(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を備えた車両11を示す概略図である。
図1に示すように、車両11には、動力源としてモータジェネレータ(電動モータ)12が設けられている。モータジェネレータ12には、デファレンシャル機構13および駆動軸14を介して駆動輪15が連結されている。また、モータジェネレータ12には、インバータ16を介してバッテリ(蓄電デバイス)17が接続されている。
【0010】
バッテリ17とインバータ16とは、並列に設けられた2つの通電経路20,30を介して接続されている。第1通電経路20は、車体中心線CLよりも右側(一方側)の車体を構成する車体右側部(第1車体側部)21に設けられている。一方、第2通電経路30は、車体中心線CLよりも左側(他方側)の車体を構成する車体左側部(第2車体側部)31に設けられている。車体右側部21に配設される第1通電経路20には、接続状態と切断状態とに切り替えられる第1リレーユニット(第1開閉器)22が設けられている。また、第1通電経路20は、正極側と負極側との通電ライン20a,20bによって構成されており、第1リレーユニット22は、通電ライン20aに設けられるリレー22aと、通電ライン20bに設けられるリレー22bと、によって構成されている。同様に、車体左側部31に配設される第2通電経路30には、接続状態と切断状態とに切り替えられる第2リレーユニット(第2開閉器)32が設けられている。また、第2通電経路30は、正極側と負極側との通電ライン30a,30bによって構成されており、第2リレーユニット32は、通電ライン30aに設けられるリレー32aと、通電ライン30bに設けられるリレー32bと、によって構成されている。
【0011】
図1に示すように、車両用制御装置10は、第1および第2リレーユニット22,32を制御するため、CPUやメモリ等によって構成される制御ユニット40を有している。この制御ユニット40には、車両前方を撮像するカメラユニットC1、車両右方を撮像するカメラユニットC2、車両左方を撮像するカメラユニットC3、車両後方を撮像するカメラユニットC4が接続されている。また、制御ユニット40には、各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ41、ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角センサ42、車両11の鉛直軸まわりの回転角速度つまりヨーレートを検出するヨーレートセンサ43等が接続されている。
【0012】
続いて、制御ユニット40の機能について詳細に説明する。
図2は制御ユニット40が有する機能の一部を示すブロック図である。
図2に示すように、制御ユニット40は、衝突時における車両11の回転挙動を予測する車両挙動予測部50と、予測された回転挙動に基づきリレーユニット22,32を制御するリレー制御部(開閉器制御部)51と、を有している。車両挙動予測部50は、画像処理部52、衝突予測部53、ヨーモーメント算出部54、慣性モーメント算出部55および回転予測部56を備えている。このような構成の制御ユニット40は、後述するように、位置算出部、速度差算出部、接触部位予測部、回転挙動予測部および開閉器制御部として機能している。
【0013】
カメラユニットC1〜C4は、CCDやCMOS等のイメージセンサを内蔵しており、所定周期で撮像した画像データを画像処理部52に送信する。画像処理部52は、カメラユニットC1〜C4から取得した車両周囲の画像データを処理し、車両11の周囲に存在する衝突対象物Xつまり他の車両や障害物等を検出する。また、画像処理部52は、位置算出部として機能する機能部52aと、速度差算出部として機能する機能部52bとを有している。機能部52a,52bを備える画像処理部52は、所定周期毎に画像データから車両11と衝突対象物Xとの相対的な座標等の位置情報を算出し、位置情報の推移に基づいて車両11と衝突対象物Xとの移動速度差を算出する。さらに、画像処理部52は、車両11と衝突対象物Xとの相対的な位置情報の推移に基づいて、衝突対象物Xに対する車両11の相対的な移動方向を算出する。そして、衝突予測部53は、画像処理部52から取得した位置情報、移動速度差、移動方向等に基づいて、所定時間内に車両11と衝突対象物Xとが衝突するか否かを判定する。なお、
図3に示すように、衝突予測部53には操舵角センサ42から操舵角が送信されており、衝突予測部53は車両11の移動方向を予測した上で、車両11と衝突対象物Xとが衝突するか否かを判定している。
【0014】
ここで、
図3(a)〜(c)は車両11と衝突対象物Xとの接近状況の例を示すイメージ図である。
図3(a)〜(c)においては、矢印の長さによって車両11と衝突対象物Xとの移動速度差の大きさを表し、矢印の向きによって衝突対象物Xに対する車両11の相対的な移動方向を表している。なお、
図3(a)〜(c)に破線で示した車両11は、所定時間後における車両11の到達位置を示している。例えば、
図3(a)に示すように、車両11の移動方向に衝突対象物Xが存在するものの、車両11と衝突対象物Xとの距離に比べて移動速度差が小さい場合には、所定時間後に車両11が衝突対象物Xまで到達しないことから、衝突予測部53によって衝突の可能性が無いと判定される。また、
図3(b)に示すように、車両11の移動方向に衝突対象物Xが存在しており、車両11と衝突対象物Xとの距離に比べて移動速度差が大きい場合には、所定時間後に車両11が衝突対象物Xまで到達することから、衝突予測部53によって衝突の可能性が有ると判定される。また、
図3(c)に示すように、車両11と衝突対象物Xとの距離に比べて移動速度差が大きいものの、ステアリング操作に伴って車両11の移動方向から衝突対象物Xが外れる場合には、衝突予測部53によって衝突の可能性が無いと判定される。
【0015】
前述のように、衝突予測部53によって衝突の可能性が有ると判定されると、
図2に示すように、その判定結果が衝突予測部53からヨーモーメント算出部54に送信される。ヨーモーメント算出部54は、衝突時に車両11に作用するヨーモーメントYm、つまり衝突時に車両11に作用する鉛直軸まわりのモーメントを算出する。続いて、回転予測部56は、ヨーモーメント算出部54から送信されるヨーモーメントYmに基づいて、衝突時における車両11の回転挙動を予測する。ここで、車両11の回転挙動の予測精度を高めるため、車両挙動予測部50には慣性モーメント算出部55が設けられており、慣性モーメント算出部55によって車両11の見かけの慣性モーメントImが算出される。この車両11の見かけの慣性モーメントImとは、車両11の回転し易さを示す指標であり、走行路面の摩擦抵抗や車両11の旋回状況等に応じて変化する指標である。このような慣性モーメントImと前述したヨーモーメントYmとに基づいて、回転予測部56は衝突時における車両11の回転挙動を予測する。なお、車両11の回転挙動とは、車両11が車両重心Cの鉛直軸まわりに回転する際の、回転角、回転角速度、回転角加速度、回転方向等を意味している。
【0016】
以下、ヨーモーメント算出部54によるヨーモーメントYmの算出手順について詳細に説明し、回転予測部56による回転挙動の予測状況について説明する。まず、接触部位予測部として機能するヨーモーメント算出部54は、車両11と衝突対象物Xとの接触位置、つまり衝突対象物Xに対する車両11の接触部位αを予測する。ここで、
図4および
図5は車両11と衝突対象物Xとの衝突状況を示すイメージ図である。
図4(a)に示すように、車両11の進行方向に衝突対象物Xが存在しており、衝突対象物Xに対して衝突の可能性が有ると判定された場合には、ヨーモーメント算出部54によって、衝突対象物Xに対する車両11の接触部位αが予測される。
図4(a)に示すように、ヨーモーメント算出部54は、接触部位αの位置を予測する際に、画像データから衝突対象物Xの外形形状を解析し、車両11に対して最初に接触する衝突対象物Xの凸部Xaを特定する。そして、ヨーモーメント算出部54は、衝突対象物Xの凸部Xaに対向する車両11の外縁位置を、車両11の接触部位αとして予測する。なお、凸部Xaと車両11とが対向する方向とは、位置情報の推移に基づき算出される車両11と衝突対象物Xとの相対的な移動方向である。このように、衝突対象物Xに対する車両11の接触部位αは、車両11と衝突対象物Xとの相対的な位置情報の推移に基づき予測される。なお、車両11に対する衝突対象物Xの対向範囲Xb内であれば、車両11の他の外縁位置を接触部位αとして予測しても良い。
【0017】
このように車両11の接触部位αが予測されると、続いて車両11の車両重心Cと接触部位αとのオフセット量βが算出される。つまり、衝突対象物Xの相対的な移動方向に伸びる基準線L1が算出され、車両重心Cを通過して基準線L1に平行となる基準線L2が算出され、これら基準線L1と基準線L2とのオフセット量βが算出される。次いで、車両11と衝突対象物Xとの移動速度差に基づいて、衝突時に車両11に作用する推力Fが算出される。なお、衝突時に作用する推力Fの大きさは、車両11の質量、衝突対象物Xの質量、衝突対象物Xが固定物である場合、衝突対象物Xが可動物である場合等によって変化するため、これらの情報に基づいて推力Fを補正しても良い。また、衝突時に作用する推力Fの大きさは、衝突時点の移動速度差によって決定されるため、衝突前に算出された移動速度差から衝突時点の移動速度差を予測し、予測された移動速度差を用いて推力Fを算出しても良い。
【0018】
前述したように、オフセット量βおよび推力Fが算出されると、以下の式(1)に基づいて、衝突時に車両11に作用するヨーモーメントYmが算出される。すなわち、
図4(a)に示すように、車両11の左前部に対して衝突対象物Xの衝突が予測される場合には、
図4(b)に示すように、衝突時に車両11に作用するヨーモーメントとして、車両11を左方向に回転させるヨーモーメントYmが算出される。一方、
図5(a)に示すように、車両11の右前部に対して衝突対象物Xの衝突が予測される場合には、
図5(b)に示すように、衝突時に車両11に作用するヨーモーメントとして、車両11を右方向に回転させるヨーモーメントYmが算出される。
Ym=F×β ・・・(1)
【0019】
このようにヨーモーメントYmが算出されると、回転挙動予測部として機能する回転予測部56により、ヨーモーメントYmの大きさから車両11の回転挙動が予測される。ところで、車両衝突に伴う車両11の回転挙動は、ヨーモーメントYmの大きさによって予測可能であるものの、前述したように、回転挙動の予測精度を高めるためには、車両11の見かけの慣性モーメントImによって回転挙動を補正することが望ましい。ここで、
図6(a)〜(c)は、見かけの慣性モーメントImが回転挙動に与える影響を示すイメージ図である。
図6(a)には摩擦抵抗の大きな走行路面での衝突状況が示され、
図6(b)には摩擦抵抗が中程度の走行路面における衝突状況が示され、
図6(c)には摩擦抵抗の小さな走行路面での衝突状況が示されている。なお、
図6(a)〜(c)においては、車両11に対して同じ大きさのヨーモーメントYmが作用している。
【0020】
図6(a)〜(c)に示すように、衝突時に同じ大きさのヨーモーメントYmが作用する場合であっても、走行路面の摩擦抵抗に応じて、車両11の回転角や回転角速度等の回転挙動は変化することになる。すなわち、
図6(a)に示すように、走行路面の摩擦抵抗が大きい場合には、衝突時に車両11が回転し難い状況、つまり慣性モーメントImが大きい状況であることから、車両11の回転挙動が小さく現れることになる。一方、
図6(c)に示すように、走行路面の摩擦抵抗が小さい場合には、衝突時に車両11が回転し易い状況、つまり慣性モーメントImが小さい状況であることから、車両11の回転挙動が大きく現れることになる。このため、回転挙動の大きさを示す指標Mは、慣性モーメントImが大きい程に小さくなり、慣性モーメントImが小さい程に大きくなるように、以下の式(2)に基づき算出される。すなわち、走行路面の摩擦抵抗が大きいほど、車両11の回転挙動を表す指標Mは小さな値に補正され、走行路面の摩擦抵抗が小さいほど、車両11の回転挙動を表す指標Mは大きな値に補正される。なお、走行路面の摩擦抵抗は、例えば、各車輪に伝達される駆動トルクと各車輪のスリップ状況との関係に基づいて推定される。
M=Ym/Im ・・・(2)
【0021】
続いて、予測された回転挙動に応じて第1および第2リレーユニット22,32を切替制御するリレー制御について説明する。
図7はリレー制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。なお、リレー制御が実行される走行時において、第1リレーユニット22と第2リレーユニット32とは、共に接続状態に制御されている。
図7に示すように、ステップS1では、カメラユニットC1〜C4から送信される画像データが処理され、ステップS2では、車両11の周囲に存在する衝突対象物Xつまり他の車両等が解析される。次いで、ステップS3では、車両11と衝突対象物Xとの相対的な位置情報や移動速度差等に基づき、車両11に対する衝突対象物Xの衝突の可能性について判定される。ステップS3において、衝突の可能性が有ると判定された場合には、ステップS4に進み、衝突時のヨーモーメントYmや車両11の慣性モーメントImが算出され、モーメントYm,Imに基づき衝突時の回転挙動を示す指標Mが算出される。
【0022】
続いて、ステップS5では、衝突時の回転挙動を示す指標Mが、閾値Mo以上であるか否かが判定される。ステップS5において、衝突時の回転挙動を示す指標Mが閾値Mo未満であると判定された場合、つまり衝突時の回転挙動が小さいと判定された場合には、ステップS6に進み、第1および第2リレーユニット22,32が接続状態に制御される。一方、ステップS5において、指標Mが閾値Mo以上であると判定された場合、つまり衝突時の回転挙動が大きいと判定された場合には、ステップS7に進み、衝突による回転挙動が左回りであるか否かが判定される。ステップS7において、回転挙動が左回り、つまり車両前部を左方向に移動させる左回りであると判定された場合には、ステップS8に進み、第1リレーユニット22が切断状態に制御され、第2リレーユニット32が接続状態に制御される。一方、ステップS7において、回転挙動が右回り、つまり車両前部を右方向に移動させる右回りであると判定された場合には、ステップS9に進み、第1リレーユニット22が接続状態に制御され、第2リレーユニット32が切断状態に制御される。
【0023】
ここで、
図8および
図9は車両衝突時における第1および第2リレーユニット22,32の作動状態を示す図である。また、
図10は車両11が左方向に大きく回転する衝突状況の一例を示す図である。
図8に示すように、直進する車両11の左前部に衝突対象物Xが衝突し、車両11が左方向に小さく回転する場合には、回転挙動を示す指標Mが閾値Moを下回る衝突状況となる。このような衝突時には、前述のステップS6に進むことから、第1リレーユニット22と第2リレーユニット32との双方が接続状態に制御される。一方、
図9に示すように、直進する車両11の左前部に衝突対象物Xが衝突し、車両11が左方向に大きく回転する場合においては、回転挙動を示す指標Mが閾値Moを上回る衝突状況となる。このような衝突時には、前述のステップS8に進むことから、第1リレーユニット22が切断状態に制御され、第2リレーユニット32が接続状態に制御される。このように、車両11が左方向に大きく回転する場合には、
図10に示すように、車体右側部21から他の先行車両V1等に衝突する状況が考えられる。このため、第1リレーユニット22を切断することにより、想定された衝突箇所側に配設される第1通電経路20の通電を遮断することができ、車両衝突時の安全性を向上させることが可能となる。しかも、第2リレーユニット32は接続状態に保持されることから、第2通電経路30を介してバッテリ17とインバータ16とを接続することができ、衝突後における最低限の走行性能を確保することが可能となる。
【0024】
図11は車両衝突時における第1および第2リレーユニット22,32の作動状態を示す図である。また、
図12は車両11が右方向に大きく回転する衝突状況の一例を示す図である。
図11に示すように、直進する車両11の右前部に衝突対象物Xが衝突し、車両11が右方向に大きく回転する場合においては、回転挙動を示す指標Mが閾値Moを上回る衝突状況となる。このような衝突時には、前述のステップS9に進むことから、第2リレーユニット32が切断状態に制御され、第1リレーユニット22が接続状態に制御される。このように、車両11が右方向に大きく回転する場合には、
図12に示すように、車体左側部31から他の先行車両V1等に衝突する状況が考えられる。このため、第2リレーユニット32を切断することにより、想定された衝突箇所側に配設される第2通電経路30の通電を遮断することができ、車両衝突時の安全性を向上させることが可能となる。しかも、第1リレーユニット22は接続状態に保持されることから、第1通電経路20を介してバッテリ17とインバータ16とを接続することができ、衝突後における最低限の走行性能を確保することが可能となる。
【0025】
前述の説明では、回転挙動を示す指標Mが閾値Moを上回る場合に、回転方向に応じて第1リレーユニット22と第2リレーユニット32との一方を切断状態に制御しているが、これに限られることはない。例えば、回転挙動を示す指標Mが閾値Moを上回る場合に、第1リレーユニット22と第2リレーユニット32との双方を切断状態に制御しても良い。この場合には、車体各部に設置される加速度センサの検出信号等に基づき、車体右側部21と車体左側部31との衝突状況が判定され、再走行に備えて未衝突側のリレーユニット22,32が接続状態に切り替えられる。また、前述の説明では、衝突による回転挙動が予測された時点で、第1リレーユニット22と第2リレーユニット32とを制御しているが、これに限られることはなく、車体各部に設置される加速度センサの検出信号等に基づき、衝突発生時点で第1リレーユニット22と第2リレーユニット32とを制御しても良い。また、衝突発生までの時間であるTTC(Time To Collision)に基づいて、第1リレーユニット22と第2リレーユニット32との制御を開始しても良い。なお、TTCとは、車両11と衝突対象物Xとの距離を、車両11と衝突対象物Xとの移動速度差で除した値である。
【0026】
前述の説明では、走行路面の摩擦抵抗によって衝突時の回転挙動が変化することを説明したが、これに限られることはなく、衝突時の旋回状況つまりヨーレートによっても衝突時の回転挙動は変化することになる。ここで、
図13(a)〜(c)は、見かけの慣性モーメントImが回転挙動に与える影響を示すイメージ図である。
図13(a)には右旋回時に衝突した状況が示され、
図13(b)には直進時に衝突した状況が示され、
図13(c)には左旋回時に衝突した状況が示されている。なお、
図13(a)〜(c)においては、車両11に対して同じ大きさのヨーモーメントYmが作用しており、走行路面の摩擦抵抗についても同じ値となっている。
【0027】
図13(a)〜(c)に示すように、衝突時に同じ大きさのヨーモーメントYmが作用する場合であっても、車両11の旋回状況に応じて慣性モーメントImが変化し、車両11の回転挙動が変化することになる。例えば、
図13(a)に示すように、車両11の左前部に対して衝突対象物Xが衝突する場合には、車両11を左方向に回転させるヨーモーメントYmが衝突時に発生する。このような衝突時において、車両11が右方向に旋回していた場合には、旋回走行時に発生するヨーモーメントYm1によって、衝突時に発生するヨーモーメントYmが打ち消されることから、車両11の回転挙動が小さく現れる。一方、
図13(c)に示すように、車両11が左方向に旋回していた場合には、旋回走行時に発生するヨーモーメントYm1によって、衝突時に発生するヨーモーメントYmが助長されることから、車両11の回転挙動が大きく現れる。このように、回転挙動を示す指標Mの算出に用いられる慣性モーメントImは、走行路面の摩擦抵抗によって変化するだけでなく、車両11の旋回状況によっても変化している。このため、操舵角やヨーレート等に基づいて車両11の旋回状況を判定し、回転挙動を示す指標Mを旋回状況によって補正しても良い。
【0028】
また、前述の説明では、動力源として1つのモータジェネレータ12を備えた車両11に対して本発明を適用しているが、これに限られることはなく、動力源として複数のモータジェネレータを備えた車両に対して本発明を適用しても良い。ここで、
図14は本発明の他の実施の形態である車両用制御装置60を備えた車両61を示す概略図である。なお、
図14において、
図1に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図14に示すように、車両61には、動力源である電動モータとして、前輪側の第1モータジェネレータ(第1電動モータ)12fと、後輪側の第2モータジェネレータ(第2電動モータ)12rとが設けられている。第1モータジェネレータ12fには、デファレンシャル機構13fおよび駆動軸14fを介して前輪15fが連結されており、第2モータジェネレータ12rには、デファレンシャル機構13rおよび駆動軸14rを介して後輪15rが連結されている。また、第1モータジェネレータ12fには、第1インバータ16fを介してバッテリ17が接続されており、第2モータジェネレータ12rには、第2インバータ16rを介してバッテリ17が接続されている。第1インバータ16fとバッテリ17とは、車体右側部21に設けられた第1通電経路20を介して接続されており、第2インバータ16rとバッテリ17とは、車体左側部31に設けられた第2通電経路30を介して接続されている。また、第1通電経路20には第1リレーユニット22が設けられており、第2通電経路30には第2リレーユニット32が設けられている。このように、複数のモータジェネレータ12f,12rを備えた車両61においても、衝突時の回転挙動に基づきリレーユニット22,32を制御することにより、前述した車両11と同様に、衝突時の安全性を向上させることが可能となる。
【0030】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、衝突対象物Xが車両11の前方から衝突する衝突パターンを例示しているが、これに限られることはない。例えば、衝突対象物Xが車両11の側方から衝突する衝突パターンや、衝突対象物Xが車両11の後方から衝突する衝突パターンであっても、本発明を有効に適用することが可能である。また、前述の説明では、単眼カメラやステレオカメラ等のカメラユニットC1〜C4を使用することで車両周囲の衝突対象物Xを検出しているが、これに限られることはない。例えば、ミリ波レーダや赤外線レーザ等を使用することで車両周囲の衝突対象物Xを検出しても良い。さらに、カメラユニット、ミリ波レーダ、赤外線レーザ等を、組み合わせて使用することで車両周囲の衝突対象物Xを検出しても良い。なお、前述の説明では、車両周囲の衝突対象物Xを検出するため、車両11に対して4つのカメラユニットC1〜C4を搭載しているが、これに限られることはなく、例えば、車両11に対して1つのカメラユニットを搭載しても良い。
【0031】
前述の説明では、電気自動車に対して本発明の車両用制御装置10,60を適用しているが、これに限られることはなく、ハイブリッド車両に対して本発明の車両用制御装置10,60を適用しても良く、燃料電池車に対して本発明の車両用制御装置10,60を適用しても良い。また、図示する場合には、第1通電経路20および第2通電経路30を車幅方向に離して設置しているが、これに限られることはなく、第1通電経路20と第2通電経路30とを車体中心線CLに近づけて設置しても良い。また、前述の説明では、2つの通電経路20,30を設けているが、これに限られることはなく、3つ以上の通電経路を設けても良い。
【0032】
また、前述の説明では、蓄電デバイスとしてバッテリ17を挙げているが、これに限られることはなく、蓄電デバイスとしてキャパシタを用いても良い。なお、前述の説明では、位置算出部、速度差算出部、接触部位予測部、回転挙動予測部および開閉器制御部を、1つの制御ユニット40に組み込んでいるが、これに限られることはない。例えば、位置算出部、速度差算出部、接触部位予測部、回転挙動予測部および開閉器制御部を、複数の制御ユニットに分けて組み込んでも良い。