(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記相関温度検出手段は、前記エンジンの冷却水の温度を検出するための冷却水温検出手段を含み、前記制御手段は、前記補正値を、前記検出される冷却水の温度に応じて算出することを特徴とする請求項1に記載のブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置。
前記相関温度検出手段は、前記吸気通路に吸入される外気の温度を検出するための外気温検出手段を含み、前記制御手段は、前記補正値を、前記検出される外気の温度に応じて算出することを特徴とする請求項1に記載のブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車用エンジンに採用される排気還流装置(Exhaust Gas Recirculation(EGR)装置)が知られている。EGR装置は、エンジンの燃焼室から排気通路へ排出される排気の一部をEGRガスとしてEGR通路を介して吸気通路へ導き、吸気通路を流れる吸気と混合させて燃焼室へ還流させる。EGR通路を流れるEGRガスは、EGR通路に設けられるEGR弁により調節される。このEGRによって、主として排気中の窒素酸化物(NOx)を低減させることができ、エンジンの部分負荷時における燃費向上を図ることができる。
【0003】
ブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンのEGR装置として、例えば、下記の特許文献1に記載されるの装置が知られている。過給機は、排気通路に設けられたタービンと、吸気通路に設けられ、タービンにより回転駆動されるコンプレッサとを備える。ここで、EGR装置は、低圧ループ式であって、EGR通路の入口が、タービンより下流の排気通路に接続され、EGR通路の出口が、コンプレッサより上流の吸気通路に接続される。また、ブローバイガス還元装置(PCV装置)は、オイルミストを含んだブローバイガスを、エンジンのシリンダヘッドから吸気通路へ流すPCV流路を備え、そのPCV通路の出口が、コンプレッサより上流であってEGR通路の出口より下流の吸気通路に接続される。
【0004】
この過給機付きエンジンでは、コンプレッサより上流の吸気通路にPCV通路の出口が接続されるので、その出口から吸気通路へ導入されるブローバイガスが、コンプレッサを通過することになる。その結果、ブローバイガス中のデポジットがコンプレッサに付着して堆積するおそれがあった。そこで、この装置は、EGR通路の出口より上流の吸気通路に吸気絞り弁を設け、コンプレッサへのデポジットの堆積程度を表す指標値を算出する。そして、その指標値が予め定められた値より大きくなったときに吸気絞り弁の開度を閉じ側に調整するようになっている。これにより、吸気絞り弁からコンプレッサまでの間の吸気通路に生じる負圧を増大させ、PCV通路の出口から吸気通路へ導入されるブローバイガスとオイルミストの流量を増大させる。そして、オイルミストを含んだ空気をコンプレッサへ流すことで、コンプレッサに付着したデポジットをオイルミストで洗って流動性を増大させ、デポジットを空気流により吹き飛び易くする。この結果、コンプレッサへのデポジットの堆積を抑制するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の装置では、オイルミストを含んだブローバイガスがコンプレッサの入口側に流入する。そして、コンプレッサにより吸気等が加圧されてコンプレッサの出口側の温度が上昇すると、コンプレッサに付着していたオイルミストが焼けてコンプレッサの出口側にデポジットが付着することがあった。その結果、コンプレッサによる吸気の加圧効率が低下したり、コンプレッサが破損したりするおそれがあった。
【0007】
ここで、コンプレッサによる過給圧が上昇するほどコンプレッサの出口側の温度は高くなる傾向がある。また、低圧ループ式のEGR装置では、EGRガス温度が吸気温度より高いので、EGRガス流量やEGR率が多いほどコンプレッサに流入する気体(吸気、ブローバイガス及びEGRガスの混合気)の温度が高くなり、オイルミストが焼けてコンプレッサの出口側に付着するデポジットが増える傾向がある。これに対し、エンジンへの燃費要求から、高過給域でもできる限りEGRガス流量を確保することが望まれる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高過給域でもできる限り排気還流ガス流量を確保しながらコンプレッサの出口側におけるデポジット付着量を低減できるブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの吸気通路と排気通路との間に設けられ、吸気通路における吸気を昇圧させるための過給機と、過給機は、吸気通路に配置されるコンプレッサと、排気通路に配置されるタービンと、コンプレッサとタービンを一体回転可能に連結する回転軸とを含むことと、エンジンのブローバイガスをガス還元通路を介してコンプレッサより上流の吸気通路へ流してエンジンへ還元させるためのブローバイガス還元装置と、エンジンの燃焼室から排気通路へ排出される排気の一部を排気還流ガスとして吸気通路へ流して燃焼室へ還流させるための排気還流通路と、排気還流通路における排気還流ガスの流れを調節するための排気還流弁と、排気還流通路は、その入口がタービンより下流の排気通路に接続され、その出口がコンプレッサより上流の吸気通路に接続されることと、エンジンの運転状態を検出するための運転状態検出手段と、検出される運転状態に基づき排気還流弁を制御するための制御手段とを備えたブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置において、コンプレッサに流入する排気還流ガスの温度と相関のある相関温度を検出するための相関温度検出手段を含み、制御手段は、検出される運転状態に基づき排気還流弁の目標開度を算出すると共に、コンプレッサの出口側の温度が160℃以下となるように、検出される相関温度に応じた補正値を算出し、算出される目標開度を算出される補正値に応じて補正し、補正された目標開度に基づき排気還流弁を制御することを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、検出される運転状態に基づき排気還流弁の目標開度が制御手段により算出される。また、コンプレッサの出口側の温度が160℃以下となるように、コンプレッサに流入する排気還流ガスの温度と相関のある相関温度に応じて補正値が制御手段により算出される。そして、制御手段により、目標開度が補正値に応じて補正され、その補正された目標開度に基づき排気還流弁が制御される。従って、コンプレッサに流入する排気還流ガスの流量が適度に低減され、コンプレッサの出口側の温度が160℃以下に抑えられるので、コンプレッサに付着していたオイルミストが焼けることがない。また、高過給域でも排気還流が停止することがなく、排気還流ガス流量の低減が必要最小限に抑えられる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、相関温度検出手段は、エンジンの冷却水の温度を検出するための冷却水温検出手段を含み、制御手段は、補正値を、検出される冷却水の温度に応じて算出することを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、相関温度としての冷却水温が冷却水温検出手段により検出され、その冷却水温に応じた補正値が制御手段により算出される。従って、冷却水温に応じた好適な補正値が得られる。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、相関温度検出手段は、吸気通路に吸入される外気の温度を検出するための外気温検出手段を含み、制御手段は、補正値を、検出される吸気の温度に応じて算出することを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、相関温度としての外気温が外気温検出手段により検出され、その外気温に応じた補正値が制御手段により算出される。従って、外気温に応じた好適な補正値が得られる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、高過給域でもできる限り排気還流ガス流量を確保しながらコンプレッサの出口側におけるデポジット付着量を低減することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、高過給域でも冷却水温に合わせて最大限の排気還流ガス流量を確保することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、高過給域でも外気温に合わせて最大限の排気還流ガス流量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係り、ブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置を含むガソリンエンジンシステムを示す概略構成図。
【
図2】一実施形態に係り、EGR通路の一部であってEGR弁が設けられる部分を拡大して示す断面図。
【
図3】一実施形態に係り、EGR制御の処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図4】一実施形態に係り、外気温に応じたEGR許可水温を求めるために参照されるマップ。
【
図5】一実施形態に係り、エンジン回転速度とエンジン負荷に応じた目標開度を求めるために参照される目標開度マップ
【
図6】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び外気温に応じた外気温補正値を求めるために参照される外気温補正マップ。
【
図7】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び外気温に応じた外気温補正値を求めるために参照される外気温補正マップ。
【
図8】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び外気温に応じた外気温補正値を求めるために参照される外気温補正マップ。
【
図9】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び冷却水温に応じた冷却水温補正値を求めるために参照される冷却水温補正マップ。
【
図10】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び冷却水温に応じた冷却水温補正値を求めるために参照される冷却水温補正マップ。
【
図11】一実施形態に係り、エンジン回転速度、エンジン負荷及び冷却水温に応じた冷却水温補正値を求めるために参照される冷却水温補正マップ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明におけるブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンの排気還流装置(EGR装置)を具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1に、この実施形態におけるブローバイガス還元装置と過給機を備えたエンジンのEGR装置を含むガソリンエンジンシステムを概略構成図により示す。このエンジンシステムは、自動車に搭載され、レシプロタイプのエンジン1を備える。エンジン1の吸気ポート2には、吸気通路3が接続され、排気ポート4には、排気通路5が接続される。吸気通路3の入口には、エアクリーナ6が設けられる。エアクリーナ6より下流の吸気通路3には、排気通路5との間に、吸気通路3における吸気を昇圧させるための過給機7が設けられる。
【0021】
過給機7は、吸気通路3に配置されるコンプレッサ8と、排気通路5に配置されるタービン9と、コンプレッサ8とタービン9を一体回転可能に連結する回転軸10とを含む。過給機7は、排気通路5を流れる排気によりタービン9を回転させて回転軸10を介してコンプレッサ8を一体的に回転させることにより、吸気通路3における吸気を昇圧させる、すなわち過給を行うようになっている。
【0022】
過給機7に隣接して排気通路5には、タービン9を迂回する排気バイパス通路11が設けられる。この排気バイパス通路11には、ウェイストゲートバルブ12が設けられる。ウェイストゲートバルブ12により排気バイパス通路11を流れる排気が調節されることにより、タービン9に供給される排気流量が調節され、タービン9及びコンプレッサ8の回転速度が調節され、過給機7による過給圧が調節されるようになっている。
【0023】
吸気通路3において、過給機7のコンプレッサ8とエンジン1との間には、インタークーラ13が設けられる。このインタークーラ13は、コンプレッサ8により昇圧されて高温となった吸気を適温に冷却するためのものである。インタークーラ13とエンジン1との間の吸気通路3には、サージタンク3aが設けられる。また、インタークーラ13より下流であってサージタンク3aより上流の吸気通路3には、電動式のスロットル弁である電子スロットル装置14が設けられる。電子スロットル装置14は、吸気通路3に配置されるバタフライ形のスロットル弁21と、そのスロットル弁21を開閉駆動するためのDCモータ22と、スロットル弁21の開度(スロットル開度)TAを検出するためのスロットルセンサ23とを備える。電子スロットル装置14は、運転者によるアクセルペダル26の操作に応じてスロットル弁21がDCモータ22により開閉駆動されることにより、スロットル弁21の開度が調節されるように構成される。また、タービン9より下流の排気通路5には、排気を浄化するための排気触媒としての触媒コンバータ15が設けられる。
【0024】
エンジン1には、燃焼室16に燃料を噴射供給するためのインジェクタ25が設けられる。インジェクタ25には、燃料タンク(図示略)から燃料が供給されるようになっている。また、エンジン1には、各気筒に対応して点火プラグ29が設けられる。各点火プラグ29は、イグナイタ30から出力される高電圧を受けて点火動作する。各点火プラグ29の点火時期は、イグナイタ30による高電圧の出力タイミングにより決定される。点火プラグ29とイグナイタ30により点火装置が構成される。
【0025】
この実施形態において、EGR装置は、エンジン1の燃焼室16から排気通路5へ排出される排気の一部をEGRガスとして吸気通路3へ流して燃焼室16へ還流させる排気還流通路(EGR通路)17と、EGR通路17におけるEGRガスの流れを調節するためにEGR通路17に設けられた排気還流弁(EGR弁)18とを備える。EGR装置は、低圧ループ式であって、EGR通路17は、触媒コンバータ15より下流の排気通路5と、コンプレッサ8より上流の吸気通路3との間に設けられる。すなわち、EGR通路17の出口17aは、コンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。また、EGR通路17の入口17bは、触媒コンバータ15より下流の排気通路5に接続される。EGR通路17には、同通路17を流れるEGRガスを冷却するためのEGRクーラ20が設けられる。この実施形態で、EGR弁18は、EGRクーラ20より下流のEGR通路17に配置される。また、この実施形態では、EGR弁18とEGRクーラ20は、それぞれハウジングを備え、それらハウジングには、ハウジングを冷却するためにエンジン1の冷却水が循環して流れるように構成される。これにより、EGR弁18及びEGRクーラ20を流れるEGRガスの温度が、冷却水温THWの影響を受けるようになっている。
【0026】
図2に、EGR通路17の一部であってEGR弁18が設けられる部分を拡大して断面図により示す。
図1、
図2に示すように、EGR弁18は、ポペット弁として、かつ、電動弁として構成される。すなわち、EGR弁18は、DCモータ31により駆動される弁体32を備える。弁体32は、略円錐形状をなし、EGR通路17に設けられた弁座33に着座可能に設けられる。DCモータ31は直進的に往復運動(ストローク運動)可能に構成された出力軸34を備え、その出力軸34の先端に弁体32が固定される。出力軸34は軸受35を介してEGR通路17を構成するハウジングに支持される。そして、DCモータ31の出力軸34をストローク運動させることにより、弁座33に対する弁体32の開度が調節されるようになっている。EGR弁18の出力軸34は、弁体32が弁座33に着座する全閉状態から、弁体32が軸受35に当接する全開状態までの間で所定のストロークL1だけストローク運動可能に設けられる。この実施形態のEGR装置は、大量EGRを実現するために、EGR弁18につき、従前の技術に比べて弁座33の開口面積が拡大されている。それに合わせて、弁体32が大型化されている。
【0027】
図1に示すように、この実施形態では、EGR通路17の出口17aが入口17bよりも垂直方向において高い位置に配置される。また、EGR弁18の下流側から上流側へ凝縮水が流下可能に設けられると共に、その凝縮水がEGR通路17を排気通路5へ向けて流下するように設けられる。より詳細には、
図1及び
図2に示すように、EGR通路17において、EGR弁18は、弁体32及び出力軸34が垂直方向にストローク運動するように配置される。また、EGR弁18より上流のEGR通路17は、EGR弁18の直近部分では垂直に伸び、更に上流の部分では排気通路5へ向けて下方へ傾斜するように配置される。その傾斜するEGR通路17の部分にEGRクーラ20が配置される。一方、EGR弁18より下流のEGR通路17は、EGR弁18の直近部分では下流側へ向けて上方へ傾斜しており、更に下流の部分は吸気通路3へ向けて垂直に配置される。そして、EGR弁18より下流のEGR通路17の傾斜部分が、凝縮水を捕集するためのトラップ45となっている。これにより、EGR弁18が全閉に閉弁されたときに、EGR弁18の上流側から下流側へ漏れたEGRガスにより発生した凝縮水は、このトラップ45に捕集されるようになっている。そして、トラップ45に捕集された凝縮水は、EGR弁18が開弁したときに、EGR弁18の下流側から上流側へ流下するように、EGR弁18の弁座33の形状と配置が設定される。
【0028】
従って、EGR弁18の下流側に生じた凝縮水は、EGR弁18とEGR通路17の出口17aとの間の高低差により、吸気通路3へ流れない。また、EGR弁18の下流側から上流側へ流下した凝縮水は、EGR弁18とEGR通路17の入口17bとの間の高低差により、EGR通路17から排気通路5へ向けて流下する。排気通路5へ流下した凝縮水は、排気と共に外部へ排出される。
【0029】
この実施形態において、吸気通路3には、EGR通路17の出口17aの周囲に凹部3bが形成される。ここで、凹部3bの底壁は、凹部3bの外周から凹部3bの中心へ向けて下方へ傾斜するテーパ形状をなす。そして、EGR通路17の出口17aは、この凹部3bの最も低い位置に配置される。従って、コンプレッサ8より上流の吸気通路3の中で生じた凝縮水は、この凹部3bに捕集され、EGR通路17の出口17aからEGR通路17のトラップ45へ向けて流下する。
【0030】
この実施形態のエンジン1には、燃焼室16からクランクケース1bやシリンダヘッド(ヘッドカバーを含む)1cの内部へ漏れ出たブローバイガスを吸気通路3へ流して燃焼室16へ還元するためのブローバイガス還元装置が設けられる。
図1に示すように、ブローバイガス還元装置は、ガス還元通路61と、PCV弁62と、掃気通路63とを備える。ガス還元通路61は、エンジン1で発生するブローバイガスを、負圧を利用して吸気通路3へ流すように構成される。ガス還元通路61は、その入口側がPCV弁62を介してシリンダヘッド1cに接続され、その出口側がコンプレッサ8より上流の吸気通路3に接続される。PCV弁62は、ガス還元通路61へ流れるブローバイガス流量を調整するために負圧を受けて動作するように構成される。ここで、エンジン1の運転時に、吸気通路3に吸気が流れてコンプレッサ8より上流の吸気通路3が負圧になると、その負圧がガス還元通路61とPCV弁62を介してシリンダヘッド1cの内部に作用する。この負圧を受けてPCV弁62が開弁し、ブローバイガスがシリンダヘッド1cからPCV弁62及びガス還元通路61を介してコンプレッサ8より上流の吸気通路3へ流れる。この吸気通路3へ流れたブローバイガスは、吸気と共に燃焼室16へ取り込まれる。掃気通路63は、シリンダヘッド1cから吸気通路3へブローバイガスが流れるときにシリンダヘッド1cの内部を掃気するために、シリンダヘッド1cの内部へ新気を導入するように構成される。ここで、ブローバイガスに含まれる水分も、吸気通路3の凹部3bにて捕集され、EGR通路17の出口17aからEGR通路17のトラップ45へ向けて流下するようになっている。
【0031】
この実施形態では、エンジン1の運転状態に応じて燃料噴射制御、点火時期制御、吸気量制御及びEGR制御等をそれぞれ実行するために、インジェクタ25、イグナイタ30、電子スロットル装置14のDCモータ22及びEGR弁18のDCモータ31がそれぞれエンジン1の運転状態に応じて電子制御装置(ECU)50により制御されるようになっている。ECU50は、中央処理装置(CPU)と、所定の制御プログラム等を予め記憶したり、CPUの演算結果等を一時的に記憶したりする各種メモリと、これら各部と接続される外部入力回路及び外部出力回路とを備える。ECU50は、本発明の制御手段の一例に相当する。外部出力回路には、イグナイタ30、インジェクタ25、DCモータ22及びDCモータ31が接続される。外部入力回路には、スロットルセンサ23をはじめエンジン1の運転状態を検出するための本発明の運転状態検出手段の一例に相当する各種センサ等27,51〜56が接続され、各種エンジン信号が入力されるようになっている。
【0032】
ここで、各種センサとして、スロットルセンサ23の他に、アクセルセンサ27、吸気圧センサ51、回転速度センサ52、水温センサ53、エアフローメータ54、空燃比センサ55及び外気温センサ56が設けられる。アクセルセンサ27は、アクセルペダル26の操作量であるアクセル開度ACCを検出する。吸気圧センサ51は、サージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。すなわち、吸気圧センサ51は、スロットル弁21より下流のサージタンク3aにおける吸気圧PMを検出する。回転速度センサ52は、エンジン1のクランクシャフト1aの回転角(クランク角)を検出するとともに、そのクランク角の変化をエンジン1の回転速度(エンジン回転速度)NEとして検出する。水温センサ53は、エンジン1の冷却水温THWを検出し、本発明の冷却水温検出手段の一例に相当する。エアフローメータ54は、エアクリーナ6の直下流の吸気通路3を流れる吸気量Gaを検出する。空燃比センサ55は、触媒コンバータ15の直上流の排気通路5に設けられ、排気中の空燃比A/Fを検出する。外気温センサ56は、エアクリーナ6に設けられ、吸気通路3に吸入される外気の温度(外気温)THAを検出する。
【0033】
この実施形態で、ECU50は、エンジン1の全運転領域においてエンジン1の運転状態に応じてEGR制御を実行するために、EGR弁18を制御するようになっている。また、ECU50は、通常は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時に検出される運転状態に基づきEGR弁18を開弁制御し、エンジン1の停止時、アイドル運転時又は減速運転時にはEGR弁18を全閉に閉弁制御するようになっている。
【0034】
この実施形態で、ECU50は、運転者の要求に応じてエンジン1を運転するために、アクセル開度ACCに基づき電子スロットル装置14を制御するようになっている。また、ECU50は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時にアクセル開度ACCに基づき電子スロットル装置14を開弁制御し、エンジン1の停止時又は減速運転時に電子スロットル装置14を閉弁制御するようになっている。これにより、スロットル弁21は、エンジン1の加速運転時又は定常運転時には開弁され、エンジン1の停止時又は減速運転時には全閉に閉弁されるようになっている。
【0035】
ここで、このエンジンシステムにおいて、コンプレッサ8より上流の吸気通路3から、吸気、EGRガス及びオイルミストを含んだブローバイガスがコンプレッサ8の入口側に流入する。そして、その吸気等が加圧されてコンプレッサ8の出口側の温度が上昇すると、コンプレッサ8に付着していたオイルミストが焼けてコンプレッサの出口側にデポジットが付着する。その結果、コンプレッサによる吸気等の加圧効率が低下したり、コンプレッサが破損したりするおそれがある。そこで、この実施形態では、高過給域でもできる限りEGRガス流量を確保しながらコンプレッサ8の出口側におけるデポジット付着量を低減するために、ECU50が以下のようなEGR制御を実行するようになっている。
【0036】
図3に、そのEGR制御の処理内容の一例をフローチャートにより示す。処理がこのルーチンへ移行すると、先ず、ステップ100で、ECU50は、各種センサ51〜53,56の検出値に基づき外気温THA、冷却水温THW、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLをそれぞれ読み込む。ECU50は、吸気圧PMとエンジン回転速度NEに基づきエンジン負荷KLを求めることができる。
【0037】
次に、ステップ110で、ECU50は、外気温THAに応じたEGR許可水温THWEを求める。EGR許可水温THWEは、EGR実行を許可するために基準となる冷却水温を意味する。ECU50は、例えば、
図4に示すようなマップを参照することにより、外気温THAに応じたEGR許可水温THWEを求めることができる。このマップでは、外気温THAが、氷点下以下の低温から「20℃」に近付くに連れてEGR許可水温THWEが「60℃」より高い高温から「60℃」へ減少し、外気温THAが「20℃」より高温側ではEGR許可水温THWEが「60℃」で一定となるように設定される。
【0038】
次に、ステップ120で、ECU50は、冷却水温THWがEGR許可水温THWEより高いか否かを判断する。この判断結果が否定となる場合、ECU50は、処理をステップ180へ移行する。この判断結果が肯定となる場合、ECU50は、処理をステップ130へ移行する。
【0039】
ステップ180では、ECU50は、EGR弁18を全閉とするためにEGR弁18の最終的な目標開度TERFを「0(%)」に設定し、処理をステップ170へ移行する。
【0040】
一方、ステップ130では、ECU50は、エンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに応じたEGR弁18の目標開度TERを求める。ECU50は、例えば、
図5に示すような目標開度マップを参照することにより、エンジン回転速度NEとエンジン負荷KLに応じた目標開度TERを求めることができる。このマップにおいて、エンジン回転速度NEの各値(8〜60)とエンジン負荷KLの各値(20〜200)との組合せに応じた各升目の中の値が目標開度TERの値を意味する。各升目の中の値の間の値は、補間計算により求めることができる。ここで、ハッチングの付された升目は、エンジン1を取り巻く環境条件の影響からコンプレッサ8の出口側の温度が「160℃」を超える領域を意味する。ここで、上記した環境条件は、外気温THAと冷却水温THWの変化と相関性があることがわかっている。
【0041】
次に、ステップ140で、ECU50は、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び外気温THAに応じた補正値(外気温補正値)TETAを求める。ECU50は、例えば、
図6〜
図8に示すような外気温補正マップを参照することにより、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び外気温THAに応じた外気温補正値TETAを求めることができる。ここで、
図6に示すマップは、外気温THAが「20℃」より低い場合に参照され、
図7に示すマップは、外気温THAが「30℃」となるときに参照され、
図8に示すマップは、外気温THAが「40℃」以上となるときに参照される。これらマップにおいて、エンジン回転速度NEの各値(8〜60)とエンジン負荷KLの各値(20〜200)との組合せに応じた各升目の中の値が外気温補正値TETAを意味する。ここで、ハッチングの付された升目の意味は、
図5の場合と同様である。
【0042】
次に、ステップ150で、ECU50は、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び冷却水温THWに応じた補正値(冷却水温補正値)TETWを求める。ECU50は、例えば、
図9〜
図11に示すような冷却水温補正マップを参照することにより、エンジン回転速度NE、エンジン負荷KL及び冷却水温THWに応じた冷却水温補正値TETWを求めることができる。ここで、
図9に示すマップは、冷却水温THWが「90℃」より低い場合に参照され、
図10に示すマップは、冷却水温THWが「100℃」となるときに参照され、
図11に示すマップは、冷却水温THWが「110℃」以上となるときに参照される。これらマップにおいて、エンジン回転速度NEの各値(8〜60)とエンジン負荷KLの各値(20〜200)との組合せに応じた各升目の中の値が冷却水温補正値TETWを意味する。ここで、ハッチングの付された升目の意味は、
図5の場合と同様である。
【0043】
次に、ステップ160で、ECU50は、最終的な目標開度TERFを求める。ECU50は、以下の(式1)を参照することにより、最終的な目標開度TERFを求めることができる。すなわち、ECU50は、目標開度TERから外気温補正値TETAと冷却水温補正値TETWを減算することで目標開度TERを補正することで最終的な目標開度TERFを求める。
TERF=TER−(TETA+TETW) ・・・(式1)
【0044】
そして、ステップ160又はステップ180から移行してステップ170では、ECU50は、EGR弁18を最終的な目標開度TERFに制御し、処理をステップ100へ戻す。
【0045】
以上説明したこの実施形態におけるブローバイガス還元装置を備えた過給機付きエンジンのEGR装置によれば、各種センサ51,52により検出されるエンジン回転速度NE及びエンジン負荷KLに基づきEGR弁18の目標開度TERがECU50により算出される。また、コンプレッサ8の出口側の温度が160℃以下となるように、コンプレッサ8に流入するEGRガスの温度と相関のある相関温度に応じて補正値TETA,TETWがECU50により算出される。そして、ECU50により、目標開度TERが補正値TETA,TETWに応じて補正され、その補正された最終的な目標開度TERFに基づきEGR弁18が制御される。従って、コンプレッサ8に流入するEGRガスの流量が適度に低減され、コンプレッサ8の出口側の温度が160℃以下と抑えられるので、コンプレッサ8に付着していたオイルミストが焼けることがない。また、高過給域でもEGRが停止することがなく、EGRガス流量の低減が必要最小限に抑えられる。このため、高過給域でもできる限りEGRガス流量を確保しながらコンプレッサ8の出口側におけるデポジット付着量を低減することができる。その結果、コンプレッサ8による加圧効率の低下を抑えることができ、デポジット付着によるコンプレッサ8の破損を防止することができる。
【0046】
この実施形態では、相関温度としての冷却水温THWが水温センサ53により検出され、その冷却水温THWに応じた冷却水温補正値TETWがECU50により算出される。すなわち、冷却水温THWが低いときは冷却水温補正値TETWが少なく算出され、冷却水温THWが高いときは冷却水温補正値TETWが多く算出される。従って、冷却水温THWに応じて好適な冷却水温補正値TETWが得られる。この結果、高過給域でも冷却水温THWに合わせて最大限のEGRガス流量を確保することができる。
【0047】
この実施形態では、相関温度としての外気温THAが外気温センサ56により検出され、その外気温THAに応じた外気温補正値TETAがECU50により算出される。すなわち、外気温THAが低いときは外気温補正値TETAを少なく算出され、外気温THAが高いときは外気温補正値TETAが多く算出される。従って、外気温THAの変化に応じて好適な外気温補正値TETAが得られる。この結果、高過給域でも、外気温THAに合わせて最大限のEGRガス流量を確保することができる。
【0048】
なお、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0049】
(1)前記実施形態では、EGR通路17の出口17aを入口17bよりも垂直方向において高い位置に配置し、EGR弁18の下流側から上流側へ凝縮水を流下可能に設けると共に、その凝縮水がEGR通路17を排気通路5へ向けて流下するように構成した。これに対し、これらの配置の構成を省略することもできる。
【0050】
(2)前記実施形態では、コンプレッサ8より上流の吸気通路3において、EGR通路17の出口17aの周囲に凹部3bを形成した。これに対し、この凹部3bを省略することもできる。