特許第6328505号(P6328505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328505
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】トリポード型等速自在継手
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/205 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   F16D3/205 M
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-140504(P2014-140504)
(22)【出願日】2014年7月8日
(65)【公開番号】特開2016-17569(P2016-17569A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達朗
【審査官】 西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−330049(JP,A)
【文献】 特開2005−036982(JP,A)
【文献】 特開2006−283828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 3/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向の三等分位置に軸方向に延びるトラック溝を形成した外側継手部材と、シャフトとトルク伝達可能にスプライン嵌合するトラニオン胴部とこのトラニオン胴部の円周方向の三等分位置から半径方向に突出したトラニオンジャーナルとからなるトリポード部材と、前記各トラニオンジャーナルの回りに複数の針状ころを介して回転可能に装着された球状ローラとを備え、この球状ローラが前記トラック溝に収容され、前記球状ローラの外球面が前記トラック溝の両側壁に形成されたローラ案内面によって案内されるようにしたトリポード型等速自在継手において、
前記ローラ案内面の半径方向の外方端部を結ぶ大内径をD1とし、前記ローラ案内面の半径方向の内方端部を結ぶ小内径をD2としたとき、D2とD1の比D2/D1を0.73〜0.80とし、かつ、前記トリポード部材のトラニオン胴部に形成したスプライン大径をdとし、前記ローラ案内面のピッチ円直径をPCDとしたとき、dとPCDの比d/PCDを0.60以上としたことを特徴とするトリポード型等速自在継手。
【請求項2】
前記dとPCDの比d/PCDを0.62〜0.70としたことを特徴とする請求項1に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項3】
前記球状ローラの幅をLsとし、前記球状ローラの外径をDsとしたとき、LsとDsの比Ls/Dsを0.20〜0.27としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトリポード型等速自在継手。
【請求項4】
前記針状ころの長さをLnとし、前記トラニオンジャーナルの外径をDjとしたとき、LnとDjの比Ln/Djを0.40〜0.47としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のトリポード型等速自在継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械等における動力伝達に使用される摺動式のトリポード型等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
トリポード型等速自在継手51は、図5に示すように、円周方向の三等分位置に軸方向に延びる3本のトラック溝53を有し、各トラック溝53の対向する側壁にローラ案内面54を形成した外側継手部材52と、トラニオン胴部61の円周方向の三等分位置から半径方向に突出したトラニオンジャーナル62を有するトリポード部材60と、各トラニオンジャーナル62の回りに複数の針状ころ72を介して回転自在に装着された球状ローラ70とを備え、この球状ローラ70が外側継手部材52のトラック溝53に収容され、球状ローラ70の外球面がトラック溝53の両側壁に形成されたローラ案内面54によって案内されるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3947342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のトリポード型等速自在継手51は、強度および耐久性を考慮して、外側継手部材の外径を縮小して軽量・コンパクト化を図ったものである。この軽量・コンパクト化に当たって、このトリポード型等速自在継手51では、強度、耐久性のバランスが耐久性に余裕が偏っていることに着目して、強度、耐久性のバランスをとることを目的として寸法比率を見直したものである。しかしながら、近年、自動車の燃費向上に対する要求がますます強くなり、自動車部品の1つである等速自在継手のさらなる軽量化が強く望まれている。この要求に対して、これまでに提案されたトリポード型等速自在継手では到達することができない。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、強度および寿命を維持しながら、従来技術とは質的に異なる寸法設定をもつ軽量・コンパクトなトリポード型等速自在継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
トリポード型等速自在継手は、基本的な寸法比率として次の7項目を有する。
(1)軸径d/ローラ案内面ピッチ円直径PCD(d/PCD)
(2)トラニオン胴径dr/トラニオン外径SDj(dr/SDj)
(3)外側継手部材の小内径D2/大内径D1(D2/D1)
(4)ローラ幅Ls/ローラ外径Ds(Ls/Ds)
(5)トラニオンジャーナル径Dj/ローラ外径Ds(Dj/Ds)
(6)トラニオンジャーナル径Dj/軸径d(Dj/d)
(7)針状ころ長さLn/トラニオンジャーナル径Dj(Ln/Dj)
【0007】
一般的に、トリポード型等速自在継手は強度(捩り強度)を主体に設計されている。強度は通常、軸の最小外径によって一義的に決まり、次に、トリポード部材の強度あるいは球状ローラの強度が考慮される。したがって、トリポード部材あるいは球状ローラは、軸以上の強度を有するように設定されている。
【0008】
トリポード部材の強度には、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部の強度が関係する。ここで、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部とは、3本のトラニオンジャーナルの軸線を含む平面に位置するトラニオンジャーナルの付け根部のことである。トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部におけるトラニオン胴部の最小肉厚(図2のt)は、トラニオンジャーナルの径を大きくすることによって増加するので、トラニオンジャーナルの付け根部の強度が増大する。
【0009】
また、外側継手部材の外径を縮小するに当たっては、トリポード型等速自在継手の作動領域の制約を考慮する必要がある。
【0010】
さらに、転がり部、特に針状ころとトラニオンジャーナルとの間での転がり疲労寿命(耐久性)も併せて考慮する必要がある。
【0011】
本発明者は、前述した状況の中から、トリポード型等速自在継手の強度はシャフト強度以上とすることを基本としているが、その次に強度の確保が必要な部材がトリポード部材と球状ローラとなることから、トリポード部材と球状ローラの強度の確保を前提とした寸法設定に着目した。
【0012】
基本指針としては、ジョイントサイズ毎に決められる軸径dを一定として、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部のトラニオン胴部の最小肉厚を確保しながら、ローラ案内面のピッチ円直径PCDを従来技術とは異質の寸法設定で縮小することである。ここで、ローラ案内面のピッチ円直径PCDとは、ローラ案内面の中心(図2のO1)を結ぶピッチ円直径である。また、軸径dはトリポード部材3のトラニオン胴部8に形成したスプラインの大径とする。
【0013】
上記の基本指針を実現するためには、上記のようにローラ案内面のピッチ円直径PCDを縮小しても、トルク負荷方向のトラニオンジャーナルの付け根部におけるトラニオン胴部の最小肉厚(図2のt)を確保する必要があり、このために、トラニオンジャーナル径Djを拡大した究極の寸法設定を着想した。そして、トラニオンジャーナル径Djに合わせて球状ローラの外径Dsを大きくする。
【0014】
併せて、球状ローラの外径Dsを大きくすると、外側継手部材の外径も大きくなるので、球状ローラの幅Lsを縮小することにより外側継手部材の外径を縮小することを着想した。
【0015】
球状ローラの幅Lsを縮小すると、外側継手部材の外径が縮小され、小内径D2/大内径D1(D2/D1)の値が大きくなり、小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小される。小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小されるので、軽量化と鍛造加工性に優位となる。
【0016】
寿命(耐久性)の観点からは、トラニオンジャーナル径Djが大きくなることにより、装填する針状ころの本数が増加し面圧が減少するので、従来と同等の寿命を確保しつつ、ころ長さを短縮することができる。
【0017】
上記のような着想により、前述した(1)、(3)、(4)、(6)および(7)項について従来技術とは質的に異なる寸法設定に至った。
【0018】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、円周方向の三等分位置に軸方向に延びるトラック溝を形成した外側継手部材と、シャフトとトルク伝達可能にスプライン嵌合するトラニオン胴部とこのトラニオン胴部の円周方向の三等分位置から半径方向に突出したトラニオンジャーナルとからなるトリポード部材と、前記各トラニオンジャーナルの回りに複数の針状ころを介して回転可能に装着された球状ローラとを備え、この球状ローラが前記トラック溝に収容され、前記球状ローラの外球面が前記トラック溝の両側壁に形成されたローラ案内面によって案内されるようにしたトリポード型等速自在継手において、前記ローラ案内面の半径方向の外方端部を結ぶ大内径をD1とし、前記ローラ案内面の半径方向の内方端部を結ぶ小内径をD2としたとき、D2とD1の比D2/D1を0.73〜0.80とし、かつ、前記トリポード部材のトラニオン胴部に形成したスプライン大径をdとし、前記ローラ案内面のピッチ円直径をPCDとしたとき、dとPCDの比d/PCDを0.60以上としたことを特徴とする。
【0019】
上記の構成により、強度および寿命を維持しながら、従来技術とは質的に異なる寸法比率をもつ軽量・コンパクトなトリポード型等速自在継手を実現することができる。具体的には、外径コンパクト化を行なっている同じ軸径の従来のトリポード型等速自在継手に対し、さらに1サイズダウン(約4%)程度のコンパクト化を達成することができる。
【0020】
有利な構成として、上記のdとPCDの比d/PCDを0.62〜0.70とすることが望ましい。これにより、一層の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0021】
また、上記の球状ローラの幅をLsとし、球状ローラの外径をDsとしたとき、LsとDsの比Ls/Dsを0.20〜0.27とすることにより、外側継手部材の外径を小さく抑えることができる。
【0022】
さらに、上記の針状ころの長さをLnとし、前記トラニオンジャーナルの外径をDjとしたとき、LnとDjの比Ln/Djを0.40〜0.47とすることにより、トラニオンの強度を確保すると共に十分な耐久性を確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のトリポード型等速自在継手によれば、強度および寿命を維持しながら、従来技術とは質的に異なる寸法設定とし、究極の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るトリポード型等速自在継手を示し、(a)は横断面図で、(b)は縦断面図である。
図2図1のトリポード型等速自在継手の各部の寸法を示す横断面図である。
図3図1の球状ローラとローラ案内面との接触部の拡大断面図である。
図4図1のトリポード型等速自在継手と従来技術を左右に対比して示した横断面図である。
図5】従来のトリポード型等速自在継手を示し、(a)は横断面図で、(b)は縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態を図1図4に基づいて説明する。
【0026】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係るトリポード型等速自在継手の横断面図であり、図1(b)は縦断面図である。図示のように、本実施形態に係るトリポード型等速自在継手1は、外側継手部材2、内側継手部材としてのトリポード部材3、球状ローラ4および転動体としての針状ころ5を主な構成とする。外側継手部材2は、その内周に円周方向の三等分位置に軸方向に延びる3本のトラック溝6を有する中空カップ状である。各トラック溝6の対向する側壁にローラ案内面7が形成されている。ローラ案内面7は、円筒面の一部、すなわち部分円筒面で形成されている。
【0027】
トリポード部材3は、トラニオン胴部8とトラニオンジャーナル9からなり、トラニオンジャーナル9はトラニオン胴部8の円周方向の三等分位置から半径方向に突出して3本形成されている。各トラニオンジャーナル9は、円筒形外周面10と、軸端付近に形成された環状の止め輪溝11を備えている。トラニオンジャーナル9の円筒形外周面10の周りに複数の針状ころ5を介して回転自在に球状ローラ4が装着されている。トラニオンジャーナル9の円筒形外周面10は針状ころ5の内側軌道面を形成する。球状ローラ4の内周面4aは円筒形状で、針状ころ5の外側軌道面を形成する。
【0028】
トラニオンジャーナル9の軸端付近に形成された止め輪溝11には、アウタワッシャ12を介して止め輪13が装着されている。針状ころ5は、トラニオンジャーナル9の付根段部とアウタワッシャ12により、トラニオンジャーナル9の軸方向の移動が規制されている。アウタワッシャ12は、トラニオンジャーナル9の半径方向に延びた円盤部12aと、トラニオンジャーナル9の軸線方向に延びた円筒部12bとからなる。アウタワッシャ12の円筒部12bは球状ローラ4の内周面4aより小さな外径を有し、トリポード部材3の半径方向で見た円筒部12bの外側の端部12cは、球状ローラ4の内周面4aよりも大径に形成されている。したがって、球状ローラ4は、トラニオンジャーナル9の軸線方向に移動することができ、かつ、端部12cにより脱落が防止されている。
【0029】
トリポード部材3のトラニオンジャーナル9に回転自在に装着された球状ローラ4は、外側継手部材2のトラック溝6のローラ案内面7に回転自在に案内される。このような構造により、外側継手部材2とトリポード部材3との間の相対的な軸方向変位や角度変位が吸収され、回転が等速で伝達される。
【0030】
球状ローラ4とローラ案内面7の接触形態には、一般的にアンギュラコンタクトとサーキュラコンタクトの二通りがある。アンギュラコンタクトは接触角をもち、2点で接触する。サーキュラコンタクトは、図3に示すように1点で接触する。本実施形態では、ローラ案内面7の曲率半径をR、球状ローラ4の曲率半径をrとしたとき、接触率R/rを1.02〜1.15程度としている。本実施形態では、後述するように、従来のトリポード型等速自在継手に対して球状ローラ4の幅Lsを大幅に縮小しているので、サーキュラコンタクトが望ましい。
【0031】
図2に示すように、外側継手部材2の内径は、円周方向に交互に現れる内径D1の大内径部と内径D2の小内径部とで構成される。そして、外側継手部材2の内部に組み込まれるトリポード部材3は、そのトラニオン胴部8にスプライン大径dのスプライン孔が形成され、トラニオンジャーナル9の円筒形外周面10は外径Djを有する。球状ローラ4は、その外径がDsであり、球状ローラ4の幅はLsである。針状ころ5は長さLnを有する。ローラ案内面7のピッチ円直径はPCDである。
【0032】
本実施形態に係るトリポード型等速自在継手1の特徴的な構成は、強度および寿命を維持しながら、究極の軽量・コンパクト化を図るために、従来技術とは質的に異なる寸法設定となっている。
【0033】
トリポード型等速自在継手1の強度はシャフト強度以上とすることを基本としているが、その次に強度の確保が必要な部材がトリポード部材3と球状ローラ4となることから、本実施形態に係るトリポード型等速自在継手1はトリポード部材3と球状ローラ4の強度の確保を前提とした寸法設定になっている。
【0034】
基本指針としては、ジョイントサイズ毎に決められる軸径dを一定として、トルク負荷方向のトラニオンジャーナル9の付け根部9aにおけるトラニオン胴部8の最小肉厚tを確保しながら、ローラ案内面7のピッチ円直径PCDが従来技術とは異質の寸法設定で縮小されている。
【0035】
上記の基本指針を実現するためには、上記のようにローラ案内面7のピッチ円直径PCDを縮小しても、トルク負荷方向のトラニオンジャーナル9の付け根部9aにおけるトラニオン胴部8の最小肉厚tを確保する必要がある。このために、トラニオンジャーナル9の外径Djを拡大した寸法設定となっている。そして、トラニオンジャーナル9の外径Djに合わせて球状ローラ4の外径Dsも大きくなっている。
【0036】
球状ローラ4の外径Dsを大きくすると、外側継手部材2の外径も大きくなるので、球状ローラ4の幅Lsを縮小することにより外側継手部材2の外径を縮小している。
【0037】
球状ローラ4の幅Lsを縮小すると、外側継手部材2の外径が縮小され、小内径D2/大内径D1(D2/D1)が大きくなり、小内径D2と大内径D1との凹凸が縮小される。小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小されるので、軽量化と鍛造加工性に優位となる。
【0038】
寿命(耐久性)の観点からは、トラニオンジャーナル9の外径Djが大きくなることにより、装填する針状ころ5の本数が増加し面圧が減少するので、従来と同等の寿命を確保しつつ、ころ長さLnを短縮している。
【0039】
本実施形態に係るトリポード型等速自在継手は、前述した(1)、(3)、(4)、(6)および(7)項について従来技術とは質的に異なる寸法設定となっている。
【0040】
本実施形態の寸法比率を表1に示す。
【表1】
【0041】
表1に示した実施形態は、図1および図2の構成において各部の寸法を次のように設定したものである。
【0042】
スプライン大径(軸径)dとローラ案内面7のPCDとの比率d/PCDは60%以上であれば大幅な軽量・コンパクト化が図れる。より好ましくは62%〜70%の範囲である。軸径dは許容負荷容量から決定されるもので、ジョイントサイズ毎に一定である。したがって、この比率d/PCDは外側継手部材の外径を縮小するベースとなるものである。しかし、従来のトリポード型等速自在継手の考え方では、トリポード部材と球状ローラの強度の確保を前提とした着目や次に述べる着想がなかったので、比率d/PCDは、60%以上、さらには62%〜70%の範囲には到達できなかった。
【0043】
外側継手部材2の小内径D2と大内径D1との比率D2/D1は73%〜80%とした。外側継手部材2の小内径D2は、軸径d、トラニオン胴径drに対して干渉なく作動領域を確保できると共に後述する球状ローラ4のローラ幅Lsおよびローラ外径Dsを考慮して設定されている。一方、大内径D1は、ローラ案内面7のピッチ円直径PCD、トラニオン外径SDj、球状ローラ4のローラ幅Lsおよびローラ外径Dsから決定される。この小内径D2と大内径D1との比率D2/D1は、この実施形態を最も特徴づけるものである。外側継手部材2の小内径D2と大内径D1との比率D2/D1は73%〜80%としたことにより、外側継手部材2の外径が小さくなり、小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小されるので、軽量化と鍛造加工性に優位となる。
【0044】
球状ローラ4のローラ幅Lsとローラ外径Dsとの比率Ls/Dsは20%〜27%とした。ここで、上限は27%未満とする。これにより、ローラ案内面7のPCD上の円周方向に占める球状ローラの外径Dsを極限まで大きくでき、所定のトルクを負荷した場合の球状ローラ4とローラ案内面7との間における接触楕円長さと接触面圧を許容範囲に抑えることができる。また、前述した軸径dとローラ案内面7のPCDとの比率d/PCDの大幅な増大化と外側継手部材の外径を縮小することを可能にするものである。
【0045】
針状ころ5のころ長さLnとトラニオンジャーナルの外径Djとの比率Ln/Djは40%〜47%とした。ここで、上限は47%未満とする。トラニオンジャーナルの外径Djを軸径dに対して87%〜93%の範囲に大きくしたことにより、比率Ln/Djが40%〜47%の範囲でも、針状ころとトラニオンジャーナルとの間での転がり疲労寿命(耐久性)を確保できる。これは、前述したように、装填する針状ころ5の本数が増加し面圧が減少するので、従来と同等の寿命を確保しつつ、ころ長さLnを短縮できるからである。因みに、本実施形態では、装填する針状ころ5の本数を約20%増加させている。
【0046】
トラニオン胴8の径drとトラニオン外径SDjとの比率dr/SDjやトラニオンジャーナルの外径Djと球状ローラ4の外径Dsとの比率Dj/Dsは、強度、耐久性を考慮して従来技術と同じ寸法設定としている。
【0047】
図4は、本発明の実施形態に係るトリポード型等速自在継手と従来技術を左右に対比して横断面図である。この図の右側に示した本実施形態に係るトリポード型等速自在継手が従来技術に比べて、如何に軽量・コンパクトであるかが理解されるであろう。
【0048】
以上の実施形態では、トリポード部材3のトラニオンジャーナル9の付け根部9aを直接針状ころ5の案内つばとしたが、これに限ることなく、付け根部に肩部を設け、この肩部と針状ころの端部との間に別体のインナワッシャを介在させてもよい。
【0049】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0050】
1 トリポード型等速自在継手
2 外側継手部材
3 トリポード部材
4 球状ローラ
5 針状ころ
6 トラック溝
7 ローラ案内面
8 トラニオン胴部
9 トラニオンジャーナル
9a 付け根部
10 円筒形外周面
D1 大内径
D2 小内径
Dj トラニオンジャーナル径
Ds 球状ローラの外径
Ln 針状ころのころ長さ
Ls 球状ローラの幅
d 軸径(スプライン大径)
PCD ローラ案内面のピッチ円直径
図1
図2
図3
図4
図5