特許第6328098号(P6328098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328098
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】暖房デバイス及び暖房方法
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20180514BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   B60H1/32 621J
   F25B17/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-502496(P2015-502496)
(86)(22)【出願日】2013年3月20日
(65)【公表番号】特表2015-516909(P2015-516909A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】IB2013052201
(87)【国際公開番号】WO2013144783
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】61/617,153
(32)【優先日】2012年3月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルビッヒ ライナー
(72)【発明者】
【氏名】ケルバー アヒム ゲラルド ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】バン ダー スルイス ポール
(72)【発明者】
【氏名】クレー マレイケ
(72)【発明者】
【氏名】ケウラー ウィルヘルムス コーネリス
【審査官】 佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−136532(JP,A)
【文献】 特開平07−001944(JP,A)
【文献】 特表2007−526110(JP,A)
【文献】 特開平11−019448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F25B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口開口と出口開口とを有する少なくとも1つの容器であって、前記入口開口と前記出口開口との間に提供され、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する吸着剤を含む前記少なくとも1つの容器と、
吸着質含有ガスを、前記少なくとも1つの容器の内部を通して運ぶガス送出デバイスと、
を含み、
前記少なくとも1つの容器内の吸着エネルギーによって暖められた前記ガスを、昇温で暖められるべき場所に導くために、前記少なくとも1つの容器の前記出口開口に接続されているガス導管が流路に熱交換器を設けることなく提供されている、暖房デバイスであって、前記吸着剤を再生するためのガスを85%以上の純度で供給するガス源をさらに含み、
窒素が前記吸着質として使用され、酸素が前記吸着剤を再生するための前記ガスとして使用される、暖房デバイス。
【請求項2】
前記暖房デバイスは、自動車の暖房システムの一部である、請求項1に記載の暖房デバイス。
【請求項3】
前記吸着剤は、ゼオライトを含む、請求項1に記載の暖房デバイス。
【請求項4】
前記少なくとも1つの容器の前記内部は、外部雰囲気に対し気密に密閉可能である、請求項1に記載の暖房デバイス。
【請求項5】
前記吸着剤を再生するためのヒータ及び/又は真空ポンプを更に含む、請求項1に記載の暖房デバイス。
【請求項6】
前記暖房デバイスは、携帯可能なデバイスである、請求項1に記載の暖房デバイス。
【請求項7】
入口開口と出口開口とを有する少なくとも1つの容器であって、前記入口開口と前記出口開口との間に提供され、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する吸着剤を含む、少なくとも1つの容器を提供するステップと、
吸着質含有ガスを、前記吸着剤を含む前記少なくとも1つの容器の内部を通して運ぶステップであって、前記吸着質は前記吸着剤によって吸着され、これにより前記少なくとも1つの容器の前記内部を通り導かれるガスが吸着エネルギーによって暖められる、前記ステップと、
暖められたガスを、流路に熱交換器を設けることなく暖められるべき場所に導くステップと、
を含み、
前記吸着剤を再生するために、85%以上の純度のガスが使用され
窒素が前記吸着質として使用され、酸素が前記吸着剤を再生するためのガスとして使用される、暖房方法。
【請求項8】
前記吸着剤を再生するために、熱及び/又は真空が更に使用される、請求項7に記載の暖房方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房デバイスの分野に関する。より具体的には、本発明は、暖房反応が向上され、自動車といった車両において特に使用される暖房デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車の内部の暖房は、エンジンの廃熱を活用して行われることが知られている。しかし、新車や室温よりはるかに低い周囲温度では、エンジンを始動後、車両の内部を暖めるために十分な廃熱を生成するのにかなりの時間がかかる。特に、追加の暖房源が使用されない場合、内部が十分に暖まるまでの時間が長いため、乗客の快適さに負の影響を及ぼすことがある。
【0003】
車両の内部を暖めるために必要な時間を短縮するために、暖機運転段階の間に車両の内部を暖める追加の暖房源が知られている。
【0004】
第1級の暖房デバイスは、追加の電源を必要とする。例えば電池又は発電機からといった電気エネルギーによって又はエネルギー源として燃料を使用することによって駆動されるヒータが提供される。当該ヒータは、使用時に標準の空調システムと直接的に相互作用する。しかし、通常、3mよりも大きい車両内の大きな容積によって、車両の内部の空気を暖めるのに多くのエネルギーが必要である。ほんの一例の値として、3mの空気の温度を20℃まで上昇させるために約78kJのエネルギーが必要である。エネルギー消費量は、例えばエネルギーがより長い時間スケール(例えば>>1s)で供給される場合、車体への熱伝達に因る熱損失によってより一層大幅に増加する。
【0005】
第2級に関して、エンジンの廃熱によって、通常の車の動作の間に暖められる潜熱蓄熱システムが知られている。このシステムは、固液相転移を行い、このエネルギーを、周囲温度が低いときに、車の暖機運転段階の間に放出する。この蓄熱器は、当該エネルギー蓄積システムが相転移温度よりも上で、かつ周囲温度よりも下の温度で格納される場合に特に使用される。更に、この蓄熱システムの多くは、オフ時間の間に十分な暖房能力を維持するために、サイズが過度に大きい。
【0006】
更に、米国特許第4660629号から、連続作動式吸着デバイスとその動作のためのプロセスとが知られている。当該吸着デバイスは、自動車の内部を暖めるために使用される。当該デバイスは、ヒータ・アドゾーバゾーンとコンデンサ・エバポレータゾーンとに分けられる複数の吸着容器を含む。これらのゾーンは、熱媒体が流れる通路を形成するフローセグメントを通って連続的に回転される。ヒータ・吸着ゾーンは、吸着物質を含み、そこから作用物質が、熱媒体流からの熱を吸着することによって抽出され、閉システムにおける他の熱媒体流に熱を放射することによって、再度、吸着される。作用物質は、熱交換器による熱交換によって液化及び蒸発する。
【0007】
しかし、暖機運転段階の間に車両の内部を暖めるために必要な時間を短縮し、並びに/又は、構築し及び/若しくは動作させるのが容易であり、費用を節約する暖房デバイスが依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の欠点のうちの少なくとも1つを解決する暖房デバイスを提供することを目的とする。本発明は特に、暖機運転段階の間に車両の内部を暖めるために必要な時間を短縮し、並びに/又は、構築し及び/若しくは動作させるのが容易であり、費用を節約する暖房デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、請求項1に記載の暖房デバイスによって達成される。上記の目的は更に、請求項7に記載の暖房方法によって達成される。本発明の好適な実施形態は、従属項に規定される。
【0010】
本発明は、入口開口と出口開口とを有する少なくとも1つの容器であって、入口開口と出口開口との間に提供され、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する吸着剤を含む少なくとも1つの容器と、吸着質含有ガスを、容器の内部を通して運ぶガス送出デバイスとを含み、容器内の吸着エネルギーによって暖められたガスを、昇温で暖められるべき場所に導くために、容器の出口開口に接続されているガス導管が提供されている、暖房デバイスに関する。
【0011】
本発明は、例えば車両の内部である容積といった場所を、非常に効率的にかつ実質的に待機時間なく、暖めることが可能である暖房デバイスを提供する。
【0012】
詳細には、本発明に係る暖房デバイスは、吸着剤が充填された容器を含む。吸着剤は、好適には多孔質の固体吸着剤である。具体的には、シーブベッドが提供される。吸着剤は更に、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する。これは、例えば潜在的に吸着されている物質を少なくとも部分的に除去することにより吸着剤を再生することによって、したがって、少なくとも部分的にアンロードされた吸着剤を提供することによって、又は、吸着剤に再生用吸着質を少なくとも部分的に提供することによって、実現される。再生用吸着質は、次に、当該再生用吸着質に比べて高い吸着エネルギーを有する更なる吸着質によって置換される。或いは、少なくとも部分的にアンロードされた吸着剤が吸着質を吸着してもよい。これにより、吸着エネルギーが発生される。
【0013】
吸着エネルギーを生成するために、吸着質含有ガスが、容器の内部を通して運ばれ、これにより吸着剤と直接的に接触し、相互作用する。したがって、暖房デバイスは、当該吸着質を含むガスを、容器の内部を通して運ぶガス送出デバイスを含む。したがって、容器は入口開口及び出口開口を含み、吸着質含有ガスは、容器の内部、したがって、吸着剤を通して流れるように、これらの開口を通り導かれる。したがって、吸着剤は、入口開口と出口開口との間に提供される。つまり、入口開口を通り容器に入り、出口開口を通り容器から出るガス流は、吸着剤を通して流れ及び/又は吸着剤と相互作用することを意味する。容器、又は、少なくとも、吸着質含有ガス用の流路が、吸着剤又はシーブベッドで完全に埋められることが好適である。更に、各開口には、ガスを通過させるガス通路を構成するが、吸着剤が容器の内部に保持されることを確実にするある種のフィルタ又はディスクが設けられていてもよい。フィルタ又はガス通路の開口は、それぞれ、特に固体の吸着剤粒子の最小サイズに適応され、また、50μm以上100μm以下の例示的な寸法を有してよい。
【0014】
暖房目的として、放出された吸着エネルギーを使用するために、吸着エネルギーによって暖められたガスストリームは、次に、昇温で暖められるべき場所に運ばれる。したがって、容器内で吸着エネルギーによって暖められたガス流を、昇温で暖められるべき場所に導くために、容器の出口開口に接続されたガス導管が提供されている。したがって、ガスストリームは、容器から暖められるべき場所に、特に当該流路に熱交換器を設けることなく、直接的に導かれる。したがって、容器において、及び/又は、容器から暖められる場所までの流路上に、エネルギー又は熱を除去する所望の手段は提供されない。これに対し、容積は、吸着質を吸着剤に導くために使用され、また、次に吸着エネルギーによって暖められるガスストリームによって暖められる。
【0015】
したがって、本発明に係る暖房デバイスは、暖房プロセスが特に効果的に行われるという利点を有する。詳細には、熱が、吸着剤からガスストリームに直接的に伝達され、当該ガスストリームは次に、暖められるべき容積といった場所に運ばれ、また、暖房デバイスは、したがって、吸着剤及び暖められる場所についてオープンシステムであるという事実によって、熱交換器を介した場合にあるようなエネルギー伝達による熱の損失が生じない。上記以外にも、場所を暖めるために使用されるガスストリームが、吸着剤の細孔を直接的に流れて通るという事実によって、吸着剤からガスストリームへと非常に効果的な熱交換が提供される。多孔率は、優れたガス流動性を提供するように調節される。更に、ガスストリームの大部分は、吸着剤の大部分を通して流れるという事実によって、壁等への熱伝達を介して失われるエネルギーはほんの僅かしかない。結果として、実質的にすべての生成された熱が、暖房目的に使用される。
【0016】
上記以外にも、熱交換器又は追加の電気暖房デバイス、及び、複雑な断熱システムといった更なる構成要素を必要としない。したがって、本発明に係る暖房デバイスは、追加の電気エネルギーを必要としない又は実質的に必要とせず、これにより、本発明に係る暖房デバイスを、非常に低い費用で動作させることを可能にする。更に、本発明に係る暖房デバイスは、組み立てるのが特に容易でかつ費用を節約することができ、複雑で費用のかかる装置及び構成要素又はセットアップを必要としない。
【0017】
更に、暖房ステップは、非常に高速に、また、実質的に待機時間なく行われる。これは、吸着剤が、放出された吸着エネルギーだけによって、当該吸着エネルギーを吸着質に直接的に接触させることによって瞬時に暖まるという事実による。この結果、本発明に係る暖房デバイスを起動した直後に、運ばれたガスストリームが暖められ、暖房目的に使用される。
【0018】
更に、本発明に係る暖房デバイスの暖房能力は、所望の用途に対し変更されて調整される。詳細には、暖房能力は、実質的に、吸着質の吸着エネルギー、更には、容器内に提供される吸着剤の量に依存する。したがって、吸着剤及び/若しくは吸着質のタイプを適応させることによって、容器内に提供される吸着剤の量を適応させることによって、並びに/又は、再生方法を適応させることによって、暖房能力は、所望の用途に対し簡単に調整される。
【0019】
上記以外にも、本発明に係る暖房デバイスは、周囲温度から独立して使用される。詳細には、周囲温度から独立して、吸着エネルギーによる温度上昇が実現される。更に、特に暖房デバイスが有用となる低い周囲温度では特に、吸着能力は低温においてより高いという事実によって、温度上昇が拡大される。この結果、得られる温度上昇は、低い周囲温度において、したがって、その温度上昇が特に必要であるときに、より大きい。
【0020】
安全問題に関して、更なる利点が提供される。詳細には、生成される熱は制限され、明確に画定されるので、緊急停止が提供される必要がない。これは、過剰暖房がしっかりと防止されるか又は実質的に不可能だからである。
【0021】
したがって、本発明に係る暖房デバイスは、大量の追加のエネルギーを散逸することなく、したがって、暖機運転段階中に電気回路の負荷を増加することなく、更には、製造費用の削減につながる単純な構造によって、場所を暖めるのに必要な時間を大幅に短縮することができる。
【0022】
一実施形態によれば、暖房デバイスは、自動車の暖房システムの一部である。例えば、暖房デバイスは、車両内に固定設置されていてもよい。特に自動車に関して、本発明に係る暖房デバイスは、特に有利である。詳細には、自動車は、通常、その内部をエンジンからの廃熱によって暖める。しかし、これは、エンジンの暖機運転段階の間は不可能であるか又は十分な量で可能ではない。しかし、この影響は、特に低周囲温度において、乗客の快適さを損なう。それ故に、自動車は、しばしば、複雑でエネルギーを消費する追加の暖房デバイスを使用する。しかし、本発明に係る暖房デバイスを使用すれば、エネルギーを消費する暖房デバイスが不要となる。対照的に、車両の内部は、簡単かつ費用を節約する手段によって暖められ、これにより、通常の自動車に比べてかつ追加の電気ヒータに比べて、暖房時間を大幅に短縮できる。これは、幾らかの起動時間を必要とする熱交換器を使用する暖房システムとは対照的である本発明に係る瞬時の暖房手順によるものである。更に、電気ヒータがないことによって、エネルギーも節約される。廃熱によって、したがってエンジンの暖機運転段階の後に車両が暖められる場合、吸着剤は、後続の暖房サイクルのためにフルの暖房能力を回復するように再生される。したがって、吸着剤は、暖房効果が必要でない場合に、また、吸着剤を再生するためのエネルギーが十分に利用可能であるときに、再生される。
【0023】
更に、特に自動車の内部を暖めるときの当該自動車の暖機運転段階の間、窓のデフロスタ、座席暖房等といった更なる電気消費機器が、しばしば、使用される。結果として、高い電力入力、したがって、1kW以上の範囲といった大電力消費量が必要となる。したがって、エネルギー消費量が大幅に削減される、本発明の実施形態に係る暖房デバイスを使用すれば、発電機又は電池、更には導線に対する要件が減少される。したがって、車の備品は大幅に安価となる。例えば暖房デバイスを自動車に導入するために特別な要件は必要ではない。
【0024】
本発明は更に、完全に又は部分的に電気駆動される自動車にもよく適している。特に、これらの車両では、エンジンの廃熱は全く生成されないか、生成されてもほんの僅かであるため、廃熱から独立している暖房デバイスを特に興味深いものにする。更に、バッテリがロードされると同時に、暖房デバイスは再生されるので、暖房デバイスの非常に快適な使用につながる。
【0025】
更なる実施形態によれば、吸着剤は、ゼオライトを含むか、又は、ゼオライトから構成される。ゼオライト又はゼオライト材料は、複数の吸着質に対し大きい吸着能力を有する成分であるので、本発明に係る暖房デバイスにおいて熱を生成するために適切に使用される。更に、ゼオライトは、吸着質を吸着し、また、ほぼ無限の回数、再生されるので、長期間にわたる使用に特に適切である。上記以外にも、ゼオライトは、通常、周囲雰囲気においても分解に対し安定しているので、使用が容易であり、特に長時間にわたって安定しており、また更に、それを用いて動作させると費用が節約できる。更に、ゼオライトは、安全の理由に関しても利点を有する。詳細には、この種の吸着剤は、毒性を有さないので、人間又は環境に危害を及ぼさない。更に、本発明に係る暖房デバイスが具備された車両が(例えば事故によって)損傷した場合でも危険ではない。また、ゼオライトを吸着剤として使用すると、ゼオライトは水に対し優れた吸着剤であるという事実によって、容器内で生成されるガスストリームは、水分又は湿気が完全にない又は少なくとも実質的に含まない。これは、特に自動車に適用された場合に、車が低温条件にあっても、水が窓に凝結しないという利点につながり、これは、快適さ及び安全について更なる利点を提供する。
【0026】
更なる実施形態によれば、容器の内部は、外部雰囲気に対し気密に密閉可能である。この特徴は、暖房能力を失うことなく、又は、暖房挙動に負の影響を及ぼすことなく、暖房デバイスの長時間にわたるオフ時間を可能にする。詳細には、吸着剤が、外部雰囲気に対し閉じられている又は密閉されて、気密である場合、吸着剤から脱着する又は吸着剤に吸着する成分はない。したがって、暖房デバイスが自動車内に配置され、車の使用中に吸着剤が再生される場合、例えば車両のダウンタイムは、例えば一晩、週末又はそれよりも長くても、暖房能力に影響を及ぼさない。極端な場合では、再生用吸着質は、上記のとおり、ほぼ無限の時間スケールで、吸着剤に吸着されるという事実によって、暖房デバイスは、ガス交換が十分に防止され、暖房目的に使用されるガスストリームが吸着剤で充填された容器を迂回(bridge)する場合は、ひと冬にわたって暖房能力を蓄えることもできる。したがって、自動車が、ダウンタイム後に再び使用される場合でも、暖房デバイスは瞬時に起動して動作する。しかし、自動車のより長いダウンタイムについての暖房デバイスのどの適用についても同じことが言える。これらの暖房デバイスは、当該暖房デバイス又は車のオフ時間の後でも十分な暖房パワーが生じるのであれば過度に大きい寸法にデザインされる必要がないという事実を考慮すると、この手段は、特に容易であり、費用を節約する。しかし、本発明に係る暖房デバイスに、密閉を実施することは容易でかつ費用を節約する。例えば容器は、例えば入口開口の上流と出口開口の下流に気密バルブを使用することによって気密に閉じられる。したがって、気密とは、オフ時間の間に、ガス交換が可能にされない又は実質的に可能にされず、また、少なくとも、容器の外側の周囲圧力にあることを意味する。
【0027】
更なる実施形態によれば、吸着剤を再生するために、ヒータ、真空ポンプ及び/又はガス源が更に提供される。これらのデバイスは、短い時間スケールで、吸着剤を再生するために、非常に簡単かつ効果的な手段である。したがって、使用される再生用デバイスは、所望の用途に依存する。詳細には、熱源が、容器又は吸着剤の付近に提供される場合、当該吸着剤は、熱によって容易にかつ費用効果的に再生される。例えば自動車のエンジンの廃熱は、吸着剤及びエンジン又はエンジンの暖められた部分に熱的に結合された熱交換器を提供することによって、吸着剤を再生するために使用される。これは、エンジンの廃熱がない場合に、暖房デバイスが車両の内部を暖めるという事実によって、特に有利である。しかし、エンジンの廃熱が得られる場合、本発明に係る暖房システムは、それ以上は暖める必要がないので、再生される。例えば真空ポンプが提供される場合、吸着剤は、暖房能力が特に高くなるように、吸着されたすべての又は実質的にすべての化合物を放出する。例えばガス源は提供することが特に簡単であり、吸着剤を含む容器の潜在的な気密性といった暖房デバイスの長いオフ時間に関してのみ限定された要件を有する。再生用吸着質として使用されるガスは、特に、熱を生成するために使用される吸着質の吸着エネルギーよりも小さい吸着エネルギーを含む。例えば吸着質として窒素が使用される場合に、例えば酸素、又は、ヘリウムといった希ガスが再生用吸着質として使用される。更に、様々な再生デバイスの組み合わせが提供されてもよい。例えば再生用吸着質を含むガス源が、例えば熱及び/又は真空と共に使用されても、又は、真空が熱と共に使用されてもよい。特に、使用されるガスは、好適には85%以上といった適切な純度を有する。
【0028】
更なる実施形態によれば、暖房デバイスは、携帯可能なデバイスである。詳細には、暖房デバイスは、携帯可能なデバイスとしてデザインされるのに特によく適している。熱は吸着及び/又は脱着プロセスによってのみ生成されるという事実によって、暖房のために、熱交換器、電気暖房デバイス等といった更なる構成要素を必要としない。そのため、本発明に係る暖房デバイスは、非常にコンパクトな寸法に組み立てられる。更に、エネルギー消費量は非常に少なく、ファンといったガス送出デバイスに対してのみ実質的に提供される。したがって、重く、空間を占める電池又は発電機は全く又はほとんど必要とせず、この点は、携帯可能なデバイスには特に有利である。したがって、本実施形態に係る暖房デバイスは、例えば窓の霜を取る、フロントガラスを暖める、又は運転手用のある種のコンフォートゾーンのみを暖めるために使用されるように、車両を局所的に暖める暖房デバイスとして例示的に形成されてもよい。この場合に必要となるエネルギーは、0.5mより小さい暖められる容積で、20℃の温度上昇では、20kJより小さい例示的な範囲にある。
【0029】
本発明に係る暖房デバイスの更なる利点及び技術的特徴に関して、本発明に係る方法、図面及び図面の説明についての更なる意見を参照する。
【0030】
本発明は更に、暖房方法に関し、当該方法は、入口開口と出口開口とを有する少なくとも1つの容器であって、入口開口と出口開口との間に提供され、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する吸着剤を含む、少なくとも1つの容器を提供するステップと、吸着質含有ガスを、吸着剤を含む容器の内部を通して運ぶステップであって、吸着質は吸着剤によって吸着され、これにより容器の内部を通り導かれるガスが吸着エネルギーによって暖められる、当該ステップと、暖められたガスを、暖められるべき場所に導くステップとを含む。
【0031】
本発明に係る暖房方法は、特に、本発明に係る暖房デバイスに適用可能である。したがって、暖房方法は、暖房プロセスが特に効果的に行われるという利点を提供する。詳細には、熱が吸着剤からガスストリームに直接的に伝達され、当該ガスストリームは次に、暖められるべき場所に運ばれるという事実によって、熱交換器を介した場合にあるようなエネルギー伝達による熱の損失がない。したがって、実質的にすべての生成された熱が、ある場所を暖めるために使用される。つまり、吸着プロセスによって放出される吸着エネルギーは、更なる重要なエネルギー変換ステップなしで、ある場所を暖めるために直接的に使用される。
【0032】
上記以外にも、熱を生成するために、熱交換器又は追加の電気暖房デバイスといった更なる構成要素を必要としない。したがって、本発明に係る暖房方法は、追加の電気エネルギーを必要としないので、非常に費用が低いプロセスを可能にする。したがって、本発明に係る暖房方法は、実行するのが特に簡単で、また、費用を節約し、複雑で費用のかかる装置及び構成要素又はセットアップを必要としない。
【0033】
更に、上記のとおり、暖房ステップは、非常に高速に、また、実質的に待機時間なく行われる。これは、吸着剤が、放出された吸着エネルギーだけによって、また、当該吸着エネルギーを吸着質含有ガスストリームに直接的に接触させることによって瞬時に暖まるという事実による。この結果、本発明に係る暖房方法を開始した直後に、運ばれたガスストリームは、吸着剤との直接的接触によって暖められ、暖められるべき場所を暖めるために使用される。
【0034】
したがって、本発明に係る暖房方法を実行する暖房デバイスの暖房能力は、所望の用途に対し変更されて調整される。詳細には、暖房能力は、実質的に、吸着質の吸着エネルギー、更には、容器内に提供される吸着剤の量に依存する。したがって、吸着剤及び/若しくは吸着質のタイプを適応させることによって、容器内に提供される吸着剤の量を適応させることによって、並びに/又は、再生方法を適応させることによって、暖房能力は、所望の用途に対し簡単に調整される。
【0035】
したがって、本発明に係る暖房方法は、追加のエネルギーを散逸することなく、したがって、操作費用を削減して、また更に、製造費用の削減につながる単純な構造によって、場所を暖めるのに必要な時間を大幅に短縮することができる。
【0036】
一実施形態によれば、窒素が吸着質として使用される。本実施形態は、吸着質を吸着し、熱を生成するために、吸着剤が、空気といった窒素含有ガスに接触させられるという利点を提供する。したがって、小型の交換可能なガスシリンダが使用されるか、又は、周囲空気が窒素含有ガスとして使用される場合、吸着質は全く蓄えられる必要がないため、これは、暖房方法を行うことによって費用が減少され、また更に、特にコンパクトなデザインが可能となる。上記以外にも、窒素又は空気を、吸着質を含む容器に通して運ぶことによって、ガスは、暖められる場所又は容積が、車内の内部といったように、外部に対して実質的に閉じられている場合でも、問題なく、暖められる場所に導かれる。しかし、この点は、移動中の車両内の乗客に負の影響は及ぼさず、また更に、安全問題にもつながらない。したがって、窒素含有ガスは、窒素から構成されるガス、又は、少なくとも部分的に窒素を含むガスを、特に意味する。
【0037】
更なる実施形態によれば、吸着剤を再生するために、酸素含有ガスが使用される。酸素は、例えば要求に応じて酸素を生成するために、加圧酸素容器を使用することによって、又は、酸素濃縮器を使用することによって、提供される。したがって、これは、熱を生成するために、特に費用が節約される実施形態である。上記以外にも、特にゼオライト材料を吸着剤として使用することを考慮した場合、酸素は、窒素に比べて適切に小さい吸着エネルギーを有する。したがって、暖房デバイスを動作させるときに、窒素に対して酸素を置換することによって、多くの熱が生成されるので、特に効果的な暖房プロセスにつながる。更に、特に、吸着質として窒素を使用することによって、また、特に、空気を、吸着剤を含む容器を通して導くことによって、熱を生成する際に、酸素が吸着剤から脱着され、これにより、車両の内部といった暖められるべき場所に酸素濃度の高い空気が流れる。これは、乗客に非常に適切である。酸素含有ガスは、酸素から構成されるガス、又は、少なくとも部分的に酸素を含むガスを、特に意味する。好適な酸素濃度は、酸素について適切なローディング挙動、又は、吸着質の置換を達成するために、85容量パーセント以上の範囲にある。
【0038】
更なる実施形態によれば、吸着剤を再生するために、熱及び/又は真空が使用される。詳細には、熱源が、容器又は吸着剤の付近に提供される場合、当該吸着剤は、熱によって容易にかつ費用効果的に再生される。例えば自動車のエンジンの廃熱は、吸着剤を再生するために使用される。これは、エンジンの廃熱がない場合に、暖房デバイスが車両の内部を暖めるので、特に有利である。しかし、エンジンの廃熱が得られる場合、本発明に係る暖房システムは、それ以上は暖める必要がないので、再生される。例えば真空ポンプが提供される場合、吸着剤は、暖房能力が特に高くなるように、吸着されたすべての又は実質的にすべての化合物を放出する。しかし、熱及び/又は真空は、ガスといった再生用吸着質とも一緒に使用されてもよい。
【0039】
本発明に係る方法の更なる利点及び技術的特徴に関して、本発明に係る暖房デバイス、図面及び図面の説明についての更なる意見を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照することにより明らかである。
【0041】
図1a図1aは、フルに再生された状態における本発明に係る暖房デバイスの一実施形態を示す。
図1b図1bは、部分的にロードされた状態における図1aの一実施形態を示す。
図1c図1cは、フルにロードされた状態における図1aの一実施形態を示す。
図2図2は、再生ステップ用のガス源を有する本発明に係る暖房デバイスの一実施形態を示す。
図3図3は、本発明に従って使用される暖房デバイスの例示結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に、本発明に係る暖房デバイス10が概略的に示される。当該暖房デバイス10は、例えば自動車に使用され、車両内に永久的に設置されていてもよい。或いは、暖房デバイス10は、車両内での使用又は他の暖房用途用に携帯可能なデバイスとしてデザインされてもよい。
【0043】
暖房デバイス10は、第1の開口、即ち、入口開口14と、第2の開口、即ち、出口開口16とを有するカートリッジといった少なくとも1つの容器12を含む。入口開口14及び出口開口16は、例えばガス流が入口開口14を通り容器12に入り、出口開口16を通り容器12から出る限り、本用途に対しデザインされ適応される。入口開口14及び出口開口16は、例えば多孔板としてデザインされることが好適である。
【0044】
容器12は更に、吸着質を吸着可能であって、吸着することにより吸着エネルギーを放出する吸着剤18を含むか又は当該吸着剤18が充填される。吸着剤18は、例えば、容器12の内部を完全に埋めるシーブベッドであってよい。吸着剤18は、LiLSX−フォージャサイト(faujasite)といったゼオライト材料であることが好適である。1barにおいてLi−シーブを使用して蓄積されるエネルギーの最大値は、約30kJ/kgの例示範囲内にある。車全体を暖めるためには、車両に永久的に固定されている暖房デバイスに関しては、例えば約3kgのゼオライトが必要であり、また、携帯可能なデバイスでは、0.5kgが十分である。
【0045】
更に、容器12の内部、したがって、提供されている吸着剤18は、外部の雰囲気に対し気密に密閉される。吸着剤18は、暖房デバイス10を起動するときに、吸着エネルギーを熱に直接変換可能なある種のエネルギー蓄積媒体として使用される。吸着エネルギーは、例えば当該車両の暖機運転段階後の車の動作における再生の間にふたたび回復する。
【0046】
更に、吸着質含有ガスを、容器12の内部を通して運ぶ、ファン、ポンプ等であってよいガス送出デバイス21が提供される。吸着質は、好適には窒素を含み、空気といった窒素含有ガスに存在する。これは、例えば酸素濃縮器から知られているように、特にゼオライトを使用する空気駆動式ゼオライトシステムである本発明の好適な一例をもたらす。本実施形態では、空気を迅速に暖めるためのエネルギーが、特に任意の吸着質を含まず又は特に例えば空調の空気で例えば酸素負荷されている、ゼオライトシリンダといった容器12に供給することによって生成される。窒素がはるかに高い吸着エネルギーを含むことによって、エネルギーが空気供給内の窒素による酸素の置換によって放出される。これには、通過するガスストリームの温度上昇が伴う。所与の例について、この上昇は、ゼオライトにおける窒素及び酸素の吸着エネルギーの差に直接的に相関している。リチウム置換されたフォージャサイト材料を使用すると、例えば20℃を超える気温上昇が実現可能であり、ここでは、ゼオライト吸着剤を用いた窒素による酸素の100%置換によって蓄積されるエネルギー量は、約30kJ/kgである。しかし、エネルギー蓄積容量は、使用された吸着剤18の量に比例する。
【0047】
したがって、一般に、熱を生成するために、吸着剤18は再生されなければならず、したがって、少なくとも部分的にアンロードされるか又は吸着剤18に対し吸着エネルギーeを有する吸着質が少なくとも部分的にロードされる。熱を生成するために、暖房目的に直接的に使用される吸着エネルギーは、吸着剤18を、吸着エネルギーeを有する吸着質に接触させることによって放出される。ここで、吸着エネルギーeは、吸着エネルギーeよりも高い。この点は、以下の図面に示される。
【0048】
図1aは、フルに再生され、したがって熱を生成可能な吸着剤18を含む暖房デバイス10を示し、図1b及び図1cは、それぞれ、本発明に従って暖房デバイス10を用いて行われた暖房プロセスを示し、したがって、吸着剤18は、窒素といった熱を生成するための吸着質が部分的に又はフルにロードされている。
【0049】
図1bによれば、窒素が吸着質として使用される場合には空気といった吸着質含有ガスが、入口導管20及び入口開口14を通り、容器12に運ばれる。この場合の吸着質含有ガスは、例えば車両の空調設備からくる通常のガスストリームであってよい。ガスストリームは、容器12に入り、吸着剤18と相互に作用する。吸着質は吸着剤18によって吸着され、これにより吸着エネルギーによって、容器12の内部を導かれるガスが暖められる。その結果、吸着剤18の領域18aには、吸着質がロードされる一方で、更なる領域18bは依然として再生されていて、更なる暖房能力を有する。暖められたガスストリームは次に、出口開口16に接続されている出口導管又はガス導管22を介して、暖められるべき場所に導かれる。この暖房手順は、図1cに示されるように、吸着剤18の全体が、例えば窒素である吸着質でフルにロードされるまで続く。次に、再生ステップが続く。
【0050】
図2は、再生ステップの間に、ゼオライト材料といった吸着剤18を再負荷する又は再生するための例示的な装置を示す。これは、例えば車両の暖機運転段階後、更なる暖房が必要でなくなった時に実現される。例示的な実施形態では、再生は、十分な純度を有する酸素を活用してシーブから窒素をパージすることによって行われる。再生方法は、十分な純度を有する酸素を供給する例えばガス源24を使用する。好適には、要求に応じて、周囲空気から酸素を濃縮する酸素濃縮器、又は、酸素源若しくは酸素含有ガス源としての酸素含有ガスシリンダが提供される。酸素含有ガスは、吸着剤18によって吸着されるように使用され、これにより、例えば窒素である、熱を生成するために使用された吸着質を脱着させる。ガス源24は、容器12が吸着質含有ガス源から切断され、ガス源24に接続されている場合、導管30の中に置かれたバルブ26、出口導管22、容器12、入口導管20にガスを通過させるか又は通過させないように導く。バルブ28を有する、入口導管20からの分岐は、暖房デバイス10から吸着剤18を再生するために使用されたガスを導く出口導管32である。上記のような酸素含有ガスの流れにより、窒素といった吸着質は、窒素負荷された吸着剤18aから脱着されて、再生された吸着剤18bが形成される。この再生は、それぞれ、容器12の内部、即ち、吸着剤18に作用する熱源又は真空源を提供することによって、熱又は真空によって支援される。或いは、再生ステップは、熱及び/又は真空のみに基づいてもよい。
【0051】
吸着剤18の再生に使用される吸着質含有ガスの流れは、出口32の上流の入口導管20及び導管30の下流の出口導管22にそれぞれ配置されるバルブ26、28、更にバルブ34、36によって導かれる。更にブリッジ導管38が提供される。ブリッジ導管38は、吸着質含有ガスによって容器12を迂回(bridge)する。その結果、ブリッジ導管38は、バルブ34の上流の入口導管と、バルブ36の下流の出口導管とに接続される。これにより、例えば十分な廃熱が生成される場合に、エンジンの廃熱によってガスストリームを暖めるように使用される熱交換器40を介して、吸着質含有ガスを導くことができ、当該廃熱によって暖房が行われる。ブリッジ導管38内には、対応するガスストリームを導くために、更なるバルブ42、44が提供されてもよい。
【0052】
容器12の適切な再生時間又はパージ時間は、例えば使用される吸着剤18の量、再生ガス流量、及び、吸着剤18の吸着質の負荷の程度に依存する。パージ時間及び必要なパワーの例示的な指示は次の通りである。即ち、約5l/mの酸素フローを使用して1kgの吸着剤18をパージするためには、約30分必要である(酸素濃縮器が使用される場合に必要なパワーは、P〜200W/kgの範囲内である)。
【0053】
更に、暖房デバイス10が再生状態にある場合、車両の内部は、例えば吸着質含有ガスによって又は更なるガス源からくるガスによって暖められる。
【0054】
暖房デバイス10又は例えば当該暖房デバイスが備え付けられた自動車のオフ時間は、吸着剤18を含むシリンダ12が、動作段階後に気密に密閉されている限り、本発明に係る暖房デバイス10の保守管理には影響を及ぼさない。これは、例えばバルブ26、28、34、36を閉じることによって実現される。
【0055】
上記の方法又は暖房デバイス10では、それぞれ、例えば暖房デバイス10の起動時において、吸着剤18の温度が大幅に上昇する。これは、図3に見られるような例示的で限定的ではない方法で、ビーズ温度を測定する適応型サーモカップルを有する特別にデザインされたシーブシリンダで行われた簡単な実験から推測される。
【0056】
図3は、本発明の動作原理を示す標準的な実験の結果を示す。この実験を行うために、3つのサーモカップルが、フィード側からシリンダ内のシーブ材料内に置かれた。使用されたLi−シーブ材料(SXSDM、総量210g)、並びに、直径約52mm及び長さ155mmのシリンダに対し、この温度測定は、約100gのシーブ材料の挙動を特徴とする。このシーブ材料は、実験の前に、酸素でパージされた(窒素の〜100%置換)。図3には、空気を供給ガスとして使用して得られた結果を示し、T1は、T2、T3は、それぞれ、0.5l/mの空気流入で、シーブベッドの1cm、2.5cm、6cmにおける測定値を示す。
【0057】
図3は、供給流の開始後、約t=50sにおいて、数秒の時間スケールで、温度が著しく上昇する(T2及びT3について20℃以上)ことを示す。図3から、数秒のタイムスケールで発熱(heat deposition)が生じることも分かる。図3は更に、シーブ材料から気流へと効率的なエネルギー伝達のために、既に少量のシーブ材料(1cmの長さ)で十分であることも示し、測定される温度は、シーブシリンダ内の空気の温度である。t〜50sにおける約23℃から45℃以上への急激な上昇の後、供給側(T2及びT3)からわずかに離れた気温は、流入量が大まかに一定に維持されるのにも関わらず、長時間にわたって一定のままとなる(更なる20秒間しか示されていない)。T1だけが、23℃の温度において、空気供給による最初の多少の冷却を示す。したがって、この例では、透過側の流出空気は、t>>1分間の間、高温を維持する。
【0058】
所与の例について、通過空気の温度上昇は、ゼオライトにおけるNとOの吸着エネルギーの差に直接的に相関している。Li置換されたゼオライト材料を使用すれば、20℃を上回る気温上昇が実現可能である。窒素による酸素の100%置換によって蓄積されるエネルギー量は、〜30kJ/kgの範囲内である。
【0059】
本発明は、図面及び上記の記載において詳しく例示かつ説明されたが、当該例示及び説明は、例示であって限定と解釈されるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形態様は、図面、開示内容及び添付の請求項の検討から、当業者が、請求項に係る発明を実施する際に、理解かつ実現されよう。請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるからといって、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定しているものと解釈されるべきではない。
図1a
図1b
図1c
図2
図3