【実施例1】
【0030】
〔実施例1に係る抜き穴加工用刃型の構成〕
図1(A)〜(C)に示すように、実施例1に係る抜き穴加工用刃型11は、上型として昇降可能にプレス装置(図示省略)に連結され、下方に設置された基台21上に間欠的に搬送される原料シート31に対して抜き穴加工のために昇降操作される。
【0031】
前記抜き穴加工用刃型11には矩形ループ状の抜き穴加工用打抜き刃12(対向する長辺部分のみ図示される)が設けられ、前記抜き穴加工用打抜き刃12の下端縁に打抜き刃先12aが形成されると共に内側にカス通路13が形成されている。前記打抜き刃先12aは、製品シート31aに対する抜きカス31bの分離を促進するために、抜きカス31b側の傾斜角が製品シート31a側の傾斜角より大きく形成された両刃から構成されている。また、前記カス通路13は、原料シート31から打ち抜かれた抜きカス31bを保持する、幾分上拡がりのカス保持部13aと、前記カス保持部13aよりも拡張されると共に該カス保持部13aから順次押し出されてくる抜きカス31bを一時収納するカス収納部13bとから構成されている。さらに、前記抜き穴加工用刃型11には、前記カス通路13にそのカス収納部13bにおいて連通すると共に抜きカス31bを前記カス収納部13bから排出へと導くカス排出路14が設けられ、前記カス排出路14には、前記カス通路13内の抜きカス31bをカス排出路14へと真空吸引し、排出させる、カス付勢手段としてのバキューム吸引装置15が連結されている。
【0032】
前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aの内側面には、矩形ループの対向する長辺及び短辺側の略中間位置において、カス係合刃51が各々対向するようにループ内部に向かって突設されている(
図1(A)、(B)では対向する長辺部分のみ図示される)。前記カス係合刃51は、前記打抜き刃先12aと同方向に向くと共に該打抜き刃先12aと端部において連結又は略連結する両刃形態の直線状切込み刃先51aを下端縁に備え、前記切込み刃先51aは、抜き穴加工に際して抜きカス31bの周縁部に略直角方向に切り込まれる。
【0033】
なお、抜き穴加工における、基台21上の原料シート31に対する前記抜き穴加工用刃型11の昇降移動は相対的であってもよく、必要に応じて、前記抜き穴加工用刃型11及び/又は基台21が昇降移動するものであってもよい。前記抜き穴加工用刃型11は、前記のような上型としての使用に代えて、下型として、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12a及び前記カス係合刃51の切込み刃先51aを上方に向けて配置されるように使用されてもよい。また、前記カス係合刃51の配置については、前記実施態様に限定されるものではなく、前記抜き穴加工用打抜き刃12のループ形状及びループサイズ並びに原料シート31の材質等に応じて、配置数、配置個所及び配置形態等が適宜選択されればよい。また、前記カス係合刃51の切込み刃先51aの形態や、抜き穴加工時における抜きカス31bの周縁部への前記切込み刃先51aの切込み角度等についても、前記実施態様に限定されるものではない。また、前記カス係合刃51の切込み刃先51aは、直線状に限定されるものではなく、例えば横方向や縦方向に湾曲した曲線状であってもよい。
【0034】
〔実施例1に係る抜き穴加工用刃型を用いた抜き穴加工方法〕
図2(A)に示すように、抜き穴加工用刃型11が、抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12a及びカス係合刃51の切込み刃先51aを下方に向けて、次の抜き穴加工のために上方に保持され、下方に設けた基台21上に未加工の原料シート31が搬送されると共に載置されている。
【0035】
また、前記抜き穴加工用打抜き刃12におけるカス通路13のカス保持部13a及びカス収納部13bには、これまでの複数回の抜き穴加工により生じた複数枚の抜きカス31bが滞留している(カス保持部13a内の滞留状況のみ図示される)。それらの滞留した抜きカス31bの内、一部の抜きカス31bは、前記カス通路13の内壁と弾力的に接触され、且つそれらの周縁部を前記カス係合刃51の切込み刃先51aにより切り込まれると共にそれによって前記カス係合刃51と係合された状態でカス通路13内に保持され、反カス排出路方向への逆流を阻止されている。
【0036】
また、その他の抜きカス31bは、前記カス係合刃51から離脱されると共に該カス係合刃51を通過した後におけるカス保持部13aやカス収納部13bに滞留し、前記逆止め用突起としての前記カス係合刃51の作用により、前記カス通路13の内壁との弾力的接触と相まって、反カス排出路方向への逆流を阻止されている。
【0037】
次に、
図2(B)に示すように、抜き穴加工用刃型11が下降させられると共に抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aが基台21上に載置された原料シート31に打ち込まれ、それによって原料シート31が打ち抜かれると共に、前記打抜き刃先12aの外側における製品シート31aと、前記打抜き刃先12aの内側における抜きカス31bとに分離される。
【0038】
前記のように、原料シート31に対して、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aによる打込み、打抜きが行われる一方、それと同時に、前記打抜き刃先12aの内側における抜きカス31bの周縁部に対して、カス係合刃51の切込み刃先51aによる切込みが行われる。
【0039】
また、原料シート31に対する前記打抜き刃先12aによる打込み、打抜き及び抜きカス31bの周縁部に対する前記切込み刃先51aによる切込みに伴って、カス通路13内において、前記カス係合刃51の切込み刃先51aにより切り込まれた状態で前記カス係合刃51上に係合、保持されていた既存の抜きカス31bは、カス通路13内をその奥方向に順送りされ、さらには該カス係合刃51を離脱することになる。
【0040】
続いて、
図2(C)に示すように、抜き穴加工用刃型11が上昇させられると共に、抜き穴加工用打抜き刃12が、既存の抜きカス31b及び打ち抜かれたばかりの最新の抜きカス31bを前記の
図2(B)に示す状態に保持しつつ、基台21上に抜き穴加工後の製品シート31aを残して引き上げられ、続いて、抜き穴加工後の前記製品シート31aは次工程へと搬送される。
その後、抜き穴加工用刃型11は、
図2(A)に示す状態に戻り、次の抜き穴加工に備えることになる。
【実施例3】
【0044】
〔実施例3に係る抜き穴加工用刃型の構成〕
実施例3に係る抜き穴加工用刃型211については、抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aの内側面に突設されたカス係合刃251の形態と作用において実施例1と相違し、その他の構成は基本的に実施例1と共通している。
【0045】
即ち、実施例3に係る抜き穴加工用刃型211では、
図3(B)に示すように、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aの内側面に、矩形ループの対向する長辺側において、カス係合刃251が各々対向するように突設されている(対向する長辺部分のみ図示される)。前記カス係合刃251は、前記打抜き刃先12aと同方向に向くと共に該打抜き刃先12aと端部において連結する両刃形態の凹曲状切込み刃先251aを下端縁に備えると共に、前記打抜き刃先12aと同方向に向き、前記切込み刃先251aにその高さを越えて連接する突刺し尖端251bを外端部に備える。前記切込み刃先251aは、抜き穴加工に際して抜きカス31bの周縁部に略直角方向に切り込まれ、また前記突刺し尖端251bは、抜き穴加工に際して抜きカス31bの周縁部に、前記切込み刃先251aによる切込みに先立って、略垂直方向に突き刺される。
【0046】
なお、抜き穴加工における、基台21上の原料シート31に対する前記抜き穴加工用刃型211の昇降移動は相対的であってもよく、必要に応じて、前記抜き穴加工用刃型211及び/又は基台21が昇降移動するものであってもよい。前記抜き穴加工用刃型211は、前記のような上型としての使用に代えて、下型として、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12a並びに前記カス係合刃251の切込み刃先251a及び突刺し尖端251bを上方に向けて配置されるように使用されてもよい。また、前記カス係合刃251の態様については、前記実施態様に限定されるものではなく、前記抜き穴加工用打抜き刃12のループ形状及びループサイズ並びに原料シート31の材質等に応じて、配置数、配置個所及び配置形態等が適宜選択されればよい。また、前記カス係合刃251の切込み刃先251aの形態及び抜き穴加工時における抜きカス31bの周縁部への前記切込み刃先251aの切込み角度並びに前記カス係合刃251の突刺し尖端251bの形態及び抜き穴加工時における抜きカス31bの周縁部への前記突刺し尖端251bの突刺し角度等についても、前記実施態様に限定されるものではない。
【0047】
〔実施例3に係る抜き穴加工用刃型を用いた抜き穴加工方法〕
図4(A)に示すように、抜き穴加工用刃型211が、抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12a並びに前記カス係合刃251の切込み刃先251a及び突刺し尖端251bを下方に向けて、次の抜き穴加工のために上方に保持され、下方に設けた基台21上に未加工の原料シート31が搬送されると共に載置されている。
【0048】
また、前記抜き穴加工用打抜き刃12におけるカス通路13のカス保持部13a及びカス収納部13bには、これまでの複数回の抜き穴加工により生じた複数枚の抜きカス31bが滞留している(カス保持部13a内の滞留状況のみ図示される)。それらの滞留した抜きカス31bの内、一部の抜きカス31bは、前記カス通路13の内壁と弾力的に接触され、且つそれらの周縁部を前記カス係合刃251の突刺し尖端251bにより突き刺され、また前記切込み刃先251aにより切り込まれると共にそれらによって前記カス係合刃251と係合された状態でカス通路13内に保持され、反カス排出路方向への逆流を阻止されている。
【0049】
また、その他の抜きカス31bは、前記カス係合刃251から離脱されると共に該カス係合刃251を通過した後におけるカス保持部13aやカス収納部13bに滞留し、前記逆止め用突起としての前記カス係合刃251の作用により、前記カス通路13の内壁との弾力的接触と相まって、反カス排出路方向への逆流を阻止されている。
【0050】
次に、
図4(B)に示すように、抜き穴加工用刃型211が下降させられると共に抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aが基台21上に載置された原料シート31に打ち込まれ、それによって原料シート31が打ち抜かれると共に、前記打抜き刃先12aの外側における製品シート31aと、前記打抜き刃先12aの内側における抜きカス31bとに分離される。
【0051】
前記のように、原料シート31に対して、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aによる打込み、打抜きが行われる一方、それと同時に、前記打抜き刃先12aの内側における抜きカス31bの周縁部に対して、前記カス係合刃251の突刺し尖端251bによる突刺し及び切込み刃先251aによる切込みが行われる。
【0052】
また、前記のように、カス通路13内において、前記カス係合刃251の突刺し尖端251bにより突き刺され、また切込み刃先251aにより切り込まれた状態で前記カス係合刃251上に係合、保持されていた既存の抜きカス31bは、カス通路13内をその奥方向に順送りされ、さらには該カス係合刃251を離脱することになる。
【0053】
続いて、
図4(C)に示すように、抜き穴加工用刃型211が上昇させられると共に、抜き穴加工用打抜き刃12が、既存の抜きカス31b及び打ち抜かれたばかりの最新の抜きカス31bを前記の
図4(B)に示す状態に保持しつつ、基台21上に抜き穴加工後の製品シート31aを残して引き上げられ、続いて、抜き穴加工後の前記製品シート31aは次工程へと搬送される。
その後、抜き穴加工用刃型211は、
図4(A)に示す状態に戻り、次の抜き穴加工に備えることになる。
【0054】
[比較例]
既述のような実施例1〜3に係る抜き穴加工用刃型11、111、211に対して、
図5に例示する、従来技術に係る抜き穴加工用刃型311は、実施例1〜3に係る抜き穴加工用刃型11、111、211と同形態であって、カス係合刃51、151,251を備えていないものである。
【0055】
即ち、
図5(A)に示すように、従来技術に係る抜き穴加工用刃型311が、抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aを下方に向けて、次の抜き穴加工のために上方に保持され、下方に設けた基台21上に未加工の原料シート31が搬送されると共に載置されている。
【0056】
また、前記抜き穴加工用打抜き刃12におけるカス通路13のカス保持部13a及びカス収納部13bには、これまでの複数回の抜き穴加工により生じた複数枚の抜きカス31bが滞留し、特に前記カス保持部13a内の抜きカス31bは、湾曲した状態で、それらの弾力性により該カス保持部13aにその内壁との弾力的接触によって保持されている。
【0057】
次に、
図5(B)に示すように、抜き穴加工用刃型311が下降させられると共に抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aが基台21上に載置された原料シート31に打ち込まれ、それによって原料シート31が打ち抜かれると共に、前記打抜き刃先12aの外側における製品シート31aと、前記打抜き刃先12aの内側における抜きカス31bとに分離される。
【0058】
前記のように、原料シート31に対して、前記抜き穴加工用打抜き刃12の打抜き刃先12aによる打込み、打抜きが行われ、それに伴って、カス保持部13aに保持されていた既存の抜きカス31bは、カス通路13内をその奥方向に順送りされる。
【0059】
続いて、
図5(C)に示すように、抜き穴加工用刃型311が上昇させられると共に、抜き穴加工用打抜き刃12が、既存の抜きカス31b及び打ち抜かれたばかりの最新の抜きカス31bを前記の
図5(B)に示す状態に保持しつつ、基台21上に抜き穴加工後の製品シート31aを残して引き上げられ、続いて、抜き穴加工後の前記製品シート31aは次工程へと搬送される。
その後、抜き穴加工用刃型311は、
図5(A)に示す状態に戻り、次の抜き穴加工に備えることになる。
【0060】
しかしながら、前記従来技術において、
図5(A)や
図5(C)に示す状態の前記抜きカス31bは、カス付勢手段としてのバキューム吸引装置15の作動下にあっても、抜き穴加工時の風圧やプレス振動等によってカス通路13から下方に、即ち反カス排出路方向に離脱、落下し易い状態にあり、前記抜きカス31bが特に、薄手で腰のないフィルム等のように弾力性に欠け、また面積が比較的大きなときには、前記現象の発生は殆ど不可避となる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神と特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形、組合せ等による前記以外の多くの広範な実施態様が実施可能であることは言うまでもない。