【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によると、第1セットのシリンダを備える内燃機関が提供され、該第1セットのシリンダは、第1クランク軸に連結される第1圧縮ピストンを収容する2ストローク第1圧縮シリンダと、第2クランク軸に連結される第1燃焼ピストンを収容する4ストローク第1燃焼シリンダで、前記2ストローク第1圧縮シリンダから圧縮ガスを受け取るよう構成される4ストローク第1燃焼シリンダと、前記第1クランク軸に連結される第1膨張ピストンを収容する2ストローク第1膨張シリンダで、前記4ストローク第1燃焼シリンダから排ガスを受け取るよう構成される2ストローク第1膨張シリンダとを含んでおり、前記第1燃焼ピストンが前記第1燃焼シリンダ内で下端位置に達すると、前記第1圧縮ピストンは、前記第1圧縮シリンダ内で下端位置に達するよう配置され、前記第1膨張ピストンは、前記第1膨張シリンダ内で上端位置に達するよう配置され、前記第2クランク軸は、前記第1クランク軸の速度の少なくとも2倍の速度で回転するよう構成される、内燃機関である。
【0009】
圧縮シリンダは、以下の説明及び全体を通して、圧縮ピストンを収容するシリンダと解釈されるべきであって、該シリンダは、圧縮された吸入ガスを燃焼シリンダへ供給するよう配置される。従って、圧縮ピストンは、圧縮シリンダ内部のガスを圧縮し、その後、圧縮されたガスは、燃焼シリンダの吸気口に送られる。その後、圧縮ガスの圧力レベルは、大気圧を上回る。第1圧縮シリンダは、2ストローク形式で作動する。これは、圧縮ピストンが、シリンダの上死点としても知られているシリンダの上端位置にある時、シリンダの下死点としても知られている圧縮シリンダの下端位置へ圧縮ピストンが下降する間に、シリンダ内にガスが供給されることを指す。その後、圧縮ピストンがシリンダの上端位置へ向かって上昇すると、圧縮ピストンの往復移動に起因するシリンダ内の容量の減少により、シリンダ内に供給されたガスは圧縮される。ある所望の時点で、圧縮ガスは、圧縮シリンダから排出され燃焼シリンダの吸気口へ排出される。これを制御する方法を以下により詳しく説明する。圧縮シリンダによって圧縮されたガスは、例えば、外気でもよい。
【0010】
膨張シリンダは、以下の説明及び全体を通して、膨張ピストンを収容するシリンダと解釈されるべきであって、該シリンダは、燃焼シリンダから排ガスを受け取ってから、更に排ガスを膨張シリンダから供給するよう配置される。第1膨張シリンダは、2ストローク形式で作動する。これは、膨張ピストンがシリンダの上端位置にある時、膨張シリンダの下端位置に膨張ピストンが下降する間に、燃焼シリンダからの排ガスが膨張シリンダ内に供給されることを指す。従って、膨張ピストンの往復移動の際のシリンダボア内の容量の増加により、排ガスは膨張される。その後、膨張ピストンがシリンダの上端位置に向かって上昇すると、膨張シリンダ内に供給された排ガスは、膨張シリンダから直接大気に排出される、若しくは、例えば、触媒等の処理システムを通過した後、何らかのガスに供給される。
【0011】
燃焼シリンダは、上記のように、4ストローク燃焼シリンダである。つまり、第2クランク軸が2回転する度に動力行程1回及び排気行程1回を行う。燃焼シリンダ内の燃焼ピストンが、シリンダの下死点に向かって下降移動している際、圧縮シリンダからの圧縮ガスは、燃焼シリンダ内に送り込まれる。その後、燃焼ピストンが燃焼シリンダの上死点に向かって上昇移動している際、燃焼シリンダ内のガスは圧縮される。上死点では、ピストンが上死点に達してからまもなく、燃焼工程が実行されると好ましい。その後、燃焼ピストンは、ピストンの生成作業のため下死点に向かって再び下降移動する。最終的に、燃焼ピストンが上昇移動している際、排ガスは、燃焼シリンダから排出され、膨張シリンダ内に送り込まれる。
【0012】
本発明は、ピストンをそれぞれのシリンダ内で往復運動するよう、特定の構造において互いに関連して配置することによって、ピストン及びそれぞれの連結ロッドの動作により、内燃機関構造のバランス作用が高められるという洞察に基づいている。より詳しくは、4ストローク燃焼ピストンは、内燃機関の1次的アンバランスを引き起こす一方、2ストローク圧縮ピストン及び2ストローク膨張ピストンは、内燃機関の2次的アンバランスを引き起こす。2次的アンバランスは、1次的アンバランスの2倍の頻度で生じる。2ストローク圧縮及び膨張シリンダに関連して、4ストローク燃焼シリンダを別のクランク軸に配置し、第1クランク軸の速度の少なくとも2倍の速度で回転するよう第2クランク軸を設けることで、内燃機関の1次的アンバランスが2次的アンバランスを弱めるよう、2ストローク圧縮及び膨張シリンダ及び4ストローク燃焼シリンダは、互いに調和する。詳しくは、2ストローク圧縮及び膨張シリンダからの2次的アンバランスは、上記の構造では、4ストローク燃焼シリンダからの1次的アンバランスと同調、対抗、及び一致することで、その後アンバランスは、ほぼ同じ振幅となり、互いを打ち消し合うのに使用され得る。このため、2次的アンバランスのバランスウェイトとして作用する速度の速い4ストローク燃焼ピストンを用いて、1次的アンバランスは、少なくとも部分的に第2アンバランスを打ち消す。また、逆の場合も同様である。第1燃焼ピストンは、第1圧縮ピストンと第1膨張ピストンとの間に配置されていると好ましい。上記の構造では、従って、本発明は、1次的アンバランスが2次的アンバランスを打ち消すことができるよう、ピストンの動きに合ったピストンの配置を提供する。
【0013】
「少なくとも2倍の速度」とは、第2クランク軸が少なくとも整数2の倍数の速度で回転すると解釈すべきである。第2クランク軸が第1クランク軸の速度の2倍の速度で回転すると、4ストローク燃焼ピストンは、全燃焼サイクルを完了する。これは、上記の通り、圧縮ピストン及び膨張ピストン各々の全圧縮サイクル及び全膨張サイクルの完了時の720度のクランク角である。第1クランク軸及び第2クランク軸から、例えば、ギアボックストランスミッションへトルクを伝達するため、及びクランク軸を同期させるため、例えば適切なトランスミッションを利用して、第1クランク軸を第2クランク軸に連結してもよい。また、「上端位置」及び「下端位置」は、シリンダ内の絶対上端及び絶対下端位置ではなく、むしろ、上端及び下端位置それぞれとの標準的な公差に基づいて判断され得る位置と解釈すべきである。
【0014】
本発明の効果は、内燃機関のアンバランスを少なくとも部分的に打ち消すことによって、従来のバランス軸の数を削減することが可能なことである。従って、バランス軸の削減により、必要とされる部品がより少なくなるので、機関の費用削減につながる。内燃機関のバランス軸の削減により、例えば、摩擦損失等の観点から動力損失も低減される。また、エンジンルーム内のスペースが比較的制限されているので、バランス軸の数を減らすことで、機関のサイズを小さくすることが可能となり、例えば多数のホース等、他の部品をエンジンルーム内に収容することができる。
【0015】
ある実施形態によると、前記内燃機関は、更に第2セットのシリンダを備え、該第2セットのシリンダは、前記第1クランク軸に連結される第2圧縮ピストンを収容する2ストローク第2圧縮シリンダで、前記第1圧縮ピストンが前記第1圧縮シリンダ内で下端位置に達すると、第2圧縮ピストンは、前記第2圧縮シリンダ内で上端位置に達するよう配置されるものと、前記第2クランク軸に連結される第2燃焼ピストンを収容する4ストローク第2燃焼シリンダで、前記2ストローク第2圧縮シリンダから圧縮ガスを受け取るよう構成される4ストローク第2燃焼シリンダであって、前記第1燃焼ピストンが前記第1燃焼シリンダ内で上端位置に達すると、該第2燃焼ピストンは、前記第2燃焼シリンダ内で上端位置に達するよう配置されるものと、前記第1クランク軸に連結する第2膨張ピストンを収容する2ストローク第2膨張シリンダで、前記4ストローク第2燃焼シリンダから排ガスを受け取るよう構成される2ストローク第2膨張シリンダであって、前記第1膨張ピストンが前記第1膨張シリンダ内で下端位置に達すると、該第2膨張ピストンは、前記第2膨張シリンダ内で上端位置に達するよう配置されるものとを含む、内燃機関である。
【0016】
従って、第2セットのシリンダを備える内燃機関を提供することで、異なるピストンの特定の相互往復運動が、エンジン使用中に生じるアンバランスを更に弱めるので、機関のバランス作用は、より一層高められる。また、前記実施形態により、連続エンジントルクの向上のみならず、内燃機関の動力能力も向上することになる。
【0017】
ある実施形態によると、第1セット及び第2セットのシリンダを互いに対してV形構造に配置してよい。ある実施形態によると、該V形状は、垂直配置に設けられてもよい。
【0018】
効果として、ピストンのそれぞれのシリンダ内でのストロークは、互いに関連して更に制御され得るので、アンバランスが更に削減可能である。ピストン及びそれぞれのクランク軸の動きのパターンは、予期せず、内燃機関のバランスを更に向上させたので、機関用バランス軸の必要性が更に大きく減る。また、力の所望の釣り合いをもたらすよう、シリンダからの力が調整されるので、内燃機関のV形構造により、1次的及び2次的アンバランスの制御性が更に上がる。また、シリンダを斜めに配置することで、2ストロークシリンダによって、そこで相互から生じる1次的アンバランスを打ち消すことが可能になる。更にまた、内燃機関のV形構造により、小型のエンジンが提供される。これは、エンジンルーム内の利用可能なスペースが限られているため、有益な効果である。本発明は、上記の垂直配置に限定されず、例えば、0度から120度の距離等、他の構造も勿論あり得る。
【0019】
ある実施形態によると、第1膨張ピストンが第1膨張シリンダ内で下端位置に達すると、第1圧縮ピストンは、第1圧縮シリンダ内で上端位置に達するよう配置されてもよい。これによって、第2圧縮ピストン及び第1膨張ピストンがそれぞれの下端位置に配置されると、第1圧縮ピストン及び第2膨張ピストンは、それぞれの上端位置に配置される。効果として、上記V形状と組み合わせたピストン構造で、V形状の各「脚」は、1つの2ストロークピストンをその上端位置に、1つの2ストロークピストンをその下端位置に備えるため、異なるピストンの慣性荷重の制御によるバランス作用がもたらされる。
【0020】
ある実施形態によると、第1燃焼ピストン及び第2燃焼ピストンは、それぞれの燃焼シリンダ内でほぼ同時に上端位置に達するよう、かつ、第2燃焼シリンダ内でガスの吸入を開始するために第2燃焼ピストンが該第2燃焼シリンダ内の上端位置にある時、第1燃焼ピストンは、第1燃焼シリンダ内の上端位置で点火するように構成されるよう配置される。
【0021】
「クランク角オフセット」は、以下の説明及び全体を通して、異なるピストンのクランク角度の回転差、即ち、クランク軸上のピストン間のクランク角度(CAD)として解釈されるべきである。例として、4ストローク燃焼ピストンは、720度のクランク角サイクルを有し、2ストローク圧縮ピストン及び膨張ピストンは、それぞれ360度のクランク角サイクルを有する。
【0022】
上記の方法で、即ち、互いに対して約360度のオフセットで、燃焼ピストンを配置することの効果として、第2クランク軸が回転する度に燃焼ストロークが生じるので、エンジントルクが連続して供給される。360度オフセットから僅かにずれがあっても、内燃機関は、勿論十分作動するので、そのオフセットは、第1燃焼ピストンおよび第2燃焼ピストン間の内的関係の絶対値としてみなされるべきではない。
【0023】
ある実施形態によると、第1膨張ピストンが第1膨張シリンダ内で上方位置及び下方位置に達する時、第1燃焼シリンダ及び第2燃焼シリンダ内で、それぞれ第1燃焼ピストン及び第2燃焼ピストンを下端位置に達するよう配置してもよい。上記ピストンの位置関係と組み合わせたこの配置は、内燃機関のバランスを更にもっと向上させる可能性がある。
【0024】
ある実施形態によると、第1圧縮シリンダ及び第1膨張シリンダは、互いに対して平行に配置され、第2圧縮シリンダ及び第2膨張シリンダは、互いに対して平行に配置されていてもよい。
【0025】
この構造は、特に、限定的ではないが、上記の機関のV形構造に適している。従って、第1圧縮シリンダ及び第1膨張シリンダは、V形状の一方の脚側に配置され、第2圧縮シリンダ及び第2膨張シリンダは、V形状のもう一方の脚側に配置される。上記の説明の通り往復運動するようそれぞれのピストンを配置するだけでなく、第1圧縮シリンダ及び第1膨張シリンダを互いに平行に、かつ第2圧縮シリンダ及び第2膨張シリンダを互いに平行に配置することで、内燃機関は、更にもっと釣り合いがとれる。また、特定のシリンダを平行に設けることで、シリンダ間の後述する通路を比較的小さくすることが可能となり、これらの通路内の動力損失を低減する。
【0026】
ある実施形態によると、第1燃焼シリンダ及び第2燃焼シリンダは、第1V形構造を形成し、第1圧縮シリンダ及び第2圧縮シリンダは、第2V形構造を形成してもよい。
【0027】
ある実施形態によると、第2V形構造が第1V形構造の上方に及びこれと平行に配置されるよう、第1クランク軸を第2クランク軸と平行に配置してもよい。詳しくは、第1クランク軸の軸方向の延長線は、第2クランク軸の軸方向の延長線と平行に配置されている。
【0028】
内燃機関を2つのV形状で設けることで、かつ第2V形状を第1V形状の上方に及びこれと平行に配置することで、第1燃焼シリンダ及び第1膨張シリンダ間の距離のみならず、第1圧縮シリンダ及び第1燃焼シリンダ間の距離を比較的短くすることができるので、シリンダ間の後述する通路が短くなり、通路内での動力損失が低減する。このため、内燃機関の効率が上昇する。また、V形状の配置により、内燃機関のバランス特性が更に向上するので効果的である。これは、V形状により、4ストロークピストン及び2ストロークピストン間の質量力が適切に調整されるので達成される。
【0029】
更にまた、第1V形状及び第2V形状間の相対的な位置を説明する際の「上方に」とは、それぞれのV形状の端の位置が互いにオフセットして設けられるとみなされるべきである。従って、第2V形状は、第1V形状のほぼ内部に収容されている。
【0030】
ある実施形態によると、第1クランク軸と第2クランク軸との間に、バランス軸を配置してもよい。機関内で生じる可能性のあるアンバランスを更にもっと取り除くための部品として、バランス軸を内燃機関に配置してもよい。勿論、バランス軸を内燃機関の他の場所に配置してもよく、上記の位置に限定されない。しかし、第2クランク軸から生じるアンバランスを弱めるために、バランス軸を第2クランク軸に極めて近接して配置することが効果的な場合もある。
【0031】
ある実施形態によると、第1圧縮シリンダは、第1通路によって第1燃焼シリンダと流体連結してもよい。ある実施形態によると、第1燃焼シリンダは、第2通路によって第1膨張シリンダと流体連結してもよい。ある実施形態によると、第2圧縮シリンダは、第3通路によって第2燃焼シリンダと流体連結してもよい。ある実施形態によると、第2燃焼シリンダは、第4通路によって第2膨張シリンダと流体連結してもよい。ある実施形態によると、第1通路は、第1圧縮シリンダ及び第1燃焼シリンダ間を通過する流体を冷却するための冷却手段を備えていてもよい。ある実施形態によると、第3通路は、第2圧縮シリンダ及び第2燃焼シリンダ間を通過する流体を冷却するための冷却手段を備えていてもよい。従来の周知の機関と比べ、冷却手段の圧力レベルを上げることができるので、備えられている冷却手段を利用して、例えば、圧縮シリンダの動力消費を削減することができる。また、全体の圧縮作業が低減される。より低温の内燃機関も設けられる。冷却手段は、例えば、熱交換器等であってもよい。
【0032】
ある実施形態によると、各シリンダは、各シリンダ内外への流体の移動を調整するための弁付き吸気口及び弁付き排出口を備えていてもよく、弁付き吸気口及び弁付き排出口の各々は、共通のカム軸で制御される。
【0033】
異なるシリンダ用のクランク軸の速度が異なるため、2ストロークシリンダ用カム軸は、2ストローククランク軸の速度で回転し、4ストロークシリンダ用カム軸は、4ストローククランク軸の半分の速度で回転するので、使用するのは1つの共通のカム軸で十分である。従って、上記の第1クランク軸及び第2クランク軸間の速度比により、1つの共通のカム軸を使用するだけで恐らく十分である。
【0034】
ある実施形態によると、圧縮シリンダは、リード弁又はチェック弁を備えていてもよい。この場合、恐らくこれらのシリンダをカム軸で制御する必要はない。
【0035】
従って、適切な間隔で弁付き排出口を開閉することで、流体の移動を制御することができる。例えば、第1圧縮シリンダ内の圧力が所定の圧力限度に達すると、第1圧縮シリンダの弁付き排出口を開放状態に制御することができる。異なる種類の弁付き口は、当業者には周知であるので、詳しい説明は省略する。機関の既に使用可能な制御装置又は機関が搭載される車両の既に使用可能な制御装置を利用して、弁付き口を制御することができる。
【0036】
本発明の第2の態様によると、上記の形態のいずれかに係る内燃機関を備えている車両が提供される。
【0037】
この第2の態様の効果及び特徴は、本発明の第1の態様に関連して上記の形態と大部分が類似している。
【0038】
また、本発明の特徴及び効果は、添付の請求項及び以下の説明を検討すると明らかになる。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下に説明される実施形態以外の実施形態を作成できるということを理解している。