(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、燃費向上等の性能向上を図るために、内燃機関等における混合気の高圧縮化が進んでいる。このような内燃機関等では、スパークプラグに印加される電圧が高くなる傾向にある。電圧が高くなると、放電時に流れる電流も大きくなる。この結果、電極が消耗する場合があった。
【0005】
本開示は、電極の消耗を抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、例えば、以下の適用例を開示する。
【0007】
[適用例1]
軸線の方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
前記軸孔の先端から自身の先端が突出するように前記絶縁体の内側に保持された中心電極と、
前記軸孔内の前記中心電極より後端側に配置される抵抗体と、
前記軸孔内の前記抵抗体と前記中心電極との間に配置され前記抵抗体と前記中心電極とを接続するシール部と、
を備え、
前記絶縁体は、
前記先端側に向けて内径が小さくなる縮内径部と、
前記縮内径部の前記先端側に設けられた部分である小内径部と、
を備え、
前記中心電極は、前記小内径部よりも前記後端側に配置され前記小内径部の内径よりも大きな外径を有する部分である頭部を備え、
前記絶縁体の前記縮内径部に前記中心電極の前記頭部が支持されているスパークプラグであって、
前記絶縁体のうち、前記縮内径部と前記小内径部との境界から、前記シール部の後端までの部分である対象部分の前記軸線の方向の長さをLとし、
前記絶縁体の前記対象部分における前記軸孔の平均内径をD1とし、
前記絶縁体の前記対象部分の平均外径をD2とし、
Cp=L/log(D2/D1)とした場合に、
1.8mm≦Lであり、かつ、Cp≦11mmである、
スパークプラグ。
【0008】
この構成によれば、絶縁体のうちシール部を囲む部分で形成され得るキャパシタの静電容量が抑制されるので、放電による電極の消耗を抑制できる。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載のスパークプラグであって、
前記絶縁体の前記対象部分における前記軸孔の前記軸線に垂直な断面積の最大値をSとし、
前記シール部と前記中心電極との接触面積をMとした場合に、
2.0≦M/S≦3.0である、
スパークプラグ。
【0010】
この構成によれば、断面積の最大値Sと接触面積Mとの適正化により、放電による電極の消耗を抑制でき、また、スパークプラグの耐久性を向上できる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2に記載のスパークプラグであって、
D1≦3mmである、スパークプラグ。
【0012】
この構成によれば、平均内径D1が小さいので、静電容量が適切に抑制される。この結果、放電による電極の消耗を、適切に抑制できる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、スパークプラグ、スパークプラグを搭載する内燃機関、等の態様で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.実施形態:
A−1.スパークプラグの構成:
図1は、スパークプラグの一実施形態の断面図である。図中には、スパークプラグ100の中心軸CLが示されている(「軸線CL」とも呼ぶ)。図示された断面は、中心軸CLを含む平らな断面である。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、
図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から中心電極20に向かう方向である。また、
図1における先端方向Df側をスパークプラグ100の先端側と呼び、
図1における後端方向Dfr側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
【0016】
スパークプラグ100は、軸線CLに沿って延びる軸孔12を有する略円筒状の絶縁体10と、軸孔12の先端側で保持される中心電極20と、軸孔12の後端側で保持される端子金具40と、軸孔12内で中心電極20と端子金具40とを電気的に接続する接続部300と、絶縁体10の外周側に固定された主体金具50と、一端が主体金具50の先端面に接合されるとともに他端が中心電極20とギャップgを介して対向するように配置された接地電極30と、を有している。
【0017】
絶縁体10は、最大外径を有する大径部19を有している。大径部19の先端側には、先端側胴部17、第1縮外径部15、脚部13が、先端側に向かってこの順に接続されている。第1縮外径部15の外径は、先端側に向かって徐々に小さくなる。大径部19の後端側には、第2縮外径部11、後端側胴部18が、後端側に向かってこの順に接続されている。第2縮外径部11の外径は、後端側に向かって徐々に小さくなる。第1縮外径部15の近傍(
図1の例では、先端側胴部17)には、先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部16が形成されている。絶縁体10は、機械的強度と、熱的強度と、電気的強度とを考慮して形成されることが好ましく、例えば、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。
【0018】
中心電極20は、中心軸CLに沿って延びる棒状の軸部27と、軸部27の先端に接合された第1チップ29と、を有している。第1チップ29は、例えば、レーザ溶接によって、軸部27に固定されている。軸部27の後端側には、外径が大きい頭部24が形成されている。頭部24の最大外径は、絶縁体10の脚部13の内径よりも大きい。頭部24の前方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部16によって、支持されている。中心電極20の先端部は、絶縁体10の先端よりも前方向Dfに突出している。軸部27は、外層21と、外層21の内周側に配置された芯部22と、を有している。外層21は、例えば、ニッケルを主成分として含む合金で形成されている。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、銅を主成分として含む合金)で形成されている。第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。
【0019】
絶縁体10の軸孔12の後端側には、端子金具40の前方向Df側の一部が挿入されている。端子金具40は、軸線CLに沿って延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
【0020】
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための略円柱形状の抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、導電性材料(例えば、炭素粒子)と、セラミック粒子(例えば、ZrO
2)と、ガラス粒子(例えば、SiO
2−B
2O
3−Li
2O−BaO系のガラス粒子)と、を含む材料を用いて形成されている。抵抗体70と中心電極20との間には、導電性の第1シール部60が配置され、抵抗体70と端子金具40との間には、導電性の第2シール部80が配置されている。シール部60、80は、例えば、抵抗体70の材料に含まれるものと同じガラス粒子と、金属粒子(例えば、Cu)と、を含む材料を用いて、形成されている。中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70とシール部60、80とを介して、電気的に接続されている。以下、これらの部材60、70、80の全体を、接続部300とも呼ぶ。なお、第1シール部60が特許請求の範囲におけるシール部に相当する。
【0021】
主体金具50は、軸線CLに沿って延びる貫通孔59を有する略円筒状の部材である。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入され、主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。絶縁体10の先端側の一部は、主体金具50の先端よりも先端側に位置している。絶縁体10の後端側の一部は、主体金具50の後端よりも後端側に位置している。主体金具50は、導電材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
【0022】
主体金具50は、内燃機関(例えば、ガソリンエンジン)の取付孔に螺合するためのネジ部52が外周面に形成されている胴部55を有している。胴部55の後端側には、座部54を有している。座部54とネジ部52との間には、環状のガスケット5が嵌め込まれている。座部54の後端側には、変形部58、工具係合部51、加締部53が、後端側に向かってこの順に形成されている。変形部58は、径方向の外側(中心軸CLから離れる方向)に向かって中央部が突出するように、変形している。工具係合部51の形状は、スパークプラグレンチが係合する形状(例えば、六角柱)である。加締部53は、絶縁体10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、径方向の内側に向かって屈曲されている。
【0023】
主体金具50の加締部53と絶縁体10の第2縮外径部11との間には、主体金具50の内周面と絶縁体10の外周面とに挟まれた空間SPが形成されている。空間SP内には、第1後端側パッキン6、タルク(滑石)9、第2後端側パッキン7が、先端側に向かってこの順に配置されている。本実施形態では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製のCリングである(他の材料も採用可能である)。
【0024】
主体金具50の胴部55には、先端側に向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部56が形成されている。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。本実施形態では、先端側パッキン8は、鉄製のOリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
【0025】
スパークプラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が先端方向Df側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。先端側パッキン8は、第1縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、内燃機関の燃焼室内のガスが、主体金具50と絶縁体10との間を通って外に漏れることが、抑制される。また、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
【0026】
接地電極30は、棒状の軸部37と、軸部37の先端部31に接合された第2チップ39と、を有している。軸部37の一端は、主体金具50の先端面57に接合されている(例えば、抵抗溶接)。軸部37は、主体金具50から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部31に至る。先端部31の中心電極20の先端部と対向する面には、第2チップ39が接合されている(例えば、レーザ溶接)。接地電極30の第2チップ39と、中心電極20の第1チップ29とは、ギャップgを介して対向している。
【0027】
軸部37は、軸部37の表面を形成する母材35と、母材35内に埋設された芯部36と、を有している。母材35は、芯部36よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを含む合金)で形成されている。芯部36は、母材35よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。
【0028】
なお、スパークプラグ100は、例えば、以下のように製造される。絶縁体10と、中心電極20と、端子金具40と、シール部60、80のそれぞれの材料粉末と、抵抗体70の材料粉末と、を準備する。絶縁体10の軸孔12の後端方向Dfr側の開口12x(以下、「後開口12x」と呼ぶ)から、中心電極20を挿入する。
図1で説明したように、中心電極20は、絶縁体10の縮内径部16によって支持されることによって、軸孔12内の所定位置に配置される。次に、第1シール部60、抵抗体70、第2シール部80のそれぞれの材料粉末の投入と投入された粉末材料の成形とが、部材60、70、80の順番に、行われる。粉末材料の投入は、軸孔12の後開口12xから、行われる。投入された粉末材料の成形は、後開口12xから挿入した棒を用いて行われる。材料粉末は、対応する部材の形状と略同じ形状に、成形される。次に、軸孔12の後開口12xから、端子金具40の一部を軸孔12に挿入し、絶縁体10を、各材料粉末に含まれるガラス成分の軟化点よりも高い所定温度まで加熱し、端子金具40を前方向Dfへ押圧する。この結果、各材料粉末が圧縮および焼結されて、シール部60、80と、抵抗体70と、のそれぞれが形成される。次に、絶縁体10の外周にあらかじめ接地電極30を固定した主体金具50を組み付ける。次に、接地電極30を屈曲して、スパークプラグを完成させる。
【0029】
A−2.絶縁体10の対象部分10Lについて
図2は、
図1の断面図のうちの第1シール部60を含む一部分の拡大図である。図中には、中心電極20と、絶縁体10の一部と、第1シール部60と、抵抗体70の一部と、主体金具50の一部と、が示されている。接地電極30の図示は省略されている。また、中心電極20の内部構成の図示は省略されている。図中の絶縁体10の小内径部14は、縮内径部16の前方向Df側に接続された部分である。小内径部14の内径は、縮内径部16の内径以下である。小内径部14の内周面は、軸線CLにおおよそ平行である。
【0030】
また、図中では、絶縁体10の一部分である対象部分10Lが、濃いハッチングで示されている。対象部分10Lは、絶縁体10のうちの第1シール部60を囲む部分に対応している。このような対象部分10Lとしては、絶縁体10のうち、縮内径部16と小内径部14との境界P1から、第1シール部60の後端P2までの部分が採用される。すなわち、対象部分10Lは、絶縁体10のうち、軸線CLに平行な方向の位置が境界P1から後端P2までの範囲内である部分である。図中の右部には、境界P1の近傍を示す拡大図が示されている。図示するように、縮内径部16と小内径部14との接続部分は、面取りされ得る。この場合、中心軸CLを含む平らな断面上において、縮内径部16の表面(すなわち、内周面)を表す線のうちの直線部分16Lと、小内径部14の表面(すなわち、内周面)を表す線のうちの直線部分14Lとを、延長して得られる交点が、境界P1として採用される。
【0031】
対象部分10Lの内周側には、第1シール部60が配置され、対象部分10Lの外周側は、主体金具50に囲まれている。第1シール部60と主体金具50とは、対象部分10Lを挟んだキャパシタを形成している(以下「キャパシタC」と呼ぶ)。スパークプラグ100に高電圧が印加された場合には、このキャパシタCは、放電前に、電圧に応じた電荷を蓄える。そして、放電時には、蓄えられた電荷が電流となる。また、抵抗体70は、第1シール部60の後方向Dfr側に配置されている。従って、キャパシタCに蓄えられた電荷は、抵抗体70に制限されずに、電極20、30を流れることができる。従って、キャパシタCの静電容量が大きい場合には、放電時に電極20、30に大きな電流が流れるので、電極20、30が消耗しやすい。
【0032】
キャパシタCの静電容量は、以下に説明するように、対象部分10Lの形状を円筒で近似し、そして、対象部分10Lと主体金具50との間の隙間が十分に小さいと仮定して、近似的に算出可能である。図中には、対象部分10Lの長さLと平均内径D1と平均外径D2とが示されている。長さLは、対象部分10Lの軸線CLに平行な方向の長さである。平均内径D1は、対象部分10Lにおける軸孔12の平均内径であり、平均外径D2は、対象部分10Lの平均外径である。平均内径D1は、対象部分10Lの先端から後端までの全範囲から軸線CLに平行に0.1mm間隔で選択された複数の位置での内径の平均値である。平均外径D2は、同様に、対象部分10Lの先端から後端までの全範囲から軸線CLに平行に0.1mm間隔で選択された複数の位置での外径の平均値である。
【0033】
ここで、対象部分10Lが、長さL、平均内径D1、平均外径D2によって表される円筒であると仮定する。このような円筒キャパシタの静電容量は、2πεL/log(D2/D1)で表される。εは対象部分10Lの誘電率である。また、logの底は10である。以下、静電容量の計算式から定数「2πε」を省略した式「L/log(D2/D1)」で表される値を、近似容量評価値Cp、あるいは、単に、容量評価値Cpとも呼ぶ(単位は、mm)。上記の静電容量は、容量評価値Cpに比例する。従って、容量評価値Cpが大きいほど、放電時の電流が大きく、そして、電極20、30が消耗しやすいと推定される。電極20、30の消耗を抑制するためには、容量評価値Cpが小さくなるように、絶縁体10を構成することが好ましい。
【0034】
B.評価試験:
スパークプラグ100のサンプルを用いた評価試験について説明する。以下の表1は、サンプルの構成と、ギャップ試験の結果と、負荷寿命試験の結果と、を示している。
【0036】
表1中の「No.」は、サンプルの種類の番号である(1番から15番)。D1、D2、L、Cpは、それぞれ、
図2で説明した平均内径D1と平均外径D2と長さLと容量評価値Cpとである。表1に示すように、15種類のサンプルの間では、D1、D2、L、Cpの少なくとも1つが異なっている。D1、D2、L、Cpが異なっている点以外の構成は、15種類のサンプルの間で共通であった。
【0037】
ギャップ試験に関しては、ギャップ増加量の低減率(単位は%)と、判定結果と、が示されている。ギャップ試験では、各サンプルは、圧力が3MPaの空気中に配置された。そして、60Hzの周期で20時間に亘って、放電が繰り返された。この放電の繰り返しによって、中心電極20と接地電極30との間のギャップgの距離が増加した(すなわち、電極20、30が消耗した)。放電の繰り返しの前のギャップgの距離と、放電の繰り返しの後のギャップgの距離とが、それぞれ、ピンゲージによって測定された。ギャップ試験では、1種類のサンプルのために、同じ構成を有する3個のサンプルが試験された。そして、3個のサンプルのギャップgの距離の増加量の平均値を、その種類のサンプルのギャップgの距離の増加量として採用した(以下「ギャップ増加量」ともいう)。このギャップ増加量を、3番のギャップ増加量を基準とする低減率を用いて、評価した。具体的には、計算式「((3番の増加量−サンプルの増加量)/3番の増加量)×100(単位は、%)」に従って、表1中のギャップ増加量の低減率を算出した。このギャップ増加量の低減率が正値であることは、サンプルのギャップ増加量が3番のギャップ増加量よりも小さかったこと、すなわち、電極20、30の消耗が3番と比べて抑制されたことを、示している。そして、ギャップ増加量の低減率が大きいほど、ギャップ増加量が小さく、電極20、30の消耗が抑制されている。ギャップ試験のA判定からD判定のそれぞれの基準は、以下の通りである。
A判定: ギャップ増加量の低減率≧20%
B判定:20%>ギャップ増加量の低減率≧10%
C判定:10%>ギャップ増加量の低減率≧0%
D判定: 0%>ギャップ増加量の低減率
【0038】
負荷寿命試験は、JIS B8031:2006(内燃機関−スパークプラグ)の7.13、7.14の規定に従って行われた。具体的には、7.13の規定に従って抵抗値が測定された後、7.14の規定に従って負荷試験が行われた。負荷試験では、20kVの電圧の印加による放電が、1.3×10
7回行われ、その後、サンプルが1時間放置された。その後、7.13の規定に従って、負荷試験後の抵抗値が測定された。そして、負荷試験前の抵抗値に対する抵抗値の変化率が算出された。なお、負荷寿命試験では、1種類のサンプルの変化率の算出のために、1個のサンプルが試験された。表1中では、A評価は、変化率が−30%以上、+30%以下の範囲内であることを示し、B評価は、変化率が、その範囲外であることを示している。
【0039】
表1に示すように、長さLが長いほど、負荷寿命試験の判定結果が良好であった。この理由は、対象部分10Lの長さLが長い場合には、第1シール部60の長さが長いので、第1シール部60の耐久性が向上するからだと推定される。A判定を実現した長さLは、1.8、2.0、3.0、4.0、4.5、5.0(mm)であった。これらの値から任意に選択された値を、長さLの好ましい範囲の下限として採用可能である。例えば、長さLとしては、1.8mm以上の値を採用してもよい。また、A判定が得られた上記の値から、長さLの好ましい範囲の上限を選択してもよい。例えば、長さLとしては、5.0mm以下の値を採用してもよい。ただし、L>5.0mmであってもよい。
【0040】
また、表1に示すように、容量評価値Cpが小さいほど、ギャップ試験の判定結果が良好であった。この理由は、上述したように、容量評価値Cpが小さい場合には、容量評価値Cpが大きい場合と比べて、放電時に電極20、30に流れる電流が抑制されるからだと推定される。A判定、または、B判定を実現した容量評価値Cpは、3.5、4.7、5.0、5.4、7.3、9.9、10.4、11.0(mm)であった。これらの値から任意に選択された値を、容量評価値Cpの好ましい範囲の上限として採用可能である。例えば、容量評価値Cpとしては、11mm以下の値を採用してもよい。また、A判定を実現した値(3.5、4.7、5.0、5.4、7.3、9.9(mm))から、好ましい範囲の上限を採用してもよい。例えば、容量評価値Cpとしては、9.9mm以下の値を採用してもよい。また、A判定、または、B判定が得られた上記の値から、容量評価値Cpの好ましい範囲の下限を選択してもよい。例えば、容量評価値Cpとしては、3.5mm以上の値を採用してもよい。ただし、Cp<3.5mmであってもよい。
【0041】
なお、容量評価値Cpが上記の好ましい範囲内であれば、対象部分10Lの形状に拘わらずに、キャパシタCに蓄積される電荷の量を小さくできる。従って、容量評価値Cpが上記の好ましい範囲内であれば、平均内径D1と平均外径D2とに関わらずに、放電時の電流を抑制でき、そして、電極20、30の消耗を抑制できると推定される。従って、平均内径D1は、上記の15種類のサンプルの平均内径D1が分布する2.7mm以上、3.9mm以下の範囲内であってもよく、その範囲外であってもよい。同様に、平均外径D2は、上記の15種類のサンプルの平均外径D2が分布する6.3mm以上9.2mm以下の範囲内であってもよく、その範囲外であってもよい。例えば、平均内径D1が3mm以下であってもよい。
【0042】
次に、スパークプラグ100のサンプルを用いた別の評価試験について説明する。以下の表2は、サンプルの構成と、耐衝撃試験の判定結果と、生産性試験の結果と、を示している。
【0044】
表2中の「No.」は、サンプルの種類の番号である(16番から25番)。接触面積Mは、第1シール部60(
図2)と中心電極20との接触面積である。最大断面積Sは、対象部分10Lにおける軸孔12の軸線CLに垂直な断面積の最大値である。比率M/Sは、最大断面積Sに対する接触面積Mの比率である。16番から22番の7種類のサンプルは、表1の10番のサンプルの中心電極20(
図2)の後方向Dfr側の端面の形状を変更したものである。16番から22番のD1、D2、Lは、10番のD1、D2、Lとそれぞれ同じである(なお、10番のM、S、M/Sは、16番のM、S、M/Sと、それぞれ同じである)。23番から25番の3種類のサンプルは、表1の11番のサンプルの中心電極20の後方向Dfr側の端面28の形状を変更したものである。23番から25番のD1、D2、Lは、11番のD1、D2、Lとそれぞれ同じである(なお、11番のM、S、M/Sは、23番のM、S、M/Sと、それぞれ同じである)。中心電極20の端面28の形状を変更することによって、接触面積Mが変化する。本評価試験のサンプルでは、端面28は、前方向Dfに向かって凹んだ凹部状に形成されており、この凹部の深さを調整することによって、接触面積Mが調整された。
【0045】
なお、
図2の実施形態では、中心電極20は、軸線CLを中心とする回転体である。すなわち、軸線CLを含む平らな断面における中心電極20の形状は、断面の方向に関わらずに、おおよそ同じである。この場合、接触面積Mは、例えば、以下のように算出可能である。
図2中の太線で示された接触線62は、第1シール部60と中心電極20との接触面を表す線である。この接触線62を、軸線CLを中心に180度回転させる場合に、回転する接触線62によって表される立体形状(回転体とも呼ばれる)は、第1シール部60と中心電極20との接触面の形状を、良く近似している。この立体形状の面積は、接触面積Mの良い近似値である。この立体形状の面積は、接触線62の形状から算出可能である。例えば、接触線62を、複数の所定長(例えば、0.1mm)の直線分で形成された折れ線で近似する。そして、立体形状のうちの1個の直線分で形成される部分の面積を、円錐台の側面の面積と同様に算出する。そして、複数の直線分のそれぞれから得られる面積の合計値を、接触面積Mとして算出する。なお、接触線62を折れ線で近似する方法としては、公知の方法を採用すればよい。
【0046】
耐衝撃試験は、以下の通りである。まず、表1のギャップ試験と同じ試験を行った。その後、JIS B8031:2006の7.4に規定された耐衝撃性試験を、3回繰り返した。これらの試験の後に、中心電極20が絶縁体10にしっかり固定されているか否かを確認した。A判定は、中心電極20が絶縁体10にしっかり固定されていることを示している。B判定は、中心電極20が絶縁体10に対して動くことを示している。耐衝撃試験では、1種類のサンプルの判定のために、1個のサンプルが試験された。
【0047】
生産性試験では、30個のサンプルを製造した場合の不良発生数が評価された。製造したサンプルの中心電極20と端子金具40との間の電気抵抗が、所定の適正範囲の上限値以上の所定の閾値以上である場合に、そのサンプルが不良であると判定された。A判定は、不良発生数が0個であることを示し、B判定は、不良発生数が1個であることを示し、C判定は、不良発生数が2個以上であることを示している。
【0048】
表2に示すように、比率M/Sが大きいほど、耐衝撃判定が良好であった。この理由は、比率M/Sが大きい場合には、中心電極20と第1シール部60とのそれぞれの外径に対する中心電極20と第1シール部60との接触面積Mが大きいので、中心電極20と第1シール部60との密着性が向上するからである。A判定を実現した比率M/Sは、2.0、2.5、2.7、2.8、3.0、3.1、3.2であった。これらの値から任意に選択された値を、比率M/Sの好ましい範囲の下限として採用可能である。例えば、比率M/Sとしては、2.0以上の値を採用してもよい。
【0049】
また、表2に示すように、比率M/Sが小さいほど、生産性の判定結果が良好であった。この理由は、以下のように推定される。比率M/Sが大きい場合には、比率M/Sが小さい場合と比べて、中心電極20の端面28の凹部が深い。凹部が深い場合、スパークプラグ100の製造時に、第1シール部60の材料が、凹部の底に届きにくい。従って、中心電極20と第1シール部60との間に隙間が形成され得る。この結果、中心電極20と第1シール部60との導通不良が生じ易い。生産性のA判定またはB判定を実現した比率M/Sは、1.8、1.9、2.0、2.5、2.7、2.8、3.0であった。これらの値から任意に選択された値を、比率M/Sの好ましい範囲の上限として採用可能である。例えば、比率M/Sとしては、3.0以下の値を採用してもよい。
【0050】
なお、耐衝撃性と生産性とは、第1シール部60と中心電極20との接触面積Mから受ける影響が大きく、他の構成から受ける影響は小さいと推定される。例えば、表1の10番と11番との間では、平均内径D1と平均外径D2と長さLとの全てが異なっている。そして、表2に示すように、表1の10番に基づく16番から22番のグループと、表1の11番に基づく23番から25番のグループとの、双方のグループにおいて、上記の好ましい範囲内の比率M/Sが、良好な耐衝撃判定と良好な生産性とを実現した。このように、平均内径D1と平均外径D2と長さLとからの影響は、小さいと推定される。さらに、中心電極20の第1シール部60に接触する面の形状に関わらず、比率M/Sが大きい場合には、中心電極20と第1シール部60との密着性が向上するので、耐衝撃性を向上できる。そして、比率M/Sが小さい場合には、中心電極20の表面に第1シール部60の材料が届きにくい部分が形成されることが抑制されるので、生産性を向上できる。このように、比率M/Sの上記の好ましい範囲は、平均内径D1と平均外径D2と長さLとの種々の組み合わせに適用可能であると推定され、そして、中心電極20の第1シール部60に接触する面の種々の形状に適用可能であると推定される。ただし、比率M/Sが、上記の好ましい範囲外であってもよい。
【0051】
C.変形例:
(1)スパークプラグの構成としては、
図1、
図2の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、上記実施形態では、絶縁体10の対象部分10Lのうち縮内径部16よりも後端側の内径は一定であったが、これに限られず、縮内径部16よりも後端側に、軸線CLに平行な方向の位置に応じて内径が変化する部分が設けられていてもよい。また、絶縁体10の対象部分10Lの外径が、軸線CLに平行な方向の位置に応じて変化していてもよい。また、主体金具50の内周面のうち対象部分10Lに対向する部分の形状が、対象部分10Lの外周面の形状と異なっていてもよい。このように、対象部分10Lと主体金具50との間の隙間の大きさが、軸線CLに平行な方向の位置に応じて変化してもよい。通常は、対象部分10Lと主体金具50との間の隙間がゼロよりも大きい場合には、キャパシタCの静電容量は、容量評価値Cpに「2πε」を乗じて得られる静電容量よりも小さくなる。従って、絶縁体10と主体金具50とのそれぞれの構成(特に、対象部分10Lの構成と、主体金具50の対象部分10Lに対向する部分の構成)が、上記の実施形態の構成とは異なる場合であっても、容量評価値Cpが上記の好ましい範囲内にある場合には、電極20、30の消耗を抑制できると推定される。
【0052】
また、中心電極20の第1シール部60に接触する面に、ローレット加工が施されていてもよく、複数の凹部と複数の凸部との少なくとも一方が形成されていてもよい。これにより、接触面積Mを増大できる。また、中心電極の前方向Df側の端面に代えて、中心軸CLに垂直な方向の面(すなわち、側面)が、放電面であってもよい。また、中心電極の形状と接地電極の形状とのそれぞれは、上記の形状に代えて他の任意の形状であってよい。
【0053】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。