【課題を解決するための手段】
【0006】
トリポード型等速自在継手は、基本的な寸法比率として次の7項目を有する。
(1)軸径d/ローラ案内面ピッチ円直径PCD(d/PCD)
(2)トラニオン胴径dr/トラニオン外径SDj(dr/SDj)
(3)外側継手部材の小内径D2/大内径D1(D2/D1)
(4)ローラ幅Ls/ローラ外径Ds(Ls/Ds)
(5)トラニオンジャーナル径Dj/ローラ外径Ds(Dj/Ds)
(6)トラニオンジャーナル径Dj/軸径d(Dj/d)
(7)針状ころ長さLn/トラニオンジャーナル径Dj(Ln/Dj)
【0007】
一般的に、トリポード型等速自在継手は強度(捩り強度)を主体に設計されている。強度は通常、軸の最小外径によって一義的に決まり、次に、トリポード部材の強度あるいは球状ローラの強度が考慮される。したがって、トリポード部材あるいは球状ローラは、軸以上の強度を有するように設定されている。
【0008】
トリポード部材の強度には、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部の強度が関係する。ここで、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部とは、3本のトラニオンジャーナルの軸線を含む平面に位置するトラニオンジャーナルの付け根部のことである。トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部におけるトラニオン胴部の最小肉厚(
図2のt)は、トラニオンジャーナルの径を大きくすることによって増加するので、トラニオンジャーナルの付け根部の強度が増大する。
【0009】
また、外側継手部材の外径を縮小するに当たっては、トリポード型等速自在継手の作動領域の制約を考慮する必要がある。
【0010】
さらに、転がり部、特に針状ころとトラニオンジャーナルとの間での転がり疲労寿命(耐久性)も併せて考慮する必要がある。
【0011】
本発明者は、前述した状況の中から、トリポード型等速自在継手の強度はシャフト強度以上とすることを基本としているが、その次に強度の確保が必要な部材がトリポード部材と球状ローラとなることから、トリポード部材と球状ローラの強度の確保を前提とした寸法設定に着目した。
【0012】
基本指針としては、ジョイントサイズ毎に決められる軸径dを一定として、トルク負荷方向におけるトラニオンジャーナルの付け根部のトラニオン胴部の最小肉厚を確保しながら、ローラ案内面のピッチ円直径PCDを従来技術とは異質の寸法設定で縮小することである。ここで、ローラ案内面のピッチ円直径PCDとは、ローラ案内面の中心(
図2のO1)を結ぶピッチ円直径である。また、軸径dはトリポード部材3のトラニオン胴部8に形成したスプラインの大径とする。
【0013】
上記の基本指針を実現するためには、上記のようにローラ案内面のピッチ円直径PCDを縮小しても、トルク負荷方向のトラニオンジャーナルの付け根部におけるトラニオン胴部の最小肉厚(
図2のt)を確保する必要があり、このために、トラニオンジャーナル径Djを拡大した究極の寸法設定を着想した。そして、トラニオンジャーナル径Djに合わせて球状ローラの外径Dsを大きくする。
【0014】
併せて、球状ローラの外径Dsを大きくすると、外側継手部材の外径も大きくなるので、球状ローラの幅Lsを縮小することにより外側継手部材の外径を縮小することを着想した。
【0015】
球状ローラの幅Lsを縮小すると、外側継手部材の外径が縮小され、小内径D2/大内径D1(D2/D1)の値が大きくなり、小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小される。小内径D2と大内径D1の凹凸が縮小されるので、軽量化と鍛造加工性に優位となる。
【0016】
寿命(耐久性)の観点からは、トラニオンジャーナル径Djが大きくなることにより、装填する針状ころの本数が増加し面圧が減少するので、従来と同等の寿命を確保しつつ、ころ長さを短縮することができる。
【0017】
上記のような着想により、前述した(1)、(3)、(4)、(6)および(7)項について従来技術とは質的に異なる寸法設定に至った。
【0018】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、円周方向の三等分位置に軸方向に延びるトラック溝を形成した外側継手部材と、シャフトとトルク伝達可能にスプライン嵌合するトラニオン胴部とこのトラニオン胴部の円周方向の三等分位置から半径方向に突出したトラニオンジャーナルとからなるトリポード部材と、前記各トラニオンジャーナルの回りに複数の針状ころを介して回転可能に装着された球状ローラとを備え、この球状ローラが前記トラック溝に収容され、前記球状ローラの外球面が前記トラック溝の両側壁に形成されたローラ案内面によって案内されるようにしたトリポード型等速自在継手において、前記ローラ案内面の半径方向の外方端部を結ぶ大内径をD1とし、前記ローラ案内面の半径方向の内方端部を結ぶ小内径をD2としたとき、D2とD1の比D2/D1を0.73〜0.80とし、かつ、前記トリポード部材のトラニオン胴部に形成したスプライン大径をdとし、前記ローラ案内面のピッチ円直径をPCDとしたとき、dとPCDの比d/PCDを0.60以上としたことを特徴とする。
【0019】
上記の構成により、強度および寿命を維持しながら、従来技術とは質的に異なる寸法比率をもつ軽量・コンパクトなトリポード型等速自在継手を実現することができる。具体的には、外径コンパクト化を行なっている同じ軸径の従来のトリポード型等速自在継手に対し、さらに1サイズダウン(約4%)程度のコンパクト化を達成することができる。
【0020】
有利な構成として、上記のdとPCDの比d/PCDを0.62〜0.70とすることが望ましい。これにより、一層の軽量・コンパクト化を図ることができる。
【0021】
また、上記の球状ローラの幅をLsとし、球状ローラの外径をDsとしたとき、LsとDsの比Ls/Dsを0.20〜0.27とすることにより、外側継手部材の外径を小さく抑えることができる。
【0022】
さらに、上記の針状ころの長さをLnとし、前記トラニオンジャーナルの外径をDjとしたとき、LnとDjの比Ln/Djを0.40〜0.47とすることにより、トラニオンの強度を確保すると共に十分な耐久性を確保することができる。