【実施例1】
【0043】
本発明に係る実施例1の紙幣収納装置に搭載される紙幣収納機構100は、
図1および
図2に示すように、収納待機位置にある紙幣を図示せぬ紙幣収納部(
図19A等の紙幣収納部10を参照されたい。以下も同様のこと)内に押し込む紙幣押圧板110と、紙幣押圧板110全体の幅を拡げる紙幣押圧板幅拡大機構(以下、幅拡大機構と称す)120と、紙幣押圧板110の姿勢(収納待機位置にある紙幣の面と平行である姿勢、以下も同様とする)を維持したまま略鉛直方向へ移動させる往復機構130とを有し、従来と同様に駆動手段140によって駆動されるものである。
【0044】
紙幣押圧板110は、
図3Aおよび
図4Aに示すように、中央板111と、中央板111の左方に位置する左摺動板112と、中央板の右方に位置する右摺動板113とから構成されており、左摺動板112および右摺動板113がそれぞれ図示左右方向に移動することによって、紙幣押圧板110全体の幅が拡がるよう配設される。
【0045】
なお、
図2、
図4A、
図4B、
図7Aおよび
図7Bは、紙幣押圧板110全体が最も拡がった状態(以下、最大幅まで拡開した状態と称す)を示している。
【0046】
図3Bおよび
図4Bに示すように、左摺動板112は、その上部および下部において右方(図示左方)に凸設したガイド部材112a,112bを有し、右摺動板113の上部および下部において左方(図示右方)に凸設したガイド部材113a,113bを有する。
【0047】
また、中央板111の上部および下部には、左右方向に直線的に貫通するガイド通路111a,111bを形成している。
【0048】
そして、ガイド部材112a,112bをガイド通路111a,111bの左側(図示右側)から嵌挿し、同様に、ガイド部材113a,113bをガイド通路111a,111bの右側(図示左側)から嵌挿して、左摺動板112および右摺動板113が中央板111に対して左右方向に摺動自在であるように支承されて左右方向に直線的に拡がるようにしている。
【0049】
さらに、左摺動板112および右摺動板113は、付勢手段(引張スプリング)114によって常時中央板111側に付勢されるようにしている。
【0050】
幅拡大機構120は、中央板111背面の中央部において図示上下方向に摺動自在であるように支承される摺動部材121と、中央板111背面の左側(図示右側)において回動自在に連結される2つの左レバー122,123と、中央板111背面の右側(図示左側)において回動自在に連結される2つの右レバー124,125とから構成される。
【0051】
左レバー122,123は、略L字形状であって、L字の折れ部に形成した支点軸孔122a,123aと中央板111に形成した左支点軸部111c,111dとの係合により、中央板111に対して回動自在に支承されている。
【0052】
左レバー122,123の一方の端部には円柱形状の突起である摺動軸部122b,123bを形成し、摺動部材121の左側(図示右側)において形成した左右方向の長孔である左ガイド孔121a,121bに摺動軸部122b,123bを係合することによって、摺動軸部122b,123bが摺動部材121に対して左右方向に摺動自在に支承される。
【0053】
このような構成によると、摺動部材121の上方への移動に伴って、左レバー122,123が左支点軸部111c,111dを中心に左回り(図示右回り)に回転するので、左レバー122,123の他方の端部である羽部122c,123cが左支点軸部111c,111dを中心に左回りに枢動して左方(図示右方)に移動する。
【0054】
また、羽部122c,123cの先端は左摺動板112に当接しており、この当接部には羽部122c,123cの先端を案内する当接壁112c,112dを形成して、羽部122c,123cが当接壁112c,112dを押圧することによって、左摺動板112を左方に移動させるようにしている。
【0055】
摺動部材121に対する上方への押圧力が失われると、左摺動板112は付勢手段114の付勢力によって右方(図示左方)に付勢され、当接壁112c,112dが羽部122c,123cを右方に押圧する。
【0056】
すると、左レバー122,123が左支点軸部111c,111dを中心に右回り(図示左回り)に回転するとともに、羽部122c,123cが左支点軸部111c,111dを中心に右回りに枢動して右方(図示左方)に復帰して、左レバー122,123および左摺動板112は元の位置に復帰する。
【0057】
同様に、右レバー124,125は、略L字形状であって、L字の折れ部に形成した支点軸孔124a,125aと中央板111に形成した右支点軸部111e,111fとの係合により、中央板111に対して回動自在に支承されている。
【0058】
右レバー124,125の一方の端部には円柱形状の突起である摺動軸部124b,125bを形成し、摺動部材121の右側(図示左側)において形成した左右方向の長孔である右ガイド孔121c,121dに摺動軸部124b,125bを係合することによって、摺動軸部124b,125bが摺動部材121に対して左右方向に摺動自在に支承される。
【0059】
このような構成によると、摺動部材121の上方への移動に伴って、右レバー124,125が右支点軸部111e,111fを中心に右回り(図示左回り)に回転するので、右レバー124,125の他方の端部である羽部124c,125cが右支点軸部111e,111fを中心に右回りに枢動して右方(図示左方)に移動する。
【0060】
また、羽部124c,125cの先端は右摺動板113に当接しており、この当接部には羽部124c,125cの先端を案内する当接壁113c,113dを形成して、羽部124c,125cが当接壁113c,113dを押圧することによって、右摺動板113を右方(図示左方)に移動させるようにしている。
【0061】
摺動部材121に対する上方への押圧力が失われると、右摺動板113は付勢手段114の付勢力によって左方(図示右方)に付勢され、当接壁113c,113dが羽部124c,125cを左方に押圧する。
【0062】
すると、右レバー124,125が右支点軸部111e,111fを中心に左回り(図示右回り)に回転するとともに、羽部124c,125cが右支点軸部111e,111fを中心に左回りに枢動して左方(図示右方)に復帰して、右レバー124,125および右摺動板113は元の位置に復帰する。
【0063】
このように、摺動部材121の上方への移動に伴って、左摺動板112および右摺動板113を左右方向に移動させて紙幣押圧板110全体の幅を拡げ、摺動部材121の下方への復帰に伴って、左摺動板112および右摺動板113を中央板111の方向に移動させて紙幣押圧板110全体の幅を元に戻すようにしている。
【0064】
なお、
図3Bおよび
図4Bに示すように、左摺動板112の当接壁112c,112dおよび右摺動板113の当接壁113c,113dをそれぞれ緩やかな弧状面に形成すると、左摺動板112および右摺動板113の移動距離をより大きくすることができ、また、左摺動板112および右摺動板113が復帰する際に、付勢手段114の付勢力を左レバー122,123および右レバー124,125に伝えやすくすることができる。
【0065】
本実施例において、摺動部材121の上方への摺動移動は、
図3Cおよび
図4Cに示すように、摺動部材121の背面側において左右並列に形成した2つの突起部121e,121eの図示下面を上方に押し上げることによってなされ、各突起部121e,121eは、その下面において、後述する往復機構121の第2のリンクアーム133,133に設けた当接部133d,133dに当接するように設けられるものである。
【0066】
図5A、
図6Aおよび
図7Aは、紙幣収納機構100および駆動手段140において、左右に中心である位置での縦断面を右方から視た図である。
【0067】
本実施例における往復機構130は、
図5A、
図6Aおよび
図7Aに示すように、上記紙幣押圧板110を紙幣収納方向(図示左方)に移動させるための機構として、交叉した第1のリンクアーム132および第2のリンクアーム133からなるリンク機構131をそれぞれ2組有し、各リンク機構131を中央板111背面の短手方向(図示奥行方向)の左右対称に並列して配置してなる(なお、
図5A、
図6Aおよび
図7Aにおいては、図示奥行方向に並列して配置される2組のリンク機構131のうち、一方のリンク機構131のみ図示される)。
【0068】
2組のリンク機構131はそれぞれ、第1のリンクアーム132および第2のリンクアーム133の略中心に形成した長孔132a,133aに、図示奥行方向に嵌挿した中心軸(スタックシャフト)134によって連結しており、さらに、中心軸134の中央部には、後述する駆動手段140に当接するローラ(スタックローラ)135が回転自在であるように支承されている。
【0069】
第1のリンクアーム132および第2のリンクアーム133は、それぞれ一方の端部に設けた支点軸孔132b,133bを有する。
【0070】
支点軸孔132b,133bには、それぞれ図示せぬ紙幣処理装置本体内部に設けられた図示せぬ支持軸(円柱形状のボス)が嵌挿されており、これにより、第1のリンクアーム132および第2のリンクアーム133はそれぞれ、図示せぬ支点軸を中心にして回動自在に支持される。
【0071】
第1のリンクアーム132における他方の端部には、円柱状のボスであって中央板111に連結する軸部132cを設けており、この軸部132cは、中央板111背面の左右対称な位置に形成した軸孔111gに回転自在に支承される。
【0072】
また、第2のリンクアーム133における他方の端部には、円柱形状のボスであって中央板111に連結する軸部133cを設けており、この軸部133cは、中央板111背面の左右対称な位置に形成した長孔111hに沿って、中央板111の長手方向に摺動自在かつ回転自在に支承される。
【0073】
このような往復機構130によって、ローラ135が収納待機位置にある紙幣の面に対して鉛直方向に移動することによってリンク機構131が奥行方向(
図5Aにおける左右方向)に拡開し、紙幣押圧板110の姿勢を維持したまま、紙幣押圧板110をローラ135と同方向に移動させるようにしている。
【0074】
このローラ135は、
図5Aにおける図示上方に傾斜面141aを有するスタックアーム141と、スタックアーム141を図示上下方向に往復摺動させる図示せぬカムと、該カムを回動させる図示せぬ歯車機構および図示せぬモータとからなる駆動手段140によって駆動される。
【0075】
そして、スタック―アーム141が図示上方に移動すると、傾斜面141aがローラ135を押圧してローラ135が図示左方に移動するとともに、紙幣押圧板110が図示左方に移動するようにしている。
【0076】
さらに、第2のリンクアーム133の軸部133cにおける中央板111側には、
図5B、
図6Bおよび
図7Bに示す当接部133dを形成している。
【0077】
そして、この当接部133dを、軸部133cが待機位置である長孔111hの下端から一定距離以上上方に移動すると摺動部材121の突起部121e下面に当接するように設けて、当接部133dが摺動部材121の突起部121eを下面から押圧することによって、摺動部材121が上方に移動して幅拡大機構120を駆動するようにしている。
【0078】
したがって、幅拡大機構120は、紙幣押圧板110を略鉛直方向に往復移動させる往復機構130を駆動する駆動手段140の動力によって駆動することができる。
【0079】
また、往復機構130が駆動されて紙幣押圧板110が紙幣収納方向に移動する際に、紙幣押圧板110が所定の位置に到達するまで、すなわち、第2のリンクアーム133の軸部133cが長孔111h内を上方に移動して、当接部133dが摺動部材121の突起部121eに当接するまでは幅拡大機構120を駆動しないようにしている。
【0080】
なお、ここでいう所定の位置とは、紙幣押圧板110が図示せぬ紙幣受部を越えた位置を示すものとする。
【0081】
上述の如く構成した紙幣収納機構100の各部の作用を紙幣収納動作として説明する。
【0082】
図5Aおよび
図5Bに示す待機状態においては、駆動手段140におけるスタックアーム141の傾斜面141aがローラを押圧せず、紙幣押圧板110は閉じたままであって、紙幣押圧板110正面と図示せぬ紙幣受部(
図19Aおよび
図21A等の紙幣受部30,30’を参照されたい。以下も同様のこと)との間には紙幣搬送通路が形成されて、紙幣受入れ可能状態になっている。
【0083】
図示せぬ紙幣搬送手段によって、紙幣収納部に対向する収納待機位置に紙幣が搬送されると、駆動手段140が駆動し、スタックアーム141が
図5Aにおける上方へ移動を開始する。
【0084】
すると、
図6Aおよび6Bに示すように、スタックアーム141の傾斜面141aがローラ135を紙幣収納方向(
図6Aにおける図示左方)に押圧することによって、第1のリンクアーム132および第2のリンクアーム133は、支点軸孔132b,133bに嵌挿した図示せぬ支点軸を中心に回動し、紙幣押圧板110は紙幣収納方向に移動する。
【0085】
この際、第2のリンクアーム133の当接部133dは、摺動部材121の突起部121eに到達しておらず、紙幣押圧板110の幅は一定に保持されたままである。
【0086】
スタックアーム141がさらに上方に移動して、傾斜面141aがローラ135を紙幣収納方向に押圧すると、第2のリンクアーム133の当接部133dが、摺動部材121の突起部121eに当接し、幅拡大機構120が駆動される。
【0087】
すると、摺動部材121が上方に押圧されて移動し、左レバー122,123および右レバー124,125が、紙幣押圧板110の中央板111における左支点軸部111c,111dおよび右支点軸部111e,111fを軸に回転して、左摺動板112および右摺動板113が外側に押し拡げられる。
【0088】
さらに、
図7Aおよび
図7Bに示す最大移動位置に達すると、
図4Bに示すように紙幣押圧板110の最大幅まで拡開する。
【0089】
さらに、紙幣押圧板110が最大移動位置から復帰を開始すると、摺動部材121と当接部133dとが離れ、摺動部材121に対する上方への押圧力が失われると、左摺動板112および右摺動板113は付勢手段114の付勢力によって元の位置に復帰し、紙幣押圧板110の幅が待機状態に戻る。
【0090】
その後、紙幣押圧板110が
図5Aおよび
図5Bに示す待機状態の位置に戻って、再び紙幣搬送通路が形成され、紙幣収納方向に押し込まれた図示せぬ紙幣は、従来と同様に、図示せぬスタッカプレート(
図19Aおよび
図21A等のスタッカプレート11を参照されたい。以下も同様のこと)と図示せぬ紙幣受部の紙幣収納部側の面とに押圧挟持されて収納状態が保持される。
【0091】
以上の通り、本発明に係る実施例1の紙幣収納装置に搭載される紙幣収納機構100は、紙幣収納ミスを防ぐことが可能であり、なおかつ19A乃至
図21Cに示すような従来の紙幣収納機構20と置換えるだけなので従来の紙幣収納装置と比較して紙幣収納装置が大型化することがない。
【実施例2】
【0092】
本発明に係る実施例2の紙幣収納装置に搭載される紙幣収納機構200は、
図8乃至
図11に示すように、収納待機位置にある紙幣を図示せぬ紙幣収納部内に押し込む紙幣押圧板210と、紙幣押圧板210全体の幅を拡げる紙幣押圧板幅拡大機構(以下、幅拡大機構と称す)220と、紙幣押圧板の姿勢(収納待機位置にある紙幣の面と平行である姿勢、以下も同様とする)を維持したまま略鉛直方向へ移動させる往復機構230とを有し、従来と同様に駆動手段240によって駆動されるものである。
【0093】
紙幣押圧板210は、
図12Aおよび
図12Bに示すように、中央表板211と、中央表板211の背面側のそれぞれ左右に位置する左摺動板212および右摺動板213と、左摺動板212および右摺動板213のさらに背面側に位置する中央裏板214とから構成されており、左摺動板211および右摺動板212がそれぞれ図示左右方向に移動することによって、紙幣押圧板210全体の幅が拡がるように配設される。
【0094】
なお、
図10、
図11、
図14A、
図14B、
図17A、
図17B、
図17C、
図18A、
図18Bおよび
図18Cは、紙幣押圧板110全体が最も拡がった状態(以下、最大幅まで拡開した状態と称す)を示している。
【0095】
中央表板211と中央裏板214とは、左摺動板212および右摺動板213と後述する幅拡大機構220の構成部品とを挟み込むように配置され、中央表板211の連結部211a,211bと中央裏板214の連結部214a,214bとが係合して互いに固着されるものである。
【0096】
図13Aおよび
図14Aは、紙幣押圧板210および幅拡大機構220の正面図において、紙幣押圧板210の中央表板211を取り外した状態を示す図である。
【0097】
左摺動板212は、その上部および下部において右方に凸設したガイド部材212a,212bを有し、右摺動板213は、その上部および下部において左方に凸設したガイド部材213a,113bを有する。
【0098】
また、中央裏板214の上部および下部には、左右方向に直線的に貫通するガイド通路214c,214dを形成している。
【0099】
そして、ガイド部材212a,212bをガイド通路214c,214dの左側から嵌挿し、同様に、ガイド部材213a,213bをガイド通路214c,214dの右側から嵌挿して、左摺動板212および右摺動板213が中央裏板214に対して左右方向に摺動自在であるように支承されて、左右方向に直線的に拡がるようにしている。
【0100】
幅拡大機構220は、
図12Aおよび
図12Bに示すように、2つの左レバー221,222と、左従動部材223と、2つの右レバー224,225と、右従動部材226と、摺動部材227とから構成される。
【0101】
また、左レバー221および右レバー224と、左レバー222および右レバー225と、左従動部材223および右従動部材226とは、それぞれ左右対称の形状であって、かつ左右対称に配置される。
【0102】
左レバー221,222は、略L字形状であって、L字の折れ部に形成した支点軸孔221a,222aを、中央裏板214の正面側に形成した左支点軸部214e,214fに係合することにより、中央裏板214の正面側において左支点軸部214e,214fを中心に回動自在に支承されている。
【0103】
左レバー221,222正面側の一方の端部には円柱形状の突起である摺動軸部221b,222bを形成し、左摺動板212に形成した長手方向(上下方向)の長孔であるガイド孔212c,212dに摺動軸部221b,222bを係合することによって、摺動軸部221b,222bが左摺動板212に対して上下方向に摺動自在に支承される。
【0104】
すると、
図13Aに示す待機状態から、左レバー221,222が左回りに回転すると、
図14Aに示すように、摺動軸部221b,222bがガイド孔212c,212d内を上端から下方に移動するとともに、左摺動板212が左方に移動する。
【0105】
また、左レバー221,222正面側の他方の端部には円柱形状の突起であって左従動部材223に係合する従動軸部221c,222cを形成している。
【0106】
左従動部材223は、左レバー221,222の正面側に配置され、上下の各端部に形成した軸孔223a,223bに左レバー221,222の従動軸部221c,222cを係合して、左レバー221,222が、従動軸部221c,222cを中心に回動自在であるように連結している。
【0107】
なお、左従動部材223の軸孔223a,223b間の距離は、中央裏板214の左支点軸部214e,214f間の距離と同一であるように設けているので、左従動部材の軸孔223a,223b間を結ぶ線と左支点軸部214e,214f間を結ぶ線とは常に平行関係を保つ。
【0108】
すると、2つの左レバー221,222の回転角度は常に同一となるので、左摺動板212は、その姿勢を維持しながら左右方向に直線的に往復移動することができる。
【0109】
右レバー224,225は、
図12Aおよび
図12Bに示すように、左レバー221,222と左右対称の略L字形状であって、L字の折れ部に形成した支点軸孔224a,225aを、中央裏板214の正面側に形成した右支点軸部214g,214hに係合することにより、中央裏板214の正面側において右支点軸部214g,214hを中心に回動自在に支承されている。
【0110】
右レバー224,225正面側の一方の端部には円柱形状の突起である摺動軸部224b,225bを形成し、右摺動板213に形成した長手方向(上下方向)の長孔であるガイド孔213c,213dに摺動軸部224b,225bを係合することによって、摺動軸部224b,225bが右摺動板213に対して上下方向に摺動自在に支承される。
【0111】
すると、
図13Aに示す待機状態から、右レバー224,225が右回りに回転すると、
図14Aに示すように、摺動軸部224b,225bがガイド孔213c,213d内を上端から下方に移動するとともに、右摺動板213が左方に移動する。
【0112】
また、右レバー224,225正面側の他方の端部には円柱形状の突起であって右従動部材226に係合する従動軸部224c,225cを形成している。
【0113】
右従動部材226は、右レバー224,225の正面側に配置され、上下の各端部に形成した軸孔226a,226bに右レバー224,225の従動軸部224c,225cを係合して、右レバー224,225が、従動軸部224c,225cを中心に回動自在であるように連結している。
【0114】
なお、右従動部材の軸孔226a,226b間の距離は、右支点軸部214g,214h間の距離と同一であるように設けているので、右従動部材の軸孔226a,226b間を結ぶ線と左支点軸部214g,214h間を結ぶ線とは常に平行関係を保つ。
【0115】
すると、2つの右レバー224,225の回転角度は常に同一となるので、右摺動板213は、その姿勢を維持しながら左右方向に直線的に往復移動することができる。
【0116】
そして、上記左レバー221,222および右レバー224,225は、摺動部材227が、左従動部材226および右従動部材223を作動することによって回動するものである。
【0117】
摺動部材227は、
図12Aおよび
図12Bに示すように、左摺動板212および右摺動板213の背面側であって中央裏板214中央に形成した矩形の切欠部214i内に配置される。
【0118】
摺動部材227の左右側部には、それぞれ凹溝(スリット)227a,227bを設けており、この凹溝227a,227bは、中央裏板214の切欠部214iの長手方向縁において、それぞれ内側に向かって形成したリブ状レール214j,214kと係合する。
【0119】
そして、リブ状レール214j,214k上を凹溝227a,227bが摺動することによって、中央裏板214に対して摺動部材227が図示上下方向に摺動自在であるように支承される。
【0120】
また、摺動部材227の正面側には、それぞれ左右対称に設けた円柱形状のガイド突起227c,227dを形成し、それぞれ左従動部材223および右従動部材226の背面において略L字形状に形成したガイド溝223c,226cに係合する。
【0121】
図13B、
図14Bおよび
図14Cは、中央表板211、左摺動板212、右摺動板213、左レバー221,222、左従動部材223、右レバー224,225、および右従動部材226を示すとともに、摺動部材227のガイド突起227c,227dの位置を示した背面図である。
【0122】
摺動部材227が上方に移動すると、ガイド突起227c,227dがガイド溝223c,226cの外側の壁を形成する当接壁223d,226dを押圧して、左従動部材223および右従動部材226が上方かつ左右方向に移動する。
【0123】
すると、左レバー221,222が左支点軸孔221a,222aに枢着される中央裏板214の左支点軸部214e,214f(
図14A等参照)を中心に左回り(
図14Bにおける図示右回り)に枢動するとともに、右レバー224,225が右支点軸孔224a,225aに枢着される中央裏板214の左支点軸部214g,214h(
図14A等参照)を中心に右回り(
図14Bにおける図示左回り)に枢動する。
【0124】
この際、左レバー221,222の摺動軸部221b,222b(
図14A等参照)が、左摺動板212のガイド孔212c,212dに沿って下方に移動しながら左方に拡開して、左摺動板212が左方に移動し、同時に、右レバー224,225の摺動軸部224b,225b(
図14A等参照)が、右摺動板213のガイド孔213c,213dに沿って下方に移動しながら右方に拡開して、右摺動板213が右方に移動する。
【0125】
このように、摺動部材227の上方への移動に伴って、左摺動板212および右摺動板213を左右方向に移動させて、紙幣押圧板210全体の幅を拡げるようにしている。
【0126】
さらに、
図14Bに示すように、摺動部材227が上方に移動すると、左レバー221,222の摺動軸部221b,222bおよび右レバー224,225の摺動軸部224b,225bの拡開に伴って、左従動部材223と右従動部材226とが、それぞれ左右方向に移動する。
【0127】
すると、ガイド溝223cの左側(図示右側)の壁を形成する当接壁223d上部と、ガイド溝226cの右側(図示左側)の壁を形成する当接壁226d上部との間に、摺動部材227の突起部227c,227dが入り込む。
【0128】
当接壁223d,226d上部は上下に直線的に形成されるので、摺動部材227の突起部227c,227dがガイド溝223c,226dの上端に到達するまでの間、
図14Cに示すように、当接壁223d,226dと突起部227c,227dとが互いに押圧し合いながら、従動部材223,226間の距離が保たれ、左レバー221,222および右レバー224,225の拡開状態が維持される。
【0129】
本実施例において、摺動部材227の上方への摺動移動は、
図12Aに示すように、摺動部材227の背面側において形成した左右方向に貫通する長孔227e,227fを、後述する第3のリンクアーム228(
図18A等参照)を介して駆動手段240が上方に引上げることによってなされるものである。
【0130】
また、
図13Aおよび
図14Aに示す中央裏板214の上部と摺動部材227とは、互いに図示せぬ付勢手段(引張スプリング)によって連結し、摺動部材227が常時下方に付勢されるようにしている。
【0131】
したがって、摺動部材227に対する上方への引上げ力が失われると、摺動部材227が下方に復帰し、同様に、左レバー221,222、左従動部材223、右レバー224,225および右従動部材226が待機位置に復帰する。
【0132】
さらに、
図12Aに示すように、紙幣押圧板210の中央裏板214の背面側には、後述する往復機構230(
図18A等参照)を連結するためであって、左右方向に貫通する軸孔214l,214mおよび長孔214n,214oを設けている。
【0133】
図15B、
図16B、
図17Bおよび
図18Bは、摺動部材227の長孔227fを通る縦断面を右方から視た図である。
【0134】
本実施例における往復機構230は、
図15A乃至
図18Cに示すように、紙幣押圧板210の中央裏板214の背面側に位置し、左右対称に並行して配置される2組のリンク機構231,231’を具える。
【0135】
リンク機構231は、交叉した第1のリンクアーム232および第2のリンクアーム233を具え、また、リンク機構231’は、交叉した交叉した第1のリンクアーム232’および第2のリンクアーム233’を具える。
【0136】
これら2組のリンク機構231,231’は、それぞれ第1のリンクアーム232,232’
および第2のリンクアーム233,233’の略中心に形成した長孔232a,232a’233a,233a’に、左右方向に嵌挿した中心軸(スタックシャフト)234によって連結しており、さらに、中心軸234の左右中央部には、後述する駆動手段240に当接するローラ(スタックローラ)235が回動自在であるように支承されている。
【0137】
第1のリンクアーム232,232’および第2のリンクアーム233,233’は、それぞれ一方の端部に設けた支点軸孔232b,232b’,233b,233b’を有する。
【0138】
支点軸孔232b,232b’,233b,233b’には、それぞれ図示せぬ紙幣処理装置本体内部に設けられた図示せぬ支持軸(円柱形状のボス)が嵌挿されており、これにより、第1のリンクアーム232,232’および第2のリンクアーム233,233’はそれぞれ、図示せぬ支点軸を中心にして回動自在に支持される。
【0139】
第1のリンクアーム232,232’における他方の端部には、円柱形状のボスであって紙幣押圧板210の中央裏板214に連結する軸部232c,232c’を設けており、この軸部232c,232c’は、中央裏板214背面の左右対称な位置に形成した軸孔214l,214mに回転自在に支承される。
【0140】
また、第2のリンクアーム233,233’における他方の端部には、円柱形状のボスであって紙幣押圧板210の中央裏板214に連結する軸部233c,233c’を設けており、この軸部233c,233c’は、中央裏板214背面の左右対称な位置に形成した長孔214n,214oに沿って、中央裏板214の長手方向に摺動自在かつ回転自在に支承される。
【0141】
このような往復機構230によって、ローラ235が収納待機位置にある紙幣の面に対して鉛直方向に移動することによってリンク機構231,231’が奥行方向(
図15A等における左右方向)に拡開し、紙幣押圧板210の姿勢を維持したまま、紙幣押圧板210をローラ235と同方向に移動させるようにしている。
【0142】
このローラ235は、
図16B等における図示上方に傾斜面241aを有するスタックアーム241と、スタックアーム241を図示上下方向に往復摺動させる図示せぬカムと、該カムを回動させる図示せぬ歯車機構および図示せぬモータとからなる駆動手段240によって駆動される。
【0143】
そして、スタック―アーム241が図示上方に移動すると、傾斜面241aがローラ235を押圧してローラ235が図示左方に移動するとともに、紙幣押圧板210が図示左方に移動するようにしている。
【0144】
なお、中央表板211と図示せぬ装置本体とは、互いに図示せぬ付勢手段(引張スプリング)によって連結し、紙幣押圧板210を常時背面側に付勢して、スタックアーム241の傾斜面241aによるローラ235への押圧力が失われると、紙幣押圧板210が図示右方に復帰するようにしている。
【0145】
さらに、スタックアーム241の上端と、摺動部材227とは、第3のリンクアーム228によって連結する。
【0146】
第3のリンクアーム228は、
図17Aおよび
図17Bに示すように左右に突出した円柱形状の摺動軸部228a,228a’を一端に有し、摺動軸部228a,228a’が、摺動部材227の長孔227e,227fに係合することによって、摺動部材227に対して摺動自在かつ回動自在に連結される。
【0147】
他方、第3のリンクアーム228の他端に設けた軸部228bと、スタックアーム241上端に設けた軸部241bとの係合によって、第3のリンクアーム228はスタックアーム241に対して回転自在に連結される。
【0148】
このように構成することによって、スタックアーム241の上方への移動に伴って、第3のリンクアーム228を介して摺動部材227を上方に引上げるようにしている。
【0149】
この際、待機状態において、第3のリンクアームの摺動軸部228a,228a’が、摺動部材227の長孔227e,227fの下端に位置するように設け、スタックアーム241の移動開始から、摺動軸部228a,228a’が長孔227e,227fの上端に到達して摺動部材227が移動を開始するまでの間は、幅拡大機構220を駆動しないようにしている。
【0150】
上述の如く構成した紙幣収納機構220の各部の作用を紙幣収納動作として説明する。
【0151】
図15A乃至
図15Cに示す待機状態においては、紙幣押圧板210は閉じたままであって、紙幣押圧板210正面と図示せぬ紙幣受部との間には紙幣搬送通路が形成されて、紙幣受入れ可能状態になっている。
【0152】
図示せぬ紙幣搬送手段によって、紙幣収納部に対向する収納待機位置に紙幣が搬送されると、駆動手段240が駆動し、スタックアーム241が
図16Aにおける上方へ移動を開始する。
【0153】
すると、
図16Bに示すように、スタックアーム241の傾斜面241aがローラ235を紙幣収納方向(
図16Bにおける図示左方)に押圧することによって、第1のリンクアーム232,232’および第2のリンクアーム233,233’は、支点軸孔232b,232b’,233b,233b’に嵌挿した図示せぬ支点軸を中心に回動し、紙幣押圧板210は紙幣収納方向に移動する。
【0154】
この際、第3のリンクアーム228が、スタックアーム241とともに上方に移動し、第3のリンクアーム228の摺動軸部228a,228a’が摺動部材227の長孔227e,227fにおける上端に到達する。
【0155】
なお、リンクアーム228の摺動軸部228a,228a’は、紙幣押圧板110が図示せぬ紙幣受部を越えた位置で、摺動部材227の長孔227e,227fにおける上端に到達する。
【0156】
この時点では、摺動部材227は上方へ移動を開始しておらず待機位置にあるので、
図13A、
図13Bおよび
図16Cに示すように、紙幣押圧板210の幅は一定に保持されたままである。
【0157】
図17Aおよび
図17Bに示すように、スタックアーム241がさらに上方に移動して、傾斜面241aがローラ235を紙幣収納方向に押圧するとともに、第3のリンクアーム228が上方に引上げられると、さらに紙幣押圧板210が図示左方に移動するとともに、第3のリンクアームの摺動軸部228a,228a’が摺動部材227を上方に引上げて幅拡大機構220が駆動される。
【0158】
すると、
図14A、
図14Bおよび
図17Cに示すように、摺動部材227のガイド突起227c,227dによって、左従動部材223および右従動部材226が上方かつ外側に押上げられて、左レバー221,222および右レバー224,225が、紙幣押圧板210の中央裏板214における左支点軸部214e,214fおよび右支点軸部214g,214hを軸に回転して、左摺動板212および右摺動板213が外側に押し拡げられる。
【0159】
このように幅拡大機構220は、紙幣押圧板210が最大移動位置に達する前に、紙幣押圧板210が最大幅まで拡開する。
【0160】
その後、スタックガイド241が、
図18A乃至
図18Cに示す最大移動位置に達するまで、
図14Cに示すように幅拡大機構220は紙幣押圧板210を最大幅まで拡開した状態を維持する。
【0161】
最大移動位置に到達後、スタックガイド241および第3のリンクアーム228は下方へ移動を開始し、紙幣押圧板210および摺動部材227は図示せぬ付勢手段の付勢力によって最大移動位置から復帰を開始する。
【0162】
すると、左摺動板212および右摺動板213は元の位置に復帰し、紙幣押圧板210の幅が待機状態に戻る。
【0163】
その後、紙幣押圧板210が
図15A乃至
図15Cに示す待機状態の位置に戻って、再び紙幣搬送通路が形成され、紙幣収納方向に押し込まれた図示せぬ紙幣は、従来と同様に、図示せぬスタッカプレートと図示せぬ紙幣受部の紙幣収納部側の面とに押圧挟持されて収納状態が保持される。
【0164】
以上の通り、本発明に係る実施例2の紙幣収納装置に搭載される紙幣収納機構200は、紙幣収納ミスを防ぐことが可能であり、なおかつ19A乃至
図21Cに示すような従来の紙幣収納機構20と置換えるとともに、従来のスタックアーム51をスタックアーム241と第3のリンクアーム228とに置換えるだけなので、従来と比較して紙幣収納装置が大型化することがない。
【0165】
また、実施例2の紙幣収納装置では、スタックガイド241が最大移動位置に到達するより前に紙幣押圧板210を最大幅まで拡げることにより、実施例1より早く紙幣を広げ、紙幣を拡げている時間を長く確保することができるので、さらに紙幣収納ミスを防ぐことができる。
【0166】
以上、2つの実施例において説明したように、本発明の紙幣収納機構は、紙幣押圧板を略鉛直方向に往復移動させる往復機構の駆動力を利用し、紙幣押圧板の往復移動に伴って紙幣押圧板全体の幅を拡開するようにしている。
【0167】
紙幣押圧板は、待機状態から紙幣受部の位置を通過するまではその幅を一定に保持し、紙幣受部を通過した後の所定の位置において拡開するので、紙幣押圧板と紙幣受部とが衝突する虞はない。
【0168】
したがって、紙幣押圧板が紙幣を押圧する際に確実に紙幣を拡げることができるので、柔らかい紙幣や幅が通常よりも広い紙幣であっても、紙幣収納時における紙幣の収納ミスを抑えることができる。
【0169】
この際、紙幣押圧板の最大移動距離を大きくする必要がないので、紙幣収納機構を搭載する紙幣処理装置全体の大型化や紙幣収納部における紙幣の収納可能枚数の減少を招くことなく上記効果が得られるものである。
【0170】
また、設計を困難にし、紙幣収納機構の大型化を招くような、新規部材や複雑な制御を追加する必要もない。
【0171】
さらに、上記各実施例において、一種類の紙幣について説明してきたが、本発明の紙幣収納機構は、ユーロ紙幣や中国の紙幣のように金種によって複数の幅の異なる紙幣を混在収納する紙幣処理装置においても有効である。
【0172】
従来の紙幣収納機構の場合、紙幣幅が大きい紙幣を紙幣受部から紙幣収納部へ収納するための紙幣押圧板の最大移動距離は、単一金種のものよりも長くする必要があった。
【0173】
しかしながら、本発明の紙幣収納機構を適用すれば、紙幣押圧板の最大移動距離を抑えながら、紙幣幅の大きい紙幣を確実に広げて収納できるという効果を得ることができる。
【0174】
なお、本発明の紙幣収納機構の構成は、上記に示した各実施例に限定されるものではない。
【0175】
たとえば、各実施例においては左右レバーを中央板に対して軸止する構成としたが、摺動部材に対して軸止するとともに、中央板に長孔を形成して、該長孔内を摺動自在かつ回動自在に連結する構成としてもよく、当然、軸と穴との関係は反対であってもよい。
【0176】
また、実施例1においては摺動部材によって左右レバーを直接回動させる構成であるのに対し、実施例2においては従動部材を介して回動させる構成を示しているが、各部材の連結方法や介在する部材の数に制限はない。
【0177】
また、摺動部材を駆動する方法として、実施例1においては第2のリンクアームの当接部によって摺動部材を下方から押圧する構成であるのに対し、実施例2においてはスタックアームと摺動部材とを第3のリンクアームによって連結して摺動部材を上方に引上げる構成を示しているが、実施例2の摺動部材を実施例1のように第2のリンクアームの当接部によって摺動部材を下方から押圧する構成とすることも可能である。
【0178】
このように構成した場合、実施例2の紙幣押圧板は収納機構が最大限移動した位置で、紙幣押圧板を最大幅まで開くようになる。
【0179】
なお、これまで本発明に係る紙幣収納機構について、紙幣処理装置に搭載することを前提として説明してきたが、本発明の紙幣収納機構は、紙幣処理装置に搭載されたものに限定されるものでなく、紙幣収納装置を具えた装置であればどんなものであってもよく、また、紙幣収納装置単体であってもよい。