(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施の形態に係るフロントフォークについて、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係るフロントフォークFは、車体と車輪との間に介装されるテレスコピック型のチューブ部材Tと、このチューブ部材T内に設けられるダンパDと、上記チューブ部材Tと上記ダンパDとの間に形成されて液体が貯留される液溜室L4と、この液溜室L4の液面L0を介して上側に形成されて圧縮された気体が封入される気室Gと、上記液溜室L4に出入りするオイルロックピース(絞り部材)20と、このオイルロックピース20を通過して上下に移動する液体の流れに抵抗を与える絞り流路Wとを備えており、上記圧縮された気体の反力を利用して車体を弾性支持するエアサスペンション式とされている。
【0015】
そして、上記ダンパDは、車輪側に連結されるシリンダ1と、車体側に連結されて上記シリンダ1に出入りするロッド2とを備えて正立型とされており、上記オイルロックピース20は、上記シリンダ1から突出する上記ロッド2の外周に取り付けられている。
【0016】
以下、詳細に説明すると、フロントフォークFは、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両の車体と前輪との間に介装されており、車体の骨格となる車体フレームに連結される車体側ブラケット(図示せず)と、前輪の車軸に連結される車輪側ブラケットBと、上記車体側ブラケットと車輪側ブラケットBとの間に介装される緩衝器Aとを備えている。
【0017】
緩衝器Aは、当該緩衝器Aの外殻となるテレスコピック型のチューブ部材Tと、このチューブ部材T内に設けられて速度依存の減衰力を発生する正立型のダンパDと、チューブ部材TとダンパDとの間に形成されて液体が貯留される液溜室L4と、この液溜室L4の液面L0を介して上側に形成されて圧縮された気体が封入される気室Gと、最圧縮時の衝撃を緩和するオイルロック機構Mと、最伸長時の衝撃を緩和する伸切ばねS1と、最伸長時における圧縮気体の反力を相殺する反力を発揮するバランスばねS2とを備えている。
【0018】
チューブ部材Tは、倒立型とされており、図示しない車体側ブラケットに連結される車体側のアウターチューブ7と、車輪側ブラケットBに連結されてアウターチューブ7に出入りする車輪側のインナーチューブ8とを備えてテレスコピック型とされており、路面凹凸による衝撃が入力されるとインナーチューブ8がアウターチューブ7に出入りして伸縮する。本実施の形態において、チューブ部材Tが倒立型とされているが、車体側のインナーチューブと車輪側のアウターチューブとを備えて正立型とされるとしてもよい。
【0019】
チューブ部材Tの上側開口は、封止部材であるキャップ部材Cで塞がれており、チューブ部材Tの下側開口は、同じく封止部材である車輪側ブラケットBで塞がれている。また、アウターチューブ7とインナーチューブ8の重複部の間に形成される筒状隙間の下側開口は、アウターチューブ7の下部内周に保持されてインナーチューブ8の外周面に摺接する環状のオイルシール9a及びダストシール9bで塞がれている。このため、チューブ部材T内に収容される液体や気体がチューブ部材T外に漏れ出ないようになっている。
【0020】
ダンパDは、正立型とされており、シリンダ1と、このシリンダ1の上側開口部に取り付けられるロッドガイド3と、このロッドガイド3を貫通してシリンダ1に出入りするロッド2と、このロッド2の下端部外周に保持されてシリンダ1の内周面に摺接するピストン4と、シリンダ1の下側開口部に取り付けられるベースロッド5と、このベースロッド5の軸部5aの上端部外周に保持されるベース部材6と、ベースロッド5を車輪側ブラケットBに固定するボトムキャップ50とを備えている。そして、シリンダ1は、ベースロッド5の基部5bとボトムキャップ50を介して車輪側の車輪側ブラケットBに連結されており、ロッド2は、キャップ部材Cとアウターチューブ7を介して車体側の車体側ブラケット(図示せず)に連結されているので、路面凹凸による衝撃が入力されると、チューブ部材Tの伸縮とともにロッド2がシリンダ1に出入りする。
【0021】
シリンダ1内には、ピストン4で区画されて液体が満たされる上側の伸側室L1及び下側の圧側室L2と、ベース部材6で圧側室L2と区画される中間室L3とが形成されている。シリンダ1におけるベース部材6よりも下側には、シリンダ1の肉厚を貫通してシリンダ1内外を連通する一以上の孔1aが形成されており、これらの孔1aでシリンダ1内における中間室L3と、シリンダ1外の液溜室L4とを常に連通する給排口10を構成する。本実施の形態において、伸側室L1、圧側室L2、中間室L3に充填される液体及び液溜室L4に貯留される液体は作動油であるが、減衰力を発生可能であれば作動油以外の液体を利用してもよい。
【0022】
ロッドガイド3は、環状に形成されて内側にロッド2が挿通される支持部3aと、この支持部3aから下側に延びてシリンダ1の外周に螺合する筒状の結合部3bと、支持部3aの外周縁から上側に起立する筒状のオイルロックケース3cとを備えている。支持部3aの内側には、ロッド2の外周面に摺接する環状の軸受30が嵌合されており、支持部3aにおいて、当該軸受30を支える内周部分3a1が上側に突出し、その外周に環状の溝3a2が形成されている。
【0023】
また、支持部3aの下側には、環状に形成されて内側にロッド2が挿通されるばねシート31が取り付けられており、このばねシート31の内周部に伸切ばねS1が保持され、ばねシート31の外周部にバランスばねS2が保持されている。
【0024】
ロッド2は、軸受30を介してロッドガイド3に軸方向に移動自在に軸支される軸状のロッド本体2aと、シリンダ1内に挿入されるロッド本体2aの下側に連結されて外周にピストン4が取り付けられるセンターロッド2bとを備えて構成されている。シリンダ1から突出するロッド本体2aの上端部外周に螺子溝が形成されており、当該上端部がキャップ部材Cに螺合され、ナットNで緩み止めされている。
【0025】
また、シリンダ1外に突出するロッド本体2aの外周には、ロッドガイド3のオイルロックケース3cとともにオイルロック機構Mを構成するオイルロックピース20が取り付けられている。他方、シリンダ1内に挿入されるロッド本体2aの外周には、伸切ばねS1の下端が着座する伸切ばね用のストッパ21が取り付けられており、センターロッド2bの外周でピストン4の上側には、バランスばねS2の下端が着座するバランスばね用のストッパ22が取り付けられている。
【0026】
ピストン4は、ロッド2に保持されてシリンダ1内を軸方向に移動可能であり、ピストン4には、伸側室L1と圧側室L2とを連通する伸側ピストン通路4aと圧側ピストン通路4bとが形成されている。ピストン4の下側には、伸側ピストン通路4aを開閉するリーフバルブ40が積層されており、このリーフバルブ40は伸長作動時にのみ伸側ピストン通路4aを開く。また、ピストン4の上側には、圧側ピストン通路4bを開閉するリーフバルブ41が積層されており、このリーフバルブ41は圧縮作動時にのみ圧側ピストン通路4bを開く。
【0027】
本実施の形態において、伸側ピストン通路4aを開閉する下側のリーフバルブ40のクラッキング圧は、比較的高く設定されており、当該リーフバルブ40が減衰弁として機能するように設定されている。他方、圧側ピストン通路4bを開閉する上側のリーフバルブ41のクラッキング圧は、比較的低く設定されており、当該リーフバルブ41が逆止弁として機能するように設定されている。なお、伸側ピストン通路4aや圧側ピストン通路4bを開閉するための弁体としてポペット弁をリーフバルブ40,41の代用とするとしてもよい。また、両ピストン通路4a,4bを通過する液体の流れに抵抗を与えるとしてもよく、当該抵抗を与えるための構成としてオリフィスを利用するとしてもよい。
【0028】
シリンダ1の下部内側に取り付けられるベース部材6には、圧側室L2と中間室L3とを連通する伸側ベース通路6aと圧側ベース通路6bとが形成されている、ベース部材6の上側には、伸側ベース通路6aを開閉するリーフバルブ60が積層されており、このリーフバルブ60は伸長作動時にのみ伸側ベース通路6aを開く。また、ベース部材6の下側には、圧側ベース通路6bを開閉するリーフバルブ61が積層されており、このリーフバルブ61は、圧縮作動時にのみ圧側ベース通路6bを開く。
【0029】
本実施の形態において、伸側ベース通路6aを開閉する上側のリーフバルブ60のクラッキング圧は、比較的低く設定されており、当該リーフバルブ60が逆止弁として機能するように設定されている。他方、圧側ベース通路6bを開閉する下側のリーフバルブ61のクラッキング圧は、比較的高く設定されており、当該リーフバルブ61が減衰弁として機能するように設定されている。なお、伸側ベース通路6aや圧側ベース通路6bを開閉するための弁体としてポペット弁をリーフバルブ60,61の代用とするとしてもよい。また、両ベース通路6a,6bを通過する液体に抵抗を与えるようにしてもよく、当該抵抗を与えるための構成としてオリフィスを利用するとしてもよい。
【0030】
上記構成によれば、ロッド2がシリンダ1から退出するフロントフォークFの伸長作動時において、縮小される伸側室L1の液体がピストン4のリーフバルブ40を開き、伸側ピストン通路4aを通って拡大する圧側室L2に移動するとともに、シリンダ1から退出したロッド体積分の液体がベース部材6のリーフバルブ60を開き、伸側ベース通路6aを通って中間室L3から圧側室L2に移動する。
【0031】
このため、ダンパDは、液体が伸側ピストン通路4a及び伸側ベース通路6aを通過する際の抵抗に起因する速度依存の伸側減衰力を発生して、フロントフォークFの伸長作動を抑制する。本実施の形態において、伸側ベース通路6aを開閉するリーフバルブ60が逆止弁とされているので、上記伸側減衰力は、主に、伸側ピストン通路4aを開閉するリーフバルブ40の抵抗に起因するものである。そこで、図示しないが、伸側ピストン通路4aを迂回して伸側室L1と圧側室L2とを連通するバイパス路と、このバイパス路の流路面積を変更する可変式バルブとを備えて構成される伸側減衰力調整手段を設け、伸側減衰力を調節するようにしてもよい。本発明のように、ダンパDが正立型とされる場合であって、伸側減衰力を電子調整式とした場合、調整用の電子部品をばね上に配置することが容易に可能となる。
【0032】
また、上記したように中間室L3から圧側室L2に液体が移動すると、この分の液体が
給排口10を通ってシリンダ1外の液溜室L4からシリンダ1内の中間室L3に流入するので、ロッド退出体積分のシリンダ内容積変化を補償できる。
【0033】
反対に、ロッド2がシリンダ1に進入するフロントフォークFの圧縮作動時において、縮小される圧側室L2の液体がピストン4のリーフバルブ41を開き、圧側ピストン通路4bを通って拡大する伸側室L1に移動するとともに、シリンダ1に進入したロッド体積分の液体がベース部材6のリーフバルブ61を開き、圧側ベース通路6bを通って圧側室L2から中間室L3に移動する。
【0034】
このため、ダンパDは、液体が圧側ピストン通路4b及び圧側ベース通路6bを通過する際の抵抗に起因する速度依存の圧側減衰力を発生して、フロントフォークFの圧縮作動を抑制する。本実施の形態において、圧側ピストン通路4bを開閉するリーフバルブ41が逆止弁とされているので、上記圧側減衰力は、主に、圧側ベース通路6bを開閉するリーフバルブ61の抵抗に起因するものである。そこで、図示しないが、
圧側ベース通路6bを迂回して圧側室L2と中間室L3とを連通するバイパス路と、このバイパス路の流路面積を変更する可変式バルブとを備えて構成される圧側減衰力調整手段を設け、圧側減衰力を調節するようにしてもよい。
【0035】
また、上記したように圧側室L2から中間室L3に液体が移動すると、この分の液体が
給排口10を通ってシリンダ1内の中間室L3からシリンダ1外の液溜室L4に流出するので、ロッド進入体積分のシリンダ内容積変化を補償できる。
【0036】
液溜室L4は、チューブ部材Tにおけるインナーチューブ8内に形成されており、上記したように、シリンダ1の下部に形成される給排口10を介してシリンダ1内の中間室L3と常に連通する。そして、シリンダ内容積が拡大する伸長作動時には、この拡大分の液体が液溜室L4から中間室L3に移動するので液溜室L4の液面L0が低くなり、反対に、シリンダ内容積が縮小される圧縮作動時には、この圧縮分の液体が中間室L3から液溜室L4に移動するので液溜室L4の液面L0が高くなる。本実施の形態において、液溜室L4の液面L0は、最も低い最伸長時においても、オイルロックケース3cの上端より高くなるように設定されており、オイルロックケース3cの内側を常に液体で満たすことができるようになっている。
【0037】
ダンパDの外側で、液溜室L4の液面L0を介して上側に形成される気室Gには、気体が圧縮されながら封入されている。気室Gの容積は、チューブ部材Tの伸縮に伴い拡大したり縮小したりし、気室G内の圧縮された気体がエアばねとして機能して、圧縮量に応じた反力を発揮できるようになっている。また、本実施の形態においては、フロントフォークFがエアサスペンション式とされており、コイルばねからなる懸架ばねを廃して、エアばね(圧縮された気体)の反力のみで車体を弾性支持できるようになっている。このようにエアばねで車体を支持するため、気室G内の圧力が最も低くなる最伸長時においても、気室G内の圧力が高圧になるように設定されている。このため、フロントフォークFの最伸長時においてもエアばねが反力を発揮して、当該エアばねによる荷重がチューブ部材Tを伸長させる方向にかかる。
【0038】
そこで、本実施の形態においては、最伸長時においてエアばねによる反力を相殺する反力を発揮するバランスばねS2を設けている。つまり、最伸長時においてバランスばねS2は、チューブ部材Tに圧縮方向に荷重をかけて、エアばねにより伸長方向にかかる荷重を打ち消すことで、エアばねとバランスばねS2の合成のばね特性を、コイルばねからなる懸架ばねの特性に近づけている。フロントフォークFが伸縮作動するストローク範囲において、最伸長状態をストロークの基準位置とすると、バランスばねS2は、ストロークの前半(基準位置〜略中央)で反力を発揮し、チューブ部材Tに圧縮方向に荷重をかけることができる。
【0039】
オイルロックケース3cとともにオイルロック機構Mを構成するオイルロックピース20は、環状に形成されてロッド2の外周に取り付けられており、チューブ部材Tにおけるインナーチューブ8との間に絞り流路Wを形成する。絞り流路Wは、当該絞り流路Wを通過してオイルロックピース20の上下に向かう液体の流れに抵抗を与えるので、ストローク位置に依存した位置依存の二次減衰力を得ることができる。つまり、本実施の形態において、オイルロックピース20は、本発明において、ストローク位置に依存する二次減衰力を得るための絞り部材を構成する。このように、オイルロック機構Mを構成するオイルロックピース20が絞り部材としての機能を兼ねているので、部品数を削減できるが、オイルロックピース20と絞り部材を別体として設けるとしてもよい。
【0040】
本実施の形態において、オイルロックピース20をロッド2に取り付けるため、
図2に示すように、ロッド2の外周に周方向に沿って形成される環状溝に嵌るリング23と、このリング23に引っ掛かる環状の引掛部材24と、この引掛部材24の下部内周に螺合されるキャップ状の保持部材25とが設けられている。この保持部材25は、環状に形成されて内側にロッド2が挿通される環状の頂部25aと、この頂部25aの外周部から下側に延びる筒状の筒部25bとを備えており、筒部25bの上端部の外径が下側の外径よりも大きく形成されて、これらの境界に環状の段差面25cが形成されている。筒部25bの下端部外周には、ストッパ26が設けられており、オイルロックピース20は、筒部25bの外周で、段差面25cとストッパ26との間に設けられている。
【0041】
オイルロックピース20の内径は、筒部25bにおける段差面25cよりも下側の外径よりも大きく、段差面25cの外径及びストッパ26の外径よりも小さく形成されており、オイルロックピース20の軸方向長さは、段差面25cからストッパ26の上端までの距離よりも小さくなっている。このため、オイルロックピース20と筒部25bとの間に内周通路27が形成されるとともに、オイルロックピース20は、段差面25cとストッパ26との間で軸方向に移動できる。そして、オイルロックピース20は、段差面25cに当接すると内周通路27を閉じるが、ストッパ26に当接しても内周通路27を閉じないようになっており、オイルロックピース20が段差面25cに離着座することで、内周通路27を開閉する。
【0042】
上記構成によれば、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに挿入されると、オイルロックピース20がオイルロックケース3c内から外に向かう液体の流れの抵抗となり、圧縮作動を抑制する減衰力を発生する。さらに、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに嵌入されると、内周通路27が閉じられてオイルロックピース20の内側を液体が移動できず、オイルロックピース20の外側も液体が移動できなくなるので、オイルロックケース3cの液体がオイルロックされて圧縮作動が規制され、底付きを防止できる。当該最圧縮状態から伸長作動が開始されると、オイルロックピース20がストッパ26に当接するまでの間、保持部材25がオイルロックピース20に対して上側に移動するので、オイルロックピース20が段差面25cから離座して内周通路27が開き、オイルロックが解除される。
【0043】
また、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに嵌入されたとき、筒部25bの内側にロッドガイド3の内周部分3a1が挿入されて、オイルロックピース20を保持する保持部材25と軸受30とを軸方向にラップさせることができる。このため、絞り部材を構成するオイルロックピース20の位置を下げ、位置依存の二次減衰力を発生するストローク位置を早くすることができる。
【0044】
また、オイルロックピース20が絞り部材として機能し、オイルロックピース20とインナーチューブ8との間を絞り流路Wとする都合上、オイルロックピース20の外径は、上記絞り流路Wを移動する液体の流れに抵抗を与えることができる程度に大きく設定され、これに伴いオイルロックケース3cの外径も大きくなる。このように、オイルロックケース3cの外径が大きくなり、シリンダ1の外径よりも大きくなると、オイルロックケース3cとインナーチューブ8との間に形成される流路(以下、筒状流路11という)の流路面積がシリンダ1とインナーチューブ8との間の流路面積よりも狭くなる。当該構成によれば、液溜室L4の液体中に混入した気泡が筒状流路11を通り難くなるので、オイルロックピース20が液面L0に突入した際に、このオイルロックピース20で液溜室L4を撹拌して液体が泡立ったとしても、オイルロックケース3cよりも下側で気泡の混入を少なくし、給排口10から密度の高い液体を吸い込むことができる。
【0045】
本実施の形態において、筒状流路11の流路面積は、
給排口10の面積(孔1aの開口面積の合計)の一から三倍の範囲で設定されているので、気泡がオイルロックケース3cよりも下側に移動することを抑制する効果を発揮しつつ、筒状流路11を絞り過ぎることがなく、ダンパDの発生する減衰力に影響を与えないようになっている。なお、筒状流路11の流路面積と
給排口10の面積の比率は、上記の限りではなく、適宜変更することが可能である。
【0046】
次に、本実施の形態にかかるフロントフォークFの作動について説明する。
【0047】
最伸長状態からオイルロックピース20が液溜室L4の液面L0に接触するまでのストローク範囲では、フロントフォークFが伸縮しても、絞り部材を構成するオイルロックピース20が液溜室L4の液面L0よりも上側を上下するのみであり、ダンパDの速度依存の減衰力のみが生じる。
【0048】
つづいて、オイルロックピース20が液溜室L4内に挿入されるが、オイルロックケース3cに達していないストローク範囲では、フロントフォークFが伸縮すると、オイルロックピース20により液溜室L4中に形成される絞り流路Wを液体が移動し、オイルロックピース20が液溜室L4内を上下に移動する液体の抵抗となるので、ダンパDの速度依存の減衰力に、オイルロックピース20の位置依存の二次減衰力が付加される。
【0049】
つづいて、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに達した後のストローク範囲では、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに挿入されて、オイルロックケース3c内外を移動する液体の流れに抵抗を与える。当該抵抗は、絞り流路Wによる抵抗よりも大きくなることから、ダンパDの速度依存の減衰力にオイルロックピース20によって付加される二次減衰力が大きくなり、フロントフォークFの最圧縮時の衝撃を緩和する。
【0050】
最圧縮状態では、オイルロックピース20がオイルロックケース3cに嵌入し、オイルロックピース20の内側の内周通路27が閉じるので、オイルロックケース3c内の液体がオイルロックされる。そして、この最圧縮状態から伸長作動が開始されると、オイルロックピース20が段差面25cから離れてオイルロックが解除される。
【0051】
次に、本実施の形態にかかるフロントフォークFの作用効果について説明する。
【0052】
シリンダ1の上側開口部に設けられるロッドガイド3は、環状に形成されて内側にロッド2が挿通されるとともに内側にロッド2の外周面に摺接する環状の軸受30が嵌合される支持部3aを備え、当該支持部3aにおいて、軸受30を支える内周部分3a1が上側に突出し、その外周に環状の溝3a2が形成されている。また、オイルロックピース20を外周に保持してロッド2の外周に取り付けられる保持部材25は、キャップ状に形成されており、上記保持部材25の内側に上記ロッドガイド3の支持部3aの内周部分3a1を挿入可能である。
【0053】
上記構成によれば、軸受30と保持部材25とを軸方向にラップさせることができるので、オイルロックピース20の位置を下げて、このオイルロックピース20による位置依存の減衰力が付加されるストローク位置を早める(基準位置側にずらす)ことができる。
【0054】
なお、液面L0の上下によっても、位置依存の減衰力が付加される位置を変更できるが、所望のばね特性を得るために気室Gの圧縮比が決められ、当該圧縮比に応じて液面L0が設定されている。つまり、エアサスペンション式のフロントフォークにおいては、位置依存の減衰力を付加するストローク位置を調整するために変更できる液面調整幅が小さいので、液面位置の変更による上記ストローク位置の調整が困難である。そこで、上記構成とすることで、液面位置を変更することなく、位置依存の減衰力が付加されるストローク位置を早めることができる。なお、保持部材25やロッドガイド3の構成は、上記の限りではなく、適宜変更することが可能である。
【0055】
また、本実施の形態において、オイルロックケース3cとチューブ部材Tとの間に形成される筒状流路11の流路面積が、給排口10の面積の一から三倍に設定されている。
【0056】
上記構成によれば、オイルロックケース3cよりも下側に気泡が移動することを抑制しつつ、筒状流路11を絞り過ぎてダンパDの発生する減衰力に影響を及ぼすことを防ぐことができる。なお、筒状流路11の流路面積と給排口10の面積の面積比率は、上記の限りではなく、適宜変更することが可能である。
【0057】
また、本実施の形態において、ダンパDは、液溜室L4とシリンダ1内とを連通しシリンダ1に出入りするロッド出没体積分の液体が通る給排口10を備えており、オイルロックケース3cの外径が上記シリンダ1の外径よりも大きく形成されている。
【0058】
上記構成によれば、オイルロックケース3cよりも下側に気泡が移動することを抑制できるので、ダンパDが気泡の混入の少ない液体を
給排口10から吸い込むことができる。なお、本実施の形態において、本発明に係る絞り部材がオイルロックピース20を備え、当該オイルロックピース20の外周に絞り流路Wを形成する都合上、オイルロックピース20の大径化に伴いオイルロックケース3cの外径が大きくなるので、このことを利用して、オイルロックケース3cの外径をシリンダ1の外径よりも大きくすることが容易に可能となる。
【0059】
また、本実施の形態において、絞り部材は、環状のオイルロックピース20を備え、当該オイルロックピース20とチューブ部材Tとの間に絞り流路Wを形成しており、シリンダ1の上側には、最圧縮時に上記オイルロックピース20が嵌入する筒状のオイルロックケース3cが起立する。
【0060】
上記構成によれば、オイルロックピース20を絞り部材として機能させているので、絞り部材とオイルロックピースを別体として形成する場合と比較して部品数を削減できる。なお、絞り部材がオイルロックピース20ではなく、位置依存の二次減衰力を得るためだけに設けられる部材としてもよい。この場合、例えば、
図3に示すように、ロッド2の外周に設けた絞り部材28をキャップ状に形成して、シリンダ1の上側開口部に設けたロッドガイド3とラップさせることができるようにしておけば、絞り部材28の位置を一層下げることが可能になる。
【0061】
また、本実施の形態において、フロントフォークFは、車体と車輪との間に介装されるテレスコピック型のチューブ部材Tと、このチューブ部材T内に設けられるダンパDと、上記チューブ部材Tと上記ダンパDとの間に形成されて液体が貯留される液溜室L4と、この液溜室L4の液面L0を介して上側に形成されて圧縮された気体が封入される気室Gと、上記液溜室L4に出入りするオイルロックピース(絞り部材)20と、このオイルロックピース20を通過して上下に移動する液体の流れに抵抗を与える絞り流路Wを備えており、上記圧縮された気体の反力を利用して車体を弾性支持するエアサスペンション式のフロントフォークである。
【0062】
そして、上記ダンパDは、車輪側に連結されるシリンダ1と、車体側に連結されて上記シリンダ1に出入りするロッド2とを備えて正立型とされており、上記オイルロックピース20は、上記シリンダ1から突出する上記ロッド2の外周に取り付けられている。
【0063】
上記構成によれば、フロントフォークFがエアサスペンション式となっており、車体を弾性支持する機能を維持しつつ、コイルばねからなる懸架ばねを廃することができるので、正立型のダンパDを備えていたとしても、絞り部材を構成するオイルロックピース20の位置がコイルばねからなる懸架ばねによって限定されないので、シリンダ1とチューブ部材Tとの間隔によらず低い位置に絞り部材(オイルロックピース20)を設けて位置依存の減衰力を得ることが可能となる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。