特許第6329265号(P6329265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000002
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000003
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000004
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000005
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000006
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000007
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000008
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000009
  • 特許6329265-車輪位置特定装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6329265
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】車輪位置特定装置
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   B60C23/04 N
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-532154(P2016-532154)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2015075615
(87)【国際公開番号】WO2017042911
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新家 多佳朗
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−013635(JP,A)
【文献】 特表2013−505167(JP,A)
【文献】 特開2015−102390(JP,A)
【文献】 特表2013−514934(JP,A)
【文献】 米国特許第6112587(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0087420(US,A1)
【文献】 特開2015−074388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0218364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転をパルスとして検出するパルス検出部及び前記パルス検出部によって検出されるパルスのカウント数を時間に対応付けて記憶する車輪回転数記憶部を搭載した車両に設けられる車輪位置特定装置であって、前記車両の複数の車輪のそれぞれにはタイヤ状態検出装置が設けられ、前記タイヤ状態検出装置が前記複数の車輪のうちのどの車輪に設けられているかを特定する車輪位置特定装置であって、
各タイヤ状態検出装置から送信されて前記車輪が所定回転数だけ回転するのに要した時間を含む送信信号を受信する受信部と、
前記送信信号を受信する毎に、前記送信信号に含まれる前記時間の間にカウントされた前記パルスのカウント数と、前記車輪が前記所定回転数だけ回転する間に前記パルス検出部によって検出されるパルスのカウント数との差から、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定する特定部とを備え、
前記所定回転数は2以上である、車輪位置特定装置。
【請求項2】
前記特定部は、前記送信信号に含まれる前記時間の間にカウントされた前記パルスのカウント数と、前記車輪が前記所定回転数だけ回転する間に前記パルス検出部によって検出されるパルスのカウント数との差を累積し、累積された値から、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定する、請求項1に記載の車輪位置特定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に設けられた複数のタイヤの状態を運転者が車室内で確認できるようにした無線方式のタイヤ状態監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のタイヤ状態監視装置は、各車輪に取り付けられてタイヤの状態を検出するタイヤ状態検出装置と、車体に搭載された受信機とを備えている。
【0003】
タイヤ状態検出装置は、タイヤの状態を検出して、タイヤの状態に関するデータを受信機に送信する。受信機は、タイヤ状態検出装置からデータを受信して、各タイヤの状態を把握する。受信機は、例えば、タイヤの状態を表示器に表示したり、警報器などを作動させてタイヤの異常を運転者に報知したりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−201369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タイヤ状態監視装置には、受信されたデータ信号が複数のタイヤのうちのどのタイヤに設けられた送信機から送信されたものであるのかを、言い換えれば、受信されたデータ信号に関連する車輪の位置を受信機において特定することが望まれている。
【0006】
本発明の目的は、タイヤ状態検出装置が複数の車輪のうちのどの車輪に設けられているかを特定することができる車輪位置特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第一の態様によれば、車輪の回転をパルスとして検出するパルス検出部及びパルス検出部によって検出されるパルスのカウント数を時間に対応付けて記憶する車輪回転数記憶部を搭載した車両に設けられる車輪位置特定装置であって、車両の複数の車輪のそれぞれにはタイヤ状態検出装置が設けられ、タイヤ状態検出装置が複数の車輪のうちのどの車輪に設けられているかを特定する車輪位置特定装置が提供される。車輪位置特定装置は、各タイヤ状態検出装置から送信されて車輪が所定回転数だけ回転するのに要した時間を含む送信信号を受信する受信部と、前記送信信号を受信する毎に、送信信号に含まれる時間の間にカウントされたパルスのカウント数と車輪が所定回転数だけ回転する間にパルス検出部によって検出されるパルスのカウント数との差から、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定する特定部とを備える。また、所定回転数は2以上である。
【0008】
タイヤ状態検出装置は、車輪が所定回転数だけ回転するのに要した時間を送信信号に含めて、送信信号を送信する。車輪は車両の走行に伴い回転するが、各車輪の回転数は異なる。タイヤ状態検出装置は、タイヤ状態検出装置が設けられた車輪が所定回転数だけ回転するのに要した時間を測定する。この時間の間に、各車輪に対応するパルス検出部は、所定回転数に対応するパルスをカウントする。各車輪が1回転する間にパルス検出部によって検出されるパルスは、予め定まっている。このため、車輪が所定回転数だけ回転したときにパルス検出部に検出されるパルスのカウント数は、予め把握することができる。上記構成によれば、特定部は、送信信号を受信したことを契機として、その送信信号に含まれる時間分遡って、送信信号を受信するまでの間にカウントされたパルスのカウント数を取得する。この場合、送信信号を送信したタイヤ状態検出装置が設けられた車輪に対応するパルスのカウント数と所定回転数に対応するパルスのカウント数との差が最も小さくなる。これにより、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定することができる。
【0009】
上記の車輪位置特定装置において、特定部は、送信信号に含まれる時間の間にカウントされたパルスのカウント数と、車輪が所定回転数回転する間にパルス検出部によって検出されるパルスのカウント数との差を累積し、累積された値から、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定することが好ましい。
【0010】
各車輪の回転数は異なるが、車両が直進している場合は、各車輪の回転数に差が生じ難い。このため、車両が直進している場合、送信信号に含まれる時間の間にカウントされた各車輪のパルスのカウント数は、どれも所定回転数に対応するパルスのカウント数との差が許容範囲内となる可能性がある。上記構成によれば、パルスのカウント数の差を累積した値を用いることで、各タイヤ状態検出装置がどの車輪に設けられているかを特定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の各車輪に設けられたタイヤ状態検出装置が複数の車輪のうちのどの車輪に設けられているかを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る車輪位置特定装置が搭載された車両の概略構成図、(b)は加速度センサの検出軸と車輪との関係を示す模式図。
図2】(a)は回転センサユニットの概略構成図、(b)は検出器に発生するパルスとパルスのカウント方法を説明するための模式図。
図3】送信機の概略構成図。
図4】(a)は加速度値の変化を示すグラフ、(b)は重力加速度による加速度値の変化を示すグラフ。
図5】ID「1」の送信機から送信された送信信号を受信した時点での各回転センサユニットのパルスカウント数を示すグラフ。
図6】送信信号のデータ構成を示す表。
図7】第2車輪位置特定処理を説明するための図。
図8】(a)及び(b)は第2車輪位置特定処理の変形例を示すグラフ。
図9】(a)及び(b)は第2車輪位置特定処理の変形例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の車輪位置特定装置の一実施形態について図1図7を参照して説明する。
図1(a)に示すように、車両10は、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)20及びタイヤ状態監視装置30を搭載している。ABS20は、ABSコントローラ25と、車両10の4つの車輪11にそれぞれ対応する回転センサユニット21〜24とを備えている。第1回転センサユニット21は、前側左側に設けられた左前車輪FLに対応し、第2回転センサユニット22は、前側右側に設けられた右前車輪FRに対応している。第3回転センサユニット23は、後側左側に設けられたに左後車輪RLに対応し、第4回転センサユニット24は、後側右側に設けられた右後車輪RRに対応している。各車輪11は、車両用ホイール12と、車両用ホイール12に装着されたタイヤ13とから構成されている。ABSコントローラ25は、マイクロコンピュータ等よりなり、回転センサユニット21〜24からのパルスカウント値に基づき各車輪11の回転位置(回転角度)を求める。
【0014】
図2(a)に示すように、パルス検出部としての各回転センサユニット21〜24は、車輪11と一体回転する歯車26と、歯車26の外周面に対向するように配置された検出器27とからなる。歯車26の外周面には、複数(本実施形態では48本)の歯が等角度間隔おきに設けられている。検出器27は、歯車26が回転することで生じるパルスを検出する。ABSコントローラ25は、各検出器27に有線接続され、各検出器27のパルスのカウント数(以下、パルスカウント数)に基づき、各車輪11の回転位置を求める。具体的にいえば、歯車26は、1回転する毎に、歯の数に対応した数のパルスを検出器27に発生させる。ABSコントローラ25は、検出器27に発生したパルスをカウントするとともに、カウントされたパルスカウント数を1回転分のパルスのカウント数(96)で除算して余りを求める事で、パルスカウント値を算出する。ABSコントローラ25は、車輪11が1回転(360度)する間に検出器27に発生するパルス数で360度を除算することで、パルスカウント1につき歯車26が何度回転したかを把握する。こうして、パルスカウント値から車輪11の回転位置が求められる。
【0015】
図2(b)に示すように、ABSコントローラ25は、パルスの立ち上がりと立ち下がりとをカウントすることで、車輪11が1回転する毎に0〜95までパルスカウント値をカウントする。
【0016】
ABSコントローラ25は、車輪回転数記憶部25aを備えている。車輪回転数記憶部25aには、各回転センサユニット21〜24によって検出されたパルスカウント数が時間に対応付けられて、記憶されている。
【0017】
次に、タイヤ状態監視装置30について説明する。
図1(a)に示すように、タイヤ状態監視装置30は、4つの車輪11にそれぞれ取り付けられた送信機31と、車両10の車体に設置される受信機50とを備えている。各送信機31は、タイヤ13の内部空間に配置され、そのタイヤ13は、車両用ホイール12に取り付けられている。タイヤ状態検出装置としての各送信機31は、対応するタイヤ13の状態を検出して、タイヤの状態を示すデータを含む信号を無線送信する。
【0018】
図3に示すように、各送信機31は、圧力センサ32、温度センサ33、加速度センサ34、コントローラ35、送信回路36、送信アンテナ38、及び送信機31の電力源となるバッテリ37を備えている。送信機31は、バッテリ37からの供給電力によって動作し、コントローラ35は、送信機31の動作を統括的に制御する。圧力センサ32は、対応するタイヤ13内の圧力(タイヤ内圧力)を検出する。温度センサ33は、対応するタイヤ13内の温度(タイヤ内温度)を検出する。圧力センサ32及び温度センサ33を用いて、タイヤ13の状態としてタイヤ13内の圧力及びタイヤ13内の温度が検出される。
【0019】
図1(b)に示すように、加速度センサ34は、車輪11と一体となって回転して自身に作用する加速度を検出する。加速度センサ34は、送信機31が車輪11の最下位置に位置しているときに、検出軸34aが鉛直方向の下方を向くように設けられている。検出軸34aは、遠心加速度値を直流成分として検出し、重力加速度値を交流成分として検出する。加速度センサ34から、遠心加速度値に重力加速度値を加えた加速度値が出力される。
【0020】
図4(a)に示すように、車両10が時刻T1まで加速し、時刻T1から時刻T2まで等速で走行し、時刻T2から減速した場合を想定する。加速度センサ34によって検出される加速度値は、車両10の加速による遠心加速度値の増加によって時刻T1まで増加し、車両10の減速による遠心加速度値の減少によって時刻T2から減少する。また、車両10が等速で走行している時刻T1から時刻T2の間、加速度値は略一定となる。加速度値には、重力加速度値が交流成分として含まれている。このため、加速度値は、重力加速度に応じて正弦波状に変化する。
【0021】
図4(b)は、図4(a)の符号Aの部分を拡大して示す。加速度値に含まれている交流成分は、車輪11の回転により±1G(に相当する電圧)の間で正弦波状に変化する。車輪11の最前位置に送信機31が位置しているときの車輪11の角度を0度とし、車両10が前進する方向に車輪11が前進したときの角度を正とする。車輪11の角度が0度のとき、加速度センサ34は、遠心加速度値に重力加速度値として0Gを加えた加速度値を検出する。車輪11の角度が+90度のとき、送信機31(加速度センサ34)が車輪11の最下位置に位置し、加速度センサ34は、遠心加速度値に重力加速度値として+1Gを加えた加速度値を検出する。車輪11の角度が+180度のとき、送信機31が車輪11の最後位置に位置し、加速度センサ34は、遠心加速度値に重力加速度値として0Gを加えた加速度値を検出する。車輪11の角度が+270度のとき、送信機31が最上位置に位置し、加速度センサ34は、遠心加速度値に重力加速度値として−1Gを加えた加速度値を検出する。
【0022】
図3に示すように、コントローラ35は、CPU35a、記憶部(RAMやROM等)35b及びタイマ35cを含むマイクロコンピュータ等よりなる。記憶部35bには、各送信機31に固有の識別情報であるIDが登録されている。IDは、受信機50において各送信機31を識別するために使用される情報である。本実施形態では、左前車輪FLに設けられた送信機31のIDを「1」、右前車輪FRに設けられた送信機31のIDを「2」、右後車輪RRに設けられた送信機31のIDを「3」、左後車輪RLに設けられた送信機31のIDを「4」とする。説明の便宜上、IDは、「1」〜「4」として表現されているが、これに限られない。
【0023】
コントローラ35は、予め定められた取得頻度で、圧力センサ32からタイヤ内圧力データを、温度センサ33からタイヤ内温度データを、加速度センサ34から加速度データをそれぞれ取得する。各データの取得頻度は、同一であってもよいし、データによって異なっていてもよい。
【0024】
図4(b)に示すように、コントローラ35は、車輪11が1回転する間(1周期)に8個の取得角P1〜P8に位置する毎に、加速度データを取得する。車輪11の回転速度は運転者による加減速によって変化するが、コントローラ35は、加速度センサ34の加速度値から、車輪11が1回転するのに要する時間を算出する。上記したように、加速度センサ34の加速度は車両10の速度によって変化するため、加速度値から、車両10の速度、ひいては、車輪11が1回転するのに要する時間を算出することができる。コントローラ35は、車輪11が1回転するのに要する時間を8で等分した取得頻度を決定し、決定された取得頻度で、加速度センサ34から加速度データを取得する。結果的に、コントローラ35は、車輪11が1回転する間に、各取得角P1〜P8間の角度差である45度置きに、加速度センサ34から加速度データを取得する。
【0025】
コントローラ35は、タイヤ内圧力データ、タイヤ内温度データ、及びIDを含むデータを、送信回路36に出力する。送信回路36は、コントローラ35からのデータを変調して送信信号を生成する。そして、送信回路36は、送信信号を送信アンテナ38から無線送信する。コントローラ35は、予め設定された送信間隔で、送信信号を送信回路36から送信する。
【0026】
図1(a)に示すように、受信機50は、受信コントローラ51、受信回路52、及び受信アンテナ54を備えている。受信コントローラ51には、表示器53が接続されている。受信コントローラ51は、受信側CPU51a、受信側記憶部(ROMやRAM等)51b、及び受信側タイマ51cを含むマイクロコンピュータ等よりなる。受信側記憶部51bには、受信機50の動作を統括的に制御するプログラムが記憶されている。受信部としての受信回路52は、各送信機31から受信アンテナ54を通じて受信された送信信号を復調して、受信コントローラ51に送る。
【0027】
受信コントローラ51は、受信回路52からの送信信号に基づき、送信元の送信機31に対応するタイヤ13の状態としてのタイヤ内圧力及びタイヤ内温度を把握する。受信コントローラ51は、タイヤ内圧力に関する情報等を表示器53に表示する。また、受信コントローラ51は、タイヤ内圧力に関する情報に合わせて、そのタイヤ内圧力が4つの車輪11のうちのどの車輪11に対応するかを表示する。
【0028】
受信コントローラ51は、ABSコントローラ25に接続され、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値を、ABSコントローラ25を通じて取得可能である。
次に、各送信機31が各車輪11のうちのどの車輪11に設けられているかを特定する車輪位置特定装置とその作用について、図4(b)を参照して説明する。本実施形態では、受信機50が、車輪位置特定装置として機能する。また、受信機50は、第1車輪位置特定処理と第2車輪位置特定処理を併用することで、各送信機31が各車輪11のうちのどの車輪11に設けられているかを特定する。まず、送信機31が送信する送信信号について詳細に説明する。
【0029】
図4(b)に示すように、送信機31のコントローラ35は、各取得角P1〜P8で加速度値を取得する。コントローラ35は、一つの取得角で取得された加速度値と、その取得角の1回前の取得角で取得された加速度値とを比較する。そして、コントローラ35は、各取得角で取得された加速度値が1回前の取得角で取得された加速度値よりも増加しているか減少しているかを判定する。図4(b)では、1回前の取得角で取得された加速度値よりも加速度値が増加した場合に「+」を付し、1回前の取得角で取得された加速度値よりも加速度値が減少した場合に「−」を付している。以下の説明でも、適宜、1回前よりも加速度値が増加した取得角を「+」と表現し、1回前よりも加速度値が減少した取得角を「−」と表現する。加速度値は遠心加速度値に重力加速度値を加えたものであるが、車輪11が1回転する間に車両10の速度が急激に変化する可能性は低い。よって、遠心加速度値の変化は無視することができる。このため、各取得角P1〜P8間での加速度値の変化は重力加速度値による変化とみなすことができる。
【0030】
各取得角P1〜P8で取得される加速度値が増加から減少又は減少から増加へ反転するタイミングは、送信機31が車輪11の最下位置、あるいは、最上位置を跨いだときである。取得角P1〜P8で取得される加速度値が増加から減少又は減少から増加へ反転するとき、車両10の前進方向において取得角は「+」「−」の順、あるいは、「−」「+」の順に並ぶ。取得角が「+」「−」の順に並ぶと、送信機31が車輪11の最下位置を跨いだと把握することができる。また、「+」「−」のうちの「−」のタイミングで送信信号が送信されることで、送信機31が車輪11の最下位置を跨いだタイミングで、送信機31から送信信号が送信される。取得角が「−」「+」の順に並ぶと、送信機31が車輪11の最上位置を跨いだと把握することができる。また、「−」「+」のうちの「+」のタイミングで送信信号が送信されることで、送信機31が車輪11の最上位置を跨いだタイミングで、送信機31から送信信号が送信される。
【0031】
本実施形態では、取得角が「+」「+」「−」「−」の順(以下、送信パターンと記載)に並んだときに、送信機31が車輪11の最下位置を跨いだとみなす。また、コントローラ35は、上記送信パターンの2つ目の「−」となる取得角で、送信機31から送信信号を送信させる。より詳細にいえば、コントローラ35は、前回の送信信号との間隔が経過しかつ上記送信パターンの2つ目の「−」となる取得角を検出したときに、送信機31から送信信号を送信させる。
【0032】
また、コントローラ35は、取得角で取得される加速度値の増加と減少の変化から、車輪11が1回転する時間を測定する。例えば、タイマ35cは、送信信号が送信される送信パターンの2つ目の「−」と、この送信パターンの1回前の送信パターンの2つ目の「−」との間の時間を測定する。これにより、輪11が1回転するのに要した時間を得ることができる。本実施形態では、タイマ35cは、送信信号が送信される送信パターンの2つ目の「−」と送信パターンの3回前の送信パターンの2つ目の「−」との間の時間を測定することで、車輪11が3回転(所定回転数)するのに要した時間を測定する。送信機31は、車輪11が3回転するのに要した時間を送信信号に含めて、送信信号を送信する。
【0033】
図6に示すように、送信信号には、IDのデータ、タイヤ13の空気圧データ、車両10の状態を示すステータス、CRCなどの誤り訂正のための符号に加えて、車輪11が3回転するのに要した時間を示すデータが含まれている。
【0034】
次に、受信機50が行う第1車輪位置特定処理について、図1及び図5を参照して説明する。
受信機50の受信コントローラ51は、送信信号を受信した時点で、ABSコントローラ25から各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値、即ち、車輪11の回転位置を取得する。そして、受信コントローラ51は、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定する。以下、4つの車輪11のうち、例えば、ID「1」の送信機31が設けられた車輪11に着目して説明を行う。
【0035】
図1及び図5に示すように、受信コントローラ51は、ID「1」の送信機31から送信された送信信号を受信すると、その送信信号を受信した時点で、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値(車輪11の回転位置)を、ABSコントローラ25から取得する。各車輪11の回転数は、ディファレンシャルギアの影響などによって異なる。このため、ID「1」の送信機31から送信された送信信号を受信した時点で各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値を複数回取得した場合、ID「1」の送信機31が設けられた車輪11に対応する回転センサユニット21〜24のパルスカウント値のみ、ばらつきが小さくなる。受信コントローラ51は、送信信号を複数回受信する。受信コントローラ51は、送信信号を受信する毎に、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値を取得し、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値の差を求める。受信コントローラ51は、最もばらつきが小さい回転センサユニットに対応した車輪にID「1」の送信機31が設けられていると特定する。
【0036】
図5に示すように、左前車輪FLに対応する回転センサユニット21のパルスカウント値が一定の値を示す。このため、ID「1」の送信機31が設けられた車輪11は車両10の左前車輪FLに設けられていると特定することができる。また、ID「2」「3」「4」の送信機31についても、上記と同様の処理を行うことで、各IDの送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定することができる。説明の便宜上、図5では、送信信号が常に一定角度で送信されてパルスカウント値が常に一定の値を示す場合を示す。しかしながら、実際には、送信機31の各部材の公差などによって、送信信号は、一定角度から若干ずれて送信され得る。このため、送信信号を受信したときの各回転センサユニット21〜24のパルスカウント値にも、若干の差が生じる。
【0037】
次に、受信機50が行う第2車輪位置特定処理について図7を参照して説明する。
図7に示すように、4つの車輪11のうち、例えば、ID「1」の送信機31が設けられた車輪11に着目して説明を行う。特定部としての受信コントローラ51は、ID「1」の送信機31から送信された送信信号を受信すると、送信信号を受信した時点より3回転分の時間(例えば、750ms)だけ遡って、送信信号を受信するまでの間に各回転センサユニット21〜24によってカウントされたパルスカウント数を取得する。ID「1」の送信機31が設けられた車輪11が3回転する間、その車輪11に対応する回転センサユニットにも、3回転分のパルスが生じる。一方で、各車輪11の回転数は異なることから、ID「1」の送信機31が設けられた車輪11が3回転している間、その車輪11以外の車輪11に対応する回転センサユニットには、3回転分のパルスとは異なるパルスが生じる。
【0038】
車輪11が1回転する間のパルスカウント数は、予め把握することができ、本実施形態では「96」である。このため、「96」に車輪11の所定回転数である「3」を乗算することで、車輪11が3回転したときのパルスカウント数が「288」になる。この値は、受信側記憶部51bに記憶されている。
【0039】
受信コントローラ51は、ID「1」の送信機31から送信された送信信号を受信したときに、その送信信号に含まれている時間分だけ遡ってパルスカウント数を取得する。この場合、ID「1」の送信機31が設けられた左前車輪FLに対応する第1回転センサユニット21によってカウントされたパルスカウント数が、3回転分のパルスカウント数である「288」となる。一方で、他の回転センサユニット22〜24のパルスカウント数は、「288」とは異なる値になる。
【0040】
このため、受信コントローラ51は、第1回転センサユニット21に対応する左前車輪FLにID「1」の送信機31が設けられていると特定する。ID「2」の送信機31から送信された送信信号に含まれた3回転分の時間が、例えば、800msの場合、受信コントローラ51は、送信信号を受信した時点から800ms遡って各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数を取得する。本実施形態では、右前車輪FRに対応する第2回転センサユニット22によってカウントされたパルスカウント数が「288」となり、受信コントローラ51は、右前車輪FRにID「2」の送信機31が設けられていると特定する。ID「3」の送信機31から送信された送信信号に含まれた3回転分の時間が、例えば、600msの場合、受信コントローラ51は、送信信号を受信した時点から600ms遡って各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数を取得する。本実施形態では、右後車輪RRに対応する第4回転センサユニット24によってカウントされたパルスカウント数が「288」となり、受信コントローラ51は、右後車輪RRにID「3」の送信機31が設けられていると特定する。ID「4」の送信機31から送信された送信信号に含まれた3回転分の時間が、例えば、900msの場合、受信コントローラ51は、送信信号を受信した時点から900ms遡って各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数を取得する。本実施形態では、左後車輪RLに対応する第3回転センサユニット23によってカウントされたパルスカウント数が「288」となり、受信コントローラ51は、左後車輪RLにID「4」の送信機31が設けられていると特定する。
【0041】
上記した例では、便宜上、送信機31や受信機50の公差、加速度値などの測定誤差、送信信号の送信から受信までに要する時間などを無視した理想的な環境下において、車輪11が3回転する間に各車輪11の回転数が異なる場合について説明した。しかしながら、実際には、送信機31や受信機50には公差が存在し、加速度値などの測定誤差も存在する。このため、受信コントローラ51が送信信号に含まれている時間分だけ遡ってパルスカウント数を取得しても、送信信号を送信した送信機31が設けられた車輪11に対応する回転センサユニットのパルスカウント数は「288」から若干ずれた値となる。このため、送信信号に含まれている時間分だけ遡って取得するパルスカウント数には、許容範囲が設定されている。また、取得したパルスカウント数と「288」との差が許容範囲であれば、送信信号を送信した送信機31が設けられた車輪11であると特定する。また、許容範囲には、各部材の公差や、測定誤差などを考慮して、車輪11が所定回転数(本実施形態では3回転)回転したときに各回転センサユニットによってカウントされるパルスカウント数が設定される。
【0042】
また、各車輪11の回転数に差が生じるのは、車両10の左右折時である。よって、直進時には、各車輪11の回転数に差が生じにくい。結果として、送信信号を受信した時点から送信信号に含まれた時間分だけ遡って各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数を取得しても、複数の回転センサユニットからのパルスカウント数がいずれも許容範囲内となることがある。
【0043】
この場合、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定できなかったとみなす。そして、次回以降に送信される送信信号を受信したときに同一の処理を行い、許容範囲内のパルスカウント数をカウントした回転センサユニットが一つになるまで、上記の処理を続ける。そして、送信信号に含まれる時間内にカウントされたパルスカウント数と車輪11が3回転する間に各回転センサユニットによってカウントされるパルスカウント数との差が最も小さい回転センサユニットを特定する。こうして特定された回転ユニットに対応する車輪11には、送信信号を送信した送信機31が設けられている。
【0044】
受信機50は、第1車輪位置特定処理及び第2車輪位置特定処理を並行して行うと共に、いずれか一方の車輪位置特定処理によって各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定できた場合、早く特定できた方の結果を採用する。
【0045】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)各車輪11に設けられた送信機31は、車輪11が3回転するのに要した時間を送信信号に含めて、送信信号を送信する。受信コントローラ51は、送信信号を受信したことを契機として、その送信信号に含まれる時間分だけ遡って、送信信号を受信するまでの間に各回転センサユニット21〜24でカウントされたパルスカウント数を取得する。受信コントローラ51は、取得したパルスカウント数と3回転分のパルスカウント数との差が最小である回転センサユニットを特定し、その回転センサユニットに対応する車輪11に送信信号を送信した送信機31が設けられていると特定することができる。
【0046】
(2)第2車輪位置特定処理では、車輪11が3回転するのに要した時間によって、各送信機31がどの車輪11に設けられているかが特定される。したがって、第1車輪位置特定処理のように、複数のデータを統計して各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定する必要がない。このため、第2車輪位置特定処理では、第1車輪位置特定処理に比べて、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを早く特定することができる。
【0047】
(3)受信機50は、第1車輪位置特定処置と第2車輪位置特定処理を並行して行うことにより、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定する。この場合、第1車輪位置特定処理と第2車輪位置特定処理のうちいずれかによって、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定できればよい。このため、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定する時間を短縮することができる。
【0048】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・パルスカウント数が許容範囲外の回転センサユニットを除外することで、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定してもよい。例えば、パルスカウント数の許容範囲を「288±40」とし、送信信号を2回受信した場合を想定する。図8(a)に示すように、受信コントローラ51は、1回目の送信信号を受信すると、受信した時点から遡ってパルスカウント数を取得する。このとき、右前車輪FRに対応する回転センサユニット22のみパルスカウント数が許容範囲外であるため、右前車輪FRは送信信号を送信した送信機31が設けられた車輪11でないと特定する。次に、図8(b)に示すように、受信コントローラ51は、2回目の送信信号を受信すると、受信した時点から遡ってパルスカウント数を取得する。このとき、受信コントローラ51は、右前車輪FRに対応する回転センサユニット22のパルスカウント数は取得しない。このように、送信信号を受信する度にパルスカウント数が許容範囲外である回転センサユニットを除外して、最後に残った1つの回転センサユニットに対応する車輪11に送信信号を送信した送信機31が設けられていると特定することができる。
【0049】
・送信信号に含まれる時間の間に各回転センサユニット21〜24によってカウントされたパルスカウント数と3回転分のパルスカウント数(288)との差を累積し、累積された値(以下、累積カウント数)から、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定してもよい。例えば、送信信号を2回受信した場合を想定する。
【0050】
図9(a)に示すように、受信コントローラ51は、1回目の送信信号を受信すると、受信した時点から遡って、各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数を取得する。次に、受信コントローラ51は、取得された各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数毎に、取得されたパルスカウント数と288との差(絶対値)を算出する。そして、図9(a)の斜線に示すように、受信コントローラ51は、算出された値を、累積カウント数として記憶する。
【0051】
図9(b)に示すように、受信コントローラ51は、2回目の送信信号を受信すると、受信した時点から遡って、パルスカウント数を取得する。次に、受信コントローラ51は、取得された各回転センサユニット21〜24のパルスカウント数毎に、取得されたパルスカウント数と288との差(絶対値)を算出する。そして、受信コントローラ51は、1回目の送信信号を受信したときの累積カウント数に、2回目の送信信号を受信したときの累積カウントを加算する。同一IDの送信機31から送信された送信信号を受信する度にパルスカウント数と288との差を累積することで、IDの送信機31が設けられた車輪11に対応する回転センサユニットの累積カウント数が最も少なくなる。累積カウント数に閾値を設定し、累積カウント数が閾値を超えた回転センサユニットは、送信信号を送信した送信機31が設けられた車輪11に対応していないと特定する。4つの回転センサユニットのうち、3つの回転センサユニットの累積カウント数が閾値を超えると、残りの1つの回転センサユニットに対応する車輪11に送信信号を送信した送信機31が設けられていると特定することができる。
【0052】
なお、累積カウント数同士の差に閾値を設定してもよい。この場合、1つの回転センサユニットの累積カウント数と他の3つの回転センサユニットの累積カウント数とに閾値以上の差が生じたときに、最も累積カウント数の少ない回転センサユニットに対応する車輪11に送信信号を送信した送信機31が設けられていると特定することができる。
【0053】
・送信機31は、所定回転数として3回転した時間を送信信号に含めて、送信信号を送信したが、所定回転数を4回転以上に変更してもよく、2回転以下に変更してもよい。また、所定回転数は、3.5回転など、整数倍の回転数でなくてもよい。
【0054】
・所定回転数は可変でもよい。例えば、車輪11が3回転する間の時間を1回目の送信信号に含めて送信し、車輪11が4回転する間の時間を2回目の送信信号に含めて送信してもよい。この場合、送信信号に所定回転数だけ回転するのに要した時間に加えて、所定回転数が何回であるかを示すデータを送信信号に含めて、送信信号を送信する。
【0055】
・上記実施形態では、送信パターンは、「+」「+」「−」「−」であったが、「+」「−」、「−」「−」「+」「+」、「−」「+」、「+」「+」又は「−」「−」であってもよい。つまり、車輪11が1回転する間に生じるパターンから、任意の送信パターンを設定することができる。更に、これらのパターンを組み合わせてもよい。
【0056】
・加速度センサ34は、車輪11の最上位置に位置しているときに検出軸34aが鉛直方向を向くように配置してもよい。この場合、車輪11が1回転する間に加速度センサ34によって検出される加速度値の正負が、上記実施形態と反転する。
【0057】
・加速度センサ34は、車輪11の最前位置に位置している場合又は車輪11の最後位置に位置している場合に検出軸が鉛直方向を向くように構成してもよい。この場合、検出軸によって検出される重力加速度値は、車輪11の最前位置及び車輪11の最後位置で増減が反転する。このため、重力加速度値の増減が反転するタイミングで、送信信号を送信してもよい。
【0058】
・歯車26の歯数を変更することで、車輪11が1回転する毎に検出器27に発生するパルスの数を、適宜変更してもよい。また、立ち上がり又は立ち下がりの一方をカウントすることで、車輪11が1回転する間のパルスカウント数を変更してもよい。
【0059】
・上記実施形態の車輪位置特定装置は、第2車輪位置特定処理のみを用いて、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定してもよい。
・上記実施形態では、パルスカウント数の差から各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定したが、パルスカウント数を車輪11の回転数に換算するとともに、車輪11の回転数と所定回転数との差から、各送信機31がどの車輪11に設けられているかを特定してもよい。
【0060】
・上記実施形態では、受信機50は、二つの車輪位置特定処理のうちいずれか一方によって各送信機31がどの車輪11に設けられているかが特定された場合、早く特定できた方の結果を採用した。この場合、受信機50は、他方の車輪位置特定処理を継続してもよい。二つの車輪位置特定処理の結果が異なる場合、受信機50は、確実性を高めるため、再度特定処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…車両、11…車輪、21〜24…回転センサユニット、31…送信機、50…受信機、51…受信コントローラ、52…受信回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9