(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用駆動装置としてのパワーユニット10を上方から示す概略図である。
図1に示すように、車両に搭載されるパワーユニット10は、エンジン11とこれに連結されるトランスミッション12とを有している。エンジン11を構成するシリンダブロック13にはジャーナルボア14が形成されており、ジャーナルボア14には図示しない軸受メタルを介してクランク軸15が回転自在に支持されている。なお、図示するエンジン11は、水平対向型の4気筒エンジンである。
【0010】
クランク軸15は、回転中心に設けられる複数のクランクジャーナルJ1〜J5と、クランクジャーナルJ1〜J5を連結する複数のクランクスローT1〜T4と、を有している。クランクスローT1〜T4は、回転中心から偏心するクランクピンP1〜P4と、クランクジャーナルJ1〜J5およびクランクピンP1〜P4を連結するクランクアーム20と、を有している。また、クランクピンP1〜P4には、コネクティングロッド21を介してピストン22が連結されている。さらに、クランク軸15の一端部には出力用フランジ23が設けられており、クランク軸15の他端部には補機駆動軸24が設けられている。なお、中央に配置される2つのクランクスローT2,T3には、クランクアーム20からクランクピンP2,P3の逆位相側に延びるバランスウェイト25が設けられている。また、補機駆動軸24にはクランクプーリ26が取り付けられており、クランクプーリ26にはクランクピンP1の逆位相側にウェイト27が設けられている。
【0011】
クランク軸15の出力用フランジ23には、トルクコンバータ30の外殻を構成するポンプシェル(ハウジング)31がドライブプレート32を介して連結されている。トルクコンバータ30は、ポンプシェル31に固定されるポンプインペラ33と、ポンプインペラ33に対向するタービンランナ34とを備えている。タービンランナ34にはタービンハブ35が連結されており、タービンハブ35にはタービン軸36が連結されている。また、ポンプシェル31には作動油(作動流体)が貯留されており、ポンプインペラ33からタービンランナ34には作動油を介してエンジントルクが伝達される。なお、タービン軸36には変速機構37が連結されており、ポンプシェル31にはチェーン機構38を介してオイルポンプ39が連結されている。また、ポンプシェル31は、軸受40を介してミッションケースに支持されている。
【0012】
滑り要素であるトルクコンバータ30には、ポンプシェル31とタービン軸36とを直結するロックアップクラッチ41が設けられている。ロックアップクラッチ41は、ポンプシェル31のフロントカバー42に対向するクラッチプレート43を有している。ポンプシェル31には、クラッチプレート43を境にアプライ室44とリリース室45とが区画される。アプライ室44に作動油を供給してリリース室45から作動油を排出することにより、アプライ室44とリリース室45とに差圧が発生し、クラッチプレート43はフロントカバー42に押し付けられる。これにより、ロックアップクラッチ41はフロントカバー42とタービン軸36とを直結する締結状態に切り替えられ、エンジントルクはフロントカバー42からクラッチプレート43を介してタービン軸36に伝達される。一方、リリース室45に作動油を供給してアプライ室44から作動油を排出することにより、クラッチプレート43がフロントカバー42から引き離される。これにより、ロックアップクラッチ41はフロントカバー42とタービン軸36とを切り離す解放状態に切り替えられ、エンジントルクはポンプインペラ33からタービンランナ34を介してタービン軸36に伝達される。
【0013】
また、
図1に示すように、ポンプシェル31の内側には、エアチャンバー群(気体封入部)50を構成するエアチャンバー51が設けられている。空気(気体)が封入されるエアチャンバー51は、ポンプシェル31に固定されるシリンダ52と、これに移動自在に収容されるピストン53と、を有している。シリンダ52とピストン53とによって区画される封入室54には、空気が封入されるとともにリターンスプリング55が収容されている。ここで、
図2は
図1のA−A線に沿ってエアチャンバー群50とクランク軸15との位置関係を概略的に示す図である。
図2に示すように、ポンプシェル31には複数のエアチャンバー51が周方向に並べて設けられており、これらのエアチャンバー51によってエアチャンバー群50が円弧状に構成されている。また、ポンプシェル31の内側に設置されるエアチャンバー群50は、トルクコンバータ30側に位置するクランクピンP4と同位相側に設置されている。このクランクピンP4と同位相側とは、基準線L1よりもクランクピンP4側を意味している。なお、基準線L1とは、クランク軸15の回転中心C1とクランクピンP4の軸中心C2とを結ぶ線L2に直交し、かつクランク軸15の回転中心C1を通過する線である。
【0014】
図3および
図4は、トルクコンバータ30および油圧制御系60の一例を示す図である。
図3にはロックアップクラッチ41の解放状態が示されており、
図4にはロックアップクラッチ41の締結状態が示されている。なお、
図3および
図4に示す白抜きの矢印は、作動油の流れ方向を示している。
図3および
図4に示すように、トルクコンバータ30の油圧制御系60には、オイルポンプ39、クラッチ圧制御弁61およびロックアップ制御弁62が設けられている。クラッチ圧制御弁61には、オイルポンプ39から吐出された作動油を案内する吐出油路63が接続されている。また、ロックアップ制御弁62には、クラッチ圧制御弁61から作動油が供給される供給油路64が接続されており、オイルパンに作動油を排出する排出油路65が接続されている。さらに、ロックアップ制御弁62には、ポンプシェル31内のアプライ室44に連通するアプライ油路66が接続されており、ポンプシェル31内のリリース室45に連通するリリース油路67が接続されている。このように、油圧制御系60を構成することにより、オイルポンプ39から吐出された作動油は、クラッチ圧制御弁61を介して所定圧力に調整された後に、ロックアップ制御弁62を介してアプライ室44やリリース室45に供給される。なお、クラッチ圧制御弁61やロックアップ制御弁62は、CPUやメモリ等によって構成される制御ユニット68からの電気信号に基づき制御されている。
【0015】
図3に示すように、ロックアップクラッチ41を解放する際には、油路切替弁であるロックアップ制御弁62が解放位置に切り替えられる。これにより、ロックアップ制御弁62を介して供給油路64とリリース油路67とが接続され、ロックアップ制御弁62を介して排出油路65とアプライ油路66とが接続される。このように、ロックアップ制御弁62を制御することにより、リリース室45に作動油が供給されてアプライ室44から作動油が排出されるため、ロックアップクラッチ41は解放状態に制御される。このロックアップクラッチ41の解放状態においては、アプライ室44内の作動油の圧力(以下、アプライ圧と記載する)が低下することから、ポンプシェル31内のエアチャンバー51は膨張状態に制御される。すなわち、エアチャンバー51のピストン53に作用する圧力が低下するため、リターンスプリング55によってピストン53が押し出され、エアチャンバー51は封入室54の容積を拡大する膨張状態となる。
【0016】
一方、
図4に示すように、ロックアップクラッチ41を締結する際には、油路切替弁であるロックアップ制御弁62が締結位置に切り替えられる。これにより、ロックアップ制御弁62を介して供給油路64とアプライ油路66とが接続され、ロックアップ制御弁62を介して排出油路65とリリース油路67とが接続される。このように、ロックアップ制御弁62を制御することにより、アプライ室44に作動油が供給されてリリース室45から作動油が排出されるため、アプライ室44とリリース室45とに差圧が発生し、ロックアップクラッチ41は締結状態に制御される。このロックアップクラッチ41の締結状態においては、アプライ室44内のアプライ圧が上昇することから、ポンプシェル31内のエアチャンバー51は圧縮状態に制御される。すなわち、エアチャンバー51のピストン53に作用する圧力が上昇するため、リターンスプリング55に抗してピストン53が押し込まれ、エアチャンバー51は封入室54の容積を縮小する圧縮状態となる。
【0017】
前述の説明では、ロックアップクラッチ41の締結に伴ってエアチャンバー51が圧縮状態に切り替えられているが、これに限られることはなく、任意のタイミングでエアチャンバー51を圧縮状態に切り替えることが可能である。この場合には、ロックアップクラッチ41を締結状態に切り替えるアプライ圧よりも、エアチャンバー51を圧縮状態に切り替えるアプライ圧が高く設定される。これにより、ロックアップクラッチ41の締結後であっても、クラッチ圧制御弁61によってアプライ圧を上昇させることにより、任意のタイミングでエアチャンバー51を圧縮状態に切り替えることが可能となる。なお、エアチャンバー51を圧縮状態に切り替えるために必要なアプライ圧は、ピストン53の受圧面積やリターンスプリング55のバネ力等によって調整される。
【0018】
続いて、トルクコンバータ30の回転バランスについて説明する。
図5(a)および(b)は、トルクコンバータ30のアプライ室44に対する作動油の充填状況を示すイメージ図である。
図5(a)にはエアチャンバー群50が膨張したときの充填状況が示され、
図5(b)にはエアチャンバー群50が圧縮されたときの充填状況が示されている。なお、
図5(a)および(b)においては、ポンプシェル31内に充填される作動油を薄墨で示している。また、
図6(a)〜(d)は、エアチャンバー群50を膨張させたときにトルクコンバータ30に作用する遠心力を示すイメージ図である。
図6(a)〜(d)には、回転するトルクコンバータ30が90°毎に示されている。
【0019】
図5(a)に示すように、エアチャンバー群50が膨張状態に制御されると、エアチャンバー群50の容積拡大に伴ってアプライ室44から作動油が排出され、エアチャンバー群50とは逆位相側に作動油が偏って貯留される。すなわち、エアチャンバー群50はクランクピンP4と同位相側に偏って配置されることから、作動油はクランクピンP4に対して逆位相側に偏ることになる。これにより、トルクコンバータ30の重心が回転中心に対してクランクピンP4の逆位相側にずれるため、
図6(a)〜(d)に矢印αで示すように、トルクコンバータ30の回転時にはクランクピンP4の逆位相側に遠心力が作用する。このように、トルクコンバータ30内のエアチャンバー群50が膨張すると、トルクコンバータ30の回転状態は重心が回転中心から外れるアンバランス状態となる。一方、
図5(b)に示すように、エアチャンバー群50が圧縮状態に制御されると、エアチャンバー群50の容積縮小に伴ってエアチャンバー群50側に作動油が補給され、ポンプシェル31内に作動油が満遍なく充填される。このように、トルクコンバータ30内のエアチャンバー群50が圧縮されると、トルクコンバータ30の回転状態は重心が回転中心にほぼ一致するバランス状態となる。
【0020】
以下、比較例としてのパワーユニット100が備えるクランク軸101の曲げ振動について説明した後に、本発明の一実施の形態であるパワーユニット10が備えるクランク軸15の曲げ振動について説明する。
図7は比較例としてのパワーユニット100が備えるクランク軸101の曲げ振動の発生状況を示す図である。
図8は本発明の一実施の形態であるパワーユニット10が備えるクランク軸15の曲げ振動の発生状況を示す図である。なお、
図7に示すパワーユニット100には、エアチャンバー群50を持たないトルクコンバータ102が設けられている。また、
図7に示すように、比較例のパワーユニット100に組み付けられるクランク軸101は、各クランクスローT1〜T4にバランスウェイト25を有している。なお、
図7において、
図1に記載される部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0021】
図7に示すように、クランク軸101が回転する際には、白抜きの矢印で示すように、クランクピンP1〜P4に対して、コネクティングロッド21およびピストン22の慣性力が作用する。図示するクランク軸101の回転角においては、クランク軸101の中央部が矢印A方向に付勢され、クランク軸101の両端部が矢印B方向に付勢されるため、クランク軸101は矢印A方向に凸の弓形に変形する。そして、更にクランク軸101が180°回転すると、クランク軸101の中央部が矢印B方向に付勢され、クランク軸101の両端部が矢印A方向に付勢されるため、クランク軸101は矢印B方向に凸の弓形に変形する。このようなクランク軸101の弓形変形が繰り返され、クランク軸101には曲げ振動が発生する。このクランク軸101の曲げ振動は、ジャーナルボア14内でクランクジャーナルJ1〜J5を変位させることから、クランクジャーナルJ1〜J5と軸受メタルとが接して異音を発生させる要因となっていた。特に、クランクジャーナルJ5には重量物であるトルクコンバータ30が連結されることから、異音を低減するためにはクランクジャーナルJ5の変位を抑えることが重要である。
【0022】
そこで、
図8に示すように、本発明の一実施の形態であるパワーユニット10は、トルクコンバータ30にエアチャンバー群50を取り付けている。前述したように、トルクコンバータ30のエアチャンバー群50を膨張させることにより、トルクコンバータ30の回転状態をアンバランス状態にすることができ、クランクピンP4の逆位相側にトルクコンバータ30から遠心力を発生させることが可能となる。すなわち、
図8に示すように、クランクピンP4の慣性力βを打ち消すように、トルクコンバータ30に遠心力αを発生させることが可能となる。これにより、クランクジャーナルJ5の変位を抑制することが可能となり、クランク軸15の曲げ振動を抑制することが可能となる。さらに、クランク軸15に連結されるクランクプーリ26には、クランクピンP1に作用する慣性力を打ち消すため、クランクピンP1の逆位相側にウェイト27が設けられている。これにより、クランクジャーナルJ1の変位を抑制することが可能となり、クランク軸15の曲げ振動を抑制することが可能となる。
【0023】
ここで、
図9(a)は比較例として示したクランク軸101が備えるクランクジャーナルJ5の中心移動軌跡を示すイメージ図であり、
図9(b)は実施例として示したクランク軸15が備えるクランクジャーナルJ5の中心移動軌跡を示すイメージ図である。なお、
図9(a)および(b)に示した吸気行程、圧縮行程、燃焼行程および排気行程は、クランクピンP4に連結されるピストン22の各行程を意味している。また、
図9(a)および(b)に示した「TDC」はクランクピンP4に連結されるピストン22の上死点を意味し、「BDC」はクランクピンP4に連結されるピストン22の下死点を意味している。
【0024】
図9(a)に示すように、比較例のクランク軸101においては、ピストン22の圧縮行程から燃焼行程にかけて、クランクジャーナルJ5が径方向に大きく横切る現象が発生している。特に、圧縮行程から燃焼行程に移行する際には、クランクピンP4に燃焼ガスの圧力が作用することから、クランクジャーナルJ5が軸受メタルに強く当たって異音を発生させる虞がある。これに対し、
図9(b)に示すように、実施例のクランク軸15においては、トルクコンバータ30の遠心力によってクランクジャーナルJ5の変位が抑えられるため、クランクジャーナルJ5が径方向に大きく横切る現象を抑制することが可能となる。特に、圧縮行程から燃焼行程にかけてクランクジャーナルJ5の横切り現象が抑制されるため、異音の発生を抑制することが可能となるのである。
【0025】
これまで説明したように、トルクコンバータ30に設けたエアチャンバー群50を膨張状態に制御することにより、トルクコンバータ30をアンバランス状態に切り替えてクランク軸15の曲げ振動を抑制している。しかしながら、曲げ振動の抑制効果が得られ難い領域においては、パワーユニット10の耐久性を向上させる観点から、エアチャンバー群50を圧縮状態に制御し、トルクコンバータ30をバランス状態に切り替えている。ここで、
図10は、エアチャンバー群50を膨張させたときの振動レベルの推移と、エアチャンバー群50を圧縮したときの振動レベルの推移とを示す線図である。なお、
図10には、エアチャンバー群50を膨張させたときの振動レベルが実線で示され、エアチャンバー群50を圧縮したときの振動レベルが破線で示されている。
【0026】
図10に示すように、エンジン回転数が所定値N1を上回る領域においては、エアチャンバー群50を膨張させてトルクコンバータ30をアンバランス状態に制御したとしても、曲げ振動の抑制効果が得られ難くなっている。そこで、エンジン回転数が所定値N1を下回る領域では、エアチャンバー群50を膨張させてトルクコンバータ30をアンバランス状態に制御し、クランク軸15の曲げ振動を抑制している。一方、エンジン回転数が所定値N1を上回る領域では、エアチャンバー群50を圧縮させてトルクコンバータ30をバランス状態に制御している。これにより、曲げ振動の抑制効果が得られ難い領域においては、トルクコンバータ30の回転バランスを改善することができ、トルクコンバータ30を支持する軸受40等の耐久性を向上させることが可能となる。なお、前述の説明では、アプライ圧によってエアチャンバー群50を積極的に制御しているが、これに限られることはなく、エンジン回転数に応じて増減する遠心油圧によってエアチャンバー群50を膨張状態と圧縮状態とに制御しても良い。すなわち、エンジン回転数が所定値N1に到達したときに、アプライ室44内の遠心油圧によってエアチャンバー群50が圧縮されるように、ピストン53の受圧面積やリターンスプリング55のバネ力等を設定しても良い。
【0027】
これまで説明したように、本発明の一実施の形態であるパワーユニット10においては、トルクコンバータ30のエアチャンバー群50を膨張状態に制御することにより、クランク軸15の曲げ振動を抑制している。クランク軸15の曲げ振動を抑制する過程においては、トルクコンバータ30の遠心力を用いて、クランクピンP4に作用する慣性力を打ち消すため、クランクスローT4からバランスウェイトを削減若しくは縮小することが可能となる。すなわち、トルクコンバータ30側のクランクピンP4を備えるクランクスローT4は、隣り合う他のクランクスローT3よりも軽く形成されている。これにより、クランク軸15の小型化および軽量化を達成することが可能となる。また、
図8に示すように、本発明の一実施の形態であるパワーユニット10においては、クランクピンP1の遠心力を打ち消すため、クランクプーリ26にウェイト27が設けられている。これにより、クランクスローT1からバランスウェイトを削減若しくは縮小することができ、クランク軸15の小型化および軽量化を達成することが可能となる。
【0028】
前述の説明では、エアチャンバー51をシリンダ52およびピストン53によって構成しているが、これに限られることはなく、エアチャンバーを樹脂等の可撓性容器を用いて構成しても良い。ここで、
図11は本発明の他の実施の形態である車両用駆動装置としてのパワーユニット70の一部を示す断面図である。なお、
図11において、
図3に示す部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図11に示すように、ポンプシェル31の内側には、エアチャンバー群(気体封入部)71を構成するエアチャンバー72が設けられている。エアチャンバー72は、ポンプシェル31に固定されるケース73と、これに収容される樹脂製の可撓性容器74と、を有している。空気(気体)が封入される蛇腹状の可撓性容器74は、拡大部分X1に示した膨張状態と拡大部分X2に示した圧縮状態とに変形自在である。この可撓性容器74からなるエアチャンバー72は、ロックアップクラッチ締結用のアプライ圧によって膨張状態と圧縮状態とに切り替えられ、前述したエアチャンバー51と同様に機能している。なお、図示する可撓性容器74は、蛇腹状に形成されているが、この形状に限られることはなく、如何なる形状であっても良いことはいうまでもない。
【0029】
また、
図2に示す場合には、周方向に等間隔で複数のエアチャンバー51を配置することにより、気体封入部としてのエアチャンバー群50を構成しているが、これに限られることはない。すなわち、トルクコンバータ30の回転状態をアンバランス状態にしたときに、トルクコンバータ30側に配置されるクランクピンP4の逆位相側に遠心力が発生するように、気体封入部が構成されていれば良い。ここで、
図12(a)〜(d)および
図13(a)〜(d)は気体封入部の他の例を示す図である。なお、
図12および
図13において、
図2に示す部材と同様の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】
図12(a)に示すように、1つのエアチャンバー51によって気体封入部を構成しても良い。また、
図12(b)に示すように、不等間隔で複数のエアチャンバー51を配置することにより、気体封入部としてのエアチャンバー群80を構成しても良い。また、
図12(c)に示すように、気体封入部として設けられるエアチャンバー群81の中央位置が、クランクピンP4の同位相から外れていても良い。すなわち、エアチャンバー群81の中央位置が、クランク軸15の回転中心C1とクランクピンP4の軸中心C2とを結ぶ直線上から外れていても良い。さらに、
図12(d)に示すように、気体封入部としてのエアチャンバー群82がクランクピンP4の同位相側に設けられていれば、エアチャンバー群82の一部が基準線L1を超えてクランクピンP4の逆位相側に延びても良い。また、前述の説明では、円筒形のエアチャンバー51を用いて気体封入部を構成しているが、これに限られることはない。例えば、
図13(a)〜(d)に示すように、円弧状や直線状に延びるエアチャンバー90〜93を気体封入部として採用しても良い。
【0031】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、前述の説明では、エンジン11として水平対向型の4気筒エンジンを用いているが、これに限られることはなく、シリンダ数やシリンダ配列を変更した他のエンジンを用いても良い。例えば、直列型やV型等のエンジンを備えたパワーユニットに対して本発明を適用しても良い。