(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記温度勾配は、前記インバータにおける基準指令速度又は基準出力電流値における前記永久磁石の冷却量及び温度上昇量を考慮して求められることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
前記インバータは、前記電動機の負荷電流値とキャリア周波数に基づき温度上昇量を求め、前記冷却手段である冷却ファンの回転数に基づき冷却量を求め、前記温度検出器によって検出された温度に対し、前記温度上昇量を指し引き、前記冷却量を加えることで、前記永久磁石の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
前記温度勾配は、前記インバータにおける基準指令速度又は基準出力電流値における前記永久磁石の冷却量及び温度上昇量を考慮して求められることを特徴とする請求項5に記載のインバータ駆動電動機組立体。
前記インバータは、前記電動機の負荷電流値とキャリア周波数に基づき温度上昇量を求め、前記冷却手段である冷却ファンの回転数に基づき冷却量を求め、前記温度検出器によって検出された温度に対し、前記温度上昇量を指し引き、前記冷却量を加えることで、前記永久磁石の温度を推定することを特徴とする請求項5に記載のインバータ駆動電動機組立体。
前記冷却ファンの回転数は指令速度の積算値に基づき算出し、前記負荷電流値は出力電流値の積算値に基づき算出されることを特徴とする請求項7に記載のインバータ駆動電動機組立体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
実施例1は、インバータにより速度制御される電動機によって駆動するポンプ装置において、該インバータは、前記電動機の電機子の外周を構成するハウジングの一部に取り付けられており、また該インバータ内に設けられた温度検出器を利用して該ハウジングの温度を検出するように構成されている。そして、該温度検出器を使用してハウジング温度を検出し、予め記憶された該ハウジングと電動機回転子(ロータ)内の永久磁石温度の相関から、または、電動機の負荷電流値と電動機の回転数とインバータのキャリア周波数(電力変換装置が出力する出力電力のパルス幅変調周期の周波数)から電動機の運転状態を判断し、検出された温度と電動機の運転状態から電動機回転子(ロータ)内の永久磁石温度を推定するものである。電動機回転子(ロータ)は複数の永久磁石を円筒状に配置することにより構成される。さらに、推定された磁石温度と、磁石の温度特性を基に、電動機の制御定数を補正するものである。すなわち、ハウジング温度から永久磁石温度を推定し、その温度に応じた好適な電動機制御定数を与え、安定した制御を行うものである。
【0012】
まず、本実施例の前提である、電動機とインバータの関係について図面を用いて説明する。
図2は、ポンプ駆動用の電動機とインバータが一体となった外観図を示した図である。
図2において、1は同期電動機本体の外周を覆うカバー、2は冷却ファン25を内蔵する冷却カバー、3は、カバー1の外周面に取り付けられたインバータを収納したケース、4はノイズフィルタを内蔵した端子箱、5はエンドブラケット、6は電動機の回転子と一体に形成された回転軸である。
【0013】
また、
図3に、上記したカバー1の内部に収納する電動機部分とインバータの各部の展開図を示す。
図3において、9は電動機のハウジングであり、その外周表面の一部には冷却フィン22が形成されている。また。ハウジング9の内部には、図では見えないが、電動機の固定子と回転子が挿入されており、24は、上記したエンドブラケット5とは反対側において、ハウジング9の端部に取り付けられたエンドブラケット、25は、エンドブラケット24の外側で上記回転軸6に取り付けられる冷却ファンである。また、ハウジング9の平面23には、カバー1の一部に設けられた開口部21を介して、インバータ7が取り付けられ、その後、その保護のためのカバー3が外側から取り付けられている。
【0014】
また、インバータは、発熱素子であるパワースイッチング素子等を有しているので、それらの発熱状況を監視し保護をかける目的で温度検出器が設けられている。26は制御基板用ケース、27は平滑コンデンサ用ケースである。そして、ハウジング9の他の端部(図の左端)には、上述した冷却カバー2が取り付けられる。また、図中の符号8は、当該冷却カバー2の壁面の略中央部に、メッシュ状に形成した、外部の空気を取り入れるための小孔を示している。
【0015】
すなわち、インバータ7は、電動機のハウジング9の一部の平面23に直接的に取付けられており、インバータ7は、伝熱性に優れた材料で構成されたハウジングと熱的に一体となり、インバータ内部にある温度検出器でインバータとハウジングの温度を一体管理することが出来る。これにより、電動機に別途温度検出器を設ける必要がなくなる。
【0016】
次に、本実施例のポンプ装置の全体構成について説明する。
図4において、10はポンプを示し、20で示す電動機で駆動されている。ポンプの吸込み側は、11で示す吸込み管を介して水源側と接続される。水源側は、直結方式では図示していない水道本管からの水の供給を受け、受水槽方式では図示していない受水槽から水の供給を受ける。12は給水管を示し、52は、給水管12に備わり、ここの圧力に応じて電気信号を発する圧力検出手段である。この圧力検出手段の検出値を基にポンプの吐き出し圧力を制御(例えば吐き出し圧一定制御、推定末端圧一定制御)する。更に、需要側として、給水管12の端末の先が直送式の場合には、需要側給水管と接続して、例えば集合住宅等の水栓に給水する。高置水槽式の場合には、この需要側給水管と接続して高置水槽へ給水する。
【0017】
30で示すインバータは、電源側より電源の供給を受け、32で示す電力変換装置により出力電流の周波数を変化させることで、電動機20の回転速度を変化させ駆動する。31は演算処理部であり、33で示す記憶部に記憶された制御パラメータに従い、34で示す信号処理部から入力された信号に応じて、電動機20の運転/停止および回転速度変化を行う。信号処理部34と圧力検出手段52は圧力信号線51で接続され、圧力検出手段52で検出した吐き出し圧力値が信号処理部34に入力される。
【0018】
図5には本発明における電力変換装置32の回路構成図を示す。入力される交流電力は順変換器61で直流電力に変換される。変換された直流電力は、平滑コンデンサ62により平滑された後に、パワースイッチング素子により構成される逆変換器63にて任意の周波数の交流電力に変換されて回転電機20に供給される。逆変換器は駆動回路67により駆動される。温度検出器66で検出された温度情報は制御回路64に入力され、駆動回路67は制御回路64からの指令により制御され、速度の増減を行う。制御回路64に接続された操作表示部65により各種設定を行うことができる。
【0019】
なお、インバータ30は平滑コンデンサ62と制御回路64を除き、
図3におけるインバータ7として、電力変換用ケース3に収納される。平滑コンデンサ62は、コンデンサ用ケース27に格納され、制御回路64は、制御基板用ケース26に収納され、構造上は電力変換用ケース3とは離れた位置に配置される。
【0020】
このようにインバータ30における回路を電動機の周囲に分割して配置することにより、発熱部品を分散させるともに、冷却ファン25からの空気流により冷却することができ効率的な放熱が可能となる。
【0021】
また、本発明においては、永久磁石式モータを採用することにより、モータの寸法としては、誘導電動機の寸法よりも小さくすることが可能となる。そして、電力変換装置及び制御基板等の部品を上述のようにハウジングの周囲に配置することで、その外形寸法を同等の出力性能を持つ、制御盤を別途有する誘導電動機を搭載したポンプ装置の外形寸法と同等以下とするポンプ装置を提供することが可能となる。つまり、既設の誘導電動機を搭載したポンプ装置と置き換えが可能な上、制御盤が不要となり大幅な省スペース化が実現できる。
【0022】
図6にはインバータにおける制御基板内の記憶部に記憶する、揮発性メモリの内容と不揮発性メモリの内容を示す。尚、制御基板内に記憶部を持たず、外部に記憶装置を取り付けて代用しても差し支えない。
【0023】
図6(a)には記憶部のうち揮発性メモリに記憶する内容である。揮発性メモリの1001番地には現在のポンプ吐き出し側圧力DpNを記憶する。1002番地にはインバータが電動機に対し現在指令している速度(出力している運転周波数)HzNを記憶し、1003番地には現在のインバータの出力電流値(電動機の負荷電流値)AmNを記憶する。HzNとAmNからインバータの負荷状態、ひいてはポンプの出力する水量を推定することが可能であり、DpNと、HzNとAmNから推定される水量よりポンプの運転点(吐き出し側圧力、使用水量)を把握することができる。1004番地には温度検出手段より検出された値を、現在の温度検出値TeNとして記憶する。
【0024】
1006番地には温度測定周期管理タイマの残り時間TN1を記憶する。1007番地には運転状態測定周期管理タイマの残り時間TN2を記憶する。1009番地には温度測定を開始してからの経過時間TeSを記憶する。
【0025】
電動機およびインバータの温度は、温度を検出した瞬間の負荷ではなく、それまでの負荷状態の積算によって変化する。そのため、1101番地には運転状態測定周期で測定される指令速度の積算値HzSを記憶し、1102番地には積算値HzSを後述する平均化回数AvCで除した値(平均値)HzAを記憶する。電流値についても同様に、1201番地には運転状態測定周期で測定される出力電流値の積算値AmSを記憶し、1202番地には積算値AmSを平均化回数AvCで除した値(平均値)AmAを記憶する。
【0026】
1301番地には温度測定周期に達した場合に、後述する温度判定処理を実行する為の判断フラグTeFを記憶する。TeFが0の場合は温度判定処理を実行せず、TeFが1の場合は温度判定処理を行う。1302番地には磁石温度を算出した後に、後述する制御定数設定処理を実行する為の判断フラグCPFを記憶する。CPFが0の場合は制御定数設定処理を実行せず、CPFが1の場合は制御定数設定処理を行う。
【0027】
1411番地には温度判定処理で算出された現在の磁石温度MNTを記憶する。電動機をベクトル制御する場合には、電動機を等価回路で表現し、等価回路の各パラメータを予め設定しておく必要がある。等価回路には幾つかの表現方法があり、
図7に誘導電動機の等価回路表現の1つを、
図8に同期電動機の等価回路表現の1つを示す。各パラメータとして例えば抵抗、インダクタンス、電流、慣性モーメント(イナーシャ)があり、これらより誘起電圧定数を求める。1413番地には現在温度での誘起電圧係数Ke2を記憶する。
【0028】
図6(b)には記憶部のうち不揮発性メモリに記憶する内容を示す。不揮発性メモリの2005番地にはインバータのキャリア周波数CHLを記憶する。
【0029】
2011番地には基準温度STeを記憶し、2012番値から2015番地には基準温度において電動機の等価回路を表現する各パラメータの値を記憶する。2012番地には等価回路抵抗SRを、2013番地には等価回路インダクタンスSLを、2014番地には等価回路電流SIを、2015番地には等価回路慣性モーメントSJを、2016番地には誘起電圧係数Ke1を記憶する。2017番地には永久磁石の温度特性MgFを記憶する。
【0030】
2021番地には電動機の冷却能力(冷却ファンの冷却能力)CoKを記憶する。電動機の回転数(インバータの指令速度)に応じて冷却ファンの回転数も変化し、ある回転数範囲では定数k1を用いて、冷却量を
HzA × CoK × k1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式1
として近似表現することができる。または使用回転数範囲全体において、高次式で近似しても差し支えない。
【0031】
2022番地には電動機の温度上昇係数1(負荷電流による温度上昇量)WaKを記憶する。電動機およびインバータの温度上昇は、出力電流値(負荷電流値)により変化し、定数k2を用いて、温度上昇量を
AmA × WaK × k2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式2
として近似表現することができる。より正確に、高次式で近似しても差し支えない。
【0032】
2023番地には電動機の温度上昇係数2(キャリア周波数による温度上昇量)CHKを記憶する。キャリア周波数によりインバータにおける温度上昇量は変化し、定数k3を用いて、温度上昇量を
CHL × CHK × k3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式3
として近似表現することができる。同様に、高次式で近似しても差し支えない。電動機としての冷却量は式1で表現され、温度上昇量は式2と式3の合計値として表現できる。
【0033】
2031番地には温度測定周期管理タイマの設定時間(温度を測定する周期)TM1を記憶する。2032番地には運転状態測定周期管理タイマの設定時間(運転状態を測定する周期)TM2を記憶する。
【0034】
2101番地には指令速度、出力電流値を平均化する回数AvCを記憶する。温度の測定間隔TM1が十分に長い場合には平均化回数AvCは温度を1回測定する間に、指令速度および出力電流値を測定する回数と同等に設定するのが良い。温度の測定間隔TM1が短い場合には平均化回数AvCは温度を1回測定する間に、指令速度および出力電流値を測定する回数以上に設定するのが良い。制御を容易にする観点からは、平均化回数AvCは温度を1回測定する間に、指令速度および出力電流値を測定する回数と同等に設定し、測定回数が平均化回数AvCに達した際に温度検出値TeN、指令速度および出力電流の平均値HzA、AmAを記憶し、指令速度および出力電流値の積算値HzS、AmSをリセットするのが望ましい。
【0035】
図9は本実施例のメイン制御処理フロー図である。まず100ステップで各種機能の初期化処理を行い、以下300ステップから800ステップの各制御を繰り返し実行する。300ステップでは温度測定処理を行い、温度測定を行う周期に達した場合、温度検出値を記憶し、温度判定処理を実行するよう処理を行う。400ステップでは運転状態測定処理を行い、運転状態を測定する周期に達した場合、指令速度と出力電流値を記憶する処理を行う。500ステップでは温度判定処理を行い、温度検出値と指令速度と出力電流値とキャリア周波数より磁石温度を算出し、記憶する。
【0036】
600ステップでは制御定数設定処理を行い、算出した磁石温度より等価回路インダクタンスと等価回路電流を補正し、設定する。
【0037】
800ステップではポンプ制御処理を行う。住宅給水などでは主に推定末端圧一定制御と吐出圧一定制御が行われており、いずれの制御方式でもインバータによる回転速度の変化でポンプ吐き出し側圧力を顧客所望の圧力となるように制御を行う。
【0038】
図10は温度測定処理の処理フロー図である。310ステップで温度測定周期管理タイマの残り時間TN1が0になっているか判定を行い、TN1が0であれば311ステップへ進む。311ステップで温度検出器が検出した温度を現在の温度検出値TeNに記憶し、312ステップで温度判定処理の実行フラグTeFを1(実行)に設定する。313ステップで温度測定周期管理タイマの残り時間TN1に、温度測定周期管理タイマ設定値TM1を設定し、メイン制御フローに戻る。313ステップでTN1にTM1を設定するのは再び周期TM1の時間後に温度測定を行うためである。
【0039】
310ステップで温度測定周期管理タイマの残り時間TN1が0になっていなかった場合には、314ステップで温度測定周期管理タイマの残り時間TN1をカウントダウンし、記憶する。その後、メイン制御フローに戻る。
【0040】
図11は運転状態測定処理の処理フロー図である。410ステップで運転状態測定周期管理タイマの残り時間TN2が0になっているか判定を行い、TN2が0であれば411ステップへ進む。411ステップでインバータが電動機に対し現在指示している速度(指令速度、出力周波数)HzNを記憶し、412ステップでHzNを指令速度の積算値HzSに加算し、HzSを更新する。413ステップでインバータが電動機に対し現在出力している電流値(負荷電流値)AmNを記憶し、414ステップでAmNを出力電流値の積算値AmSに加算し、AmSを更新する。415ステップで運転状態測定周期管理タイマの残り時間TN2に、運転状態測定周期タイマ設定値TM2を設定し、メイン制御フローに戻る。415ステップでTN2にTM2を設定するのは再び周期TM2の時間後に運転状態測定処理を行うためである。
【0041】
410ステップで運転状態周期管理タイマの残り時間TN2が0になっていなかった場合には、416ステップで運転状態測定周期管理タイマの残り時間TN2をカウントダウンし、記憶する。その後、メイン制御フローに戻る。
【0042】
図12は温度判定処理の処理フロー図である。510ステップで温度判定処理の実行フラグTeFが1(実行)であるか判定を行い、TeFが1(実行)であれば511ステップに進み、TeFが0(なし)の場合にはメイン制御フローに戻る。511ステップで指令速度の積算値HzSと平均化回数AvCより、指令速度の平均値HzAを算出する。
HzA = HzS ÷ AvC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式4
512ステップで指令速度の平均値HzAと冷却係数CoKより冷却量を算出する(式1)。513ステップで出力電流値の積算値AmSと平均化回数AvCより、出力電流値の平均値AmAを算出する。
AmA = AmS ÷ AvC ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式5
514ステップで出力電流の平均値AmAと温度上昇係数WaKより負荷電流による温度上昇量を算出する(式2)。515ステップでキャリア周波数CHLと温度上昇係数CHKよりキャリア周波数による温度上昇量を算出する(式3)。516ステップで指令速度の積算値HzSを0に戻し、517ステップで出力電流値の積算値AmSを0に戻す。518ステップで現在の温度検出値TeNと式1、式2、式3より得られた冷却量、温度上昇量より永久磁石温度を算出し、磁石温度MNTに記憶する。
(磁石温度)= TeN −(温度上昇量)+(冷却量) ・・・・・・・・・ 式6
519ステップで制御定数設定処理の実行フラグCPFを1(実行)に設定する。520ステップで温度判定処理の実行フラグTeFを0(なし)に設定し、メイン制御フローに戻る。
【0043】
図13は制御定数設定処理の処理フロー図である。610ステップで制御定数設定処理の実行フラグCPFが1(実行)であるか判定を行い、CPFが1(実行)であれば611ステップに進み、CPFが0(なし)の場合にはメイン制御フローに戻る。
611ステップで磁石温度を基に誘起電圧係数を補正し、メイン制御フローに戻る。例えば、現在の磁石温度が基準温度より高い場合に、磁石温度特性MgFがマイナス値であれば、温度の差分だけ磁束(誘起電圧)が低下する。
(磁束変化量)=( MNT − STe )× MgF ・・・・・・・・・ 式7
誘起電圧の低下によりインバータが想定する軸位置と、実際の軸位置にずれ(軸誤差)が生じる。インバータが出力する誘起電圧(q軸電圧)を下げることで軸誤差が解消される。
【0044】
図14は制御定数の関係を示す電圧ベクトル図である。等価回路の制御定数抵抗SR、等価回路の制御定数インダクタンスSLのうちd軸成分をLd、q軸成分をLqとして、q軸の電圧であるVqは角速度ωと基準温度における誘起電圧係数Ke1より求まり
Vq = SR・Iq + ω・Ld・Id + ω・Ke1 ・・・・・・・ 式8
ここで理想的にはd軸に流れる電流Idは0である。また、定格回転数で運転時には通常SR・Iq << ω・Ke1であるため、
Vq = ω・Ke1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式8’
とすることができる。なおd軸の電圧Vdは
Vd = − ω・Lq・Iq ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式9
となる。
【0045】
図15は温度変化による誘起電圧の変化を示すベクトル図である。q軸に注目した場合、式8’の通り基準温度におけるq軸電圧Vqはω・Ke1である。磁石温度特性MgFがマイナス値であれば、誘起電圧は低下し、その時の誘起電圧係数はKe2となるため
Vq = ω・Ke2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 式10
(Ke2 = Ke1 +(磁束変化量) )
となる。
【0046】
本発明の別の実施例を説明する。
実施例2は、永久磁石と温度検出器の間を簡易的なモデルに置換え、簡易モデルの温度勾配係数と簡易モデルにおける永久磁石と温度検出器の距離より温度低下量を算出し、温度検出器が検出した温度に対し、その時の永久磁石温度を推定する方法である。あるいは、実験結果などから導かれる、永久磁石の温度と、温度検出器の温度との相関を不揮発性メモリに記憶しておいても良い。簡易モデルおよび実験結果における温度勾配は、ある運転状態における温度勾配であるので、現在の運転状態における冷却量や温度上昇量を差分として考慮することで、より正確に磁石温度を推定することができる。
【0047】
図16にはインバータの記憶部のうち不揮発性メモリに記憶する内容を示す。不揮発性メモリの2001番地には温度勾配計算を行なうか否かを判断するフラグSLTを記憶する。SLTが0である場合には温度勾配計算を行なわず、SLTが1である場合には温度検出器が検出した値に温度勾配計算の結果を加えたものを現在の温度検出値とする。2002番地には部品材質により変化する温度勾配係数TGを、2003番地には永久磁石の中心と、温度検出器による測定地点(温度検出部)との距離DSを記憶する。本実施例においては永久磁石と温度検出器の間には複数種類の材質が存在し、計算が複雑になるため、
図17に示すような簡易的なモデルに置き換える。簡易モデルの温度勾配係数と、簡易モデルにおける発熱部中心と温度検出部の距離をそれぞれTG、DSとして記憶する。2004番地には温度勾配係数TGと距離DSより計算にて求められる温度低下量TXを記憶する。距離と温度低下量の関連を
図18に示す。あるいは、実験結果などから導かれる、永久磁石の温度と、温度検出器の温度との相関を温度低下量TXとして記憶しても良い。
【0048】
2201番地には簡易モデルを想定した際、あるいは実験時の指令速度(運転周波数)を基準指令速度SHzとして記憶する。2202番地には簡易モデルを想定した際、あるいは実験時の出力電流値(負荷電流値)を基準出力電流値SAmとして記憶する。
【0049】
その他の不揮発性メモリの内容、および揮発性メモリの内容は
図6(a)、(b)と同様であるため説明を割愛する。
【0050】
本実施例においては基準指令速度と基準出力電流値による冷却量および温度上昇量が考慮されている為、現在の運転状態による冷却量の差分は、指令速度の平均値HzAと、基準指令速度SHzの差と、電動機の冷却能力CoKより定数k1を用いて
( HzA − SHz ) × CoK × k1 ・・・・・・・・・・・ 式11
として近似表現することができる。さらに、温度上昇量の差分は、出力電流の平均値AmAと、基準出力電流値SAmの差と、電動機の温度上昇係数WaKより定数k2を用いて、
( AmA − SAm ) × WaK × k2 ・・・・・・・・・・・ 式12
として近似表現することができる。
【0051】
温度検出器により検出された温度に基づき温度勾配により求めた温度を、現在の運転状態より算出される冷却量の差分および温度上昇量の差分に基づき補正することで、精度の良く現在の磁石温度を算出し、磁石温度の応じた制御定数の補正を行なうことで、より安定した制御を行うことが可能となる。
【0052】
尚、実施例においては、ポンプ装置を想定した制御を説明したが、ファンや他の装置においても同様の制御が可能である。