【文献】
BMC Microbiology,2009年,vol.9 no.252,pp.1-14,doi:10.1186/1471-2180-9-252
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記宿主細胞が、N-グリコシル化のためのコンセンサス配列を含むキャリアタンパク質をコードする核酸をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の宿主細胞。
【発明を実施するための形態】
【0027】
5 詳細な説明
一態様では、宿主細胞ゲノム中にDNAの大きな連続する配列を挿入するための方法が本明細書において提供される。このような大きなDNA配列は、複数の構成成分、例えば、遺伝子、プロモーター、ターミネーターなどを含み得、宿主細胞ゲノム中の所望の位置で選択的に挿入され得る。ある特定の実施形態では、断片(例えば、遺伝子)中に存在する1種以上の構成成分が、宿主細胞によって発現される、例えば、宿主細胞が、宿主細胞によって通常は発現されない1種以上の構成成分(例えば、遺伝子)を発現する及び/又は宿主細胞が、宿主細胞によって天然に発現される成分(例えば、遺伝子)を発現するが、いっそう多くのこのような成分を発現するように、大きなDNA配列は、宿主細胞ゲノムの領域中に選択的に挿入され得る。
【0028】
特定の実施形態では、宿主細胞ゲノム中にDNAの大きな配列を挿入するための方法が本明細書において提供され、ここで、前記大きなDNA配列は、1、2、3、4、5種以上の遺伝子を含む。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って宿主細胞中に挿入されたDNA配列中に存在する遺伝子は、同様にDNA配列中に存在する1種若しくは複数の調節配列又はプロモーターの制御下にある。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って宿主細胞中に挿入されたDNA配列は、大きなDNA配列中に存在する遺伝子の発現にとって必須又は有益であるさらなるエレメント、例えば、エンハンサー、ターミネーターを含み得る。
【0029】
別の特定の実施形態では、宿主細胞ゲノム中にDNAの大きな配列を挿入するための方法が本明細書において提供され、ここで、前記大きなDNA配列は、共通の調節シグナル又はプロモーターの制御下に、1種以上のオペロン、例えば、遺伝子のクラスターを含む。
【0030】
別の特定の実施形態では、宿主細胞ゲノム中にDNAの大きな配列を挿入するための方法が本明細書において提供され、ここで、前記宿主細胞ゲノムは、宿主細胞ゲノムと通常は関連しているDNAの欠失をさらに有する、すなわち、本方法は、宿主細胞ゲノム中への異種DNAの挿入及び通常は存在するDNAの、宿主細胞ゲノムからの除去の両方をもたらす。特定の実施形態では、DNAの大きな配列の挿入は、同等のサイズの宿主細胞ゲノムからのDNAの配列の除去の部位で行われる、すなわち、宿主細胞ゲノムのDNAは、挿入されるDNA配列によって置換される。
【0031】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、宿主細胞へのヘルパープラスミド及びドナープラスミドの導入を含む。本明細書において、ヘルパープラスミドは、宿主細胞のゲノム中への大きなDNA配列の挿入にとって必要であるエレメントを含む(例えば、遺伝子をコードする)プラスミドを包含するものとする。本明細書に記載される方法に従って、ヘルパープラスミドは、宿主細胞ゲノム自体にはDNAを組み込まないが、本明細書において記載されるドナープラスミド中に存在する挿入DNAの組込みを促進する。ヘルパープラスミドは、以下の節5.1.1においてより詳細に記載される。本明細書において、ドナープラスミドは、宿主細胞ゲノム中に挿入されるべき大きなDNA配列を含むプラスミドを包含するものとする。すなわち、ドナープラスミドは、自身の一部を宿主細胞ゲノムに「供与する」(すなわち、宿主細胞ゲノム中に挿入されるべき大きなDNA配列が供与される)。ある特定の実施形態では、本明細書において提供されるドナープラスミドは、大きなDNA配列を宿主細胞ゲノム中へ挿入するのに必要であるか、又は有用であるその他のエレメントを含む。ドナープラスミドは、以下の節5.1.2により詳細に記載されている。
【0032】
別の態様では、本明細書に記載される方法に従ってDNAの大きな配列が挿入されているゲノムを含む宿主細胞(例えば、原核生物の宿主細胞、例えば、大腸菌(E. coli))が本明細書において提供される。理論にとらわれずに、本明細書において記載される方法は、対象のタンパク質、例えば、ワクチンとして使用するためのタンパク質、グリコシル化タンパク質、化粧品において使用するためのタンパク質などを産生できる、遺伝的に安定な宿主細胞を作製するために使用され得る。本明細書において提供される方法の結果として、このような宿主細胞は、対象の遺伝子を含むDNAが、宿主細胞のゲノム中に直接挿入されているという事実のために、特定のマーカー、例えば、抗生物質選択マーカーの存在下で維持及び/又は増殖されることを必要としない。
【0033】
特定の実施形態では、ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含む宿主細胞が本明細書において提供され、ここで、(a)ヘルパープラスミドは、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含み、(b)ドナープラスミドは、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む。特定の実施形態では、認識配列は、少なくとも18塩基対を含む。別の特定の実施形態では、制限エンドヌクレアーゼは、SceIである。
【0034】
5.1 DNA挿入の方法
宿主細胞のゲノム中に、DNAの大きな配列(すなわち、異種挿入DNA)を挿入する方法が、本明細書において提供される。当業者ならば、本明細書において記載される新規方法は、いくつかの利点を有し、ワクチンを含めた商品の生物学的生産のために使用され得る宿主細胞(例えば、原核生物の宿主細胞)の作製を可能にすることを理解するであろう。本明細書に記載される方法に従って作製された遺伝的に安定な宿主細胞が有する利点の例として、制限するものではないが、(i)染色体に挿入されたDNAについては選択圧が不必要であること、(ii)異種挿入DNA内の遺伝子のコピー数が、細胞周期に応じて1又は2に厳密に調節されること、及び(iii)宿主細胞ゲノム中の異種挿入DNAが、宿主細胞増殖の複数世代にわたって安定なままであることが挙げられる。このような安定な宿主細胞は、例えば、工業的発酵にとって有用である。
【0035】
当業者ならば、本発明の新規方法が、本方法において使用される種々の構成成分を改変することによって実施され得ることを容易に理解するであろう。例えば、本明細書において記載されるドナープラスミド及びヘルパープラスミドは、それらが、本明細書において記載される方法において機能的である限り、複数の異なるエレメントを含み得る。本明細書において記載されるドナープラスミド、本明細書において記載されるヘルパープラスミド及び本明細書において記載される宿主細胞への改変の例は、節5.1.1に示されている、以下参照。
【0036】
例示的な実施形態では、宿主細胞のゲノム中にDNAの大きな配列(すなわち、異種挿入DNA)を挿入する方法は、(i)(a)宿主細胞ゲノム中の組換えの部位を指令する相同領域(HR)、例えば、長い相同領域(例えば、任意の適当な大きさ、例えば、0.4〜2.0kbのHR)に挟まれている異種挿入DNA(このようなHRの使用が挿入の効率を高める)及び(b)ドナープラスミド、すなわち、ドナープラスミドの宿主細胞への導入後に組み込まれていないドナープラスミドを含む宿主細胞の増殖を抑制する対抗選択マーカー(対抗選択マーカーの使用は、偽陽性クローンを排除する[11])を含むドナープラスミド、(ii)λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、及び宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、SceI制限エンドヌクレアーゼ)をコードするオープンリーディングフレームを含むヘルパープラスミドの使用を含む。ヘルパープラスミドでは、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム及び宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼ(例えば、SceI制限エンドヌクレアーゼ)をコードするオープンリーディングフレームは、オープンリーディングフレームによって産生されるタンパク質の協調した発現のために異なるプロモーター(例えば、第1のプロモーター及び第2のプロモーター)の制御下にあり得る[12]。ドナープラスミドはまた、ヘルパープラスミド中に存在する制限エンドヌクレアーゼの認識配列を含み得る。
【0037】
本明細書に記載される方法は、次々と複数ラウンドの挿入を可能にする。すなわち、第1の大きなDNA挿入部分が、ある位置に挿入され得、その後、同一方法論を使用してさらなる挿入が実施され得る。これらの連続挿入は、宿主細胞ゲノムの任意の部分に、すなわち、宿主細胞中に存在するそれまでに挿入されたDNA又は元の染色体配列にもターゲッティングし得る。さらに、本方法は、Datsenko及びWannerの相同組換え(Datsenko KA、Wanner BL:One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc Natl Acad Sci U S A 2000、97(12):6640〜6645頁)のようなその他の挿入方法と適合する。本明細書において記載される方法の挿入ステップ、すなわち、異種挿入DNAが宿主細胞のゲノム中に挿入されるステップは、in vivoでの相同DNAストレッチの相同組換え又は交差乗換え(クロスオーバー)に基づいている。相同組換えの際、DNAの一方の相同体は、標的部位中になくてはならず、一方は、ドナー構築物(すなわち、ドナープラスミド)中になくてはならない。本明細書に記載される方法に従って、挿入に必要なエレメントは、宿主細胞中に導入され得る、例えば、宿主細胞中に導入される1つ以上のプラスミド上に導入され得る。当業者ならば、プラスミドが宿主細胞中に導入され得る方法を容易に理解するであろう、また、それを行う例示的な方法は、以下の節5.1.3に提供されている。
【0038】
異種挿入DNAが宿主細胞のゲノム中に挿入され得る方法は、複数のステップを含み得る。例えば、ドナープラスミド及び/又はヘルパープラスミドは、方法が実施され得る前に操作される必要がある場合もある。さらに、挿入方法の前又はその間に、宿主細胞への改変が実施され得る。当業者ならば、所与の宿主細胞中に挿入されることが望まれる異種挿入DNAに基づいて、どのステップが実施される必要があるかを容易に理解するであろう。一般に、本明細書において記載される宿主細胞中に異種挿入DNAを挿入する方法は、以下のステップのうち一部又はすべてを含み得る。
【0039】
(1)ドナープラスミドを作製する。所望の異種挿入DNA配列(すなわち、1種以上の対象の遺伝子を含む異種挿入DNA配列)を、ドナープラスミドとして使用するのに適したプラスミドのクローニング部位(例えば、MCSと略される多重クローニング部位)中にクローニングする(節5.1.2を参照のこと)。相同領域として使用するのに適したDNA配列(すなわち、宿主細胞ゲノム上の挿入位置と相同であるDNA配列)もまた、相同領域が異種挿入DNAを挟むようにドナープラスミド中にクローニングする。これらのドナープラスミドのクローニング及びアセンブリーの方法は、制限するものではないが、制限酵素及びリガーゼ、トランスポサーゼ、化学合成などを使用する分子クローニングなど、DNAを改変及び合成するための任意の確立された周知の技術に従って行われ得、これらの技術は、当業者に公知である[1]。
【0040】
さらに、ある特定の実施形態では、抗生物質耐性を付与するタンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む選択カセットは、相同性アームの間に位置する。それらのゲノム中に挿入される異種挿入DNAを含む宿主細胞は、それらを、選択カセットの抗生物質耐性遺伝子が耐性を提供する抗生物質を含む培地で培養することによって同定され得る。ある特定の実施形態では、選択カセットは、FRT部位に挟まれ[13]、これによって、部位特異的組換えによるカセットの後の除去が可能になる。したがって、ドナープラスミド中にこのようにFRT部位を組み込むことによって、選択カセットが、宿主細胞ゲノム中に組み込まれたままではないことが確実になる。別の実施形態では、選択カセットは、dif部位が媒介する部位特異的相同組換えによる[14]又はその他の部位特異的染色体突然変異誘発技術による組込み後に除去され得る。
【0041】
本明細書において記載されるドナープラスミドはまた、対抗選択タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含むよう操作される。対抗選択アプローチにおいて使用するのに適した当業者に公知のタンパク質をコードする任意の遺伝子が、本明細書において記載されるドナープラスミド中に組み込まれ得る。特定の実施形態では、sacB遺伝子は、対抗選択に使用される。
【0042】
本明細書において記載されるドナープラスミドはまた、複製起点を含むよう操作される。当業者ならば、ドナープラスミド中に組み込まれる複製起点が、ゲノム改変を受けている宿主細胞において使用するのに適したものでなくてはならないことは容易に理解するであろう。例えば、大腸菌(E. coli)複製起点は、クローニングが大腸菌(E. coli)において実施されている時点で存在しなくてはならない。特定の実施形態では、複製起点は、oriTである。当業者ならば、当技術分野で公知の方法を使用して、シャトルプラスミド(すなわち、複数の宿主細胞、例えば、複数の細菌種において複製できるプラスミド)が作製され得、このようなプラスミドは、多数の種類の宿主細胞、例えば、原核細胞、古細菌細胞、真正細菌細胞又は真核細胞中への挿入のために使用され得ることは容易に理解するであろう。このようなシャトルプラスミドは、生物特異的発現制御エレメント及び複製起点を含み得る。
【0043】
(2)ヘルパープラスミドを作製する。ヘルパープラスミドを、本明細書において記載されるような宿主細胞へのDNA挿入を媒介するため、及び組換えを受ける宿主細胞内でヘルパープラスミドを維持するためのすべての必要な活性をコードするよう操作する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるヘルパープラスミドは、(i)宿主細胞におけるプラスミド維持のための選択カセット、(ii)リコンビナーゼ、すなわち、相同DNAストレッチ間の交差効率を支援し、増強する酵素(単数又は複数)の発現のためのレギュロン、(iii)相同組換えを受け得る末端相同配列をもたらす、DNA挿入部分を直線化する機能の発現のためのレギュロン、(iv)自身のrecAコピーを有さない宿主細胞のRecA相同体を発現するレギュロン、及び(v)条件付きの複製起点を含む。これらのエレメントは、以下により詳細に記載される。
【0044】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って使用されるヘルパープラスミドは、ヘルパープラスミドpTKRED(Gene bank GU327533.1;[12])と同様である構成成分を含む。特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において、ヘルパープラスミドpTKRED(Gene bank GU327533.1;[12])が使用される。
【0045】
(3)ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを同一宿主細胞中に導入する。ドナー及びヘルパープラスミドの挿入は、制限するものではないが、エレクトロポレーション、化学的コンピテント細胞の使用、熱ショック及びファージ形質導入を含めた当業者に公知の多数の異なる技術によって実施され得る。次いで、宿主細胞は、導入されたプラスミドを保持する細胞を濃縮する選択的条件下で培養され得る。
【0046】
(4)挿入手順を開始する。例示的挿入手順は、以下のステップを含む:陽性クローン(すなわち、ヘルパー及びドナープラスミドの両方を含む宿主細胞)の一晩培養物を、例えば、選択のために適切な抗生物質を含む培地中、30℃で増殖させることができる(このような抗生物質は、ドナー/ヘルパープラスミド中に存在する選択カセットに基づいて当業者によって容易に選択され得る)。次いで、培養物を希釈し、適当な抗生物質の存在下で対数期まで、例えば、30℃で増殖させることができる。これらの条件下で、ヘルパー及びドナープラスミドは、維持されるがサイレントである。次に、培地を、選択のための抗生物質並びにプラスミド中に存在する条件付きエレメント(例えば、誘導プロモーター又は条件付き複製起点)の任意の誘導物質を含有する培地で置換し、続いて、細胞をさらにインキュベートする。この時間の間に、ヘルパープラスミド中の制限エンドヌクレアーゼ(例えば、SceI)及びヘルパープラスミド中のリコンビナーゼ(例えば、λレッドリコンビナーゼ)が発現され、相同性アームでのドナープラスミドの切断及び宿主細胞のゲノム中の相同部位での相同性DNAの相同組換えにつながる(
図2参照のこと)。次いで、細胞をドナープラスミドの対抗選択マーカーが対応する構成成分(例えば、対抗選択マーカーがsacBである場合にはスクロース)を含有する培地上にプレーティングする。このステップは、ドナープラスミドを含む細胞、すなわち、ドナープラスミドが挿入されていない状態で存在する細胞の対抗選択をもたらす。このような培地はまた、異種挿入DNAを含有する細胞を選択するための、ドナープラスミドの挿入カセット中に存在する耐性マーカー(すなわち、ドナープラスミドのHRの間に存在する抗生物質耐性カセット)を含む。一晩インキュベートした後、次いで、細胞を、(i)ヘルパー及びドナープラスミドの喪失並びに(ii)異種DNA挿入部分の存在と一致する抗生物質耐性表現型を示す組換えられたクローンについてスクリーニングする。
【0047】
当業者ならば、前述の条件は、標準的な実験アプローチを使用して改変され得るということは理解しよう。例えば、特定の条件は、使用される特定の宿主細胞、使用される選択及び対抗選択マーカーなどに基づいて変更され得る。例示的挿入株は、表1及び2に示されている。
【0048】
特定の実施形態では、宿主細胞中にDNAを挿入する方法は、以下を含む:陽性クローンの一晩培養物(すなわち、ヘルパー及びドナープラスミドを含有する)を、選択のための抗生物質(spec及びドナープラスミドの一方又は両方の選択可能マーカー)を含有する液体LB培地中30℃で増殖させ、OD600 0.05に希釈し、スペクチノマイシン及びDNA挿入部分選択マーカー(kanR又はclmR)の存在下、30℃で対数期まで増殖させる。これらの条件下で、ヘルパー及びドナーは維持されるがサイレントである。次いで、培地を、選択のための抗生物質、0.2%アラビノース及び1mM IPTGを含有するLB培地で置換し、細胞を、30℃で数時間(2、4、6、8時間)さらにインキュベートする。この時間の間に、SceI及びレッドリコンビナーゼタンパク質が発現され、相同性アームでのドナープラスミドの切断をもたらし、ゲノム中の相同部位での相同性DNAの相同組換えをもたらす(
図2)。次いで、細胞を、10%スクロース(ドナープラスミドを含有する細胞を対抗選択するために)及びDNA挿入部分を依然として含有する細胞を選択するために、挿入カセット中に存在する耐性マーカー(kanR又はclmR)を含有するLB培地にプレーティングする。その他の選択及び対抗選択マーカーは、条件の調整を必要とし得る。37〜42℃で一晩インキュベートした後、細胞を、i)ヘルパー及びii)ドナープラスミドの喪失並びにiii)DNA挿入部分の存在と一致する抗生物質耐性表現型を示す組換えられたクローンについてスクリーニングする。クローンをamp、spec及びkan又はclmを補充したLM上にレプリカプレーティングして、感受性コロニーをスクリーニングする。DNA挿入部分を含有する可能性のある候補細菌コロニーを示す組み合わされた表現型は、アンピシリンに対して感受性(ドナープラスミドの喪失を示す)、スペクチノマイシン感受性(ヘルパープラスミドの喪失を示す)、Clm又はkan耐性(DNA挿入部分の存在を示す)である。
【0049】
以下の実施例において実証されるように、前述の方法を使用して、O抗原及び莢膜多糖クラスターを含む異種DNA配列を、大腸菌(E. coli)ゲノムの特定の位置に挿入し、その過程で、一方で、同時に、天然に予め存在するO抗原及び莢膜クラスターを大腸菌(E. coli)ゲノムから除去した。得られた宿主細胞を使用して、特定の部位で共有結合しているO抗原多糖を含有していた前記宿主細胞の細胞膜周辺腔において発現されるキャリアタンパク質からなる糖タンパク質を産生した。当業者ならば、このような方法は、宿主細胞中に任意の所望の異種DNA配列を挿入するために適用され得ることは容易に理解するであろう。
【0050】
5.1.1 ヘルパープラスミド
本明細書において記載され、本明細書に記載される方法に従って使用されるヘルパープラスミドは、DNA挿入を媒介するために、また必要な期間、組換えを受ける宿主細胞、すなわち、本明細書において記載される方法によって異種DNAが挿入される宿主細胞内にヘルパープラスミドを維持するために、すべての必要な構成成分をコードする。以下は、本明細書において記載されるヘルパープラスミド中に導入され得る特定の構成成分である。
【0051】
5.1.1.1 選択可能マーカー
本明細書において記載されるように改変された宿主細胞中へのヘルパープラスミドの適切な導入を確実にするために、本明細書において記載されるヘルパープラスミド中に選択可能マーカーが導入される。特に、選択可能マーカーは、形質転換後にプラスミドを受け入れた宿主細胞を選択するため、及び組換え手順の間プラスミドを維持するために使用され得る。選択のための多数の系が、当技術分野で公知であり、当業者にとって利用可能である。例として、制限するものではないが、(i)抗生物質(例えば、amp、kan、spec、clm、gen、tmp、tet)に対する耐性[15];(ii)選択培地、例えば、栄養要求性マーカー系(Regis Sodoyer、Virginie Courtois、Isabelle Peubez and Charlotte Mignon (2012). Antibiotic-Free Selection for Bio-Production:Moving Towards a New「Gold Standard」、Antibiotic Resistant Bacteria-A Continuous Challenge in the New Millennium、Marina Pana (Ed.)、ISBN:978-953-51-0472-8、InTech、Available from:http://www.intechopen.com/books/antibiotic-resistant-bacteria-a-continuous-challenge-in-the-new-millennium/antibiotic-free-selection-for-bio-production-moving-towards-a-new-gold-standard)での増殖、(iii)毒素-抗毒素系、及び(iv)例えば、トリクロサンのような殺生物剤に対する耐性[16]を付与する遺伝子カセットが挙げられる。以下の表6はまた、選択のために使用され得る抗生物質の一覧を提供する。
【0052】
特定の実施形態では、ヘルパープラスミド選択のために、すなわち、標的細胞中でヘルパープラスミドを維持するためにスペクチノマイシン耐性カセットが使用される。
【0053】
5.1.1.2 リコンビナーゼ酵素
本明細書において記載されるヘルパープラスミドは、交差(相同組換え)及びDNAの相同部分の再連結を支持するリコンビナーゼを含む。本明細書に記載される方法に従って使用され得る例示的リコンビナーゼとして、制限するものではないが、λレッドリコンビナーゼ、Racプロファージ由来のRecE/RecT[17]及びバクテリオファージλ由来のRedαβΔ[18〜20]が挙げられる。
【0054】
特定の実施形態では、本明細書において記載されるヘルパープラスミドにおいて使用されるリコンビナーゼは、λレッドリコンビナーゼである。別の特定の実施形態では、λレッドリコンビナーゼは、lacプロモーターの制御下にある。λレッドリコンビナーゼは、相同組換え反応(交差)を触媒し、プラスミド上の3種のオープンリーディングフレーム中にコードされる3つの機能的サブユニットからなる。第1の遺伝子は、宿主ヌクレアーゼ阻害剤タンパク質Gamファミリーのメンバーであるgamである。Gamタンパク質は、RecBCDヌクレアーゼを阻害し、細菌及びバクテリオファージの両方中に見られる。第2の遺伝子は、ベータであり、RecTファミリーのタンパク質をコードする。RecTタンパク質は、RecT、Red-β、ERF及びRad52などのDNA一本鎖アニーリングタンパク質(SSAP)であり、RecA依存的及びRecA独立的DNA組換え経路において機能する。第3の遺伝子は、YqaJ様ウイルスリコンビナーゼドメインタンパク質をコードするexo遺伝子である。このタンパク質ファミリーは、多数の異なる細菌種において見られるが、ウイルス起源である。タンパク質は、オリゴマーを形成し、Mg(2+)依存性反応において線形二本鎖DNAを消化する前進型アルカリエキソヌクレアーゼとして機能する。5'-リン酸化DNA末端が好ましい。3種のタンパク質は、大腸菌(E. coli)及びその他の生物において相同組換え事象を促進する。
【0055】
ある特定の実施形態では、リコンビナーゼは、ヘルパープラスミド上に存在し、lacプロモーター以外のプロモーターの制御下にある。このようなその他のプロモーターとして、制限するものではないが、araBADプロモーター[21]、ラムノースプロモーター[22]、熱誘導プロモーター[23]、サリチル酸プロモーター[24]、テトラサイクリンプロモーター[25]などを挙げることができる。
【0056】
5.1.1.3 エンドヌクレアーゼ
ヘルパープラスミド上のエンドヌクレアーゼは、ドナープラスミドを線状化し、それによって、DNAの挿入部分を可動化する。したがって、本明細書において記載される所与の方法において使用されるドナープラスミドは、ヘルパープラスミド中に存在する制限エンドヌクレアーゼの認識配列を有する。リコンビナーゼ酵素による相同組換えは、標的部位との対合の基質として一本鎖DNA挿入末端に依存している。したがって、線状化(すなわち、二本鎖末端を作製すること)は、DNA挿入部分の活性化にとって重要なステップである。開いた二本鎖DNA末端は、酵素的に消化されて一本鎖となり、次いで、これが対合及び組換えの実際の基質となる。
【0057】
本明細書において使用されるエンドヌクレアーゼは、宿主細胞の細胞質において作用し得、したがって、それらは、ドナープラスミドを切断し得るが、宿主細胞染色体安定性に影響を及ぼさないはずである。一般に、任意の制限酵素又はDNA二本鎖カッターが、宿主細胞ゲノムDNAを切断しない限り、本明細書において記載される方法において使用され得る。特定の実施形態では、細胞質及び標的の長い稀な認識部位において働くエンドヌクレアーゼが、このようなエンドヌクレアーゼが、稀な認識配列を有することによって高度に部位特異的であるので使用され得る。例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27 28、29又は30超の塩基対の認識部位の認識配列を有するエンドヌクレアーゼが、本明細書において記載される方法において使用するために選択され得る。
【0058】
特定の実施形態では、ホーミングエンドヌクレアーゼが本明細書において記載される方法において使用される。ホーミングエンドヌクレアーゼは、イントロン又はインテインによってコードされる特定の種類の制限酵素である。それらは、種々の構造基、例えば、LAGLIDADG(配列番号1)、GIY-YIG(配列番号2)、H-N-H及びHis-Cysボックスファミリーを含む。ホーミングエンドヌクレアーゼの例示的一覧が、以下の表4に示されている。本明細書において使用されるエンドヌクレアーゼは、それらが、同様にヘルパープラスミド上に存在する誘導プロモーターの制御下にあるようにヘルパープラスミド上に存在し得る。
【0059】
特定の実施形態では、本明細書において記載されるヘルパープラスミドによってコードされるエンドヌクレアーゼは、SceIである。SceIは、LAGLIDADG(配列番号1)DNAエンドヌクレアーゼファミリーのメンバーである。これは、DNA可動エレメントによってコードされる部位特異的DNAエンドヌクレアーゼのファミリーである。機能的に、SceIは、大腸菌(E. coli)ゲノム中には決して生じない18塩基対の認識配列TAGGGATAACAGGGTAAT(配列番号3)を切断するホーミング制限エンドヌクレアーゼである。特異的な、稀な、長い認識配列は、本明細書におけるその適用にとって重大である。ある特定の実施形態では、SceIは、誘導プロモーター、例えば、アラビノースプロモーターの制御下にある。
【0060】
5.1.1.4 RecA
RecAは、相同組換え、DNA修復及びSOS応答の誘導において役割を有する細菌酵素である。RecAは、DNA鎖交換へのATP加水分解と共役する、すなわち、実際の組換え反応を触媒している。本明細書において記載されるような組換えの目的上、recA活性が、宿主細胞中に存在しなくてはならない。しかし、ほとんどの場合、野生型宿主細胞ゲノム中に存在するコピーは、組換えが起こるのに十分である。したがって、recAは、recAを内因性に発現する宿主細胞中に導入される必要はない。
【0061】
recAを発現しない宿主細胞では、recAは、ヘルパープラスミド上で宿主細胞中に導入され得る。RecA相同体は、ほとんどすべての生物中に存在する。したがって、当業者ならば、任意のrecA機能的遺伝子は、本明細書に記載される方法に従って使用され得る、すなわち、宿主細胞中のその天然の存在に基づいて使用されるか、又はrecA機能を宿主細胞、例えば、recAを天然には含まない宿主細胞に導入することによって使用されることを理解するであろう。
【0062】
5.1.1.5 条件付き複製起点
複製起点は、ヘルパープラスミドのDNA複製にとって、また細胞分裂の際に娘細胞へのプラスミドコピーの分布にとって必要である。条件付き複製起点は、細胞中のプラスミドコピー数を増強又は低減するよう使用され得る。例えば、温度感受性複製起点は、本明細書において記載される方法において使用され得る。このような複製起点は、37℃を上回る温度で非機能的であり、プラスミド喪失をもたらす。その他の条件付き複製起点は、当技術分野で公知であり、本明細書において記載される方法とともに使用され得る[26]。条件付き複製起点の例示的一覧は、表5に提供されている。
【0063】
特定の実施形態では、本明細書において使用される複製起点は、温度感受性pSC101複製起点であり[27]、これは、高温での増殖の際にプラスミドの喪失をもたらす。使用され得るその他の複製起点として、pMB1、ColE1、R100、IncW及びその他由来のものが挙げられる(例えば、[28]を参照のこと)。
【0064】
5.1.1.6 誘導プロモーター及び誘導物質
連続組換えが促進される場合には不要な副反応が起こり得るので、ヘルパープラスミド機能を制御する能力は、細胞増殖の間の限定された時間、組換え活性を低減するために重要である。したがって、誘導プロモーター及び誘導物質は、ヘルパープラスミドの特定の構成成分が、望ましい場合にのみ発現されることを確実にするために利用され得る。誘導プロモーターの例として、制限するものではないが、araBADプロモーター系(アラビノースの存在によって誘導可能である)及びtacプロモーター(IPTGの存在によって誘導可能である)が挙げられる。表7は、本明細書に記載される方法に従って使用され得る誘導可能な構成成分のさらなる一覧を提供する。
【0065】
5.1.2 ドナープラスミド
本明細書において記載されるドナープラスミドは、所望の異種挿入DNA配列を宿主細胞に「供与し」、異種挿入DNAを安定に組み込んでいる宿主細胞をもたらす。
【0066】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法において使用されるドナープラスミドは、プラスミドpDOC-C(Gene bank GQ889494.1;[11])をベースとしている。pDOC-Cは、pEXT100Tの誘導体である[29]。プラスミドは、選択のためのアンピシリン耐性遺伝子(ampR)、複製のための起点(oriT)及びsacB遺伝子を含有する。SacBは、枯草菌(Bacillus subtilis)に起因するレバンスクラーゼオペロンの分泌タンパク質である。スクロースの存在下では、sacBは、致死性を付与する。したがって、培地にスクロースを簡単に添加することによって、sacBは、プラスミドを保有する細胞に対して対抗選択するためのシステムとして使用され得る[30]。さらに、pDOC-Cは、in vivo線形化のためのSceI部位に挟まれている、多重クローニング部位をコードする。
【0067】
以下は、本明細書において記載されるヘルパープラスミド中に導入され得る特定の構成成分である。
【0068】
5.1.2.1 選択可能マーカー
本明細書において記載されるドナープラスミド上に存在する選択可能マーカーは、上記の節5.1.1.1において提供されるもの並びに以下の表6において列挙されるものと同一の一覧から選択され得る。その他の選択系も使用され得、例えば、栄養要求性マーカーに基づいた選択系は、挿入事象のための選択にとって有用であろう。アクセプター株が、株を栄養要求性(すなわち、その増殖が特定の培地構成成分に依存する)にする遺伝子中に欠失を含有する場合には、この遺伝子が、DNA挿入部分に含まれ得る。
【0069】
特定の実施形態では、ドナープラスミドは、clmR及び/又はkanRカセットを含む。
【0070】
5.1.2.2 異種挿入DNA
当業者ならば、任意の遺伝子又は遺伝子の組合せが、異種挿入DNA中に含まれ、続いて、本明細書において記載される方法を使用して宿主細胞ゲノム中に挿入され得ることは容易に理解するであろう。
【0071】
特定の実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞中に挿入される異種挿入DNAは、遺伝子クラスターを含む。特定の実施形態では、遺伝子クラスターは、莢膜多糖をコードするものである。別の特定の実施形態では、遺伝子クラスターは、O抗原をコードするものである。このような挿入された遺伝子クラスターを含む宿主細胞は、例えば、ワクチンとして使用され得る組換え糖タンパク質を合成するために使用され得る。
【0072】
当業者ならば、本発明が、宿主細胞のゲノム中へのDNAの大きな配列の安定挿入を可能にすることを理解するであろう。例えば、DNA配列は、1kbから最大40kbを含み得る。ある特定の実施形態では、異種挿入DNAは、8kb、9kb、10kb、11kb、12kb、13kb、14kb、15kb、16kb、17kb、18kb、19kb又は20kb超である。ある特定の実施形態では、異種挿入DNAは、25kb超である。ある特定の実施形態では、異種挿入DNAは、30kb超である。ある特定の実施形態では、異種挿入DNAは、35kb超である。ある特定の実施形態では、異種挿入DNAは、40kb超である。
【0073】
一実施形態では、本明細書において記載される方法は、大腸菌(E. coli)株のrfbクラスターを含むDNA配列を宿主細胞中に挿入するために使用される。挿入されるrfbクラスターは、当技術分野で公知の任意のO血清型/O抗原、例えば、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、又はO187、及びその亜血清型に属するものであり得る。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0074】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、シュードモナス属(Pseudomonas)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、シュードモナス属(Pseudomonas)の株は、緑膿菌(P.aeruginosa)株である。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0075】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、サルモネラ属(Salmonella)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、サルモネラ属の株は、サルモネラ菌(S.enterica)の株である。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0076】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、エルシニア属(Yersinia)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0077】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0078】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0079】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0080】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、バークホルデリア属(Burkholderia)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0081】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、シゲラ属(Shigella)の株のrfbクラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0082】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、生物の莢膜多糖遺伝子クラスターを含むDNA配列を、宿主細胞中に挿入するために使用される。特定の実施形態では、生物は、大腸菌(E. coli)の株である。別の特定の実施形態では、生物は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の株(例えば、肺炎球菌(S.pneumoniae)、化膿連鎖球菌(S.pyrogenes)、群溶血性連鎖球菌(S.agalacticae))、スフィロコッカス属(staphylococcus)の株(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus))、バークホルデリア属の株(例えば、B.マレイ(B.mallei)、B.シュードマレイ(B.pseudomallei)、B.タイランデンシス(B.thailandensis))である。特定の実施形態では、宿主細胞は、原核生物の宿主細胞である。別の特定の実施形態では、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)である。
【0083】
別の実施形態では、本明細書において記載される方法は、ウンデカプレニルピロリン酸上にオリゴ糖又は多糖を合成する1種以上の酵素を含むDNA配列を挿入するために使用される。
【0084】
特定の実施形態では、宿主細胞は、前記宿主細胞中に、rfbクラスターの外側にコードされる遺伝エレメントを導入することによって最適化される。例えば、rfbクラスター及び莢膜多糖クラスターの外側に見られ、組換え多糖を修飾する、グリコシルトランスフェラーゼ及びアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子が、宿主細胞中に導入され得る。別の例として、大腸菌(E. coli)及びシゲラ属(Shigella)O抗原には、プロファージ遺伝子クラスター中にコードされるグリコシルトランスフェラーゼがある[31、32]。これらの遺伝子クラスターは、gtrと呼ばれ、単一のグルコース残基をウンデカプレノール-ホスフェートに付加するグリコシルトランスフェラーゼ(GtrA)、グルコースリン酸が結合しているウンデカプレノールを、膜の周辺質面にフリップするGtrB、及び次いで、ウンデカプレニルリン酸が結合しているグルコースを、増大しているO抗原鎖に転移する特定のGtr転移酵素からなるオペロンに組織されている。このような遺伝子を含むDNAは、本明細書において記載される宿主細胞中に導入され得る。
【0085】
同様の修飾は、アセチル化である。O抗原のアセチル化は、シゲラ属(Shigella)においてよく見られ、より少ない程度で、大腸菌(E. coli)において見られる。修飾は、rfbクラスター内(大腸菌(E. coli)O16)にコードされることもあり、rfbクラスターの外(S.フレックスネリ(S.flexneri)3a)にもコードされる単一のアセチルトランスフェラーゼによって触媒される[33]。このようなアセチルトランスフェラーゼをコードするDNAは、本明細書において記載される宿主細胞中に導入され得る。
【0086】
O抗原の分枝及び修飾は、多糖に対する効率的な、特異的免疫応答にとって重要であることが多い。したがって、これらの修飾経路は、天然に見られるすべての可能性あるエピトープを含有するコンジュゲートを産生する挿入された産生株中に含まれ得る。
【0087】
本発明のさらなる実施形態は、誘導プロモーター系によって制御される組換えタンパク質産生のための発現カセットの挿入である。これは、発現カセットだけでなく、調節タンパク質の発現構築物も含有する大きなDNAストレッチが、示された技術の合理的な標的であることを意味する。
【0088】
本明細書に記載される方法に従って宿主細胞中に挿入され得るその他のDNA配列として、制限するものではないが、既知供給源に由来するオリゴサッカリルトランスフェラーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼ、例えば、原核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼ並びに/又は真核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼ及びグリコシルトランスフェラーゼが挙げられる。
【0089】
(a)相同性の領域の選択
本明細書に記載される方法に従って使用するための相同領域(HR)の長さは、実験的に決定され得る。一般に、HRは、約0.1kbから3.0kb又はそれ以上の範囲の長さを有し得る。ある特定の実施形態では、HRは、0.1kbから0.5kb、0.5kbから1kb、1kbから3kb、3kbから5kb、5kbから10kb、10kbから15kb、15kbから20kb又は20kb超である。ある特定の実施形態では、HRは、同一の長さのものであるか、同等な長さである。ある特定の実施形態では、HRは、同一の長さのものではなく、又は同等な長さではない。
【0090】
HR間の距離はまた、実験法によって決定され得る。HR間の距離は、.1kbから12kbの範囲又はそれ以上であり得、異種挿入DNA及び/又は欠失されるべき宿主細胞ゲノム中のDNAのストレッチの長さによって決定され得る(例えば、宿主細胞ゲノムの長いストレッチが、それらが宿主細胞の生存にとって必須の遺伝子を含まない限り、欠失され得る)。異種DNA挿入の位置は、HRの配列によって定義される。したがって、挿入は、宿主細胞のゲノム中の事実上任意の位置で実施され得る(例えば、宿主細胞の任意の染色体上の任意の位置で)。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、ドナープラスミドのHRが、例えば、標的染色体中ではなく宿主細胞中に存在する標的プラスミド上に存在する限り、大きなDNAの部分を標的細胞中に存在するプラスミド中にクローニングするために使用され得る。
【0091】
本明細書において記載される方法の重要な態様は、DNA挿入部分が、相同組換え領域(HR1及びHR2、
図1参照のこと)を相応して選択することによって選択されるゲノム位置中に挿入されるものである。HR1及びHR2は、ドナープラスミド上のDNA挿入部分を挟み、また、挿入後にDNA挿入部分によって置換されるDNAも挟む。以下に提供される実施例では、標的染色体中で互いに3kb(wecA-wzzEの置換)又は12kb(rfbクラスターの置換)離れて位置するHRを選択し、挿入の成功が観察された。
【0092】
挿入位置は、制限するものではないが、以下を含めた複数の方法で選択され得る:I)挿入の領域は、それを所望のものと置換することによって競合又は干渉する可能性がある経路を除去することが望ましいので選択され得る(以下の実施例を参照のこと)。II)挿入は、標的細胞が同様のクラスターを天然に含有する位置で選択され得る。次いで、発現レベル及び位置は、最適発現のためにバランスをとられ得る。III)挿入位置は、挿入されているDNAとは無関係であり得、組換えDNA挿入部分が特定の位置で示す発現レベルのために完全に経験的に選択され得る。すなわち、複数の種々の無作為な挿入が行われ、最良の産生株が選択され得る。またIV)挿入は、望ましくない機能を欠失し得るか、又は組換えタンパク質の選択に使用され得る機能を欠失し得る。
【0093】
(b)挿入部位でのDNAの欠失
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法は、宿主細胞DNAの欠失、例えば、挿入されたDNAの所望の結果を干渉し得る1種以上の遺伝子をコードするゲノムDNAの欠失をもたらす。ある特定の実施形態では、除去されるべき宿主細胞ゲノムDNAは、異種挿入DNAと直接置換される。この概念、すなわち、それを所望のものと置換することによって競合又は干渉する可能性がある経路を除去することは、DNA挿入の部位を選択する合理的な方法である。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書において記載される方法を使用して作製された改変された宿主細胞を用いてタンパク質糖コンジュゲートを操作することが望ましい場合には、制限するものではないが、waaL、腸内細菌共通抗原(ECA)遺伝子クラスター(wecクラスターとも呼ばれる)中にコードされる遺伝子、gtrプロファージ遺伝子クラスター遺伝子、ヌクレオチド糖生合成に関与する遺伝子、周辺質プロテアーゼをコードする遺伝子及びUnd-P生合成及びリサイクリング遺伝子を含めた、糖タンパク質収量を低減するタンパク質をコードする遺伝子を欠失させることは有用である。いくつかの場合には、宿主細胞グリコシルトランスフェラーゼは、DNA挿入部分によってコードされる組換え多糖産生に干渉し得る。したがって、本発明のさらなる実施形態は、望ましくない特徴を有するハイブリッド構造をもたらす組換え多糖を修飾する宿主細胞グリコシルトランスフェラーゼの欠失である。
【0095】
(c)挿入されたDNAの除去
不要な、不必要な配列は、組換え細菌株がGIMP下で臨床材料産生のために使用される場合には懸念となる。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法に従って作製された宿主細胞から補助的DNA配列が、ひとたび、それらがもはや必要ではなくなると除去される。例えば、対象のDNAとともに挿入される選択カセットは、それらがもはや作製された宿主細胞と関連していないように、後に除去され得る。DNAの挿入後にこのようなエレメントを除去するために、種々の方法が使用され得る[34]。例えば、FRT/FLP由来の、部位特異的組換えが使用され得る[35](実施例参照のこと)。このような場合には、除去される配列を挟むFLP配列にとって特異的であるリコンビナーゼ(例えば、28bpの配列を認識するFLPリコンビナーゼ)は、配列を組換え、それによって、これらの特異的配列間のDNAを切除できる。代替的な切除系は、loxP/Cre、及びdifXer系である[14、36]。
【0096】
5.1.2.3 その他の修飾
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される糖コンジュゲートは、最適増殖培地において産生される。ある特定の実施形態では、増殖培地は、(i)培地中の酵母抽出物の量(例えば、5〜35g/l)、(ii)培地のMg
2+濃度(例えば、0〜25mM)、(iii)培地のペプトン抽出物濃度(例えば、5〜25g/l)、(iv)培地のトリプトン抽出物濃度(例えば、5〜25g/l)、及び/又は(v)培地への分子シャペロンの添加、例えば、トレハロース(例えば、25mM〜50mM)、エチレングリコール(例えば、0.5%)、グルタミン酸(例えば、0.1M)、プトレシン(例えば、25mM)、トリメチル-N-オキシド(例えば、5mM)及び/又はL-プロリン(例えば、5mM)の添加、のうち1つ以上を変更することによって最適化される。
【0097】
ある特定の実施形態では、増殖培地は、培地のpHを変更することによって最適化される。例えば、pH6.5〜8.5の変動は、糖コンジュゲート収率に対する効果について評価され得る。特定の遺伝子は、特定のpHで最適に機能する。したがって、増殖培地は、特定の遺伝子の最適化のために選択されたpH値で使用され得る。例えば、PglB活性は、約pH8で最適である。したがって、特定の実施形態では、本明細書において記載される方法における宿主細胞の増殖は、pH8で実施される。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される方法における宿主細胞の増殖は、pH 4〜6、5〜7、6〜8又は7〜9の範囲のpHで実施される。
【0098】
5.1.3 プラスミド導入の方法
当業者に公知の任意の方法が、プラスミド、例えば、ドナー及びヘルパープラスミド並びにDNAを、宿主細胞中に導入するために使用され得る。このような方法として、制限するものではないが、エレクトロポレーション、熱ショックによる化学的形質転換、天然形質転換、ファージ形質導入及びコンジュゲーションが挙げられる。
【0099】
5.1.4 宿主細胞
本明細書において記載される方法によって操作された宿主細胞が、本明細書において包含され、ここで、前記宿主細胞は、対象のタンパク質をコードする1種以上の遺伝子を含む。特定の実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞によって産生されるタンパク質は、抗原、例えば、ワクチンにおいて使用され得るウイルス又は細菌抗原である。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞によって産生されるタンパク質は、キャリアタンパク質であり、ここで、前記キャリアタンパク質は、1つ以上の有益な特徴を有するよう、本明細書において記載される宿主細胞によって修飾される、例えば、キャリアタンパク質は、グリコシル化される。
【0100】
ヘルパー及びドナープラスミド中にコードされるエレメントが、特定の宿主細胞において本発明が使用され得るかどうかを決定する。以下の実施例は、グラム陰性大腸菌(E. coli)宿主細胞における使用を記載する。しかし、古細菌、原核生物宿主細胞及び真核生物宿主細胞を含め、当業者に公知の任意の宿主細胞は、DNAの挿入のためのアクセプター細胞として使用され得る。原核生物宿主細胞の例として、制限するものではないが、エシェリキア属(Escherichia)の種、シゲラ属(Shigella)の種、クレブシエラ属(Klebsiella)の種、キサントモナス属(Xhantomonas)の種、サルモネラ属(Salmonella)の種、エルシニア属(Yersinia)の種、ラクトコッカス属(Lactococcus)の種、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の種、シュードモナス属(Pseudomonas)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の種、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種、ブドウ球菌属(staphylococcus)の種、バチルス属(Bacillus)の種及びクロストリジウム属(Clostridium)の種が挙げられる。
【0101】
5.1.5 分析方法
本発明の機能的適用のために、プラスミド維持(ヘルパープラスミド、ドナープラスミド)及びDNA挿入部分選択のために異なる選択系の組合せを使用することが必要である。これらの選択系は、互いに適合しなくてはならない、すなわち、それらは、既存の系(specR、ampR及びclmR又はkanR)、又は有用な抗生物質カセットの任意の代替組合せ及び/若しくは代替プラスミド選択系におけるようであり得る。
【0102】
候補挿入クローンの遺伝子型は、DNA分析に使用される任意の方法によって調べられ得る。スクリーニングは、染色体挿入位置との関連でDNA挿入部分の存在を分析することに基づいていなければならない。これは、DNA挿入部分は、標的部位に隣接して見出される、すなわち、標的部位領域の外側の配列であるはずであるということを意味する。例えば、PCRは、O抗原クラスターが異なるものと交換される場合に、組換えによって切除された遺伝子がないことを示すために行われ得る。又は、DNA挿入部分の存在を示すために使用され得る。又は、HRの両側に位置するオリゴヌクレオチドを使用してDNAストレッチを増幅するために使用され得、これは、染色体DNA及びDNA挿入部分の結合が起こったことを示す。DNA塩基配列決定法は、同一の結果を示し得る、すなわち、DNA挿入部分配列は、相同組換えによって影響を受けない染色体DNA配列に連続して連結されなくてはならない。又は、サザンブロットは、DNA挿入部分を含有する染色体DNA断片及び挿入(HR)部位に隣接する影響を受けない染色体配列を同定するために使用され得る。又は、DNA挿入部分の一片に特異的なPCRプローブを用いるコロニーハイブリダイゼーションが使用され得る。
【0103】
DNA挿入部分の存在を示す別の方法は、挿入された遺伝子の活性を評価することによる。候補クローンの表現型分析によって、DNA挿入部分の活性について調べることが可能となるが、正しい挿入位置については可能とならない。以下に示される実施例では、組換え多糖生合成遺伝子クラスターが挿入され、したがって、組換えられた細胞における挿入後の多糖の存在を示す簡単な実験は、組換えの成功を確認するのに十分である。これは、おそらくは、必ずしもそうではないが、SDS PAGE又はクロマトグラフィーによる細胞抽出物の分離と、それに続く、ウエスタンブロッティング又はELISAと組み合わせた、多糖特異的抗血清を使用する免疫ブロット(ウエスタンブロット、コロニーブロット、ドットブロットなど)によって行われ得る。また、MS、NMR、HPLCのような高解像度技術又は産物の化学的若しくは物理的同定法も、DNA挿入部分活性を確認するために有用である。
【0104】
5.2 適用
5.2.1 タンパク質グリコシル化
ある特定の実施形態では、本明細書において提供された改変された宿主細胞は、タンパク質グリコシル化のために使用され得る。タンパク質グリコシル化は、コンジュゲートワクチン、すなわち、多糖及びワクチンが設計される病原体のタンパク質抗原を含有するワクチンを産生するよう設計され得る。
【0105】
5.2.1.1 抗原
以下の多糖抗原と関連している遺伝子をコードするDNAが、本明細書に記載される方法に従う挿入DNAとして使用され得る:
【0106】
大腸菌(E. coli)のO抗原(O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、O187)、サルモネラ属(Salmonella)の種(S.エンテリカ亜種エンテリカ(S.enterica subsp. Enterica)、S.エンテリカ亜種サラメ(S.enterica subsp. Salamae)、S.エンテリカ亜種アリゾネ(S.enterica subsp. arizonae)、S.エンテリカ亜種ジアリゾネ(S.enterica subsp. Diarizonae)、S.エンテリカ亜種ハウテネ(S.enterica subsp. Houtenae)、S.ボンゴリ(S.bongori)及びS.エンテリカ亜種インディカ(S.enterica subsp. Indica)並びにO型1〜67([37]に詳述される)、シュードモナス属(Pseudomonas)の種(緑膿菌(P.aeruginosa)O血清型1〜20[38])、クレブシエラ属(Klebsiella)の種(特に、K.ニューモニア(K.pneumonia)血清型O1、O2(及び亜血清型)、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、[39])、アシネトバクター(Acinetobactor)O抗原(特に、[40]において同定されたA.バウマンニイ(A.baumannii)O抗原)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)O抗原(血清型A、B、C、D、E、F、G、H、I J、K、L1、L2、L3)、コレラ菌(Vibrio cholera)O抗原O1〜155、リステニア属(Listeria)の種、特に、L.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)1、2、3、4型及びそれらの亜血清型、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)血清型1〜15 O抗原、ボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)O抗原、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)及びシュードマレイ(pseudomallei)O抗原、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、カンピロバクター属(Campylobacter)の種(C.ジェジュニ(C.jejuni));クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(血清型A、G、H、K、S1、S4、D、Cd-5、K Tomaら、1988及びC.パーフリンジェンス(C.perfringens)血清型A、B、C、D及び(und)E)の莢膜多糖、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)5及び8型、ストレプトコッカス・ピロゲネス(Streptococcus pyrogenes)(B群連鎖球菌莢膜血清型多糖)、大腸菌(E. coli)、ストレプトコッカス・アガラクチカエ(Streptococcus agalacticae)(A群連鎖球菌莢膜多糖)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)(血清型A、B、C、W、Y、X)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)莢膜多糖I〜V型;及びその他の表面多糖構造、例えば、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)糖脂質([41])、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meringitidis)ピリンOグリカン[42、43]及びリポオリゴ糖(LOS)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)LOS、大形リーシュマニア(Leishmania major)リポホスホグリカン[44、45])、腫瘍関連炭水化物抗原(、マラリアグリコシルホスファチジルイノシトール、結核菌アラビノマンナン[46]。
【0107】
5.2.1.2 キャリアタンパク質
コンジュゲートワクチンの産生において使用するのに適した任意のキャリアタンパク質が、本明細書において使用され得る。例示的キャリアタンパク質として、制限するものではないが、緑膿菌(P.aeruginosa)(EPA)外毒素A、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の解毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌(E. coli)FimH、大腸菌(E. coli)FimHC、大腸菌(E. coli)易熱性エンテロトキシン、大腸菌(E. coli)易熱性エンテロトキシンの解毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の解毒化変異体、大腸菌(E. coli)satタンパク質、大腸菌(E. coli)satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA及びC.ジェジュニ(C.jejuni)天然糖タンパク質が挙げられる。
【0108】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるコンジュゲートワクチンの作製において使用されるキャリアタンパク質は、修飾される、例えば、タンパク質が、あまり毒性ではない、及び/又はグリコシル化をより受けやすいなどのような方法で修飾される。特定の実施形態では、本明細書において記載されるコンジュゲートワクチンの作製において使用されるキャリアタンパク質は、より低濃度のタンパク質が投与されることを可能にする方法で、例えば、免疫原性組成物で、そのバイオコンジュゲートの形態で、キャリアタンパク質中のグリコシル化部位の数が最大化されるように修飾される。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるキャリアタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は通常、キャリアタンパク質と関連しているよりも多い(例えば、その天然の/自然な、例えば、「野生型」状態でキャリアタンパク質と関連しているグリコシル化部位の数に対して)グリコシル化部位を含むように修飾される。特定の実施形態では、グリコシル化部位の導入は、タンパク質の一次構造中のどこかにグリコシル化コンセンサス配列を挿入することによって達成される。このようなグリコシル化部位の導入は、例えば、タンパク質の一次構造に新規アミノ酸を付加すること(すなわち、グリコシル化部位が全部又は一部付加される)によって、又はタンパク質中の既存のアミノ酸を突然変異させて、グリコシル化部位を作製すること(すなわち、タンパク質にアミノ酸は付加されないが、タンパク質の選択されたアミノ酸がグリコシル化部位を形成するよう突然変異される)によって達成され得る。当業者ならば、タンパク質のアミノ酸配列は、当技術分野で公知のアプローチ、例えば、タンパク質をコードする核酸配列の改変を含む組換えアプローチを使用して容易に改変され得ることは認識するであろう。特定の実施形態では、グリコシル化コンセンサス配列は、キャリアタンパク質の特定の領域、例えば、タンパク質のN若しくはC末端でタンパク質の表面構造中、及び/又はタンパク質の塩基でジスルフィド橋によって安定化されているループ中に導入される。ある特定の実施形態では、古典的な5アミノ酸のグリコシル化コンセンサス配列が、より効率的なグリコシル化のためにリシン残基によって伸長され得、したがって、挿入されるコンセンサス配列は、挿入されるべき、若しくはアクセプタータンパク質アミノ酸と置き換わる5、6又は7個のアミノ酸をコードし得る。
【0109】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるコンジュゲートワクチンの作製において使用されるキャリアタンパク質は、「タグ」、すなわち、キャリアタンパク質の単離及び/又は同定を可能にするアミノ酸の配列を含む。例えば、本明細書において記載されるキャリアタンパク質へタグを付加することは、そのタンパク質の精製、ひいては、タグのついたキャリアタンパク質を含むコンジュゲートワクチンの精製において有用であり得る。本明細書において使用され得る例示的タグとして、制限するものではないが、ヒスチジン(HIS)タグ(例えば、ヘキサヒスチジン-タグ又は6XHis-タグ)、FLAG-タグ及びHAタグが挙げられる。ある特定の実施形態では、本明細書において使用されるタグは、除去可能である、例えば、ひとたび、それらがもはや必要でなくなった時点での、例えば、タンパク質が精製された後の化学薬剤によるか、又は酵素的手段による除去で除去可能である。
【0110】
5.2.1.3 宿主細胞改変
ある特定の実施形態では、本明細書において記載されるコンジュゲートワクチンを産生するために使用される宿主細胞は、異種核酸、例えば、1種以上のキャリアタンパク質をコードする異種核酸及び/又は1種以上のタンパク質をコードする異種核酸、例えば、1種以上のタンパク質をコードする遺伝子を含むよう操作される。特定の実施形態では、グリコシル化経路(例えば、原核生物の及び/又は真核生物のグリコシル化経路)に関与するタンパク質をコードする異種核酸は、本明細書において記載される宿主細胞中に導入され得る。このような核酸は、制限するものではないが、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ及び/又はグリコシルトランスフェラーゼを含めたタンパク質をコードし得る。異種核酸(例えば、キャリアタンパク質をコードする核酸及び/又はその他のタンパク質、例えば、グリコシル化に関与するタンパク質をコードする核酸)が、当業者に公知の任意の方法、例えば、エレクトロポレーション、熱ショックによる化学的形質転換、天然形質転換、ファージ形質導入及びコンジュゲーションを使用して本明細書において記載される宿主細胞中に導入され得る。特定の実施形態では、異種核酸は、プラスミドを使用して本明細書において記載される宿主細胞中に導入される、例えば、異種核酸は、プラスミド(例えば、発現ベクター)によって宿主細胞において発現される。別の特定の実施形態では、異種核酸は、本明細書において提供される挿入の方法を使用して本明細書において記載される宿主細胞中に導入される。
【0111】
ある特定の実施形態では、さらなる改変が、本明細書において記載される宿主細胞中に導入され得る(例えば、組換え技術を使用して)。例えば、競合又は干渉する可能性があるグリコシル化経路の一部を形成する(例えば、宿主細胞中に組換えによって導入されるグリコシル化に関与する1種以上の異種遺伝子と競合又は干渉する)タンパク質をコードする宿主細胞核酸(例えば、遺伝子)が、それらを不活性/機能不全にする方法で宿主細胞バックグラウンド(ゲノム)において欠失又は改変され得る(すなわち、欠失/改変される宿主細胞核酸は、機能的タンパク質をコードしないか、又はどんなものであれタンパク質をコードしない)。ある特定の実施形態では、核酸が本明細書において提供される宿主細胞のゲノムから欠失される場合にはそれらは、望ましい配列、例えば、糖タンパク質産生にとって有用である配列によって置換される。このような置換は、本明細書において記載される挿入の方法のうち1種以上によってであり得、ここで、宿主細胞中に挿入される異種挿入DNAは、宿主細胞から欠失される遺伝子の機能にとって代わり得る。
【0112】
宿主細胞において欠失され(いくつかの場合には、その他の所望の核酸配列と置換され)得る遺伝子の例として、waaL(例えば、Feldmanら、2005年、PNAS USA 102:3016〜3021頁)、リピドAコア生合成クラスター、ガラクトースクラスター、アラビノースクラスター、コロン酸(colonic acid)クラスター、莢膜多糖クラスター、ウンデカプレノール-p生合成遺伝子、und-Pリサイクリング遺伝子、ヌクレオチドによって活性化される糖生合成に関与する代謝酵素、腸内細菌共通抗原クラスター及びgrabsクラスター様プロファージO抗原修飾クラスターなどの、糖脂質生合成に関与する宿主細胞の遺伝子が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞は、それらが、本明細書において記載される方法による宿主細胞のゲノムへの異種挿入DNAの挿入の結果として産生されるO抗原以外の任意のO抗原を産生しないように改変される。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞は、それらが、本明細書において記載される方法による宿主細胞のゲノムへの異種挿入DNAの挿入の結果として産生される莢膜多糖以外の任意の莢膜多糖を産生しないように改変される。
【0113】
5.2.1.4 糖コンジュゲート
本明細書において記載される方法は、グリコシル化されたキャリアタンパク質を含む糖コンジュゲートを産生するために使用され得る(例えば、節5.2.1.2を参照のこと)。特定の実施形態では、本明細書において記載された抗原(例えば、多糖)、例えば、節5.2.1.1に記載される抗原を用いてグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2を参照のこと)を含む糖コンジュゲートが本明細書において提供される。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、EPAである。
【0114】
特定の実施形態では、EPAと、1種以上の異なる多糖、例えば、節5.2.1.1に記載される1種以上の多糖とを含む糖コンジュゲートが本明細書において提供される。
【0115】
別の特定の実施形態では、大腸菌(E. coli)O1、O2、O4、O6、O7、O8、O11、O15、O16、O17、O18、O20、O22、O25、O73、O75、及び/又はO83のうち1種以上とコンジュゲートしているキャリアタンパク質を含む糖コンジュゲートが本明細書において提供される。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、EPAである。
【0116】
別の特定の実施形態では、1種以上の異なる緑膿菌(P.aeruginosa)多糖とコンジュゲートしているキャリアタンパク質を含む糖コンジュゲートが本明細書において提供される。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、EPAである。
【0117】
別の特定の実施形態では、1種以上の異なるK.ニューモニア(K.pneumonia)多糖とコンジュゲートしているキャリアタンパク質を含む糖コンジュゲートが、本明細書において提供される。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、EPAである。
【0118】
5.2.1.5 利点
本明細書において記載される糖コンジュゲートを産生する方法は、それらが、発酵の間の、染色体に挿入されたDNAの安定性、ひいては、対象のDNAの発現の増大のために、より少ないリスクで大規模発酵を可能にするので、特に商業上重要であり、関連がある。挿入DNA発現を維持するための既知方法は、挿入DNAを保有するエピソームをベースとする。これらのエピソームは、抗生物質選択によって維持されることを必要とする。したがって、本明細書において記載される方法は、とりわけ、ひとたび異種DNAが宿主細胞ゲノム中に挿入されると、発酵の間の抗生物質選択は必要ではないので、挿入されたDNAのプラスミド媒介性の発現を上回って有利である。すなわち、挿入DNAが染色体中に挿入される場合には、宿主ゲノムの複製とともに増殖するので選択される必要がない。さらに、どの世代(すなわち、宿主細胞複製のサイクル)についても、プラスミドを失うリスクが増大することが、プラスミド媒介性の系における公知の不利点である。このプラスミドの喪失は、細胞分裂の際の細胞分離の段階でのプラスミドの娘細胞への不適当な分布によることもある。大規模では、細菌細胞培養物は、より小さい発酵規模においてよりも多く複製して、高細胞密度に達する。したがって、より高い細胞安定性及び挿入DNA発現が、より高い生産収率につながり、明白な利点を提供する。細胞安定性は、さらに、規制当局による承認のためのプロセス合否基準であり、さらに、抗生物質選択は、一般に、種々の理由、例えば、抗生物質が、最終医薬品中に不純物として存在し、アレルギー反応を引き起こすリスクを有する、また、抗生物質は、抗生物質耐性を促進し得る(例えば、遺伝子導入又は耐性病原体の選択によって)ために、発酵の間は望ましくない。
【0119】
本明細書において記載される別の利点は、DNAの大きな断片(ピース)が一度で宿主細胞のゲノム中に挿入され得る(「一度の挿入で」)。宿主細胞ゲノム中にDNAを導入するための既存の方法は、相同組換えによる小さいDNA断片の反復挿入を採用する[47]。したがって、理論に制限されるものではないが、本明細書において記載される一度に挿入する方法は、それらが複数の挿入を避けることを可能にするので有利である。
【0120】
5.2.1.6 分析方法
本明細書において記載される糖コンジュゲートの構造組成及び糖鎖の長さを分析するために、種々の方法が使用され得る。
【0121】
一実施形態では、グリカンを分析するためにヒドラジン分解が使用され得る。最初に、製造業者の説明書に従ってヒドラジンとともにインキュベートすることによって、そのタンパク質キャリアから多糖が放出される(Ludger Liberateヒドラジン分解グリカン放出キット、Oxfordshire、UK)。求核試薬ヒドラジンは、多糖とキャリアタンパク質間のグリコシド結合を攻撃し、攻撃されたグリカンの放出を可能にする。この処置の間にN-アセチル基は失われ、再N-アセチル化によって再構成されなくてはならない。遊離グリカンは、炭素カラムで精製され、その後、フルオロフォル(fluorophor)2-アミノベンズアミドを用いて還元末端で標識される[48]。標識された多糖は、Royleら[49]のHPLCプロトコールに従って、GlycoSep-Nカラム(GL Sciences)で分離される。得られる蛍光クロマトグラムは、多糖の長さ及び反復単位の数を示す。構造情報は、個々のピークを集めること及び続いて、MS/MS分析を実施することによって収集され得る。それによって、単糖組成及び反復単位の配列が確認され得、さらに、多糖組成の均一性が同定され得る。ヒドラジン分解及び2AB標識後に得られたHPLCクロマトグラムが、実施例の1つで示されている(
図21)。MALDI-MS/MSによって低分子量の特異的ピークが分析され得、結果は、グリカン配列を確認するために使用される。各ピークは、特定の数の反復単位及びその断片からなるポリマーに対応する。したがって、クロマトグラムは、ポリマーの長さ分布を測定することを可能にする。溶出時間は、ポリマーの長さの指標であり、蛍光強度は、それぞれのポリマーのモル存在量に相関する。
【0122】
別の実施形態では、グリカン及び糖コンジュゲートを評価するためにSDS-PAGE又はキャピラリーゲル電気泳動が使用され得る。本明細書において合成されるO抗原グリカンのポリマーの長さは、直鎖状にアセンブルされている反復単位の数によって定義される。これは、通常のラダー様パターンは、グリカンを構成する異なる反復単位の数の結果であるということを意味する。したがって、大きさによって分かれるSDS PAGE又はその他の技術において互いに隣接する2つのバンドは、単一の反復単位のみで異なる。これらの個別の相違は、グリカンの大きさについて糖タンパク質を分析する場合に利用される。非グリコシル化キャリアタンパク質及び異なるポリマー鎖の長さを有する糖コンジュゲートは、その電気泳動移動度に従って分離する。糖コンジュゲートに存在する第1の検出可能な反復単位の数(n
1)及び平均反復単位の数(n
average)が測定される。これらのパラメータは、バッチ間一貫性又は多糖安定性を実証するために使用され得る。
【0123】
別の実施形態では、完全糖コンジュゲートの大きさを測定するために、高質量MS及びサイズ排除HPLCが適用され得る。
【0124】
別の実施形態では、多糖収量を測定するためにアンスロン-硫酸アッセイが使用され得る[50]。
【0125】
(a)グリコシル化部位使用の変化
挿入される系とは対照的に、3種のプラスミド系において、特定のタンパク質中の部位利用が変更されることを示すために、グリコシル化部位利用は、定量されなくてはならない。そうする方法は、以下に列挙されている。
【0126】
グリコペプチドLC-MS/MS:糖コンジュゲートをプロテアーゼを用いて消化し、ペプチドを、適したクロマトグラフィー法(C18、親水性相互作用HPLC HILIC、GlycoSepNカラム、SE HPLC、AE HPLC)によって分離し、MS/MSを使用して種々のペプチドを同定する。この方法は、化学的(スミス分解)若しくは酵素的方法によるこれまでの糖鎖短縮とともに、又はそれを伴わずに使用され得る。215〜280nmでのUV検出を使用するグリコペプチドピークの定量化によって、グリコシル化部位利用の相対的決定が可能となる。
【0127】
サイズ排除HPLC:より高いグリコシル化部位利用は、SE HPLCカラムからの早い溶出時間によって反映される。(a)も参照のこと。
【0128】
(b)均一性
糖コンジュゲート均一性(すなわち、結合している糖残基の均一性)は、グリカンの長さ及び流体力学半径を測定する方法を使用して評価され得る(上記及び節5.3.5を参照のこと)。
【0129】
5.2.2 その他の可能性ある臨床/実際の適用
本明細書において記載される方法は、宿主細胞ゲノム中に大きなDNA断片を導入することが望まれる任意の宿主細胞の構築のために使用され得、ここで、DNA断片は、挿入DNAを保持する宿主細胞株の産生(例えば、所望の産物、例えば、挿入DNAによってコードされるタンパク質を生成する宿主細胞株の大規模産生)の間、維持される。例えば、本明細書において記載される方法は、制限するものではないが、抗生物質、アルカロイド、カロテノイド、ニコチンアミド及び同一細胞内の複数の酵素反応によって合成されるその他の二次代謝物及び補助因子をコードする挿入されたDNAを含む宿主細胞を産生するために使用され得る。したがって、このような構成成分をコードする挿入されたDNAを含む宿主細胞が本明細書において提供される。
【0130】
5.2.3 タンパク質のより高い収量
組み込まれた株は、3プラスミド系と比較して低減された抗生物質選択負荷のために、糖コンジュゲートのより高い収量を作製し得る。さらに、細胞に対する、低減された代謝負荷のために、より少ないタンパク質分解が起こる。
【0131】
5.2.4 タンパク質のより高い均一性
組み込まれた株は、より短い、あまり広がっていない多糖の長さの分布を有する糖コンジュゲートを作製する。したがって、糖コンジュゲートは、特性決定しやすく、良好に定義される。さらに、挿入は、細胞に対する周辺質ストレスの程度を低減し得、これは、3プラスミド系と比較して、低減された抗生物質選択負荷による、発酵プロセスの間の産物の少ないタンパク質分解につながり得る。
【0132】
5.2.5 より高い産生株安定性
タンパク質グリコシル化系は、産生宿主中に3つの組換えエレメント:キャリアタンパク質発現DNA、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ発現DNA及び多糖発現DNAを必要とする。先行技術の細菌産生系は、これら3種のエレメントをプラスミド上に含有する。したがって、特に、プラスミドの維持のために使用される抗生物質は、GIMP材料の発酵の間に存在してはならないので、プラスミド喪失による製造の間の不安定性に対するリスクがある。挿入された株はさらに、可動エレメントをより少なく含有するので、多数の世代にわたってより安定である。これは、より大規模の発酵及びより長いインキュベーション時間(より多い世代数)が、より実現可能であることを意味する。さらに、選択のための抗生物質がないことは、感受性対象においてアレルギー反応を引き起こし得る微量の抗生物質がないために、より安全な産物を作製する[4]。
【0133】
5.2.6 産生プロセスのより高い再現性
挿入された株は、固定された染色体挿入のために、より遺伝的に安定であり、したがって、産生プロセスの間、例えば、挿入された異種DNAを含む宿主細胞の培養の間の所望のタンパク質産物のより高い再現性につながる。
【0134】
5.2.7 利益を調べるための分析方法
収量。収量は、制御され、最適化された条件下、バイオリアクター中で増殖された1リットルの細菌産生培養物に由来する炭水化物量として測定される。糖コンジュゲートを精製した後、炭水化物収量は、アンスロンアッセイ(例えば、節5.2.1.7を参照のこと)又は炭水化物特異的抗血清を使用するELISAのいずれかによって直接的に測定され得る。間接的測定は、タンパク質量(周知のBCA、ローリー又はブラッドフォード(bardford)アッセイによって測定された)並びにタンパク質1グラム当たりの理論上の炭水化物量を算出するためのグリカンの長さ及び構造を使用することによって可能である。さらに、収量はまた、揮発性バッファーから糖タンパク質調製物を乾燥させること及び重量を測定するために天秤を使用することによって測定され得る。
【0135】
均一性。均一性とは、グリカンの長さ及びおそらくは、グリコシル化部位の数の可変性を意味する。上記で列挙された方法は、この目的のために使用され得る。SE-HPLCは、流体力学半径の測定を可能にする。キャリア中のより多い数のグリコシル化部位が、より少ないグリコシル化部位を有するキャリアと比較して、流体力学半径のより多い変動につながる。しかし、単一グリカン鎖が分析される場合には、それらは、より制御された長さのために、より同質であり得る。グリカンの長さは、ヒドラジン分解、SDS PAGE及びCGEによって測定される(節5.1.2.7.を参照のこと)。さらに、均一性はまた、特定のグリコシル化部位使用パターンが、より広い/より狭い範囲に変化することを意味し得る。これらの因子は、グリコペプチドLC-MS/MSによって測定され得る(節5.1.2.7を参照のこと)。
【0136】
株安定性及び再現性。選択圧の不在下での細菌発酵の間の株安定性は、産生培養細胞における組換えDNAの存在又は不在を確認する直接及び関節法によって測定される。培養容量の影響は、世代時間の増大を意味する培養時間の延長によってシミュレートされ得る。発酵において世代がより多いほど、組換えエレメントが失われる可能性がより高い。組換えエレメントの喪失は、不安定性と考えられる。間接法は、組換えDNAとの選択カセットの関連、例えば、プラスミド中の抗生物質耐性カセットに利用する。産生培養細胞を、選択培地、例えば、抗生物質又は選択系と関連しているその他の化学物質を補充したLBプレート上にプレーティングし、耐性コロニーは、それぞれの選択化学物質と関連している組換えDNAについて陽性と考えられる。3プラスミド系の場合には、3種すべての抗生物質に対する耐性コロニーがカウントされ、3種すべての耐性を含有する細胞の割合が安定集団と考えられる。あるいは、選択の存在、不在下で、発酵の種々の時点での3種の組換えエレメントの組換えDNAの量を測定するために、定量的PCRが使用され得る。したがって、組換えDNAの相対及び絶対量が測定及び比較される。産生プロセスの再現性は、本出願において記載された方法による一貫性バッチの完全分析によって測定される。
【0137】
5.3 組成物
5.3.1 プラスミドを含む組成物
一実施形態では、本明細書において記載される1種以上のプラスミド、例えば、1種以上のドナー又はヘルパープラスミドを含む組成物が、本明細書において提供される。
【0138】
特定の実施形態では、ドナープラスミドを含む組成物が、本明細書において提供され、ここで、前記ドナープラスミドは、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む。
【0139】
別の特定の実施形態では、ヘルパープラスミドを含む組成物が、本明細書において提供され、ここで、前記ヘルパープラスミドは、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中には存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含む。
【0140】
別の特定の実施形態では、ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含む組成物が本明細書において提供され、ここで、前記ドナープラスミドは、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含み、前記ヘルパープラスミドは、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中には存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含む。
【0141】
5.3.2 宿主細胞を含む組成物
一実施形態では、本明細書において記載される宿主細胞を含む組成物が本明細書において提供される。このような組成物は、本明細書において記載されるコンジュゲートワクチンを作製するための方法において使用され得、例えば、組成物は、タンパク質の産生に適した条件下で培養され得る。その後、バイオコンジュゲートが、前記組成物から単離され得る。
【0142】
本明細書において記載される宿主細胞を含む組成物は、本明細書において記載される宿主細胞の維持及び生存に適したさらなる構成成分を含み得、宿主細胞によるタンパク質の産生にとって必要又は有益なさらなる構成成分、例えば、アラビノース、IPTGなどの誘導プロモーターのための誘導物質をさらに含み得る。
【0143】
5.3.3免疫原性組成物
5.3.3.1 グリコシル化タンパク質を含む組成物
一実施形態では、本明細書において記載されたDNA挿入法によって作製された宿主細胞によって産生された1種以上の糖コンジュゲートを含む免疫原性組成物が、本明細書において提供される。このような糖コンジュゲートは、タンパク質、例えば、キャリアタンパク質内にコードされるグリコシル化コンセンサス配列と結合しているO抗原グリカンを含み得る。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、1種以上の導入されたグリコシル化部位を含む外毒素Aであり得るか、又はキャリアタンパク質は、FimCHであり得、1種以上の導入されたグリコシル化部位を含む。その他の特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、1種以上の導入されたグリコシル化部位を含む大腸菌(E. coli)タンパク質抗原を含み得る。特定の実施形態では、O抗原は、病原体大腸菌(E. coli)分離株、例えば、O1、O2、O4、O7、O8、O9、O11、O15、O16、O17、O18;O20、O22、O25、O73、O75又はO83由来の大腸菌(E. coli)O抗原である。
【0144】
別の特定の実施形態では、本明細書において提供される免疫原性組成物は、本明細書において記載される抗原、例えば、節5.2.1.1において記載される抗原とコンジュゲートしているキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2に記載されるキャリアタンパク質)を含む。特定の実施形態では、キャリアタンパク質は、EPAである。別の特定の実施形態では、抗原は、大腸菌(E. coli)抗原、例えば、大腸菌(E. coli)多糖である。
【0145】
別の特定の実施形態では、本明細書において提供される免疫原性組成物は、O1血清型の大腸菌(E. coli)O抗原によってグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2において記載されるキャリアタンパク質、例えば、EPA)(O1-EPA)を含む。
【0146】
別の特定の実施形態では、本明細書において提供される免疫原性組成物は、O2血清型の大腸菌(E. coli)O抗原によってグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2において記載されるキャリアタンパク質、例えば、EPA)(O2-EPA)を含む。
【0147】
別の特定の実施形態では、本明細書において提供される免疫原性組成物は、O6血清型の大腸菌(E. coli)O抗原によってグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2において記載されるキャリアタンパク質、例えば、EPA)(O6-EPA)を含む。
【0148】
その他の特定の実施形態では、本明細書において提供される免疫原性組成物は、O1、O2、O4、O7、O8、O9、O11、O15、O16、O17、O18;O20、O22、O25、O73、O75又はO83血清型の大腸菌(E. coli)O抗原によってグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2に記載されるキャリアタンパク質、例えば、EPA)を含む。
【0149】
本明細書において提供される免疫原性組成物は、組成物が投与される宿主において免疫応答を誘発するために使用され得る。したがって、本明細書において記載される免疫原性組成物は、ワクチンとして使用され得、したがって、医薬組成物として製剤化され得る。特定の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、大腸菌(E. coli)による対象(例えば、ヒト対象)の感染の予防において使用される。特定の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、大腸菌(E. coli)の感染によって引き起こされる尿路感染に対するワクチンとして使用される。
【0150】
例えば、大腸菌(E. coli)の感染によって引き起こされる尿路感染に対するワクチンとして使用するための本明細書において記載される免疫原性組成物は、大腸菌(E. coli)抗原(例えば、節5.2.1.1において記載される大腸菌(E. coli)抗原)によってグリコシル化されたキャリアタンパク質(例えば、節5.2.1.2において記載されるキャリアタンパク質、例えば、EPA)を含み得る。特定の実施形態では、大腸菌(E. coli)抗原は、O1、O2、O4、O7、O8、O9、O11、O15、O16、O17、O18;O20、O22、O25、O73、O75又はO83血清型のO抗原である。
【0151】
別の特定の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、シュードモナス属(Pseudomonas)による対象(例えば、ヒト対象)の感染の予防において使用される。別の特定の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、シゲラ属(Shigella)による対象(例えば、ヒト対象)の感染の予防において使用される。
【0152】
本明細書において記載されるバイオコンジュゲートを含む組成物は、医薬投与において使用するのに適した任意のさらなる構成成分を含み得る。特定の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、一価製剤である。その他の実施形態では、本明細書において記載される免疫原性組成物は、多価製剤である。例えば、多価製剤は、2種以上の本明細書において記載されるバイオコンジュゲートを含む。
【0153】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、保存料、例えば、水銀誘導体チメロサールをさらに含む。特定の実施形態では、本明細書において記載される医薬組成物は、0.001%〜0.01%のチメロサールを含む。その他の実施形態では、本明細書において記載される医薬組成物は、保存料を含まない。
【0154】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物(例えば、免疫原性組成物)は、アジュバントを含むか、又はそれと組み合わせて投与される。本明細書において記載される組成物と組み合わせて投与するためのアジュバントは、前記組成物の投与の前、それと同時に又はその後に投与され得る。いくつかの実施形態では、用語「アジュバント」とは、本明細書において記載される組成物と併せて、又はその一部として投与される場合には、バイオコンジュゲートに対する免疫応答を増大、増強及び/又はブーストするが、化合物が単独で投与される場合には、バイオコンジュゲートに対する免疫応答を発生させない化合物を指す。いくつかの実施形態では、アジュバントは、ポリバイオコンジュゲートペプチドに対する免疫応答を発生させ、アレルギー又はその他の有害反応をもたらさない。アジュバントは、例えば、リンパ球動員、B及び/又はT細胞の刺激及びマクロファージの刺激を含めたいくつかの機序によって免疫応答を増強し得る。アジュバントの特定の例として、それだけに限らないが、アルミニウム塩(ミョウバン)(水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム及び硫酸アルミニウムなど)、3デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)(英国特許GB2220211を参照のこと)、MF59(Novartis)、AS03(GlaxoSmithKline)、AS04(GlaxoSmithKline)、ポリソルベート80(Tween 80、ICL Americas、Inc.)、イミダゾピリジン化合物(国際公開番号WO2007/109812として公開された国際出願番号PCT/US2007/064857を参照のこと)、イミダゾキノキサリン化合物(国際公開番号WO2007/109813として公開された国際出願番号PCT/US2007/064858を参照のこと)及びQS21(Kensilら、in Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach(Powell & Newman編、Plenum Press、NY、1995)、米国特許第5,057,540号を参照のこと)などのサポニンが挙げられる。いくつかの実施形態では、アジュバントは、フロイントのアジュバント(完全又は不完全)である。その他のアジュバントとして、任意選択で、モノホスホリルリピドA(Stouteら、N. Engl. J. Med. 336、86〜91頁(1997)参照のこと)などの免疫刺激剤と組み合わせた、水中油型エマルジョン(スクアレン又はピーナッツオイルなど)がある。別のアジュバントとして、CpG(Bioworld Today、1998年11月15日)がある。
【0155】
5.4 治療及び免疫感作の方法
一実施形態では、対象に、本明細書において記載される糖コンジュゲート又はその組成物を投与することを含む、対象において感染を治療する方法が、本明細書において提供される。特定の実施形態では、本明細書において記載される感染を治療するための方法は、有効量の本明細書において記載される糖コンジュゲート又はその組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0156】
別の実施形態では、対象に、本明細書において記載される糖コンジュゲート又はその組成物を投与することを含む、対象において免疫応答を誘導するための方法が、本明細書において提供される。特定の実施形態では、本明細書において記載される糖コンジュゲートに対する免疫応答を誘導するための方法は、有効量の本明細書において記載されるバイオコンジュゲート又はその組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0157】
別の実施形態では、本明細書において記載されるバイオコンジュゲート又はその組成物を使用して感染を予防するためのモノクローナル抗体の作製方法が、本明細書において提供される。
【0158】
特定の実施形態では、糖コンジュゲート又はその組成物が投与される対象は、感染、例えば、細菌感染を有するか、又はそれを受けやすいものである。別の特定の実施形態では、バイオコンジュゲート又はその組成物が投与される対象は、大腸菌(E. coli)に感染するか、又は大腸菌(E. coli)の感染を受けやすいものである。
【0159】
6 実施例
6.1 実施例1:大腸菌(E. coli)O1 O抗原コンジュゲート産生のための株構築
挿入のための第1のステップは、標準分子クローニング技術[1]によるドナープラスミドpDOC中へのO1 rfbクラスターのクローニングである。O1 rfbクラスター領域を、活性を確認するためにプラスミドpLAFR1中に(A、以下)、並行して、O1クラスターをゲノム中に挿入するためにドナープラスミドpDOC中にクローニングした(B、以下)。
【0160】
A. O1 rfbクラスター及びその1.5kbのフランキング領域を、コスミドベクターpLAFR1(GenBank:AY532632.1)中にサブクローニングした。オリゴヌクレオチド2193/2161を使用してupecGVXN032(StGVXN3736)と名付けられた臨床分離株の染色体DNAから、O1クラスターをPCRによって増幅した(表3を参照のこと)。オリゴヌクレオチド2193/2161は、O1 rfbクラスターを挟んでいる遺伝子中で、すなわち、galF中及びgndの後にアニーリングする。PCR産物を、p157のSgsI部位中にクローニングした。p157は、2種の相補的オリゴヌクレオチド(300/301)からなるカセットを含有するpLAFR1であり、これらは、EcoRI部位中にクローニングされ、その結果p947が得られた。p947を鋳型として使用し、オリゴヌクレオチド2198/2166を使用してPCRを実施して、5'末端のフランキング領域(galF')からクラスター中の最後の遺伝子(wekO)の末端まで、O1 rfbクラスターDNAを増幅した(
図3参照のこと)。産物をp967のBamHI/SgsI部位中にクローニングし、その結果、p985が得られた。p967は、pDOC-C(GenBank:GQ889494.1)からクローニングされ、MCS及びkanRカセットを含有していた(詳細については、節6.2を参照のこと)。p985を、p562へのさらなる挿入のためのO1 rfbクラスターのPCRのための鋳型として使用した(以下を参照のこと)。
【0161】
B. p562を以下のとおりに調製した:挿入部分は、2種のPCR産物及びオリゴヌクレオチド1187/1188を使用するアセンブリーPCRに起因して作製した(表3を参照のこと)。1種のPCR産物を、オリゴヌクレオチド1188/1189を使用してpKD3(GenBank:AY048742.1)から作製し(表3を参照のこと;clmRカセット及びFRT部位をコードする)、もう一方は、オリゴヌクレオチド1186/1187を用いるW3110ゲノムDNAのPCRに起因する3'相同領域とした(表3を参照のこと;すなわち、遺伝子間領域及びgnd遺伝子をコードする、W3110ゲノム中のO16 rfbクラスターのDNA下流)。アセンブルされたDNAを、BamHI/EcoRIを使用して切断し、pDOC-C中の同一部位中にクローニングし、その結果、p482が得られた。次いで、W3110染色体DNA及びオリゴヌクレオチド1171/1515を使用して、5'相同領域(galF'と示されるgalF遺伝子の一部及びgalFと第1のO16遺伝子の間の遺伝子間領域をコードする)のPCR産物を作製し、BamHI及びSpeIを用いて切断し、p482のSpeI/BamHI部位中にクローニングし、その結果、p562が得られた。
【0162】
p562は、5'及び3'相同領域(5':O16 rfbクラスターのrmlBの1kb上流、3':O16 rfbクラスター中の最後の遺伝子の1.6kb下流のDNA)をコードし、間にMCS及び反転したclmR耐性カセットを有する。MCSを使用して、オリゴヌクレオチド2214/2215を使用してp985から増幅したO1 rfbクラスターを挿入した。得られたプラスミドp1003を、O1 rfbクラスターの挿入のためのドナープラスミドとし、
図3A及び表1に図示されるようなエレメントを含有していた。
【0163】
挿入及び選択:ヘルパープラスミドp999(GenBank:GU327533.1)を、エレクトロポレーションによってW3110細胞中に導入した。p999の温度感受性複製表現型のために、得られた細胞を、p999の選択のためにスペクチノマイシンを補充したLB中で常に30℃で増殖させた。次のステップでは、p1003を、p999を含有するW3110細胞中にエレクトロポレーションによって導入した。細胞を、30℃でLB培地においてアンピシリン及びスペクチノマイシン耐性について選択した。プラスミドを、アクセプター細胞中に挿入して、同一細胞内でドナープラスミドDNAの存在下で、ヘルパープラスミド上にコードされる酵素の発現を可能にした。
【0164】
次いで、挿入手順を実施した、新たに形質転換された株を、アンピシリン及びスペクチコマイシン(specticomycin)の存在下、30℃でLB培地中、5ml規模で一晩、180rpmで増殖させた。高密度培養物の10μlを、spec及びampを補充したLB 1mlを含有する新規試験管に移した。次いで、新規培養物を、180rpmで2時間30℃で増殖させ、細胞を4℃、5000rpmで5分間遠心分離し、上清をspec、0.2%アラビノース(w/v)及び1mM IPTGを補充したLB培地と置換した。培地組成は、挿入を可能にするためにヘルパープラスミド選択並びにリコンビナーゼ及びSceIエンドヌクレアーゼ発現を支持する。細胞を再懸濁し、さらに30℃で4〜18時間180rpmでインキュベートした。
【0165】
培地変更後、種々の時点で、培養物の0.5mlを、clm(DNA挿入部分の選択のために)及び10%(w/v)スクロース(ドナープラスミドに対して対抗選択するために)を補充したLBプレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした(温度感受性ヘルパープラスミドの喪失について選択するために)。
【0166】
得られたコロニーを正しい挿入表現型についてスクリーニングするために、細胞を、spec、amp又はclmを補充したLBプレート上にレプリカプレーティングした。clmに対して耐性である(挿入部分の存在について)が、amp及びspecに対して感受性である(ドナー及びヘルパープラスミドの不在について)コロニーを、挿入についてさらに分析した。
【0167】
株がW3110に起因する置換されるDNAを失い、DNA挿入部分を含有していたことを確認するために、コロニーPCRを実施した。正しい表現型(アンピシリン感受性、クロラムフェニコール耐性、スペクチノマイシン感受性、スクロース耐性)を有する候補コロニーを選び取り、コロニーPCR試験に付した。PCR戦略[51]を、腸外大腸菌(E. coli)(ExPEC)株におけるO血清型の同定のために使用した。14種の一般的なExPEC O血清型のrfbクラスター中に存在する特有の遺伝子配列に対して特異的なオリゴヌクレオチド対を使用した。O1挿入の場合には、O1(2241及び2242)又はO16由来のwzxのオリゴヌクレオチド増幅部分を使用した。種々のクローンを調べた。O16特異的オリゴヌクレオチドを有するPCR産物の不在(図示せず)及びO1オリゴヌクレオチドを有する特異的シグナルの存在(
図3B)によって、いくつかのクローンにおいて、挿入の成功が確認された。得られた株は、W3110ΔrfbO16::rfbO1-clmRと名付けた。
【0168】
次のステップでは、報告されるように[35]、FLPリコンビナーゼを発現する温度感受性pCP20プラスミドを使用することによって、clmRカセットを、O1 rfbクラスターとともに挿入されたDNAから除去した。得られた細胞を、clmに対する感受性について試験し、次いで、さらに試験した。得られた株は、W3110ΔrfbO16::rfbO1と名付けた。
【0169】
さらに、最適糖コンジュゲート産生のために、産生株からO抗原リガーゼ(waaL)を欠失させた。これを、ファージ形質導入によって実施した。P1virファージ(大腸菌(E. coli)遺伝子ストックセンター12133番)を使用して、waaL遺伝子が、オリゴヌクレオチド623及び624を使用してpKD3からのPCRによって増幅されたclmRカセットによって置換されるW3110ΔwaaL::clmR株から溶解物を作製した[13、52]。ファージ形質導入をW3110ΔrfbO16::rfbO1で実施し、得られた株は、W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL::clmRと名付けた。その後、クロラムフェニコール耐性カセットを、FLP駆動組換えによって除去した(W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL)。
【0170】
組換え操作及び選択のどの段階でも、O1 wzxの存在についてのPCR試験を実施して、O1 rfbクラスターの存在を確認した(
図3B)。挿入の5'及び3'末端で組換えられた領域を特異的に増幅するオリゴヌクレオチド、すなわち、HR1及び2領域の外側にアニーリングする対を用いる、さらなるPCR試験が実施され得る(「5'及び3'移行領域PCR」)。例えば、W3110ゲノム中にアニーリングするために1種のPCRオリゴヌクレオチドが作製され得、もう一方は、DNA挿入部分中でアニーリングするために作製され得る。したがって、陽性PCRシグナルは、挿入が成功である場合にのみあり得る。次いで、得られたPCR産物は、染色体アクセプター株DNAとDNA挿入部分のライゲーションを確認するために配列決定され得る。さらに、PCR及び配列決定は、ファージ形質導入及びclmRカセット除去改変を確認するために使用され得る。
【0171】
挿入されたDNAの活性を確認するために、O1抗原多糖を含有する挿入された株の糖脂質産生を、株構築の種々の段階で試験した。最初の挿入実験から得られた候補クローンを、抗生物質及びスクロース感受性表現型によるプレスクリーニング並びにPCR試験からの陽性結果に従って選択した。細胞をLB培地において一晩増殖させ、全細胞抽出物を調製した。作製された糖脂質を分析するために、抽出物を、プロテイナーゼKを用いて処理して、タンパク質によるあり得る干渉を除去した。得られたサンプルをSDS PAGEで泳動させ、銀染色によって染色するか、又はニトロセルロース膜にトランスファーした後に、抗O1特異的抗血清を使用して免疫染色することによって検出した。推定上の組み込み体(integrands)から得た抽出物を銀染色によって分析した場合には、対照株(レーン3)においてと同様、LPSを示す25〜55kDaの間のラダー様パターンが観察された(
図4A、上のパネル、レーン1、2)。ウエスタンブロッティングは、同一分子量範囲でラダー様シグナルを示し、臨床O1分離株に起因する対照LPS(レーン3)と同様、LPSがO1抗原を含有していた(
図4A、下、レーン1、2)ことが確認された。これらの結果から、W3110ΔrfbO16::rfbO1-clmRにおけるリピドA上に提示されるO1抗原の産生が確認される。
【0172】
W3110ΔrfbO16::rfbO1株を、ウエスタンブロッティングによって再度試験して(clmRカセットの除去後)(
図4B、レーン1、2)、改変にもかかわらないO1 LPS産生を確認した。株W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL::catにおけるファージ形質導入によるwaaL欠失を確認するために、LPS産生を再度分析した(
図4C、レーン1)。予測されたように、銀染色アッセイからラダー様シグナルが消失した(上)。ウエスタンブロット解析は、waaL遺伝子を依然として含有しており、銀染色によって可視化されたLPSを作製できた対照株(W3110ΔrfbO16::rfbO1)(レーン2)よりも低密度ではあるが、ラダー様シグナルを依然として検出した(レーン1、下)。より弱いシグナルは、waaL遺伝子の欠失のためにリピドAに転移され得ない、Und-PP連結O1 O抗原に起因する。これは、予測されたように、ファージ形質導入によるwaaL欠失が生じたことを意味し、これによって、遺伝子型W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL::catが確認される。選択されるクローンを、FLP媒介性の組換えと同一の方法で、clmRカセット除去について選択した。得られたクローン(W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL)を、銀染色及びウエスタンブロッティングによって分析し(
図4D)、
図4Dにおいて観察されるものと同等の表現型を示した、レーン1)。
【0173】
最終株W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaLを、さらなる方法によって特性決定した。それらの細胞によるUnd-PPでのO抗原の産生を確認するために、蛍光2AB標識と、それに続くHPLC及びMS/MSによる、脂質が連結しているオリゴ糖(Und-PP連結O抗原)の分子特性決定を可能にする方法を使用した。W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL及び対照株(W3110ΔwaaL)を、振盪フラスコ中、37℃で一晩増殖させた。OD
600が400に相当する細胞を回収し、0.9% NaClで1回洗浄した。洗浄した細胞ペレットを凍結乾燥した。ボルテックス処理及び氷上で10分間のインキュベーションの反復ラウンドによって、95%メタノール(MeOH)を用い乾燥細胞から脂質を抽出した。懸濁液を、ddH
2Oを添加することによって85% MeOHに変換し、定期的にボルテックス処理しながら、さらに10分間氷上でインキュベートした。遠心分離した後、上清を集め、抽出物をN
2下で乾燥させた。乾燥脂質を、1:1(v/v)メタノール/水(M/W)に溶解し、C18 SepPakカートリッジ(Waters Corp.、Milford、MA)に付した。カートリッジを、10mlのMeOHを用いてコンディショニングし、続いて、1:1M/W中、10mMのTBAP 10mlを用いて平衡化した。サンプルをロードした後、カートリッジを、1:1M/W中10mM TBAP 10mlを用いて洗浄し、5ml MeOHと、続いて、10:10:3クロロホルム/メタノール/水(C/M/W)5mlを用いて溶出した。合わせた溶出物をN
2下で乾燥させた。
【0174】
脂質サンプルを、乾燥サンプルを、50% n-プロパノール中、1Mトリフルオロ酢酸(TFA)2mlに溶解すること及び50℃に15分間加熱することによって加水分解した。加水分解されたサンプルを、N
2下で乾燥させ、4mlの3:48:47C/M/Wに溶解し、C18 SepPakカートリッジに付して、加水分解されたグリカンから脂質を分離した。カートリッジを10ml MeOHを用いてコンディショニングし、続いて、10mlの3:48:47C/M/Wを用いて平衡化した。サンプルをカートリッジにアプライし、フロースルーを集めた。カートリッジを、4mlの3:48:47 C/M/Wを用いて洗浄し、合わせたフロースルーを、SpeedVacを使用して乾燥させた。
【0175】
乾燥サンプルを、Biggeら[48]に従って2-アミノベンズアミド(2AB)を用いて標識した。グリカン精製を、Merryら[53]に記載されるペーパーディスク法を使用して実施した。2AB標識したグリカンの分離を、Royleら[49]に従うが、3溶媒系に修飾された、GlycoSep N順相カラムを使用するHPLCによって実施した。溶媒A:80%アセトニトリル中、10mMギ酸アンモニウムpH4.4。溶媒B:40%アセトニトリル中、30mMギ酸アンモニウムpH4.4。溶媒C:0.5%ギ酸。カラム温度は、30℃とし、2AB標識したグリカンを蛍光(λex=330nm、λem=420nm)によって検出した。勾配条件:0.4ml/分の流速で、160分かけて100% Aから100% Bの直線勾配と、それに続く2分の100% Bから100% C、2分かけて100% Aに戻し、1ml/分の流速で、100% Aで15分間の実施、次いで、流速0.4ml/分に戻して5分。サンプルをddH
2O中に注入した。
【0176】
O-抗原特異的グリカンを同定するために、対照細胞から得た2ABグリカンプロフィールを、W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaLから得られたプロフィールと比較した(
図5A)。W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL特異的ピークを集め、2ABグリカンをMALDI SYNAPT HDMS Q-TOFシステム(Waters Corp.、Milford、MA)で分析した(
図5B)。サンプルを5:95アセトニトリル/水に溶解し、80:20メタノール/水中の20mg/ml DHBを用いて1:1でスポットした。PEG(Ready mixed溶液、Waters Corp.、Milford、MA)を用いて較正を行い、60:40:0.1アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸中、5mg/mlのα-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(CHCA、Sigma-Aldrich、Switzerland)と1:3でスポットした。機器は、200Hz固体状態UVレーザーを備えていた。質量スペクトルをポジティブイオンモードで記録した。MSMSでは、レーザーエネルギーを、200Hzの発火頻度で240で固定し、衝突ガスはアルゴンとし、衝突エネルギープロフィールを使用してm/zに応じて衝突エネルギーを傾斜させた。すべてのスペクトルを合わせ、バックグラウンドを差し引き、平滑にし(Savitzsky Golay)、MassLynx v4.0ソフトウェア(Waters Corp.、Milford、MA)を使用して集中させた。方法はまた、US2011/0274720A1に記載されている。
【0177】
MALDI-TOF/TOF分析によるW3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL特異的ピークのいくつかに由来するフラグメンテーションイオンシリーズ(
図5B)は、大腸菌(E. coli)のO1A亜血清型について報告された単糖配列と一致した[54]。それによって、糖コンジュゲート形成に適した、O1A O抗原を産生するW3110をベースとする大腸菌(E. coli)株の構築が確認された。
【0178】
この株によるO1A糖コンジュゲートの産生を示すために、C.ジェジュニ(C.jejuni)のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(5種の異なる変異体、以下を参照のこと)及び緑膿菌(P.aeruginosa)のキャリアタンパク質外毒素A(4種のグリコシル化コンセンサス配列をコードする、p659)の誘導性発現をコードするプラスミドを、エレクトロポレーションによって、W3110ΔrfbO16::rfbO1ΔwaaL中に導入した。産生細胞を、5mM MgCl
2、spec及びampを補充したLB培地中に播種し、37℃で一晩、静止期まで増殖させた。次いで、細胞をOD
600 0.05に希釈し、spec及びampを含有するTB中でOD
600が0.8になるまで増殖させた。0.2%アラビノース及び1mM IPTGの添加によってEPA及びPglB発現を開始させ、培養物をさらに20時間増殖させた。次いで、細胞を遠心分離によって回収し、リゾチーム法を使用して周辺質細胞抽出物を調製した[55]。周辺質抽出物(OD
600に対して正規化した)をSDS PAGEによって分離し、エレクトロトランスファー後に免疫ブロット法によって分析した(
図6)。抗EPA抗血清(左パネル)及び抗O1抗血清(右パネル)を用いる検出は、すべてのサンプルについて100から130kDaの間で明確なラダー様パターンを両方とも示し、EPAタンパク質及びO1多糖からなる糖タンパク質を強く示す。EPA抗血清単独を用いて得られたシグナル(70kDaを上回る)は、非グリコシル化EPAに対応する。異なるPglB変異体が、糖タンパク質の異なる特異的生産性につながることは明白である:最小の収量は、C末端HAタグを含有する元の野生型C.ジェジュニ(C.jejuni)タンパク質配列に対応するPglBを用いて得られた(p114、[9])。コドン最適化単独(p939)、コドン最適化及びHAタグ除去(p970)、コドン最適化及び天然PglBグリコシル化部位のN534Qへの突然変異(p948)並びにコドン最適化、HAタグ除去及び天然PglBグリコシル化部位の除去(p971)は、数倍高い収量を示すより強力なシグナルにつながった。より高い収量は、コドン最適化された遺伝子が使用される場合のPglB翻訳のより効率的な方法及びC末端HAタグがPglBタンパク質の活性又はフォールディングを妨害することによって説明され得る。
【0179】
糖タンパク質は、3プラスミド系を用いて観察されるような、より短いグリカンの長さを示す高度に純粋な糖コンジュゲートの分取的精製のために10l規模でバイオリアクター中で、挿入された株によって産生され得る。糖コンジュゲートの純度及び大きさを分析するために、キャピラリーゲル電気泳動が使用され得る。例えば、糖コンジュゲートと結合している多糖は、ヒドラジン分解によってタンパク質から除去され、多糖構造及び長さの分析のために2AB標識及びHPLC-MS/MSによって分析され得る。このような分析は、O1A O抗原の糖タンパク質キャリアとの結合を確認するために使用され得る。さらに、単糖組成決定のためにPMP分析が実施され得、構造確認のためにNMR分析及びガスクロマトグラフィーが実施され得る。さらに、動物の免疫感作は、グリカン及びキャリアタンパク質に対する抗体を作製するために実施され得る。抗感染活性は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ及び/又は受動的保護などの前臨床アッセイを使用して示され得る。
【0180】
6.2 実施例2:大腸菌(E. coli)O2 O抗原コンジュゲート産生のための株構築
実施例1と同様に、株構築を実施した。O2 rfbクラスターを、表1に詳述されるようなHR領域及びカセットからなるpDOCプラスミド中にクローニングした。O2 rfbクラスターを、オリゴ2207/2166を用いて臨床分離株upecGVXN116(StGVXN3949)から増幅し、p967のBamHI/SgsI部位中にクローニングした。O2 rfbアンプリコンは、galF内からwekRまでのすべての配列を含有していた。wekRからgndの間のDNAは、DNA挿入部分から省いた。p967を、2種の部分的に相補的なオリゴヌクレオチド(2167/2168)からなるオリゴカセットの、p946のXhoI及びBamHI部位への挿入によってクローニングした。p946は、p843をAscIを用いて消化すること、付着制限部位末端を埋めるために、直線化プラスミドを、DNAポリメラーゼのクレノウフラグメントで処理すること及びプラスミドの連続再ライゲーションによって得た。p843は、オリゴヌクレオチド2066及び2068を使用して(表3を参照のこと)、pKD4に由来するPCRアンプリコン[13]を、同一酵素を使用してp482のBamHI及びSgsI部位中にクローニングすることによって作製した。得られたドナープラスミドp1003は、上流HR1領域及びupecGVXN116由来のrfbクラスターと、続いて、除去可能なkanRカセットと、続いて、HR2領域を含有していた(
図7)。
【0181】
p999ヘルパープラスミド(GenBank:GU327533.1)を、エレクトロポレーションによってW3110細胞中に導入した[1]。水中の5〜500ngのDNAを、氷上の標準エレクトロポレーションキュベット中で50μlのエレクトロコンピテント細胞懸濁液と混合し、BioRad Micro Pulser(BioRad、Hercules、CA)で、1.8kVの電圧で2〜10ms間エレクトロポレーションした。p999の温度感受性複製表現型のために、得られた細胞をプレーティングし、常に30℃で増殖させた。次のステップでは、p999を含有するW3110を、p999の選択のためにスペクチノマイシンを補充したLB中、30℃で増殖させることによってコンピテント細胞を作製し、エレクトロポレーションによって、細胞中にp1003を導入し、細胞を、LBプレート上、30℃でアンピシリン及びスペクチノマイシン耐性について選択した。プラスミドをアクセプター細胞中に挿入し、同一細胞内でドナープラスミドDNAの存在下でヘルパープラスミド上にコードされる酵素の発現を可能にした。
【0182】
新たに形質転換された株を、アンピシリン及びスペクチコマイシン(specticomycin)の存在下、30℃でLB培地中、5ml規模で一晩、180rpmで増殖させた。10μlの培養物を、spec及びampを補充した液体LB 1mlを含有する新規試験管に移した。次いで、新規培養物を、180rpmで2時間、30℃で増殖させた。次いで、細胞を、4℃、5000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄し、スペクチノマイシン、0.2%アラビノース(w/v)及び1mM IPTGを補充したLB培地を添加して、ヘルパープラスミド選択(Spec)並びにリコンビナーゼ(アラビノース)及びSceIエンドヌクレアーゼ(IPTG)発現を支持した。再懸濁した細胞を、30℃で4〜18時間、180rpmでさらにインキュベートした。
【0183】
培地交換の4〜18時間後の種々の時点で、0.5mlの培養物を、kan(DNA挿入部分の選択のために)及び10%(w/v)スクロース(ドナープラスミドに対して対抗選択するために)を補充したLBにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした(温度感受性ヘルパープラスミドの喪失について選択するために)。
【0184】
得られたコロニーを正しい挿入表現型についてスクリーニングするために、細胞を、spec、amp又はkanを補充したLBプレート上にレプリカプレーティングした。kanに対して耐性である(挿入部分の存在について)が、amp及びspecに対して感受性である(ドナー及びヘルパープラスミドの不在について)コロニーを、挿入についてさらに分析した。
【0185】
次のステップでは、waaL遺伝子を、上記のように、ファージ形質導入によって破壊した。ファージ形質導入から得られた株を、clm(waaL欠失)及びkan(O2 rfbクラスター挿入)耐性について選択し、その結果、遺伝子型W3110ΔrfbO16::rfbO2-kanRΔwaaL::catが得られた。
【0186】
kan(rfbクラスター挿入に由来)及びclm(waaL欠失)のための抗生物質耐性カセットを、記載されたように[35]、pCP20を使用するFLPリコンビナーゼ駆動組換えによって単一ステップで除去した。
【0187】
DNA挿入部分の挿入を、これまでに公開されたオリゴヌクレオチド2243及び2244を使用してO16 wzxの不在及びO2 wzyの存在についてPCRによって調べた(
図7A)[51]。さらなる分析は、5'及び3'移行領域PCR及び配列決定を含み得る。waaL欠失は、waaL遺伝子を挟んでいるDNA領域においてアニーリングするオリゴヌクレオチド1114及び1326(表3を参照のこと)を使用するコロニーPCRアプローチによって調べた(
図7B)。PCR産物は、無傷のwaaLコピーが存在する場合には(レーン1及び5において)、これらのオリゴヌクレオチドを有し1.5kbより大きく、waaLがclmRカセットによって置換されている場合にはわずかに小さく(1.5kb未満、レーン2及び6)、clmRカセットの除去後は、PCRアンプリコンは、約0.5kbの大きさである(
図7B)。したがって、waaL欠失は成功した。最終株(W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaL)は、5'及び3'移行領域PCRによって調べられ得る。
【0188】
LPSサンプルのO2タイピング血清を使用する銀染色及びウエスタンブロット解析を使用して、株構築の間のO抗原産生表現型を確認した(
図8)。抗O2抗血清を用いてプローブした場合には、推定上の組み込み体(W3110ΔrfbO16::O2-kanR、A、レーン1)から得た抽出物において、並びに陽性対照株、臨床大腸菌(E. coli)O2分離株(レーン2)において、ラダーが検出された。これは、組み込み体が活性O2 rfbクラスターを含有していたことを示唆した。最終株(W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaL)を、銀染色(
図8B、左パネル)、ウエスタンブロット(
図8B、右パネル)によってLPS及びUnd-PPO抗原産生について調べた。waaL陽性株は、銀染色によって可視化され、ラダー様シグナルを有するようなLPSを産生したが(レーン2)、waaL欠失及び抗生物質カセット除去後にはシグナルはなかった(レーン1)。ウエスタンブロッティング(パネルB)は、waaL欠失株においてかなり小さい強度ではあるが、両サンプルにおいてラダー様パターンを示した。これは、実際、waaL欠失株は、Und-PP連結O2反応性多糖を産生したことを示す。
【0189】
それらの細胞によるUnd-PPでのO抗原の産生を確認するために、上記のような2AB標識法(節6.2)を使用した。O抗原を産生できない株に対して蛍光トレースを比較すると、W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaLに特異的なシグナルが観察された。特異的ピーク溶出時間は、MALDI MS/MSによって分析されるように、これまでに同定されたO2反復単位と一致した(
図9A)。いくつかの集められたピークから得たフラグメンテーションイオンシリーズを、上記のようにMALDI-TOF/TOFによって分析した。フラグメンテーションパターンは、O2 O抗原反復単位と一致する(
図9B)。それによって、O2 O抗原を産生するW3110をベースとする大腸菌(E. coli)株W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaLの構築が確認された。
【0190】
W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaLによるO2糖コンジュゲートの産生を示すために、C.ジェジュニ(C.jejuni)のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(2種の異なる変異体)及びキャリアタンパク質EPA(4グリコシル化コンセンサス配列をコードする、p659)の誘導性発現のためのプラスミドを、エレクトロポレーションによってW3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaL中に導入した。細胞を、5mM MgCl
2、spec及びampを補充したLB培地中に播種し、37℃で一晩、静止期まで増殖させた。次いで、細胞をOD
600 0.05に希釈し、spec及びampを含有するTB中でOD
600が0.8になるまで増殖させた。0.2%アラビノース及び1mM IPTGの添加によってEPA及びPglB発現を開始させ、培養物をさらに20時間増殖させた。次いで、細胞を遠心分離によって回収し、リゾチーム法を使用して周辺質細胞抽出物を調製した[55]。周辺質抽出物(細胞密度に対して正規化した)をSDS PAGEによって分離し、ウエスタンブロッティングによって分析した(
図10)。抗EPA抗血清(左パネル)及び抗O2抗血清(右パネル)を用いる検出は、両方とも100kDaを上回る、通常のO抗原ラダー様パターンの2つのクラスターを示し、EPAタンパク質及びO2多糖からなる糖タンパク質を強力に示す。EPA抗血清単独を用いて得られたシグナル(70kDaを上回る)は、非グリコシル化EPAに対応する。第1のクラスター(100から130kDaの間)は、単一にグリコシル化された、第2の弱いクラスター(130kDaを上回る)から、二重にグリコシル化されたEPAタンパク質に対応する。抗O2ウエスタンブロットにおいて観察されたラダー様シグナルは、ほぼ確実に、多糖部分を依然として含有するEPA O2糖コンジュゲートの分解産物である。両PglB変異体が、糖タンパク質の同様の特定の生産性につながることは明白である。upecGVXN124(StGVXN3947)は、waaL遺伝子が欠失され[13]、プラスミドp659及びp939がエレクトロポレーションによってその中に導入された臨床O2血清型分離株である。この対照発現系を比較物(レーンx)として使用して、発現宿主として臨床分離株(upecGVXN124)を使用する発現系からよりも強いシグナルが、W3110ΔrfbO16::rfbO2ΔwaaL(レーンB)に由来する抽出物から観察された。したがって、W3110への挿入は、天然株におけるグリコシル化と比較して糖コンジュゲートのより高い収量をもたらし得る。
【0191】
糖タンパク質はまた、3プラスミド系を用いて観察されるような、より短いグリカンの長さを示す高度に純粋な糖コンジュゲートの分取的精製のために10l規模でバイオリアクター中で、挿入された株によって産生され得る。糖コンジュゲートの純度、量及び大きさを分析するために、キャピラリーゲル電気泳動が使用され得る。糖コンジュゲートと結合している多糖は、ヒドラジン分解によってタンパク質から除去され、多糖構造及び長さの分析のために2AB標識及びHPLC-MS/MSによって分析され得る。この分析は、O2 O抗原の糖タンパク質キャリアとの結合を確認するために使用され得る。さらに、単糖組成決定のためにPMP分析が実施され得、構造確認のためにNMR分析及びガスクロマトグラフィーが実施され得る。さらに、動物の免疫感作は、グリカン及びキャリアタンパク質に対する抗体を作製するために実施され得る。抗感染活性は、オプソニン化貪食作用死滅アッセイ及び/又は受動的保護などのアッセイを使用して示され得る。
【0192】
6.3 実施例3:大腸菌(E. coli)O6 O抗原コンジュゲート産生のための株構築
上記のように、株構築を実施した。O6 rfbクラスターを、表1に詳述されるようなHR領域及びkanRカセットからなるpDOCプラスミド中にクローニングした。O6クラスターを、オリゴヌクレオチド1907/1908を用いて大腸菌(E. coli)株CCUG11309由来のゲノムDNAから増幅し(
図11A)、p843のBamHI及びBcuI部位中にクローニングし、その結果、p914が得られた。
【0193】
p999ヘルパープラスミド(GenBank:GU327533.1)を、エレクトロポレーションによってW3110細胞中に導入した[1]。水中の5〜500ngのDNAを、氷上の標準エレクトロポレーションキュベット中で50μlのエレクトロコンピテント細胞懸濁液と混合し、BioRad Micro Pulser(BioRad)で、1.8kVの電圧で2〜10ms間エレクトロポレーションした。p999の温度感受性複製表現型のために、得られた細胞をプレーティングし、常に30℃で増殖させた。次のステップでは、p914を、エレクトロポレーションによってp999を有するW3110中に導入し、細胞を、30℃でLBプレート上でamp及びspec耐性について選択した。プラスミドをアクセプター細胞中に挿入し、同一細胞内でドナープラスミドDNAの存在下でヘルパープラスミド上にコードされる酵素の発現を可能にした。
【0194】
ヘルパー及びドナープラスミドを含有するエレクトロポレーションされたクローンを、amp及びspecの存在下、30℃でLB培地中、5ml規模で一晩、180rpmで増殖させた。10μlの培養物を、spec及びampを補充した液体LB 1mlを含有する新たな試験管に移した。次いで、新たな培養物を、180rpmで2時間、30℃で増殖させた。次いで、培地を交換した:培養物を5000rpmで5分間、4℃で遠心分離し、上清を廃棄し、細胞ペレットを、spec、0.2%アラビノース(w/v)及び1mM IPTGを補充したLB培地に再懸濁して、ヘルパープラスミド選択(Spec)並びにリコンビナーゼ(ara)及びSceIエンドヌクレアーゼ(IPTG)発現を支持した。再懸濁した細胞を、30℃で4〜18時間、180rpmでさらにインキュベートして、組換え事象が起こることを可能にした。
【0195】
培地交換の4〜18時間後の種々の時点で、0.5mlの培養物を、kan(DNA挿入部分の選択のために)及び10%(w/v)スクロース(ドナープラスミドに対して対抗選択するために)を補充したLBにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした(温度感受性ヘルパープラスミドの喪失について選択するために)。
【0196】
得られたコロニーを正しい挿入表現型(W3110ΔrfbO16::rfbO6-kanR)についてスクリーニングするために、細胞を、spec、amp又はkanを補充したLBプレート上にレプリカプレーティングした。kanに対して耐性である(DNA挿入部分の存在について)が、amp及びspecに対して感受性である(ドナー及びヘルパープラスミドの不在について)コロニーを、挿入についてさらに分析した。さらに、コロニーブロッティングを実施した。kanを補充したLB上で増殖させた、レプリカプレーティングされたコロニーを、「コロニーリフティング」によってニトロセルロース膜にトランスファーした:円形のニトロセルロース膜を、膜が完全に湿るまで、増殖中のコロニー上、LBプレート上に置いた。膜のリフティングの際、膜へのコロニー付着を、Tween20(0.02% w/v)を補充したPBS中で洗浄除去した。その後、O6抗原を産生したコロニーの検出のために、抗O6抗血清を使用するウエスタンブロットとして膜を処理した。陽性コロニーが、膜の現像後に暗い点として現れた。
【0197】
kan(rfbクラスター挿入に由来)及びclm(waaL欠失)のための抗生物質耐性カセットを、記載されたように[35]、プラスミドpCP20を使用するFLPリコンビナーゼ駆動組換えによって単一ステップで除去した。
【0198】
DNA挿入部分の挿入を、O16 wzxの不在及びO6 wzyの存在についてPCRによって[51](
図11D)、5'(
図11B)及び3'(
図11C)移行領域PCR、LPSサンプルの銀染色及びO6タイピング血清を使用するウエスタンブロット解析(
図12)によって調べた。抽出物を抗O6血清を用いて分析した場合に(大腸菌(E. coli)O6対照株のような、レーン3)、クローンA(
図12A、レーン1)のみが、ラダー様O抗原シグナルを作り出したのに対し、クローンBは陰性であった(レーン2)。rfbクラスターの機能活性について、すべてのさらなる試験は陽性であった。
【0199】
次のステップでは、waaL遺伝子を、上記のように、クローンAからのファージ形質導入によって破壊した[52]。銀染色は、waaL欠失株由来のO抗原が存在しないことを示し(
図12B、左パネル、レーン1)、ウエスタン解析は、Und-PP連結O6 O抗原を、同一抽出物において、通常の弱いラダー様シグナルとして示す(
図12B、右パネル、レーン1)。waaL欠失の前に、LPSは、明白に観察される(両パネル、レーン2)。この結果は、waaL欠失の成功を示した。
【0200】
clm(waaL欠失)のための、次いで、kan(rfbクラスター挿入)のための抗生物質耐性カセットを、FLP組換えによって[35]、2つの連続ステップで除去した。
図12Cは、clmR除去後の、Und-PPが連結しているシグナルを残している(ウエスタンブロット、右パネル)2種のクローン(レーン1、2)を示す。最終株(2種のクローン、W3110ΔrfbO16::rfbO6ΔwaaL)を、5'及び3'移行領域PCRによって調べた(
図11A及びB)。確認するために、LPSの銀染色、Und-PP連結多糖のウエスタンブロット並びに蛍光2AB標識と、それに続く、HPLC及びMS/MS分析が行われ得る。すべてのデータは、挿入の成功、及び選択されたクローンの両方におけるrfbクラスターの機能活性を確認し得る。
【0201】
O6糖コンジュゲートの産生を示すために、C.ジェジュニ(C.jejuni)のPglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼ(p939)及びキャリアタンパク質EPA(4グリコシル化コンセンサス配列をコードする、p659)の誘導性発現を提供するプラスミドを、エレクトロポレーションによって、W3110ΔrfbO16::rfbO6-kanRΔwaaL(すなわち、最終株W3110ΔrfbO16::rfbO6ΔwaaLの祖先)中に導入した。細胞を増殖させ、誘導物質を添加し、細胞を、一晩さらに増殖させた。サンプルを集め、周辺質細胞抽出物を、リゾチーム法を使用して調製した[55]。周辺質抽出物(細胞密度に対して正規化した)をSDS PAGEによって分離し、エレクトロトランスファー後に免疫ブロット法によって分析した。抗EPA抗血清及び抗O6抗血清を用いる検出は両方とも、2つの明白なクラスターのラダー様シグナルを示し、一方は100から130の間であり、一方は、130kDaを上回る(
図13)。これらのシグナルは、EPAタンパク質及びO6多糖からなる糖タンパク質を強力に示す。EPA抗血清単独を用いて得られたシグナル(70kDaを上回る)は、非グリコシル化EPAに対応する。2つのラダークラスターが検出され、2つの部位でグリコシル化されたEPAを示すことは明白である。
【0202】
糖タンパク質はまた、糖コンジュゲートの分取的精製のために10l規模でバイオリアクター中で、挿入された株によって産生され得る。糖コンジュゲートと結合している多糖は、ヒドラジン分解によってタンパク質から除去され、Und-PP連結O抗原として2AB標識及びHPLC-MS/MSによって分析され得る。この分析は、O6抗原の糖タンパク質キャリアとの結合を確認し得る。
【0203】
挿入された株を、コンジュゲート産生の質及び量の点で分析するために、O1、O2及びO6 EPA糖コンジュゲート産生についての挿入された株の性能を、「3プラスミド系」、すなわち、先行技術[9]に記載されるようにエピソーム上にコードされるrfbクラスターを有する系である代替産生系又は「野生型株」系に対して比較した。前者では、W3110ΔwaaL株を発現宿主として使用する。挿入された系及び野生型系と比較して、その系にはいくつかの技術的相違がある。3プラスミド系は、宿主における3つのプラスミドの導入及び維持を必要とする。これは、プラスミド維持を確実にするために、3種の異なる抗生物質が、発酵の間、増殖培地に添加されなければならないことを意味する。3つのプラスミドの共存は、適合するベクター骨格を必要とする。特に、大きなrfbクラスター配列は、特定の維持系及び強い選択圧を必要とする。プラスミド維持は、主に、プラスミド喪失が起こり、したがって、影響を受けた細胞が、組換え産物の産生を停止するため、又はプラスミド維持が、低下をもたらす細胞に対するこのような負荷を暗示するので、組換え微生物発酵産物の産生プロセスにおける収量低減の永久的な原因である。抗生物質に対するヒトのアレルギー性有害事象の可能性のために、抗生物質不含産生プロセスに対する規制当局の要求は増大している。したがって、以前はエピソーム上に存在していた生合成クラスターを染色体に組み込むことには明白な利点がある。
【0204】
第2のあり得る産生系は、感染個体から、又は現場から得られた天然の、臨床分離株をベースとしており、それらを産生プラットフォームとして使用する。それらは対象のO抗原を天然に産生するので、簡単なwaaL欠失によって、それらの株が、適した天然に挿入された産生株となる。しかし、大腸菌(E. coli)臨床分離株では、多数の毒素及び因子がコードされ、発現されるので、規制当局は、このような系から得られた産物に対して、より高品質の基準を必要とし、これは、高価な、時間のかかるものとなる。したがって、十分に研究された安全な宿主W3110への挿入が、適した代替手段に相当する:プラスミドが関連する不利な点は低減され、経済的必要要件は満たされる。
【0205】
本発明者らは、3種すべての大腸菌(E. coli)O抗原に対して3種すべての産生系を分析した(
図14)。EPA(p659)及びPglB(p939)の発現プラスミドを、rfb遺伝子座を、ゲノム中(挿入された株又は臨床分離株)又はプラスミド上(3プラスミド系)のいずれかに含有する宿主細胞中に導入した。細菌培養物をまず、細胞中に存在するプラスミドを維持するのに必要なすべての抗生物質を含有するLB培地中で一晩増殖させた。次いで、培養物をTB培地でOD
600 0.05に希釈し、OD
600が0.4〜1.2になるまで増殖させ、誘導物質を添加した(アラビノース0.2%、IPTG 1mM)。37℃で、誘導の20時間後、細胞を回収し、リゾチーム法を使用して周辺質抽出物を調製した。次いで、SDS PAGE及び免疫検出(ウエスタンブロット)によって周辺質溶解物を分析した。
【0206】
非グリコシル化EPAは、抗EPAブロットにおいて70kDaより上に観察される。100kDaより上に集まっていたラダー様パターンは、通常のO抗原多糖長分布を有する全長糖コンジュゲートに相当する。一般に、すべての系は、同様の程度で糖コンジュゲートを産生する。しかし、3プラスミド系は、抗EPA及び抗多糖ウエスタンブロットにおいて、挿入された株(野生型及び挿入された)よりも広く広がって現れる(
図14、パネルA、レーン3及び2を比較)又はより高い分子量レベルに達する(すべてのパネル、レーン3及び2を比較)ラダー様シグナルを生じる。これは、挿入戦略が、糖コンジュゲート産生のための強力なプロセス調整ツールであることを示す(
図14)。
【0207】
後者のコンジュゲートがより免疫原性であるかどうか、より規定されるかどうかを調べるために、長い多糖糖コンジュゲート(3プラスミド系によって作製された)及び挿入された株の前臨床比較が実施され得る。
【0208】
挿入された宿主株から得られた細胞が、より高レベルの産物を産生でき、より良好な再現性パターンを示すこと及びそれらが遺伝子的により安定であることを示し、したがって、挿入がアップスケーリングの高い実現可能性のために優れていることを確認するために、産生培養における組換えDNAエレメントの培養物均一性及び維持の比較が実施され得る。
【0209】
6.4 実施例4:S.ソネイ(S.sonnei)O抗原産生のための株構築
P.シゲロイデス(P.shigelloides)O17クラスターは、S.ソネイ(S.sonnei)rfbクラスターと機能的に同一であるが、不安定な病原性プラスミド上にコードされず、したがって、P.シゲロイデス(P.shigelloides)からクローニングした。クラスターをP.シゲロイデス(P.shigelloides)O17から得たゲノムDNAから、オリゴヌクレオチド1508/1509を用いて(wzzを伴わない)及び1528/1509を用いて(wzzを伴う)増幅した。P.シゲロイデス(P.shigelloides)O17のrfbクラスターを、pDOC由来プラスミドp562中にクローニングし、その結果、p563(これには、wzzが含まれた)及びp568(wzz遺伝子を欠く) が得られた。ヘルパープラスミドは、表1に詳述されるように、HR領域及び選択カセットからなっていた。株構築を実施例1に記載されるように実施した。DNA挿入部分の挿入を、5'及び3'移行領域PCR(
図15)、LPSサンプルの銀染色及びS.ソネイ(S.sonnei)タイピング血清を使用するウエスタンブロット解析(
図16)によって、O16 wzyの不在及びS.ソネイ(S.sonnei)wzy-wbgVの存在についてPCRによって調べた。
【0210】
6.5 実施例5:志賀赤痢菌(S.dysenteriae)O抗原糖コンジュゲート産生のための挿入された株
志賀赤痢菌(S.dysenteriae)のrfp及びrfbクラスターは、大腸菌(E. coli)において、志賀赤痢菌(S.dysenteriae)ゲノムにおいて、O抗原を産生する機能的単位を形成するが、それらは、異なる位置に存在する([8])。両クラスターを、表1に詳述されるようなHR領域及び選択カセットからなるpDOCプラスミド中にクローニングした。rfb/rfpを含有するプラスミドpSDM7から得られたBamHI断片([8])を、適したMCSカセットを含有するpLAFR1中にサブクローニングした。そこから、オリゴヌクレオチド1261及び1272(表3参照のこと)を使用して、rfp/rfbを、1種のアンプリコンで、pDOC由来p503中にクローニングし、その結果、p504が得られた。p503は、p482からクローニングされ(節6.1を参照のこと):株W3110のgalF(galF')の一部及びgalFとrmlBの間の遺伝子間領域を含有する、挿入のためのHR1領域をコードするPCRアンプリコン(オリゴヌクレオチド1171/1263を使用する)を、SpeI及びBamHIを用いて消化し、同一酵素を用いて消化したp482中にライゲーションした(その結果、p503が得られた)。rfp及びrfbは、志賀赤痢菌(S.dysenteriae)I型のゲノム上の2種の別個のクラスターとして見出され、p504から発現される場合に、翻訳方向がgalF'、rfp、rfb及びgndについてと同一であるようにクローニングした。DNA挿入部分の挿入を、waaL陽性及び陰性株において実施し、O16 wzyの不在についてPCRによって、5'及び3'移行領域PCR、LPSサンプルの銀染色及びタイピング血清を使用するウエスタンブロット解析(図示せず)によって調べた。
図17は、clmRカセット除去の前後の挿入されたW3110ΔrfbO16::rfbSd1ΔwaaL及びW3110ΔrfbO16::rfbSd1の糖脂質分析を示す。抽出物が、SDS PAGE後に銀染色によって分析された場合には、waaL陽性株のみが、LPSの通常のO抗原パターンを示し、ΔwaaL株は示さなかった。すべての株が、抗志賀赤痢菌(S.dysenteriae)1 O抗原特異的抗血清に反応し、これらの株における組換えO抗原の産生が確認された(
図17)。
【0211】
組換えO抗原の構造を、分子的に詳細に分析するために、W3110ΔrfbO16::rfbSd1-clmRΔwaaLから得たUnd-PPが結合している多糖プールを、細胞の加水分解した有機抽出物の2AB標識及び順相HPLCによって分析した(
図18)。トレースは、SDS PAGEにおいて観察されることが多いラダー様パターンを示す。志賀赤痢菌(S.dysenteriae)1型多糖配列を確認するために、特定のピークのMS/MS分析が使用され得る。
【0212】
W3110ΔrfbO16::rfbSd1-clmRΔwaaLが、以下に記載されるように、EPA志賀赤痢菌(S.dysenteriae)1コンジュゲートの産生のための宿主であった。この株を使用する糖コンジュゲートワクチン候補の産生を確認するために、発現プラスミドp293及びp114を、株中に形質転換し、10l規模でバイオリアクター中で発酵した。EPAコンジュゲートを精製し、古典的クロマトグラフィーによって非グリコシル化EPAを除去した。得られた最終バルクを分析して、SEC HPLC(
図19A)、SDS PAGEと、それに続く、クマシー染色又は免疫検出(
図19C)単糖組成分析(
図19B)及びヒドラジン分解と、それに続く、2AB標識、HPLC分析及びMS/MS(
図19D)によって糖構造及びコンジュゲートの質を確認した。
【0213】
6.6 実施例6:S.フレックスネリ(S.flexneri)2a O抗原糖コンジュゲート産生のための挿入された株
シゲラ属(Shigella)O抗原は、免疫学的に多様である。抗原としてO抗原多糖を使用する細菌性赤痢に対する包括的ワクチンについて、十分な適用範囲をもたらすためには、少なくとも5種の血清型のO抗原構造が含まれなければならないと考えられる。目的は、最も流行している感染性株からできる限り多数の抗原エレメントを含み、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)1型、S.ソネイ(S.sonnei)並びに S.フレックスネリ(S.flexneri)6型及びS.フレックスネリ(S.flexneri)2a及び3a O抗原を含有することである[56]。
【0214】
血清型2a及び3aは、血清型Yと呼ばれる同一O抗原骨格多糖構造をベースとする。S.フレックスネリ(S.flexneri)には、大きなO血清型多様性がある。それは、グルコース及びアセチル基によるY血清型反復単位の修飾による。この種の修飾は、2a又は3a血清型構造の構成に関与している(
図20A)。Y骨格修飾は、多様であり、修飾の種々の組合せは、多数の血清学的に交差反応性の多糖構造につながる。血清型2a及び3aは、シゲラ属(Shigella)によく見られ、したがって、その他の交差反応性抗原に対して保護するワクチン中に含まれる、2種の異なるグルコース及び1種のアセチル化分枝修飾を含有する。
【0215】
構造多様性を生じさせる装飾酵素は、血清型Yの骨格にグルコース及びアセチル残基を結合する特異的トランスフェラーゼである。骨格は、rfbクラスター中に完全にコードされ、グルコース又はアセチル基の付加に関与する酵素は、rfbクラスターの外側にコードされる。いくつかの大腸菌(E. coli)O抗原(例えば、O16)について同じ観察が行われた。多数の場合には、免疫原性にとって骨格修飾が重要であると考えられるので、それらは、挿入された産生株中に含まれなければならない。
【0216】
rfbクラスターの外側に位置するグリコシルトランスフェラーゼ(又はアセチルトランスフェラーゼ)を必要とするO抗原を産生する挿入された大腸菌(E. coli)株の構築のために、まず、さらなるトランスフェラーゼを含有する宿主株を構築し、プラスミドから得たrfbクラスターを同時発現させることによってその機能を調べた。さらなるステップにおいて、W3110 rfbクラスターの代わりのO抗原クラスターの挿入が実施される。これらの事象の順序は、純粋に実用的なものであり、体系的なものではない、すなわち、順序は反転し得る。この手順は、S.フレックスネリ(S.flexneri)2a O抗原を作製するために実行され、この株を用いて作製された糖コンジュゲートは、前臨床試験において機能的に活性であることが示された。
【0217】
本発明者らは、効率的な糖コンジュゲート産生のための証明された能力を有するので、2a及び3a糖コンジュゲート産生のための宿主株として大腸菌(E. coli)W3110を選択した。W3110は、O16 rfbクラスター中の破壊されたグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子のためにO抗原産生を欠く。しかし、本発明者らの計画したアッセイを用いた場合の、rfbクラスター由来の残存する活性によるあり得る干渉を避けるために、rfbグリコシル及びアセチルトランスフェラーゼ遺伝子wbbIJKを欠失させた[13]。選択カセットを、大腸菌(E. coli)リコンビナーゼによって使用されるdif部位を用いて機能する部位特異的組換えを使用して自動的に除去した[14]。株シゲラ・フレックスネリ(Shigella flexneri)2457T(血清型2a)からクローニングされたS.フレックスネリ(S.flexneri)rfbクラスターが発現された場合には、抽出物の糖脂質分析は、S.フレックスネリ(S.flexneri)血清型Y表現型を示した。これらの抽出物から得られたLPSは、側鎖修飾特異的抗群II及び抗群7、8抗血清に対して反応性ではなかった(
図20C、レーン1)。
【0218】
Y血清型へのグルコース装飾の付加のために、大腸菌(E. coli)W3110中に存在する既存の修飾系を利用した。グルコース修飾は、プロファージDNA挿入部分に起因する酵素的機序によって触媒されることが多い[57]。大腸菌(E. coli)W3110は、gtrオペロンと呼ばれるこの遺伝子エレメントを含有する。gtrオペロンは、3種の遺伝子を含有する。最初の2種の遺伝子は、高度に保存されており、今日までに同定されたgtrクラスターのほとんどに共通している(gtrAB)。第3の遺伝子は、膜の周辺質側の増殖中のO抗原鎖中の特定の位置にグルコースを付加するグリコシルトランスフェラーゼをコードする。W3110の場合には、この遺伝子は、gtrSと名付けられている。S.フレックスネリ(S.flexneri)2a及び3aには、gtrクラスターが存在する。それぞれのgtrAB遺伝子は、高度に相同であるが、第3の遺伝子(2aにおけるgtrII及び3aにおけるgtrX)は異なっている[32]。W3110系に対するその機構的相同性のために、gtrSのgtrII又はgtrXとの交換はまたグルコース装飾活性を移すと推論された。
【0219】
この仮説を調べるために、gtrS遺伝子をgtrII又はgtrXと、[14]に記載されるようなカセット切除戦略を使用する相同組換え[13]によって交換した。dif部位に挟まれているclmRカセットを、プラスミドp411中の化学的に合成されたgtrII又はgtrX ORFの下流に入れた。オリゴヌクレオチド1018及び1019を使用して、p411由来のgtrII及びclmRをコードするPCR断片を作製した。オリゴヌクレオチドオーバーハングは、gtrS ORFの上流(gtrB配列)及び下流の配列と同一であった。このアンプリコンを使用して、相同組換えを実施した[13]。正しい組換えを、コロニーPCR(オリゴヌクレオチド1016/1017を使用する)によって調べ、PCR産物を配列決定した(
図20B)。gtr酵素がY型骨格構造を装飾できるかどうかを調べるために、株2457T由来のrfbクラスターを発現するプラスミドを用いて陽性株を形質転換した。これらの細胞から得た抽出物は、銀染色によって分析されるようにLPSを含有していたが、その電気泳動移動度は、rfbクラスター単独を発現する対照株とわずかに異なって現れた(
図20C、左パネル、レーン1、2、3を比較)。同一抽出物を、グルコース側鎖特異的抗血清を用いて以前のようにプローブし、予測されたように、抗群II抗血清は、株W3110ΔgtrS::gtrIIを用いてシグナルを生じ、W3110ΔgtrS::gtrX株は、抗群7,8抗血清を用いてシグナルを生じた。したがって、gtr遺伝子の交換が、グルコース装飾の特定の能力を大腸菌(E. coli)W3110に移し、その結果、株W3110ΔgtrS::gtrII及びW3110ΔgtrS::gtrXが得られた。同様に、全gtrクラスター又は、同様に第3の遺伝子(すなわち、特定のグリコシルトランスフェラーゼ)のみを、適した宿主株中に導入して、組換え糖コンジュゲート発現株において装飾活性を作製できる。
【0220】
アセチル化修飾によるS.フレックスネリ(S.flexneri)3a構造の完了のために、既知アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が、同様の戦略を使用して産生株中に挿入され得る。2a血清型について、多糖装飾活性について試験され得る候補アセチルトランスフェラーゼ遺伝子を同定するために、ゲノム配列決定及び相同性分析が使用され得る。
【0221】
組換え2a O抗原を用いるタンパク質グリコシル化に適応するために、相同組換え[13、14]によってwaaL遺伝子を欠失させ、その結果、株W3110ΔgtrS::gtrXΔwaaLが得られた。さらに、実施例1に記載されるように、大腸菌(E. coli)W3110 rfbクラスターをS.フレックスネリ(S.flexneri)2457Tから得たものによって交換し、その結果、W3110ΔrfbO16::rfb2457TΔgtrS::gtrXΔwaaLが得られた。ドナープラスミドp487を、オリゴヌクレオチド1171及び1172を使用して調製したPCRアンプリコンの挿入によってp482から構築した。さらに、キャリアタンパク質の誘導に使用されるアラビノースの代謝分解を避けるために、この株においてaraBADクラスターを破壊した。組換えタンパク質が、araBADプロモーター系によって制御される場合に、araBAD欠失が収量を増大することは周知である。したがって、株W3110ΔrfbO16::rfb2457TΔgtrS::gtrXΔwaaLを、株W3110ΔaraBAD::catから調製されたファージ溶解物を用いて形質導入した。W3110ΔaraBAD::clmRを、オリゴヌクレオチド1562及び1563並びに鋳型としてpKD3を使用するPCRによって作製されたDNA挿入部分を使用する相同組換えによって調製した[13]。
【0222】
工業規模のワクチン候補産生のために、得られた株W3110ΔaraBAD::clmRΔrfbO16::rfb2457TΔgtrS::gtrIIΔwaaLを使用するために、2グリコシル化部位を含有するEPAキャリアタンパク質のための(p293)、またHAタグを含有するpglBオリゴサッカリルトランスフェラーゼのための(p114)発現プラスミドを、エレクトロポレーションによってW3110ΔaraBAD::clmRΔrfbO16::rfb2457TΔgtrS::gtrIIΔwaaL中に導入した。得られた株を、10l規模で発酵させ、得られたバイオマスからEPA糖コンジュゲートを精製した。精製は、宿主細胞不純物及び非グリコシル化キャリアタンパク質を除去するよう実施した。コンジュゲートを、SEC HPLC(
図21B)、SDS PAGEと、それに続くクマシー染色及び免疫検出(
図21A)、ヒドラジン分解と、それに続くMS/MS(
図21D)、単糖組成分析(
図21C)及び絶対単糖立体配置のためのGC-MS(図示せず)によって特性決定した(5.2.1.7.及び5.3.5.を参照のこと)。このデータによって、株の挿入及び染色体改変が、S.フレックスネリ(S.flexneri)2aワクチン産物候補の作製のための効率的な産生系をもたらしたことが確認された。
【0223】
動物モデルにおいてワクチン候補が機能的であることを示すために、p114及びp293を含有する挿入された株W3110ΔaraBAD::clmRΔrfbO16::rfb2457TΔgtrS::gtrIIΔwaaLにおいて産生された2a-EPA
大腸菌(E.coli)糖コンジュゲートワクチンの免疫原性を調べた。ラットに、PBS中の2.5μgの炭水化物を含有する2a-EPAコンジュゲート又はPBS単独を用いて3週間間隔で3回皮下に投与した(
図22)。結果は、ほとんどの個体における大幅なセロコンバージョン及び対照注射(PBS)を受けた動物と比較して、免疫感作された動物(di-BC及びFlex-BC群)では、平均対数力価が統計上有意により高かったことを示す。この結果はまた、免疫原性及びそれによって、おそらくは有効性にとって、O抗原のアセチル化は、必要ではないことを示す。アセチル化2a-EPA糖コンジュゲート(Flex-BC)は、同一手順を使用することによって弱毒化S.フレックスネリ(S.flexneri)2a株(株2457T)において産生されたが、p114及びp293が導入された産生株S.フレックスネリ(S.flexneri)2aΔwaaLでは産生されなかった。株2457Tは、そのO抗原をアセチル化することが知られている[58]。
【0224】
6.7 実施例7:緑膿菌(P.aeruginosa)O11 O抗原産生のための挿入された株
O11 O抗原クラスターを、表1に詳述されるようなHR領域及び選択カセットからなるpDOCプラスミド中にクローニングした。O抗原クラスターを、オリゴヌクレオチド2245/2247(表3を参照のこと)を用いて緑膿菌(P.aeruginosa)株PA103から増幅した。株構築を、実施例1に記載のように実施した。DNA挿入部分(wzzを有する)の、W3110ΔwaaLへの挿入を、O16 wzxの不在及びO11の存在についてPCRによって、5'及び3'移行領域PCR、LPSサンプルの銀染色及び緑膿菌(P.aeruginosa)抗群E(O11)タイピング血清を使用するウエスタンブロット解析によって調べた。示された実施例において、正しい抗生物質耐性表現型を有する4クローンを、O11 O抗原産生について調べ(A〜D、レーン1〜4)、それらは、抗群E血清(
図23)を用いて分析した場合に、およそ34kDaの大きさに対応する電気泳動移動度を有する通常のラダー様O抗原シグナルを作り出した。対照として、wzzを有する、及びwzzを有さないドナープラスミドを含有する大腸菌(E. coli)DH5a細胞を使用した(レーン5及び6)。対照株は、活性waaL遺伝子を含有し、したがって、O11 Und-PP(レーン1〜4)と異なるパターンを示すO11 LPSを作製する。したがって、シグナルはより強く、より高い分子量範囲で観察される。wzzの不在下で(レーン6)、シグナルはより小さい分子量に集中し、これは、大腸菌(E. coli)O16 wzzがこの機能を効率的に引き継ぐことができることを示す。総合すると、これらの結果は、大腸菌(E. coli)における緑膿菌(P.aeruginosa)O11 O抗原クラスターの挿入の成功及び機能的発現を示した。さらなるデータは、緑膿菌(P.aeruginosa)O11 wzzが、大腸菌(E. coli)DH5aにおける鎖調節のために活性であること及びその活性が、wzzクラスの大腸菌(E. coli)鎖長制御因子酵素によって機能的に置き換えられ得ることを示す。
【0225】
6.8. 実施例8:キメラ非天然クラスターの挿入
グラム陽性莢膜多糖産生及び大腸菌(E. coli)におけるこの多糖を使用するキャリアタンパク質のグリコシル化が達成された[10]。多糖は、CPS構造を有する組換えO抗原を作製するためのO抗原クラスター断片及びCPSクラスター断片からなる融合構築物から構成される導入DNAによって合成された。
【0226】
このような構築されたキメラクラスターを、W3110ゲノム中の2つの異なる位置に挿入して、Und-PP-CP5の生産性を調べた。挿入を指示するために、種々の相同領域を、ドナープラスミド中にクローニングした。
【0227】
ある場合には、標的部位は、上記の実施例におけるようにW3110 rfbクラスターであった、すなわち、HR領域は、O16 rfbクラスター中に含有されるORFから上流及び下流の領域であった。HR部位をpDOC-C中に挿入するために、pDOC-Cを、HindIII及びXhoIを用いて切断し、同一酵素を用いて切断されたアセンブリーPCR産物を、その中にライゲーションした。i)オリゴヌクレオチド1181及び1182、又はii)1183及び1184並びに両場合においてW3110ΔwaaLのゲノムDNAを鋳型DNAとして使用して作製された2種のPCR産物上のオリゴヌクレオチド1182及び1184を用いて、アセンブリーを行った。得られたプラスミドは、p473であった。Eco81Iを使用することによるp473へのクローニングのために、オリゴヌクレオチド1142及び771(又は1281)を使用して、キメラCP5を産生する遺伝子クラスターを、プラスミド(p393、US2011/0274720 A1)から増幅し、その結果、p477(又はp498)が得られた。p498を、このプラスミド中でO11クラスターのwzz及びwzxが欠失された方法でクローニングした(wzz及びwzxが存在するp477と比較される)。
【0228】
その他の場合には、ECA遺伝子wecA及びwzzEを挟んでいる標的部位で挿入を実施した。wecAは、細胞において利用可能なUnd-Pについて、組換え多糖と競合し得るので、wecAの欠失は、より高いCP5多糖収量をもたらすと推論された。wecA及びwzzEの置き換えを可能にするドナープラスミドを作製するために、pDOC-Cを、まず2種のHR領域を用いて改変し、次いで、CP5キメラクラスターを挿入した。オリゴヌクレオチド1126及び1129並びに1127及び1128を使用し、W3110染色体DNAを鋳型として使用してHR領域1及び2を増幅した。オリゴヌクレオチド1126及び1127を使用してPCR産物をアセンブルし、アセンブルされたHRを、pDOC-CのXhoI及びHindIII部位中にクローニングし、その結果、p467が得られた。オリゴヌクレオチド1142及び771を使用して、プラスミド(p393、US2011/0274720 A1)からキメラCP5を産生する遺伝子クラスターを増幅し、対応するPCR産物を、p467のEco81I部位中にクローニングし、その結果、p471が得られた。
【0229】
p471、p498及びp477を使用する両位置への挿入を、実施例1に詳細に記載されるように実施した。ドナー及びヘルパープラスミドを、W3110細胞中にエレクトロポレーションし、細胞を上記のように処理した。コロニーPCR法を使用して、正しい挿入位置を確認した。挿入が組換えO抗原を産生できる株をもたらしたことを示すために、挿入されたクローン及び対照細胞から得られたプロテイナーゼK処理した細胞溶解物を、SDS PAGEによって分離し、銀染色するか、又はニトロセルロース膜にトランスファーし、抗CP5特異的抗血清を用いてプローブした。対照として、対応するドナープラスミドを含有するDH5α細胞又はCP5修飾されたO抗原(US2011/0274720 A1)を発現するp393コスミドを含有するW3110ΔwecAから得た抽出物を分析した。異なるラダー様シグナル強度が得られ(
図24)、ドナープラスミドp471(レーン7)を有する場合に最強であり、p498を有する場合に同様に強く(レーン5)、p477を有する場合に弱い(レーン6)。レーン4は、HR1及び2領域のみでキメラCP5クラスターを含有しない、p473を有する陰性対照細胞を含有し、CP5シグナルはない。低分子量のラダー様シグナルは、それらが抗CP5特異的抗血清を用いて検出されないので、ほぼ確実にECA多糖によるものであって、CP5によるものではない。p498及びp477は、p477中に存在する、緑膿菌(P.aeruginosa)O11 wzz及びwzx遺伝子をコードする小さいDNAストレッチで異なっている。したがって、wzz-wzxが、プロモーター効果のために糖脂質産生を制限すると結論付けられた。wzz-wzxを含むキメラクラスターを含有するp471は、転写され、大概、HR1中に存在するECAプロモーターを形成する。したがって、p471中の位置がCP5生合成を支持する。挿入されたクローンは、ドナープラスミドとしてp471(レーン1)、p477(レーン2)及びp498(レーン3)を使用して調製した。シグナルは、一般に、かなり弱いが、中心ラダーバンド及び低分子量バンドの特異的検出を検出した。強度は、最強のドナープラスミドに由来するクローンについて最強であった(
図24)。したがって、このデータは、示された挿入法が、少なくとも最大16kbの長さのDNA片を、異なる選択可能な位置に挿入できることを確証する。
【0230】
6.9. 実施例9:挿入されたオリゴサッカリルトランスフェラーゼを有する細菌株が、バイオコンジュゲートを産生する
この実施例は、バイオコンジュゲートが、オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする核酸の細菌宿主ゲノムへの挿入によって、遺伝子改変されている細菌宿主株によって成功裏に産生され得ることを実証する。
【0231】
C.ジェジュニ(C.jejuni)pglB遺伝子を、HAタグと共にStaby(商標)コドンT7技術(Delphi Genetics、Charleroi、Belgium)を使用して、大腸菌(E. coli)株MG1655(K12)のゲノム中に安定に挿入した。挿入されたpglBを有する大腸菌(E. coli)株を作製する方法の一部として、pglBを、p114プラスミドから単離し、galK遺伝子と融合し、waaL遺伝子の代わりに宿主細胞ゲノム中に挿入した。得られた大腸菌(E. coli)株、MG1655 waaL::pglB-galKは、正しい配列の安定に組み込まれたpglBを含有すると確認された。
【0232】
MG1655 waaL::pglB-galKの、バイオコンジュゲートを産生する能力を評価するために、2種のプラスミドを株中に導入した。第1のプラスミド、p64は、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)O1遺伝子クラスターをコードする核酸を含む。第2のプラスミド、p271は、ヒスチジンタグを有するEPAキャリアタンパク質をコードする核酸を含む。宿主細胞を、4時間又は一晩培養し、単離し、pglB産生を同定するための抗HA抗体及びEPA産生を同定するための抗his抗体を用いるウエスタンブロット解析に付した。ウエスタンブロットによって、プラスミドp64及びp271を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株が、EPA及びpglBタンパク質の両方を成功裏に産生したことが確認された。
図25を参照のこと。重要なことに、O1-EPAバイオコンジュゲートが同定され、これは、挿入されたpglB遺伝子の、宿主細胞において機能的オリゴサッカリルトランスフェラーゼを産生する能力を示し、したがって、pglB遺伝子が、細菌宿主細胞中に挿入され、その機能を保持し得ることを実証する。
図25を参照のこと。
【0233】
MG1655 waaL::pglB-galKの、バイオコンジュゲートバイオコンジュゲートを産生する能力を評価するための別の実験では、種々のプラスミドを株中に導入した。第1のプラスミド、p281は、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)O1遺伝子クラスターをコードする核酸を含む。第2のプラスミド、p293は、EPAキャリアタンパク質をコードする核酸を含む。宿主細胞を、バイオリアクター中で最大16時間培養した。種々の時点で、pglB及びEPAの産生を、抗EPA及びHA抗体を使用するウエスタンブロット解析によって評価した。
図26に示されるように、ウエスタンブロットによって、プラスミドp281及びp293を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株が、EPA及びpglBタンパク質の両方を成功裏に産生したことが確認された。重要なことに、プラスミドp64及びp271を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株を用いて観察されるように、プラスミドp281及びp293を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株は、O1-EPAバイオコンジュゲートを産生し、これは、挿入されたpglB遺伝子の、宿主細胞において機能的オリゴサッカリルトランスフェラーゼを産生する能力を示し、したがって、pglB遺伝子が、細菌宿主細胞中に挿入され、その機能を保持し得ることが確認された。
【0234】
次いで、プラスミドp281及びp293を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株によって産生されたO1-EPAバイオコンジュゲートは、バイオコンジュゲート精製戦略を使用して成功裏に単離された。
図26を参照のこと。手短には、一晩増殖させたプラスミドp281及びp293を発現するMG1655 waaL::pglB-galK宿主株の周辺質画分から単離されたタンパク質を、第1のQ-セファロースカラムに流した。結果を表すクロマトグラムが、
図27に示されており、O1-EPAの強い産生が確認された(画分A6〜A9及び挿入図を参照)。画分を、SDS-PAGEゲルに流し、続いて、クマシー染色して、O1-EPA含有画分を同定した。
図28を参照のこと。O1-EPAが豊富であると同定された画分A6〜A9をプールし、第2の、Q-セファロースカラムに流し、第2のカラムから得られた画分を、SDS-PAGEゲルに流し、続いて、クマシー染色して、O1-EPA含有画分を同定した。
図29を参照のこと。結果を表すクロマトグラムが、
図30に示されている。画分B4〜B6においてO1-EPAの強い産生が観察された。最後に、O1-EPAが豊富であると同定された画分B4〜B6をプールし、Superdex 200カラムに流し、続いて、クマシー染色して、精製されたO1-EPAバイオコンジュゲートを含む画分を同定した。
図31においてクマシー染色によって示される、単離されたO1-EPAバイオコンジュゲートの最終プールは、高度に精製されているとわかり(
図32を参照のこと)、3プラスミド系を使用して調製されたO1-EPAバイオコンジュゲートに対して同一の品質のものであると証明され、ここで、pglB遺伝子は、プラスミドよりもむしろ宿主細胞ゲノム中への挿入によって大腸菌(E. coli)宿主細胞中に導入した。
【0235】
結論として、バイオコンジュゲート産生の必須成分であるオリゴサッカリルトランスフェラーゼを、そのゲノムの一部として安定に発現するよう操作された細菌宿主細胞を使用して、バイオコンジュゲートが成功裏に産生され得ることが実証された。この新規系を使用するバイオコンジュゲート産生には、異種グリコシル化機構の使用によって宿主細胞においてバイオコンジュゲートを作製する現在知られている系よりも少ないプラスミドしか必要でなかったことが有利である。
【0245】
本発明は以下の実施形態を包含する:
1. ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含む宿主細胞であって、
(a)ヘルパープラスミドは、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含み、
(b)ドナープラスミドは、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む、
宿主細胞。
2. 異種挿入DNAが、選択マーカーを含む、実施形態1に記載の宿主細胞。
3. 選択マーカーが、フリッパーゼ認識標的(FRT)部位に挟まれている、実施形態2に記載の宿主細胞。
4. 第1及び第2の相同領域が、宿主細胞ゲノムの隣接する領域と相同である、実施形態1から3のいずれかに記載の宿主細胞。
5. 第1の相同領域が、少なくとも2kbである、実施形態1から4のいずれかに記載の宿主細胞。
6. 第2の相同領域が、少なくとも2kbである、実施形態1から5のいずれかに記載の宿主細胞。
7. 異種挿入DNAが、少なくとも20kbである、実施形態1から6のいずれかに記載の宿主細胞。
8. 認識配列が、少なくとも18塩基対を含む、実施形態1から7のいずれかに記載の宿主細胞。
9. 制限エンドヌクレアーゼが、SceIである、実施形態1に記載の宿主細胞。
10. 対抗選択マーカーが、sacBである、実施形態1に記載の宿主細胞。
11. オリゴサッカリルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態1から10のいずれかに記載の宿主細胞。
12. 前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、宿主細胞にとって異種である、実施形態11に記載の宿主細胞。
13. 前記オリゴサッカリルトランスフェラーゼが、原核生物のオリゴサッカリルトランスフェラーゼである、実施形態11又は12に記載の宿主細胞。
14. 少なくとも1種のグリコシルトランスフェラーゼをさらに含む、実施形態1から13のいずれかに記載の宿主細胞。
15. 前記グリコシルトランスフェラーゼが、宿主細胞にとって異種である、実施形態14に記載の宿主細胞。
16. 前記異種グリコシルトランスフェラーゼが、原核生物のグリコシルトランスフェラーゼである、実施形態15に記載の宿主細胞。
17. 宿主細胞にとって天然である1種以上の遺伝子が、欠失又は不活性化されている、実施形態1から16のいずれかに記載の宿主細胞。
18. 前記異種挿入DNAが、原核生物のrfbクラスターを含む、実施形態1から17のいずれかに記載の宿主細胞。
19. 前記rfbクラスターが、大腸菌(E. coli)rfbクラスター、シュードモナス属(Pseudomonas)rfbクラスター、サルモネラ属(Salmonella)rfbクラスター、エルシニア属(Yercinia)rfbクラスター、フランシセラ属(Francisella)rfbクラスター、クレブシエラ属(Klebsiella)rfbクラスター、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)株由来のrfbクラスター、シゲラ属(Shigella)rfbクラスター又はバークホルデリア属(Burkholderia)rfbクラスターである、実施形態18に記載の宿主細胞。
20. 前記rfbクラスターが、大腸菌(E. coli)rfbクラスターである、実施形態19に記載の宿主細胞。
21. 前記大腸菌(E. coli)rfbクラスターが、血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、又はO187のものである、実施形態20に記載の宿主細胞。
22. 前記異種挿入DNAが、原核生物の莢膜多糖遺伝子クラスターを含む、実施形態1から17のいずれかに記載の宿主細胞。
23. 前記多糖遺伝子クラスターが、大腸菌(E. coli)株、ストレプトコッカス属(Streptococcus)株、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)株又はバークホリデリア属(Burkholderia)株由来である、実施形態22に記載の宿主細胞。
24. 前記異種挿入DNAが、大腸菌(E. coli)、サルモネラ属(Salmonella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クレブシエラ属(Klebsiella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、リステニア属(Listeria)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)及びシュードマレイ(pseudomallei)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)又はカンピロバクター属(Campylobacter)のO抗原をコードする、実施形態1から17のいずれかに記載の宿主細胞。
25. 大腸菌(E. coli)の前記O抗原が、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、又はO187である、実施形態24に記載の宿主細胞。
26. クレブシエラ属(Klebsiella)の前記O抗原が、K.ニューモニア(K.pneumonia)血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11又はO12である、実施形態24に記載の宿主細胞。
27. 前記異種挿入DNAが、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)糖脂質、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meringitidis)ピリンOグリカン又はリポオリゴ糖(LOS)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)LOS、大形リーシュマニア(Leishmania major)リポホスホグリカン又は腫瘍関連炭水化物抗原をコードする、実施形態1から17のいずれかに記載の宿主細胞。
28. 前記宿主細胞が、N-グリコシル化のためのコンセンサス配列を含むキャリアタンパク質をコードする核酸をさらに含む、実施形態1から27のいずれかに記載の宿主細胞。
29. キャリアタンパク質をコードする核酸が、宿主細胞にとって異種である、実施形態28に記載の宿主細胞。
30. 前記キャリアタンパク質が、緑膿菌(P.aeruginosa)の解毒化外毒素A(EPA)、CRM197、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、黄色ブドウ球菌(S.aureus)の解毒化溶血素A、クランピング因子A、クランピング因子B、大腸菌(E. coli)FimH、大腸菌(E. coli)FimHC、大腸菌(E. coli)易熱性エンテロトキシン、大腸菌(E. coli)易熱性エンテロトキシンの解毒化変異体、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、コレラ毒素、コレラ毒素の解毒化変異体、大腸菌(E. coli)satタンパク質、大腸菌(E. coli)satタンパク質のパッセンジャードメイン、C.ジェジュニ(C.jejuni)AcrA又はC.ジェジュニ(C.jejuni)天然糖タンパク質である、実施形態28又は29に記載の宿主細胞。
31. 前記キャリアタンパク質が、緑膿菌(P.aeruginosa)の解毒化外毒素A(EPA)である、実施形態30に記載の宿主細胞。
32. 前記宿主細胞が、エシェリキア属(Escherichia)の種、シゲラ属(Shigella)の種、クレブシエラ属(Klebsiella)の種、キサントモナス属(Xhantomonas)の種、サルモネラ属(Salmonella)の種、エルシニア属(Yersinia)の種、ラクトコッカス属(Lactococcus)の種、ラクトバチルス属(Lactobacillus)の種、シュードモナス属(Pseudomonas)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ストレプトマイセス属(Streptomyces)の種、ストレプトコッカス属(Streptococcus)の種、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)の種、バチルス属(Bacillus)の種又はクロストリジウム属(Clostridium)の種である、実施形態1から31のいずれかに記載の宿主細胞。
33. 前記宿主細胞が、大腸菌(E. coli)の種である、実施形態32に記載の宿主細胞。
34. キャリアタンパク質及び抗原を含む糖コンジュゲートを産生する方法であって、タンパク質の産生に適した条件下で、実施形態28から33のいずれかに記載の宿主細胞を培養することを含む、方法。
35. 実施形態34に記載の方法によって産生される糖コンジュゲート。
36. キャリアタンパク質及び抗原を含む、実施形態35に記載の糖コンジュゲート。
37. 前記抗原が、(i)大腸菌(E. coli)、サルモネラ属(Salmonella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クレブシエラ属(Klebsiella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、リステニア属(Listeria)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)及びシュードマレイ(pseudomallei)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)又はカンピロバクター属(Campylobacter)のO抗原、 (ii)クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ピロゲネス(Streptococcus pyrogenes)、大腸菌(E. coli)、ストレプトコッカス・アガラクチカエ(Streptococcus agalacticae)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meringitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)の莢膜多糖、あるいは(iii)ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)糖脂質、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meringitidis)ピリンOグリカン若しくはリポオリゴ糖(LOS)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)LOS、大形リーシュマニア(Leishmania major)リポホスホグリカン若しくは腫瘍関連炭水化物抗原である、実施形態36に記載の糖コンジュゲート。
38. 大腸菌(E. coli)の前記O抗原が、O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11、O12、O13、O14、O15、O16、O17、O18、O19、O20、O21、O22、O23、O24、O25、O26、O27、O28、O29、O30、O32、O33、O34、O35、O36、O37、O38、O39、O40、O41、O42、O43、O44、O45、O46、O48、O49、O50、O51、O52、O53、O54、O55、O56、O57、O58、O59、O60、O61、O62、O63、O64、O65、O66、O68、O69、O70、O71、O73、O74、O75、O76、O77、O78、O79、O80、O81、O82、O83、O84、O85、O86、O87、O88、O89、O90、O91、O92、O93、O95、O96、O97、O98、O99、O100、O101、O102、O103、O104、O105、O106、O107、O108、O109、O110、O111、O112、O113、O114、O115、O116、O117、O118、O119、O120、O121、O123、O124、O125、O126、O127、O128、O129、O130、O131、O132、O133、O134、O135、O136、O137、O138、O139、O140、O141、O142、O143、O144、O145、O146、O147、O148、O149、O150、O151、O152、O153、O154、O155、O156、O157、O158、O159、O160、O161、O162、O163、O164、O165、O166、O167、O168、O169、O170、O171、O172、O173、O174、O175、O176、O177、O178、O179、O180、O181、O182、O183、O184、O185、O186、又はO187である、実施形態37に記載の糖コンジュゲート。
39. クレブシエラ属(Klebsiella)の前記O抗原が、K.ニューモニア(K.pneumonia)血清型O1、O2、O3、O4、O5、O6、O7、O8、O9、O10、O11又はO12である、実施形態37に記載の糖コンジュゲート。
40. 前記キャリアタンパク質が、解毒化EPAである、実施形態36から39のいずれかに記載の糖コンジュゲート。
41. 実施形態35から40のいずれかに記載の糖コンジュゲートを含む免疫原性組成物。
42. 実施形態41に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、対象において感染を治療又は予防する方法。
43. 前記感染が、尿路病原性大腸菌(E. coli)による感染である、実施形態42に記載の方法。
44. 実施形態41に記載の免疫原性組成物を対象に投与することを含む、対象において免疫応答を誘導する方法。
45. 前記免疫応答が、病原体に対する免疫応答である、実施形態44に記載の方法。
46. 前記病原体が、大腸菌(E. coli)、サルモネラ属(Salmonella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、クレブシエラ属(Klebsiella)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、コレラ菌(Vibrio cholera)、リステニア属(Listeria)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、ボルデテラ・パラペルツシス(Bordetella parapertussis)、バークホルデリア・マレイ(Burkholderia mallei)、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)、フランシセラ・ツラレンシス(Francisella tularensis)、カンピロバクター属(Campylobacter);クロストリジウム属(Clostridium)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meringitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis);ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)又は大形リーシュマニア(Leishmania major)である、実施形態45に記載の方法。
47. 対象がヒトである、実施形態42から46のいずれかに記載の方法。
48. ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含むキットであって、
(a)ヘルパープラスミドは、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含み、
(b)ドナープラスミドは、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む、
キット。
49. (i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含む、単離されたプラスミド。
50. (i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む、単離されたプラスミド。
51. ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含む宿主細胞を作製する方法であって、実施形態49及び50に記載のプラスミドを宿主細胞中に導入することを含む、方法。
52. 前記導入が、形質転換を含む、実施形態51に記載の方法。
53. ドナープラスミド及びヘルパープラスミドを含み、以下の方法:(i)ドナープラスミドを宿主細胞中に導入すること及び(ii)ヘルパープラスミドを宿主細胞中に導入することに従って産生される、単離された宿主細胞。
54. ヘルパープラスミドが、(i)第1のプロモーターの制御下に、λレッドリコンビナーゼをコードするオープンリーディングフレーム、(ii)第2のプロモーターの制御下に、宿主細胞ゲノム中に存在しない認識配列を有する制限エンドヌクレアーゼをコードするオープンリーディングフレームを含む、実施形態53に記載の宿主細胞。
55. ドナープラスミドが、(i)5'から3'に、(1)制限エンドヌクレアーゼの認識配列、(2)少なくとも0.5キロベース(kb)の第1の相同領域、(3)少なくとも8kbの異種挿入DNA、及び(4)少なくとも0.5kbの第2の相同領域、並びに(ii)対抗選択マーカーを含む、実施形態53又は54に記載の宿主細胞。
56. 前記導入が、形質転換を含む、実施形態53から55のいずれかに記載の宿主細胞。
57. 前記ドナープラスミド及び前記ヘルパープラスミドが、宿主細胞中に個別に導入される、実施形態53から56のいずれかに記載の宿主細胞。
58. 前記ドナープラスミド及び前記ヘルパープラスミドが、宿主細胞中に同時に導入される、実施形態53から56のいずれかに記載の宿主細胞。
59. オリゴサッカリルトランスフェラーゼをコードする異種遺伝子が、宿主細胞のゲノム中に挿入されている、単離された宿主細胞。
60. 大腸菌(E. coli)である、実施形態59に記載の単離された宿主細胞。
61. 前記遺伝子が、C.ジェジュニ(C.jejuni)pglB遺伝子である、実施形態59又は60に記載の単離された宿主細胞。
62. 宿主細胞中の異種遺伝子のコピー数が、1、2、3、4又は5である、実施形態59から61のいずれかに記載の単離された宿主細胞。
63. 宿主細胞中の異種遺伝子のコピー数が、1である、実施形態62に記載の単離された宿主細胞。
64. コンセンサス配列Asn-X-Ser(Thr)[Xは、Proを除く任意のアミノ酸であり得る]を含むキャリアタンパク質を含む、実施形態59から63のいずれかに記載の単離された宿主細胞。
65. 前記キャリアタンパク質が、前記宿主細胞にとって異種である、実施形態64に記載の単離された宿主細胞。
66. 前記キャリアタンパク質が、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素A、コレラ毒素B、AcrA、HlA又はClfAである、実施形態64又は65に記載の単離された宿主細胞。
67. N-グリコシル化タンパク質を産生する方法であって、実施形態59から66のいずれかに記載の宿主細胞をタンパク質の産生に適した条件下で培養することを含む、方法。
同等物:
本明細書において開示される方法、宿主細胞及び組成物は、本明細書において記載された特定の実施形態による範囲に制限されるものではない。実際、記載されたものに加えて、方法、宿主細胞及び組成物の種々の改変は、前述の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るものとする。
【0246】
種々の刊行物、特許及び特許出願が本明細書において引用され、その開示内容は、参照によりその全文が組み込まれる。