(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1軸受と前記第2軸受との間に配され、前記パターンロールおよび前記アンビルロールの軸芯間距離を調整するロール間調整ブロックを備える請求項1に記載の加工装置。
前記加熱設定温度は、前記ヒータによる加熱をせずに前記パターンロールと前記アンビルロールとを稼働したときの前記軸受の最高到達温度よりも高い温度である請求項1〜8のいずれか1項に記載の加工装置。
パターンロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第1軸受と、前記一対の第1軸受と対向する位置に配されていてアンビルロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第2軸受とを有し、前記第1軸受および前記第2軸受の少なくとも一方に温度センサとヒータとを備えた加工装置を用いて、前記パターンロールと前記アンビルロールとの間に被加工物を挟んで、前記パターンロールと前記アンビルロールとを回動することにより前記被加工物を加工する加工方法であって、
前記第1軸受および前記第2軸受のそれぞれの温度を、加熱をせずに前記パターンロールと前記アンビルロールとを稼働したときの前記第1軸受および前記第2軸受の最高到達温度よりも高い温度である加熱設定温度に維持するように温度制御を行う、加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る加工装置の好ましい一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1および
図2において、水平面内で後述する各回動軸の軸芯と平行な方向をX方向、水平面内で各回動軸の軸芯と直交する方向をY方向、鉛直方向をZ方向とする。
図1および
図2に示すように、加工装置10は、パターンロール20とアンビルロール30とを有する。パターンロール20の第1回動軸21は、パターンロール20を挟んで、一対の第1軸受41(41A、41B)に回動自在に支持されている。アンビルロール30の第2回動軸31は、アンビルロール30を挟んで、一対の第2軸受61(61A、61B)に回動自在に支持されている。第1、第2回動軸21、31のそれぞれの一方端には図示はしていない駆動軸が接続されている。
パターンロール20の第1回動軸21とアンビルロール30の第2回動軸31とを平行にかつパターンロール20の周面とアンビルロール30の周面との距離を一定に維持するようにして、上記各軸受で回動自在に支持されている。
【0010】
それぞれの対向する第1軸受41と第2軸受61との間には、ロール間調整ブロック81(81A、81B)が備えられている。具体的には、第1軸受41と、第2軸受61が支持固定されている支持体下部111の上面111Sとの間にロール間調整ブロック81が挟持されている。上面111Sは,水平かつ平滑になされている。支持体110の詳細については後述する。この場合、ロール間調整ブロック81の下面81Dは支持体下部111の上面111Sと接触することになる。ロール間調整ブロック81は、1対の第1、第2軸受41、61のどちらか一方の第1、第2軸受41、61間に配されていてもよいが、両方の第1、第2軸受41、61間に配されていれば、ロール間の微調整がさらに容易になる。なお、第2軸受61の第2ハウジング64の上面が支持体下部111の上面111Sより第2ハウジング64の上面が露出している場合には、第2ハウジング64の上面を用いる。この場合、第2ハウジング64の上面は水平かつ平滑になされている。
【0011】
第1軸受41のそれぞれには、その温度を測定する第1温度センサ51(51A、51B)が配されている。同様に、第2軸受61のそれぞれには、その温度を測定する第2温度センサ71(71A、71B)が配されている。
また第1軸受41には、第1軸受41をそれぞれに加熱する第1ヒータ52(52A、52B)が配されている。同様に、第2軸受61には、第2軸受61をそれぞれに加熱する第2ヒータ72(72A、72B)が配されている。
上記温度センサおよびヒータは、第1温度センサ51と第1ヒータ52、および第2温度センサ71と第2ヒータ72のどちらか一方のみであってもよいが、上記のように両方を有することがより好ましい。
【0012】
さらに第1軸受41および第2軸受61の温度を加熱設定温度に維持する温度制御器101を備えている。この温度制御器101は、第1温度センサ51(51A、51B)で測定した第1軸受41のそれぞれの温度に基づいて第1軸受41の加熱を第1ヒータ52(52A、52B)に指示する。それとともに、第2温度センサ71(71A、71B)で測定した第2軸受61のそれぞれの温度に基づいて第2軸受61の加熱を第2ヒータ72(72A、72B)に指示するものである。
具体的には、温度制御器101は、第1、第2温度センサ51、71の温度測定信号を受けて、加熱設定温度との比較を行う。温度測定信号が加熱設定温度よりも低い場合には、測定した温度が低かった軸受のヒータ(第1、第2ヒータ51、71のいずれか一方、または両方)に電力を供給する図示していない電源をON状態にして、軸受を加熱する。温度測定信号が加熱設定温度よりも高い場合であっても、電源がON状態になっている場合には、電源をOFF状態にする。一方、電源がOFF状態になっている場合には、温度測定信号が加熱設定温度よりも低い場合を除いてOFF状態を維持する。温度センサから温度制御器への温度測定信号の伝達は、無線であっても、有線であってもよい。また、ヒータの電源への指示も有線であっても、無線であってもよい。図示例では、第1温度センサ51、第1ヒータ52、第2温度センサ71、第2ヒータ72のそれぞれと温度制御器101とは配線102、103、104、105で接続されている。なお、温度制御器101内にヒータを加熱するための電力を供給する電源を備えていても好ましい。この場合、温度制御器101内で電源にON、OFFを指示することになる。
【0013】
以下、上記構成部材について、具体的に説明する。
パターンロール20は、例えば、2枚のシート間の接合(シール)や、シート材や弾性部材の切断に用いる加工ロールである。この加工ロールは、ロール周面に、例えば、エンボスパターンや切断パターンが配されたロールであり、例えば炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等で構成されている。
アンビルロール30は、ロール周面が滑らかな円周面で構成されたロールであり、パターンロール20に対向配置されており、例えば炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等で構成されている。
【0014】
パターンロール20の第1回動軸21は、パターンロール20の両側で一対の第1軸受41A、41Bにより回動自在に支持されている。アンビルロール30の第2回動軸31は、アンビルロール30の両側で一対の第2軸受61A、61Bにより回動自在に支持されている。
【0015】
第1軸受41は、第1軸受本体43と、第1軸受本体43の周囲に配した第1ハウジング44とを有している。第2軸受61も第1軸受41と同様の構成を成し、第2軸受本体63と、第2軸受本体63の周囲に配した第2ハウジング64とを有している。第1、第2ハウジング44、64ともに、第1、第2軸受本体43、63を装着しやすくするために、YZ面で2分割可能にされていることが好ましい(
図5参照。)。なお、第1、第2ハウジング44、64は、第1、第2軸受本体43、63を装着した後、ボルト締め、溶接、圧入による固定等によって一体にされている。
【0016】
図3に示すように、第1軸受本体43は、転がり軸受であり、外側軌道輪45、内側軌道輪46、保持器47および複数の玉またはころからなる転動体48で構成されている。同様に、
図4に示すように、第2軸受本体63も転がり軸受であり、外側軌道輪65、内側軌道輪66、保持器67および複数の玉またはころからなる転動体68で構成されている。なお、アンビルロール30の第2回動軸31を受ける第2軸受61は、第1軸受41よりも大きなラジアル荷重がかかるので、転動体68を複数列(図示例では2列)に配列したものを用いることも好ましい。
通常、軸受の各軌道輪には、高炭素クロム軸受鋼が用いられる。例えば、SUJ2(JIS G4805:2008 高炭素クロム軸受鋼鋼材)が挙げられる。高炭素クロム軸受鋼は熱伝導率が46W/mKであり、熱伝導性がよい。
【0017】
また、
図1および
図2に示すように、第1ハウジング44は、第1軸受本体43の外側軌道輪45を固定する筐体である。例えば、第1ハウジング44の内側には外側軌道輪45が、固定手段によって固定されていることが好ましい。この固定手段としては、焼嵌めによる固定、ボルト締めによる固定等が挙げられる。
【0018】
また第1ハウジング44は、台座100に立設固定された支持体110の両側部に配された2本の平行なレールからなるガイドレール120に対して、昇降自在に配されている。具体的には、第1軸受41に装着される第1回動軸21に直交する第1ハウジング44の両面には、第1ハウジング44をガイドレール120にそって昇降自在に摺動させるためのフランジ状のガイド49(49A、49B)が一体に配されている(
図5も併せて参照)。このガイド49には、第1回動軸21を遊挿可能に通すための開口部50が配されている。そして、ガイド49の対向する両端辺側でそれぞれのガイドレール120を挟み込むようにして、第1ハウジング44が,上昇方向(矢印A方向)および下降方向(矢印B方向)に摺動可能になっている。したがって、ガイドレール120の側面の3面を、対向して配されたガイド49の対向面とその間の第1ハウジング44の1面で摺動するため、ぐらつくことなく、安定した摺動が可能になる。なお、第1ハウジング44がぐらつくことなく安定して昇降するのであれば、第1ハウジング44の昇降動作は摺動でなくともよい。
このように、第1ハウジング44の安定した摺動による昇降動作が可能であることから、第1ハウジング44の昇降動作において横ブレを発生することがない。そのため、ロール間調整ブロック81による微調整によりわずかな昇降も安定した状態で行えるので、ロール間隔の微調整を精度高く行うことができる。
【0019】
上記支持体110は、台座100上に固定され、第2軸受61が固定される支持体下部111とその上部に配した枠体112とからなり、枠体の内側の両側部にガイドレール120を配したものである。または、枠体112自体がガイドレール120を構成したものであってもよい。このように、上記ガイドレール120は、上記支持体110と一体に構成されていても、別体であってもよい。また、ガイドレール120は、四角柱状に限定されることはなく、上記第1ハウジング44を昇降可能にするものであれば、断面H形の柱状体、円柱状体、多角柱状体等であってもよい。
さらに、支持体下部111と枠体112は一体に構成されていることが支持体110の剛性を高める観点から好ましい。
【0020】
第2ハウジング64は、第2軸受本体63の外側軌道輪65を固定する筐体である。例えば、第2ハウジング64の内側に、外側軌道輪65が固定手段によって固定されていることが好ましい。この固定手段としては、焼嵌めによる固定、ボルト締めによる固定等が挙げられる。
【0021】
また第2ハウジング64は、台座100に固定された支持体下部111に取り付けられて固定されている。すなわち、第2ハウジング64は、支持体下部111を介して、台座100に固定されている。第2ハウジング64には、第2ハウジング64を支持体下部111に取り付け易くするためのフランジ69が配されていることが好ましい。すなわち、第2ハウジング64内に第2軸受本体63が固定され、第2ハウジング64の一面に固定されたフランジ69によって支持体下部111に固定されている。第2ハウジング64にフランジ69を固定する手段としては、ボルト締め、溶接、圧入による固定等がある。もちろん、第2ハウジング64とフランジ69とを一体に構成してもよい。また、フランジ69を支持体下部111に固定する手段として、ボルト締め、溶接、圧入による固定等がある。なお、第2ハウジング64は台座100に直接固定されていてもよい。また第2ハウジング64を固定した支持体下部111は、第2ハウジング64上にも構成されている。すなわち、第2ハウジング64は支持体下部111を貫通するようにして、フランジ69を介して支持体下部111に固定されている。
【0022】
上記第1ハウジング44上には、第1ハウジング44(第1軸受41)を第2ハウジング64(第2軸受61)方向、すなわち、下方に一定の圧力で押圧する加圧部130を備えている。加圧部130は、被加工物に所望の加工を施すことが可能な圧力を矢印P方向に印加することが好ましい。例えば、その圧力は、シリンダー径80mmとした場合、0.1MPa以上であり、好ましくは1.0MPa以上であり、より好ましくは2.0MPa以上である。そして10.0MPa以下であり、好ましくは8.0MPa以下であり、より好ましくは5.0MPa以下である。具体的には、0.1MPa以上10.0MPa以下であり、好ましくは1.0MPa以上8.0MPa以下であり、より好ましくは2.0MPa以上5.0MPa以下である。加圧部130の加圧力が上記下限値以上であることによって、十分な加工を行うことができる。また加圧部130の加圧力が上記上限値以下であることによって、被加工物に切れや破損を生じる虞がない。
【0023】
第1回動軸21は、各第1軸受41が装着される側よりパターンロール20が装着される側が太く構成されている。その段差部22と各第1軸受41との間の第1回動軸21にはパターンロール20に対して各第1軸受41を位置決めするスペーサ23がそれぞれに装着されている。このスペーサ23は、各第1ハウジング44が第1回動軸21に直接接触するのを防ぐものである。第1軸受本体43はスペーサ23によってパターンロール20からの位置が決められて、第1回動軸21の所定の位置に固定されている。
同様に、第2回動軸31は、各第2軸受61が装着される側よりアンビルロール30が装着される側が太く構成されている。その段差部32と各第2軸受61との間の第2回動軸31にはアンビルロール30に対して各第2軸受61を位置決めするスペーサ33がそれぞれに装着されている。このスペーサ33は、各第2ハウジング64が第2回動軸31に直接接触するのを防ぐものである。第2軸受本体63はスペーサ33によってアンビルロール30からの位置が決められて、第2回動軸31の所定の位置に固定されている。
【0024】
第1温度センサ51は、第1ヒータ52が配されている第1軸受41の第1ハウジング44に設けられた図示していない穴内への圧入またはボルト固定により配されている。第1温度センサ51は、第1ハウジング44の下部、すなわち第2軸受61寄りに配されていることが好ましい。同様に、第2温度センサ71は、第2ヒータ72が配されている第2軸受61の第2ハウジング64に設けられた図示していない穴内への圧入またはボルト固定により配されている。第2温度センサ71は、第2ハウジング64の上部、すなわち第1軸受41寄りに配されていることが好ましい。または、第1温度センサ51は、第1ヒータ52が配されている第1軸受41の第1ハウジング44の下部表面に貼りつけて配されてもよい。同様に、第2温度センサ71は、第2ヒータ72が配されている第2軸受61の第2ハウジング64の上部表面に貼りつけて配されてもよい。第1、第2温度センサ51、71としては、クロメル(登録商標)アルメル(登録商標)熱電対、銅コンスタンタン熱電対等が挙げられる。また、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ等が挙げられる。特にクロメルアルメル熱電対は、−200℃から1000℃程度まで、熱起電力が温度に対して線形性を有しているので好ましい。第1、第2温度センサ51、71をハウジングに貼り付ける場合、貼りつけには、熱伝導性接着剤、粘着テープ等を用いることができる。また、温度センサのセンシング部分は断熱材で被覆されていることが好ましい。断熱材で被覆されていることで、外部雰囲気の温度の影響を排除し、軸受の温度をより正確に測定することができる。
【0025】
さらに第1ハウジング44には、第1回動軸21の軸芯X1と平行に、かつ該軸芯X1から等距離で軸芯X1周りに等間隔に複数の孔53が配されている。各孔53内には第1ヒータ52が嵌装されている。すなわち、第1ヒータ52は第1ハウジング44内に複数配されている。
同様に、第2ハウジング64には、第2回動軸31の軸芯X2と平行に、かつ該軸芯X2から等距離で軸芯X2周りに等間隔に複数の孔73が配されている。各孔73内には第2ヒータ72が嵌装されている。すなわち、第2ヒータ72は第2ハウジング64内に複数配されている。
【0026】
第1、第2ヒータ52、72はカートリッジヒータで構成されていることが好ましい。カートリッジヒータの一例としては、金属製の外管内の中央に抵抗加熱の発熱体を配し、その発熱体にリード線が接続されているものがある。また発熱体の両側には、耐熱性の絶縁物が埋め込まれ、外管の両端がキャップにより封止されている。なお、第1、第2ヒータ52、72には、カートリッジヒータの他にコイルヒータを用いることもできる。孔内に挿入可能でハウジングを加熱することができるものであれば、種々の形態のヒータを用いることができる。
【0027】
第1軸受41および第2軸受61の加熱設定温度は、第1、第2ヒータ52、72で加熱せずにパターンロール20とアンビルロール30とを稼働したときの第1軸受41および第2軸受61の最高到達温度とほぼ等しいか最高到達温度よりも高い温度である。
加熱設定温度は、最高到達温度よりも1℃以上高く、好ましくは5℃以上高く、より好ましくは10℃以上高い。また最高到達温度よりも50℃以下の範囲で高く、好ましくは40℃以下の範囲で高く、より好ましくは30℃以下の範囲で高い。具体的には、最高到達温度よりも1℃以上50℃以下の範囲で高く、好ましくは5℃以上40℃以下の範囲で高く、より好ましくは10℃以上30℃以下の範囲で高い。
【0028】
ここで、上記の最高到達温度について説明する。最高到達温度とは、軸受の発熱量と放熱量が平衡状態になったときの温度をいう。
通常、軸受は回動軸を伝わってくる熱と軸受自体の発熱によって加熱される。具体的には、上記の第1軸受41、第2軸受61は、主に、パターンロール20とアンビルロール30とを稼働したときの軸受の転動体が転動する際に発生する摩擦熱等により加熱される。また、パターンロール20、アンビルロール30が一定温度に加熱されて稼働する場合、軸受は、ロールから回動軸を伝わってくる熱によって加熱される。
図6に示すように、ヒータで軸受を加熱しない従来の場合、装置の稼働開始とともに、パターンロールOP側、DR側、アンビルロールOP側、DR側の各軸受の温度が上昇する。それとともに、軸芯間距離Dxが大きくなる。そして一定時間が経過すると、これらの加熱量が軸受周囲の雰囲気に放熱される熱量とが平衡状態となり、軸受が温度上昇しなくなる。このときの軸受の温度が最高到達温度Tmである。最高到達温度Tmは、各軸受によって異なる。それとともに、軸芯間距離Dxの変動量も小さくなる。
【0029】
第1、第2回動軸21、31は、軸のどちらか一方側に図示していない駆動軸が接続されている。このため、回動軸を伝わる熱が駆動軸側(DR側)に逃げ易くなるので、駆動軸側の軸受の温度が低くなる傾向にある。言い換えれば、駆動軸が接続されていない側(OR側)の軸受の温度は、熱が逃げにくいので駆動軸側より高くなる傾向にある。また、パターンロール20とアンビルロール30とでは形状が異なり、また材質も異なる場合がある。材質が異なる場合には、熱伝導率が異なる。このような場合には、第1軸受41と第2軸受61とでは、最高到達温度Tmが異なる場合がある。
【0030】
上記のように、それぞれの軸受によって最高到達温度Tmが異なる場合には、全ての軸受について、加熱設定温度T0を最高到達温度Tmとほぼ等しいか最高到達温度よりも高い温度に設定して温度制御することが好ましい。なお、加熱設定温度T0は、同じ温度に設定しても、上記温度条件を満たせば各軸受に対して異なる温度に設定してもよいが、好ましくは、各軸受ともに同じ温度に設定する。それは、軸受間で加熱設定温度が異なると、軸受間で加熱設定温度差による熱流が発生し、温度制御が複雑になるためである。
【0031】
さらに
図6に示すように、本発明の加工装置では、パターンロール20およびアンビルロール30のそれぞれのDR側およびOR側の第1、第2軸受41、61ともに、加熱設定温度T0を例えば70℃に設定する。そして第1、第2軸受41、61を加熱設定温度T0に加熱した状態で装置が稼働を開始する。稼働開始時には、第1、第2ヒータ52、72による加熱は停止している。そのため、第1、第2軸受41、61の稼働による発熱量よりも第1、第2ハウジング44、64からの放熱量が上回り、第1、第2軸受41、61の温度は加熱設定温度T0よりも低下する。これは、軸受本体の熱がハウジングに奪われて、ハウジングから放熱されるためである。したがって、第1、第2ヒータ52、72は、ハウジングからの放熱量から軸受の発熱量を差し引いた熱量よりも多い熱量を発生するヒータである必要がある。
【0032】
装置の稼働開始後も第1、第2温度センサ51、71により、各第1、第2軸受41、61の軸受温度を測定する。軸受の測定温度が加熱設定温度T0よりも低下したならば、温度制御器101は、加熱設定温度T0よりも低下した軸受に対応する第1、第2ヒータ52、72の電源をON状態にする。そして電源をON状態にしたヒータで軸受を加熱し、軸受の温度を上昇させる。その後も軸受の温度測定を行い、軸受の温度が加熱設定温度T0になったら、再びヒータの電源をOFFにする。このように、各軸受の測定温度と加熱設定温度T0との比較によって、軸受に対応するヒータの電源のON、OFFを繰り返すことで、第1、第2軸受41、61の温度を加熱設定温度T0に維持する。加熱設定温度T0に軸受温度が制御されたことで、軸芯間距離Dxの変動がほとんどなくなり、ほぼ一定になる。したがって、軸芯間距離Dxを安定した状態で、加工装置10を稼働させることができる。なお、軸芯間距離Dxは、軸受稼働前の軸芯間距離、各軸受の径を基準にして、各軸受の熱膨張係数、軸受の温度をパラメータとしたシミュレーションによって求める。
【0033】
さらに
図1および
図2に示したように、一対の第1軸受41は、第1回動軸21に対して、例えば、一対の一方の第1軸受41Aの内側軌道輪46をしまり嵌めとし、他方の第1軸受41Bの内側軌道輪46をすきま嵌めとすることが好ましい。すきま嵌めとするのは、第1回動軸21の自由端、すなわち、他の軸と接続されていない側が好ましい。
第2軸受61は、第1軸受41と同様の構成を有する転がり軸受である。したがって、一対の第2軸受61は、第2回動軸31に対して、一対の一方の第2軸受61Aの内側の軌道輪をしまり嵌めとし、他方の第2軸受61Bの内側の軌道輪をすきま嵌めとすることが好ましい。すきま嵌めとするのは、第2回動軸31の自由端、すなわち、他の軸と接続されていない側が好ましい。
上記のように回動軸を支持する一方の軸受の内側軌道輪をすきま嵌めにすることで、回動軸が軸方向に膨張してスラスト荷重が発生しても、そのスラスト荷重が軸受にかからないようになる。そのため、スラスト荷重による軸受の損傷を防止することができる。
なお、図示はしていないが、しまり嵌めの代わりに、軸受の内側軌道輪とそれに嵌め込む回動軸との間にスリーブを嵌装して内側軌道輪と回動軸とを固定する。そしてスリーブのテーパ状の表面に配したねじにナットを螺合させてスリーブを回動軸に締め付けて固定してもよい。
【0034】
パターンロール20の第1回動軸21の軸芯X1と、アンビルロール30の第2回動軸31の軸芯X2とは平行に配されていることが好ましい。軸芯X1、X2が平行に配されることによって、パターンロール20の周面とアンビルロール30の周面との距離が一定に維持されることになる。軸芯X1、X2を平行に調整するには、第1軸受41と第2軸受61との間に配したロール間調整ブロック81を移動して行う。以下、ロール間調整ブロック81について説明する。
【0035】
それぞれが互いに対向する第1軸受41と第2軸受61との間には、ロール間調整ブロック81(81A、81B)が備えられている。このロール間調整ブロック81は、第1軸受41側の面である上面81S、第2軸受61側の面である下面81D、および4つの側面を有する六面体のブロック形状を有する。ロール間調整ブロック81は、
図2に示すように、上面81Sが、Y方向に関して水平面に対し勾配を有している。すなわち、
図2で説明すると、ロール間調整ブロック81の上面81Sの左側の位置が右側の位置よりも高くなっている。一方、X方向に関しては、上面81Sは水平面と平行である。第1軸受41の第1ハウジング44の下面41S側、すなわちロール間調整ブロック81側の面も同様に、ロール間調整ブロック81の上面81Sに対応して、Y方向に関して水平面に対し勾配を有する面になっている。言い換えれば、第1軸受41の第1ハウジング44の下面41Sとロール間調整ブロック81の上面81Sとが平行な面になっている。
【0036】
上記ロール間調整ブロック81の勾配は、水平面に対して0.1°以上、好ましくは0.2°以上、より好ましくは0.3°以上である。そして、水平面に対して10°以下、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下である。具体的には、0.1°以上10°以下、好ましくは0.2°以上5°以下、より好ましくは0.3°以上2°以下である。勾配が上記下限値より大きいことによって、軸芯間距離の調整幅が十分にとれ、軸芯間距離を十分に調整できる。一方、勾配が上記上限値以内であることによって、軸芯間距離の調整幅が大き過ぎず、微小な調整が容易にできる。
【0037】
ロール間調整ブロック81には、機械構造用炭素鋼(例えば、S45C)を用いる。S45Cは、特に強度が必要な場合に選択される鋼材であり、切削、研削加工性に優れている。このため、機械構造用炭素鋼は、第1ハウジング44と第2ハウジング64との間に摺動自在に配されるロール間調整ブロック81には適した材料である。ロール間調整ブロック81の上面および下面の第1、第2ハウジング44、64との摺動面は、固着や焼付を防ぐために、例えば平坦度を100μm以下として、表面に数μm程度の深さの多数の凹部を有することが好ましい。例えばキサゲ加工により平面出ししたキサゲ加工面が好ましい。同様に、第1、第2ハウジング44、64のロール間調整ブロック81との摺動面と接触する面もキサゲ加工により平面出ししたキサゲ加工面が好ましい。キサゲ加工面にすることにより、面同士の密着性が低下し、滑りやすくなる。また、潤滑油も摺動面に入りやすくなる。そのため、ロール間調整ブロック81を微動させる場合、ロール間調整ブロック81が動き始める最初に非常に大きな力を必要としないので、微調整が行いやすくなる。また、ロール間調整ブロック81の摺動面に図示していない溝を配し、その摺動面を摺動するハウジング側の面に溝に対応した形状の図示していない凸条部を配してもよい。例えば、溝をV字型断面の溝とし、凸条部をそのV字型断面の溝内を摺動自在に移動可能な逆V字型断面の凸条部としてもよい。この様に溝と凸条部を組み合わせることで、ロール間調整ブロック81を移動させるときに横ぶれすることなく正確に移動させることができる。
【0038】
一方、ロール間調整ブロック81の下面81Dと支持体下部111の上面111Sとは水平面に対して平行な面にされている。すなわち、ロール間調整ブロック81の上面81Sと、下面81Dとが非平行となっている。そしてロール間調整ブロック81の下面81Dと第2ハウジング64との摺動面に上記のような図示していない溝と凸条部を配してもよい。また、それらの摺動面をキサゲ加工面としても好ましい。
【0039】
上記ロール間調整ブロック81の移動はねじの回動による。具体的には、支持体110に、第1、第2回動軸21、31とは直角方向になるように図示しない雌ねじが切られていて、その雌ねじに螺合する雄ねじ82がロール間調整ブロック81の側面のほぼ中央に回動自在に支持されるように配されている。この雄ねじ82は、水平方向に回動して進むようになっていることが好ましい。そのため、上記雌ねじは、雄ねじ82が水平方向に回動するように、支持体110に切られている。
したがって、雄ねじ82を回動させることにより、水平面内で第1、第2回動軸21、31に対して直角方向であるY方向にロール間調整ブロック81が移動する。例えば、雄ねじ82を正回転させることで、ロール間調整ブロック81を矢印C方向に移動することができ、雄ねじ82を逆回転させることで、ロール間調整ブロック81を矢印D方向に移動することができる。ロール間調整ブロック81の上面81Sと、下面81Dとが非平行であることと、ロール間調整ブロック81が水平方向に移動可能となっていることで、軸芯間距離を調整することができる。
なお、ロール間調整ブロック81の移動手段として、ボールねじを用いてもよい。ボールねじを用いることによって、ロール間調整ブロック81の移動がより滑らかになる。
【0040】
ロール間調整ブロック81には、その温度を測定する図示はしていない第3温度センサと第3ヒータとを備えていることが好ましい。そして、上記温度制御器101は、ロール間調整ブロック81を加熱設定温度に維持する機能も併せて有することが好ましい。すなわち、温度制御器101は、第3温度センサで測定したロール間調整ブロック81の温度に基づいてロール間調整ブロック81の加熱を第3ヒータに指示するものでもある。
【0041】
上記第3温度センサは、第1温度センサ51と同様のものを用いることができ、例えば、ロール間調整ブロック81の側面中央に貼りつけられている。その貼りつけ手段は、上記した第1温度センサ51と同様である。なお、第3温度センサを貼りつける位置は、ロール間調整ブロック81の温度を測定できる位置であれば、上記位置に限定されるものではない。
【0042】
ロール間調整ブロック81には、第1回動軸21の軸芯X1と直交する方向と平行に、図示はしていない複数の孔が例えば等間隔に配されていることが好ましい。各孔内には第3ヒータが嵌装されている。すなわち、第3ヒータはロール間調整ブロック81内に配されている。上記第3ヒータはカートリッジヒータで構成されていることが好ましい。カートリッジヒータとしては、第1ヒータ52と同様の上記したものが用いられる。なお、孔内に挿入可能でロール間調整ブロック81を加熱することができるものであれば、例えばコイルヒータのような種々の形態のヒータを用いることができる。
【0043】
本発明に係る加工方法の好ましい一実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。
本実施形態の加工方法では、例えば、前述した加工装置10を用いる。すなわち、パターンロール20の回動軸21を回動自在に支持する一対の第1軸受41と、一対の第1軸受41と対向する位置に配されていてアンビルロール30の回動軸31を回動自在に支持する一対の第2軸受61とを有しているものである。さらに第1軸受41および第2軸受61の少なくとも一方に温度センサとヒータとを備えているものである。第1軸受41には第1温度センサ51と第1ヒータ71が備えられ、第2軸受61には第2温度センサ52と第2ヒータ72が備えられる。
そして加工装置10を用いて、パターンロール20とアンビルロール30との間に被加工物としての不織布シート200を挟んで、パターンロール20とアンビルロール30とを回動することにより加工を行う。
このとき、第1軸受41および第2軸受61のそれぞれの温度を、加熱設定温度に維持するように、温度制御器101により温度制御を行う。加熱設定温度は、加熱をせずにパターンロール20とアンビルロール30とを稼働したときの第1軸受41および第2軸受61の最高到達温度よりも高い温度である。
【0044】
温度制御器101の具体的な温度制御方法について説明する。
一例として、第1軸受41Aの温度制御について説明する。
パターンロール20とアンビルロール30を稼働する。両ロールの稼働とともに、第1軸受41Aの温度が上昇する。そして第1軸受41Aの最高到達温度がTmであるとする。このときの第1軸受41Aの加熱設定温度T0は、最高到達温度よりも1℃以上高く、好ましくは5℃以上高く、より好ましくは10℃以上高い。また最高到達温度よりも50℃以下の範囲で高く、好ましくは40℃以下の範囲で高く、より好ましくは30℃以下の範囲で高い。具体的には、最高到達温度Tmより1℃以上50℃以下の範囲で高く、好ましくは5℃以上40℃以下の範囲で高く、より好ましくは10℃以上30℃以下の範囲で高い温度とする。
【0045】
そして第1軸受41Aの温度が加熱設定温度T0になるように、以下の操作を行う。
第1ハウジング44に設置された第1温度センサ51によって第1軸受41Aの温度T1を測定する。温度制御器101によって、温度T1が加熱設定温度T0以下か否かを判定する。したがって、温度制御器101には、各軸受の加熱設定温度T0を予め設定しておく。第1温度センサ51によって測定した温度T1が加熱設定温度T0より低い場合、温度制御器101によって、第1ヒータ52に加熱指示を出して、第1ヒータ52を稼働して第1軸受41Aを加熱する。なお、第1ヒータ52へ加熱指示する場合および加熱指示しない場合については、上記したように第1ヒータ52に電力を供給する図示していない電源へのON、OFFの指示で行う。
【0046】
その後も、第1温度センサ51によって第1軸受41Aの温度T1の測定を行う。そして前記同様にして、温度T1と加熱設定温度T0とを比較する。この一連の測定作業を、第1温度センサ51の測定した温度T1が加熱設定温度T0を超えるまで行う。そして、第1温度センサ51の測定した温度T1が加熱設定温度T0を超えたとき、温度制御器101によって、第1ヒータ52の加熱を停止する。すなわち、第1ヒータ52に電力を供給する電源をOFF状態にする。
【0047】
そして、第1ヒータ52の加熱を停止した後も温度T1の測定を行い、温度T1が加熱設定温度T0以下になったときに、再び、第1ヒータ52で第1軸受41を加熱する。
上記のようにして、加熱設定温度T0を基準にして、第1軸受41Aの温度T1を、常に加熱設定温度T0なるように温度制御することができる。
【0048】
第1軸受41B、第2軸受61A、61Bも第1軸受41Aと同様に温度を制御することができる。その際、それぞれの軸受について、最高到達温度Tmに基づいて加熱設定温度T0を設定する。第1軸受41における加熱設定温度T0と、第2軸受61における加熱設定温度T0とを同じ温度に設定する。このように各軸受に設定される加熱設定温度T0は温度制御のしやすさから同一温度であることが好ましい。
各軸受の最高到達温度Tmは異なる場合が通常である。それは、各回動軸の設置位置の温度雰囲気、駆動軸との接続状況の相違等に起因している。そのため、加熱設定温度T0における、対向する第1軸受41Aと第2軸受61Aがそれぞれに受ける回動軸の軸芯間距離Dx1と、別の対向する第1軸受41Bと第2軸受61Bがそれぞれに受ける回動軸の軸芯間距離Dx2とは異なる場合がある。このような場合には、ロール間調整ブロック81によって、軸芯間距離Dx1とDx2とが同等になるように微調整される。
【0049】
このとき、アンビルロール30の第2回動軸31を受ける第2軸受61が支持体下部111に固定されているので、第2回動軸31の軸芯X2の位置は、水平に保たれ、動かないものとすることができる。したがって、軸芯間距離の調整は、ロール間調整ブロック81によって、軸芯X1を水平に保ちつつ軸芯X1の高さを調整することになる。すなわち、軸芯間距離Dx1=軸芯間距離Dx2となるように、雄ねじ82を回動してロール間調整ブロック81を移動することによって調整を行う。なお、予め雄ねじ82の回動量に対して第1軸受41の昇降方向の移動量、すなわち、軸芯X1の移動量を測定しておくことが好ましい。
【0050】
上記温度制御器101による軸受の温度制御は、第1軸受41A、41Bおよび第2軸受61A、61Bの4つの軸受について行われる。上記温度制御を第1軸受41または第2軸受61のどちらか一方に対してのみ行うことでも、精度は落ちるが、第1回動軸21と第2回動軸31との軸芯間距離を一定に維持することが可能である。この場合も、上記同様に、第2回動軸31の軸芯X2に対する第1回動軸21の軸芯X1の高さ方向の位置がロール間調整ブロック81によって微調整される。
【0051】
第2軸受61に回動自在に支持される第2回動軸31の軸芯X2は水平に保たれているとする。この状態で第1軸受41に回動自在に支持される第1回動軸21の軸芯X1を上記軸芯X2に対して平行に調整する。平行にする調整は、第1、第2回動軸21、31を稼働し、第1軸受41および第2軸受61の温度が上昇してそれぞれが最高到達温度Tmになってから行う。そして、平行の調整は、雄ねじ82の回動動作によってロール間調整ブロック81を移動させ、ロール間調整ブロック81の上面の勾配を利用して、第1軸受21を押し上げて上昇させるか、または自重および加圧部130の圧力により降下させる。そのとき、必要な回動量だけ、雄ねじ82を回動させることで、第1軸受41を上昇または下降させて、軸芯間距離Dx(Dx1、Dx2)を調整する。この軸芯間距離Dx1は第1軸受41Aと第2軸受61Aとの間の軸芯間距離であり、軸芯間距離Dx2は第1軸受41Bと第2軸受61Bとの間の軸芯間距離である。したがって、ロール間調整ブロック81の位置を調整することで、それぞれの軸芯間距離Dx1、Dx2を調整できる。
【0052】
上記加工装置10によれば、温度制御器101によって第1、第2軸受41、61の温度制御ができるので、ロール稼働中であっても、パターンロール20の第1回動軸21とアンビルロール30の第2回動軸31との軸芯間距離Dxを一定距離に維持することができる。
これによって、パターンロール20を例えば矢印M方向に稼働し、アンビルロール30を例えば矢印N方向に稼働して被加工物としての例えば不織布シート200を加工した場合、不織布同士の接合加工不良や、不織布の切断加工不良を防ぐことができる。したがって、不織布同士の接合や不織布の切断を確実に行うことができる。
【0053】
また加工装置10では、第2軸受61が支持体下部111に固定されているため、第2軸受61が加熱されても、その一部の熱は支持体下部111側に放熱される。そのため、第2軸受61の熱膨張が抑制される。よって第1軸受41に回動自在に支持される第1回動軸21の軸芯X1と、第2軸受61に回動自在に支持される第2回動軸31の軸芯X2との軸芯間距離Dxの変動が抑えられる。しかし軸芯間距離Dxを高精度に制御するには、上記のように、第2軸受61側にも第2温度センサ71と第2ヒータ72とを配することが好ましい。これによって、軸芯間距離Dxの高精度な制御が可能になる。
【0054】
上記加工装置10にて加工される好適な被加工物には、2枚のシート材と、これら両シート材間に伸長状態で配された一方向に延びる複数本の弾性部材とを含んだ複合シートが挙げられる。2枚のシート材としては、各種の不織布やフィルム等を用いることができ、特に不織布を好適に用いることができる。2枚のシート材は、互いに同種のものであっても異なる種類のものであってもよい。不織布には、例えば、スパンボンド不織布、エアスルー不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布等を用いることができる。これらの不織布の任意の2種以上の積層体を用いることもできる。
上記加工装置10を用いた上記加工方法によれば、安定搬送が容易ではないためにシートへの加工において不良が発生しやすい、特に荷重2N/50mm時のMD方向の伸度が0.5〜5%程度の伸び易いシート材の加工を、安定的に行うことが可能となる。上記加工装置10のロール間隔を高精度に微調整することによって、上記伸度を有する伸び易いシート材である、例えばポリプロピレン繊維の不織布の加工に、好適に用いることができる。上記MDとは、Machine Directionの略である。
上記加工として、2枚のシート材の接合(例えば、エンボス加工による接合)、上記複合シートの弾性部材の切断などがある。特に、上記伸度を有する薄いシート材を切断せずに、その薄いシート材間に配した弾性部材(例えば、糸ゴム)を切断するのに好適である。
上記複合シートは、吸収性物品等に適用でき、例えばパンツ型使い捨ておむつにおける吸収性本体の外面側に配置される外装体として好適に用いられる。
【0055】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の加工装置及び加工方法を開示する。
<1>
パターンロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第1軸受と、
前記一対の第1軸受と対向する位置に配されていてアンビルロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第2軸受とを備えた加工装置であって、
前記第1軸受および前記第2軸受の少なくとも一方に温度センサとヒータとを備え、
前記温度センサおよび前記ヒータを備えた軸受を加熱設定温度に維持するもので、前記温度センサで測定した軸受の温度に基づいて軸受の加熱を前記ヒータに指示する温度制御器を備えた加工装置。
【0056】
<2>
前記温度制御器は、前記温度センサで測定した軸受が前記加熱設定温度よりも低い場合には、前記ヒータを稼働して該軸受を加熱し、前記温度センサで測定した軸受が前記加熱設定温度よりも高い場合には、前記ヒータの稼働を停止することで、該軸受の温度を前記加熱設定温度に維持する<1>に記載の加工装置。
<3>
前記温度センサは、前記第1軸受の温度を測定する第1温度センサと、前記第2軸受の温度を測定する第2温度センサとからなり、
前記ヒータは、前記第1軸受を加熱する第1ヒータと、前記第2軸受を加熱する第2ヒータとからなる<1>または<2>に記載の加工装置。
<4>
前記第1軸受は第1軸受本体と、該第1軸受本体の周囲に配した第1ハウジングとを有し、
前記第2軸受は第2軸受本体と、該第2軸受本体の周囲に配した第2ハウジングとを有し、
前記第1ヒータは前記第1ハウジングに配され、
前記第2ヒータは前記第2ハウジングに配された<3>に記載の加工装置。
<5>
前記第1ハウジング内に、前記パターンロールの回動軸の軸芯と平行に、かつ該軸芯周りに配された孔を有し、
前記孔内に前記第1ヒータを有する<4>に記載の加工装置。
<6>
前記第2ハウジング内に、前記アンビルロールの回動軸の軸芯と平行に、かつ該軸芯周りに配された孔を有し、
前記孔内に前記第2ヒータを有する<4>または<5>に記載の加工装置。
<7>
前記第2ハウジングは台座に固定され、
前記第1ハウジングは、前記台座に固定されたガイドレールにそって昇降自在に配されている<4>〜<6>のいずれか1に記載の加工装置。
<8>
前記第1温度センサは、前記第1ハウジングに設けられた穴内に配されている<4>〜<7>のいずれか1に記載の加工装置。
<9>
前記第2温度センサは、前記第2ハウジングに設けられた穴内に配されている<4>〜<8>のいずれか1に記載の加工装置。
<10>
前記ヒータはカートリッジヒータからなる<1>〜<9>のいずれか1に記載の加工装置。
<11>
前記加熱設定温度は、前記ヒータによる加熱をせずに前記パターンロールと前記アンビルロールとを稼働したときの前記軸受の最高到達温度よりも高い温度である<1>〜<10>のいずれか1に記載の加工装置。
<12>
前記加熱設定温度は、前記最高到達温度よりも1℃以上高く、好ましくは5℃以上高く、より好ましくは10℃以上高く、また前記最高到達温度よりも50℃以下の範囲で高く、好ましくは40℃以下の範囲で高く、より好ましくは30℃以下の範囲で高く、具体的には、前記最高到達温度よりも1℃以上50℃以下の範囲で高く、好ましくは5℃以上40℃以下の範囲で高く、より好ましくは10℃以上30℃以下の範囲で高い<11>に記載の加工装置。
<13>
前記第1軸受の加熱設定温度と、前記第2軸受の加熱設定温度とを同じ温度に設定する<1>〜<12>のいずれか1に記載の加工装置。
<14>
前記第1軸受と前記第2軸受との間に配され、前記パターンロールおよび前記アンビルロールの軸芯間距離を調整するロール間調整ブロックを備える<1>〜<13>のいずれか1に記載の加工装置。
<15>
前記ロール間調整ブロックの温度を測定する第3温度センサと、
前記ロール間調整ブロックに配された第3ヒータとを備え、
前記温度制御器は、前記ロール間調整ブロックを加熱設定温度に維持するもので、前記第3温度センサで測定した前記ロール間調整ブロックの温度に基づいて前記ロール間調整ブロックの加熱を前記第3ヒータに指示するものである<14>に記載の加工装置。
<16>
前記ロール間調整ブロックは、前記第1軸受側の面である上面、前記第2軸受側の面である下面、および4つの側面を有する六面体のブロック形状を有する<14>または<15>に記載の加工装置。
<17>
前記ロール間調整ブロックの上面と、下面とが非平行となっている<16>に記載の加工装置。
<18>
前記上面が、水平面に対し勾配を有している<16>または<17>に記載の加工装置。
<19>
前記ロール間調整ブロックの勾配は、水平面に対して0.1°以上、好ましくは0.2°以上、より好ましくは0.3°以上であり、そして、水平面に対して10°以下、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下であり、具体的には、0.1°以上10°以下、好ましくは0.2°以上5°以下、より好ましくは0.3°以上2°以下である<18>に記載の加工装置。
<20>
前記ロール間調整ブロックが水平方向に移動可能となっている<14>〜<19>のいずれか1に記載の加工装置。
<21>
前記第1軸受を前記第2軸受方向に加圧する加圧部を有する<1>〜<20>のいずれか1に記載の加工装置。
【0057】
<22>
パターンロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第1軸受と、前記一対の第1軸受と対向する位置に配されていてアンビルロールの回動軸を回動自在に支持する一対の第2軸受とを有し、前記第1軸受および前記第2軸受の少なくとも一方に温度センサとヒータとを備えた加工装置を用いて、前記パターンロールと前記アンビルロールとの間に被加工物を挟んで、前記パターンロールと前記アンビルロールとを回動することにより前記被加工物を加工する加工方法であって、
前記第1軸受および前記第2軸受のそれぞれの温度を、加熱をせずに前記パターンロールと前記アンビルロールとを稼働したときの前記第1軸受および前記第2軸受の最高到達温度よりも高い温度である加熱設定温度に維持するように温度制御を行う、加工方法。
<23>
前記温度センサで測定した軸受が前記加熱設定温度よりも低い場合には、前記ヒータを稼働して軸受を加熱し、前記温度センサで測定した軸受が前記加熱設定温度よりも高い場合には、前記ヒータによる加熱を停止することで、前記軸受の温度を加熱設定温度に維持するように温度制御を行う<22>に記載の加工方法。
<24>
前記加熱設定温度は、前記最高到達温度よりも1℃以上高く、好ましくは5℃以上高く、より好ましくは10℃以上高く、また前記最高到達温度よりも50℃以下の範囲で高く、好ましくは40℃以下の範囲で高く、より好ましくは30℃以下の範囲で高い。具体的には、前記最高到達温度よりも1℃以上50℃以下の範囲で高く、好ましくは5℃以上40℃以下の範囲で高く、より好ましくは10℃以上30℃以下の範囲で高い<23>に記載の加工方法。
<25>
前記第1軸受における加熱設定温度と、前記第2軸受における加熱設定温度とを同じ温度に設定する<22>〜<24>のいずれか1に記載の加工方法。