(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328318
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するためにアクセスノードに実装される方法および関連するアクセスノード
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20180514BHJP
H04W 56/00 20090101ALI20180514BHJP
【FI】
H04L7/00 930
H04W56/00 110
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-500838(P2017-500838)
(86)(22)【出願日】2014年8月7日
(65)【公表番号】特表2017-524293(P2017-524293A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】CN2014083843
(87)【国際公開番号】WO2016019536
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, チェンシー
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ, チンユー
【審査官】
阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−044915(JP,A)
【文献】
特開2002−164837(JP,A)
【文献】
特開平08−307319(JP,A)
【文献】
特開2005−065210(JP,A)
【文献】
特表2010−500794(JP,A)
【文献】
特開平06−029914(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0290511(US,A1)
【文献】
特表2015−503885(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/106711(WO,A1)
【文献】
特開2010−068127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
H04W 56/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベルが1であるアクセスノード(AN)に実装される方法(500)であって、
同期レベルが0であるANがダウンしたことを検出すること(S510)と、
ランダムバックオフプロシージャを開始すること(S520)と、
前記ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1である他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定すること(S530)と、
前記ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、前記ランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期リファレンスを提供する第二同期信号を生成して、ブロードキャストすること(S540)と、を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法(500)であって、さらに、前記ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1である前記他のANにおいて生成された前記第一同期信号が受信されたと判定されると、
前記受信された第一同期信号から前記同期リファレンスを抽出すること(S550)と、
前記抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成してブロードキャストすること(S560)と、を有する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法(500)であって、さらに、前記同期リファレンスを提供する前記第二同期信号を生成してブロードキャストした後で(S540)、
同期レベルがn(n>1)であるANから第四同期信号が受信されたことを判定することであって、前記第四同期信号は前記第二同期信号によって提供される前記同期リファレンスとは異なる同期リファレンスを参照している、こと(S570)と、
前記受信された第四同期信号から前記同期リファレンスを抽出すること(S580)と、
前記抽出された同期リファレンスを参照する第五同期信号を生成してブロードキャストすること(S590)と、を有する方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法(500)であって、さらに、
同期レベルが1である前記ANの同期レベルを更新すること、を有する方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法(500)であって、
前記同期信号のそれぞれは、前記無線アクセスネットワークを識別するネットワークIDと、前記同期信号のそれぞれをブロードキャストする前記ANを識別するAN IDを搬送する、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法(500)であって、
前記同期信号のそれぞれは、さらに、前記AN IDによって識別される前記ANの能力を示す能力情報と、前記AN IDによって識別される前記ANの同期レベルを示す同期レベル情報とを搬送する、方法。
【請求項7】
階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベルがn(n>1)であるアクセスノード(AN)に実装される方法(800)であって、
同期レベルがnである前記ANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信すること(S810)と、
前記第一同期信号の受信にともないヒステリシスタイマーをスタートさせること(S820)と、
前記ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルがnである前記ANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定すること(S830)と、
前記ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されなかったと判定された場合に、前記ヒステリシスタイマーの満了の後に前記第一ANから受信された前記第一同期信号から同期リファレンスを抽出すること(S840)と、
前記抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成してブロードキャストすること(S850)と、を有する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法(800)であって、さらに、
前記ヒステリシスタイマーが満了する前に前記第二ANから前記第二同期信号が受信されたと判定された場合、または、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了する前に同期レベルがnである前記ANとは異なるさらに他のANからさらに他の同期信号が受信されたときはいつでも、前記ヒステリシスタイマーをリスタートすること(S860)と、
前記リスタートされたヒステリシスタイマーが満了した後で、前記受信された同期信号から一つの同期信号を選択すること(S870)と、
前記選択された同期信号から前記同期リファレンスを抽出すること(S880)と、
前記抽出された同期リファレンスを参照する第四同期信号を生成してブロードキャストすること(S890)と、を有する方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法(800)であって、
前記同期信号は、前記受信された同期信号によって搬送されてきた情報に基づいて、前記受信された同期信号から選択される、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法(800)であって、前記情報は、
前記受信された同期信号をブロードキャストした前記ANを識別するAN IDと、
前記AN IDによって識別される前記ANの能力を示す能力情報と、のうち少なくとも一つを含む、方法。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか一項に記載の方法(800)であって、さらに、
同期レベルがn(n>1)である前記ANの同期レベルを更新すること、を有する方法。
【請求項12】
階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するための、同期レベルが1であるアクセスノード(AN)(1100)であって、
同期レベルが0であるANがダウンしたことを検出するように構成されている検出部(1110)と、
ランダムバックオフプロシージャを開始するように構成されているランダムバックオフプロシージャ開始部(1120)と、
前記ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1である他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている判定部(1130)と、
前記ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、前記ランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期リファレンスを提供する第二同期信号を生成するように構成されている同期信号生成部(1140)と、
前記第二同期信号をブロードキャストするように構成されている同期信号ブロードキャスト部(1150)と、を有するAN。
【請求項13】
請求項12に記載のAN(1100)であって、さらに、
前記ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1である前記他のANにおいて生成された前記第一同期信号が受信されたと判定されると、前記受信された第一同期信号から前記同期リファレンスを抽出するするように構成されている同期リファレンス抽出部(1160)を有し、
前記同期信号生成部(1140)は、前記抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成するようにさらに構成されており、
前記同期信号ブロードキャスト部(1150)は前記第三同期信号をブロードキャストするようにさらに構成されている、AN。
【請求項14】
請求項12に記載のAN(1100)であって、
前記判定部(1130)は、前記同期リファレンスを提供する前記第二同期信号が生成されてブロードキャストされた後で、同期レベルがn(n>1)であるANから第四同期信号が受信されたことを判定するようにさらに構成されており、前記第四同期信号は、前記第二同期信号によって提供される前記同期リファレンスとは異なる同期リファレンスを参照しており、
前記AN(1100)は、さらに、前記受信された第四同期信号から前記同期リファレンスを抽出するように構成されている同期リファレンス抽出部(1160)を有し、
前記同期信号生成部(1140)は、前記抽出された同期リファレンスを参照する第五同期信号を生成するように構成されており、
前記同期信号ブロードキャスト部(1150)は、前記第五同期信号をブロードキャストするように構成されている、AN。
【請求項15】
請求項12ないし14のいずれか一項に記載のAN(1100)であって、さらに、
同期レベルが1である前記ANの同期レベルを更新するように構成されている同期レベル更新部を有する、AN。
【請求項16】
請求項12ないし15のいずれか一項に記載のAN(1100)であって、
前記新しい同期信号のそれぞれは前記無線アクセスネットワークを識別するネットワークIDと、前記同期信号のそれぞれをブロードキャストする前記ANを識別するAN IDを搬送する、AN。
【請求項17】
請求項12ないし16のいずれか一項に記載のAN(1100)であって、
前記同期信号のそれぞれは、さらに、前記AN IDによって識別される前記ANの能力を示す能力情報と、前記AN IDによって識別される前記ANの同期レベルを示す同期レベル情報とを搬送する、AN。
【請求項18】
階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するための、同期レベルがn(n>1)であるアクセスノード(AN)(1200)であって、
同期レベルがnである前記ANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信するように構成されている受信部(1210)と、
前記第一同期信号の受信にともないヒステリシスタイマーをスタートさせるように構成されているヒステリシスタイマースタート部(1220)と、
前記ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルがnである前記ANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている判定部(1230)と、
前記ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されなかったと判定された場合に、前記ヒステリシスタイマーの満了の後に前記第一ANから受信された前記第一同期信号から同期リファレンスを抽出するように構成されている抽出部(1240)と、
前記抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成するように構成されている同期信号生成部(1250)と、
前記第三同期信号をブロードキャストするように構成されている同期信号ブロードキャスト部(1260)と、を有するAN。
【請求項19】
請求項18に記載のAN(1200)であって、
前記ヒステリシスタイマースタート部(1220)は、前記ヒステリシスタイマーが満了する前に前記第二ANから前記第二同期信号が受信されたと判定された場合、または、リスタートされた前記ヒステリシスタイマーが満了する前に同期レベルがnである前記ANとは異なるさらに他のANからさらに他の同期信号が受信されたときはいつでも、前記ヒステリシスタイマーをリスタートするようにさらに構成されおり、
前記受信部(1210)は、前記ヒステリシスタイマーが満了する前に前記第二ANから前記第二同期信号を受信するか、または、前記リスタートされたヒステリシスタイマーが満了する前に前記さらに他のANから前記さらに他の同期信号を受信するようにさらに構成されており、
前記AN(1200)は、前記リスタートされたヒステリシスタイマーが満了した後で、前記受信された同期信号から一つの同期信号を選択するように構成されている選択部(1270)をさらに有し、
前記抽出部(1240)は、前記選択された同期信号から前記同期リファレンスを抽出するようにさらに構成されており、
前記同期信号生成部(1250)は、前記抽出された同期リファレンスを参照する第四同期信号を生成するようにさらに構成されており、
前記同期信号ブロードキャスト部(1260)は、前記第四同期信号をブロードキャストするようにさらに構成されている、AN。
【請求項20】
請求項19に記載のAN(1200)であって、
前記同期信号は、前記受信された同期信号によって搬送されてきた情報に基づいて、前記受信された同期信号から選択される、AN。
【請求項21】
請求項20に記載のAN(1200)であって、前記情報は、
前記受信された同期信号をブロードキャストした前記ANを識別するAN IDと、
前記AN IDによって識別される前記ANの能力を示す能力情報と、のうち少なくとも一つを含む、AN。
【請求項22】
請求項18ないし21のいずれか一項に記載のAN(1200)であって、さらに、
同期レベルがn(n>1)である前記ANの同期レベルを更新するように構成されている同期レベル更新部を有する、AN。
【請求項23】
アクセスノード(AN)であって、
その内部に記憶されたマシン可読プログラムコードを有するメモリと、
請求項1ないし6のいずれか一項または請求項7ないし11のいずれか一項に記載された方法を実行するように前記ANを制御するために前記記憶されているプログラムコードを実行するプロセッサと、を有するAN。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に無線通信の技術分野に関連し、とりわけ、アクセスノード(AN)において実装される方法と、階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するためのANに関連する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは本開示において記述される技術の様々な実施形態に対する背景を提供することが意図されている。このセクションにおける記述は達成可能なコンセプトを含みうるが、過去に着想または達成されたものである必要はない。したがって、ここで特に断りがない限り、このセクションにおいて記述されるものは本開示におけるこの記述および/または、クレームに対する従来技術ではなく、このセクションに含ませたことだけで従来技術として自認したものでもない。
【0003】
モバイルブロードバンドの究極的なゴールは誰にでも、すべてに、いつでも、ユビキタスと制限のないデータレートを持続的に提供することである。このゴールを達成するために、ワイド・エリア・アクセスやローカル・エリア・アクセスのためのロングタームエボリューションアドバンスド(LTE−A)の導入の成功に続く、次の重要なステップとして、超高密度ネットワーク(UDN)が提案されている。
【0004】
ミリ波帯における非常に広い帯域幅においてANとオペレーションとを十分に提供することを通じて、UDNは、ユーザ密度とトラフィックについての現実的な仮定の下でさえ、ユーザに対して所望のデータレートを提供するユビキタスアクセスの機会をもたらす。
【0005】
UDNにおいて、十分な対策は非常に高密度なANグリッドにより達成される。特別な場合、AN間の距離は数10メートル以下になることもあろう。室内配置では、各部屋に一つまたは複数のANが配置されるかもしれない。
【0006】
UDNを介した通信のための前提条件として、UDNにおけるAN間のバックホールリンク同期が、時間領域だけでなく、周波数領域でも達成されるべきであろう。時間領域の同期は、(UDNのためにTDDデュープレックスが想定される場合)アップリンク/ダウンリンク衝突を防止し、インテリジェントなセル間干渉の協調を可能とする。周波数領域の同期は、周波数誤差推定の複雑さを低減し、それによりハンドオーバ遅延を低減する。
【0007】
UDNにおいて典型的にはAN間に有線コネクションがないため、伝統的なセルラーネットワークにおいて一般に使用されている有線によるバックホールベースの同期技術(たとえば、パケットベースの同期方式やグローバルナビゲーション衛星同期方式などを含む)をもはやUDNに適用することができない。代わりに、とりわけUDNのために無線バックホールをベースとした同期技術が提案されている。
【0008】
一般に、既存の無線バックホールベースの同期技術は、階層化同期(文献1を参照のこと)と、分散同期(文献2を参照のこと)といった、二つのタイプに分類される。
【0009】
図1に示されているように階層化同期の例に従えば、UDNにおける複数のANのうちの一つが同期ルート(root)として選択され、同期レベルとして0を割り当てられる。レベル0のANに近接している他の二つのANはそれぞれ同期レベルとして1を割り当てられ、レベル0のANによってブロードキャストされる同期信号によって搬送される同期リファレンスを直接的に参照することで、レベル0のANに対して同期される。同様に、レベル1のANに近接しているANはそれぞれ同期レベルとして2を割り当てられ、レベル1のANによってブロードキャストされる同期信号によって搬送される同期リファレンスを直接的に参照することで、レベル1のANに対して同期され、以下これが繰り返される。
【0010】
このような手法により、同期ツリーがレベル0のAN(ルートAN)からレベルn(n>0)のAN(リーフAN)へと形成される。レベル1のANはレベル0のANから発信される同期リファレンスを直接的に参照することでレベル0のANに直接的に同期可能であり、一方で、より高いレベルレベルのANはレベル0のANから発信される同期リファレンスを間接的に参照することでレベル0のANに間接的に同期可能である。
【0011】
典型的には、正確な同期ソース(例:グローバルポジションシステム(GPS)ソース)にアクセスを有しているアグリゲーションノード(AGN)がルートANとして選択されてもよい。階層化同期方式の現実的な応用はカバレッジ外におけるデバイスツーデバイス通信において見られる(文献3)。
【0012】
図2に示されているような分散同期の例に従えば、各ANは一方では同期信号をブロードキャストし、他方では隣接したANからブロードキャストされる同期信号を受信する。受信した同期信号に基づいて、ANは、たとえば、受信した同期信号によって搬送されてきた同期リファレンスについて数学的な平均演算を実行することによって、自己の同期を更新する。分散同期の初期セットアップのステージ中は、収束に達するために繰り返しが必要となる。
【0013】
階層化同期方式を採用しているUDNにおけるルートANの重要な役割のため、ルートAN(つまりレベル0のAN)が停止(ダウン)してしまうと、UDNにおける同期はもはや維持不可能となる。第一の視点では、そのような危機に対して、UDNにおけるレベル1のANが、自律的に、故障(フェイル)したレベル0のANにとって代わることが実現可能な解決策に見える。しかしこの解決策は様々な形でUDN内において同期の衝突をもたらしてしまう。
【0014】
一例として、
図3はレベル1のAN間で直接同期衝突が発生するシナリオを示している。図示されているように、UDN内に二つのレベル1のANが存在し、しかもこれらがお互いに隣接している(つまり、これらはお互いに同期信号を受信できる)。レベル0のANがダウンしたケースでは、これらの二つのレベル1のANが自律的に新しい独立したルートANとして動作する。時間領域と周波数領域とにおいてこれらのローカル同期リファレンス間には本質的な違いがあるために、新しいルートANはお互いに同期していない。
【0015】
図4に示されている別のシナリオでは、二つのレベル1のANがお互いに近接して配置されていない。したがって、レベル0のANがダウンし、レベル1のANが自律的に新しい独立したルートANとして動作するケースでは、これらはお互いに同期の違いに気づくことができない。しかし、両方のレベル1のANから同期信号を受信可能なレベル2のANは、二つのレベル1のANによってブロードキャストされる統一されていない同期信号について混乱するかもしれない。よって、レベル1のAN間で間接的な同期衝突が発生する。
【発明の概要】
【0016】
上述したように、本開示の目的は、階層化同期方式を採用しているUDNにおいてルートANがダウンした場合に可能な限り同期が維持されるように、上述した同期衝突の少なくとも一つを除去または軽減することである。
【0017】
本開示の第一の観点によれば、階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベル1のANにおいて実装される方法が提供される。本方法は、同期レベルが0のANがダウンしたことを検知することと、ランダムバックオフプロシージャを開始することとを含む。本方法は、さらに、ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1の他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定することを含む。ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ランダムバックオフプロシージャの完了にともなって同期リファレンスを提供する第二同期信号が生成され、ブロードキャストされる。
【0018】
本開示の第二の観点によれば、階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベル1のANが提供される。ANは検出部、ランダムバックオフプロシージャ開始部、判定部、同期信号生成部、および、同期信号ブロードキャスト部を有する。検出部は同期レベルが0のANがダウンしたことを検出するように構成されている。ランダムバックオフプロシージャ開始部はランダムバックオフプロシージャを開始するように構成されている。判定部は、ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1の他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている。同期信号生成部は、ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期リファレンスを提供する第二同期信号を生成するように構成されている。同期信号ブロードキャスト部は第二同期信号をブロードキャストするように構成されている。
【0019】
本開示の第一および第二観点にしたがった解決手段を使用することによって、同期レベル1のAN間での直接同期衝突がかなり避けられるようになる。これは、同期レベル1のANは、ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベル1の他のANから同期信号が受信されなかった場合にのみ、ランダムバックオフプロシージャの完了にともない同期信号を生成してブロードキャストするからである。
【0020】
本開示の第三の観点によれば、階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベルn(n>1)のANにおいて実装される方法が提供される。本方法は、同期レベルnのANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信することと、第一同期信号の受信にともないヒステリシスタイマーをスタートさせることとを含む。本方法は、さらに、ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルnのANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定することを含む。ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ヒステリシスタイマーの満了の後に第一ANから受信された第一同期信号から同期リファレンスが抽出される。そして、抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号が生成され、ブロードキャストされる。
【0021】
本開示の第四の観点によれば、階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベルn(n>1)のANが提供される。ANは、受信部、ヒステリシスタイマースタート部、判定部、抽出部、同期信号生成部、および、同期信号ブロードキャスト部を有する。受信部は、同期レベルnのANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信するように構成されている。ヒステリシスタイマースタート部は、第一同期信号の受信にともないヒステリシスタイマーをスタートするように構成されている。判定部は、ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルnのANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている。抽出部は、ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ヒステリシスタイマーの満了の後に第一ANから受信された第一同期信号から同期リファレンスを抽出するように構成されている。同期信号生成部は、抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成するように構成されている。同期信号ブロードキャスト部は第三同期信号をブロードキャストするように構成されている。
【0022】
本開示の第三および第四観点にしたがった解決手段を使用することによって、同期レベル1のAN間での間接同期衝突がかなり避けられるようになる。これは、同期レベル2のANが、タイマーが満了する前に同期レベル2のANとは異なる第二ANから同期信号が受信されなかった場合にのみ、ヒステリシスタイマーの満了の後に同期レベル2のANとは異なる第一ANから受信された同期信号から同期リファレンスを抽出するからである。
【0023】
本開示の第五の観点によれば、メモリとプロセッサを有するANが提供される。メモリはその内部に記憶されたマシン可読プログラムコードを有する。プロセッサは、本開示の第一または第三の観点にしたがった方法を実行するようにANを制御するために記憶されているプログラムコードを実行する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示についての上述したおよび他の目的、特徴および有利性は図面の参照とともに本開示の実施形態についての以下の説明から明確になるであろう。
【
図1】階層化同期方式にしたがって無線アクセスネットワーク内のANがどのようにして同期されるかを示す図である。
【
図2】分散同期方式にしたがって無線アクセスネットワーク内のANがどのようにして同期されるかを示す図である。
【
図3】レベル1のAN間で直接同期衝突が発生するシナリオを示す図である。
【
図4】レベル1のAN間で間接同期衝突が発生するシナリオを示す図である。
【
図5】本開示に従った階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するための同期レベル1のANにおいて実装される方法を示すフローチャートである。
【
図6】お互いに近接して位置しているレベル1のANが
図5において示された方法にしたがって動作する例示的なシナリオを示す図である。
【
図7】お互いに離れて位置しているレベル1のANが
図5において示された方法にしたがって動作する例示的なシナリオを示す図である。
【
図8】本開示に従った階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するための同期レベルnのANにおいて実装される方法を示すフローチャートである。
【
図9】一つのレベル1のANに近接して位置しているレベル2のANが
図8において示された方法にしたがって動作する例示的なシナリオを示す図である。
【
図10】二つのレベル1のANに近接して位置しているレベル2のANが
図8において示された方法にしたがって動作する例示的なシナリオを示す図である。
【
図11】本開示に従った同期レベル1のANの構造を示す図である。
【
図12】本開示に従った同期レベルn(n>1)のANの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明において、本技術の特定の実施形態の特定の詳細が、説明目的のためであって、限定のためではなく、説明される。当業者であれば、これらの特定の詳細を離れることなく他の実施形態を採用可能であることを理解するであろう。さらに、いくつかの例示において、よく知られた方法、ノード、インタフェース、回路およびデバイスについての詳細な説明は省略され、これにより不必要な詳細によって説明が邪魔されないようになる。
【0026】
当業者は記載された機能が一つまたは複数のノードに実装されうることを理解するであろう。記載されるいくつかのまたはすべての機能は、アナログおよび/または特定の機能を実行するために相互接続されたディスクリート論理ゲート、ASIC、PLAなどのような、ハードウエア回路を使用して実装されてもよい。同様に、いくつかまたはすべての機能は、ソフトウエアプログラムおよびデータを一つ以上のデジタルマイクロプロセッサまたは汎用コンピュータと共に使用することにより実装されてもよい。エアインタフェースを使用して通信するノードが説明されるが、これらのノードは適切な無線通信回路を有しているものと理解されよう。さらに、本技術は、ここに記載された技術をプロセッサに実行させるコンピュータインストラクションの適切なセットを含むソリッドステートメモリ、磁気ディスク、または光ディスクなどの非一時的な形態を含む、コンピュータ可読メモリのいかなる形式において全体が実現されるものと理解されてもよい。
【0027】
ここに開示される技術のハードウエア実装は、限定なしに、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウエア、削減されたインストラクションセットプロセッサ、これに限定するわけではないが特定用集積回路(ASIC)および/またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを含むハードウエア(例:デジタルまたはアナログ)回路、および、そのような機能を実行することが可能な状態遷移マシンを含んでもよい。
【0028】
コンピュータ実装に関しては、コンピュータは一般に一つ以上のプロセッサまたは一つ以上のコントローラを含むものと理解され、用語としてのコンピュータ、プロセッサおよびコントローラは相互に入れ替え可能である。コンピュータ、プロセッサまたはコントローラによって提供される場合に、機能は、単一の専用コンピュータまたはプロセッサまたはコントローラによって提供されてもよいし、単一の共用コンピュータ、プロセッサまたはコントローラによって提供されてもよいし、あるいは、複数の個別のコンピュータ、プロセッサまたはコントローラによって提供されてもよく、これらのいくつかはシェアされるか、分散されていてもよい。さらに、用語としての「プロセッサ」または「コントローラ」はまたそのような機能を実行するおよび/またはソフトウエアを実行する、上述したような例示的なハードウエアのように、他のハードエアを指していてもよい。
【0029】
なお、UDNの文脈において共通に使用される用語は本実施形態を例示するために本開示において使用されるが、これは本技術の範囲を上述したシステムにのみ限定するものとみなすべきではない。無線バックホールをベースとした同期技術を適用可能な他の無線システムおよび無線アクセスネットワークは、また、本開示によりカバーされるアイデアを活かすことから利益を得よう。よって、ここで使用される用語としての「AN」は二つ以上の無線端末と直接通信することができる無線通信局のいかなる態様もより広範囲に指し示しているものと理解されるべきであろう。
【0030】
図5は本開示に従った階層化同期メカニズムを採用する無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するために同期レベル1のANにおいて実装される方法500を示している。
【0031】
図示されているように、最初に、レベル1のANはステップS510で、電力供給の途絶やハードウエア故障など、何らかの予期せぬ理由によってレベル0のANがダウンしたことを検出する。一例として、この検出は、長期間にわたりレベル0のANから、同期リファレンスを提供する同期信号が受信されるかどうかをチェックすることによって実行されてもよい。
【0032】
次にステップS520で、レベル1のANは、ランダムバックオフプロシージャを開始する。これにより、フェイルしたレベル0のANの代わりになることを同時に二つのレベル1のANが試行することに起因した他のレベル1のANとの衝突を回避するために、レベル1のANはランダムでバックオフする。これを達成するために、レベル1のANはインターバル[0、T]からランダム値tを選択し、ランダム値tと等しいタイムアウト期間をセットしたバックオフタイマーをスタートさせてもよい。バックオフタイマーが満了する前に、レベル1のANはフェイルしたレベル0のANにとって代わることをせず、つまり、時間/周波数同期リファレンス(絶対的または相対的)を提供する同期信号を生成し、無線アクセスネットワーク内でそれを直接的または間接的に参照する他のANに対してブロードキャストするルートANとしては動作しない。
【0033】
ステップS530で、レベル1のANは、ランダムバックオフ中に、他のレベル1のANにより生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定する。
【0034】
ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ステップS540で、レベル1のANは、ランダムバックオフプロシージャの完了にともなって、同期リファレンスを提供する第二同期信号を生成してブロードキャストする。
【0035】
上述した方法を使用することによって、レベル1のAN間での直接同期衝突がかなり回避されるようになる。これは、ランダムバックオフプロシージャ中に他のレベル1のANから同期信号が受信されなかった場合にのみ、ランダムバックオフプロシージャの完了とともにレベル1のANがフェイルしたレベル0のANにとって代わるからである。
【0036】
一方で、ステップS530で、ランダムバックオフプロシージャ中に他のレベル1のANによって生成された第一同期信号が受信されたと判定された場合には、ステップS550で、レベル1のANは、第一同期信号から同期リファレンスを抽出し、ステップS560で、当該抽出された同期リファレンスを参照する同期信号を生成してブロードキャストする。このように、相互に近接しているレベル1のANのうちたった一つだけがルートANとして動作することが保証可能となり、他のレベル1のANは直接的にこのルートANと同期するようになる。
【0037】
おそらく、ステップS540の後のステップS570で、レベル1のANは、レベルn(n>1)のANから第四同期信号が受信されたことを判定してもよい。ここで、第四同期信号は、第二同期信号によって提供された同期リファレンスとは異なる同期リファレンスを指し示している。次に、ステップS580で、レベル1のANは受信された第四同期信号から同期リファレンスを抽出してもよく、ステップS590で、抽出された同期リファレンスを指し示す第五同期信号を生成してブロードキャストしてもよい。このように、相互に離れているレベル1のANのうちたった一つだけがルートANとして動作することが保証可能となり、他のレベル1のANは間接的にこのルートANと同期するようになる。
【0038】
以下では、近接しているレベル1のANがお互いに上述した方法500にしたがってどのように動作するかを示すために、
図6を参照しながら第一の例示的なシナリオが説明される。
【0039】
図6を参照すると、レベル0のAN(AGNと記載されている)がダウンした後で、お互いに近接している二つのレベル1のAN(AN1とAN2と記載されている)が、上述したステップS510とS520とを実行することによって、レベル0のANの障害を検出し、二つの独立したランダムバックオフプロシージャを開始する。
【0040】
ランダムバックオフプロシージャの間は、AN1とAN2のそれぞれは上述したステップS530を実行する。AN1はAN2よりも短いランダムバックオフプロシージャを有しているため、AN1は、ランダムバックオフプロシージャの間に他のレベル1のANによって生成された第一同期信号を受信しなかったと判定する。よって、AN1は、上述したステップS540を実行することによって、自己のランダムバックオフプロシージャの完了に伴い第二同期信号を生成してブロードキャストする。
【0041】
一方で、AN2は、自己のランダムバックオフプロシージャの間に上述したステップ530を実行することによって、AN1から第一同期信号を受信したと判定しうる。よって、AN2は、上述したステップS550とステップS560とを実行することによって、第一同期信号から同期リファレンスを抽出し、当該抽出した同期リファレンスを指し示す第三同期信号を生成してブロードキャストする。
【0042】
図7では、お互いに離れているレベル1のANが上述した方法500にしたがってどのように動作するかを示すために、第二の例示的なシナリオが説明される。
【0043】
図示されているように、レベル0のAN(AGNと記載されている)がダウンした後で、お互いに離れている二つのレベル1のAN(AN1とAN2と記載されている)が、上述したステップS510とS520とを実行することによって、レベル0のANの障害を検出し、二つの独立したランダムバックオフプロシージャを開始する。
【0044】
ランダムバックオフプロシージャの間は、AN1とAN2のそれぞれは上述したステップS530を実行する。AN1とAN2との間には長い距離があるため、両者のいずれもがお互いの第一同期信号を受信することができない。よって、両者はそれぞれ、上述したステップS540を実行することによって、自己のランダムバックオフプロシージャの完了に伴い第二同期信号を生成してブロードキャストする。
【0045】
レベル2のAN(AN3として記載されている)が、AN1とAN2とによってブロードキャストされた二つの第二同期信号を受信し、以下の
図8においてより詳細に説明されるように、選択した第二同期信号に従って同期信号(第四同期信号と記載される)を生成してブロードキャストする。
【0046】
図5に関してすでに記載されたステップS570ないしS590を実行することによって、AN2は、自己がブロードキャストした第二同期信号によって提供される同期リファレンスとは異なる同期リファレンスを指し示す第四同期信号が、AN3から受信されたと判定し、受信した第四同期信号にしたがって第五同期信号を生成してブロードキャストする。
【0047】
現実的な実装において、無線アクセスネットワークにおけるANは、同期回復のプロセスにおいて自己の同期レベルを更新し、オリジナルのレベル0のノードがダウンした後に形成された新しい同期ツリーにおいて自己の同期レベルを反映してもよい。たとえば、
図6に示された第一の例示的なシナリオでは、AN1が自己の同期レベルを0に更新し、AN2は自己の同期レベルを1に更新しうる。同様に、
図7に示された第二の例示的なシナリオでは、AN1が自己の同期レベルを0に更新し、AN3は自己の同期レベルを1に更新し、AN2は自己の同期レベルを2に更新してもよい。
【0048】
同期リファレンスに加えて、ANによって生成され、ブロードキャストされる同期信号は、ネットワークID、ANのID、能力情報および同期レベル情報を搬送してもよい。
【0049】
ネットワークIDは、同期が必要とされている無線アクセスネットワークを識別する。たとえば、ネットワークIDはローカルエリア(部屋、フロア、建物などのような)または特定のエンタープライズネットワークを識別するために使用されるUDN IDであってもよい。同一のネットワークIDによって識別されるネットワーク内のすべてのANには同期が義務化される。
【0050】
ANのIDは同期信号を生成してブロードキャストしたANを識別する。たとえば、
図6、
図7に示された例示的なシナリオにおいて、AN1ないしAN3によってブロードキャストされた同期信号はそれぞれAN1ないしAN3を識別するAN IDを搬送してもよい。固有性とシグナリングのオーバーヘッドはAN IDを作成するときに考慮されてもよい。一例として、固有のAN IDは日付のようなファクターに基づいて決定されてもよい。
【0051】
能力情報は、AN IDによって識別されるANの能力を示す。たとえば、同期ソース能力情報は、ANの送信電力レベルを示し、ここで、ANは正確な同期ソースなどへの無線/有線コネクションを有している。
【0052】
同期レベル情報は、AN IDによって識別されるANの同期レベルを示す。たとえば、
図6に示した例示的なシナリオでは、AN1によってブロードキャストされる同期信号は、AN1の更新されたレベル(例:レベル0)を示す同期レベル情報を搬送してもよいし、AN2によってブロードキャストされる同期信号は、AN2の更新されたレベルを示す同期レベル情報(例:レベル1)を搬送してもよい。同様に、
図7に示された例示的なシナリオでは、AN1によってブロードキャストされる同期信号はレベル0を示す同期レベル情報を搬送し、AN3によってブロードキャストされる同期信号はレベル1を示す同期レベル情報を搬送し、AN2によってブロードキャストされる同期信号はレベル2を示す同期レベル情報を搬送してもよい。ルートANとして動作するAN1を除き、AN2およびAN3は、これらが受信する同期信号によって搬送されてきた同期レベル情報によって示される同期レベルを一つインクリメントすることによって自己の同期レベルを更新してもよい。
【0053】
図8はレベル0のANがダウンしたケースにおいて同期を維持するために同期レベルn(n>1)のANにおいて実装される方法800を示している。
【0054】
図示されているように、最初に、ステップS810でレベルnのANは、レベルnのANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信する。第一同期信号が受信された直後に、第一同期信号によって搬送されてきた同期リファレンスを抽出して中継する代わりに、ステップS820で、レベルnのANは第一同期信号を受信するとヒステリシスタイマースタートさせる。
【0055】
ステップS830で、レベルnのANは、ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルnのANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定する。
【0056】
ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されたなかったと判定された場合に、レベルnのANは、ステップS840で、ヒステリシスタイマーが満了した後で第一ANから受信された第一同期信号から同期リファレンスを抽出し、S850で、抽出された同期リファレンスを指し示す第三同期信号を生成してブロードキャストする。
【0057】
上述した方法を使用することによって、同期レベル1のAN間での間接同期衝突がかなり避けられるようになる。これは、同期レベル2のANが、ヒステリシスタイマーが満了する前に同期レベル2のANとは異なる第二ANから同期信号が受信されなかった場合にのみ、ヒステリシスタイマーが満了した後で、同期レベル2のANとは異なる第一ANから受信された同期信号から同期リファレンスを抽出するからである。同様に、2よりも高い同期レベルのANは、ヒステリシスタイマーの満了前にさらに他のANから同期信号が受信されなかった場合にのみ、ヒステリシスタイマーが満了した後で、他のANから受信された同期信号によって搬送されてきた同期リファレンスを中継する。
【0058】
一方、ステップS830でヒステリシスタイマーが満了する前にレベルnのANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたと判定された場合、または、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了する前にレベルnのANとは異なるさらに他のANからさらに他の同期信号が受信されたときはいつでも、レベルnのANはステップS860でヒステリシスタイマーをリスタートしてもよい。
【0059】
次に、S870で、レベルnのANは、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了した後で、受信された同期信号から、一つの同期信号を選択してもよい。ここで、同期信号によって搬送されてきた上述の一つ以上の情報に基づき同期信号が選択されてもよく、
図10を参照してさらなる詳細が説明される。
【0060】
同期信号が選択された後に、ステップS880で、レベルnのANは選択された同期信号から同期リファレンスを抽出してもよく、ステップS890で、抽出された同期リファレンスを指し示す第四同期信号を生成してブロードキャストしてもよい。
【0061】
以下では、たった一つのレベル1のANに近接しているレベル2のANが上述した方法800にしたがってどのように動作するかを示すために、
図9を参照しながら第一の例示的なシナリオが説明される。
【0062】
図9を参照すると、レベル0のAN(AGNと記載される)がダウンした後で、レベル1のANがレベル0の障害を検出し、ランダムバックオフプロシージャを開始する。ランダムバックオフプロシージャの間には他のレベル1のANにおいて第一同期信号が生成されないため、AN1は、ランダムバックオフプロシージャの完了にともなって同期信号(第一同期信号と記載される)を生成してブロードキャストする。
【0063】
AN1に近接して位置しているレベル2のAN(AN3と記載されている)は、上述したステップS810とS820を実行することによって、AN1から第一同期信号を受信し、ヒステリシスタイマーをスタートさせる。
【0064】
次に、上述したステップS830を実行することによって、AN3は、ヒステリシスタイマーが満了する前にAN3とは異なる第二ANから第二同期信号が受信されなかったと判定する。ついでAN3は、上述したステップS840とS850とを実行することによって、ヒステリシスタイマーが満了した後で第一ANから受信された第一同期信号から同期リファレンスを抽出し、抽出された同期リファレンスを指し示す第三同期信号を生成してブロードキャストする。
【0065】
図10では、二つのレベル1のANに近接しているレベル2のANが上述した方法800にしたがってどのように動作するかを示すために、第二の例示的なシナリオが説明される。
【0066】
図示されているように、レベル0のAN(AGNと記載されている)がダウンした後で、お互いに離れている二つのレベル1のAN(AN1とAN2と記載されている)が、レベル0のANの障害を検出し、二つの独立したランダムバックオフプロシージャを開始する。これらはいずれもがお互いからの同期信号を受信しないため、AN1は自己のランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期信号(第一同期信号と記載される)を生成してブロードキャストし、一方で、AN2も自己のランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期信号(第二同期信号と記載される)を生成してブロードキャストする。
【0067】
AN1のランダムバックオフプロシージャは、AN2のそれもより短いため、AN1に近接して位置しているレベル2のAN(AN3と記載されている)が、上述したステップS810とS820を実行することによって、AN1によってブロードキャストされた第一同期信号を最初に受信し、ヒステリシスタイマーをスタートさせうる。
【0068】
次に、上述したステップS830とS860を実行することによって、AN3は、ヒステリシスタイマーが満了する前にAN2から第二同期信号が受信されたと判定し、ヒステリシスタイマーをリスタートしうる。現実的な実装によれば、AN2から第二同期信号が送信されたケースにおいてヒステリシスタイマーが満了する前にAN3において第二同期信号を受信できることを確実にするために、ヒステリシスタイマーのタイムアウト期間は、AN1とAN2とによってそれぞれランダムバックオフプロシージャを開始するために使用されるインターバル[0,T]の上限を設定されてもよい。
【0069】
ヒステリシスタイマーの満了前には他の同期信号が受信されないため、AN3は、ヒステリシスタイマーの満了後に、上述したステップS870を実行することによって、受信された第一同期信号と第二同期信号とから一つの同期信号を選択してもよい。ここで、ヒステリシスタイマーの満了前に、AN3とは異なるさらに他のANからさらに他の同期信号が受信されたときはいつでも、AN3は、ヒステリシスタイマーをリスタートして、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了した後にすべての受信された同期信号から一つを選択してもよいが、これは
図10において明示的には示されていない。
【0070】
上述したように、選択は、受信された同期信号によって搬送されてきた情報に基づいて実行されてもよい。限定ではなく図解のために、AN3は、第一同期信号と第二同期信号によって搬送されるAN IDを比較して、より大きなIDに対応する、AN1およびAN2のうちの一つを選択してもよい。あるいは、AN IDを比較する前に、AN3は、第一同期信号と第二同期信号によって搬送される能力情報を比較して、より高い能力に対応する、AN1およびAN2のうちの一つを選択してもよい。
【0071】
同期信号が選択された後で、AN3は、上述したステップS880とステップS890とを実行することによって、選択された同期信号から同期リファレンスを抽出し、当該抽出した同期リファレンスを指し示す第四同期信号を生成してブロードキャストしてもよい。
【0072】
以下では、本開示に従った階層化同期メカニズムを採用している無線アクセスネットワークにおいて同期を維持するための同期レベル1のAN1100と同期レベルnのAN1200の構造が、
図11、
図12をそれぞれ参照して説明される。
【0073】
図11に示されるように、AN1100は検出部1110、ランダムバックオフプロシージャ開始部1120、判定部1130、同期信号生成部1140、および、同期信号ブロードキャスト部1150を有する。検出部110は同期レベルが0のANがダウンしたことを検出するように構成されている。ランダムバックオフプロシージャ開始部1120はランダムバックオフプロシージャを開始するように構成されている。判定部1130は、ランダムバックオフプロシージャの間に同期レベルが1の他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている。同期信号生成部1140は、ランダムバックオフプロシージャの間に第一同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ランダムバックオフプロシージャの完了にともない、同期リファレンスを提供する第二同期信号を生成するように構成されている。同期信号ブロードキャスト部1150は第二同期信号をブロードキャストするように構成されている。
【0074】
実施形態において、AN1100は、同期リファレンス抽出部1160をさらに有していてもよい。同期リファレンス抽出部1160は、ランダムバックオフプロシージャの間に、同期レベルが1である他のANにおいて生成された第一同期信号が受信されたと判定された場合に、受信された第一同期信号から同期リファレンスを抽出するように構成されていてもよい。同期信号生成部1140は、抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成するようにさらに構成されていてもよい。ブロードキャスト部1150は第三同期信号をブロードキャストするように構成されていてもよい。
【0075】
実施形態によれば、判定部1130は、同期リファレンスを提供する第二同期信号が生成されてブロードキャストされた後で、同期レベルがn(n>1)であるANから第四同期信号が受信されたと判定してもよく、ここで第四同期信号は、第二同期信号によって提供された同期リファレンスとは異なる同期リファレンスを指し示している。同期リファレンス抽出部1160は、受信された第四同期信号から同期リファレンスを抽出するように構成されていてもよい。同期信号生成部1140は、抽出された同期リファレンスを参照する第五同期信号を生成するように構成されていてもよい。同期信号ブロードキャスト部1150は第五同期信号をブロードキャストするように構成されている。
【0076】
実施形態によれば、AN1100は、同期レベルが1であるANの同期レベルを更新するように構成された同期レベル更新部をさらに有していてもよい。
【0077】
当業者であれば理解するであろうが、上述された検出部、ランダムバックオフプロシージャ開始部、判定部、同期信号生成部、同期信号ブロードキャスト部、同期リファレンス抽出部、および、同期レベル更新部は、適切な専用回路によって個別に実現されてもよい。あるいは、これらの部分は機能的な組み合わせ又は分離を通して専用回路のいくつかを使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態によれば、これらの部分は、単一の特定用途集積回路(ASIC)において一体化されてもよい。
【0078】
代替的なソフトウエアベースの実装として、AN1100は、メモリ、プロセッサ(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはデジタル信号プロセッサ(DSP)を含む、これらに限定されるわけではない)および送受信機を有してもよい。メモリは、プロセッサによって実行可能なマシン可読プログラムコードを記憶する。プロセッサは、マシン可読プログラムコードを実行すると、検出部、ランダムバックオフプロシージャ開始部、判定部、同期信号生成部、同期信号ブロードキャスト部、同期リファレンス抽出部、および、同期レベル更新部の機能を実行する。送受信機は、プロセッサによって生成されたいずれかの同期信号をブロードキャストする。
【0079】
図12に示されるように、AN1100は、受信部1210、ヒステリシスタイマースタート部1220、判定部1230、抽出部1240、同期信号生成部1250、および、同期信号ブロードキャスト部1260を有する。受信部1210は、同期レベルがnであるANとは異なる第一ANから第一同期信号を受信するように構成されている。ヒステリシスタイマースタート部1220は、第一同期信号の受信にともないヒステリシスタイマーをスタートするように構成されている。判定部1230は、ヒステリシスタイマーの満了の前に同期レベルがnであるANとは異なる第二ANから第二同期信号が受信されたかどうかを判定するように構成されている。抽出部1240は、ヒステリシスタイマーの満了の前に第二同期信号が受信されなかったと判定された場合に、ヒステリシスタイマーの満了の後に第一ANから受信された第一同期信号から同期リファレンスを抽出するように構成されている。同期信号生成部1250は、抽出された同期リファレンスを参照する第三同期信号を生成するように構成されている。同期信号ブロードキャスト部1260は第三同期信号をブロードキャストするように構成されている。
【0080】
実施形態によれば、ヒステリシスタイマースタート部1220は、ヒステリシスタイマーが満了する前に第二ANから第二同期信号が受信された場合、または、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了する前に同期レベルがnであるANとは異なるさらに他のANからさらに他の同期信号が受信されたときはいつでも、ヒステリシスタイマーをリスタートするようにさらに構成されていてもよい。受信部1210は、ヒステリシスタイマーが満了する前に第二ANから第二同期信号を受信するか、または、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了する前にさらに他のANからさらに他の同期信号を受信するようにさらに構成されていてもよい。AN1200は、リスタートされたヒステリシスタイマーが満了した後で、受信された同期信号から一つの同期信号を選択するように構成された選択部1270をさらに有していてもよい。抽出部1240は、選択された同期信号から同期リファレンスを抽出するようにさらに構成されていてもよい。同期信号生成部1250は、抽出された同期リファレンスを参照する第四同期信号を生成するようにさらに構成されていてもよい。同期信号ブロードキャスト部1260は第四同期信号をブロードキャストするようにさらに構成されていてもよい。
【0081】
実施形態によれば、同期信号は、受信した同期信号によって搬送されてきた情報に基づいて、受信した同期信号から選択されてもよい。
【0082】
実施形態によれば、AN1200は、同期レベルがn(n>1)であるANの同期レベルを更新するように構成された同期レベル更新部をさらに有していてもよい。
【0083】
当業者であれば理解するであろうが、上述された受信部、ヒステリシスタイマースタート部、判定部、抽出部、同期信号生成部、同期信号ブロードキャスト部、選択部、および、同期レベル更新部は、適切な専用回路によって個別に実現されてもよい。あるいは、これらの部分は機能的な組み合わせ又は分離を通して専用回路のいくつかを使用して実装されてもよい。いくつかの実施形態によれば、これらの部分は、単一の特定用途集積回路(ASIC)において一体化されてもよい。
【0084】
代替的なソフトウエアベースの実装として、AN1200は、送受信機、メモリおよびプロセッサ(マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはデジタル信号プロセッサ(DSP)などを含むが、これらに限定されるわけではない)を有してもよい。送受信機は、同期レベルがn−1であるANからいずれかの同期信号を受信する。メモリは、プロセッサによって実行可能なマシン可読プログラムコードを記憶する。プロセッサは、マシン可読プログラムコードを実行すると、ヒステリシスタイマースタート部、判定部、抽出部、同期信号生成部、選択部、および、同期レベル更新部の機能を実行する。送受信機は、さらに、プロセッサによって生成されたいずれかの同期信号をブロードキャストする。
【0085】
本開示は、本開示の実施形態を参照しながら以上で説明された。しかし、これらの実施形態は本開示を限定するものではなく、図解目的で提供されている。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲だけでなく、その均等物によって定義される。当業者であれば、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な置換や変形を行うことが可能であり、これらも本開示の範囲に含まれる。
【0086】
リファレンス
[1]3GPP TR 36.922 V11.0.0, 2012−09.
[2]O. Simeone, U. Spagnolini, Y. Bar−Ness, S. H. Strogatz, “Distributed Synchronization in Wireless Netoworks”, IEEE SIGNAL PROCESSING MAGAZINE, pp. 81−97, September 2008.
[3]3GPP TR 36.843 V12.0.1, 2014−03.