求項2】
前記円筒状中空体における前記ねじ部のピッチと前記ロープ巻回用溝のピッチとが同じである
請求項1に記載のロープ駆動式進退ユニット。
【請求項3】
前記円筒状中空体を移動自在に覆った、前記円柱状基体に固定されている筐体をさらに備え、
前記筐体は、前記筐体の側壁を貫通する第一の貫通穴と第二の貫通穴とを有し、
前記第一の貫通穴は、前記第一の駆動用ロープが前記ロープ巻回用溝から離れる位置に対向して設けられ、
前記第二の貫通穴は、前記第二の駆動用ロープが前記ロープ巻回用溝から離れる位置に対向して設けられ、
前記第一の貫通穴を介して前記第一の駆動用ロープの他端が筐体の外に差し出され、前記第二の貫通穴を介して前記第二の駆動用ロープの他端が筐体の外に差し出されている
請求項2に記載のロープ駆動式進退ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープを用いて所要部材を進退移動させるロープ駆動式進退ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、遠隔操作式排水弁装置が開示されている。さらに詳述すると、かかる構成は、自身の昇降により排水口の開閉を行う弁体と、弁体を開閉するために操作する操作部と、操作部から弁体まで連絡するレリースワイヤと、弁体の下面中心に垂下して構成される弁軸と、弁体の内周面に設けられた雌ねじと、弁軸内部に配置され雌ねじと螺合する雄ねじと、雄ねじの下端に接続されて弁軸に対して水平方向に配置される丸歯車状のピニオンと、レリースワイヤに設けられた平ギア状のラックと、からなる。
【0003】
上記構成にあっては、レリースワイヤを構成するインナーワイヤが押し引きされることで平ギア状のラックが丸歯車状のピニオンを回転させ、ピニオンから雄ねじを介して弁軸の雌ねじへと回転が伝達され、弁体が昇降される。
【0004】
また、例えば特許文献2には、自動車用パワーステアリング装置が開示されている。さらに詳述すると、かかる構成は、ハンドル側ドラムと舵取側ドラムに巻き付けられた2本のインナケーブルを備え、2本のインナケーブルの巻き付け方向が逆となるように各ドラムにインナケーブルの端末が固定されている。
【0005】
そして上記構成にあっては、ハンドルを一方向に回転すると、インナケーブルが繰り出されて舵取側ドラムが一方向へ回転する。また、ハンドルを逆方向に回転すると同様に舵取側ドラムが逆方向へ回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−284994号公報
【特許文献2】特開平11−29059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の遠隔操作式排水弁装置にあっては、インナーワイヤを押す操作が含まれるため、インナーワイヤは操作中に座屈しない程度の剛性が要求される。したがって、インナーワイヤを備えるレリースワイヤは自由に屈曲させたり湾曲させたりすることができなくなり、設計の自由度が著しく低下するという問題がある。また、平ギア状のラックが丸歯車状のピニオンを回転させる構成のため、ピニオンの回転量を多くしようとするとラックの長さが過剰に大きくなりすぎてしまい、装置全体が大型化してしまう問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2の自動車用パワーステアリング装置にあっては、インナケーブルを巻き取ることによってドラムが回転するため、ドラムを軸方向には移動させることができないという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、操作時の作業負担が軽減され、またコンパクトな構造を確保しつつ精度良く所要部材を進退移動させることができるロープ駆動式進退ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるロープ駆動式進退ユニットは、外周面にねじ部が設けられた円柱状基体と、前記円柱状基体のねじ部に螺合したねじ部を内周面に備え、かつ外周面にロープ巻回用溝が螺旋状に設けられ、前記円柱状基体の軸心と同軸上に配置された円筒状中空体と、一端が前記円筒状中空体に固定され、前記円筒状中空体のロープ巻回用溝に沿って巻き付けられた第一の駆動用ロープと、一端が前記円筒状中空体に固定され、巻き付け方向が前記第一の駆動用ロープと逆になるように前記円筒状中空体のロープ巻回用溝に沿って巻き付けられた第二の駆動用ロープと、を備え、前記第一の駆動用ロープ及び前記第二の駆動用ロープのうちいずれか一方の駆動用ロープの他端が引張されて当該駆動用ロープのみがロープ巻回用溝から引き出されることに伴い、前記円筒状中空体が、前記円柱状基体の軸心を中心に正回転しつつ前記円柱状基体の軸心方向に沿って一方向へ移動し、いずれか他方の駆動用ロープの他端が引張されて当該駆動用ロープのみがロープ巻回用溝から引き出されることに伴い、前記円筒状中空体が、前記軸心を中心に逆回転しつつ前記軸心方向に沿って他方向へ移動することを特徴とする。
【0011】
かかる構成にあっては、前記第一の駆動用ロープ又は前記第二の駆動用ロープのうちいずれか一方の駆動用ロープを前記円筒状中空体のロープ巻回用溝から引き出し始めると、円筒状中空体が円柱状基体の軸心回りに正方向に回動し始めると共に、他方の駆動用ロープがロープ巻回用溝に巻き込まれ始め、かつ、前記円筒状中空体が円柱状基体の軸心方向に沿って一方に移動開始する。逆に、他方の駆動用ロープを前記ロープ巻回用溝から引き出し始めると、円筒状中空体が円柱状基体の軸心回りに逆方向に回動し始めると共に、一方の駆動用ロープがロープ巻回用溝に巻き込まれ始め、かつ、前記円筒状中空体が円柱状基体の軸心方向に沿って逆方向に移動開始する。したがって、このような円筒状中空体の進退移動を、ロープの引き出し操作のみで実現することができる。さらに、第一の駆動用ロープと第二の駆動用ロープとの巻き付け量を調整することで、円筒状中空体の可動域を自在に変更することができる。また、第一の駆動用ロープ又は第二の駆動用ロープの引き出し量を微調整することで、円筒状中空体の進退移動量を精度良く制御することもできる。
【0012】
加えて、上記構成にあっては、円筒状中空体と円柱状基体とが螺合している構造であるため、円筒状中空体が可動域の中途に位置した静止状態で仮に衝撃が軸心方向に付与された場合にも、かかる螺合構造の特性により、円筒状中空体は円柱状基体に対して軸心方向に位置ずれを起こし難い。したがって、上記構成は、円筒状中空体を所要位置に保持する位置決め効果が非常に高い構造を有している。
【0013】
さらにまた、駆動用ロープは巻回自在とするような可撓性を十分に備えるものが使用できるため、ユニット全体として設計の自由度が高くなり、シンプルでコンパクトな構造とすることができる。
【0014】
上記構成にあっては、前記円筒状中空体における前記ねじ部のピッチと前記ロープ巻回用溝のピッチとが同じであることが望ましい。
【0015】
かかる構成とすることにより、円筒状中空体を進退させたときに各駆動用ロープがロープ巻回用溝から離れる位置を、円柱状基体に対して移動しない構成とすることができる。これにより、円筒状中空体の進退動作に関わらず、各駆動用ロープの引き出し位置を所要位置に固定させることが可能となる。
【0016】
なお、前記ねじ部のピッチとは、前記円筒状中空体の軸心方向に繰り返し現れるねじ溝の間隔である。また、前記ロープ巻回用溝のピッチとは、同様に円筒状中空体の軸心方向に繰り返し現れるロープ巻回用溝の間隔である。
【0017】
さらに、前記円筒状中空体を移動自在に覆った、前記円柱状基体に固定されている筐体をさらに備え、前記筐体は、前記筐体の側壁を貫通する第一の貫通穴と第二の貫通穴とを有し、前記第一の貫通穴は、前記第一の駆動用ロープが前記ロープ巻回用溝から離れる位置に対向して設けられ、前記第二の貫通穴は、前記第二の駆動用ロープが前記ロープ巻回用溝から離れる位置に対向して設けられ、前記第一の貫通穴を介して前記第一の駆動用ロープの他端が筐体の外に差し出され、前記第二の貫通穴を介して前記第二の駆動用ロープの他端が筐体の外に差し出されている構成としてもよい。
【0018】
かかる構成にあっては、駆動用ロープが引き出される位置が、前記円柱状基体を基準にして位置固定されて移動しないため、ロープ巻回用溝から引き出される駆動用ロープの引出方向を、常時、円筒状中空体の軸線に対して垂直とすることが可能となる。したがって、仮に筐体の外部において駆動用ロープを任意の方向で引っ張る操作を行っても、ロープ巻回用溝における駆動用ロープの引出方向が一定の角度で保たれるため、各駆動用ロープをロープ巻回用溝から安定かつ円滑に引き出すことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のロープ駆動式進退ユニットは、駆動用ロープの引き出し操作のみで円筒状中空体を進退移動させることができ、また円筒状中空体を精度良く円滑に進退移動可能であり、衝撃等の外力に対して耐性が高く、コンパクトな構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例にかかるロープ駆動式進退ユニットを一部切欠して示す一部切欠斜視図である。
図2】実施例にかかるロープ駆動式進退ユニットにおける進出状態を示す断面図である。
図3】実施例にかかるロープ駆動式進退ユニットにおける退避状態を示す断面図である。
図4】実施例にかかる円柱状基体と円筒状中空体との螺合部分を示す部分拡大図である。
図5】実施例にかかるロープ駆動式進退ユニットを窓の開閉ユニットに適用した概要説明図であり、(a)は窓を閉めた状態、(b)は窓を開けた状態を示す。
図6】他の実施例にかかるロープ駆動式進退ユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のロープ駆動式進退ユニットを具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0022】
図1図2に示すように、ロープ駆動式進退ユニット1aは、所定の基台(図示省略)に固定される円柱状基体10と、前記円柱状基体10に対して進退移動する円筒状中空体20と、前記円筒状中空体20を進退移動自在に覆う筐体30と、を備えている。なお、ロープ駆動式進退ユニット1aを説明するに際し、円筒状中空体20が円柱状基体10に対して進出する方向を先端方向とし、退避する方向を基端方向として説明することとする。
【0023】
図2に示すように、前記円柱状基体10は、径大な円板状の基部11と、基部11の一側の表面から先端方向に沿って立ち上がるように延設された円柱状の芯部12とを具備している。また、前記芯部12の外周面には、円柱状基体10の軸心を中心にして形成された第一ねじ部13が螺旋状に設けられている。
【0024】
また、図2に示すように、前記円筒状中空体20は、前記円柱状基体10を被覆するように円柱状基体10の外側に取り付けられている。具体的には、前記円筒状中空体20の軸心と前記円柱状基体10の軸心とが同軸上となるように円筒状中空体20内に円柱状基体10が内嵌されている。
【0025】
さらに詳述すると、前記円筒状中空体20は、先端のみ閉塞された円筒形状の筒部21と、前記筒部21の先端に形成された閉塞部22から先端方向に突き出された段部22aと、さらに前記段部22aから先端方向に延設された杆状のピストン部23と、を備えている。また、前記筒部21の内周面には、前記した円柱状基体10の第一ねじ部13に螺合する第二ねじ部24が設けられている。
【0026】
また、前記円筒状中空体20における前記筒部21の外周面には、ロープ巻回用溝25が、筒部21の軸心を中心にして螺旋状に設けられている。さらに、前記筒部21の略中央には、前記ロープ巻回用溝25よりも深く切り欠かれた切欠部26が周方向に沿って設けられ、前記切欠部26内に、ブロック形状の部材からなるロープ固定部27が取り付けられている。
【0027】
そして、前記ロープ固定部27には、第一駆動用ロープ(第一の駆動用ロープ)41の一端と、第二駆動用ロープ(第二の駆動用ロープ)42の一端とがそれぞれ固定されている。さらに、前記第一駆動用ロープ41は、前記ロープ巻回用溝25に沿って巻き付けられている。これと共に、前記第二駆動用ロープ42は、巻き付け方向が前記第一駆動用ロープ41と逆になるように前記ロープ巻回用溝25に沿って巻き付けられている。
【0028】
さらに、図1から図3に示すように、前記円筒状中空体20における筒部21における先端側の端面と基端側の端面とには、前記円柱状基体10に向かって突出した凸状のストッパー28,28がそれぞれ設けられている。
【0029】
ここで、図4に示すように、前記円筒状中空体20における軸心に沿った第二ねじ部24のピッチP1と、前記円筒状中空体20におけるロープ巻回用溝25のピッチP2とが、等しくなるように設定されている。勿論、前記第二ねじ部24と螺合する前記円柱状基体10の第一ねじ部13のピッチも等しくなるように設定されている。
【0030】
さらに、図1等に示すように、前記筐体30は、筒状の本体筒部31と、本体筒部31の基端を閉塞する基部32と、本体筒部31の先端を閉塞する先端部33とを備えている。
【0031】
なお、図2に示すように、前記基部32の中央には、前記円柱状基体10の芯部12と同径の基部側貫通穴34が設けられており、基部側貫通穴34に円柱状基体10が外側から挿通され、かつ、円柱状基体10の基部11が基部側貫通穴34の周縁部に突き当てられて筐体30が円柱状基体10に固定されている。
【0032】
一方、前記先端部33の中央には、先端部側貫通穴35が設けられており、前記円筒状中空体20におけるピストン部23が先端部側貫通穴35を介して先端方向に向かって突き出されている。
【0033】
さらに、図1等に示すように、前記本体筒部31の側壁には、第一駆動用ロープ41の他端が本体筒部31内から挿通される第一貫通穴(第一の貫通穴)36が設けられている。また、前記第一貫通穴36から離れた位置に、第二駆動用ロープ42の他端が本体筒部31内から挿通される第二貫通穴(第二の貫通穴)37が設けられている。
【0034】
さらに詳述すると、前記第一貫通穴36は、前記第一駆動用ロープ41が円筒状中空体20のロープ巻回用溝25から離れる位置に対向して設けられている。また、前記第二貫通穴37は、前記第二駆動用ロープ42が円筒状中空体20のロープ巻回用溝25から離れる位置に対向して設けられている。そして、図1等に示すように、前記第一貫通穴36を介して前記第一駆動用ロープ41の他端が筐体30の外に差し出され、前記第二貫通穴37を介して前記第二駆動用ロープ42の他端が筐体30の外に差し出されている。
【0035】
また、前記筐体30における基部32と先端部33とには、前記本体筒部31内側に向かって突出した凸状のストッパー38,38がそれぞれ設けられている。
【0036】
次に、前記ロープ駆動式進退ユニット1aの作動態様について説明する。
例えば、前記第一貫通穴36から差し出されている前記第一駆動用ロープ41の他端が引張されて第一駆動用ロープ41のみが前記ロープ巻回用溝25から引き出され始めると、これに伴い、前記第一ねじ部13と前記第二ねじ部24とからなるねじ構造により、前記円筒状中空体20が、前記円柱状基体10の軸心を中心に正回転しつつ前記円柱状基体10の軸心方向に沿って一方向(例えば先端方向)へ移動すると共に、前記円筒状中空体20に追従して前記第二駆動用ロープ42が、第一駆動用ロープ41を引き出した量だけ前記ロープ巻回用溝25に巻き込まれ始める。
【0037】
一方、前記第二貫通穴37から差し出されている前記第二駆動用ロープ42の他端が引張されて第二駆動用ロープ42のみが前記ロープ巻回用溝25から引き出され始めると、これに伴い、前記円筒状中空体20が、前記円柱状基体10の軸心を中心に逆回転しつつ前記円柱状基体10の軸心方向に沿って他方向(例えば基端方向)へ移動すると共に、前記円筒状中空体20に追従して前記第一駆動用ロープ41が、第二駆動用ロープ42を引き出した量だけ前記ロープ巻回用溝25に巻き込まれ始める。
【0038】
ところで、図1図2に示すように、前記円筒状中空体20のピストン部23が前記筐体30から最も突出している進出状態にあっては、円筒状中空体20のストッパー28が筐体30のストッパー38に当接し、閉塞部22の段部22aと筐体30の先端部33との間に間隙が形成されている。かかる構成により、円筒状中空体20の最大進出位置が規定されている。そして、かかる円筒状中空体20の最大進出位置にあっては、前記第一駆動用ロープ41が円筒状中空体20のロープ巻回用溝25からほぼ引き出され、逆に第二駆動用ロープ42はロープ巻回用溝25に十分巻回されている。
【0039】
一方、図3に示すように、前記円筒状中空体20のピストン部23が前記筐体30を基準にして最も退避している退避状態にあっては、前記円筒状中空体20のストッパー28が前記筐体30のストッパー38に当接し、筐体30の基部32と円筒状中空体20との間に間隙が形成されている。かかる構成により、円筒状中空体20の最大退避位置が規定されている。
【0040】
なお、上述のように、前記円筒状中空体20の第二ねじ部24のピッチP1と、前記ロープ巻回用溝25のピッチP2とが同じであることから、第一駆動用ロープ41がロープ巻回用溝25から離れる位置と、第二駆動用ロープ42がロープ巻回用溝25から離れる位置とが、円柱状基体10を基準として移動することがない。すなわち、前記筐体30における第一貫通穴36と第二貫通穴37とが、各駆動用ロープ41,42がロープ巻回用溝25から離れる位置に対して円筒状中空体20の軸方向に位置がずれることがない。
【0041】
上記したロープ駆動式進退ユニット1aは、円筒状中空体20に巻回された駆動用ロープ41,42の引き出し操作のみで前記円筒状中空体20を進退移動させることができ、簡素でコンパクトな構造となる。また、各駆動用ロープ41,42の巻き付け量を調整することで、前記円筒状中空体20の可動域を自在に変更することができる。さらに、各駆動用ロープ41,42の引き出し量を微調整することで、前記円筒状中空体20の進退移動量を精度良く制御することもできる。
【0042】
また、前記ロープ駆動式進退ユニット1aにあっては、円筒状中空体20を最大進出位置と最大退避位置との間に位置させることもできる。仮に、円筒状中空体20をこのような中間位置に位置させた状態で、引張方向又は圧縮方向の衝撃が付与された場合にも、円柱状基体10と円筒状中空体20とが螺合しているため、円筒状中空体20が円柱状基体10に対して軸心方向に位置ずれし難い。すなわち、上記構成は、円筒状中空体20を所要位置に保持する位置決め効果が非常に高い。
【0043】
また、各駆動用ロープ41,42を引き出す際に、円筒状中空体20の軸心に対して略直角の方向に各駆動用ロープ41,42を引き出すことができるため、各駆動用ロープ41,42を円滑かつ比較的小さな力で引き出すことができる。なお、前記第一貫通穴36と前記第二貫通穴37の開口方向を、円筒状中空体20の軸心に対して略直角の方向とすることが好適である。
【0044】
また、図4に示すように、前記第一ねじ部13と前記第二ねじ部24とが、先端側にも基端側にも互いに接した噛み合い形態であると、前記ピストン部23に圧縮力が付与された場合にも、前記円柱状基体10に対する前記円筒状中空体20の軸心方向(スラスト方向)への移動が制限されるため、前記圧縮力による耐性が向上してロープ駆動式進退ユニット1a全体の損傷を防止することができる。なお、前記第一ねじ部13と前記第二ねじ部24との噛み合い形態は、他の形態でもよいが先端側にも基端側にも互いに接した噛み合い形態が好ましい。
【0045】
これまでに述べたロープ駆動式進退ユニット1aは、図5に示すように、窓の開閉ユニットに適用可能である。
【0046】
さらに詳述すると、図5(a)に示すように、窓Wの窓面方向と前記ピストン部23の軸心方向とからなる角度が、角度αとなるようにして退避状態の前記ロープ駆動式進退ユニット1aを設置する構成が提案される。
【0047】
かかる構成にあって、例えば第一駆動用ロープ41を引き出して進出状態とすることで、図5(b)に示すような、窓Wの窓面方向と前記ピストン部23の軸心方向とからなる角度が、角度αから角度βへ変動し、窓Wが開放される。なお、逆に第二駆動用ロープ42を引き出して退避状態とすると、窓Wが閉鎖される。
【0048】
かかる構成にあっては、前記円筒状中空体20の軸回りの回転運動が進退移動に変換されるため、設置環境に制限があって角度αが比較的小さく、前記円筒状中空体20の初動に比較的大きな力が必要であっても、比較的小さな引張力で第一駆動用ロープ41を操作して窓Wを開放することができる。
【0049】
なお、前記第二ねじ部24のピッチP1と、前記ロープ巻回用溝25のピッチP2とは異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0050】
次に、他の実施例にかかるロープ駆動式進退ユニット1bを図6に従って説明する。なお、図1から図5に従って述べたロープ駆動式進退ユニット1aの構成と共通する点については説明を簡略又は省略する。
【0051】
ロープ駆動式進退ユニット1bは、円柱状基体10と、前記円柱状基体10に対して進退移動する円筒状中空体20と、を備えている。なお、ロープ駆動式進退ユニット1bに、前記第一貫通穴36及び前記第二貫通穴37が形成された前記筐体30は含まれていない。
【0052】
かかる構成にあって、前記円筒状中空体20に巻回された第一駆動用ロープ41の他端が引張されると、これに伴い前記円筒状中空体20が、前記円柱状基体10の軸心を中心に正回転しつつ前記円柱状基体10の軸心方向に沿って一方向(例えば先端方向)へ移動する。一方、前記円筒状中空体20に巻回された第二駆動用ロープ42の他端が引張されると、これに伴い前記円筒状中空体20が、前記円柱状基体10の軸心を中心に逆回転しつつ前記円柱状基体10の軸心方向に沿って他方向(例えば基端方向)へ移動する。したがって、かかる構成とすることによって前記円筒状中空体20を各駆動用ロープ41,42の引き出し操作で進退移動させることができる。
【0053】
なお、かかる構成の場合にも、前記第二ねじ部24のピッチP1と、前記ロープ巻回用溝25のピッチP2とは異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0054】
なお、これまでに述べた実施例にあっては、各部材の寸法形状や材料等は用途に応じて適宜選択自在である。例えば、各駆動用ロープ41,42は、繊維糸からなるものや、金属製ワイヤーからなるものであってもよい。また、円柱状基体10及び円筒状中空体20は、ステンレス鋼、炭素鋼又は真鍮等の金属であってもよいし、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ABS又はポリアミド(PA)等の樹脂であってもよい。
【0055】
また、第一駆動用ロープ41の他端と第二駆動用ロープ42の他端とが互いに接合されていてもよい。
【0056】
また、前記第一ねじ部13と前記第二ねじ部24との間に、潤滑剤やグリスを塗布して、前記円柱状基体10に対する前記円筒状中空体20の摺動性を向上させてもよい。
【0057】
また、前記ロープ駆動式進退ユニット1a,1bは、窓Wの開閉機構だけでなく、栓体の開閉機構、あるいは入れ子式部材の長さ調節機構に使用されてもよい。また、子供や老人、あるいは障がい者等が操作する福祉機械器具に採用されてもよい。さらに、前記ロープ駆動式進退ユニット1a,1bは、手動で各駆動用ロープ41,42を引っ張る構造である必要はなく、電気式モーター等の駆動手段を用いて各駆動用ロープ41,42を引っ張る構造としてもよい。また、例えば、第一駆動用ロープ41の他端と第二駆動用ロープ42の他端とを接合した上で、前記駆動手段を構成する電動式モーターと駆動用ロープ41,42を連繋させ、かかる駆動手段を正逆回転させて円筒状中空体20を進退させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1a,1b ロープ駆動式進退ユニット
10 円柱状基体
13 第一ねじ部
20 円筒状中空体
24 第二ねじ部
25 ロープ巻回用溝
30 筐体
36 第一貫通穴
37 第二貫通穴
41 第一駆動用ロープ
42 第二駆動用ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6