(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328343
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】液状またはガス状作動物質用の少なくとも2つの貯蔵タンクを有する自動車の注入システム
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20180514BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20180514BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
B60K15/04 E
B60K13/04 Z
F02M37/00 301N
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-531224(P2017-531224)
(86)(22)【出願日】2015年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-538623(P2017-538623A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2015078978
(87)【国際公開番号】WO2016091875
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2017年8月9日
(31)【優先権主張番号】102014118400.9
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100101432
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 太
(72)【発明者】
【氏名】オイリッツ、ディルク
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第1449702(EP,A2)
【文献】
特開2011−213128(JP,A)
【文献】
特表2002−530603(JP,A)
【文献】
実開平3−30686(JP,U)
【文献】
特開2004−115097(JP,A)
【文献】
特開平5−186606(JP,A)
【文献】
特表2002−530249(JP,A)
【文献】
特開2012−158215(JP,A)
【文献】
特開2006−160093(JP,A)
【文献】
特開2008−49952(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0012205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
B60K 13/04
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状またはガス状作動物質用の少なくとも2つの貯蔵タンクを有する自動車の注入システム(1)であって、
前記自動車の車体(4)にある開口部(3)を閉鎖すると共に前記開口部(3)を閉鎖する第1の位置から前記開口部を開放する第2の位置へと移動させることができるタンク閉鎖カバー(7)を備え、前記貯蔵タンクの少なくとも2つの注入開口部が、前記タンク閉鎖カバー(7)の下方に配置されると共にタンク閉鎖カバー(7)の前記第1の位置では隠されるものであり、
前記注入開口部の周縁部を形成する注入受け皿(2)を備え、前記注入受け皿(2)は、前記自動車の前記車体(4)の前記開口部(3)を車両側で閉鎖し且つ前記自動車の前記車体(4)に固定されるものであり、
少なくとも1つの注入ヘッド(6)を備え、前記注入開口部が注入ヘッド(6)の一部として形成されるものであり、前記注入ヘッド(6)は、組み合わされて共通の構成要素を形成するとともに互いに一体的に接続される少なくとも2つの口金部(9a、9b)を画成し、各口金部(9a、9b)が異なる貯蔵タンク用の注入開口部を形成することを特徴とする注入システム。
【請求項2】
前記注入ヘッド(6)が、熱可塑性材料から射出成形されるか、または熱可塑性材料の射出成形された部品から組み立てられていることを特徴とする請求項1に記載の注入システム。
【請求項3】
前記注入ヘッド(6)が、少なくとも部分的に導電性で形成され、前記自動車の前記車体(4)に導電的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の注入システム。
【請求項4】
前記注入ヘッド(6)が導電性充填材を含む熱可塑性材料から成ることを特徴とする請求項3に記載の注入システム。
【請求項5】
前記注入ヘッド(6)が、前記自動車の前記車体(4)に導電的に接続されている金属の周縁部および/または金属インサートを有していることを特徴とする請求項3または4に記載の注入システム。
【請求項6】
前記注入ヘッド(6)が前記自動車の前記車体(4)に固定されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項7】
前記注入受け皿(2)が熱可塑性エラストマーから成ることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項8】
前記注入ヘッド(6)が、注入キャップなしで少なくとも1つの注入開口部を封止する少なくとも1つの閉鎖フラップ機構を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項9】
前記閉鎖フラップ機構が前記自動車の前記車体(4)に導電的に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の注入システム。
【請求項10】
前記注入ヘッド(6)が、燃料用の注入チャネル(10a、10b)と、排気ガスの選択的触媒還元脱硝用の添加剤水溶液のための注入チャネル(10a、10b)とを有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項11】
前記注入ヘッド(6)が、燃料用の注入チャネル(10a、10b)と水用の注入チャネル(10a、10b)とを有していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の注入システム。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載の前記閉鎖フラップ機構が、前記燃料用の注入チャネル(10a、10b)を閉鎖することを特徴とする請求項10または11に記載の注入システム。
【請求項13】
前記閉鎖フラップ機構は、電気的にロック及びロック解除可能である、あるいは電気的および/または空気圧的に作動可能であることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状又はガス状作動物質用の少なくとも2つの貯蔵タンクを有する自動車の注入システムに関し、自動車の車体にある開口部を閉鎖すると共に開口部を閉鎖する第1の位置から開口部を開放する第2の位置へと移動させることができるタンク閉鎖カバーを備え、貯蔵タンクの少なくとも2つの注入開口部がタンク閉鎖カバーの下方に配置されると共にタンク閉鎖カバーの第1の位置で隠されるものであり、また、注入開口部の周縁部を形成する注入受け皿を備え、注入受け皿は、車両側で自動車の車体にある開口部を閉鎖し且つ自動車の車体に固定されているものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なタンク閉鎖カバーの下方に配置された異なる貯蔵タンクに対する複数の注入開口部を有する自動車の注入システムは、原則的に、従来技術において、例えばEP1449702A2(特許文献1)、WO2006/035013A1(特許文献2)、
US4852892A(特許文献4)、またはUS2010/0012205A1(特許文献3)によって知られている。
例えば、特許文献4によって知られている注入システムは、該文献の図3に示される変形例では、単一の注入開口部と2つの注入チャネルとを有する単一の注入孔を備え、注入チャネルはそれぞれ別個の燃料容器に通じている。
【0003】
近年、特にディーゼル車に関して、排気ガスの脱硝システム、特に、車両の排気ラインに噴射される尿素水溶液を用いて排気ガスの選択的触媒還元の原理に基づいて動作するシステムが確立されてきている。このため、尿素水溶液を自動車内に貯蔵することが必要である。尿素水溶液を収容するためのタンクは、車両を通常の保守点検間隔で保守点検する際に、作業場でドラムから注入することができるように、寸法および配置が決められる。車両の所有者によって尿素タンクが再注入できるようにする必要性が増しており、そのため、車両の外部からアクセス可能な排ガス脱硝用の添加剤水溶液のための注入孔を設ける必要が生じている。
【0004】
したがって、原則的に、燃料用の注入孔に加えて、例えば添加剤容器など二次流体用容器に注入するための少なくとも1つの更なる注入孔を、自動車のタンク閉鎖カバーの下方に設けることが知られている。
【0005】
このように単一のタンク閉鎖カバーの下方に複数の注入孔を共通して配置することの技術的問題は、設置に利用することが可能な自動車の車体内部の空間である。第一に、2つのシステムを単一のタンク閉鎖カバーの下方に配置するのに十分な空間でなければならず、第二に、ねじ山を介して嵌合され且つ取り外れるという意味で、注入開口部上に設けられるいかなる閉鎖キャップも使用可能であるように、これらのシステムが配置されなければならない。このことによって必然的に、タンク閉鎖カバーは、美観的に好ましくない特定の寸法を有さなければならなくなる。特に小型車の場合、比較的大きなタンク閉鎖カバーは様式的に不快なものである。
【0006】
この問題を解決するため、US2010/0012205A1(特許文献3)は、長手方向に変位可能なパネルに挿入された第1および第2の注入開口部を備える注入システムを提案している。パネルは、第1の構成と第2の構成との間で車両の車体内部で変位可能であり、第1の構成では、第1の注入開口部が自動車の車体に固定された開口部と位置合わせされて配置され、第2の構成では、第2の注入開口部がこの開口部と整列して配置される。この解決策は、電動調節機構を要し、それに加えて、自動車の車体内部に比較的大きな設置空間を占める。この構成の1つの利点は、間違いなく、自動車の車体にある開口部を比較的小さく保つことができ、それに対応して、必要なタンク閉鎖カバーが小さくて済むことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1449702号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/035013号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0012205号明細書
【特許文献4】米国特許第4852892号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、美観上の要件を適切に満たしながら、できるだけ設置空間が小さく且つ比較的シンプルな機械的設計を有するように、自動車に対する上述の注入システムを改善するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項によってもたらされる。
【0010】
本発明の一態様は、液状またはガス状作動物質用の少なくとも2つの貯蔵タンクを有する自動車の注入システムに関し、自動車の車体にある開口部を閉鎖すると共に開口部を閉鎖する第1の位置から開口部を開放する第2の位置へと移動させることができるタンク閉鎖カバーを備え、貯蔵タンクの少なくとも2つの注入開口部がタンク閉鎖カバーの下方に配置されると共にタンク閉鎖カバーの第1の位置では隠されるものであり、また、注入開口部の周縁部を形成する注入受け皿を備え、注入受け皿は、車両側で自動車の車体の開口部を閉鎖し且つ自動車の車体に固定されるものであり、更に、少なくとも1つの注入ヘッドを備え、注入開口部が注入ヘッドの一部として形成されるものであり、注入ヘッドは、組み合わされて共通の構成要素を形成するとともに互いに一体的に接続される少なくとも2つの口金部を画成し、各口金部が異なる貯蔵タンク用の注入開口部を形成するものである。
【0011】
「作動物質」という用語は、本発明においては、燃料、即ち液状またはガス状燃料を意味し、また、添加剤、油、水、または洗浄流体も意味する。
【0012】
本発明は、特に本発明の意味における貯蔵タンクとしての燃料タンクと添加剤容器との組み合わせに関して以下に記載されるが、本発明は、この特定の貯蔵タンクの組み合わせに限定されるものではない。本発明の基盤となる課題は、原則的に、自動車が、運転者による再注入のために車体の外部からアクセス可能でなければならない、車両の異なる作動物質用の2つ以上の貯蔵タンクを備えている場合に常に生じるものである。
【0013】
「注入受け皿」という用語は、本発明においては、特に、車両側で自動車の車体にある開口部を閉鎖する機能に加えて、注入ヘッドと自動車の車体との間の公差を補う機能も果たし、車体によって囲まれた空間への流体の意図された導入を妨げない、注入開口部の周縁部を意味する。
【0014】
本発明による注入ヘッドは、それに対応する注入受け皿の受容部にぴったり挿入することができる。注入ヘッドの受容部として対応するように形成された注入受け皿の開口部は、注入ヘッドの外形に適切に適合される。
【0015】
特に、異なる貯蔵タンクに対する注入開口部が、注入ヘッドの共通の構成要素として形成されるので、複数の貯蔵タンクを装入するのに要する設置空間を大幅に低減することができる。注入開口部は、互いからの距離をできるだけ最小限にして位置付けられ、それによって必要な設置空間をできるだけ小さくすることができる。
【0016】
本発明による設計は、更に、注入ヘッドの車体側の固定または車体側の接続が単一部分のみを必要とするという利点を有する。
【0017】
好適には、注入ヘッドは熱可塑性材料から射出成形される。注入ヘッドは、例えば、いくつかの射出成形された部品から組み立てられてもよい。
【0018】
注入ヘッドは、例えば、熱可塑性エラストマーまたは別の比較的軟質の熱可塑性材料から形成されてもよい。
【0019】
特に、注入受け皿が熱可塑性エラストマーから作られている場合、注入開口部または注入ヘッドの周囲の領域に、また場合によっては、注入受け皿を自動車の本体に接続する領域にも、追加のシーラントを設ける必要はない。
【0020】
注入ヘッドは、例えば、貯蔵タンクへの2つ以上の出口を備えてもよく、出口は例えば、別個の貯蔵タンク用の注入管として形成されるか、またはそこに貯蔵タンクのそれぞれの注入管が接続される。注入管は、熱可塑性材料で作られ、可撓性または剛性であり、注入ヘッドの出口にそれぞれ接続されてもよい。例えば、注入管は、注入ヘッドの出口上に押し込められるか、延伸して出口に被せられるか、またはクランプを用いて出口に取り付けることもできる。
【0021】
あるいは、例えば、少なくとも1つの注入管を注入ヘッドに一体的に形成することができる。
【0022】
本発明による注入システムの特に好ましい有利な変形例では、注入ヘッドは、少なくとも部分的に導電性に形成され、受動車の車体に導電的に接続される。注入ヘッドのこのような設計は、特に、本発明による注入システムにおいて、注入ヘッドによって画成される燃料の注入チャネルと、注入ヘッドによって画成される他の作動流体用の注入チャネルの両方を、電気的に接地できるという理由で有利である。好ましくは、注入チャネルの少なくとも1つは、それ自体が導電性充填プラスチックで作られる。
【0023】
これは、例えば、熱可塑性材料から形成された注入ヘッドが導電性充填材を含む場合に、特に容易に達成することができる。導電性充填材は、好ましくは、炭素、スス、炭素繊維、金属粒子、およびフェライト粒子を含む群から選択される。
【0024】
これに代えてまたはそれに加えて、注入ヘッドは、自動車の本体に導電的に接続される金属の周縁部および/または金属インサートを備えてもよい。金属インサートは、例えば、注入ヘッドの少なくとも1つの注入チャネル内まで延在する、いわゆるアーススパイクであってもよい。あるいは、金属ホッパーが少なくとも1つの注入チャネル内に設けられてもよい。
【0025】
好適には、本発明による注入ヘッドは、自動車の車体の支持部分に取り付けられ、注入受け皿は自動車の車体外側に取り付けることができる。
【0026】
本発明による注入システムの特に好ましい変形例では、注入ヘッドは、注入キャップなしに少なくとも1つの注入開口部を封止する少なくとも1つの閉鎖フラップ機構を備えて設けられる。このシステムは、一般に、「キャップレス」システムとして知られている。このように、注入受け皿に囲まれた空間内で閉鎖キャップを扱うための追加空間を設ける必要がないので、設置空間の更なる実質的な削減が達成される。このようなシステムでは、少なくとも1つの閉鎖キャップ、好ましくは燃料注入開口部のためのものを、省略することができる。
【0027】
一体化された閉鎖フラップ機構が、自動車の車体に導電的に接続されることが適切である。
【0028】
好適には、注入ヘッドは、燃料用の注入チャネルと、排気ガスの選択的触媒還元脱硝用の添加剤水溶液のための注入チャネルとを有し、閉鎖フラップ機構は燃料用の注入チャネルを閉鎖する。
【0029】
閉鎖フラップ機構が電気的にロックおよびロック解除され、ならびに/あるいは電気的および/または空気圧的に作動され得ることが特に適切である。
【0030】
注入ヘッドは、例えば、注入ヘッドの導電性および注入ヘッドの構造的補強の両方をもたらすような比率で炭素繊維充填材を含む熱可塑性材料で作られてもよい。
【0031】
注入開口部を形成し、それぞれの注入チャネルを取り囲む口金部は、注入される作動媒体に合わせて設計が適合される。したがって、一方の口金部は、燃料ノズルを受け入れるように通常の形態で構成され、他方の口金部は、排気ガスの選択的触媒還元脱硝用の添加剤水溶液のためのノズルを受け入れるように構成され得る。この口金部はまた、例えばいわゆる「クルーゼシリンダ(Kruse cylinder)」など、注入ドラムからのユニオンナット接続部を受け入れる雄ねじ部を有してもよい。口金部はまた、ノズルを解放する磁石を備えてもよい。
【0032】
本発明による注入ヘッドは、少なくとも1つの貯蔵タンクのための、少なくとも1つの高速通気弁または高速パージ弁をさらに備えることができ、高速通気弁または高速パージ弁は、タンク閉鎖カバーの作動によってまたは閉鎖フラップ機構の作動によって生成された制御信号を受信する。このような高速パージまたは高速通気は、例えば、貯蔵タンクの1つがハイブリッド車両の圧力タンクとして構成されている場合に望ましく、また有利である。
【0033】
貯蔵タンクの注入時の注入遮断機能を保証するために、1つ以上の保守点検用パージ弁を作動させる手段を注入ヘッドに設けることが賢明である。保守点検用パージ弁を作動させる手段は、例えば、注入チャネル内に延在するスイッチ要素であってもよい。あるいは、閉鎖フラップ機構の作動によってまたはタンク閉鎖カバーの作動によって生成される制御信号によって作動が行われてもよい。
【0034】
以下、本発明について、図面に示される例示的な実施形態を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による注入システムの自動車上の注入受け皿をタンク閉鎖カバーが開放された状態で示す平面図である。
【
図3】
図3aの先行技術による注入システムと、
図3bの本発明による注入システムとの間の原理の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
まず、本発明による注入システム1の開放された注入受け皿2の平面図を示す
図1を参照する。注入受け皿2は、自動車の車体4にある開口部3の車両側に閉鎖部を形成する。例えば、TPE(熱可塑性エラストマー)で作られた皿状の保護カバーから形成されている。注入受け皿2は、注入ヘッド6の受容部として形成された開口部5を備えている。注入受け皿2は、自動車の車体4に回動可能にヒンジ留めされたタンク閉鎖カバー7によって閉鎖することができる。
【0037】
図1に示されるタンク閉鎖カバー7の位置では、タンク閉鎖カバー7が2つの注入開口部8a、8bを露出するように注入受け皿2が開放されているのに対して、閉鎖位置(不図示)では、タンク閉鎖カバー7は注入開口部8a、8bを隠す。
図1の左側に示される注入開口部8aは、排気ガスの選択的触媒還元脱硝用の添加剤水溶液のための注入開口部として設けられ、
図1の右側に示される注入開口部8bは、燃料用の注入開口部として設けられている。
【0038】
注入開口部8a、8bは、熱可塑性材料で一体的に形成された注入ヘッド6の一体部分である。注入開口部8a、8bはそれぞれ、注入開口部8a、8bそれぞれを画定する口金部9a、9bを備えている。
【0039】
各注入開口部8a、8bは、注入チャネル10a、10bへ通じている。
【0040】
図に示す注入システム1では、注入チャネル10bが燃料注入チャネルとして構成され、前記システムは、キャップレスシステムとして、即ち、外部からねじ留めすることができる閉鎖キャップなしに、
図2に示されるような一体化された閉鎖フラップ機構を備えて形成されている。図面は、閉鎖フラップ機構に関して大幅に単純化している。
【0041】
注入ヘッド6には、1つ以上の固定ボア12を有する一体成形された固定ブリッジ11が設けられ、注入ヘッド6は、固定ボア12を介して自動車の車体4の支持部分に固定することができる。
【0042】
固定ブリッジ11は、注入ヘッド6と同様に、導電性充填材を含む熱可塑性材料から形成することができ、固定ブリッジ11を介して、自動車の車体4の導電性部分に対して導電接続することができる。
【0043】
次に
図2の断面図を参照すると、注入チャネル10bの領域におけるノズル13が注入チャネル10b内に挿入されている注入システム1の部分の断面が示されている。
【0044】
図2は、自動車の車体4に対する注入受け皿2の接続は示していない。それ以外は、同じ構成要素には同じ参照番号が付されている。
【0045】
注入ヘッド6の注入チャネル10bは、中に挿入された閉鎖フラップ機構14を取り囲んでおり、該機構は第1および第2の閉鎖フラップ14a、14bを備えている。第1および第2の閉鎖フラップ14a、14bは電気的に解除可能であり得る。これらは、例えば、ノズル13が注入チャネル10bに挿入されると、フェイルセーフ機構(不図示)に抗して、ノズルによって機械的に開かれる。
【0046】
注入ヘッド6は、それぞれの注入管16bが接続される2つの出口15a、15bを更に備えている。
【0047】
次に、
図3aおよび
図3bを参照する。図面は、原則的に、本発明による注入システム1(
図3b)と、従来技術による注入システム(
図3a)との相違を示している。従来技術のシステムでは、2つの注入ヘッドを設けなければならないため、それぞれの注入開口部間の距離を必然的に比較的大きく選択しなければならないことが明白であるが、これに対し本発明による注入システム1では、両方の注入開口部8a、8b(
図1を参照)が注入ヘッド6の一部として形成され、また注入ヘッド6が、共通の構成要素に組み合わされると共に互いに一体的に形成され且つ異なる貯蔵タンク用の注入開口部8a、8bをそれぞれ形成する少なくとも2つの口金部9a、9bを画成するため、明らかに必要な空間または設置空間がはるかに小さくなる。
図3aおよび3bの図面は大幅に単純化されて示されており、注入ヘッドの他の機能的要素または構成要素は、簡略化のためにここでは示されていない。
【符号の説明】
【0048】
1 注入システム
2 注入受け皿
3 開口部
4 車体
5 注入受け皿の開口部
6 注入ヘッド
7 タンク閉鎖カバー
8a 添加剤用の注入開口部
8b 燃料用の注入開口部
9a、9b 口金部
10a、10b 注入チャネル
11 固定ブリッジ
12 固定ボア
13 ノズル
14 閉鎖フラップインサート
14a 第1の閉鎖フラップ
14b 第2の閉鎖フラップ
15a、15b 出口
16b 注入管