(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らないことに留意すべきである。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0011】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
【0012】
(1)屈折率(n
x、n
y、n
z)
「n
x」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率である。「n
y」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率である。「n
z」は厚み方向の屈折率である。
x方向(遅相軸)の屈折率n
xと、y方向(進相軸)の屈折率n
yとの間には、次式の関係がある。
n
x≧n
y
(2)面内位相差(R
o)
「R
o」は、波長λ(nm)の光で測定したフィルムの面内位相差である。本実施形態では、可視光の中心付近、例えば、500〜600nmの間の任意の波長λが用いられる。面内位相差R
oは、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、以下の式で求められる。
R
o=(n
x−n
y)×d
(3)厚み方向位相差(R
th)
「R
th」は、波長λ(nm)の光で測定したフィルムの厚み方向位相差である。厚み方向位相差R
thは、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、以下の式で求められる。
R
th={(n
x+n
y)/2−n
z}×d
(4)N
z係数
N
z係数は、以下の式で求められる。
N
z=(n
x−n
z)/(n
x−n
y)
(5)ネガティブCプレート
ネガティブCプレートは、屈折率の関係を模式的に示す屈折率楕円体が「n
x=n
y>n
z」の関係を有する位相差フィルムである。
【0013】
[1]液晶表示装置の構成
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置1の構成を示す断面図である。液晶表示装置1は、液晶パネル(LCP)20、一対の偏光板(POL)10−1、10−2、一対の位相差板(λ/4)11−1、11−2、及び一対のTAC(トリアセチルセルロース)フィルム12−1、12−2を備える。
図1において、図面の理解を容易にするために、偏光板に“POL”、位相差板に“λ/4”を付記している。
【0014】
液晶パネル20の一方の主面上には、TACフィルム12−1、位相差板11−1、偏光板10−1が順に積層される。液晶パネル20の他方の主面上には、TACフィルム12−2、位相差板11−2、偏光板10−2が順に積層される。
【0015】
液晶パネル20は、垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードを有する。液晶パネル20は、液晶層に電界が印加されない(液晶層間の電圧が概略ゼロである)オフ状態と、液晶層に電界が印加される(液晶層間に正の電圧が印加される)オン状態とを有する。VA型の液晶パネル20では、オフ状態において液晶分子が垂直方向に配向し、オン状態において液晶分子が水平方向に向かって傾く。液晶パネル20の具体的な構成については後述する。
【0016】
図2及び
図3は、液晶表示装置1の構成を示す斜視図である。
図2は、オフ状態の液晶パネル20を模式的に示しており、
図3は、オン状態の液晶パネル20を模式的に示している。
図2及び
図3において、各レイヤーに示した2本の一点鎖線は、互いに直交する基準線である。TACフィルム12−1、12−2、及び液晶層22には、屈折率楕円体の上面図を模式的に示している。
【0017】
偏光板10−1、10−2は、光の進行方向に直交する平面内において、互いに直交する透過軸及び吸収軸を有する。偏光板10−1、10−2は、ランダムな方向の振動面を有する光のうち、透過軸に平行な振動面を有する直線偏光(直線偏光した光成分)を透過し、吸収軸に平行な振動面を有する直線偏光(直線偏光した光成分)を吸収する。偏光板10−1、10−2は、互いの透過軸が直交するように、すなわち直交ニコル状態で配置される。
図2の例では、偏光板10−1の吸収軸は、基準軸に対して概略45°の角度をなすように設定される。
【0018】
位相差板11−1、11−2は、屈折率異方性を有しており、光の進行方向に直交する平面内において、互いに直交する遅相軸及び進相軸を有する。位相差板11−1、11−2は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長の光の間に所定のリタデーション(λを透過する光の波長としたとき、λ/4の位相差)を与える機能を有する。すなわち、位相差板11−1、11−2は、λ/4板から構成される。位相差板11−1、11−2は、直線偏光を円偏光に、また円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。
【0019】
位相差板11−1、11−2は、互いの遅相軸が直交するように配置される。位相差板11−1の遅相軸は、偏光板10−1の吸収軸に対して概略45°の角度をなすように設定される。位相差板11−2の遅相軸は、偏光板10−2の吸収軸に対して概略45°の角度をなすように設定される。なお、前述した偏光板及び位相差板を規定する角度は、所望の動作を実現可能な誤差、及び製造工程に起因する誤差を含むものとする。例えば、前述した概略45°は、45°±5°の範囲を含むものとする。また、前述した直交は、90°±5°の範囲を含むものとする。
【0020】
TACフィルム12−1、12−2は、透過光に位相差を付与する機能を有する位相差フィルム(位相差補償フィルム)である。TACフィルム12−1、12−2は、ネガティブCプレートから構成される。TACフィルム12−1、12−2の構成については後述する。
【0021】
(液晶パネル20の構成)
次に、液晶パネル20の構成の一例について説明する。
図4は、液晶パネル20の構成を示す断面図である。
【0022】
液晶パネル20は、カラーフィルター及び共通電極等が形成されるカラーフィルター基板(CF基板)21−1と、スイッチング素子(TFT)及び画素電極等が形成されかつCF基板21−1に対向配置されるTFT基板21−2と、CF基板21−1及びTFT基板21−2間に挟持される液晶層22とを備える。CF基板21−1及びTFT基板21−2の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板)から構成される。TFT基板21−2は、光源部(バックライト)に対向配置され、バックライトからの照明光は、TFT基板21−2側から液晶パネル20に入射する。
【0023】
液晶層22は、CF基板21−1及びTFT基板21−2間を貼り合わせるシール材23によって封入された液晶材料から構成される。液晶材料は、CF基板21−1及びTFT基板21−2間に印加された電界に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。また、液晶層22は、誘電異方性を有する液晶分子を備えた液晶層から構成され、例えば、ネマティック液晶から構成される。
【0024】
前述したように、液晶モードとしては、VAモードが用いられる。すなわち、液晶層22は、ポジ型(p型)液晶材料からなり、電圧(電界)を印加していない状態(初期配向状態)で基板面に対してほぼ垂直に配向させる。なお、図示は省略するが、CF基板21−1及びTFT基板21−2の各々において液晶層22と接する面には、液晶層22の配向を制御する配向膜が設けられる。
【0025】
TFT基板21−2の液晶層22側には、複数のスイッチング素子24が設けられる。スイッチング素子24としては、例えばTFT(Thin Film Transistor)が用いられる。TFT24は、走査線に電気的に接続されるゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた半導体層(例えばアモルファスシリコン層)と、半導体層上に離間して設けられたソース電極及びドレイン電極とを備える。ソース電極は、信号線に電気的に接続される。
【0026】
TFT24上には、絶縁層25が設けられる。絶縁層25上には、複数の画素電極26が設けられる。絶縁層25内かつTFT24のドレイン電極上には、画素電極26に電気的に接続されたコンタクトプラグ27が設けられる。
【0027】
CF基板21−1の液晶層22側には、カラーフィルター28が設けられる。カラーフィルター28は、複数の着色フィルター(着色部材)を備え、具体的には、複数の赤フィルター28−R、複数の緑フィルター28−G、及び複数の青フィルター28−Bを備える。一般的なカラーフィルターは光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)で構成される。隣接したR、G、Bの三色のセットが表示の単位(画素)となっており、1つの画素中のR、G、Bのいずれか単色の部分はサブピクセル(サブ画素)と呼ばれる最小駆動単位である。TFT24及び画素電極26は、サブピクセルごとに設けられる。以下の説明では、画素とサブ画素との区別が特に必要な場合を除き、サブ画素を画素と呼ぶものとする。
【0028】
赤フィルター28−R、緑フィルター28−G、及び青フィルター28−Bの境界部分、及び画素(サブピクセル)の境界部分には、遮光用のブラックマトリクス(遮光膜)BMが設けられる。すなわち、ブラックマトリクスBMは、網目状に形成される。ブラックマトリクスBMは、例えば、着色部材間の不要な光を遮蔽し、コントラストを向上させるために設けられる。
【0029】
カラーフィルター28及びブラックマトリクスBM上には、共通電極29が設けられる。共通電極29は、液晶パネル20の表示領域全体に平面状に形成される。
【0030】
共通電極29上には、各画素に対応して突起部30が設けられる。突起部30は、例えば樹脂から構成され、例えば円錐形を有している。突起部30は、液晶分子が傾く方向を制御する機能を有する。この複数の突起部30により、液晶層22は、液晶分子が傾く方向が異なる複数の領域(ドメイン)から構成される。すなわち、液晶パネル20は、いわゆるマルチドメイン方式を用いている。マルチドメイン方式を用いることで、視野角依存性を改善することができる。
【0031】
画素電極26、コンタクトプラグ27、及び共通電極29は、透明電極から構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。絶縁層25としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えば、シリコン窒化物(SiN)が用いられる。
【0032】
[2]動作
次に、上記のように構成された液晶表示装置1の動作について説明する。
図5は、オフ状態における液晶表示装置1の動作を説明する図である。
図5には、表示面側(断面図の上)から見た配向状態を示している。なお、以下の動作は、画面に垂直方向に進む光に対する説明である。
【0033】
オフ状態において、液晶層22の液晶分子は、その長軸が垂直方向に配向する。バックライトからの入射光は、偏光板10−2を透過して直線偏光になり、さらに位相差板11−2を透過して円偏光になる。液晶層22は、基板に平行な平面内における屈折率異方性が概略ゼロである。よって、円偏光は、液晶層22を概略同じ状態を保ったまま透過する。続いて、液晶層22を透過した円偏光は、位相差板11−1を透過して直線偏光になる。この直線偏光は、偏光板10−1の吸収軸と平行であるため、偏光板10−1で吸収される。よって、オフ状態において、液晶表示装置1は、黒表示となる。すなわち、液晶表示装置1は、ノーマリーブラック型である。
【0034】
図6は、オン状態における液晶表示装置1の動作を説明する図である。オン状態において、液晶層22の液晶分子は、水平方向に向かって傾くように配向する。波長λ=550nmとすると、オン状態における液晶層22のリタデーションΔndは、275nm(=λ/2)程度である。「Δn」は、液晶層の複屈折性であり、「d」は、液晶層の厚みである。
【0035】
バックライトからの入射光は、偏光板10−2を透過して直線偏光になり、さらに位相差板11−2を透過して円偏光になる。液晶層22は、Δnd=275nmを有するため、円偏光は、液晶層22を透過して反対回りの円偏光になる。続いて、液晶層22を透過した円偏光は、位相差板11−1を透過して直線偏光になる。この直線偏光は、偏光板10−1の透過軸と平行であるため、偏光板10−1を透過する。よって、オン状態において、液晶表示装置1は、白表示となる。具体的には、カラーフィルターに応じたカラー表示が実現される。
【0036】
ところで、本実施形態では、視野角を広くするために、TACフィルム12−1、12−2を備える。以下に、TACフィルム12−1、12−2による光学補償の作用について説明する。
【0037】
まず、位相差板11−1、TACフィルム12−1、液晶層22、TACフィルム12−2、及び位相差板11−2の順に、これらの屈折率を模式的に示す屈折率楕円体について説明する。なお、
図7乃至
図11は、オフ状態における液晶表示装置1に含まれる部材の屈折率楕円体を説明する模式図であり、上面図、正面図、及び側面図に関する方向は、
図2を基準にしている。
【0038】
図7は、位相差板11−1(λ/4(1)と表記)の屈折率楕円体を説明する模式図である。
図7(a)は、屈折率楕円体の構成を示しており、屈折率楕円体の上面図、正面図、及び側面図を示している。
図7(b)は、画面の垂線から角度45°で入射する光に対する屈折率楕円体の構成を示している。
図7(b)において、中心にある楕円(又は円)は、上面図であり、周囲の8つの楕円はそれぞれ、8つの方位(0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、及び315°)から見て、画面の垂線から角度45°の光軸に対して垂直な面で屈折率楕円体を切断した場合の断面図である。すなわち、画面の垂線から角度45°で入射(透過)する光に対する位相差板11−1の屈折率(複屈折)の概略が、
図7(b)から理解できる。なお、切断面は、屈折率楕円体の中心を通る。以下に説明する
図8乃至
図11についても
図7と同様である。
【0039】
図7の位相差板11−1において、屈折率楕円体は、その長軸が面内(水平面)における横方向に向いている。この屈折率楕円体は、「n
x>n
y」の関係を有する。位相差板11−1(及び11−2)のより具体的な条件については後述する。
【0040】
図8はTACフィルム12−1(TAC(1)と表記)の屈折率楕円体を説明する模式図である。
図8のTACフィルム12−1において、屈折率楕円体は、円盤形である。TACフィルム12−1は、ネガティブCプレートから構成され、屈折率楕円体が「n
x=n
y>n
z」の関係を有する。TACフィルム12−1(及び12−2)のより具体的な条件については後述する。なお、ネガティブCプレートの一般的な定義が「n
x=n
y>n
z」であるが、厳密には、「n
x=n
y」にならない可能性がある。よって、本実施形態では、「n
x≒n
y>n
z」の関係を有するフィルムをネガティブCプレートと呼ぶ場合がある。
【0041】
図9は、オフ状態における液晶層22の屈折率楕円体を説明する模式図である。
図9の液晶層22において、屈折率楕円体(液晶分子)は、その長軸が垂直方向に向いている。液晶分子の長軸に沿った屈折率(異常光の屈折率)n
e、液晶分子の短軸に沿った屈折率(常光の屈折率)n
0である。オフ状態における液晶層22は、ポジティブCプレートから構成され、屈折率楕円体が「n
x=n
y<n
z」の関係を有する。n
0=n
x=n
y、n
e=n
zである。
【0042】
図10は、TACフィルム12−2(TAC(2)と表記)の屈折率楕円体を説明する模式図である。
図10のTACフィルム12−2において、屈折率楕円体は、円盤形である。TACフィルム12−2は、ネガティブCプレートから構成され、屈折率楕円体が「n
x=n
y>n
z」の関係を有する。
【0043】
図11は、位相差板11−2(λ/4(2)と表記)の屈折率楕円体を説明する模式図である。
図11の位相差板11−2において、屈折率楕円体は、その長軸が面内における縦方向に向いている。この屈折率楕円体は、「n
x>n
y」の関係を有する。
【0044】
図12は、
図7乃至
図11の屈折率楕円体を纏めた図である。
図12には、前述したように、画面(上面)の垂線から斜め45°で透過する光に対する複屈折の様子が示される。
【0045】
前述したように、TACフィルム12−1、12−2は、ネガティブCプレートから構成され、また、オフ状態の液晶層22は、ポジティブCプレートから構成される。
図12から理解できるように、TACフィルム12−1、12−2と液晶層22とは、複屈折の方向が直交している。このため、液晶層22の複屈折は、TACフィルム12−1、12−2の複屈折によって低減される。これにより、広視野角を実現できる。
図12には、位相差補償の効果を示しており、
図12の三角は、コントラスト比が良好であることを意味し、
図12の丸は、コントラスト比がより良好であることを意味する。
【0046】
以下に、TACフィルム12−1、12−2、及び位相差板11−1、11−2の条件について説明する。位相差やN
z係数は、可視光の中心付近、例えば、500〜600nmの間の任意の波長における値であれば良いが、本実施形態では、TACフィルム及び位相差板に関する数値は、波長λ=590nmの可視光を用いた場合の値とする。
【0047】
本実施形態では、TACフィルム12−1、12−2は、その厚み方向位相差R
thが20nm以上かつ70nm以下に設定され、より好ましくは、30nm以上かつ60nm以下に設定される。また、TACフィルム12−1、12−2は、その面内位相差R
oが0以上かつ7nm以下に設定され、より好ましくは、0以上かつ5nm以下に設定される。
【0048】
図8及び
図10に示すように、TACフィルム12−1の遅相軸は、TACフィルム12−2の遅相軸と概略直交するように配置される。遅相軸は、屈折率n
xの方向(X方向)に対応する。これにより、TACフィルム12−1の面内位相差とTACフィルム12−1の面内位相差とが相殺されるように働く。よって、TACフィルム12−1及びTACフィルム12−2全体としての面内位相差をより小さくできる(ゼロに近づけることができる)ため、正面コントラストを向上させることができる。なお、TACフィルムの遅相軸と位相差板の遅相軸との関係は任意に設定可能である。
【0049】
なお、オフ状態の液晶層22を画面の垂線から45度の角度で透過する光に作用する液晶層22のリタデーションΔnd´は、100nm程度である。厚さd´は、画面の垂線から45度の角度で液晶層22を透過する光に対応する液晶層22の厚さである。この液晶層22のリタデーションを低減するために、TACフィルム12−1、12−2合計の厚さ方向位相差Rthは、100nm程度であることが望ましい。
【0050】
位相差板11−1、11−2は、その面内位相差R
oが130nm以上かつ150nm以下に設定され、より好ましくは、135nm以上かつ145nm以下に設定される。また、位相差板11−1、11−2は、そのN
z係数が1.4以上かつ1.7以下に設定され、より好ましくは、1.5以上かつ1.65以下に設定される。位相差板11−1、11−2のN
z係数を上記条件に設定することで、見る方向によって複屈折が変化することに起因する視野角依存性を低減することができる。
【0051】
図13は、視野角に応じたコントラスト比のシミュレーション結果である。コントラスト比は、白輝度(最大輝度)/黒輝度(最小輝度)で定義される。
図13において、最外の円周に記載された数値は、方位角(°)を表しており、複数の同心円が表す数値は、画面の中心(又はある基準点)を通る垂線と、画面の中心から測定点を通る直線とのなす角度(°)、すなわち、画面を観測者に対して傾ける角度を表している。
【0052】
図13には、コントラスト比が、100以下の領域、100より大きく200以下の領域、200より大きく300以下の領域、300より大きく400以下の領域、400より大きく500以下の領域を示している。
図13から理解できるように、液晶層22の複屈折を低減するために、液晶層22を挟むTACフィルム12−1、12−2を新たに設けることで、視野角を向上できる。
【0053】
[3]適用例
次に、本実施形態に係る液晶表示装置1の適用例(実施例)について説明する。本実施形態に係る液晶表示装置1は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)装置に適用することができる。
【0054】
図14は、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置50を模式的に示す断面図である。ヘッドアップディスプレイ装置50は、
図1に示した液晶表示装置1、光源部51、反射部材52、及び表示部材53を備える。
【0055】
光源部51は、例えば面形状を持つ光源(面光源)から構成され、液晶表示装置1に照明光を供給する。光源部51に含まれる発光素子としては、例えば白色の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられる。液晶表示装置1は、光源部51からの照明光を透過して光変調を行う。そして、液晶表示装置1は、車速等の運転情報を示す画像を表示する。
【0056】
反射部材52は、平面鏡、又は凹面鏡などから構成される。反射部材52は、液晶表示装置1からの表示光を表示部材53に向けて反射する。反射部材52として凹面鏡を用いた場合、凹面鏡は、液晶表示装置1からの表示光を所定の拡大率で拡大する。
【0057】
表示部材53は、液晶表示装置1から出射される表示光を投射するために使用され、表示光を運転者54へ反射することで、表示光を虚像55として表示させる。表示部材53は、例えば車両のフロントガラスである。また、表示部材53は、ヘッドアップディスプレイ装置50専用に設けられた半透明なスクリーン(コンバイナー)であっても良い。コンバイナーは、例えば、車両のダッシュボード上に配置されたり、運転者54の前方に配置されたルームミラーに装着されたり、フロントガラスの上部に設置されたサンバイザーに装着されて使用される。コンバイナーは、例えば、曲面を有する板状の合成樹脂製の基材からなり、その基材の表面には酸化チタン、酸化シリコンなどからなる蒸着膜が施され、この蒸着膜によって半透過の機能を備える。
【0058】
図14の実線で示すように、光源部51から出射された照明光は、液晶表示装置1を透過するとともに光変調される。液晶表示装置1を透過した表示光は、反射部材52によって反射され、表示部材53に投射される。この表示部材53への表示光の投射によって得られる虚像(表示像)55が運転者54に視認される。これにより、運転者54は、運転席の正面前方に表示される虚像55を風景と重畳させて観察することができる。
【0059】
一方で、
図14の破線で示すように、外光の一部は、表示部材53を透過して反射部材52によって反射され、液晶表示装置1に照射される。外光とは、表示部材53の外側(液晶表示装置1が配置される側と反対側)から入射する種々の光であり、例えば太陽光等の外部からの光である。この時、液晶表示装置1の表示面(画面)と光源部51の主面(照明光が出射する面)とがほぼ平行、すなわち、外光の光軸と液晶表示装置1の表示面とがほぼ垂直である場合、液晶表示装置1により反射された光は、外光と逆の光路を辿り、表示部材53に投射される。このため、本来、表示されるべきでない不要な像が発生し、運転者54が視認する表示像の表示品質が低下する。
【0060】
ここで、液晶表示装置1の表示面は、光源部51の主面に対して所定のチルト角θだけ傾いている。換言すると、液晶表示装置1の表示面の垂線は、光源部51の光路(又は外光の光路)に対して所定のチルト角θだけ傾いている。チルト角θは、0°より大きくかつ45°以下であり、具体的には、10°以上かつ30°以下である。これにより、外光が液晶表示装置1によって反射された反射光は、液晶表示装置1の表示光と同じ方向には反射されず、
図14の破線で示す光路のように、光源部51の光路に対して角度2θの方向に反射される。この結果、液晶表示装置1の反射光に起因して表示特性が劣化するのを抑制できる。
【0061】
さらに、前述したように、本実施形態に係る液晶表示装置1は、TACフィルム12−1、12−2を用いて液晶層22の複屈折を低減しているので、広視野角を実現できる。よって、
図14に示すように、液晶表示装置1の表示面と光源部51の主面とを所定のチルト角θだけ傾けた場合でも、液晶表示装置1の表示特性が劣化するのを抑制できる。
【0062】
[4]比較例
次に、比較例に係る液晶表示装置について説明する。
図15は、比較例に係る液晶表示装置の構成を示す断面図である。
【0063】
比較例は、本実施形態のTACフィルム12−1、12−2を備えていない。すなわち、液晶パネル20の一方の主面には、位相差板11−1、及び偏光板10−1が積層され、液晶パネル20の他方の主面には、位相差板11−2、及び偏光板10−2が積層される。
【0064】
図16は、比較例に係る屈折率楕円体を説明する図である。
図16には、
図12と同様に、画面(上面)の垂線から斜め45°で透過する光に対する複屈折の様子が示されている。
図16には、オフ状態の液晶層の複屈折の様子が示される。
【0065】
比較例では、液晶層の複屈折が低減されない。このため、比較例に係る液晶表示装置は、本実施形態に比べて、広視野角を実現できない。
【0066】
図17は、比較例に係る視野角に応じたコントラスト比のシミュレーション結果である。
図13と
図17とを比較すると、本実施形態では、比較例に比べて、視野角が向上しているのが理解できる。
【0067】
[5]効果
以上詳述したように本実施形態では、液晶表示装置1は、垂直配向(VA)型である液晶パネル20と、液晶パネル20を挟むTACフィルム12−1、12−2と、TACフィルム12−1、12−2を挟む位相差板11−1、11−2と、位相差板11−1、11−2を挟む偏光板10−1、10−2とを備える。そして、オフ状態の液晶層22は、ポジティブCプレートから構成されるのに対して、TACフィルム12−1、12−2は、ネガティブCプレートから構成される。
【0068】
従って本実施形態によれば、液晶表示装置1の画面を斜めから見た場合に、TACフィルム12−1、12−2は、液晶層22の複屈折を低減するように機能する。これにより、オフ状態において液晶表示装置1の画面を斜めから見た場合に、液晶表示装置1の複屈折を低減できる。この結果、コントラスト比の視野角特性を向上させることができる。すなわち、オフ状態での表示(黒表示)がより改善されるため、コントラスト比を向上させることができる。
【0069】
なお、本明細書において、板やフィルムは、その部材を例示した表現であり、その構成に限定されるものではない。すなわち、位相差板は、板状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有するフィルムやその他の部材であっても良い。偏光板は、板状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有するフィルムやその他の部材であっても良い。TACフィルムは、フィルム状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有する層やその他の部材であっても良い。
【0070】
また、本実施形態に係る液晶表示装置は、ヘッドアップディスプレイ装置以外の様々な表示装置、特に、広視野角特性が望まれる様々な表示装置に適用できる。例えば、本実施形態に係る液晶表示装置は、テレビ、パーソナルコンピューター、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機器、カーナビゲーション装置、電子辞書、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、及び各種モニターなどに適用できる。
【0071】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。