特許第6329054号(P6329054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6329054
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】スイッチング回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/06 20060101AFI20180514BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20180514BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   H01L27/06 311B
   H01L29/78 301K
   H01L27/092 H
   H01L29/78 652T
   H01L29/78 656B
   H01L29/78 657A
   H01L29/91 E
   H01L29/91 L
   H01L27/04 H
   H01L27/088 331E
   H01L29/78 623A
   H01L29/78 626C
   H01L29/78 613A
   H01L27/06 102A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-209138(P2014-209138)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2016-81963(P2016-81963A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 行彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 建策
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−165749(JP,A)
【文献】 特開平05−235348(JP,A)
【文献】 実公昭48−037414(JP,Y1)
【文献】 特開昭49−073984(JP,A)
【文献】 米国特許第4492883(US,A)
【文献】 特開2001−345389(JP,A)
【文献】 特開平06−244413(JP,A)
【文献】 米国特許第4853563(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/06
H01L 21/336
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 21/8238
H01L 27/04
H01L 27/088
H01L 27/092
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 29/786
H01L 29/861
H01L 29/868
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路であって、
チャネル型が第1導電型であり、SiC半導体層に形成されているメインMOSFETと、
チャネル型が第2導電型であり、ソースが前記メインMOSFETのゲートに接続されている制御MOSFETと、
前記メインMOSFETと前記制御MOSFETのうちのチャネル型がn型である方のMOSFETのゲートにカソードが接続されており、前記メインMOSFETと前記制御MOSFETのうちのチャネル型がp型である方のMOSFETのゲートにアノードが接続されているダイオード、
を有するスイッチング回路。
【請求項2】
前記制御MOSFETが、シリコン半導体層に形成されている請求項1のスイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、MOSFETが開示されている。また、近年では、MOSFETの半導体材料として、SiCが用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−54378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SiC半導体層に形成されたMOSFETでは、ゲートに適切ではない電位を印加すると、ゲート閾値が変動することが分かっている。例えば、nチャネル型のMOSFETでは、ゲートに所定値よりも低いマイナスの電位を印加すると、ゲート閾値がマイナス側に変動する。また、pチャネル型のMOSFETでは、ゲートに所定値よりも高いプラスの電位を印加すると、ゲート閾値がプラス側に変動する。このようにゲート閾値が変動する理由は、SiC半導体層に形成されたMOSFETでは、ゲート絶縁膜とSiC半導体層の界面における準位密度が大きいため、その界面準位に多くのキャリアが捕獲されるためであると考えられる。ゲート閾値が変動すると、MOSFETを意図した通りに動作させることができなくなるため、問題となる。したがって、本明細書では、ゲート閾値の変動を防止しながら、SiC半導体層に形成されたMOSFETをスイッチングさせることが可能なスイッチング回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するスイッチング回路は、メインMOSFETと、制御MOSFETと、ダイオードを有する。メインMOSFETは、チャネル型が第1導電型であり、SiC半導体層に形成されている。制御MOSFETは、チャネル型が第2導電型であり、ソースが前記メインMOSFETのゲートに接続されている。ダイオードは、前記メインMOSFETと前記制御MOSFETのうちのチャネル型がn型である方のMOSFETのゲートにカソードが接続されており、前記メインMOSFETと前記制御MOSFETのうちのチャネル型がp型である方のMOSFETのゲートにアノードが接続されている。
【0006】
なお、上記の第1導電型と第2導電型の何れか一方はn型であり、他方はp型である。
【0007】
このスイッチング回路では、制御MOSFETのゲートの電位によって、メインMOSFETをスイッチングさせることができる。以下では、制御MOSFETのゲートの電位を、信号電位と呼ぶ。
【0008】
まず、メインMOSFETのチャネル型がn型である場合について説明する。メインMOSFETのゲートを充電する場合には、信号電位(すなわち、ダイオードのアノード)の電位を上昇させる。すると、制御MOSFETがオフすると共にダイオードがオンし、メインMOSFETのゲートが充電される。メインMOSFETのゲートを放電する場合には、信号電位を低下させる。すると、ダイオードに印加される電圧が逆電圧となるので、ダイオードはオフ状態となる。また、信号電位を低下させると、制御MOSFETのゲートの電位が低下し、制御MOSFETがオンする。すると、制御MOSFETを介してメインMOSFETのゲートから電荷が放電される。これによって、メインMOSFETがオフする。このように、このスイッチング回路によれば、メインMOSFETをスイッチングさせることが可能である。また、サージ等によって信号電位が極端に低下した場合には、ダイオードに逆電圧が印加されるので、ダイオードはオフ状態となる。このため、低い信号電位がメインMOSFETのゲートには印加されることを防止することができる。これによって、メインMOSFETのゲート閾値が変動することが防止される。
【0009】
また、メインMOSFETのチャネル型がp型である場合のスイッチング回路の動作は、メインMOSFETのチャネル型がn型である場合のスイッチング回路の上記動作に比べて、電流の向きが異なるが、基本的な動作は同じである。メインMOSFETのチャネル型がp型である場合には、メインMOSFETのゲートに極端に高い電位が印加されることが防止される。これによって、メインMOSFETのゲート閾値が変動することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スイッチング回路10の回路図。
図2】MOSFET12、14の特性を示すグラフ。
図3】半導体チップ70の上面図。
図4】制御MOSFET14が形成されている範囲の半導体チップ70の縦断面図。
図5】ダイオード16が形成されている範囲の半導体チップ70の縦断面図(図6のV−V線における縦断面図)。
図6】半導体チップ70の上面側から見たアノード領域81とカソード領域82の配置を示す図。
図7】スイッチング回路10の動作を説明するグラフ。
図8】スイッチング回路210の回路図。
図9】スイッチング回路210の動作を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1に示す実施例1のスイッチング回路10は、メインMOSFET12と、制御MOSFET14と、ダイオード16を有している。
【0012】
メインMOSFET12は、nチャネル型のMOSFETである。メインMOSFET12のドレインは高電位配線20に接続されており、メインMOSFET12のソースは低電位配線22に接続されている。メインMOSFET12は、SiC基板に形成されたMOSFETである。より詳細には、メインMOSFET12は、SiC基板中に形成されたn型のソース領域、p型のボディ領域及びn型のドレイン領域を有している。また、ボディ領域には、ゲート絶縁膜(シリコン酸化膜)が接している。ボディ領域には、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が対向している。ゲート電極に閾値以上の電位を印加すると、ボディ領域にn型のチャネルが形成され、ソース領域とドレイン領域がチャネルによって接続される。その結果、メインMOSFET12がオンする。図2のグラフA1は、メインMOSFET12の特性を示している。図示するように、メインMOSFET12は、プラスのゲート閾値Vthmを有している。メインMOSFET12は、ゲートに閾値Vthm以上の電位が印加されたときにオンする。
【0013】
制御MOSFET14は、pチャネル型のMOSFETである。制御MOSFET14のソースは、メインMOSFET12のゲートに接続されている。制御MOSFET14のドレインは、マイナス配線26に接続されている。制御MOSFET14のゲートは、信号配線24に接続されている。制御MOSFET14は、ポリシリコンの半導体層に形成されたMOSFETである。より詳細には、制御MOSFET14は、ポリシリコンの半導体層中に形成されたp型のソース領域、n型のボディ領域及びp型のドレイン領域を有している(但し、ボディ領域はp型であってもよい。)。また、ボディ領域には、ゲート絶縁膜(シリコン酸化膜)が接している。ボディ領域には、ゲート絶縁膜を介してゲート電極が対向している。ゲート電極に閾値以下の電位を印加すると、ボディ領域にp型のチャネルが形成され、ソース領域とドレイン領域がチャネルによって接続される。その結果、制御MOSFET14がオンする。図2のグラフA2は、制御MOSFET14の特性を示している。図示するように、制御MOSFET14は、プラスのゲート閾値Vthcを有している。制御MOSFET14は、ゲートに閾値Vthc以下の電位が印加されたときにオンする。
【0014】
ダイオード16は、pnダイオードである。ダイオード16のカソードは、メインMOSFET12のゲート及び制御MOSFET14のソースに接続されている。ダイオード16のアノードは、制御MOSFET14のゲート及び信号配線24に接続されている。
【0015】
信号配線24には、メインMOSFET12を制御するための電位Vsigが入力される。マイナス配線26には、電位Vaが印加されている。電位Vaは、0またはマイナスの電位であり、メインMOSFET12のゲート閾値Vthmよりも低い電位である。
【0016】
メインMOSFET12、制御MOSFET14及びダイオード16は、図3に示す1つの半導体チップ70内に形成されている。半導体チップ70は、SiC基板72を有している。図示していないが、メインMOSFET12は、SiC基板72内に形成されている。
【0017】
図3、4に示すように、制御MOSFET14は、SiC基板72の表面上に形成されている。すなわち、図4に示すように、SiC基板72の表面には、層間絶縁膜73が形成されている。層間絶縁膜73の表面には、ポリシリコン層74が形成されている。ポリシリコン層74内に、p型のソース領域75、n型のボディ領域76及びp型のドレイン領域77が形成されている(但し、ボディ領域76はp型であってもよい。)。ボディ領域76の表面には、ゲート絶縁膜78及びゲート電極79が形成されている。ソース領域75、ボディ領域76、ドレイン領域77及びゲート電極79等によって、制御MOSFET14が形成されている。制御MOSFET14は、SiC基板72の表面上に形成された配線によって、図1に示すように接続されている。
【0018】
図3、5に示すように、ダイオード16は、SiC基板72の表面上に形成されている。すなわち、図5に示すように、層間絶縁膜73の表面には、ポリシリコン層80が形成されている。ポリシリコン層80内に、p型のアノード領域81とn型のカソード領域82が形成されている。図6に示すように、カソード領域82は、アノード領域81の周囲を取り囲むように形成されている。アノード領域81とカソード領域82によって、ダイオード16が形成されている。ダイオード16は、SiC基板72の表面上に形成された配線によって、図1に示すように接続されている。
【0019】
次に、スイッチング回路10の動作について説明する。メインMOSFET12がオフしている状態においては、信号配線24の電位Vsigが低い電位VLに制御されている。電位VLは、0またはマイナスの電位であり、電位Vaと略等しい。電位VLは、制御MOSFET14のゲートに印加されている。電位VLは、制御MOSFET14のゲート閾値Vthcよりも低い。このため、制御MOSFET14はオンしており、メインMOSFET12のゲートに電位Vaが印加されている。すなわち、ゲート電位Vgが電位Vaと略等しくなっている。電位VaがメインMOSFET12のゲート閾値Vthmよりも低いので、メインMOSFET12はオフしている。
【0020】
メインMOSFET12をターンオンさせる場合には、信号配線24の電位Vsigを低い電位VLから高い電位VHに上昇させる。電位VHは、プラスの電位である。電位VHは、制御MOSFET14のゲート閾値Vthcよりも高い電位であり、かつ、メインMOSFET12のゲート閾値Vthmよりも高い電位である。電位Vsigが高い電位VHに制御されると、電位VHが制御MOSFET14のゲートに印加されるので、制御MOSFET14がオフする。また、電位Vsig(=VH)がゲート電位Vgよりも高くなるので、ダイオード16がオンする。このため、信号配線24からメインMOSFET12のゲートに向かって電流が流れ、メインMOSFET12のゲートに電荷が充電される。これにより、メインMOSFET12のゲート電位Vgが、電位VHと略等しい電位まで上昇する。より詳細には、ゲート電位Vgは、電位VHからダイオード16の順方向電圧降下VFを減算した電位まで上昇する。電位VH−VFは、メインMOSFET12のゲート閾値Vthmよりも高いので、メインMOSFET12がターンオンする。
【0021】
メインMOSFET12をターンオフさせる場合には、図7に示すように、信号配線24の電位Vsigを高い電位VHから低い電位VLに低下させる。以下に、電位Vsigを高い電位VHから低い電位VLに低下させる過程の動作について説明する。電位Vsigを電位VHから低下させ始めると、信号配線24の電位Vsigがゲート電位Vg(=VH−VF)よりも低くなるので、ダイオード16がオフする。また、電位Vsigを低下させ始めた段階では、信号配線24の電位Vsig(すなわち、制御MOSFET14のゲート電位)が制御MOSFET14のゲート閾値Vthcよりも高いので、制御MOSFET14はオフした状態に維持される。すなわち、図7の期間T1においては、制御MOSFET14はオフしている。したがって、期間T1の間は、メインMOSFET12のゲートから電荷が排出されず、ゲート電位Vgが電位VH−VFに保たれる。その後、信号配線24の電位Vsigが制御MOSFET14のゲート閾値Vthcよりも低くなると、制御MOSFET14がオンする。このため、期間T1の後の期間T2では、制御MOSFET14に電流Icが流れる。これによって、メインMOSFET12のゲートから電荷が排出される。したがって、期間T2では、メインMOSFET12のゲート電位Vgが低下する。ゲート電位Vgは、電位Vaと略一致する電位まで低下する。期間T2の間のタイミングt0において、ゲート電位Vgは、メインMOSFET12のゲート閾値Vthmを下回る。すると、メインMOSFET12を流れる電流Imが略ゼロまで低下する。すなわち、メインMOSFET12がオフする。
【0022】
以上に説明したように、スイッチング回路10によれば、電位Vsigを制御することによって、メインMOSFET12をスイッチングさせることができる。
【0023】
また、電位Vsigには、例えば、図7に示すマイナスのサージ90が重畳する場合がある。スイッチング回路10では、サージ90によって電位Vsigが極端に低いマイナスの電位となっても、ダイオード16に逆電圧が印加されることでダイオード16がオフ状態となる。このため、メインMOSFET12のゲートにマイナスのサージが印加されることを防止することができる。このため、SiC基板に形成されているメインMOSFET12のゲート閾値が変動することを防止することができる。また、サージ90は、制御MOSFET14のゲートに印加される。しかしながら、制御MOSFET14は、pチャネル型であり、かつ、シリコン半導体層に形成されている。このため、制御MOSFET14のゲートに極端に低い電位が印加されても、制御MOSFET14のゲート閾値はほとんど変動しない。したがって、スイッチング回路10では、電位Vsigにマイナスのサージが重畳しても、回路の特性はほとんど変化しない。したがって、スイッチング回路10によれば、メインMOSFET12を安定してスイッチングさせることができる。
【実施例2】
【0024】
図8に示す実施例2のスイッチング回路210では、メインMOSFET212がpチャネル型であり、制御MOSFET214がnチャネル型である。実施例2のスイッチング回路210の構成について、以下、詳細に説明する。
【0025】
メインMOSFET212は、pチャネル型のMOSFETである。メインMOSFET212のソースは高電位配線220に接続されており、メインMOSFET212のドレインは低電位配線222に接続されている。メインMOSFET212は、SiC基板に形成されたMOSFETである。メインMOSFET212は、ゲートに閾値Vthm以下の電位が印加されたときにオンする。
【0026】
制御MOSFET214は、nチャネル型のMOSFETである。制御MOSFET214のソースは、メインMOSFET212のゲートに接続されている。制御MOSFET214のドレインは、プラス配線226に接続されている。制御MOSFET214のゲートは、信号配線224に接続されている。制御MOSFET214は、ポリシリコンの半導体層に形成されたMOSFETである。制御MOSFET214は、ゲートに閾値Vthc以上の電位が印加されたときにオンする。
【0027】
ダイオード216は、pnダイオードである。ダイオード216のアノードは、メインMOSFET212のゲート及び制御MOSFET214のソースに接続されている。ダイオード216のカソードは、制御MOSFET214のゲート及び信号配線224に接続されている。
【0028】
信号配線224には、メインMOSFET212を制御するための電位Vsigが入力される。プラス配線226には、電位Vbが印加されている。電位Vbは、プラスの電位であり、メインMOSFET212のゲート閾値Vthmよりも高い電位である。
【0029】
次に、スイッチング回路210の動作について説明する。メインMOSFET212がオフしている状態においては、信号配線224の電位Vsigが高い電位VHに制御されている。電位VHは、プラスの電位であり、電位Vbと略等しい。電位VHは、制御MOSFET214のゲートに印加されている。電位VHは、制御MOSFET214のゲート閾値Vthcよりも高い。このため、制御MOSFET214はオンしており、メインMOSFET212のゲートに電位Vbが印加されている。すなわち、ゲート電位Vgが電位Vbと略等しくなっている。電位VbがメインMOSFET212のゲート閾値Vthmよりも高いので、メインMOSFET212はオフしている。
【0030】
メインMOSFET212をターンオンさせる場合には、信号配線224の電位Vsigを高い電位VHから低い電位VLに低下させる。電位VLは、マイナスの電位である。電位VLは、制御MOSFET214のゲート閾値Vthcよりも低い電位であり、かつ、メインMOSFET212のゲート閾値Vthmよりも低い電位である。電位Vsigが低い電位VLに制御されると、電位VLが制御MOSFET214のゲートに印加されるので、制御MOSFET214がオフする。また、電位Vsig(=VL)がゲート電位Vgよりも低くなるので、ダイオード216がオンする。このため、メインMOSFET212のゲートから信号配線224に向かって電流が流れ、メインMOSFET212のゲートから電荷が排出される。これにより、メインMOSFET212のゲート電位Vgが、電位VLと略等しい電位まで低下する。より詳細には、ゲート電位Vgは、電位VLにダイオード216の順方向電圧降下VFを足した電位まで低下する。電位VL+VFは、メインMOSFET212のゲート閾値Vthmよりも低いので、メインMOSFET212がターンオンする。
【0031】
メインMOSFET212をターンオフさせる場合には、図9に示すように、信号配線224の電位Vsigを低い電位VLから高い電位VHに上昇させる。以下に、電位Vsigを低い電位VLから高い電位VHに上昇させる過程の動作について説明する。電位Vsigを電位VLから上昇させ始めると、信号配線224の電位Vsigがゲート電位Vg(=VL+VF)よりも高くなるので、ダイオード216がオフする。また、電位Vsigを上昇させ始めた段階では、信号配線224の電位Vsig(すなわち、制御MOSFET214のゲート電位)が制御MOSFET214のゲート閾値Vthcよりも低いので、制御MOSFET214はオフした状態に維持される。すなわち、図9の期間T21においては、制御MOSFET214はオフしている。したがって、期間T1の間は、メインMOSFET212のゲートに電荷が供給されず、ゲート電位Vgが電位VL+VFに保たれる。その後、信号配線224の電位Vsigが制御MOSFET214のゲート閾値Vthcよりも高くなると、制御MOSFET214がオンする。このため、期間T21の後の期間T22では、制御MOSFET214に電流Icが流れる。これによって、メインMOSFET212のゲートに電荷が供給される。したがって、期間T22では、メインMOSFET212のゲート電位Vgが上昇する。ゲート電位Vgは、電位Vbと略一致する電位まで上昇する。期間T2の間のタイミングt20において、ゲート電位Vgは、メインMOSFET212のゲート閾値Vthmを上回る。すると、メインMOSFET212を流れる電流Imが略ゼロまで低下する。すなわち、メインMOSFET212がオフする。
【0032】
以上に説明したように、スイッチング回路210によれば、電位Vsigを制御することによって、メインMOSFET212をスイッチングさせることができる。
【0033】
また、電位Vsigには、例えば、図9に示すプラスのサージ290が重畳する場合がある。スイッチング回路210では、サージ290によって電位Vsigが極端に高いプラスの電位となっても、ダイオード216に逆電圧が印加されることでダイオード216がオフ状態となる。このため、メインMOSFET212のゲートにプラスのサージが印加されることを防止することができる。このため、SiC基板に形成されているメインMOSFET212のゲート閾値が変動することを防止することができる。また、サージ290は、制御MOSFET214のゲートに印加される。しかしながら、制御MOSFET214は、nチャネル型であり、かつ、ポリシリコン半導体層に形成されている。このため、制御MOSFET214のゲートに極端に高い電位が印加されても、制御MOSFET214のゲート閾値はほとんど変動しない。したがって、スイッチング回路210では、電位Vsigにプラスのサージが重畳しても、回路の特性はほとんど変化しない。したがって、メインMOSFET212を安定してスイッチングさせることができる。
【0034】
なお、上述した実施例1、2においては、ダイオード16がpnダイオードであった。しかしながら、ダイオード16は、ショットキーバリアダイオード等、その他のダイオードであってもよい。
【0035】
また、上述した実施例1、2においては、pチャネル型のMOSFET14、212がプラスの閾値を有していた。しかしながら、MOSFET14、212がマイナスの閾値を有していてもよい。
【0036】
以下は、本明細書が開示するスイッチング回路の構成である。制御MOSFETは、シリコン半導体層に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、制御MOSFETのゲート閾値が変動することを防止することができる。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
10:スイッチング回路
12:メインMOSFET
14:制御MOSFET
16:ダイオード
20:高電位配線
22:低電位配線
24:信号配線
26:マイナス配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9