(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6329168
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】少なくとも2層のコンポーネントを生産するための方法及びそのコンポーネント
(51)【国際特許分類】
B29C 65/40 20060101AFI20180514BHJP
B29C 70/46 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
B29C65/40
B29C70/46
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-544409(P2015-544409)
(86)(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公表番号】特表2015-536851(P2015-536851A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】EP2013073899
(87)【国際公開番号】WO2014082869
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】102012222000.3
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513044337
【氏名又は名称】ハーペー ペルツァー ホルディング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100111707
【弁理士】
【氏名又は名称】相川 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド パイカウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムト レンケン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス クロメル
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマル シュルツ
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−024158(JP,A)
【文献】
特開平06−031812(JP,A)
【文献】
特開2003−117992(JP,A)
【文献】
特開昭62−146614(JP,A)
【文献】
特開2008−212290(JP,A)
【文献】
特開昭63−015730(JP,A)
【文献】
特開平09−155900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B29C 51/00−51/46
B29C 70/00−70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トップ材料及び吸収体を備え、動力車のフロア・カバー又はインテリア及び/又はトランクにおける吸収的なライニングとして、少なくとも2層のコンポーネントを生産する方法であって、
(a)フロック・ボックス内の1方の側の上にモールドされた吸収体材料が、蒸気/真空モールド内へと導入され、
(b)ブランク材へとカットされるトップ材料が、ステップ(a)に従って、バインダを含む吸収体の材料に面するようにフロー閉鎖側を備えて、そのモールド内に導入され、
(c)そのモールドが閉鎖され、
(d)吸収体材料の下側から蒸気を適用することによって、トップ材料が変形され、吸収体材料内のバインダが活性化され、そして、トップ及び吸収体材料が互いに結合され、
(e)その蒸気圧力が、吸収体材料の下側の圧力に比べてより低い上側の圧力によって減圧され、そして、
(f)そのコンポーネントが、引き続いて、較正モールド又はデポジット・トレイ内で冷却され、
前記吸収体は、バインダ及びフィラー材料を含み、前記フィラー材料の融点が少なくとも10Kだけ、結合剤の融点より高いことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2層のコンポーネント(at least two−layer components、少なくとも2層の構成要素)を生産する方法、並びに、トップ材料及び吸収体(absorber)を含み、動力車のフロア・カバーのための、又は、インテリア(interior、内装)及び/又はトランク(trunk)における吸音ライニングとして本質的に対応するように生産されるコンポーネント、に関する。
【背景技術】
【0002】
トランク・ライニングは、表面材料、特に繊維(textile)若しくはシート織物(sheet fabric)、及び、例えば、硬化する不織布(stiffening non−woven)として、支持する特性をも持つかもしれない、背面(backside、バックサイド)における吸収体、から基本的に構成される。多種多様の材料は、吸収体、硬化する不織物又は純粋な支持体(support)のために用いられる。プラスチックからなる支持体、特に射出成形された(injection−molded)支持体は、成形後(after molding)、積層化され(laminated)、又は、繊維トップ材料は、支持体材料でバック射出成形される(back−injected)。もう1つの解決策は、純粋なプラスチックとしてプラスチックを押し出しコーティング(extrusion−coating)することにより準備される、或いは、繊維の上に異なる繊維だけでなく無機剤(inorganic agents)で満たされたプラスチックを押し出しコーティングし、それに続いてプレスにより形成することにより準備される、繊維被覆(textile−coated)プラスチック・シートによって代表される。
【0003】
プラスチックの1つの特定の実施例は、プリフォームされた(preformed、予め成形された)及び積層された、ポリオレフィン・フォーム(polyolefin foams)である。その代わりに、繊維表面はまた、フォーム被覆(foam−coated)されるかもしれない。
【0004】
既知の吸収体、硬化する不織布へと圧縮される遮音体(insulations、絶縁体)、又は支持体は、ブランク材生産プロセスにおいてニードリングにより熱的に、又は、それに後続するプロセスにおいて熱可塑又は熱硬化の性質のある結合剤で結合される、多種多様な繊維(プラスチック及び天然繊維)を含む。既知の結合剤は、PETコア(PET core)及びしばしば共PETコーティング(coPET coat)から実質的になる、複合(BiCo)繊維(bicomponent (BiCo) fibers)だけでなく、ポリプロピレン、アクリレート、又は種々の性質を持つ樹脂を含む。
【0005】
熱可塑性吸収体及び繊維表面材料は、加熱され、そして、変形され、及びコールド・モールド(cold mold、冷間型)内で冷却される。変形の度合いによって、そのコンポーネントのための支持する特性をもまた持つかもしれない、吸収体は、特に、薄くされ、そして、そのようにして弱められる。そのような変形された領域において要求される機械的特性を達成するために、全く変形されていない又は殆ど変形されていない領域が過大となる。このようにして、そのコンポーネントは、強度のため必要である以上のより大きい重量を持つ。
【0006】
音響的に開放的なフロア・カバー(カーペット)は、可視表面からスタートして、例えば、繊維結合を備える、ニードルパンチ(needle−punched)、ディロアズ(dilours)又はタフティング(tufting)カーペット(carpets)を含む。必要な剛性を達成するために、吸収体又は圧縮された混合繊維ウェッブ(compressed mixed fiber web)は、カーペットと大抵堅く接合されている。カーペット及び吸収体又は圧縮された混合繊維ウェッブ(compressed mixed fiber web)は、変形装置上において変形され、及び、続いてトリミングされる(trimmed)。吸収体及び遮音体は、別々に生産される。
【0007】
フォーム吸収体(foam absorbers)又は遮音体(insulations)は、例外であり、それらは基本的にカーペットの上に泡立てられるが、高く吸収的で且つフロー開放的であるべきとする目的には対応しない、当然に音響的に閉じられたカーペットへとつながっていく。
【0008】
純粋なPET又は混合繊維からなるカードが敷かれた(card−laid)不織布(non−wovens)だけでなく、繊維充填(fiber−filling)又はエアレイ(airlay)技術からのコンポーネントは、開放吸収体又は遮音体として知られている。不織布遮音体は、特に、ファイバ・フロック法(fiber−flock method)によって準備された遮音体だけでなく、非変形(平面)の(予)変形されたブランク材(non−deformed (planar),(pre)deformed blanks)を含む。
【0009】
ブランク材自身は、変形され得るが、或いは、セグメント(segments)としてカーペットの上に結合され得る。これらの方法全ての不利な点は、装置に対する高い要求と、それに関連する必要なプロセス・ステップとである。
【0010】
そのようなフロア・ライニング・システムは、例えば、DE102004046201A1、DE10360427A1、DE19960945A1、及びDE102007036952A1において記述される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、モールド(mold)中にフロックする(flocking)吸収体材料により、吸収体又は遮音体を生産することにより、吸収体の又は遮音体のブランク材を予め生産することなく、吸収体又は遮音体に、フロー気密的に閉じた(flow−tight closed)背面を持つトップ材料を、結合させるという目的に基づくが、これによって、コンポーネントによって規定される材料蓄積が生産され得、規定された厚み及びそのようにして規定された剛性/強度及び規定された音響的な特性が、規定された空洞距離分布でもってモールド内に圧縮されることにより達成され、ここで、フロックされた(flocked)吸収体材料は、1つのステップにおいて、最終的な外形(final contour)へとトップ材料でもってモールド(圧縮)(molded (compressed))され、トップ材料は自身が結合されて同時にトップ材料が吸収体又は遮音体と結合される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の実施例において、上記目的は、動力車のフロア・カバーのために又はインテリア及び/又はトランクにおける吸収的なライニングとして、少なくとも2層のコンポーネントを生産する方法によって達成されるが、その方法は以下のことを特徴とする。
(a)フロック・ボックス(flock box)内の1つの側の上にモールドされた(molded)吸収体材料は、蒸気/真空モールド(steam/vacuum mold)内へと導かれる。
(b)ブランク材へとカットされるトップ材料は、ステップ(a)に従って、バインダを含む、吸収体の材料に面しているそのフロー閉鎖側(flow−closed side)を備えるモールド内に導かれる。
(c)そのモールドは、閉鎖される。
(d)ボトム材料(吸収体)の下側から蒸気を適用することによって、トップ材料が変形され、ボトム材料(吸収体)内のバインダが活性化され、そして、トップ及びボトム材料(吸収体)が互いに結合される。
(e)その蒸気圧力は、ボトム材料(吸収体)の下側の上にかかる圧力に比べると、上側の上にかかるより低い圧力によって減圧される。そして、
(f)そのコンポーネントは、引き続いて、較正モールド(calibrating mold)又はデポジット・トレイ(deposit tray)内で冷却される。
【0013】
従来技術において知られる方法と比べて、コンポーネントに依存して、異なる生産ステップを省くことができる。
【0014】
例えば、繊維吸収体(吸収体へと圧縮される遮音体)を備える動力車のトランクのためのサイド・ライニングにおいて、ブランク材の生産の全体プロセスを省くことができる。
【0015】
本発明による生産技術でもって、要求に応じて必要となるような規定された手法において吸収体材料を導入することが可能である。
【0016】
従って、同じ構造を持っていても、材料の20重量%までが、遮音体のブランク材変形に比べて、省かれ得る。これは、材料が必要でない所においては、後者が省略可能であるからである。
【0017】
フロック・ボックス(flock box)が、最終的な外形に殆ど厳密に従って吸収体材料で満たされるという事実は、ブランク材の変形に比べて10重量%より多くの量の無駄を再び減らす。吸引(suction)方法(吸引プロセスにおける繊維フロッキング技術(fiber flocking technology))によって、異なる厚みの材料組合せが実現できるが、このことは、従来の生産においては可能ではない。
【0018】
繊維フロッキング技術(fiber flocking technology)による異なる材料からの一層ずつの構造でもって、機械的な及び音響的な特性の結合が実現され得る。
【0019】
吸収体又は遮音体が形成される材料は、特に、繊維の形態における熱可塑性のバインダ(PP、PET−BiCo、PE、及び他の既知の材料自体)、及び、特に、エクスパンドPP(expanded PP)(EPP)、エクスパンドPS(expanded PS)(EPS)、プラスチック繊維、天然繊維、プラスチック(PURチップ)(plastic (PUR chips))断片状のフィラー材料、又は天然材料(例えば、コルク顆粒)のような、フィラー材料を含む。全てのバインダ又はフィラー材料は、単独で存在することができるか、或いは、異なる混合物中に存在し得る。
【0020】
バインダは、通常、フィラー材料と均一に混合され、外形が形成された、空気透過性のプリフォーム・モールド(フロック・ボックス)(preform mold (flock box))へと、エアーフロー(air flow)を用いて運ばれる。混合物は、外形及び厚みに対する要求に従って、フロック・ボックス(flock box)の上に敷設される。
【0021】
このようにして予め形成された(preformed)吸収体材料又は遮音体材料は、通常、ロボットによって、モールド(mold)内へと配置される。上記予め形成された(preformed)吸収体材料又は遮音体材料、蒸気真空フロー気密の閉鎖された背面(steam vacuum flow tight closed backside)を持つトップ材料(top material)、例えば、ブランク材形状にカットされた対応する装飾用材料(decorative material correspondingly cut into a blank shape)は、供給されるが、特に、テンター装置(tenter device)内に供給される。テンター装置(tenter device)は、モールド(mold)の外側に好ましくは供給されるか、又は、その外側の上に供給され、そして、モールド(mold)が閉まるのを妨げない。
【0022】
特定のコンポーネント/材料構造において、トップ材料は、フロー気密閉鎖背面(flow−tight closed backside)を持たないが、高いフロー抵抗(flow resistance)を備えるフロー開放背面(flow−open backside)を持つ。高いフロー抵抗を持つ不織布だけでなく、微小穿孔プラスチック・シートも、例として用いられる。
【0023】
特定の実施例において、テンター装置(tenter device)は、個々の又は幾つかの可動クランプを持っており、それによって、トップ材料は、張力をかけられた状態又は弛緩した状態で、モールド内へと意図的に開放され得る。
【0024】
モールドが閉じているとき、トップ材料及び吸収体又は遮音体は、最終形状へともってこられる。選択的に局所的に蓄積された材料の量及び要求される厚みに従って、異なる密度及びそのようにして異なる、吸収体又は遮音体の機械的な及び音響的な特性が形成される。
【0025】
トップ材料は、好ましくは、フラット・ニードル・フェルト(flat needle felt)、ディロア(dilours)、ヴェロア(velours)を含み、それらの中間体(intermediates)、織布(woven fabric)、編布、又はプラスチック・シートを含む。トップ材料は、そのカバー側(cover side)及び/又はボトム側(bottom side)に混合繊維ウェッブ(mixed fiber web)がオプションとして供給されるかもしれない。更に、以下の特徴を持つニードル・パンチ・リサイクル・サンドイッチ・ウェッブ(needle−punched recycling sandwich web)もまた使用され得る。
100から250g/m
2混合繊維ウェッブ(PET/PP又はPP/共PET(coPET));
350から800g/m
2リサイクルされた顆粒(PET、粒子サイズ1から4mm)
100から250g/m
2混合繊維ウェッブ(PET/PP又はPP/共PET(coPET))
【0026】
その方法の特定の変更において、更なるフィラーのないエクスパンド・バインダ(expanded binder)(例えば、EPP)は、上述のように、プリフォームされ(preformed)及び熱的に処理される(thermally treated)。
【0027】
そのモールド(mold)は、特に、その部分のために要求される材料が、ポジティブ・ロッキング(positive locking)によって、空洞内に気密的に封入されていることを特徴とする。
【0028】
そのモールドの少なくとも半分において、特に、吸収体又は遮音体のボトム側の領域において、そこから蒸気が空洞内へと通過することができ、再び外に出ることができる、穴システム(bore system)が存在する。
【0029】
半割モールド(mold halves)の両方は、同じ又は異なる温度まで、妥当な加熱システムによって加熱される。まず最初に、封入された空気の主な部分が、その穴システム(bore system)を通って適用される真空によって、吸い出される。その後、封入された材料は、蒸気によって加熱される。最後に、蒸気の大部分が、空洞から吸い出され、そして、そのパーツ内部がそれによって冷却される。
【実施例】
【0030】
以下において、本発明は、更に実施例によって説明される。
【0031】
PURフォーム・フロック(PUR foam flocks)だけでなくBiCo、PET、及びコットン繊維(cotton fibers)の混合物からなる吸収体材料又は遮音体材料は、繊維フロッキング技術(fiber flocking technology)による吸引方法によりフロック・ボックス(flock box)内にフロックされた(flocked)。
【0032】
その後、プリフォームされた(preformed)吸収体又は遮音体材料は、把持部(gripper)によって取り除かれ、そして、蒸気/真空モールド(steam/vacuum mold)内へと配置された。
【0033】
トップ材料、BiCoの割合が20重量%の540g/m
2PETディロア・カーペット(dilours carpet)及び背面90μmのPE/PA/PEシートは、テンター(tenter)によって、開放された蒸気/真空モールド内へと導入され、そして、吸収体又は遮音体材料の上に配置された。
【0034】
この実施例において、シートは、トップ材料と接合されなかった。トップ材料は、ラジエータの加熱場(radiator heating field)において加熱され、トップ材料だけでなくそのシートも、蒸気/真空モールド内へと(この場合、手動で)挿入された。
【0035】
実際には、その背面の上にサポートとして、(混合繊維(mixed fiber)又は再生サンドイッチ(recycling sandwich))ウェッブ(web)をオプションとして含む、トップ材料は、そのシートに前もって積層される、或いは、押し出し層が適用される。
【0036】
その後、モールドは閉じられた。そのモールドの上半分は、室温であった。一方、下半分は、真空が適用され得たが、120℃に加熱された。
【0037】
この例において、トップ材料に真空は導入されなかった。
【0038】
モールドが閉じられるや否や、真空が約3秒間モールドの下半分を通って導入された。そして、約15秒間の蒸気の適用が続いた。その後、真空が約3秒の間、再び導入された。
【0039】
モールドを閉じること及び開くことを含め、約40秒間のサイクル時間の後、モールディング・プロセスは完了した。そして、トップ材料が吸収体又は遮音体に気密的に結合された。
【0040】
完成されたコンポーネントは、冷却トレイの上に置かれた。