(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る集電部材を用いたセルスタックの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、セルスタック装置100は、燃料マニホールド200と、複数の燃料電池セル300と、を備えている。
【0011】
[燃料マニホールド]
図3に示すように、燃料マニホールド200は、燃料ガス(例えば、水素など)を各燃料電池セル300に分配するように構成されている。燃料マニホールド200は、中空状であり、内部空間を有している。燃料マニホールド200の内部空間には、導入管201を介して燃料ガスが供給される。燃料マニホールド200は、互いに間隔をあけて並ぶ複数の挿入孔202を有している。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の天板203に形成されている。各挿入孔202は、燃料マニホールド200の内部空間と外部に連通する。
【0012】
[燃料電池セル]
図2に示すように、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200から延びている。詳細には、各燃料電池セル300は、燃料マニホールド200の天板203から上方(x軸方向)に延びている。すなわち、各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)は、上方に延びている。各燃料電池セル300の長手方向(x軸方向)の長さは、100〜300mm程度とすることができる。
【0013】
各燃料電池セル300の基端部は、燃料マニホールド200の挿入孔202に挿入されている。各燃料電池セル300は、接合材101によって挿入孔202に固定されている。燃料電池セル300は、挿入孔202に挿入された状態で、接合材101によって燃料マニホールド200に固定されている。接合材101は、燃料電池セル300と挿入孔202の隙間に充填される。接合材101としては、例えば、結晶化ガラス、非晶質ガラス、ろう材、及びセラミックスなどが挙げられる。結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスである。このような結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、又はSiO
2−MgO系が挙げられる。
【0014】
各燃料電池セル300は、長手方向(x軸方向)及び幅方向(y軸方向)に広がる板状に形成されている。各燃料電池セル300は、配列方向(z軸方向)に間隔をあけて配列されている。隣り合う2つの燃料電池セル300の間隔は特に制限されないが、1〜5mm程度とすることができる。隣り合う2つの燃料電池セル300は、第1集電部材301と第2集電部材302とによって電気的に接続されている。複数の燃料電池セル300が第1集電部材301と第2集電部材302で接続されることによってセルスタックが形成されている。第1集電部材301と第2集電部材302の構成については後述する。
【0015】
燃料電池セル300は、複数の発電素子部10と、支持基板20とを備える。
【0016】
[支持基板]
図4に示すように、支持基板20は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に沿って延びる複数のガス流路21を内部に有している。各ガス流路21は、支持基板20の基端側から先端側に向かって延びている。各ガス流路21は、互いに実質的に平行に延びている。なお、基端側とは、ガス流路のガス供給側を意味する。具体的には、燃料マニホールド200に燃料電池セル300を取り付けた場合において、その燃料マニホールド200に近い側を意味する。また、先端側とは、ガス流路のガス供給側とは反対側を意味する。具体的には、燃料電池セル300を燃料マニホールド200に取り付けた場合において、その燃料マニホールド200から遠い側を意味する。例えば、
図2に示す例では、下側が基端側であり、上側が先端側となる。
【0017】
図5に示すように、支持基板20は、複数の第1凹部22を有する。本実施形態において、各第1凹部22は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各第1凹部22は支持基板20の長手方向において互いに間隔をあけて配置されている。
【0018】
支持基板20は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板20は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、支持基板20は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板20の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。
【0019】
[発電素子部]
各発電素子部10は、支持基板20に支持されている。本実施形態において、各発電素子部10は、支持基板20の両主面に形成されているが、一方の主面にだけ形成されていてもよい。各発電素子部10は、支持基板20の長手方向において、互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、本実施形態に係る燃料電池セル300は、いわゆる横縞型の燃料電池セルである。長手方向に隣り合う発電素子部10は、インターコネクタ31によって互いに電気的に接続されている。
【0020】
発電素子部10は、燃料極4、電解質5、及び空気極6を有している。また、発電素子部10は、反応防止膜7をさらに有している。
【0021】
[燃料極]
燃料極4は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極4は、燃料極集電部41と燃料極活性部42とを有する。
【0022】
燃料極集電部41は、第1凹部22内に配置されている。詳細には、燃料極集電部41は、第1凹部22内に充填されており、第1凹部22と同様の外形を有する。燃料極集電部41は、第2凹部411及び第3凹部412を有している。第2凹部411内には、燃料極活性部42が配置されている。また、第3凹部412には、インターコネクタ31が配置されている。
【0023】
燃料極集電部41は、電子伝導性を有する。燃料極集電部41は、燃料極活性部42よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。燃料極集電部41は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0024】
燃料極集電部41は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部41は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部41の厚さ、及び第1凹部22の深さは、50〜500μm程度である。
【0025】
燃料極活性部42は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。燃料極活性部42は、燃料極集電部41よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、燃料極活性部42における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、燃料極集電部41における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0026】
燃料極活性部42は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部42は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部42の厚さは、5〜30μmである。
【0027】
[電解質]
電解質5は、燃料極4上を覆うように配置されている。詳細には、電解質5は、あるインターコネクタ31から隣のインターコネクタ31まで長手方向に延びている。すなわち、支持基板20の長手方向(x軸方向)において、電解質5とインターコネクタ31とが交互に連続して配置されている。電解質5は、支持基板20の第1主面23a及び第2主面23bを覆うように構成されている。
【0028】
電解質5は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質5は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、電解質5は、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質5の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0029】
[反応防止膜]
反応防止膜7は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜7は、電解質5と空気極活性部61との間に配置されている。反応防止膜7は、電解質5内のYSZと空気極6内のSrとが反応して電解質5と空気極6との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。
【0030】
反応防止膜7は、希土類元素を含むセリアを含んだ材料から構成されている。反応防止膜7は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0031】
[空気極]
空気極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極6は、電解質5を基準にして、燃料極4と反対側に配置されている。空気極6は、空気極活性部61と空気極集電部62とを有している。
【0032】
空気極活性部61は、反応防止膜7上に配置されている。空気極活性部61は、酸素イオン伝導性を有するとともに、電子伝導性を有する。空気極活性部61は、空気極集電部62よりも酸素イオン伝導性を有する物質の含有率が大きい。詳細には、空気極活性部61おける、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合は、空気極集電部62における、気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合よりも大きい。
【0033】
空気極活性部61は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極活性部61は、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、又は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。空気極活性部61は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極活性部61の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0034】
空気極集電部62は、空気極活性部61上に配置されている。また、空気極集電部62は、空気極活性部61から、隣の発電素子部に向かって延びている。燃料極集電部41と空気極集電部62とは、発電領域から互いに反対側に延びている。発電領域とは、燃料極活性部42と電解質5と空気極活性部61とが重複する領域である。
【0035】
空気極集電部62は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電部62は、空気極活性部61よりも高い電子伝導性を有していることが好ましい。空気極集電部62は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0036】
空気極集電部62は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、空気極集電部62は、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、空気極集電部62は、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電部62の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0037】
[インターコネクタ]
インターコネクタ31は、支持基板20の長手方向(x軸方向)に隣り合う発電素子部10を電気的に接続するように構成されている。詳細には、一方の発電素子部10の空気極集電部62は、他方の発電素子部10に向かって延びている。また、他方の発電素子部10の燃料極集電部41は、一方の発電素子部10に向かって延びている。そして、インターコネクタ31は、一方の発電素子部10の空気極集電部62と、他方の発電素子部10の燃料極集電部41とを電気的に接続している。インターコネクタ31は、燃料極集電部41の第3凹部412内に配置されている。詳細には、インターコネクタ31は、第3凹部412内に埋設されている。
【0038】
インターコネクタ31は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ31は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、インターコネクタ31は、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ31の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0039】
[集電部材]
図6に示すように、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)は、第1集電部材301と第2集電部材302によって電気的に接続される。第1集電部材301と第2集電部材302は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間に配置される。第1集電部材301と第2集電部材302は、支持基板20の両主面に配置された複数の発電素子部10のうち最も基端側に配置された基端側発電素子部10aよりも基端側に配置されている。
【0040】
第1集電部材301と第2集電部材302それぞれは、第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300bそれぞれの基端側に接合される。詳細には、第1集電部材301と第2集電部材302それぞれは、接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62と、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10aから延びる空気極集電部62とに接合される。接合材102は、例えば、(Mn,Co)
3O
4、(La,Sr)MnO
3、及び(La,Sr)(Co,Fe)O
3などから選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
ここで、
図7は、第1集電部材301と第2集電部材302の斜視図である。
図7では、第1集電部材301と第2集電部材302が第1燃料電池セル300aに接合された状態が示されている。
図7では、第2燃料電池セル300bが省略されているが、実際には第1燃料電池セル300aと対向するように第2燃料電池セル300bが配置されている。
【0042】
第1集電部材301と第2集電部材302それぞれは、短冊状の金属板(例えば、ステンレス板)を折り曲げ加工することによって形成される。第1集電部材301と第2集電部材302それぞれは、幅方向(y軸方向)に沿って延びるように配置される。第1集電部材301と第2集電部材302それぞれは、第1集電部材301と第2集電部材302との隙間内に配置されており、当該隙間の外側に突出していない。
【0043】
[第1集電部材]
図7に示すように、第1集電部材301は、第1接合部a1、第2接合部a2、及び第1連結部b1を有する。
【0044】
第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aに接合される板状部材である。詳細には、第1接合部a1は、接合材102によって、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第1接合部a1は、第2燃料電池セル300b(
図7では不図示)と対向する。本実施形態において、第1接合部a1は、幅方向に沿って配置されているが、幅方向に対して傾斜していてもよい。また、本実施形態において、第1接合部a1は、矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。
【0045】
第1接合部a1には、複数の貫通孔c1が形成されている。各貫通孔c1には、接合材102が充填されている。これによって、第1燃料電池セル300aに対する第1接合部a1の接合力を向上させることができる。接合材102は、各貫通孔c1の外側にはみ出していてもよく、第1接合部a1の外表面上に広がっていてもよい。本実施形態において、各貫通孔c1は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。また、本実施形態では、3個の貫通孔c1が設けられているが、貫通孔c1の個数は適宜変更可能である。
【0046】
ここで、
図8は、
図7のA−A断面図である。第1接合部a1は、第1主面Sa1を有する。第1接合部a1の第1主面Sa1は、第1燃料電池セル300aの外表面Ta側を向いている。第1接合部a1の第1主面Sa1は、第1燃料電池セル300aに接合材102を介して接合される。
【0047】
接合強度を向上させる観点から、第1主面Sa1側から見た第1接合部a1の面積A1に対する、貫通孔c1を画定する内壁面Sc1の面積A2の割合A2/A1は、0.1以上であることが好ましい。第1接合部a1の製造上の観点から、上記割合A2/A1は、0.7以下であることが好ましい。なお、本実施形態のように第1接合部a1が複数の貫通孔c1を有する場合、内壁面Sc1の面積A2とは、各貫通孔c1を画定する内壁面Sc1の面積の合計値を意味する。また、第1接合部a1の面積A1とは、貫通孔c1も含む面積である。例えば、本実施形態のように第1接合部a1が矩形状の場合、第1接合部a1の面積A1は、第1接合部a1の高さに接第1接合部a1の幅を乗じることによって求められる。
【0048】
第2接合部a2は、第2燃料電池セル300b(
図7では不図示)に接合される。詳細には、第2接合部a2は、接合材102によって、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第2接合部a2は、第1燃料電池セル300aと対向する。本実施形態において、第2接合部a2は、幅方向に沿って配置されているが、幅方向に対して傾斜していてもよい。また、本実施形態において、第2接合部a2は、矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。
【0049】
第2接合部a2には、複数の貫通孔c2が形成されている。各貫通孔c2には、接合材102が充填される。これによって、第2燃料電池セル300bに対する第2接合部a2の接合力を向上させることができる。接合材102は、各貫通孔c2の外側にはみ出していてもよく、第2接合部a2の外表面上に広がっていてもよい。本実施形態において、各貫通孔c2は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。また、本実施形態では、3個の貫通孔c2が設けられているが、貫通孔c2の個数は適宜変更可能である。
【0050】
なお、図示しないが、第1接合部a1の貫通孔c1について説明したように、接合強度を向上させる観点から、主面側から見た第2接合部a2の面積に対する、貫通孔c2を画定する内壁面の面積の割合は、0.1以上が好ましい。当該割合は、第2接合部a2の製造上の観点から、0.7以下が好ましい。
【0051】
第1連結部b1は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bとの隙間に配置される。第1連結部b1は、幅方向において、第1接合部a1と第2接合部a2との間に位置する。第1連結部b1は、第1接合部a1のうち第2接合部a2側の端部と、第2接合部a2のうち第1接合部a1側の端部とに連なる。第1連結部b1は、第1接合部a1及び第2接合部a2と一体的に形成されている。
【0052】
第1連結部b1は、第1接合部a1から第2接合部a2に向かって斜めに延びる。第1連結部b1は、配列方向(z軸方向)に対して傾斜している。そのため、第1連結部b1は、第1接合部a1及び第2接合部a2それぞれに対して傾斜している。第1連結部b1は、第1接合部a1及び第2接合部a2それぞれに対して鈍角を成している。従って、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの少なくとも一方が熱変形することによって、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間隔が変動したとしても、その間隔変動に第1連結部b1が追従することができる。従って、第1集電部材301の押圧力によって第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bにクラックが発生することを簡素な構成で抑制できる。
【0053】
[第2集電部材]
図7に示すように、第2集電部材302は、長手方向(x軸方向)において、第1集電部材301と隣接する。第2集電部材302は、第1集電部材301と同じ構成を有する。ただし、第2集電部材302は、配列方向(z軸方向)に平行な仮想線VL周りに第1集電部材301を反転させた位置に配置されている。本実施形態において、第2集電部材302は、第1集電部材301の基端側(すなわち、マニホールド200側)に配置されているが、第1集電部材301が第2集電部材302の基端側に配置されていてもよい。また、本実施形態において、第2集電部材302は、第1集電部材301に接触していないが、第1集電部材301に接触していてもよい。
【0054】
このような第2集電部材302を設けることによって、第1集電部材301だけに電流が集中することを抑制できるため、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間における電力損失を低減することができる。
【0055】
図7に示すように、第2集電部材302は、第3接合部a3、第4接合部a4、及び第2連結部b2を有する。
【0056】
第3接合部a3は、第1燃料電池セル300aに接合される。詳細には、第3接合部a3は、接合材102によって、第1燃料電池セル300aの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第3接合部a3は、第2燃料電池セル300b(
図7では不図示)と対向する。本実施形態において、第3接合部a3は、幅方向に沿って配置されているが、幅方向に対して傾斜していてもよい。また、本実施形態において、第3接合部a3は、矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。
【0057】
第3接合部a3には、複数の貫通孔c3が形成されている。各貫通孔c3には、接合材102が充填されている。これによって、第1燃料電池セル300aに対する第3接合部a3の接合力を向上させることができる。接合材102は、各貫通孔c3の外側にはみ出していてもよく、第3接合部a3の外表面上に広がっていてもよい。本実施形態において、各貫通孔c3は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。また、本実施形態では、3個の貫通孔c3が設けられているが、貫通孔c3の個数は適宜変更可能である。
【0058】
なお、図示しないが、第1接合部a1の貫通孔c1について説明したように、接合強度を向上させる観点から、主面側から見た第3接合部a3の面積に対する、貫通孔c3を画定する内壁面の面積の割合は、0.1以上が好ましい。当該割合は、第3接合部a3の製造上の観点から、0.7以下が好ましい。
【0059】
第4接合部a4は、第2燃料電池セル300b(
図7では不図示)に接合される。詳細には、第4接合部a4は、接合材102によって、第2燃料電池セル300bの基端側発電素子部10a(
図6参照)から延びる空気極集電部62に接合される。第4接合部a4は、第1燃料電池セル300aと対向する。本実施形態において、第4接合部a4は、幅方向に沿って配置されているが、幅方向に対して傾斜していてもよい。また、本実施形態において、第4接合部a4は、矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。
【0060】
第4接合部a4には、複数の貫通孔c4が形成されている。各貫通孔c4には、接合材102が充填される。これによって、第2燃料電池セル300bに対する第4接合部a4の接合力を向上させることができる。接合材102は、各貫通孔c4の外側にはみ出していてもよく、第4接合部a4の外表面上に広がっていてもよい。本実施形態において、各貫通孔c4は、幅方向に沿って延びる矩形状に形成されているが、円形、楕円形、三角形、正方形、五角以上の多角形、又は、これら以外の複雑な形状に形成されていてもよい。また、本実施形態では、3個の貫通孔c4が設けられているが、貫通孔c4の個数は適宜変更可能である。
【0061】
なお、図示しないが、第1接合部a1の貫通孔c1について説明したように、接合強度を向上させる観点から、主面側から見た第4接合部a4の面積に対する、貫通孔c4を画定する内壁面の面積の割合は、0.1以上が好ましい。当該割合は、第4接合部a4の製造上の観点から、0.7以下が好ましい。
【0062】
第2連結部b2は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bとの隙間に配置される。第2連結部b2は、幅方向において、第3接合部a3と第4接合部a4との間に位置する。第2連結部b2は、第3接合部a3のうち第4接合部a4側の端部と、第4接合部a4のうち第3接合部a3側の端部とに連なる。第2連結部b2は、第3接合部a3及び第4接合部a4と一体的に形成されている。
【0063】
第2連結部b2は、第3接合部a3から第4接合部a4に向かって斜めに延びる。第2連結部b2は、配列方向(z軸方向)に対して傾斜している。そのため、第2連結部b2は、第3接合部a3及び第4接合部a4それぞれに対して傾斜している。第2連結部b2は、第3接合部a3及び第4接合部a4それぞれに対して鈍角を成している。従って、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの少なくとも一方が熱変形することによって、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間隔が変動したとしても、その間隔変動に第2連結部b2が追従することができる。従って、第2集電部材302の押圧力によって第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bにクラックが発生することを簡素な構造で抑制できる。
【0064】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0065】
変形例1
上記実施形態では、本発明に係る第1集電部材301と第2集電部材302を横縞型の燃料電池セルに適用した場合について説明したが、いわゆる縦縞型の燃料電池セルなどにも適用することができる。縦縞型の燃料電池セルは、絶縁性の支持基板と、支持基板の一主面上に配置される発電部(燃料極、固体電解質層及び空気極)と、支持基板の他主面上に配置されるインターコネクタとを備える。
【0066】
変形例2
上記実施形態では、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)を2つの集電部材(第1集電部材301及び第2集電部材302)によって接続することとしたが、隣接する2つの燃料電池セル300(第1燃料電池セル300a及び第2燃料電池セル300b)を1つの集電部材(第1集電部材301又は第2集電部材302)によって接続することとしてもよい。
【0067】
変形例3
上記実施形態において、第1集電部材301の第1接合部a1は、複数の貫通孔c1を有することとしたが、貫通孔c1を1つだけ有していてもよいし、貫通孔c1を有していなくてもよい。同様に、第1集電部材301の第2接合部a2は、複数の貫通孔c2を有することとしたが、貫通孔c2を1つだけ有していてもよいし、貫通孔c2を有していなくてもよい。
【0068】
変形例4
上記実施形態において、第2集電部材302の第3接合部a3は、複数の貫通孔c3を有することとしたが、貫通孔c3を1つだけ有していてもよいし、貫通孔c3を有していなくてもよい。同様に、第2集電部材302の第4接合部a4は、複数の貫通孔c4を有することとしたが、貫通孔c4を1つだけ有していてもよいし、貫通孔c4を有していなくてもよい。
【0069】
変形例5
上記実施形態において、第1集電部材301の第1連結部b1は、無孔板状に形成されることとしたが、
図9及び
図10に示すように、1つ以上の貫通孔c5を有していてもよい。これによって、第1連結部b1の可撓性を向上させることができるため、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bにクラックが発生することをより抑制できる。なお、
図9及び
図10では、貫通孔c5が貫通孔c1及び貫通孔c2に連なるように形成されているが、貫通孔c1及び貫通孔c2に連なっていなくてもよい。同様に、第2集電部材302の第2連結部b2においても、1つ以上の貫通孔が形成されていてもよい。
【0070】
変形例6
上記実施形態では特に触れていないが、第1集電部材301の第1接合部a1は、
図11に示す構成とすることができる。
図11は、
図7のB−B断面図である。
【0071】
図11に示すように、第1集電部材301の第1接合部a1は、接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの外表面Taに接合される。第1接合部a1は、基材301Xと酸化クロム膜301Yとを有する。
【0072】
基材301Xは、板状に形成される。基材301Xの厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜4.0mmとすることができる。
【0073】
基材301Xは、Cr(クロム)を含有する合金によって構成される。このような合金としては、Fe−Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)、又はNi−Cr系合金鋼などを用いることができる。基材301XにおけるCrの含有割合は特に制限されないが、例えば4〜30質量%とすることができる。
【0074】
基材301Xは、Ti(チタン)やAl(アルミニウム)を含有していてもよい。基材301XにおけるTiの含有割合は特に制限されないが、例えば0.01〜1.0at.%とすることができる。基材301XにおけるAlの含有割合は特に制限されないが、例えば0.01〜0.4at.%とすることができる。基材301Xは、TiをTiO
2(チタニア)として含有していてもよいし、AlをAl
2O
3(アルミナ)として含有していてもよい。
【0075】
酸化クロム膜301Yは、基材301X上に形成される。酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆う。酸化クロム膜301Yは、基材301Xの表面全体を覆っていることが好ましいが、基材301Xの表面を部分的に覆っていなくてもよい。酸化クロム膜301Yの厚みは特に制限されないが、例えば1μm〜20μmとすることができる。
【0076】
酸化クロム膜301Yは、酸化クロム(Cr
2O
3)を主成分として含む。具体的には、酸化クロム膜301Yは、酸化クロムを50wt%以上含む。酸化クロム膜301Yは、Mn、Fe、Cr、Mo、Siなどを不純物として含有していてもよい。酸化クロム膜301Yは、RF(radio-frequency)マグネトロンスパッタ装置を用いてCrターゲットをArスパッタリングし、反応ガス(例えば、酸素)との反応により酸化物を成膜することによって形成することができる。
【0077】
図11に示すように、第1集電部材301は、第1燃料電池セル300aの外表面Taに垂直な断面において、第1面Y1、第2面Y2及び角部Y3を含む。
【0078】
第1面Y1は、第1燃料電池セル300aの外表面Taに対して角度を有する。すなわち、第1面Y1は、外表面Taと平行ではなく、外表面Taに対して傾斜している。第1面Y1は、角部Y3側に向かうほど外表面Taに近づく。外表面Taに対する第1面Y1の角度θ1は特に制限されないが、例えば0.5度〜45度とすることができる。なお、
図11に示す例では、第1面Y1が平坦に形成されているが、実際には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0079】
第1面Y1において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。第1面Y1に形成された酸化クロム膜301Yの厚みは、角部Y3に近づくほど厚く形成されていてもよい。
【0080】
第2面Y2は、第1面Y1に連なる。第2面Y2は、第1燃料電池セル300aの外表面Taに対して角度を有する。すなわち、第2面Y2は、外表面Taと平行ではなく、外表面Taに対して傾斜している。第2面Y2は、角部Y3側に向かうほど外表面Taに近づく。外表面Taに対する第2面Y2の角度θ2は特に制限されないが、例えば45度〜135度とすることができる。
【0081】
また、第2面Y2は、第1面Y1に対して角度を有する。すなわち、第2面Y2は、第1面Y1と平行ではなく、第1面Y1に対して傾斜している。第1面Y1に対する第2面Y2の角度θ3は特に制限されないが、例えば30度〜135度とすることができる。なお、
図11に示す例では、第2面Y2が平坦に形成されているが、実際には微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0082】
第2面Y2において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。第2面Y2に形成された酸化クロム膜301Yの厚みは、角部Y3に近づくほど厚く形成されていてもよい。
【0083】
角部Y3は、第1面Y1と第2面Y2とによって形成される。本実施形態において、「第1面Y1と第2面Y2とによって形成される」とは、“第1面Y1と第2面Y2とによって規定される”、“第1面Y1と第2面Y2とによって区画される”、及び“第1面Y1と第2面Y2との間に設けられる”のうち少なくとも1つを意味する。
【0084】
角部Y3は、第1面Y1と第2面Y2とが屈曲するように連なることで形成されていてもよいし、第1面Y1と第2面Y2とが他の1以上の面(湾曲面又は屈曲面)を介して連なることで形成されていてもよい。
【0085】
角部Y3において、酸化クロム膜301Yは、基材301Xを覆っていることが好ましい。角部Y3に形成された酸化クロム膜301Yは、角部Y3周辺において他の部分よりも厚く形成されていてもよい。
【0086】
角部Y3は、第1面Y1及び第2面Y2それぞれよりも第1燃料電池セル300aの外表面Taに近接している。本変形例において、角部Y3は、第1集電部材301のうち、第1燃料電池セル300aの外表面Taに最も近接する部位である。角部Y3から外表面Taまでの距離Dは特に制限されないが、0.5〜2000μmとすることができる。
【0087】
第1燃料電池セル300aから第1集電部材301に流れる電流、又は、第1集電部材301から第1燃料電池セル300aに流れる電流は、第1集電部材301のうち第1燃料電池セル300aの外表面Taに近接する角部Y3に集中する。角部Y3に電流が集中すると、角部Y3に形成された酸化クロム膜301Yの温度が上昇して、酸化クロム膜301Yの電気抵抗が低下する。その結果、第1燃料電池セル300aから第1集電部材301へ、又は、第1集電部材301から第1燃料電池セル300aへスムーズに電流を流すことができるため、第1燃料電池セル300aと第1集電部材30との電気的接続性を向上させることができる。
【0088】
また、角部Y3を形成する第1面Y1及び第2面Y2のそれぞれが外表面Taに対して角度を有しているため、角部Y3を接合材102に挿入した際に、接合材102中の気泡を角部Y3周辺から排除することができる。その結果、第1燃料電池セル300aと第1集電部材301との電気的接続性を更に向上させることができる。
【0089】
以上、第1集電部材301の第1接合部a1の構成の変形例について説明したが、このような構成は、第1集電部材301の第2接合部a2、第2集電部材302の第3接合部a3及び第2集電部材302の第4接合部a4にも適用することができる。
【実施例】
【0090】
以下に実施例を示して、集電部材の接合部に形成される貫通孔の好適なサイズについて具体的に説明する。なお、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0091】
図7及び
図8に示すような構成の第1集電部材301を複数作製した。ただし、第1接合部a1の面積A1に対する、貫通孔c1を画定する内壁面Sc1の面積A2の割合A2/A1を、第1集電部材301ごとに変更した。各第1集電部材301の第1接合部a1の面積A1、複数の貫通孔c1の内壁面Sc1の面積の合計値A2、及び割合A2/A1は、表1の通りである。
【0092】
以上のように作製した各第1集電部材301を、接合材102を介して、第1燃料電池セル300aの空気極集電部62に接合した。そして、熱処理によって、接合材102を固化させた。このときの熱処理温度は、900℃、熱処理時間は1hrとした。
【0093】
接合材102は、
図8に示すように、第1接合部a1の第1主面Sa1と第1燃料電池セル300aの外表面Taとの間、及び各貫通孔c1内に充填されている。なお、接合材102は、第1接合部a1の外表面上にはみ出していない。接合材102、第1集電部材301及び空気極集電部62の材料は、表1の通りであり、第1集電部材の材料はSUS445J1(Cr含有量22wt.%)、SUS430(Cr含有量16wt.%)を用いた。その他の条件は、各サンプルともに基本的に同じ条件とした。
【0094】
(評価方法)
以上のように作製された各サンプル1〜26に対して、熱サイクル試験を行った。具体的には、まず、常温から800℃まで昇温速度300℃/hrで昇温した後、800℃で2hr維持し、300℃/hrで50℃まで降温するサイクルを20回繰り返した。
【0095】
その後、各サンプルにおける剥離の有無を確認した。具体的には、第1接合部a1と接合材102との間で剥離が生じているか否かを光学顕微鏡で観察を行い確認した。
【0096】
以上の結果を評価として表1に示している。表1における評価「○」は、熱サイクル試験によって剥離が生じなかったことを意味する。また、表1における評価「△」とは熱サイクル試験によって剥離が生じたことを意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、第1主面Sa1側から見た第1接合部a1の面積A1に対する、貫通孔c1を画定する内壁面Sc1の面積A2の割合A2/A1を0.1以上とすることにより、第1接合部a1と接合材102との間の剥離を抑制できることが分かった。
【解決手段】セルスタックは、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bと第1集電部材301とを備える。第1集電部材301は、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bの間に配置され、第1燃料電池セル300aと第2燃料電池セル300bとを電気的に接続する。第1集電部材301は、第1接合部a1と第2接合部a2と第1連結部b1とを有する。第1接合部a1は、第1燃料電池セル300aに接合され、第2燃料電池セル300bと対向する。第2接合部a2は、第2燃料電池セル300bに接合され、第1燃料電池セル300aと対向する。第1連結部b1は、第1接合部a1のうち第2接合部a2側の端部と第2接合部a2のうち第1接合部a1側の端部とに連なる。第1連結部b1は、第1接合部a1及び第2接合部a2それぞれに対して傾斜している。