特許第6329894号(P6329894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6329894生体吸収性創傷治療装置、その製造プロセスおよび使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6329894
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】生体吸収性創傷治療装置、その製造プロセスおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/64 20060101AFI20180514BHJP
   A61L 15/28 20060101ALI20180514BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20180514BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   A61L15/64 100
   A61L15/28 100
   A61L15/32 100
   A61L15/60 100
【請求項の数】16
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-504411(P2014-504411)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2014-510602(P2014-510602A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】IB2012051573
(87)【国際公開番号】WO2012140535
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年3月16日
【審判番号】不服2016-15804(P2016-15804/J1)
【審判請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】61/474,900
(32)【優先日】2011年4月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/428,370
(32)【優先日】2012年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルチャンドラ・エム・カランディカル
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー・トラック・ラム
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 長谷川 茜
【審判官】 小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0041188(US,A1)
【文献】 米国特許第5792090(US,A)
【文献】 特表2006−527044(JP,A)
【文献】 特表平8−508933(JP,A)
【文献】 Suhaila B. Mohamed & George Stainsby,Ability of Various Proteins to Form Thermostable Gels with Propylene Glycol Alginate,Food Chemistry,1984年,Vol.13,241−255
【文献】 J.N.Petersen et al.,Size Changes Associated with Metal Adsorption onto Modified Bone Gelatin Beads,Biotechnology and Bioengineering,1991年,Vol.38,923−928
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/00-33/18
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を送達するための生体吸収性基質を含む、生体吸収性の酸素送達創傷治療装置であって、前記基質が、
水膨潤性架橋生体吸収性ポリマー網目構造と、
前記架橋生体吸収性ポリマー網目構造によって画定された複数のガス透過性と弾性のある独立気泡であって、触媒と第二の反応物の間の反応から生じる前記独立気泡と、
前記独立気泡内の送達可能な酸素を含み、
前記装置を使用して創傷を治療する時に、酸素が前記独立気泡から送達され、
前記架橋生体吸収性ポリマー網目構造が、アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンとから形成され、
前記ゼラチンと前記アルギン酸プロピレングリコールとの重量比が1.5:14:1である装置。
【請求項2】
前記架橋生体吸収性ポリマー網目構造が、ヒアルロン酸、アルギン酸、コラーゲン、キトサン、キチン、デンプン、ガム、クエン酸ベースポリマー、乳酸およびグリコール酸ベースポリマー、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(無水物)、ポリ(リン酸エステル)、ポリアルキレングリコールベースポリマー、およびその組み合わせから選択された生体吸収性ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記架橋生体吸収性ポリマー網目構造が、非ゲル化多糖をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第二の反応物が過酸化物である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記触媒が炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記生体吸収性基質が活性物質をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記生体吸収性基質が鎖形状を構成する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
酸素を送達するための生体吸収性基質を含む生体吸収性の酸素送達創傷治療装置の作成プロセスであって、前記プロセスが、
少なくとも一つの架橋可能生体吸収性ポリマーと触媒のゲル化混合物を提供するステップと、
前記ゲル化混合物の前記生体吸収性ポリマーを架橋して水膨潤性架橋生体吸収性ポリマー網目構造を形成するステップと、
前記ゲル化混合物をゲルシートに乾燥するステップと、
前記ゲルシートに第二の反応物を加えるステップと、
前記触媒と前記第二の反応物を反応させて、酸素を含む複数の独立気泡を前記ゲルシート内に生成するステップを含み、
前記ゲル化混合物の前記少なくとも一つの架橋可能生体吸収性ポリマーが、アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンとを含み、
前記ゼラチンと前記アルギン酸プロピレングリコールとの重量比が1.5:14:1である、プロセス。
【請求項9】
架橋および乾燥が同じステップで達成される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
架橋が、前記ゲル化混合物にアルカリ性条件を作ることによって達成される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第二の反応物が過酸化物である、請求項8に記載のプロセス。
【請求項12】
前記触媒が炭酸ナトリウムである、請求項8に記載のプロセス。
【請求項13】
架橋が、炭酸ナトリウムを使用して前記ゲル化混合物にアルカリ性条件を作ることによって達成され、さらに前記触媒が炭酸ナトリウムである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
活性物質を組み込むステップをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1の酸素送達創傷治療装置を使用する方法であって、
前記生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を、人以外の哺乳類の創傷または外科切開部位に配置することであって、
前記独立気泡から前記創傷または外科切開部位に酸素を送達することと、
前記生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を前記創傷または外科切開部位に放置し、前記哺乳類に再吸収させることを含む方法。
【請求項16】
前記生体吸収性基質が、活性物質をさらに含み、前記活性物質が前記創傷または外科切開部位に送達される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第61/474,900号(2011年4月13日出願)の優先権の利益を主張し、その内容を参照により本書に組み込む。
【0002】
本発明は一般的に、気体およびその他の物質を障害された組織に送達するための創傷治療装置に関連する。
【背景技術】
【0003】
生きている組織の領域への血液供給の損傷または破壊は、すぐに組織障害につながる。適切な血液供給の重要な機能の一つは、酸素などの溶解ガスの部位への提供である。例えば、身体組織への創傷は、治癒過程を支援するために必要な酸素および栄養素を輸送する自然な血液供給の損傷または破壊を伴う。測定では、創傷および周辺の損傷組織内の組織酸素圧は、正常な血管酸素圧よりも大幅に低いことが示されている。80〜100mmHgの血管酸素レベルが正常と見なされるが、創傷環境では酸素レベルが3〜30mmHgまで低くなり得る。30mmHg以下のレベルは創傷修復の過程を支援するのに不十分であることが研究で示されている。
【0004】
酸素は、創傷の治癒および嫌気性細菌の増殖阻止において、治療効果を持つことが示されている。酸素は空気の創傷液への直接溶解から利用可能でありうるが、局所的に溶解した酸素は望ましいレベルに酸素圧をより速く上昇させ、そのため創傷治癒の利益を加速するため、より望ましい。
【0005】
障害された組織に送達される酸素の量を増加させる努力において、多くのアプローチが使用されている。例えば、米国特許第5,407,685号は、装置が創傷に適用された時に酸素を生成するための装置を記述している。開示された装置は2層装置であり、浸出液または他の身体由来物質が反応を活性化させると、混合して酸素を生成する反応物を各層は含む。米国特許第5,736,582号は、皮膚表面またはその近くでの放出のために、過酸化水素から酸素を生成することを記述している。米国特許第5,855,570号は同様に、創傷環境に送達するために、空気中の酸素を過酸化物または酸素のその他の反応型に変換する電気化学反応を使用する。米国特許第5,792,090号は、ヒドロゲルまたは高分子発泡体など、創傷と接触した装置内の過酸化水素を含む貯留層および触媒を使用する。別のアプローチが米国特許第5,086,620号に開示されており、ここでは純水な気体酸素を超音波エネルギーで液体基質に分散させ、これが次に冷却によって固化されて、酸素を微小気泡に封入する。
【0006】
これらの装置は、従来的な高圧室に比べて、創傷環境への局所酸素の送達における改善を示す。しかし、それぞれには、障害された組織のケアのための局所的酸素化技術の広範囲な適応を限定するかなりの制限がある。前述の装置は、酸素の既知濃度を持たず、効果的な酸素分布を達成するために、大気圧または温度と独立して機能できない。さらに、身体由来物質による活性化への依存は予測不可能であり、このような装置は実用的でない。その他の装置は製造費用が高く、特別な機器を必要とする。このような装置は、障害された組織ケアのために使用される医療装置の製作によく使用される低温硬化ポリマーの製造には使用できない。
【0007】
酸素を創傷に送達するための特に有用な一つのアプローチが、米国特許第7,160,553号「障害された組織への酸素送達用基質」(Gibbinsら、2009年1月9日出願)に記述されている。この特許は、ポリアクリルアミドに基づいた独立気泡酸素含有発泡包帯を記述している。独立気泡酸素発泡包帯は生体適合性で、検査室試験では、本包帯は食塩溶液中の酸素圧を最高200mmHgまで増加できることが示されている。本発泡包帯は、高い流体吸収能力(1グラムの発泡体あたり最大10グラム)を持ち、有害な細胞毒性を持たない、本発泡包帯は、局所的に溶解した酸素を72時間にわたって持続して送達するための表面創傷への適用に適している。独立気泡酸素発泡包帯は生体適合性であるが、生体吸収性ではない(すなわち、人体の内部での使用には適していない)。
【0008】
さまざまな外科的状況、特に内部手術を伴う状況では、スペーサーとしての役割を果たすことができ、局所的に溶解した酸素を供給して本質的な生体吸収特性のために手術部位から包帯を取り除く必要を排除することによって術創の治癒を助ける、シート包帯に対するニーズがある。公開文献で知られた、生体吸収性コラーゲンスポンジおよびいくつかのポリウレタンベースの生体吸収性包帯がある。しかし、生体適合性かつ生体吸収性であることに加えて、局所的に溶解した酸素を供給できるものはない。
【0009】
Gibbinsらの特許は、炭酸ナトリウム・過酸化水素システムを使用して、非ポリアクリル酸ベースの酸素発泡包帯を作るために、生分解性物質であるゼラチンを使用することを記述しているが、これによって酸素ガスが包帯内の気泡に封入された柔軟な発泡材料が得られた。しかし、このような包帯は(そのポリアクリル酸対応物とは異なり)架橋されていないので、湿潤強度に欠ける。このような欠陥は、製造中および使用中の包帯の取り扱いを困難かつ実現困難にする。
【0010】
ゼラチンゲルシートの湿潤強度は、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドの助けによってそれらを架橋することによって改善できる。これらの2つの試薬は、ゼラチン架橋に最も一般的に使用されるが、それらは有毒なため架橋ゼラチン生体吸収性酸素の発泡包帯を作るのに適してはいない。包帯中のこれらの化学物質の残渣は、非常に望ましくない。
【0011】
従って、湿潤強度を持ち、製造および取り扱いに実用的な、生体吸収性独立気泡酸素発泡体に対するニーズがある。また、湿潤強度特性を持つ生体吸収性独立気泡酸素発泡体などを製造する実用的・経済的方法に対するニーズもある。スペーサーとしての役割を果たすことができ、局所的に溶解した酸素を供給し、本質的な生体吸収特性のために手術部位から包帯を取り除く必要を排除することによってより早い術創の治癒を助ける、シート包帯に対するニーズもある。さらに、スペーサーとして、局所的に溶解した酸素を供給し、本質的な生体吸収特性のために手術部位から包帯を取り除く必要を排除することによって術創のより早い治癒を助けるシート包帯の使用方法に対するニーズがある。手術部位から包帯を取り除く必要があるため、酸素を手術部位に供給でき活性物質を送達できる方法と組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本明細書で検討した困難さや問題に応えて、本発明は、酸素を送達するための生体吸収性基質を含む生体吸収性のある酸素送達創傷治療装置を提供する。生体吸収性基質は水膨潤性で、架橋された生体吸収性ポリマー網目構造を含む。複数のガス透過性弾性独立気泡は、架橋された生体吸収性ポリマー網目構造によって画定される。本発明によると、これらの独立気泡は、触媒と第二の反応物の間の反応から製造されうる。装置を使用して創傷を治療する時に酸素が独立気泡から送達されるように、送達可能な酸素は弾性独立気泡内に含まれている。
【0013】
生体吸収性ポリマー網目構造は、水膨潤性のポリマー網目構造に架橋できる生体吸収性ポリマーから形成される。架橋されたポリマー網目構造は、これもまたガス透過性の弾性独立気泡を画定できるように、柔軟性を持つべきである。模範的な架橋可能生体吸収性ポリマーには、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸誘導体、アルギン酸およびアルギン酸誘導体、コラーゲン、キトサン、キチン、デンプン誘導体、天然ガム、クエン酸ベースポリマー、乳酸およびグリコール酸ベースポリマー、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(無水物)、ポリ(リン酸エステル)、ポリアルキレングリコールベースポリマー、およびその組み合わせを含む。
【0014】
本発明の一態様によると、生体吸収性ポリマー網目構造は、アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンから形成できる。これらの原料の比率は、結果として生じるポリマー網目構造の特性を変更するために変化させうる。
【0015】
第二の反応物は過酸化水素であることが望ましい。ただし、生体吸収と矛盾する残渣を残さないという条件で、過酸化尿素、過酸化ナトリウムおよびその他の過酸化化合物を含むがこれに限定されない、その他の過酸化物を使用することもできる。本発明は、基質内にガス状元素を生成でき、使用上安全で効果的な成分の使用を意図している。例えば、酸触媒を基質に組み込んで、その後基質を炭酸塩でかん流して基質内に二酸化炭素ガスを生成することができる。次にこのような材料は、溶液または環境を緩衝するために使用される。
【0016】
触媒は炭酸ナトリウムでありうる。ただし、生成物が生体吸収性であるという点で一致していることを条件に、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩など、その他の触媒を使用しうる。さらに、複数の触媒を使用しうる。例えば、一つの触媒は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から成るグループから由来し、第二の触媒は、塩化第二銅、塩化鉄、酸化マンガン、ヨウ化ナトリウムおよびそれらの相当物などの、有機および無機化学物質を含みうるがこれに限定されない。その他の触媒には、ラクトペルオキシダーゼおよびカタラーゼなどの酵素を含むがこれに限定されない。
【0017】
生体吸収性基質は、非ゲル化多糖を含みうる。生体吸収性基質は、可塑剤をさらに含みうる。生体吸収性基質は、水和制御剤をさらに含みうる。生体吸収性基質は、水分損失制御剤をさらに含みうることが意図されている。基質の透過性を減少させるために、水分損失制御剤を装置の表面に適用しうる。装置の透過性の減少は流体の損失を制御するため、水分損失制御剤の適用は有用でありうる。好ましい水分損失制御剤はワセリンであるが、糖脂質、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、トリグリセリド、ステリルエステル、硫酸コレステリル、リノレイン酸エチルエステル、およびシリコーン油などの、その他の水分損失制御剤も使用しうる。さらに、組成物および装置は、水分の制御を支援するために一つ以上の表面を覆う不透過性シートを持ちうる。
【0018】
本発明の一つの態様によると、生体吸収性基質は活性物質をさらに含みうる。活性物質は、治癒過程を援助および改善することがあり、ガス、抗菌剤(抗真菌剤、抗菌物質、抗ウイルス剤および駆虫剤を含むがこれに限定されない)、マイコプラズマ治療薬、成長因子、タンパク質、核酸、血管新生因子、麻酔剤、ムコ多糖、金属およびその他の創傷治癒剤を含みうる。
【0019】
本発明の装置は、装置の使用に応じて多くの物理的形態を取りうる。好ましい形状は、任意の二次元形状に切断または成形できるゲルシートである。その他の好適実施形態は、創傷床または空洞への配置に適した基質の細い鎖から主に構成される。
【0020】
本発明は、酸素を送達するための生体吸収性基質を含む、生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を作るためのプロセスを包含する。プロセスは一般的に、少なくとも一つの架橋可能生体吸収性ポリマーと触媒のゲル化混合物を提供するステップと、ゲル化混合物の生体吸収性ポリマーを架橋して水膨潤性架橋生体吸収性ポリマー網目構造を形成するステップと、ゲル混合物をゲルシートに乾燥するステップと、ゲルシートに第二の反応物を加えるステップと、触媒と第二の反応物を反応させて酸素を含む複数の独立気泡をゲルシート内に生成するステップを少なくとも伴う。
【0021】
本発明の一つの態様では、ゲル化混合物の少なくとも一つの架橋可能生体吸収性ポリマーは、アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンでありうる。本発明の別の態様では、架橋はゲル化混合物にアルカリ性条件を生成させることによって実行されうる。例えば、アルカリ性条件は、生成物が生体吸収性であるという点で一致していることを条件に、炭酸ナトリウムまたはその他のアルカリおよびアルカリ土類金属化合物を加えることによって生成することができる。
【0022】
本発明のプロセスでは、第二の反応物は過酸化水素などの過酸化物であり、触媒は炭酸ナトリウムなどの炭酸塩でありうる。方法は、活性物質を組み込むステップをさらに含むことが意図されている。
【0023】
本発明は、酸素送達創傷治療装置を使用する方法も包含する。酸素送達創傷治療装置の使用方法は、哺乳類の創傷または外科切開部位に酸素を送達するために、上述の生体吸収性基質から成る生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を配置するステップ、独立気泡から創傷または外科切開部位に酸素を送達するステップ、および生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を創傷または外科切開部位で哺乳類に再吸収させるステップを一般的に含む。
【0024】
本開示のその他の目的、利点および用途は、以下の詳細な記述によって明確にされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、脱水後でガスを含む独立気泡の形成前の、模範的な水膨潤性架橋生体吸収性ポリマー基質を示す写真である。
図2図2は、ガスを含む独立気泡の形成後の、模範的な水膨潤性架橋生体吸収性ポリマー基質を示す写真である。
図3図3は、模範的な生体吸収性創傷治療装置からの酸素(O2)の送達を示す、フランツ気泡中の食塩溶液による酸素の取り込みのプロットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に一つ以上の実施形態についての参照を詳細に行い、その例が図表に示されている。当然のことながら、一つの実施形態の一部として図示または記述される特徴は、さらなる実施形態を生み出すために別の実施形態で使用されうる。請求項は、これらおよびその他の変更および変形を、本開示の範囲および精神の中に来るものとして含むことが意図される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「生体再吸収性」、「再吸収可能に」、「生体吸収可能」および「生体吸収性」は互換的に使用され、身体によって分解され、機械的取り外しを必要としない材料を指す。例えば、生体再吸収性材料は生物環境で分解され、その分解性生物は正常な細胞の生理的および生化学的プロセスに取り込まれる。このような材料は、免疫原性または変異原性の傾向なく良好な忍容性を示さなければならない。
【0028】
本発明は、酸素を送達するための生体吸収性基質を含む、生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を提供する。生体吸収性基質は水膨潤性で、架橋された生体吸収性ポリマー網目構造を含む。複数のガス透過性弾性独立気泡は、架橋された生体吸収性ポリマー網目構造によって画定される。本発明によると、これらの独立気泡は、触媒と第二の反応物の間の反応から製造されうる。装置を使用して創傷を治療する時に酸素が独立気泡から送達されるように、送達可能な酸素は弾性独立気泡内に含まれている。
【0029】
生体吸収性ポリマー網目構造は、水膨潤性のポリマー網目構造に架橋できる生体吸収性ポリマーから形成される。架橋されたポリマー網目構造は、これもまたガス透過性の弾性独立気泡を画定できるように、柔軟性を持つべきである。天然由来または合成いずれかのさまざまなバイオポリマー(すなわち、デンプン、タンパク質、ペプチドを含むがこれに限定されない自然界に見られるポリマー)を使用して、生体吸収性ポリマー網目構造を作ることができるが、架橋可能および生体内で生体吸収性のあるバイオポリマーが好ましい。模範的バイオポリマーには、ヒアルロン酸およびその誘導体(米国特許第4,582,865号を参照、その内容全体は参照によって本書に組み込まれる)、アルギニン酸およびその誘導体、コラーゲン、キトサン、キチン、デンプン誘導体(米国特許第4,124,705号を参照、その内容全体は参照により本書に組み込まれる)、グアーガム、キサンタンガムなどのガム(米国特許第4,582,865号を参照、その内容全体は参照により本書に組み込まれる)、クエン酸ベースポリマー(Gyawali D et. al., BioMaterials (2010), doi:10.1016/j.biomaterials. 2010.08022)、乳酸およびグリコール酸ベースポリマー(米国特許第5,206,341号を参照、その内容全体およびその中で引用された参考文献は参照により本書に組み込まれる)、ポリ(アスパラギン酸、Journal of Industrial & Engineering Chemistry, Vol. 6 (#4), pp 276-79, 2010を参照)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(無水物)、ポリ(リン酸エステル)およびポリアルキレングリコールベースポリマーを含むがこれに限定されない。
【0030】
本発明の一態様によると、架橋生体吸収性ポリマー網目構造は、アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンから形成できる(すなわち、コラーゲンの加水分解によって得られるタンパク質の混合物)。これらの成分は、アルカリ性条件下(例えば、pH > 8)で、水膨潤性の不溶性物質と架橋できる。炭酸ナトリウムは、アルカリ度を増加させるために使用しうる。これらの原料の比率は、結果として生じるポリマー網目構造の特性を変更するために変化させうる。例えば、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約1.5:1〜約6:1の範囲でありうる。より望ましくは、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約2:1〜約5:1の範囲でありうる。さらにより望ましくは、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約2.5:1〜約3.5:1の範囲でありうる。ゼラチン源は哺乳類または魚でありうる。これは、異なるブルーム強度を持つ酸またはアルカリ処理の生産物でありうる。ただし、ウシゼラチンが好ましい。
【0031】
第二の反応物は過酸化水素であることが望ましい。ただし、生体吸収と矛盾する残渣を残さないという条件で、過酸化尿素、過酸化ナトリウムおよびその他の過酸化化合物を含むがこれに限定されない、その他の過酸化物を使用できる。本発明は、基質内にガス状元素を生成でき、使用上安全で効果的な成分の使用を意図している。例えば、酸触媒を基質に組み込んで、その後基質を炭酸塩でかん流して基質内に二酸化炭素ガスを生成することができる。次にこのような材料は、溶液または環境を緩衝するために使用される。
【0032】
触媒は炭酸ナトリウムでありうる。ただし、生成物が生体吸収性であるという点で一致していることを条件に、アルカリおよびアルカリ土類化合物など、その他の触媒を使用しうる。さらに、複数の触媒を使用しうる。例えば、一つの触媒は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から成るグループから由来し、第二の触媒は、塩化第二銅、塩化鉄、酸化マンガン、ヨウ化ナトリウムおよびそれらの相当物などの、有機および無機化学物質を含みうるがこれに限定されない。その他の触媒には、ラクトペルオキシダーゼおよびカタラーゼなどの酵素を含むがこれに限定されない。
【0033】
生体吸収性基質は、非ゲル化多糖を含みうる。適切な非ゲル化多糖の例には、グアーガム、グアーガム、ルーサン、コロハ、アメリカサイカチビーンガム、シロツメクサビーンガム、またはイナゴマメガムを含む。生体吸収性基質は、可塑剤をさらに含みうる。可塑剤は、グリセロールおよび/または水でありうるが、プロピレングリコールおよび/またはブタノールおよびその組み合わせも使用しうる。グリセロールを使用した場合、約0.25〜25% w/wの間、好ましくは0.5〜12% w/wの間の範囲である。生体吸収性基質は、水和制御剤をさらに含みうる。水和制御剤はイソプロピルアルコールでありうるが、エタノール、グリセロール、ブタノール、および/またはプロピレングリコールおよびその組み合わせも使用しうる。約0.05〜5% w/wの間、好ましくは約0.1〜2.5% w/wの間、最も好ましくは約0.25〜1% w/wの間の範囲のイソプロピルアルコールで一般的に十分である。例えば、架橋生体吸収性ポリマー網目構造が、アルカリ性条件下(例えば、pH > 8)でアルギン酸プロピレングリコールとゼラチンから形成されるとき、グアーガムなどの非ゲル化多糖を加えること、およびグリセロールなどの水和制御剤を加えることによって水膨潤性の程度が増加されうる。架橋生体吸収性ポリマー網目構造を十分に水膨潤性にすることにより、第二の反応物(例えば、過酸化水素)は、架橋生体吸収性ポリマー網目構造中に吸収されうる。水性流体で生体吸収性基質の膨潤性を定量的に確認するためには、蒸留水に3〜4時間、浸漬または浸した後、摂氏25度で「水吸収能力」として表わされる水和能力を測定することが重要である。水吸収能力の有用なレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約2〜約8グラムの範囲でありうる。例えば、水吸収能力のレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約3〜約7グラムの範囲でありうる。別の例として、水吸収能力のレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約4〜約6グラムの範囲でありうる。
【0034】
生体吸収性基質は、水分損失制御剤をさらに含みうることが意図されている。基質の透過性を減少させるために、水分損失制御剤を装置の表面に適用しうる。装置の透過性の減少は流体の損失を制御するため、水分損失制御剤の適用は有用でありうる。好ましい水分損失制御剤はワセリンであるが、糖脂質、セラミド、遊離脂肪酸、コレステロール、トリグリセリド、ステリルエステル、硫酸コレステリル、リノレイン酸エチルエステル、およびシリコーン油などの、その他の水分損失制御剤も使用しうる。さらに、組成物および装置は、水分の制御を支援するために、一つ以上の表面を覆う不透過性シートを持ちうる。
【0035】
本発明の装置は、装置の使用に応じて多くの物理的形態を取りうる。これらの装置は定位置に置いたままにし、取り除く代わりに、その後、体によって再吸収されうる。好ましい形状は、任意の二次元形状に切断または成形できるゲルシートである。その他の好適実施形態は、創傷床または空洞への配置に適した基質の細い鎖から主に構成される。装置は、創傷内にその全体を配置するか、同じデザインの追加的な束と組み合わせて創傷内に配置するか、または鎖間の橋を断ち切って創傷内にある鎖のサイズまたは数を減少させうる。模範的構造には、「創傷包帯装置」の米国特許第5,928,174号(Gibbins、1999年7月27日公開)に記述されたものが含まれるがこれに限定されない。
【0036】
本発明の一つの態様によると、生体吸収性基質は活性物質をさらに含みうる。活性物質は、治癒過程を援助および改善することがあり、ガス、抗菌剤(保存剤、抗真菌剤、抗菌物質、抗ウイルス剤および駆虫剤を含むがこれに限定されない)、マイコプラズマ治療薬、成長因子、タンパク質、核酸、血管新生因子、麻酔剤、ムコ多糖、金属およびその他の創傷治癒剤を含みうる。
【0037】
活性物質には、酸素窒素、二酸化炭素、および不活性ガスなどのガス、医薬品、化学療法剤、除草剤、成長阻害剤、抗真菌剤、抗生物質、抗ウイルス剤および駆虫剤、マイコプラズマ治療薬、成長因子、タンパク質、核酸、血管新生因子、麻酔薬、ムコ多糖、金属、創傷治癒剤、成長促進剤、環境変化のインジケータ、酵素、栄養素、ビタミン、鉱物、炭化水素、脂肪、脂肪酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アミノ酸、血清、抗体およびその断片、レクチン、免疫賦活剤、免疫抑制剤、凝固因子、神経化学物質、細胞受容体、抗原、アジュバント、放射性物質、および細胞および細胞の過程に影響するその他の物質を含むがこれに限定されない。
【0038】
本発明で使用できる抗菌剤の例には、イソニアジド、エタンブトール、ピラジンアミド、ストレプトマイシン、クロファジミン、リファブチン、フルオロキノロン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、リファンピン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ダプソン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、シプロフロキサシン、ドキシサイクリン、アンピシリン、アンフォテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、ピリメタミン、スルファジアジン、クリンダマイシン、リンコマイシン、ペンタミジン、アトバコン、パロモマイシン、ジクラザリル、アシクロビル、トリフルオロウリジン、ホスカルネット、ペニシリン、ゲンタマイシン、ガンシクロビル、イアトロコナゾール、ミコナゾール、ジンクピリチオン、および塩化物、臭化物、ヨウ化物および過酸化物などの銀塩を含むがこれに限定されない。使用されうる追加的銀化合物は、PCT出願番号PCT/US2005/27260およびPCT/US2005/27261に開示されており、これらは参照により本書にその全体を組み込む。
【0039】
本発明の組成物および装置に組み込まれうる成長因子物質には、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、神経成長因子(NGF)、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子1および2(IGF-1およびIGF-2)、血小板由来成長因子(PDGF)、腫瘍血管新生因子(TAF)、血管内皮成長因子(VEGF)、コルチコトロピン放出因子(CRF)、形質転換成長因子αおよびβ(TGF-αおよびTGF-β)、インターロイキン8(IL-8)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン、およびインターフェロンを含むがこれに限定されない。
【0040】
本発明の組成物および装置に組み込まれうるその他の物質は、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパリノイド、デルマチチン硫酸、ペントサンポリ硫酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、セルロース、アガロース、キチン、デキストラン、カラギーナン、リノレイン酸、およびアラントインを含むがこれに限定されない酸性ムコ多糖類である。
【0041】
創傷などの障害された組織の治療に特に有用でありうるタンパク質には、コラーゲン、架橋コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、および架橋エラスチンまたはその組み合わせおよび断片を含むがこれに限定されない。アジュバント、または免疫反応を促進する組成物も、本発明の創傷包帯装置とともに使用されうる。
【0042】
本発明で意図されているその他の創傷治癒剤には、金属を含むがこれに限定されない。亜鉛および銀などの金属は、創傷に対して優れた治療を提供することが昔から知られている。本発明の方法および組成物によるこのような物質の送達は、創傷ケアの新たな局面を提供する。
【0043】
活性物質は、組み込まれた物質がある期間にわたって放出されうるようにこれらの装置に組み込むことができる。放出速度は基質のポリマーの架橋量によって制御でき、それは生体内の基質の侵食に影響し、そのため生体吸収速度に影響する。このようにして、本発明は、局所環境に影響して微生物を殺すか阻害し、免疫反応を促進し、生理的機能のその他の変化をもたらし、長期間にわたって活性物質を提供する能力を保有する。
【0044】
活性物質は、創傷包帯装置の基質の微小空洞中に直接組み込みうる。物質は、基質による物質の吸収によって、また好ましくは基質の重合中の組み込みによって組み込まれうる。活性物質の放出は、濃度パラメーター、基質を通した水の動き、基質の架橋の程度、および生体中の基質の侵食速度の操作を介して制御されうる。
【0045】
本発明は、酸素を送達するための生体吸収性基質を含む、生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を作るためのプロセスを包含する。本発明の基質の特徴は、ガスを封入する泡沫または一連の気泡の形成である。泡沫または気泡は、反応物を含む形成された基質に加えられた第二の反応物の透過によって形成される。2つの反応物が相互作用するとき、反応が起こり、これは基質内に封入されたガスを解放する。例えば、基質は、その中に組み込まれた炭酸触媒(反応物)を持つ。形成された基質は、次に第二の反応物である過酸化水素の存在下に置かれる。過酸化水素の触媒分解が起こり、その場で形成される気泡として封入される酸素ガスの解放が生じる。過酸化水素反応物は、基質の配合の一部ではないが、基質ストックの形成後の処理中にある。
【0046】
プロセスに従い、少なくとも一つの架橋可能生体吸収性ポリマーのゲル化混合物が作成される。これは、架橋可能生体吸収性ポリマーの溶液または架橋可能生体吸収性ポリマーの混合物から成る溶液を生成することによって達成されうる。溶液は、水溶液または水成分が主な成分である溶液であることが望ましい。例として、ゲル化混合物は、ゼラチンの水溶液とアルギン酸プロピレングリコールを望みの比率で混合することによって作成されうる。例えば、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約1.5:1〜約6:1の範囲でありうる。より望ましくは、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約2:1〜約5:1の範囲でありうる。さらにより望ましくは、ゼラチンとアルギン酸プロピレングリコールの重量比率は、約2.5:1〜約3.5:1の範囲でありうる。
【0047】
触媒をゲル混合物に導入しうる。例えば、触媒は炭酸ナトリウムでありうる。触媒は炭酸ナトリウムでありうる。ただし、生成物が生体吸収性であるという点で一致していることを条件に、アルカリおよびアルカリ土類化合物など、その他の触媒を使用しうる。さらに、複数の触媒を使用しうる。例えば、一つの触媒は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩から成るグループから由来し、第二の触媒は、塩化第二銅、塩化鉄、酸化マンガン、ヨウ化ナトリウムおよびそれらの相当物などの、有機および無機化学物質を含みうるがこれに限定されない。その他の触媒には、ラクトペルオキシダーゼおよびカタラーゼなどの酵素を含むがこれに限定されない。望ましくは、触媒は第二の反応物と相互反応する材料である。
【0048】
非ゲル化多糖、可塑剤および/または水和制御剤をゲル化混合物に加えうる。望ましくは、非ゲル化多糖はグアーガムなどの非ゲル化ガラクトマンナン高分子である。約0.005〜53% w/wの間、好ましくは約0.05〜5% w/wの間、最も好ましくは約0.25〜1% w/wの間の濃度範囲のグアーガムで一般的に十分である。その他の適切な非ゲル化多糖の例には、ルーサン、コロハ、アメリカサイカチビーンガム、シロツメクサビーンガム、またはイナゴマメガムを含む。
【0049】
可塑剤は、グリセロールおよび/または水でありうるが、プロピレングリコールおよび/またはブタノールおよびその組み合わせも使用しうる。グリセロールが使用される場合、約0.25〜25% w/wの間、好ましくは約0.5〜12% w/wの間、最も好ましくは約2.5〜8% w/wの間の範囲で、一般的に十分である。生体吸収性基質は、水和制御剤をさらに含みうる。
【0050】
水和制御剤は、イソプロピルアルコールでありうるが、エタノール、グリセロール、ブタノール、および/またはプロピレングリコールおよびその組み合わせも使用しうる。約0.05〜5% w/wの間、好ましくは約0.1〜2.5% w/wの間、最も好ましくは約0.25〜1% w/wの間の範囲のイソプロピルアルコールで、一般的に十分である。
【0051】
ゲル化混合物の架橋可能生体吸収性ポリマーは、次に、架橋されて水膨潤性の架橋生体吸収性ポリマー網目構造を形成する。これは、ゲル化混合物内に既に存在する架橋剤を活性化する、架橋剤をゲル化混合物に添加または適用する、ゲル化混合物から溶媒を脱水または除去する、および/またはそうでなければ架橋を起こす条件をゲル化混合物中に作り出す(例えば、pH、熱、電磁放射およびX線を含む放射のさまざまな形態、超音波エネルギー、マイクロ波エネルギーおよび同類のもの)ことによって達成されうる。
【0052】
例えば、ゲル化混合物がアルギン酸プロピレングリコールとゼラチンの時、ゲル化混合物は、アルカリ性条件(例えば、pH > 8)を作り出し、ゲル化混合物を脱水することによって架橋されうる。これは、ゲル化混合物の初期準備中にゲル化混合物に、例えば、炭酸ナトリウムなどの塩基を加えてアルカリ性条件を作り出し、次にゲル化混合物を脱水して、簡単に取り扱える柔軟な基質(すなわち、ゲルシート)を得ることによって達成されうる。ゲルシートの厚さは、数ミリメートルから20ミリメートル以上の範囲でありうる。例として、アルカリ性ゲル化混合物は、表面積を最大化するために平らな開放容器に注ぎ込んで、開放容器を高温(例えば、45〜65℃)の従来式のオーブンに入れ、シートが「フルーツレザー」または「フルーツロールアップ」に似た稠度に達するまで2〜6時間脱水することによって架橋されうる。フルーツレザーまたはフルーツロールアップは、約10〜約20パーセントの重量または重量ベースの水分量を持つ。望ましくは、基質は柔軟で弾力性があり、水性流体、無機塩、および酸素を含む溶解ガス剤などの物質に対して透過性の半固体足場である。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、物質は、架橋ポリマー内の分子間スペースを介した動きを通して基質に浸透すると考えられる。
【0053】
次に第二の反応物をゲルシートに加える。これは、ゲルシートを第二の反応物に浸すことによって、または第二の反応物をスプレーする、はけ塗りする、コートするかまたは塗布することによって達成しうる。第二の反応物は過酸化水素であることが望ましい。過酸化水素は、5%重量から20%以上でありうる。過酸化尿素、過酸化ナトリウムまたはアルカリ金属またはアルカリ土類金属のその他の過酸化化合物を含むがこれに限定されない、その他の過酸化物で代用されうる。第二の反応物は、水溶液または水が主な成分である溶液中に存在することが好ましい。
【0054】
第二の反応物はゲルシートに吸収され、膨潤性(例えば、水膨潤性)の架橋生体吸収性ポリマー基質に浸透する。膨潤の程度は、グアーガムなどの非ゲル化多糖を加えることにより、またグリセロールなどの水和制御剤を加えることにより、増加させうる。架橋生体吸収性ポリマー網目構造を十分に水膨潤性にすることにより、第二の反応物(例えば、過酸化水素)は架橋生体吸収性ポリマー網目構造中に適切に吸収されうる。水和能力は、蒸留水に3〜4時間、浸漬または漬けた後、25℃での「水吸収能力」として表すことができることが分かっている。水和能力の有用なレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約2〜約8グラムの範囲でありうる。例えば、水吸収能力のレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約3〜約7グラムの範囲でありうる。別の例として、水和能力のレベルは、生体吸収性ポリマー網目構造1グラムあたり水約4〜約6グラムの範囲でありうる。
【0055】
本発明のプロセスによると、第二の反応物が架橋生体吸収性ポリマー網目構造(例えば、架橋アルギン酸プロピレングリコールとゼラチンで、これは非ゲル化多糖を組み込む)に吸収・浸透し、触媒(すなわち、第一の反応物)が第二の反応物と反応する時に、ガスが生成される。結果生じるガスは酸素ガスであることが望ましい。本発明の基質は、ガスを封入する泡沫または一連の気泡を形成する。すなわち、触媒(すなわち、第一の反応物)と第二の反応物との間の反応によって、酸素を含む複数の独立気泡がゲルシート中に生成される。完成形態では、ゲルシートは発泡シートへと変換する。
【0056】
例えば、架橋生体吸収性ポリマー基質は、その中に組み込まれた炭酸塩触媒(すなわち、第一の反応物)を持ちうる。架橋生体吸収性ポリマー基質は、次に第二の反応物である過酸化水素の存在下に置かれる。過酸化水素の触媒分解が起こり、その場で形成される気泡として封入される酸素ガスの解放が生じる。過酸化水素反応物は、基質の配合の一部ではないが、基質ストックの形成後に加えられる。
【0057】
本発明のプロセスは、活性物質を組み込む反応を加速するために、ゲルシートと第二の反応物に熱またはエネルギーを加えるステップをさらに含みうることが意図されている。一つ以上の活性物質を、方法の任意の適切なステップで組み込みうる。例えば、架橋前に、活性物質をゲル化混合物に加えうる。活性物質は、脱水の前または脱水の後に、架橋ポリマー基質に加えられうる。独立気泡が形成された後に、活性物質を架橋ポリマー基質に加えうることが意図されている。
【0058】
本発明は、酸素送達創傷治療装置を使用する方法も包含する。酸素送達創傷治療装置の使用方法は、哺乳類の創傷または外科切開部位に酸素を送達するために、上述の生体吸収性基質から成る生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を配置するステップ、独立気泡から創傷または外科切開部位に酸素を送達するステップ、および生体吸収性の酸素送達創傷治療装置を創傷または外科切開部位に放置し、哺乳類に再吸収させるステップを一般的に含む。手術部位に挿入する前に、装置を少量の滅菌食塩溶液で濡らしうる。
【0059】
本発明は、以下の例によってさらに説明される。ただし、このような例は、本発明の精神または範囲のいずれかをいかなる方法でも制限するとして解釈されないものとする。
【実施例】
【0060】
下記の例で使用されるすべての化学物質は、別途指定がない限り試薬グレードであった。
【0061】
例1:生体吸収性創傷治療装置プロトタイプの作成
【0062】
包帯の製造方法は、(i)必要な化学物質の原液の作成、(ii)ゲル化混合物の作成、(iii)ゲル化混合物のゲル化シートへの乾燥、および(iv)最後に、ゲルシートの生体吸収性早朝治療装置(すなわち、生体吸収性発泡包帯)への変換という、4つの主なステップから成る。
【0063】
(1). ゼラチンと炭酸ナトリウムの原液の準備:7.20グラムの無水Na2CO3(Fisher Scientific製)を、250mlのパイレックス(登録商標)ボトル中、200mlの脱イオン(DI)水に攪拌して溶解し、原液(0.34M)を作成した。ゼラチン(Sigma-Aldrich製、タイプA)を、広口ガラスビン中の45mlのDI水に加え、完全に溶解するまで50℃の水浴に入れた。このようにして作られたゼラチン原液(10%w/w)は、使用準備ができるまで、ビンを50℃に保つ(そうしないと室温では固化する)ことによって流動性を保った。
【0064】
(2). ゲル化混合物の作成:計量された量のアルギン酸プロピレングリコール(PGA、Spectrum Chemical製、1.00g)粉末とグアーガム粉末(Spectrum Chemical製、0.50g)をポリプロピレンカップ(容量140ml)に移し、スパチュラを使用して均一になるまで混合した。次に、イソプロパノール(IPA、Univar Inc.製、1.00g)をピペットで前記乾燥粉末に加え、スパチュラで混合してペーストを得た。このペーストに、以下の原料をその順序で加え、スパチュラを使用して手で混合した。
【0065】
(a)1回に水4〜5 mLのアリコートのDI水(44mL)、
(b)グリセロール(VVF Limited製、4.0g)、
(c)Na2CO3 原液(0.34M、9.0mL)、
(d)50℃(40.0g)のゼラチン原液を加えて、透明から不透明の粘性のあるゲル塊を得た。
【0066】
カップ中の粘性のあるゲル混合物(未冷却)を、プラスチックのペトリ皿(150mm x 15mm)に注ぎ入れ、室温で20〜30分間放置して硬いゲルに固めた。ゲルをペトリ皿に注ぎ入れる前に、固まったゲルの取り外しを助けるために皿を鉱物でコートした。固化時間経過後、ペトリ皿中のゲルを55℃の従来的なオーブンに移し、4時間脱水した。図表の図1に示されるように、脱水されたゲルはフルーツレザーの稠度を持つゲルシートへと変換された。
【0067】
(3). 発泡包帯の準備:前のステップからのゲルシートをペトリ皿からはがし、浅い容器(Spectrum製)に入った15%w/w過酸化水素溶液に20分浸漬して、H2O2を吸収させた。DI水を満たした第二の浅い皿にシートを数秒入れることによって、過剰のH2O2を濡れたシート表面から洗い流す。濡れたゲルシートを乾いたペーパータオルで拭いて、過剰の水を取り除く。拭き取ったゲルシートをペトリ皿に入れ、マイクロ波オーブン(Panasonic製、Genius Sensor 1250 W)中で加熱し、温度を55〜60℃まで上昇させる(P8レベルで10秒の連続サイクルを3回)。加熱は、柔らかい濡れたゲルシートに封入されていたH2O2の、O2ガスへの分解を開始する。マイクロ波加熱による発泡の開始に続いて、部分的に発泡されたシートは、55℃に設定された従来的オーブン内で15〜20分間さらに加熱され、発泡プロセスを完了し、生体吸収性独立気泡O2発泡シート包帯を得た。不均一な乾燥のために、発泡包帯プロトタイプはさまざまな場所でゆがんだ(図2参照)。水分損失を防ぐために、包帯は、Parafilm(登録商標)で密封されたペトリ皿中に保管された。
【0068】
例2:生体吸収性ゲルシートの発泡に対するゼラチンとPGAの比率の影響の研究
【0069】
ゲル化混合物中のゼラチンとPGAの重量比率(例1のゲルシートでは4:1)を最高5:1まで変化させ、脱水ゲルシートおよびその後の発泡に対するその影響を研究した。この研究では、ゲルシートを作るための原料割合は例1で採用されたものの半分であったが、それらは表1に記載されている。ゲル化および乾燥に使用されたペトリ皿がより小さかった(60mm x 15mm)ことを除いて、ゲルシートは例1の方法に従って作られた。ゲル化混合物の容量が例1の半分だったため、より小さいペトリ皿を使用しても、最終的な包帯の厚さは変化しなかった。各ゲルシートをH2O2に漬けてから発泡させた後、浸漬後のゲルシートおよび発泡シートの観察を表2に記録した。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
例3:さまざまなH2O2濃度の溶液への浸漬がゲルシートおよび結果として生じる発泡シートに及ぼす効果
【0073】
例1の方法に従って、原料の量を半分にすることによって、より薄いO2発泡包帯を作成した。同じ包帯シートから、〜1インチx1インチの正方形片3つを切り取った。各片を、5%、10%、15%w/w H2O2をそれぞれ含む3つの異なる溶液に、25℃で3分間、別々に浸した。6分と9分の2回の追加浸漬時間に対して、手順を繰り返した。浸漬直後および55℃のオーブンで10分間の熱処理後に、ゲルシートに対する影響の観察を記録した。
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
例4:浸漬時間を一定に保った場合の、ゲルシートおよび結果として生じる発泡シート包帯に対する浸漬溶液のさまざまな%のH2O2の効果
【0077】
例1の手順に従って、4つの別々のゲルシートを作成した。それぞれ一つのサンプルシートを、それぞれ5%、10%、15%、20% w/wの濃度の過酸化水素(Spectrum製)の溶液に20分間、浸漬した。水和ゲルシートを、例1に記述されるように発泡し、発泡包帯に関する観察を表5に記録した。
【0078】
【表5】
【0079】
例5:ゲルシートおよび結果として生じる発泡シート包帯に対する、15%w/w H2O2のさまざまな浸漬時間の効果
【0080】
例1の手順に従って、4つのゲルシートを作成した。それぞれを15% w/w H2O2溶液に浸漬したが、それぞれの浸漬時間を異ならせて、10分、15分、20分、30分とした。浸漬後およびそれに続く発泡シート包帯への変換の後にゲルシートを観察した。観察を以下の表6に記載する。
【0081】
【表6】
【0082】
例6:ゲルシートの水和能力
例1の方法に従って、一つのゲルシートを作成した。ゲルシートの3つの片(〜1インチx1インチ)を切り、サンプルをA、B、Cと表示した。各サンプルの質量を最初に測定した。25℃のDI水に、3つの異なる時間(30分、3時間、24時間)の間、サンプルの包帯片を浸漬した。各時点で片を取り出し、ペーパータオルで拭き取って乾かし、計量した。水和の前と後の重量から、初期の%としての水和能力が計算された。データを表7に記載する。
【0083】
【表7】
【0084】
例7:例1の酸素発泡包帯からのO2フラックス測定
【0085】
例1で作成されたO2発泡包帯からの溶解酸素のフラックスは以下のように測定された。直径30 mmの円形酸素包帯を発泡包帯から切り、〜1mLの脱イオン水で濡らした。濡れた発泡片を、フランツ気泡のPE膜(厚さ〜25μm)の上部に配置し、円形の重いプラスチック上部によって確実に膜と密接に接触するように定位置に保持した。膜は、空気が飽和した食塩溶液で満たされたフランツ気泡の柔軟な壁として機能した。気泡には、溶解O2測定プローブ(フロリダ州Ocean Optics社製のFoxy(登録商標))が取り付けられた。溶解O2プローブは、経時的な食塩溶液のO2含量(ppm)のモニタリングを可能にした。包帯片がPE膜と接触するように配置された直後に、食塩溶液のO2濃度をモニターした。5分の初期時差の後、O2濃度は、それから60〜90分間、時間とともに直線的に増加し始めた(図3参照)。直線勾配値を使用して、単純数学モデルからO2フラックス(μg/cm2/分)は、〜0.13μg/cm2/分として計算された。
【0086】
机上の実験例
【0087】
例1:ヒアルロン酸ベースのO2発泡包帯
【0088】
0.36gのヒアルロン酸ナトリウム(少なくとも1e6の分子量)を、ドラムバイアル(容量20ml)中、小さなマグネチックスターラーで4.74gの0.2M水酸化ナトリウムに溶解する。0.36gのジビニルスルホンをその溶液に溶解する(HA対DVAの重量比率は1:1)。最後に、0.54gのグリセロールを加える。混合物を小さなペトリ皿に注ぎ入れ、その後これにフタをする。ヒアルロン酸混合物を注ぐ前に、ペトリ皿の表面に鉱物油をすり込む。室温(〜25℃)で約2時間後、ペトリ皿の内容物はゲルに変わる。小さな丸いゲルシートをナイロンメッシュに移し、55℃に設定されたオーブンに2〜4時間入れて、シートから水分を除去する。およそ〜75%の重量損失の後、ゲルシートはフルーツレザーの稠度を持つ材料に変わる。
【0089】
上記で作られたHAゲルシートを、H2O2の10〜30%重量水溶液に短時間(5分未満)浸漬する。浸漬したシートを紙の上でぬぐって乾かし、H2O2のO2への分解を開始し、発泡を生じさせるためにマイクロ波オーブン中で加熱する。必要な場合、次にマイクロ波処理したゲルシートを、55℃に設定された従来型のオーブンに移してH2O2の分解を完了し、指触乾燥しているO2フォームシートを得ることができる。ヒアルロン酸塩は生体内で酵素的に生物分解することが知られているため、ヒアルロン酸ベースのO2発泡包帯は、生体吸収性であることが予測される。
【0090】
例2:ヒアルロン酸塩およびコラーゲンに基づくO2発泡包帯
【0091】
ジビニルスルホンを架橋剤として加えたヒアルロン酸塩とコラーゲンの溶液を、米国特許第4,582,865号の例15に記述された方法で作成するが、量は2倍にする。この溶液に1.2 mlのグリセロールを加えて混合する。混合物を、上記の机上の実験例1にあるように処理して、生体吸収性O2発泡包帯を得る。
【0092】
例3:ポリ(エチレングリコール・マレイン酸塩・クエン酸塩)に基づくO2発泡包帯
【0093】
Gyawali Dらによる「気泡送達のためのクエン酸由来の原位置架橋可能な生分解性ポリマー」(BioMaterials (2010), doi:10.1016/j.biomaterials.2010.08.022)の論文の材料と方法セクションに記述されたように、まず基本ポリマーを作成する。結果として生じるポリマー(精製済み)の30% w/v溶液を、3% w/v濃度の架橋剤としてアクリル酸を使用して、酸化還元開始システム(過硫酸アンモニウムとテトラメチルエチレンジアミン)で本明細書に記述されたように架橋する。重合の開始前に、グリセロールとグアーガムの混合物中の濃度がそれぞれ、〜10%および1% w/wとなるように溶解する。粘性混合物をオイルを引いたペトリ皿に注ぎ、室温で2時間重合を行ってゲルシートを得る。論文に記述されたよりも長時間の重合は、ビニル基の変換の完了を確実にし、そのためゾル形成を最小化する。ゲルシートは机上の実験例1にあるように脱水する。次に、これを0.5M炭酸ナトリウム溶液で15分間、再水和し、再び脱水する。最後に、ゲルシートを10〜30%重量H2O2溶液に5〜10分間、浸漬し、ふき取って乾かし、短時間(必要に応じて、10〜15秒の短時間暴露で5分未満)でマイクロ波処理し、55℃に設定されたオーブンに移して発泡プロセスを完了する。約45分〜1時間オーブン中で乾燥した後、O2発泡包帯が得られる。
【0094】
例4:ポリ(カプロラクトンジオール共ポリプロピレンフマル酸塩共エチレングリコール)に基づくO2発泡包帯
【0095】
Krishna LおよびJayabalan Mによる論文(J. Mater. Sci. Mater. Med Vol. 20, pS115-122 (2009))のセクション2.1「材料と方法」に記述された手順に従って、基本ポリマーを作成する。基本ポリマーは、架橋剤としてアクリルアミドを使用して不溶性のヒドロゲルに架橋される。論文の表2に開示された処方に従う。記載された原料に加えて、グリセロール(0.25g)および炭酸ナトリウム(0.1〜0.15g)を重合混合物に加え、ヒドロゲルへと重合する(無機化合物は混合物に完全に溶解されなければならず、溶解を補助するために少量の水(記載量以上)を加えることができることに注意)。次に結果として生じるヒドロゲルを、ヒドロゲル材料が望ましい質感、感覚、外見かどうかを時折、観察しながら、55℃のオーブンで1〜2時間、フルーツレザーの稠度まで脱水する。
【0096】
脱水されたヒドロゲルをオーブンから取り出し、室温まで冷却する。次に、〜10〜15% w/w過酸化水素水を満たした浅い皿の中に、25℃で20分未満浸漬する。膨潤したヒドロゲルをナイロンメッシュに慎重に移し、55℃のオーブンに0.25時間〜1時間、再び入れる。ヒドロゲルが55℃まで加熱されると、炭酸ナトリウムによる気体酸素への原位置分解がその後に続いて起き、ヒドロゲルから泡沫材料への変換が生じる。得られた発泡包帯は、純粋な酸素ガスで満たされた独立気泡発泡体で柔軟性があり、生体吸収性であると予測される。この例において、架橋剤としてのアクリルアミドの使用は例示目的であって限定的でないことに注意されたい。当業者であれば、本発明の生体吸収性O2発泡包帯の作成に適切な、2つのビニル基を持つその他の架橋剤について把握している。このような物質は、基本ポリマーとともに、無害な毒性のない生成物に生体内分解されることが好ましい。
【0097】
本発明は、特定の好適実施形態に関連して記述されているが、本発明の目的で包含される主題は、これらの特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の主題は、以下の請求項の精神および範囲内に含まれうるすべての代替物、変更および相当物を含むことが意図されている。
図1
図2
図3