(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給工程が、前記ポリアセタール共重合体(2)とポリアセタール共重合体(1)との割合が、質量比で1:5〜1:50となるように前記混合物を供給する供給工程である、請求項1又は2に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0016】
本実施形態のポリアセタール共重合体の製造方法は、
押出機(A)は、末端安定化ゾーンと酸化防止剤分散ゾーンとを備え、
押出機(A)の前記末端安定化ゾーンで、ポリアセタール共重合体(1)の末端安定化を行う安定化工程と、
押出機(B)で、ポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤とを混合して、混合物を得る混合工程と、
押出機(A)の前記酸化防止剤分散ゾーンで、末端安定化されたポリアセタール共重合体(1)に対して前記混合物を押出機(A)に供給する供給工程と、
を有し、
押出機(B)内の樹脂温度が、前記酸化防止剤の融点以上前記ポリアセタール共重合体(2)の融点以下である。
【0017】
<ポリアセタール共重合体>
本実施形態におけるポリアセタール共重合体とは、ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマール若しくはヒンダードフェノール系酸化防止剤を1質量ppm以上500質量ppm以下添加された環状ホルマールと、の共重合によって得られる。
【0018】
具体的には、オキシメチレン単位−(CH
2O)−からなる連鎖中に、下記一般式(1)で表わされるオキシアルキレン単位がランダムに挿入された構造を有するポリオキシメチレンコポリマー等が挙げられる。また、ポリアセタール共重合体は、ホルムアルデヒド又はトリオキサン若しくはテトラオキサン等の環状オリゴマーの単独重合によって得られる実質的にオキシメチレン単位−(CH
2O)−からなるポリオキシメチレンホモポリマー、さらに前記ポリオキシメチレンコポリマーと、前記ポリオキシメチレンホモポリマーとの混合物としてもよい。
【化1】
(式中のR
1及びR
2は、それぞれ水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、それらは同一であっても異なっていてもよく、nは2〜6の整数である)
【0019】
ポリオキシメチレンコポリマーには、分子鎖の分岐化された分岐ポリオキシメチレンコポリマー、オキシメチレンの繰り返し単位を50質量%以上含む異種成分ブロックとのポリオキシメチレンブロックコポリマーも含まれる。
【0020】
なお、ポリオキシメチレンコポリマー中の上記オキシアルキレン単位の挿入率は、オキシメチレン単位100モルに対し、0.01モル以上50モル以下が好ましく、より好ましくは0.03モル以上20モル以下の範囲である。該オキシアルキレン単位としては、例えば、オキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、オキシテトラメチレン単位、オキシブチレン単位、オキシフェニルエチレン単位等が挙げられる。これらのオキシアルキレン単位の中でもポリアセタール樹脂組成物の物性を向上させる点から、オキシエチレン単位−〔(CH
2)
2O〕−、オキシテトラメチレン単位−〔(CH
2)
4O〕−が好ましい。
【0021】
<押出機(A)>
本実施形態において押出機(A)は、末端安定化ゾーン及び酸化防止剤分散ゾーンを備えていれば特に限定されず、単軸又は多軸押出機のいずれも使用できる。好ましくはさらに減圧脱揮ゾーンを備えている。特に限定されないが、押出機(A)に供給されたポリアセタール共重合体(1)は、末端安定化ゾーン、減圧脱揮ゾーン、酸化防止剤分散ゾーンの順に押し出されることが好ましい。
【0022】
本実施形態において、好ましくは押出機(A)が2軸押出機であり、より好ましくはベント式2軸スクリュー押出機である。また、酸化防止剤分散ゾーン以降のL/D(Lは押出機の回転軸方向の長さ、Dは押出機の内径)が、0.5以上25以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以上20以下である。このL/Dが0.5以上であると、ポリアセタール共重合体と安定剤及び/又は添加剤の均一混合が容易であり、L/Dが25以下であるとポリアセタール共重合体の熱安定性が良好となる。
【0023】
<末端安定化ゾーン>
本実施形態において押出機(A)が備える末端安定化ゾーンとは、加圧状態で塩基性物質等の末端安定化剤及び/又は助剤を用いて、後述するポリアセタール共重合体(1)の末端安定化を行う、押出機(A)中の場所をいう。ポリアセタール共重合体(1)と末端安定化剤及び助剤との十分な混練のために、押出機に用いられるスクリューは、末端安定化ゾーンの一部又は全部の領域においてニーディングエレメントで構成されていることが好ましい。ニーディングエレメントとしては、ディスクタイプのニーディングエレメントが挙げられるが、複数のニーディングエレメントを組み合わせたブロックタイプのものも使用できる。末端安定化ゾーンの温度は、ポリアセタール共重合体(1)の融点以上265℃以下の温度範囲が好ましく、より好ましい温度範囲は190℃以上230℃以下である
【0024】
<減圧脱揮ゾーン>
本実施形態において押出機(A)が備える減圧脱揮ゾーンとは、ポリアセタール共重合体(1)に含まれる未反応モノマー、末端安定化により発生したホルムアルデヒド、末端安定化剤、助剤等を減圧により除去する、押出機(A)中の場所をいう。また、ベント部を有していることが好ましい。
【0025】
<酸化防止剤分散ゾーン>
本実施形態において押出機(A)が備える酸化防止剤分散ゾーンとは、ポリアセタール共重合体(1)が末端安定化ゾーンで末端安定化された後に押し出される場所であり、押出機(B)の排出口が直接的又は間接的に接続される、押出機(A)中の場所をいう。また、末端安定化されたポリアセタール共重合体(1)が減圧脱揮ゾーンでホルムアルデヒド等を除去された後に、押し出される場所であることが好ましい。
【0026】
押出機(A)において、末端安定化後又は減圧脱揮後の、ポリアセタール共重合体に存在する、不安定末端部の分解及び溶存ホルムアルデヒドに起因するホルムアルデヒドの量は、100℃で1時間保持した際に発生するホルムアルデヒドが10ppm以下に抑えることが、高い熱安定性を有するポリアセタール共重合体を製造する観点から好ましい。
【0027】
ここで、ポリアセタール共重合体に存在するホルムアルデヒドの量の測定方法は、具体的に次の方法で測定することができる。
【0028】
バルブを有するテドラー(登録商標)バッグにポリアセタールペレットを20.00g入れ、窒素置換を十分に行った後、テドラー(登録商標)バッグ中に窒素を5.00L封入する。その後、内部の上部に、外部に貫通したサンプリング口を有するオーブンにテドラー(登録商標)バッグを入れサンプリングバッグを接続後、所定の温度・1時間放置する。その後、サンプリング口にDNPHカートリッジを接続し、サンプリングバッグのバルブを開き、4.00LをDNPHカートリッジに通過させる。DNPHカートリッジを一定速度で5mLのアセトニトリルを通液し、ホルムアルデヒドを10mLメスフラスコに回収する。その後水により10mLまでメスアップし、良く混合する。
【0029】
この液をバイアル瓶に分注し、島津製作所製HPLCを用い、標準液にDNPH標準液を用い、 分離液には水/アセトニトリル(52/48)、流量1mL/分、カラム温度40℃にて定量し、ペレット質量当たりに発生したホルムアルデヒドをppmで表す。
【0030】
<ポリアセタール共重合体(1)>
本実施形態においてポリアセタール共重合体(1)(粗ポリアセタール共重合体ともいう。)とは、ホルムアルデヒド及び/又はトリオキサンと、環状エーテル及び/又は環状ホルマールとの共重合体であって、一部の分子末端に、熱的に不安定な−(OCH
2)
n−OH基を有するものをいう。ここで、「ポリアセタール共重合体」の語に先行する「粗」という用語は、かかる共重合体が、一部の分子末端に上記の熱的に不安定な基を有していることを表している。そのために、押出機(A)において、分子末端を安定化する。
【0031】
<末端安定化剤>
末端安定化剤とは、ポリアセタール共重合体(1)を末端安定化するものであれば特に限定されず、塩基性物質が好ましい。塩基性物質として、具体的には、アンモニア、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、第4級アンモニウム化合物等のアミン類;水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;無機酸塩;有機酸塩等が挙げられる。これらのアミン類の中でも、第4級アンモニウム化合物がより好ましく、下記式(2)で示される第4級アンモニウム化合物が、少量の添加量で短時間に不安定末端部分の少ないポリアセタール共重合体を得ることができるため、より好ましい。また、上記末端安定化剤は、水やメタノールと共に用いてもよいし、2種類以上の末端安定化剤を併用することも可能である。
【0032】
【化2】
(式中、R
9、R
10、R
11、R
12は、各々独立して、炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基;炭素数6〜20のアリール基;炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基が少なくとも1個の炭素数6〜20のアリール基で置換されたアラルキル基;炭素数6〜20のアリール基が少なくとも1個の炭素数1〜30の非置換アルキル基又は置換アルキル基で置換されたアルキルアリール基を表わし、非置換アルキル基又は置換アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状である。上記置換アルキル基の置換基はハロゲン、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、又はアミド基である。また、上記非置換アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基は水素原子がハロゲンで置換されていてもよい。mは1〜3の整数を表わす。Xは水酸基、又は炭素数1〜20のカルボン酸、ハロゲン化水素以外の水素酸、オキソ酸、無機チオ酸若しくは炭素数1〜20の有機チオ酸の酸残基を表わす。)
【0033】
第4級アンモニウム化合物としては、上記式(2)で表わされるものが好ましく、上記式(2)におけるR
9、R
10、R
11及びR
12が、各々独立して、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基であることがより好ましく、この中でも、R
9、R
10、R
11及びR
12の少なくとも1つが、ヒドロキシエチル基であるものがさらに好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、1,6−ヘキサメチレンビス(トリメチルアンモニウム)、デカメチレン−ビス−(トリメチルアンモニウム)、トリメチル−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリプロピル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリ−n−ブチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリプロピルベンジルアンモニウム、トリ−n−ブチルベンジルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、トリメチル−2−オキシエチルアンモニウム、モノメチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、モノエチルトリヒドロキシエチルアンモニウム、オクダデシルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、テトラキス(ヒドロキシエチル)アンモニウム等の、水酸化物;塩酸、臭酸、フッ酸などの水素酸塩;硫酸、硝酸、燐酸、炭酸、ホウ酸、塩素酸、よう素酸、珪酸、過塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、クロロ硫酸、アミド硫酸、二硫酸、トリポリ燐酸などのオキソ酸塩;チオ硫酸などのチオ酸塩;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソ酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、シュウ酸などのカルボン酸塩等が挙げられる。中でも、水酸化物(OH
-)、硫酸(HSO
4-、SO
42-)、炭酸(HCO
3-、CO
32-)、ホウ酸(B(OH)
4-)、カルボン酸の塩が好ましい。これらのカルボン酸の中でも、蟻酸、酢酸、プロピオン酸がより好ましい。これら第4級アンモニウム化合物は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記第4級アンモニウム化合物に加えて、アンモニアやトリエチルアミン等のアミン類等を併用してもよい。
【0034】
他の塩基性物質としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機弱酸塩、有機酸塩等が挙げられる。具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム等の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等である。
【0035】
<安定化工程>
本実施形態の安定化工程は、ポリアセタール共重合体(1)の末端が安定されれば特に限定されず、具体的には、不安定なメチロール末端が安定な官能基に置換等されるものである。末端安定化を行う方法としては、上述の末端安定化剤をポリアセタール共重合体(1)に添加する方法が好ましい。
【0036】
末端安定化剤の添加量は、ポリアセタール共重合体(1)1.00質量部に対して、下記数式(3)で表わされる末端安定化剤由来の窒素の量に換算して、好ましくは0.05質量ppm以上50質量ppm以下である。なお、末端安定化剤由来の窒素がない場合は、ほかの適当な原子の量に換算して、同様に添加量を算出することができる。
【0037】
【数1】
(式中、Pは末端安定化剤のポリアセタール共重合体に対する濃度(質量ppm)を表わし、14は窒素の原子量であり、Qは末端安定化剤の分子量を表わす。)
【0038】
末端安定化剤の添加量が0.05質量ppm以上であると不安定末端部の分解除去速度が低下せず、50質量ppm以下であると不安定末端部の分解除去後のポリアセタール共重合体の色調が悪化しない。末端安定化剤の添加方法には特に制約はなく、重合触媒を失活する工程にて水溶液として加える方法、溶融前のポリアセタール共重合体に吹きかける方法、溶融後に添加する方法などがあるが、いずれの添加方法を用いても、ポリマーを溶融処理する工程で存在していればよい。
【0039】
<押出機(B)>
本実施形態において押出機(B)は、ポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤とを混合できるものであれば特に限定されず、ベント孔を有していてもいなくてもよく、単軸であってもよい。効率的な混練の観点から、2軸押出機が好ましい。
【0040】
押出機(B)では、ポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤とが溶融混練により混合される。得られた混合物の好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下を、押出機(A)の酸化防止剤分散ゾーンに溶融状態のまま供給する。酸化防止剤分散ゾーンへの供給量が50質量%以上であると、得られるポリアセタール共重合体の品質、着色等に問題が生じる可能性が低くなる。
【0041】
押出機(B)内の樹脂充填率は、10%以上90%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以上80%以下、さらに好ましくは30%以上70%以下である。10%以上になると押出機(A)にポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤との混合物を安定的に供給でき、90%以下であると押出機(B)の回転数を十分に高めることができる。
【0042】
押出機(B)内の樹脂圧力は、0.5MPa以上10MPa以下であることが好ましくい。
【0043】
押出機(B)内の樹脂温度は、後述の酸化防止剤の融点以上後述のポリアセタール共重合体(2)の融点以下であり、好ましくは該酸化防止剤の融点より5℃以上高く該ポリアセタール共重合体(2)の融点より3℃以上低く、より好ましくは該酸化防止剤の融点より15℃以上高く該ポリアセタール共重合体(2)の融点より5℃以上低い。酸化防止剤の融点以上とすることで、酸化防止剤が溶融し、ポリアセタール共重合体(2)の表面を覆うことができるようになり、加工時における酸化劣化を抑制することができる。また、ポリアセタール共重合体(2)の融点以下とすることで、ポリアセタール共重合体(2)が最表面に存在しないようにできる。さらに、押出機(B)から押出機(A)に押し出される際に、酸化防止剤がポリアセタール共重合体(2)の表面を覆っているため、押出機(A)内のポリアセタール共重合体(1)と酸化防止剤の接触面積が大きくなり、押出機(A)内のポリアセタール共重合体(1)への分散が素早くなる。そのため、耐酸化熱エージング性に優れたポリアセタール共重合体を製造することが可能となる。
【0044】
<ポリアセタール共重合体(2)>
押出機(B)で用いるポリアセタール共重合体(2)は、上記のポリアセタール共重合体(1)に分子量調整剤を添加することにより、ポリアセタール共重合体のMI(メルトインデックス)を所望の値に制御することにより製造することができる。
【0045】
分子量調整剤としては、ポリアセタール共重合体のMIを制御できるものであれば特に限定されず、カチオン重合の連鎖移動剤として作用する低分子量の化合物等である。具体的には、ホルムアルデヒドのメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル等の低級脂肪族の群から選ばれるジアルキルアセタールとそのオリゴマー、並びに分子量3000以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、ポリアルキレングリコール並びに、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級脂肪族アルコール等が挙げられる。それらの中でも、ジアルキルアセタールが好ましく、メチラールがより好ましい。
【0046】
重合体のMIを好適な範囲に制御する観点から、分子量調節剤の量は、トリオキサン1molに対して、1×10
-4mol以上1×10
-2mol以下が好ましく、より好ましくは3×10
-4mol以上5×10
-3mol以下、さらに好ましくは6×10
-4mol以上4×10
-3mol以下である。
【0047】
本実施形態で用いるポリアセタール共重合体(1)及びポリアセタール共重合体(2)の樹脂特性は、押出機(B)から供給されるポリアセタール共重合体(2)のMI(メルトインデックス)と押出機(A)で末端安定化されるポリアセタール共重合体(1)のMIの比が好ましくは1/50〜50/1であり、より好ましくは1/30〜30/1であり、さらに好ましくは1/1〜20/1である。特に好ましくは2/1〜20/1である。これにより、効率的に熱安定性の高いポリアセタール共重合体を得ることができる。なお、ポリアセタール共重合体のMIは、実施例中に記載する方法により測定することができる。
【0048】
<酸化防止剤>
本実施形態では、押出機(B)で酸化防止剤が用いられ、ポリアセタール共重合体(2)の融点より融点が低い酸化防止剤であれば、特に限定されない。具体的には、ヒンダードフエノール系酸化防止剤が好ましい。例えば、n−オクタデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル −4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n− オクタデシル−3−(3′−メチル−5−t−ブチル −4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n− テトラデシル−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル− 4′−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1,6 −ヘキサンジオール−ビス−(3−(3,5−ジ−t− ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、1,4−ブタンジオール−ビス−(3−(3,5 −ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、トリエチレングリコール−ビス−(3− (3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3 −(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタン、3,9−ビス(2− (3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル フェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、N,N′−ビス−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プリピオニルヘキサメチレンジアミン、N,N′−テトラメチレンビス−3−(3′−メチル−5′−t−ブチル−4− ヒドロキシフェノール)プロピオニルジアミン、N,N′−ビス−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒ ドロキシフェノール)プロピオニル)ヒドラジン、N−サリチロイル−N′−サリチリデンヒドラジン、3− (N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾー ル、N,N′−ビス(2−(3−(3,5−ジ−ブチル −4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)オキシアミド等が挙げられる。
【0049】
これらヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも、トリエチレングリコールービス−(3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)、テトラキス−(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネートメタンが、入手のしやすさから好ましい。
【0050】
耐酸化熱エージング性を高める観点から、ポリアセタールの融点より20℃以上融点の低い酸化防止剤を選択することが好ましく、より好ましくはポリアセタールの融点より30℃以上融点の低い酸化防止剤を選択し、さらに好ましくはポリアセタールの融点より40℃以上低い酸化防止剤を選択する。
【0051】
<添加剤>
本実施形態の効果を損なわない範囲で、従来のポリアセタール樹脂に使用されている添加剤、例えば、酸化防止剤以外の安定剤、耐候(光)安定剤、離型剤等を単独、又はこれらを組み合わせて用いてもよい。
【0052】
酸化防止剤以外の安定剤としては、特に限定されないが、ホルムアルデヒドやぎ酸の捕捉剤等が挙げられ、酸化防止剤と捕捉剤との併用が好ましい。
【0053】
ホルムアルデヒドやギ酸の捕捉剤としては、具体的には、(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体、(ロ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシド等が挙げられる。
【0054】
(イ)ホルムアルデヒド反応性窒素を含む化合物及び重合体として、具体的には、(1)ジシアンジアミド、(2)アミノ置換トリアジン、(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物等が挙げられる。(2)アミノ置換トリアジンとして、具体的には、グアナミン(2,4−ジアミノ−sym−トリアジン)、メラミン(2, 4,6−トリアミノ−sym−トリアジン)、N−ブチルメラミン、N−フェニルメラミン、N,N−ジフェニルメラミン、N,N−ジアリルメラミン、N,N′,N″−トリフェニルメラミン、N−メチロールメラミン、N,N′−ジメチロールメラミン、N,N′,N″−トリメチロールメラミン、ベンゾグアナミン(2,4 −ジアミノ−6−フェニル−sym−トリアジン)、2,4−ジアミノ−6−メチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブチル−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ベンジルオキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ブトキシ−sym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−シクロヘキシル−s ym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−クロロ−s ym−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メルカプト −sym−トリアジン、2,4−ジオキシ−6−アミノ −sym−トリアジン(アメライト)、2−オキシ− 4,6−ジアミノ−sym−トリアジン(アメリン)、N,N′,N′−テトラシアノエチルベンゾグアナミン 等がある。(3)アミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの共縮合物として、具体的には、メラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等がある。これらの中でも、ジシアンジアミド、メラミン及びメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物が好ましい。
【0055】
(ロ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシドとして、具体的には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム若しくはバリウムなどの水酸化物、該金属の炭酸塩、りん酸塩、けい酸塩、ほう酸塩、カルボン酸塩が挙げられる。該カルボン酸塩のカルボン酸は、10〜36個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸等であり、これらのカルボン酸はヒドロキシル基で置換されていてもよい。飽和脂肪族カルボン酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、セロプラスチン酸が挙げられる。不飽和脂肪族カルボン酸は、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸等が挙げられる。また、アルコキシドとして、上記金属のメトキシド、エトキシド等が挙げられる。
【0056】
その他に捕捉剤として、ホルムアルデヒドを捕捉する捕捉剤(ホルムアルデヒド捕捉剤)としては、ヒドラジド系化合物、アミノトリアジン系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、アミノ酸系化合物、アミノ系化合物、イミド系化合物、イミダゾール系化合物、アミド系化合物等が好ましい。
【0057】
ヒドラジド系化合物としては、1−ジメチル−2−カルボキシエチル)−1,3−ジオキサンヒドラジド、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンジヒドラジド、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートトリヒドラジド等;(メタ)アクリル酸ヒドラジドの単独又は共重合体等のポリマー型ヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの中でも、ジヒドラジド化合物を用いるのが好ましい。より好ましいのは、1,12−ドデカンジカルボン酸ジヒドラジドやセバシン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等の脂肪族ジヒドラジド化合物;1,8−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンカルボン酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド等の芳香族ジヒドラジド化合物である。
【0058】
アミノトリアジン系化合物として、具体的には、メラミン、アセトグアナミン、ステアログアナミン、ベンゾグアナミン、フェニルベンゾグアナミン、フタログアナミン、ナフタレンジグアナミン等が挙げられる。なかでも、ベンゾグアナミンが好ましい。
【0059】
グアニジン系化合物としては、グリコシアミン、グアノリン、グリコシアミジン、オキサリルグアニジン、クレアチニン、イミノウラゾール、マロニルグアニジン、メソキサリルグアニジン等が挙げられる。
【0060】
尿素系化合物として、具体的には、ビウレット、ビウレア、エチレン尿素、プロピレン尿素等のアルキレン尿素等が挙げられる。なかでも、エチレン尿素が好ましい。
【0061】
アミノ酸系化合物としては、グリシン、アラニン、アルギニン、グルタミン等が挙げられる。
【0062】
アミノ系化合物として、具体的には、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−1−ブタノール等のアミノアルコールが挙げられる。
【0063】
イミド系化合物として、具体的には、フタル酸イミド、トリメリット酸イミド、ピロメリット酸イミド、ピロメリット酸ジイミド等が挙げられる。これらの中でも、フタルイミドが好ましい。
【0064】
イミダゾール系化合物として、具体的には、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0065】
アミド系化合物として、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリメタキシリレンジアジパミド(ポリアミドMXD6)、ダイマー酸ポリアミド、ポリアミド12、6/66/610/12四元共重合ポリアミド、6/66/610三元共重合ポリアミド、6/12共重合ポリアミド等が挙げられる。
【0066】
これらのホルムアルデヒド捕捉剤の中でも、ホルムアルデヒド捕捉効果がより優れる点から、ヒドラジド系化合物、アミノトリアジン系化合物、尿素系化合物、イミド化合物が好ましい。
【0067】
耐候(光)安定剤としては、(イ)ベンゾトリアゾール系物質、(ロ)シュウ酸アニリド系物質及び(ハ)ヒンダードアミン系物質が好ましい。
【0068】
(イ)ベンゾトリアゾール系物質として、具体的には、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブ チル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ−イソアミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−4′−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、好ましくは2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3,5−ジ −t−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾールである。
【0069】
(ロ)シュウ酸アニリド系物質として、具体的には、2−エトキシ−2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−5−t−ブチル− 2′−エチルオキザリックアシッドビスアニリド、2−エトキシ−3′−ドデシルオキザリックアシッドビスアニリド等が挙げられる。これらの物質はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
(ハ)ヒンダードアミン系物質として、具体的には、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2, 6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4 −ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)− 2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テ トラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン) −カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2, 6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α′−ビス (2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)トリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、 トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート等が挙げられ、好ましくはビス(2,2,6,6−テトラ メチル−4−ピペリジル)−セバケートである。上記ヒンダードアミン系物質はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記ベンゾトリアゾール系物質、シュウ酸アニリド系物質とヒンダードアミン系物質の組合せがより好ましい。
【0071】
離型剤としては、アルコール、及びアルコールと脂肪酸のエステル、アルコールとジカルボン酸とのエステル、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0072】
アルコールとして、具体的には、1価アルコール、多価アルコールがあり、例えば1価アルコールの例としては、オクチルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ベンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘブタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ペヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、ユニリンアルコール等が挙げられる。多価アルコールとしては、2〜6個の炭素原子を含有する多価アルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコールジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トレイトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルバイト、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0073】
アルコールと脂肪酸のエステルとしては、脂肪酸化合物の内、好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸から選ばれた脂肪酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトールから選ばれた多価アルコールとから誘導された脂肪酸エステルがある。これらの脂肪酸エステル化合物の水酸基は有ってもよいし、無くてもよく、脂肪酸エステル化合物を制限するものではない。例えば、モノエステルであってもジエステル、トリエステルで有ってもよい。またほう酸等で水酸基が封鎖されていてもよい。
【0074】
好ましい脂肪酸エステルとして、具体的には、グリセリンモノパルミテート、グリセリンジパルミテート、グリセリントリパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリントリベヘネート、グリセリンモノモンタネート、グリセリンジモンタネート、グリセリントリモンタネート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールジパルミテート、ペンタエリスリトールトリパルミテート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールモノベヘネート、ペンタエリスリトールジベヘネート、ペンタエリスリトールトリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールモノモンタネート、ペンタエリスリトールジモンタネート、ペンタエリスリトールトリモンタネート、ペンタエリスリトールテトラモンタネート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、 ソルビタントリベヘネート、ソルビタンモノモンタネート、ソルビタンジモンタネート、ソルビタントリモンタネート、ソルビトールモノパルミテート、ソルビトールジパルミテート、ソルビトールトリパルミテート、ソルビトールモノステアレート、ソルビトールジステアレート、ソルビトールトリステアレート、ソルビトールモノベヘネート、ソルビトールジベヘネート、ソルビトールトリベヘネートソルビトールモノモンタネート、ソルビトールジモンタネート、ソルビトールトリモンタネート等が挙げられる。
【0075】
また、ほう酸等で水酸基を封鎖した脂肪族エステル化合物としてグリセリンモノ脂肪酸エステルのほう酸エステルも挙げられる。アルコールとジカルボン酸のエステルは、アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−アミルアルコール、2−ペンタノール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の飽和・不飽和アルコールと、ジカルボン酸としてシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカニン酸、ブラシリン酸、マレイン酸、フマール酸、グルタコン酸等とのモノエステル、ジエステル等が挙げられる。
【0076】
<混合工程>
本実施形態の混合工程は、押出機(B)で、ポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤とを混合できれば特に限定されず、具体的には、ポリアセタール共重合体(2)に対して、酸化防止剤を分散することが好ましい。
【0077】
酸化防止剤の量は、ポリアセタール共重合体(2)1.00質量部に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは2質量%以上25質量%以下である。30質量%以上であると、着色する可能性があり、1質量%以下であると、十分な酸化防止性能が得られない可能性がある。
【0078】
添加剤の量は、ポリアセタール共重合体(2)1.00質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上20質量部以下である。
【0079】
押出機(A)のスクリュー回転数Naより押出機(B)のスクリュー回転数Nbの方が高いことが好ましい。
【0080】
Na及びNbは、それぞれ30rpm以上であることが好ましい。得られるポリアセタール共重合体の熱安定性の観点から、NbはNaより1.5倍以上高いことがより好ましく、さらに好ましくはNbはNaの2.0倍以上高いことが好ましく、特に好ましくは2.5倍以上高いことである。流量が比較的小さい押出機(B)の回転数Nbを、流量が比較的大きい押出機(A)の回転数Naよりも、高めることにより、異物が少なくて高純度で、熱安定性の高いポリアセタール共重合体を得ることができる。
【0081】
押出機(A)内の樹脂圧力と押出機(B)内の樹脂圧力とは、押出機(A)内の樹脂圧力より押出機(B)内の樹脂圧力が高いことが、好ましい。押出機(B)内の樹脂圧力に対する押出機(A)内の樹脂圧力の比(A/B)が、1/1〜1/1000であることがより好ましく、1/1〜1/100であることがさらに好ましい。押出機(A)内の樹脂圧力より押出機(B)内の樹脂圧力が高いことにより(A/Bが1/1以下の場合)押出機(B)が押出機(A)に合流した後の押出機(A)の混練が均一となり、押出機(B)内の樹脂圧力に対する押出機(A)内の樹脂圧力の比が1/1000以上であることにより押出機(B)内での樹脂混練が均一となる。
【0082】
<供給工程>
本実施形態の供給工程は、押出機(A)の酸化防止剤分散ゾーンで、末端安定化されたポリアセタール共重合体(1)に対して上記のポリアセタール共重合体(2)と酸化防止剤との混合物を押出機(A)に供給するものであれば特に限定されない。
【0083】
押出機(B)から供給されるポリアセタール共重合体(2)と押出機(A)で末端安定化されるポリアセタール共重合体(1)との割合が、好ましくは質量比で1:5〜1:50、より好ましくは1:5〜1:40、さらに好ましくは1:10〜1:30である。ポリアセタール共重合体(1)の割合が1:5よりも高いと、経済性に優れる。ポリアセタール共重合体(1)の割合が1:50よりも低いと、押出機(A)に所定量の酸化防止剤を供給するためには、押出機(B)でのポリアセタール共重合体(2)に対する酸化防止剤の濃度が高くなりすぎない。このため、押出機(B)でのポリアセタール共重合体(2)に対する酸化防止剤の分散が容易になり、さらには、酸化防止剤の熱劣化や変色等が起こらない。また、酸化防止剤によっては、スクリューの滑り等が起こらず運転性が良好になると同時に、押出機(A)におけるポリアセタール共重合体(1)へのポリアセタール共重合体(2)及び酸化防止剤の均一分散ができ、ポリアセタール共重合体の熱安定性が良好となる。
【0084】
押出機(A)は、酸化防止剤分散ゾーンにスクリーンメッシュを備えることが好ましい。また、押出機(B)と接続されている部分とポリアセタール共重合体(2)の排出口との間に、スクリーンメッシュを備えていることが好ましい。
【0085】
押出機(A)と押出機(B)とを連結するために、例えば、二重管を両者の間に用いてつなげてもよく、直接つなげてもよい。
【実施例】
【0086】
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
(粗ポリアセタールの製造方法)
熱媒を通すことができる、ジャッケット付きの2軸セルフクリーニングタイプの重合機を、80℃に調整し、トリオキサンを12kg/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを394.6g/hr(トリオキサン1molに対して、4.0mol%)、連鎖移動剤としてメチラールをトリオキサン1molに対して7.3g/hrで、連続的に添加した。また、重合触媒として三フッ化硼素ジ−n−ブチルエーテラート1質量%のシクロヘキサン溶液39g/hrを連続的に添加し、重合を行なった。重合の形態は塊状重合である。重合機より排出されたポリアセタールコポリマーの粉体を、第4級アンモニウム化合物としてトリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムフォルメートを含有した水溶液中(重合触媒1molに対して10倍molの4級アンモニウムを添加)に投入し、重合触媒の失活を行なった。失活されたポリアセタールコポリマーを遠心分離機でろ過、洗浄後140℃で乾燥し、粗ポリアセタールを得た。このポリマーのMIは9.8g/10minであった。ポリマーのMIは、後述する方法にて測定した。
【0088】
(押出機(B)に用いるポリアセタール共重合体)
押出機(B)に用いるポリアセタール共重合体としては、ポリアセタール共重合体(MI=2.9g/10分、テナック(登録商標)−C 3510、旭化成ケミカルズ社製)、ポリアセタール共重合体(MI=10.1g/10分、テナック(登録商標)−C 4520、旭化成ケミカルズ社製)、ポリアセタール共重合体(MI=29.6g/10分、テナック(登録商標)−C 7520、旭化成ケミカルズ社製)、ポリアセタール共重合体(MI=25.4g/10分、テナック(登録商標)−C 7520/テナック(登録商標)−C 4520の質量比を87.5/12.5で混合したもの)、ポリアセタール共重合体(MI=15.3g/10分、テナック(登録商標)−C 7520/テナック(登録商標)−C 4520の質量比を45/55で混合したもの)を用いた。これらのポリアセタール共重合体の融点は、全て165℃であった。
【0089】
(押出機(A))
スクリュー径が30mmの同方向2軸押出機であり、ニーディングエレメントで構成された末端安定化ゾーンと減圧脱揮ゾーンと酸化防止剤分散ゾーンを有する押出機を用いた。押出機内の温度は200℃とし、押出機(B)からの供給口以降の径Dに対する長さLの比(L/D)を5とした。
【0090】
(押出機(B))
ベント口がなく、ジャケットに樹脂温度計を有するスクリュー径が12mm同方向2軸押出機を用い、押出機内の樹脂温度が表1となるようにジャケット温度を適宜設定した。
【0091】
各種特性の測定方法を以下に示す。
(1)ポリマーのMIの測定
ASTM D1238に準拠して実施した。東洋精機製MELT INDEXERを用い、190℃、2.160kgの条件下で流動性を測定した。
【0092】
(2)ホルムアルデヒドの生成量
230℃の加熱により発生するホルムアルデヒドの量と、100℃の加熱により発生するホルムアルデヒドの量と、を測定した。
【0093】
230℃の加熱により発生するホルムアルデヒドの量は、窒素中において230℃、40分間に発生するホルムアルデヒドガスを水に吸収させた後、滴定により測定した。
【0094】
100℃の加熱により発生するホルムアルデヒドの量は、次のように測定した。バルブを有するテドラー(登録商標)バッグにポリアセタール共重合体のペレットを20.00g入れ、窒素置換を十分に行った後、テドラー(登録商標)バッグ中に窒素を5.00L封入する。その後、内部の上部に、外部に貫通したサンプリング口を有するオーブンにテドラー(登録商標)バッグを入れサンプリングバッグを接続後、100℃で1時間放置する。その後、サンプリング口にDNPHカートリッジを接続し、サンプリングバッグのバルブを開き、4.00LをDNPHカートリッジに通過させる。DNPHカートリッジで、一定速度で5mLのアセトニトリルを通液し、ホルムアルデヒドを10mLメスフラスコに回収する。その後水により10mLまでメスアップし、良く混合する。この混合した液をバイアル瓶に分注し、島津製作所製HPLCを用い、標準液にDNPH標準液を用い、 分離液には水/アセトニトリル(52/48)、流量1mL/分、カラム温度40℃にて定量し、ペレット質量当たりに発生したホルムアルデヒドをppmで測定した。なお、測定上限は15ppm以下であり、測定上限を超えたものについてはO.D.とした。
【0095】
(3)ポリアセタール中の異物の測定
運転開始15時間後より、ポリアセタール共重合体3kgを目視にて異物含有ペレットを選別した後、異物含有ペレットの総重量を測定することで、異物含有ペレットの質量ppmを算出した。更に、ペレット100gを200℃で10MPaの圧力で5分プレスし、30cm×30cm×約1.2mmの成形片を10枚作成し、目視により確認した。またサイズはノギスにて計測し、最大径を計測した。
1.0mm以上の異物があった場合、×
1.0mm以上の異物はなく、0.3mm以上の異物があった場合、△
0.3mm以上の異物はなく、0.3mm以下の異物があった場合で、それらの異物の個数をカウントし、合計で30個以上あった場合、○
それ以外の場合、◎
と判定した。
【0096】
(4)熱エージング後の機械的特性
東芝機械(株)製IS−100GN射出成形機を用いて、実施例及び比較例で得られたポリアセタール共重合体を成形することにより、ISOの試験片を作製した。製作した試験片を、140℃設定したタバイ製ギアーオーブンに仕込み、熱エージング処理を行った。
【0097】
熱エージング処理後の試験片を、1週間おきに取り出し、23℃で50%の湿度に保たれた恒温室で、24時間放置した。放置後の試験片について下記条件にて引張速度及び引張伸度を測定した。測定値はn=3の平均値とした。
引張試験機:(株)島津製作所製AG−IS
引張速度:50mm/分
【0098】
上記測定を継続して行い、試験片の引張強度が50MPaとなるまでの日数を求めた。該日数の長いほど熱エージング後の引張強度が良好であると判定した。
【0099】
引張伸度は、下記式より算出した。
引張伸度(%)=破断までの伸び(mm)/チャック間(=115mm)×100
上記測定を継続して行い、試験片の引張伸度が10%となるまでの日数を求めた。該日数の長い方ほど熱エージング後の引張伸度が良好であると判定した。
【0100】
(実施例1)
粗ポリアセタール90質量部を押出機(A)に供給した。押出機(A)のスクリュー回転数はNaを60rpmとした。押出機(A)では、供給された粗ポリアセタール共重合体を加熱溶融しながら、末端安定化ゾーンへ圧送した。末端安定化ゾーンでは、粗ポリアセタール共重合体にトリエチルアミン水溶液2質量部を添加して、粗ポリアセタール共重合体の末端安定化を行い、次の減圧脱揮ゾーンへ圧送した。減圧脱揮ゾーンでは、末端安定化に伴い発生したホルムアルデヒド等を減圧操作により系外に除去した。その一方で、スクリュー回転数Nbを120rpmとした押出機(B)にポリアセタール共重合体(MI=25.4)10質量部、酸化防止剤としてトリエチレングリコールービス―〔3―(3―t―ブチルー5―メチルー4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量部、安定剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部を加えて溶融混練し、溶融混練物の全量を溶融状態のまま押出機(A)の酸化防止剤分散ゾーンに供給し、末端安定化されたポリアセタール共重合体と混練した後、ペレット化した。結果を表1に示す。
【0101】
(実施例2〜8、比較例1〜4)
表1、2に示した条件以外は、実施例1と同様に実施した。
【0102】
(比較例5)
粗ポリアセタール100質量部を押出機(A)に供給した。押出機(A)のスクリュー回転数Naは60rpmとした。押出機(A)では、供給された粗ポリアセタール共重合体を加熱溶融しながら、末端安定化ゾーンへ圧送した。末端安定化ゾーンでは、粗ポリアセタール共重合体にトリエチルアミン水溶液2質量部を添加して、粗ポリアセタール共重合体の末端安定化を行い、次の減圧脱揮ゾーンへ圧送した。減圧脱揮ゾーンでは、末端安定化に伴い発生したホルムアルデヒド等を減圧操作により系外に除去した。これにより得られた末端安定化後のポリアセタール共重合体に、トリエチレングリコール―ビス―〔3―(3―t―ブチルー5―メチルー4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量部、安定剤としてジステアリン酸カルシウム0.15質量部を押出機(A)の酸化防止剤分散ゾーンに直接供給し、混練した後、ペレット化した。結果を表2に示す。
【0103】
表1に示すように、実施例1〜8では、押出機(B)内の樹脂温度が押出機(B)のポリアセタール共重合体の融点以下、酸化防止剤の融点以上であるため、耐酸化熱エージング性の高いポリアセタール共重合体を得ることができた。
【0104】
比較例1、3では熱安定性が良く純度の高いポリアセタール共重合体を得ることができたが、押出機(B)内の樹脂温度が押出機(B)のポリアセタール共重合体の融点以上であったため、耐酸化熱エージング性に劣るものとなった。
【0105】
比較例2、4では、比較例1、3の理由に加え、押出機(A)のスクリュー回転数Naより押出機(B)のスクリュー回転数Nbと同じであったため、純度の低いポリアセタール共重合体が得られた。
【0106】
比較例5においては、押出機(B)を用いなかったため、耐酸化熱エージング性に劣るものとなり、また操作が2段階となった。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
表中の略語は以下の通りである。
添―1(酸化防止剤) トリエチレングリコールービス―〔3―(3―t―ブチルー5―メチルー4―ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(融点約77℃)
添―2(酸化防止剤) テトラキス[メチレン−3−(3,5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニルプロピオネート)]メタン (融点約 117℃)
添―3 ジステアリン酸カルシウム
添―4 ナイロン66
添―5 メラミン