特許第6329145号(P6329145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブルースコープ・スティール・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000002
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000003
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000004
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000005
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000006
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000007
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000008
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000009
  • 特許6329145-金属めっき鋼帯 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6329145
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】金属めっき鋼帯
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20180514BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20180514BHJP
   C23C 2/06 20060101ALI20180514BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20180514BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   C23C2/12
   C23C2/40
   C23C2/06
   C22C21/00 M
   C22C21/10
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-524570(P2015-524570)
(86)(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公表番号】特表2015-532678(P2015-532678A)
(43)【公表日】2015年11月12日
(86)【国際出願番号】AU2013000843
(87)【国際公開番号】WO2014019020
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】2012903281
(32)【優先日】2012年8月1日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】505132312
【氏名又は名称】ブルースコープ・スティール・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLUESCOPE STEEL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】リウ、チャン
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/082678(WO,A1)
【文献】 特開平05−148668(JP,A)
【文献】 特開2010−070810(JP,A)
【文献】 特開2011−144429(JP,A)
【文献】 特開2002−047549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00 − 2/40
C22C 5/00 − 25/00
C22C 27/00 − 28/00
C22C 30/00 − 30/06
C22C 35/00 − 45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールストリップと、前記スチールストリップの少なくとも一つの面上の金属めっきとを含む金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきは、Al−Zn−Mg−Si上張り合金層、および前記スチールストリップと前記上張り合金層との間の中間合金層を含み、前記中間合金層は、重量で、Znが4.0〜12.0%、Siが6.0〜17.0%、Feが20.0〜40.0%、Mgが0.02〜0.50%、およびAlならびに不可避不純物が残部である組成を有し、前記金属めっきを形成するための溶融合金が、重量%で以下の範囲の元素:Zn:30〜60%;Si:0.3〜3%;Mg:0.3〜10%;ならびに残部がAl、および計画的な合金添加物もしくは不可避不純物としての他の元素、を含む金属めっき鋼帯。
【請求項2】
請求項1に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.01〜0.2%のCaを含む金属めっき鋼帯。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜3.0%のCrを含む金属めっき鋼帯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜13.0%のMnを含む金属めっき鋼帯。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜2.0%のVを含む金属めっき鋼帯。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して0.1〜5.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
【請求項7】
請求項6に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る前記横断面で測定して0.3〜2.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
【請求項8】
請求項7に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る前記横断面で測定して0.5〜1.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して短径が50〜1000nmである実質的な柱状晶を含む金属めっき鋼帯。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して長径が50〜4000nmである実質的な等軸晶を含む金属めっき鋼帯。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が柱状晶および等軸晶の混合物を含む金属めっき鋼帯。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が体心立方晶を含む金属めっき鋼帯。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度が式Fe10Al32Si5Zn3を満たす金属めっき鋼帯。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度が式Fe10Al34Si4Zn2を満たす金属めっき鋼帯。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1に記載の金属めっき鋼帯であって、Cr含有またはCrを含まない不動態化系を使用した不動態化鋼帯である金属めっき鋼帯。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきの露出面上の樹脂コーティングを含む金属めっき鋼帯。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.0重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.3重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.5重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が3重量%未満のMgを含む金属めっき鋼帯。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が2.5重量%未満のMgを含む金属めっき鋼帯。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.2重量%を超えるSiを含む金属めっき鋼帯。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMgを含む金属めっき鋼帯。
Zn:35〜50%
Si:1.2〜2.5%
Mg 1.0〜3.0%
残部 Alおよび不可避不純物
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、金属ストリップ、典型的には鋼帯の製造に関し、これは、めっき合金中に、アルミニウム−亜鉛−ケイ素−マグネシウムを主要元素として含む(必ずしもこれらの元素のみではないが)耐食金属めっきを有し、このことから、該耐食金属めっきを以下「Al−Zn−Si−Mg合金」と呼ぶ。
【0002】
特に、本発明は、ストリップ上に金属めっきを形成する溶融めっき法に関し、これは、めっきされていないストリップを溶融Al−Zn−Si−Mg合金浴に浸漬することと、ストリップ上に合金のめっきを形成することとを含む、
典型的には、溶融Al−Zn−Si−Mg合金の組成は、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMgを含む:
Zn:30〜60%
Si:0.3〜3%
Mg:0.3〜10%
残部 Alおよび不可避不純物。
【0003】
より典型的には、溶融Al−Zn−Si−Mg合金の組成は、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMgを含む:
Zn:35〜50%
Si:1.2〜2.5%
Mg:1.0〜3.0%
残部 Alおよび不可避不純物。
【0004】
溶融Al−Zn−Si−Mg合金の組成は、計画的な合金添加物または不可避不純物として溶融合金中に存在する他の元素を含んでもよい。したがって、「Al−Zn−Si−Mg合金」という句は、他の元素、例えば計画的な合金添加物または不可避不純物を含む合金を網羅すると本明細書では理解される。他の元素は、例えば、Fe、Sr、CrおよびVの任意の1種以上を含んでもよい。
【0005】
最終用途に応じて、金属めっき鋼帯には、例えば、鋼帯の一方または両方の面上にポリマー塗料を塗布してもよい。この点について、金属めっき鋼帯を、それ自体最終製品として販売してもよいし、塗料コーティングを一方または両方の面に施して、塗装された最終製品として販売してもよい。
【0006】
本発明は、特に、しかし非排他的に、上記溶融Al−Zn−Si−Mg合金組成から形成された金属めっきを有し、任意に塗料でコーティングされ、その後最終製品、例えば建築製品(例えば賦形壁および屋根板)に、(例えばロール成形により)冷間成形される鋼帯に関する。
【0007】
建築製品、特に賦形壁および屋根板用にオーストラリアおよびその他の国で広く使用されている1つの耐食金属めっき浴組成は、Siも含む55%Al−Zn合金めっき組成である。賦形シートは、通常、塗装した金属合金めっき鋼帯を冷間成形することにより製造される。典型的には、賦形シートは、塗装されたストリップをロール成形することにより製造される。
【0008】
55%Al−Zn−Si合金めっき組成のこの既知の組成にMgを添加することは、何年にもわたり特許文献で提案されてきた(例えば、新日本製鐵株式会社の名義の米国特許第6635359号を参照されたい)が、スチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mgめっきはオーストラリアでは市販されていない。
【0009】
Mgが55%Al−Zn−Si合金めっき組成に含まれると、Mgが製品性能に特定の有益な効果、例えばカットエッジ保護の改善をもたらすことが立証されている。
【0010】
本出願人は、ストリップ、例えばスチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきに関して広範な研究および開発業務を行ってきた。本発明は、この研究および開発業務の一部の結果である。
【0011】
上記議論は、オーストラリアおよびその他の国の共通一般知識の承認としてみなされるべきではない。
【0012】
本発明は、研究および開発業務の過程での、選択された組成および好ましくはAl−Zn−Si−Mg合金めっき上張り層(overlay layer)とスチールストリップとの間の選択された結晶構造を有する中間合金層が存在するように、スチールストリップ上にAl−Zn−Si−Mg合金めっきを形成することにより、めっき鋼帯の腐食性能を改善することができるという出願人の知見に基づく。研究および開発業務により、めっき鋼帯の腐食性能を改善することができる中間合金層の選択された組成および好ましい結晶構造が、溶融めっき浴に使用するためのAl−Zn−Si−Mg合金組成の選択の回避不能な結果ではなく、いくつかの因子、例えばそれだけに限らないが、溶融Al−Zn−Si−Mg合金浴組成および溶融プロセス条件、典型的にはストリップの浸漬時間およびめっきポット温度が、所要の組成および好ましい結晶構造を有する中間合金層を形成するための関連因子であることも見出された。
【0013】
本発明によると、スチールストリップと、ストリップの少なくとも一つの面上の金属めっきとを含む金属めっき鋼帯であって、金属めっきは、Al−Zn−Si−Mg上張り合金層、およびスチールストリップと上張り合金層との間の中間合金層とを含み、中間合金層は、重量で、Znが4.0〜12.0%、Siが6.0〜17.0%、Feが20.0〜40.0%、Mgが0.02〜0.50%、およびAlならびに不可避不純物が残部である組成を有する、金属めっき鋼帯が提供される。
【0014】
中間合金層は、溶融Al−Zn−Mg−Si合金の組成中の元素およびスチールストリップの金属間相として形成されてもよい。
【0015】
あるいは、中間合金層とAl−Zn−Mg−Si上張り合金層とは、別々の層として形成されてもよい。
【0016】
中間合金層は、5.0〜10.0重量%のZnと、7.0〜14.0重量%のSi(典型的には6.5〜14.0重量%のSi)と、25.0〜37.0重量%のFeと、0.03〜0.25重量%のMgと、残部のAlおよび不可避不純物とを含んでもよい。
【0017】
中間合金層は、6.0〜9.0重量%のZnと、8.0〜12.0重量%のSiと、28.0〜35.0重量%のFeと、0.05〜0.15重量%のMgと、残部のAlおよび不可避不純物とを含んでもよい。
【0018】
中間合金層は、0.01〜2.0重量%のCaを含んでもよい。
【0019】
中間合金層は、0.1〜3.0重量%のCrを含んでもよい。
【0020】
中間合金層は、0.1〜13.0重量%のMnを含んでもよい。
【0021】
中間合金層は、0.1〜2.0重量%のVを含んでもよい。
【0022】
中間合金層は、めっきの厚さを通る横断面で測定して0.1〜5.0μmの厚さを有してもよい。
【0023】
中間合金層は、めっきの厚さを通る横断面で測定して0.3〜2.0μmの厚さを有してもよい。
【0024】
中間合金層は、めっきの厚さを通る横断面で測定して0.5〜1.0μmの厚さを有してもよい。
【0025】
中間合金層は、めっきの厚さを通る横断面で測定して短径が50〜1000nmである実質的な柱状晶を含んでもよい。
【0026】
中間合金層は、めっきの厚さを通る横断面で測定して長径が50〜4000nmである実質的な等軸晶を含んでもよい。
【0027】
中間合金層は、柱状晶および等軸晶の混合物を含んでもよい。
【0028】
中間合金層は、体心立方晶を含んでもよい。
【0029】
中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度は、式Fe10Al32Si5Zn3を満たしてもよい。
【0030】
中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度は、式Fe10Al34Si4Zn2を満たしてもよい。
【0031】
鋼帯は、例えばCr含有またはCrを含まない不動態化系を使用した不動態化された鋼帯であってもよい。
【0032】
鋼帯は、Al−Zn−Mg−Si合金めっきの露出面上に樹脂コーティングを含んでもよい。
【0033】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、0.3重量%を超えるMgを含んでもよい。
【0034】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、1.0重量%を超えるMgを含んでもよい。
【0035】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、1.3重量%を超えるMgを含んでもよい。
【0036】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、1.5重量%を超えるMgを含んでもよい。
【0037】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、3重量%未満のMgを含んでもよい。
【0038】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、2.5重量%未満のMgを含んでもよい。
【0039】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、1.2重量%超のSiを含んでもよい。
【0040】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、2.5重量%未満のSiを含んでもよい。
【0041】
金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMg:
Zn:30〜60%
Si:0.3〜3%
Mg:0.3〜10%
残部 Alおよび不可避不純物
を含んでもよい。
【0042】
特に、金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMg:
Zn:35〜50%
Si:1.2〜2.5%
Mg 1.0〜3.0%
残部 Alおよび不可避不純物
を含んでもよい。
【0043】
鋼は低炭素鋼であってもよい。
【0044】
本発明によれば、スチールストリップ上に金属めっきを形成して上記金属めっき鋼帯を形成する方法であって、スチールストリップを溶融Al−Zn−Si−Mg合金浴に浸漬することと、スチールストリップの露出面上に合金の金属めっきを形成することとを含み、溶融合金浴の組成、溶融合金浴の温度、およびスチールストリップの溶融合金浴への浸漬時間の何れか1つ以上を制御してスチールストリップとAl−Zn−Mg−Si上張り合金層との間に中間合金層を形成することを含む方法も提供される。
【0045】
溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、上記組成を有してもよい。例えば、溶融Al−Zn−Si−Mg合金は、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMg:
Zn:30〜60%
Si:0.3〜3%
Mg:0.3〜10%
残部 Alおよび不可避不純物
を含んでもよい。
【0046】
例として付随する図面を参照しながら、本発明についてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明の方法によりAl−Zn−Si−Mg合金でめっきした鋼帯を製造するための連続製造ラインの一態様の概略図。
図2】既知のスチールストリップ上のAl−Zn−Si合金めっきおよび本発明によるスチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきの試料についてのQ−Fog寿命(5%表面赤錆までの時間(時間))のグラフ。
図3】既知のスチールストリップ上のAl−Zn−Si合金めっきおよび本発明によるスチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきの試料へのさらなる実験研究の結果を示す図。
図4】本発明によるスチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきの試料へのさらなる実験研究の結果を示す図。
図5】本発明によるスチールストリップ上のAl−Zn−Si−MgおよびAl−Zn−Si−Mg−Cr合金めっきの試料へのさらなる実験研究の結果を示す図。
図6】同一のAl−Zn−Si−Mg合金でめっきした試料の中間合金層の組成に対する、また同様にQ−Fog質量損失に対するポット温度の影響を示すグラフ。
図7】本発明による金属めっき鋼帯の試料の中間合金層の質量に対するAl−Zn−Si−Mg合金のめっき浴組成中のMgおよびSiの影響を示す実験結果のグラフ。
図8】本発明による金属めっき鋼帯および他の金属めっき鋼帯の試料の中間合金層の厚さ対試料上にめっきを形成するために使用するめっき浴への浸漬時間のグラフ。
図9】本発明による金属めっき鋼帯の試料の中間合金層の厚さ対試料上の上張り合金層の厚さのグラフ。
【0048】
図1に模式的に示すスチールストリップをめっきするための連続製造ラインを参照すると、使用中、冷間圧縮低炭素スチールストリップのコイルは巻き出しステーション1で巻き出され、連続的な巻き出された長さのストリップは溶接機2により端と端を溶接されて連続的長さのストリップを形成する。
【0049】
次いで、ストリップはアキュムレーター3、ストリップ洗浄部4および炉アセンブリ5を連続的に通過する。炉アセンブリ5は、予熱器、予熱還元炉および還元炉を含む。
【0050】
ストリップは、(i)炉内の温度プロファイル、(ii)炉内の還元ガス濃度、(iii)炉を通るガス流速、および(iv)炉内のストリップ滞留時間(すなわちライン速度)を含むプロセス変数の制御により炉アセンブリ5内で熱処理される。
【0051】
炉アセンブリ5内のプロセス変数は、ストリップの表面から酸化鉄残留物が除去され、ストリップの表面から残油および鉄微粉が除去されるように制御される。
【0052】
次いで、熱処理されたストリップは、出口口先を経て、めっきポット6中に維持されたAl−Zn−Si−Mg合金を含む溶融浴へと下方に向かって入って通過し、溶融Al−Zn−Si−Mg合金でめっきされる。Al−Zn−Si−Mg合金は、加熱誘導子(図示せず)または他の適当な加熱オプションを使用することにより選択された温度でめっきポット中に溶融して維持される。浴内ではストリップが浴内に位置するシンクロール(図示せず)の周りを通り、浴から上方に出される。ライン速度は、めっき浴中のストリップの選択された浸漬時間を提供するよう選択される。ストリップが浴を通過するので、ストリップの両面が溶融Al−Zn−Si−Mg合金でめっきされる。
【0053】
めっき浴6を出た後、ストリップは、めっきの厚さを制御するためにそのめっき面がワイピングガスの噴射に供されるガスワイピングステーション(図示せず)を垂直に通過する。
【0054】
次いで、めっきされたストリップは冷却部7を通過し、強制冷却に供される。
【0055】
次いで、冷却されためっきストリップは、めっきストリップの表面を調節する回転部8を通過する。
【0056】
その後、めっきされたストリップはコイリングステーション10で巻かれる。
【0057】
上記のように、本出願人は、スチールストリップ上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきに関して広範な研究および開発業務を行い、上張り合金層と、上張り合金層とスチールストリップとの間の選択された組成および好ましくは選択された結晶構造を有する中間合金層とを含む金属めっきを形成することにより、金属めっき鋼帯の腐食性能を改善することができることを見出した。
【0058】
研究および開発業務は、スチールストリップ試料を、以下の溶融合金組成(重量%):
・ AZ:55Al−43Zn−1.5Si−0.45Fe−付随的不純物
・ MAZ:53Al−43Zn−2Mg−1.5Si−0.45Fe−付随的不純物
・ MAZ+0.1重量%のCr−付随的不純物
を有する、以下の溶融合金組成:(a)既知のAl−Zn−Si合金(以下、「AZ」と呼ぶ)、(b)本発明によるAl−Zn−Si−Mg合金(以下、「MAZ」と呼ぶ)、および(c)本発明によるMAZ合金+0.1重量%のCrで溶融めっきすることにより行われる研究を含んでいた。
【0059】
溶融合金を、125g/m2および150g/m2の両面めっき質量で、スチールストリップ試料の露出面上にめっきした。試料の1グループは、本出願人のウロンゴン本部の金属めっきライン(「MCL」)で製造し、試料の別のグループはウロンゴンにある本出願人の研究施設において溶融プロセスシミュレータ(「HDPS」)で製造した。実験研究は、第一にHDPSで行った。HDPSは、Iwatani International Corp(ヨーロッパ) GmbHにより本出願人の仕様のために特別に建てられた先行技術装置である。HDPS装置は、溶融金属ポット炉、赤外線加熱炉、ガスワイピングノズル、脱ドロス機構、ガス混合および露点管理機能、ならびにコンピュータ化自動制御システムを含む。HDPS装置は、従来の金属めっきラインで典型的な溶融サイクルをシミュレートすることができる。
【0060】
めっき試料を耐食性(Q−Fog周期腐食試験性能)について試験し、走査型電子顕微鏡法および他の分析装置を使用した微細構造分析に供した。
【0061】
図2は、以下の試料についてのQ−Fog寿命(5%表面赤錆までの時間(時間))のグラフである:
・ MCL AZ150−金属めっきラインで製造した150g/m2の両面めっき質量を有するAZ合金めっき。
【0062】
・ MCL MAZ125−金属めっきラインで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0063】
・ HDPS MAZ125−溶融プロセスシミュレータで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0064】
・ HDPS MAZ125+0.1%Cr−溶融プロセスシミュレータで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ+0.1%Cr合金めっき。
【0065】
MAZ合金めっき試料が、AZ合金めっき試料よりも有意に長いQ−Fog寿命、それゆえ有意に優れた耐食性を有し、MAZ+0.1%Cr試料が試料の全ての中で最良の性能を有したことが図2から明らかである。
【0066】
図2は、MgをAZに添加してMAZ合金を形成した結果としての耐食性の改善を示している。図2はまた、0.1%のCrのMAZ合金への小規模な添加により、耐食性のさらに有意な改善がもたらされたことを示している。
【0067】
図3は、AZ合金めっきと比べた場合のMAZ合金の耐食性の改善へのMgの寄与をさらに示している。図3に示される結果は、以下の試料への実験研究の結果である:
・ MCL AZ150−金属めっきラインで製造した150g/m2の両面めっき質量を有するAZ合金めっき。
【0068】
・ MCL MAZ125−金属めっきラインで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0069】
図3の左側は、両試料の厚さを通る断面の2つのSEM後方散乱電子像である。図3の右側は、試料についてのQ−Fog寿命(5%表面赤錆までの時間(時間))のグラフである。両試料を同一の金属めっきラインで製造した。SEM像は、試料がMAZ合金中のMgの存在により異なるめっき微細構造を有することを示している。SEM像はまた、両試料のめっきが、上張り合金層11と、スチールストリップ13(図では「ベース鋼」と呼ぶ)と上張り層11との間の中間合金層12(この図および他の図では「合金層」と呼ぶ)とを含むことを示している。中間合金層は、溶融合金浴中の元素およびスチールストリップから形成された金属間層である。グラフは、中間層も腐食性能の差に寄与したかもしれないが、MAZ合金めっき試料が、おそらくはMAZ合金めっき上張りの微細構造中のAl/Zn/MgZn2共晶およびMg2Si相の存在に起因する、AZ合金めっき試料よりも有意に長いQ−Fog寿命、それゆえ有意に優れた耐食性を有したことを示している。
【0070】
図4は、以下の試料のスチールストリップ13と上張り合金層11との間の中間合金層12の寄与に焦点を当てたMAZ合金めっきへのさらなる実験研究の結果を示している:
・ MCL MAZ125−金属めっきラインで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0071】
・ HDPS MAZ125−溶融プロセスシミュレータで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0072】
図4の左側は、両試料の厚さを通る断面の2つのSEM後方散乱電子像である。図4の右側は、試料についてのQ−Fog寿命(5%表面赤錆までの時間(時間))のグラフである。両試料を同一の溶融合金組成−MAZ合金でめっきした。一方の試料は金属めっきラインで製造し、他方の試料は溶融プロセスシミュレータで製造した。両試料は、実質的に同一のめっき厚さ−約18ミクロンを有していた。グラフは、HDPS MAZ125合金めっき試料がMCL MAZ125合金めっき試料よりも有意に長いQ−Fog寿命、それゆえ有意に優れた耐食性を有したことを示している。SEM像は、HDPS MAZ125めっき試料が、より長い浸漬時間(HDPSの2.5秒対MCLの1.0秒)のためにMCL MAZ125めっき試料よりも厚い中間合金層を有していたことを示している。図4は、中間合金層12が、HDPS MAZ125めっき試料のより優れた耐食性に寄与した、すなわちより厚い中間合金層12がより長いQ−Fog寿命をもたらしたことのしるしである。
【0073】
図5は、以下の試料の腐食性能へのCrの寄与に焦点を当てたさらなる実験研究の結果を示している:
・ HDPS MAZ125+0.1%Cr−溶融プロセスシミュレータで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ+0.1%Cr合金めっき。
【0074】
・ HDPS MAZ125−溶融プロセスシミュレータで製造した125g/m2の両面めっき質量を有するMAZ合金めっき。
【0075】
図5の左側は、断面の微細構造および断面を通るCrの分布を示す、両試料の厚さを通る断面の2つのSEM後方散乱電子像および2つのSEM−EDS元素マップである。図5の右側は、試料についてのQ−Fog寿命(5%表面赤錆までの時間(時間))のグラフである。両試料を溶融プロセスシミュレータで製造した。両試料は、実質的に同一のめっき厚さおよび実質的に同一の中間合金層厚さを有していた。実際、試料間の唯一の差は、試料の一方の0.1%のCrである。CrがHDPS MAZ125合金めっき試料よりも有意に長いQ−Fog寿命、それゆえ有意に優れた耐食性を有するHDPS MAZ125+0.1%Cr合金めっき試料をもたらしたことがグラフから明らかである。HDPS MAZ125+0.1%Cr合金めっき試料の中間合金層中により高濃度のCrが存在したこともSEM−EDSマップから明らかである。そのため、HDPS MAZ125+0.1%Crめっき試料の中間合金層中のCrがこの試料の耐食性改善に寄与したということになる。
【0076】
研究および開発業務は、中間合金層の組成または中間合金層の結晶構造のいずれかによる、Al−Zn−Si−Mg合金めっきの耐食性への中間合金層の寄与を立証するための広範な研究を含んでいた。
【0077】
この研究により、最適なAl−Zn−Si−Mg合金めっき腐食性能を提供する、以下の組成範囲の中間合金層(重量%)が同定された:
Zn:4.0〜12.0%
Si:6.0〜17.0%
Fe:20.0〜40.0%
Mg:0.02〜0.50%
残部 Alおよび不可避不純物。
【0078】
Al−Zn−Si−Mg合金めっきの腐食性能は、上記組成範囲外のめっきの中間合金層では劣る。
【0079】
上記組成範囲の中間合金層を、0.3〜20秒のストリップの浸漬時間および595〜640℃のポット温度でのAZ+0〜5.0%のSi、0〜5.0%のMg、0〜0.1%のCr、0〜0.4%のMn、0〜0.1%のVおよび0〜0.1%のCaの範囲にわたる溶融合金浴組成を有する鋼試料上のAl−Zn−Si−Mg合金めっきの広範な試験(それだけに限らないが、Q−Fog試験および屋外暴露を通しためっき腐食、T曲げ試験を通しためっき延性等を含む)により決定して、所望の性能をもたらした試料を同定した。広範囲の分析技術を使用して、(a)中間合金層の化学組成、厚さおよび結晶構造を研究し、(b)最終めっき製品の性能に寄与する中間合金層の臨界特性の理解を深めた。図2〜9は、この研究および開発業務の結果の実例である。
【0080】
研究および開発業務により、上記組成範囲の中間合金層が溶融Al−Zn−Si−Mg合金浴組成の選択の回避不能な結果ではないこと、および因子、例えば、それだけに限らないが、溶融Al−Zn−Si−Mg合金組成および溶融プロセス条件、典型的にはストリップの浸漬時間およびめっきポット時間が、所要の組成を有する中間合金層を形成するための関連因子であることも見出された。特に、それは当業者に必ずしも自明でないかもしれないが、図に示されている中間合金層の化学組成、厚さおよび結晶構造は、全体としてめっき鋼帯の性能に相関があり、これに寄与する。
【0081】
図6は、2つのAl−Zn−Si−Mg合金めっきの中間合金層の組成に対する、また同様にQ−Fog質量損失に対するめっきポット温度の影響を示すグラフである。試料をめっき浴中同一の溶融Al−Zn−Si−Mg合金および同一の浸漬時間(1秒)を使用して、それぞれ600℃および620℃の2種の異なるポット温度で調製した。めっき試料を分析して中間合金層の組成を決定した。中間合金組成を図6の棒グラフの下の表に提示する。中間合金層の厚さも表に示す。試料を同一のQ−Fog腐食試験手順に供した。図6は、610℃および620℃のポット温度が異なる中間合金層組成をもたらしたことを示している。620℃ポット温度では、中間合金層組成は、本発明の組成範囲(特にSi<6%)外であった。結果として、Al−Zn−Si−Mg合金めっきの腐食性能は、中間合金層の組成が600℃ポット温度のものと同一(または本発明の範囲内)であれば有利であったであろうより大きな中間合金層厚さにもかかわらず、悪化している。中間合金層の組成を、誘導結合プラズマ分光測定(ICP)技術を使用して分析した。この技術によると、最初にAl−Zn−Si−Mg合金めっき上張りを、試料を亜ヒ酸ナトリウム(1リットル当たり9g)により阻害した1:9HCl水溶液に沈めることにより除去した。次いで、中間合金層を、RODINE(登録商標)阻害HCl溶液を使用して溶解し、結果として生じる溶液をICPにより分析した。
【0082】
図7は、本発明による同一の溶融プロセス条件(600℃のポット温度で1秒の浸漬時間)下で得られた金属めっき鋼帯の試料の中間合金層の質量対試料上にめっきを形成するために使用したAl−Zn−Si−Mg合金のめっき浴中のMgおよびSiの濃度のグラフである。図7は、中間合金層の質量が、めっき浴中のMgおよびSi濃度が増加するにつれて減少したことを示している。
【0083】
図8は、本発明による金属めっき鋼帯の試料の中間合金層の厚さ対試料上にめっきを形成するために使用しためっき合金のめっき浴への浸漬時間のグラフである。図8は、3種の異なる溶融合金浴組成についての研究の結果を示している。1つの溶融合金は、既知のAl−Zn−Si合金(図では「AZ」合金)である。別の溶融合金は、本発明によるCaも含むAl−Zn−Si−Mg合金(「図ではAMCa合金」)である。第3の溶融合金は、5.0%のMgおよび4.0%のSiを有する既知のAl−Zn−Si−Mg合金(図では「5.0%Mg4.0%Si」合金)である。図8は、溶融合金浴組成および溶融合金浴への浸漬時間がめっき鋼帯の中間合金層の厚さに影響を及ぼすことを示している。
【0084】
図9は、本発明による金属めっき鋼帯試料のめっきの中間合金層の厚さ対試料上のめっきの上張り合金層の厚さのグラフである。図9は、中間合金層厚さが、上張り合金層厚さとともに増加したことを示している。そのため、図9から、均一な腐食性能を維持するためにはめっき鋼帯全体の表面にわたるめっき質量変動を最小化することが望ましいということになる。
【0085】
中間合金層の組成および/または厚さによるAl−Zn−Si−Mg合金めっきの腐食性能への中間合金層の直接的寄与とは別に、本出願人はまた、中間合金層の結晶構造がクラッキングとして全体的MAZ合金めっきの腐食性能に間接的影響を及ぼすことができることも見出した。本出願人は、Al−Zn−Mg−Si合金めっき鋼帯を高ひずみ操作、例えばロール成形に供すると、中間合金層がクラック発生の1つの有意な原因になることを見出した。粗い中間合金層結晶構造は、めっきの上張り合金層を貫通するより広くより多数のクラックをもたらし、Al−Zn−Mg−Si合金めっき鋼帯の腐食性能が悪化すると考えられる。中間合金層はクラッキングを最小化するために等軸、柱状または等軸と柱状晶の混合物を含むことができるが、柱状晶の大きさをめっきの厚さを通る横断面で測定すると短径1000nm以下に、および/または等軸晶の大きさをめっきの厚さを通る横断面で測定すると長径4000nm以下に制御することが望ましい。
【0086】
腐食性能の観点からは、実質的な中間合金層(または0.1μm以上)が存在することは望ましいが、中間合金層が厚すぎる(または5μmより厚い)と、クラッキングが引き起こされ、めっき鋼帯のロール成形性が損なわれるので、不利である。
【0087】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上記本発明に多くの修正を行ってもよい。
【0088】
例として、図2〜9に関して上記の研究および開発業務は特定のAl−Zn−Si−Mg合金のめっき浴から形成しためっきに焦点を当てたが、本発明はこれらの特定の合金に制限されない。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] スチールストリップと、前記スチールストリップの少なくとも一つの面上の金属めっきとを含む金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきは、Al−Zn−Mg−Si上張り合金層、および前記スチールストリップと前記上張り合金層との間の中間合金層を含み、前記中間合金層は、重量で、Znが4.0〜12.0%、Siが6.0〜17.0%、Feが20.0〜40.0%、Mgが0.02〜0.50%、およびAlならびに不可避不純物が残部である組成を有する金属めっき鋼帯。
[2] [1]に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.01〜0.2%のCaを含む金属めっき鋼帯。
[3] [1]または[2]に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜3.0%のCrを含む金属めっき鋼帯。
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜13.0%のMnを含む金属めっき鋼帯。
[5] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、重量で0.1〜2.0%のVを含む金属めっき鋼帯。
[6] [1]〜[5]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して0.1〜5.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
[7] [6]に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る前記横断面で測定して0.3〜2.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
[8] [7]に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る前記横断面で測定して0.5〜1.0μmの厚さを有する金属めっき鋼帯。
[9] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して短径が50〜1000nmである実質的な柱状晶を含む金属めっき鋼帯。
[10] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が、前記めっきの厚さを通る横断面で測定して長径が50〜4000nmである実質的な等軸晶を含む金属めっき鋼帯。
[11] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が柱状晶および等軸晶の混合物を含む金属めっき鋼帯。
[12] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層が体心立方晶を含む金属めっき鋼帯。
[13] [1]〜[12]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度が式Fe10Al32Si5Zn3を満たす金属めっき鋼帯。
[14] [1]〜[13]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記中間合金層のAl、Zn、SiおよびFeの濃度が式Fe10Al34Si4Zn2を満たす金属めっき鋼帯。
[15] [1]〜[14]のいずれか1に記載の金属めっき鋼帯であって、Cr含有またはCrを含まない不動態化系を使用した不動態化鋼帯である金属めっき鋼帯。
[16] [1]〜[15]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきの露出面上の樹脂コーティングを含む金属めっき鋼帯。
[17] [1]〜[16]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が0.3重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
[18] [1]〜[17]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.0重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
[19] [1]〜[18]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.3重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
[20] [1]〜[19]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.5重量%を超えるMgを含む金属めっき鋼帯。
[21] [1]〜[20]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が3重量%未満のMgを含む金属めっき鋼帯。
[22] [1]〜[21]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が2.5重量%未満のMgを含む金属めっき鋼帯。
[23] [1]〜[22]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が1.2重量%を超えるSiを含む金属めっき鋼帯。
[24] [1]〜[23]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMgを含む金属めっき鋼帯。
Zn:30〜60%
Si:0.3〜3%
Mg:0.3〜10%
残部 Alおよび不可避不純物
[25] [1]〜[24]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯であって、前記金属めっきを形成するための溶融Al−Zn−Si−Mg合金が、重量%で以下の範囲の元素Al、Zn、SiおよびMgを含む金属めっき鋼帯。
Zn:35〜50%
Si:1.2〜2.5%
Mg 1.0〜3.0%
残部 Alおよび不可避不純物
[26] スチールストリップ上に金属めっきを形成して、[1]〜[25]のいずれか1項に記載の金属めっき鋼帯を形成する方法であって、前記方法は、溶融Al−Zn−Si−Mg合金浴にスチールストリップを浸漬することと、前記スチールストリップの露出面上に合金の金属めっきを形成することとを含み、そして前記方法は、前記溶融合金浴の組成、前記溶融合金浴の温度、および前記溶融合金浴への前記スチールストリップの浸漬時間の何れか1つ以上を制御して、前記スチールストリップと前記Al−Zn−Mg−Si上張り合金層との間に前記中間合金層を形成することを含む方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9