(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の第1の実施形態に係る船外機昇降装置1について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0011】
船外機昇降装置1は、船外機300を昇降させるための装置である。
図1の(a)は、船外機昇降装置1の使用例を示す図であり、船体(本体)200の後部と船外機300とに取り付けられた船外機昇降装置1を示している。
図1の(a)における実線は、船外機300が下降した状態を示し、
図1の(a)における破線は、船外機300が上昇した状態を示している。
図1の(b)は、船外機300の内部構成を概略的に示す模式図である。
図1の(b)に示すように、船外機300は、エンジン301と、プロペラ303と、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302とを備えている。ここで、動力伝達機構は、例えば、シャフトやギヤによって構成される。
【0012】
図2は、船外機昇降装置1の構成の一例を示す正面図であり、
図3は、船外機昇降装置1の側断面図である。
図2に示すように、船外機昇降装置1は、シリンダユニット10と、船体200の後部に取り付けられる1対のスターンブラケット70と、船外機300に取り付けられるスイベルブラケット80とを備えている。
【0013】
シリンダユニット10は、一例として、
図2に示すように、2本のトリムシリンダ12、1本のチルトシリンダ14、モータ16、タンク18、上部ジョイント22、基部24を備えている。トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14は、基部24に対して相対移動不能に設けられている。
【0014】
なお、シリンダユニット10が備えるトリムシリンダ12及びチルトシリンダ14の数は本実施形態を限定するものではなく、1又は複数のトリムシリンダ12及び1又は複数のチルトシリンダ14を備えるシリンダユニット10も本実施形態に含まれる。また、そのように任意の数のトリムシリンダ12及びチルトシリンダ14を有するシリンダユニット10に対しても以下の説明が成り立つ。
【0015】
トリムシリンダ12は、シリンダ12aと、シリンダ12a内に摺動可能に設けられたピストン12c(
図4参照)と、ピストン12cに固定されたピストンロッド12bとを備えている。また、チルトシリンダ14は、シリンダ14aと、シリンダ14a内に摺動可能に設けられたピストン14c(
図4参照)と、ピストン14cに固定されたピストンロッド14bとを備えている。
【0016】
また、
図2に示すように、基部24とスターンブラケット70には、それぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔を貫通するアンダーシャフト26を介して、基部24とスターンブラケット70とが相対回転可能に接続されている。
【0017】
また、
図2に示すように、ピストンロッド14bの先端には、上部ジョイント22が設けられており、スイベルブラケット80には、支持部材28が固定されている。上部ジョイント22及び支持部材28には、それぞれ貫通孔が形成されており、こられの貫通孔を貫通するアッパーシャフト23を介して、上部ジョイント22とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0018】
また、スターンブラケット70及びスイベルブラケット80の上部一端にはそれぞれ貫通孔が形成されており、
図3に示すように、これらの貫通孔を貫通する支持軸32によって、スターンブラケット70とスイベルブラケット80とが相対回転可能に接続されている。
【0019】
(トリム域及びチルト域)
チルトシリンダ14のピストンロッド14bが上昇及び下降することにより、スイベルブラケット80が上昇及び下降するので、船外機300が上昇及び下降する。
【0020】
チルトシリンダ14のピストンロッド14bの上昇及び下降によって調整される船外機300の角度領域は、
図1の(a)に示したトリム域とチルト域とから構成される。チルト域は、トリムシリンダ12のピストンロッド12bの先端がスイベルブラケット80に当接不能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はチルトシリンダ14のピストンロッド14bによって行われる。
【0021】
一方、トリム域は、トリムシリンダ12のピストンロッド12bの先端がスイベルブラケット80に当接可能な角度領域であり、チルト域での船外機300の角度調整はトリムシリンダ12のピストンロッド12b及びチルトシリンダ14のピストンロッド14bの双方によって行われ得る。ただし、後述するように、本実施形態では、チルト域においても、船外機300の角度調整がチルトシリンダ14のピストンロッド14bのみによって行われることもある。
【0022】
(油圧回路)
次に、船外機昇降装置1の油圧回路について説明する。
図4は、船外機昇降装置1の油圧回路を制御部100と共に示す図である。
図4では、すでに説明した部材と同じ部材には同じ符号を付している。
【0023】
図4に示すように、船外機昇降装置1は、モータ16、ポンプ42、第1の逆止弁44a、第2の逆止弁44b、アップブローバルブ46a、ダウンブローバルブ46b、メインバルブ(ポンプポート)48、マニュアルバルブ52、サーマルバルブ54、チルトシリンダ14、トリムシリンダ12、タンク18、フィルタF1〜F3、第1の流路C1〜第10の流路C10、切替弁60、2-wayバルブ82、バルブ84、及び制御部100を備えている。ここで、2-wayバルブ82は、トリムシリンダ12の上室12fへの作動油を通過させ、トリムシリンダ12の上室12fからの作動油を遮断する第1のバルブ82−1と、トリムシリンダ12の上室12fからの作動油を通過させ、トリムシリンダ12の上室12fへの作動油を遮断する第2のバルブ82−2とを備えている。
【0024】
モータ16によって駆動される油圧源としてのポンプ42は、運転者による船外機の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDに応じて、「正転」「反転」「停止」の何れかの動作を行う。タンク18には作動油が貯えられている。
【0025】
メインバルブ48は、
図4に示すように、スプール48a、第1チェック弁48b、及び第2チェック弁48cを備えている。メインバルブ48は、スプール48aによって、第1チェック弁48b側の第1シャトル室48dと、第2チェック弁48c側の第2シャトル室48eとに仕切られている。
【0026】
第1の流路C1は、ポンプ42と第1シャトル室48dとを接続すると共に、ポンプ42と第1の逆止弁44aとを接続している。また、第1の流路C1には、アップブローバルブ46aが接続されている。第2の流路C2は、ポンプ42と第2シャトル室48eとを接続すると共に、ポンプ42と第2の逆止弁44bとを接続している。また、第2の流路C2には、ダウンブローバルブ46bが接続されている。
【0027】
なお、本明明細書に記載の油路構成における「接続」には、他の油圧エレメントを介さずに流路によって直接接続されている場合と、他の油路エレメントを介して間接的に接続されている場合の双方が含まれる。ここで、他の油圧エレメントには、例えば、バルブ(弁)、シリンダ、及びフィルタ等が含まれる。
【0028】
チルトシリンダ14は、ピストン14cによって上室14fと下室14gとに仕切られており、チルトシリンダ14のピストン14cは、
図4に示すように、ショックブローバルブ14d及びリターンバルブ14eを備えている。
【0029】
なお、本明細書において、「上室」及び「下室」における「上」及び「下」とは、単に互いを区別するための名称であり、当該上室が当該下室よりも鉛直方向上側に位置することを必ずしも意味するものではない。このため、「上室」とは、シリンダにおいてピストンによって仕切られる第1室及び第2室のうち、ピストンに接続されたロッドが貫通する方の室である第1室と表現してもよいし、「下室」とは、シリンダにおいてピストンによって仕切られる第1室及び第2室のうち、ピストンに接続されたロッドが貫通しない方の室である第2室と表現してもよい。
【0030】
本明細書では、特に混乱がない限り「上室」「下室」との表現も用いるが、上記の点に留意すべきである。
【0031】
トリムシリンダ12は、ピストン12cによって上室12fと下室12gとに仕切られている。
【0032】
第1チェック弁48bは、チルトシリンダ14の下室14gに、フィルタF1及び第3の流路C3を介して接続されている。また、第3の流路C3上には、切替弁60が配置されている。
【0033】
一方、第2チェック弁48cは、チルトシリンダ14の上室14fに、フィルタF2及び第4の流路C4を介して接続されている。また、
図4に示すように、第4の流路C4には、上室給油バルブ56が接続されている。
【0034】
第3の流路C3と第4の流路C4とを接続する第5の流路C5にはマニュアルバルブ52及びサーマルバルブ54が接続されている。
【0035】
なお、メインバルブ48及びフィルタF1を介してポンプ42とチルトシリンダ14の下室14gとを接続する第1の流路C1及び第3の流路C3を、纏めて第1の油路とも呼ぶ。
【0036】
第6の流路C6(第2の油路とも呼ぶ)は、トリムシリンダ12の下室12gに接続されている。
【0037】
第7の流路C7は、複数のトリムシリンダ12の上室12fを互いに接続している。第7の流路C7の存在により、複数のトリムシリンダ12の上室12fの圧力が互いに均等化される。第8の流路C8(第3の油路とも呼ぶ)は、複数のトリムシリンダ12の上室12fの一つとメインバルブ48とを接続している。より具体的には、第8の流路C8は、2-wayバルブ82を介して、メインバルブ48における第1シャトル室48d及び第2シャトル室48eのうち、第2シャトル室48eに接続されている。ここで、第2シャトル室48eは、第2チェック弁48c及びフィルタF2を介して、第4の流路C4によりチルトシリンダ14の上室(第1室)に接続されている。したがって、第8の流路C8は、切替弁60を介して、メインバルブ48における第1シャトル室48d及び第2シャトル室48eのうち、チルトシリンダ14の第1室に接続された第2シャトル室48eに接続されている。
【0038】
第9の流路C9は、第1の逆止弁44a及び第2の逆止弁44とタンク18とを接続している。
【0039】
第1の逆止弁44aは、トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14が収縮し切った状態になってもなおポンプ42が作動油を回収しようとする場合に、タンク18からポンプ42に作動油を供給する。
【0040】
第2の逆止弁44bは、チルトシリンダ14が伸長する際に、ピストンロッド14bの退出容積分の作動油をタンク18からポンプ42に供給し、また、トリムシリンダ12が伸長する際には、ピストンロッド12bの退出容積分の作動油をタンク18からポンプ42に供給する。
【0041】
アップブローバルブ46aは、トリムシリンダ12及びチルトシリンダ14が伸長し切った状態になってもなおポンプ42が作動油を供給する場合に、余剰の作動油をタンク18に戻す。
【0042】
ダウンブローバルブ46bは、チルトシリンダ14が収縮する際に、ピストンロッド14bの進入容積分の作動油をタンク18に戻し、また、トリムシリンダ12が収縮する際には、ピストンロッド12bの進入容積分の作動油をタンク18に戻す。
【0043】
マニュアルバルブ52は、手動による開閉が可能であり、船外機昇降装置1のメンテナンス時等においてマニュアルバルブ52を開状態とすることによって、作動油がチルトシリンダ14の下室14gからタンク18に戻される。これにより、チルトシリンダ14が手動で収縮可能となる。
【0044】
サーマルバルブ54は、温度上昇により作動油の体積が増大した場合に、余剰分の作動油をタンク18に戻す。
【0045】
(切替弁60)
第3の流路C3上に設けられた切替弁60は、
図4に示すように、ソレノイド62とソレノイド62によって駆動されるプランジャ64を備えている。ソレノイド62は、比例ソレノイドとして構成されており、後述する制御部100からの制御信号SIG_CONTに基づき、プランジャ64を遮断状態位置から開放状態位置までの任意の位置に制御可能である。
【0046】
また、切替弁60には、第6の流路C6が接続されており、切替弁60は、ポンプ42から供給される作動油から、第3の流路C3を介してチルトシリンダ14の下室14gに供給する作動油の量を減じた分の作動油を第6の流路C6を介してトリムシリンダ12の下室12gに供給する。また、切替弁60は、第3の流路C3を介してチルトシリンダ14の下室14gから回収する作動油の量と第6の流路C6を介してトリムシリンダ12の下室12gから回収する作動油とを合わせた作動油をポンプ42に供給する。
【0047】
ここで、
・チルトシリンダ14の下室14gに供給する作動油とトリムシリンダ12の下室12gに供給する作動油との割合、及び、
・チルトシリンダ14の下室14gから回収する作動油とトリムシリンダ12の下室12gから回収する作動油との割合
は、制御信号SIG_CONTに応じて制御されるプランジャ64の位置に応じて定まる。
【0048】
上記のように構成された切替弁60は、
(1)ポンプ42とチルトシリンダ14の下室(第2室)14gとの間の作動油の流通を許容し、ポンプ42とトリムシリンダ12の下室(第2室)12gとの間の作動油の流通を許容する第1の接続状態と、
(2)ポンプ42とチルトシリンダ14の下室(第2室)14gとの間の作動油の流通を許容する一方で、ポンプ42とトリムシリンダ12の下室(第2室)12gとの間の作動油の流通を禁止する第2の接続状態と、
(3)ポンプ42とチルトシリンダ14の下室(第2室)14gとの間の作動油の流通を禁止する一方で、ポンプ42とトリムシリンダ12の下室(第2室)12gとの間の作動油の流通を許容する第3の接続状態と、
を有する。
【0049】
ここで、上記第1の接続状態において、ポンプ42とチルトシリンダ14の下室(第2室)14gとの間の作動油の流通量と、ポンプ42とトリムシリンダ12の下室(第2室)12gとの間の作動油の流通量との割合は、上述のように、プランジャ64の位置に応じて定まる。
【0050】
このように、切替弁60は、チルトシリンダ14の下室14gへの流量と、トリムシリンダ12の下室12gへの流量を多段階的に変更可能である。
【0051】
船外機昇降装置1が上記のように構成された切替弁60を備えることにより、第3の流路C3を通過する作動油、及び第7の流路C7を通過する作動油の流量をきめ細かく制御することができるので、船外機300の上昇及び下降をよりきめ細かく制御することができる。
【0052】
なお、切替弁60は、ソレノイド62がOFFの場合に上記第1の接続状態となるように構成してもよいし、ソレノイド62がOFFの場合に上記第2の接続状態となるように構成してもよいし、ソレノイド62がOFFの場合に上記第3の接続状態となるように構成してもよい。
【0053】
切替弁60を、ソレノイド62がOFFの場合に上記第1の接続状態となるように構成した場合、万一、切替弁60が作動しなくなった場合であっても、トリムシリンダ12の下室12gとチルトシリンダ14の下室14gとが連通した状態で維持されるので、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12の双方を用いて船外機300の角度調整を行うことができる。
【0054】
一方で、切替弁60を、ソレノイド62がOFFの場合に上記第2の接続状態となるように構成した場合、万一、切替弁60が作動しなくなった場合であっても、チルトシリンダ14のみで船外機300の角度調整を行ったり、船外機300を保持し続けたりすることができる。
【0055】
また、切替弁60を、ソレノイド62がOFFの場合に上記第3の接続状態となるように構成した場合、万一、切替弁60が作動しなくなった場合であっても、トリムシリンダ12のみで船外機300の角度調整を行ったり、船外機300を保持し続けたりすることができる。
【0056】
(制御部100)
図4に示すように、船外機昇降装置1は制御部100を備えている。制御部100は、船体200のイグニッションのオンオフを示すイグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、及び、運転者による船外機300の昇降指示を示す昇降信号SIG_UDを参照し、切替弁60を制御するための制御信号SIG_CONTを生成する。生成した制御信号SIG_CONTは切替弁60に供給される。なお、船体状態信号SIG_INの一例として、船外機300の状態を示す状態信号が挙げられるが、本明細書に記載の実施形態はこれに限定されるものではない。船体状態信号の様々な例については後述する。
【0057】
制御部100を備えることにより、船外機昇降装置1は、船外機300の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0058】
(制御部100の構成例)
以下では、制御部100の具体的な構成例について参照する図面を替えて説明する。
【0059】
図5は、制御部100の一構成例を示す回路図である。本例では、イグニッション信号SIG_IG、船体状態信号SIG_IN、昇降信号SIG_UDは、すべてアナログ信号として制御部100に入力される。
【0060】
図5に示すように、本例に係る制御部100は、第1のコネクタ101〜第4のコネクタ104、及び、第1のスイッチング素子121〜第5のスイッチング素子125等を備えて構成される。ここで、第1のスイッチング素子121、第3のスイッチング素子123、及び第4のスイッチング素子124は、例えばトランジスタによって構成されており、第2のスイッチング素子は、例えばFET(電界効果トランジスタ)によって構成されている。
【0061】
第1のスイッチング素子121のコレクタ電極及び第3のスイッチング素子123のコレクタ電極、並びに、第2のスイッチング素子122のドレイン電極には、第1のコネクタ101を介してイグニッション信号SIG_IGが入力される。
【0062】
第1のスイッチング素子121のベース電極には、第2のコネクタ102及びダイオード111を介して船体状態信号SIG_INが入力され、第3のスイッチング素子123のベース電極には第1のスイッチング素子121のエミッタ電流がダイオード112を介して入力される。また、第4のスイッチング素子124のベース電極には、第3のコネクタ103及びダイオード113を介して昇降信号SIG_UDが入力され、第5のスイッチング素子125のベース電極には、第3のコネクタ103及びダイオード114を介して昇降信号SIG_UDが入力される。
【0063】
第2のスイッチング素子122のゲート電極には、第1のスイッチング素子121のエミッタ電流に応じた信号が、第3のスイッチング素子123及び第4のスイッチング素子を介して、又は、第3のスイッチング素子123及び第5のスイッチング素子を介して入力される。より具体的には、第2のスイッチング素子122のゲート電極には、ダイオード115を介して、第4のスイッチング素子124のエミッタ電流及び第5のスイッチング素子125のエミッタ電流が入力される。
【0064】
第2のスイッチング素子122のソース電極からは、第4のコネクタ104を介して、制御信号SIG_CONTが切替弁60に供給される。
【0065】
(船体状態信号SIG_INの具体例)
上述した船体状態信号SIG_INの一例として、船外機300が備えるエンジン301の状態を示すエンジン信号が挙げられる。ここで、エンジン信号とは、例えば、エンジン301の回転数を示す信号であり、一例としてエンジン301から取得することができる。なお、エンジンの回転数が0であればエンジンはオフであり、エンジンの回転数がゼロでなければエンジンはオンであるので、エンジンの回転数を示す信号はエンジンのオンオフを示す信号でもある。
【0066】
船体状態信号SIG_INをエンジン信号とすることにより、以下に見るように、船外機昇降装置1は、船外機300が備えるエンジン301の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0067】
また、船体状態信号SIG_INの他の一例として、船外機300の備える動力伝達機構302が、動力伝達可能な状態、すなわちインギヤの状態にあるのか否かを示すギヤ信号が挙げられる。ギヤ信号は、一例として動力伝達機構302から取得することができる。
【0068】
船体状態信号SIG_INをギヤ信号とすることにより、以下に見るように、船外機昇降装置1は、船外機300が備える動力伝達機構302の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0069】
なお、上述のエンジン信号、及びインギヤ信号は、船外機300の状態を示す状態信号の一例である。
【0070】
(船外機昇降装置1の動作例)
(上昇動作)
昇降信号SIG_UDが「上昇」を示している場合、ポンプ42が正転し、作動油がポンプ42からメインバルブ48の第1シャトル室48dに圧送される。これにより、第1チェック弁48bが開くと共に、スプール48aが第1チェック弁48b側に移動し、第2チェック弁48cが開く。
【0071】
ここで、切替弁60が第1の接続状態であれば、作動油がチルトシリンダ14の下室14g、及びトリムシリンダ12の下室12gに供給されると共に、チルトシリンダ14の上室14f、及びトリムシリンダ12の上室12fから作動油が回収される。これにより、チルトシリンダ14のピストンロッド14bとトリムシリンダ12のピストンロッド12bとが共に上昇する。
【0072】
一方、切替弁60が第2の接続状態であれば、作動油はトリムシリンダ12の下室12gには供給されないので、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは上昇するが、トリムシリンダ12のピストンロッド12bは上昇しない。
【0073】
切替弁60が第2の接続状態の場合、作動油がトリムシリンダ12の下室12gに供給されない。ポンプ42によって供給される単位時間当たりの作動油量は、切替弁60が第1の接続状態であっても、第2の接続状態であっても、第3の接続状態であっても大きな変化はない。このため、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは、切替弁60が第1の状態である場合に比べて、速く上昇する。
【0074】
一方、切替弁60が第3の接続状態であれば、作動油はチルトシリンダ14の下室14gには供給されないので、トリムシリンダ12のピストンロッド12bは上昇するが、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは上昇しない。
【0075】
(下降動作)
昇降信号SIG_UDが「下降」を示している場合、ポンプ42が逆転し、作動油がポンプ42からメインバルブ48の第2シャトル室48eに圧送される。これにより、第2チェック弁48cが開くと共に、スプール48aが第2チェック弁48c側に移動し、第1チェック弁48bが開く。
【0076】
ここで、切替弁60が第1の接続状態であれば、作動油がチルトシリンダ14の上室14f、及びトリムシリンダ12の上室12fに供給されると共に、チルトシリンダ14の下室14g、及びトリムシリンダ12の下室12gから作動油が回収される。これにより、チルトシリンダ14のピストンロッド14bとトリムシリンダ12のピストンロッド12bとが共に下降する。
【0077】
一方、切替弁60が第2の接続状態であれば、作動油はトリムシリンダ12の下室12gからは回収されないので、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは下降するが、トリムシリンダ12のピストンロッド12bは下降しない。
【0078】
切替弁60が第2の接続状態の場合、作動油がトリムシリンダ12の下室12gからは回収されないので、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは、切替弁60が第1の接続状態である場合に比べて、速く下降する。
【0079】
一方、切替弁60が第3の接続状態であれば、作動油はチルトシリンダ14の下室14gからは回収されないので、トリムシリンダ12のピストンロッド12bは下降するが、チルトシリンダ14のピストンロッド14bは下降しない。
【0080】
(保持状態)
昇降信号SIG_UDが「上昇」及び「下降」の何れも示していない場合、ポンプ42が停止する。ポンプ42が停止すると、船外機昇降装置1の油圧回路内の動作油の移動が収束した状態において、船外機300が保持される。なお、本明細書では、昇降信号SIG_UDが「上昇」及び「下降」の何れも示していない場合を、便宜的に、昇降信号SIG_UDが「保持」を示している場合と表現することもある。
【0081】
(切替弁60の制御例)
以下では、
図6を参照して、制御部100による切替弁60の制御例について説明する。
【0082】
図6は、船体状態信号SIG_INが示す船外機300の状態、昇降信号SIG_UDが示す運転者による船外機の昇降指示、及び、制御部100によって制御された切替弁60の状態を例示する表である。
【0083】
図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオン」又は「インギヤ」を示している場合、昇降信号SIG_UDが「上昇」「下降」「保持」の何れを示しているのかに関わらず、制御部100は切替弁60を第1の接続状態とする。
【0084】
一例として、船体状態信号SIG_INは、船外機300が備えるエンジン301のエンジン回転部に関連する信号であり、制御部100は、エンジン回転数が回転数に関する第1閾値以上である場合に、航行状態と判定し、切替弁60を第1の接続状態とする。ここで、回転数に関する第1閾値は、適宜設定された正の値を有している。また、制御部100は、エンジン回転数が回転数に関する第2閾値を超える場合に、航行状態と判定し、切替弁60を第1の接続状態とする構成でもよい。ここで、回転数に関する第2閾値は、適宜設定された0以上の値を有している。
【0085】
このように、制御部100は、船体状態信号SIG_INを参照して、航行状態及び停船状態を判定し、航行状態と判定した場合に、切替弁60を第1の接続状態となるように制御する。
【0086】
したがって、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤの状態では、トリム域において、チルトシリンダ14のピストンロッド14bとトリムシリンダ12のピストンロッド12bとが共に上昇及び下降することによって船外機300の角度調整が行われる。また、船外機300の保持状態において、外力によりトリムシリンダ12の下室12gの内圧が上昇した場合であっても、当該内圧は、チルトシリンダの下室14gに分散される。
【0087】
一方で、
図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「上昇」又は「保持」を示す場合に、制御部100は切替弁60を第2の接続状態とする。
【0088】
このように、制御部100は、船体状態信号SIG_INを参照して、航行状態及び停船状態を判定し、停船状態と判定した場合に、切替弁60を第2の接続状態となるように制御する。
【0089】
したがって、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態において、船外機300を上昇させる場合、トリム域においても、チルトシリンダ14のピストンロッド14bのみが上昇する。このため、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態では、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤである状態に比べて、船外機300を早く上昇させることができる。
【0090】
また、船外機300の保持状態において、作動油がチルトシリンダ14の下室14gからトリムシリンダ12の下室12gに供給されることがないので、チルトシリンダ14のピストンロッド14bによって船外機300をしっかりと保持することができる。
【0091】
また、
図6に示す例では、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、制御部100は切替弁60を第1の接続状態とする。
【0092】
したがって、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態において、船外機300を下降させる場合、作動油がチルトシリンダ14の下室14gからトリムシリンダ12の下室12gに供給され、トリムシリンダ12のピストンロッド12bが、スイベルブラケット80に当接するまで上昇する。
【0093】
なお、切替弁60の制御は、上記の例に限定されるものではなく、ユーザの使い勝手や外力に対する船外機昇降装置1の適応性等を鑑みて、適宜設定することができる。
【0094】
例えば、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、制御部100は切替弁60を第2の接続状態としてもよい。
【0095】
この場合、エンジン301がオフであるか又は動力伝達機構302がインギヤでない状態において、船外機300を下降させる場合、作動油がチルトシリンダ14の下室14gからトリムシリンダ12の下室12gに供給されないので、エンジン301がオンであるか又は動力伝達機構302がインギヤである状態に比べて、船外機300を早く下降させることができる。
【0096】
また、船体状態信号SIG_INが「エンジンオフ」又は「インギヤでない」を示し、昇降信号SIG_UDが「下降」を示す場合に、制御部100は切替弁60を第3の接続状態としてもよい。より具体的な例を挙げれば以下の通りである。船艇係留場所が浅瀬等である場合、船外機が湖底に接触し破損しないように、船外機昇降装置1をトリム域中間程度に設定して航行させるという状況が生じ得る。その後、切替弁60が第2接続状態となっている状態で係留地点でエンジンを止めると、船外機300を上昇させる動作において、チルトシリンダ14のピストンロッド14fは上昇するものの、トリムシリンダ12のピストンロッド12fは中間位置で固定されてしまうという状況が生じ得る。このような状況において、トリムシリンダ12のピストンロッド12fを下降させるために、制御部100は切替弁60を第3接続状態とする。
【0097】
また、以下のような場合にも、制御部100が切替弁60を第3の接続状態としてもよい。チル卜シリンダ14のみを用いて船外機300を上昇又は下降させたことにより、トリムシリンダ12のピストンロッド12fの先端がスイベルブラケット80から離れているという状況が生じる。このような状況において、船外機300のエンジンをオンとする前に、制御部100が、切替弁60を第3接続状態としたうえでトリムシリンダ12のピストンロッド12fを動作させることによりピストンロッド12fの先端をスイベルブラケット80に接触させ、チルトシリンダ14のピストンロッド14f及びトリムシリンダ12のピストンロッド12fを用いて船外機300を保持する。
【0098】
〔実施形態2〕
以下では、
図7を参照して実施形態2に係る制御部100aについて説明する。
図7は本実施形態に係る制御部100aの構成を示すブロック図である。
【0099】
本実施形態に係る船外機昇降装置は、実施形態1係る船外機昇降装置1において、制御部100に代えて、
図7に示す制御部100aを備えたものである。本実施形態に係る船外機昇降装置のその他の構成は実施形態1において説明した船外機昇降装置1と同様である。
【0100】
制御部100aは、船体状態信号A−D変換回路131、昇降信号A−D変換回路132、演算部133、及び制御信号生成回路134を備えている。本実施形態においても、船体状態信号SIG_IN、及び昇降信号SIG_UDは、アナログ信号として制御部100aに入力される。なお、
図7では、船体状態信号A−D変換回路131のことを入力信号A−D変換回路131と表記している。
【0101】
船体状態信号A−D変換回路131は、船体状態信号SIG_INをデジタル信号に変換する変換回路である。変換されたデジタル信号としての船体状態信号SIG_INは、演算部143に供給される。
【0102】
昇降信号A−D変換回路132は、昇降信号SIG_UDをデジタル信号に変換する変換回路である。変換されたデジタル信号としての昇降信号SIG_UDは、演算部143に供給される。
【0103】
演算部133は、デジタル信号としての船体状態信号SIG_IN及び昇降信号SIG_UDを参照し、切替弁60を第1の接続状態、第2の接続状態、及び第3の接続状態の何れにすべきかを決定する。決定結果を示す信号は制御信号生成回路134に供給される。
【0104】
制御信号生成回路134は、上記決定結果を示す信号を参照し、上記決定結果に応じた制御信号SIG_CONTを生成する。生成された制御信号SIG_CONTは、切替弁60に供給される。
【0105】
演算部133において決定される、船体状態信号SIG_IN及び昇降信号SIG_UDと切替弁60の状態との関係は、本実施形態を限定するものではないが、一例として、実施形態1の
図6と同様に決定する構成とすることができる。
【0106】
本実施形態に係る船外機昇降装置は、制御部100aを備えているので、実施形態1と同様に、船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。また、船体状態信号SIG_INを、船外機300の状態を示す状態信号とすれば、船外機の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0107】
〔実施形態3〕
以下では、
図8を参照して実施形態3に係る制御部100bについて説明する。
図8は本実施形態に係る制御部100bの構成を示すブロック図である。
【0108】
本実施形態に係る船外機昇降装置は、実施形態1に係る船外機昇降装置1において、制御部100に代えて、
図8に示す制御部100bを備えたものである。以下の説明では、すでに説明した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0109】
制御部100bは、
図8に示すように、デジタル信号送受信回路141、昇降信号A−D変換回路132、演算部143、及び制御信号生成回路134を備えている。
【0110】
デジタル信号送受信回路141は、船体状態信号としてデジタル信号D_SIGを受信し、受信したデジタル信号D_SIGを演算部143に供給する。
【0111】
デジタル信号D_SIGは、船体200上に構成された有線又は無線ネットワークを介して伝送される信号であり、入力情報INFO_INを含んでいる。ここで、入力情報INFO_INとは、実施形態1及び2において説明した船体状態信号SIG_INによって示される情報と同様の情報である。一例として、入力情報INFO_INには、実施形態1及び2において説明した、船外機300の状態を示す状態信号と同等の情報が含まれ得る。入力情報INFO_INの具体例として、例えば、エンジン301のオンオフを示す1ビットのフラグ、船外機300の備える動力伝達機構302がインギヤの状態にあるのか否かを示す1ビットのフラグ等が挙げられる。
【0112】
デジタル信号D_SIGは、船体200に関する様々な情報及び船体200外から取得した様々な情報を含み得る。デジタル信号D_SIGを伝送するための具体的な規格は本実施形態を限定するものではないが、一例として、NMEA(National Marine Electronics Association)によって制定されたNMEA2000(登録商標)が挙げられる。
【0113】
演算部143は、デジタル信号送受信回路141から供給されるデジタル信号D_SIG、及び、昇降信号A−D変換回路132から供給されるデジタル信号としての昇降信号SIG_UDを参照し、切替弁60を第1の接続状態、第2の接続状態、及び、第3の接続状態の何れにすべきかを決定する。決定結果を示す信号は制御信号生成回路134に供給される。
【0114】
演算部143において決定される、入力情報INFO_IN及び昇降信号SIG_UDと切替弁60の状態との関係は、本実施形態を限定するものではないが、一例として、実施形態1の
図6と同様に決定する構成とすることができる。
【0115】
また、演算部143は、デジタル信号D_SIGに含まれる他の情報を更に参照して、切替弁を第1の接続状態、第2の接続状態、及び第3の接続状態の何れにすべきかを決定する構成としてもよい。
【0116】
本実施形態に係る船外機昇降装置は、制御部100bを備えているので、実施形態1と同様に、船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。また、デジタル信号D_SIGが、船外機300の状態を示す状態信号と同等の情報を含む構成では、船外機の状態に応じて船外機の昇降の速さを自動的に変更することができる。
【0117】
〔実施形態4〕
以下では、実施形態4に係る船外機昇降装置1aの構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る船外機昇降装置1aの油圧回路を制御部100と共に示す図である。
図9では、すでに説明した部材と同じ部材には同じ符号を付している。
【0118】
なお、本実施形態に係る船外機昇降装置1aは、実施形態1において説明した制御部100に代えて、実施形態2に係る制御部100aを備える構成としてもよいし、実施形態3に係る制御部100bを備える構成としてもよい。
【0119】
図9に示すように、船外機昇降装置1aでは、第6の流路C6が、第1チェック弁48bとチルトシリンダ14の下室14gとを接続する第3の流路C3に接続されており、当該第3の流路C3上において、第6の流路C6との接続箇所とチルトシリンダ14の下室14gとの間に、第1の切替弁90が設けられている。また、船外機昇降装置1aが備えるバルブ82は、船外機昇降装置1とは異なり、トリムシリンダ12の上室12fへの作動油を通過させ、トリムシリンダ12の上室12fからの作動油を遮断する1-wayバルブである。
【0120】
また、本実施形態に係る船外機昇降装置1aでは、第8の流路C8は、複数のトリムシリンダ12の上室12fの一つとタンク18とを接続している。また、第8の流路C8には、メインバルブ48に接続された第10の流路C10が接続されている。第10の流路は、より具体的には、バルブ82を介して、メインバルブ48における第1シャトル室48d及び第2シャトル室48eのうち、第2シャトル室48eに接続されている。ここで、第2シャトル室48eは、第2チェック弁48c及びフィルタF2を介して、第4の流路C4によりチルトシリンダ14の上室(第1室)に接続されている。したがって、第10の流路C10は、メインバルブ48における第1シャトル室48d及び第2シャトル室48eのうち、チルトシリンダ14の第1室に接続された第2シャトル室48eに接続されている。
【0121】
また、船外機昇降装置1aでは、第8の流路C8において、第10の流路C10との接続箇所とタンク18との間に第2の切替弁160が設けられている。
【0122】
(第1の切替弁90)
第3の流路C3上に設けられた第1の切替弁90は、
図9に示すように、ソレノイド92と、ソレノイド92によって駆動され、第3の流路C3を遮断状態又は開放状態とするプランジャ94とを備えている。ソレノイド92には、制御部100、制御部100a又は制御部100bから制御信号SIG_CONTが供給され、制御信号SIG_CONTに基づき、ソレノイド62のON/OFFが切り替えられる。
【0123】
第1の切替弁90は、ソレノイド92がOFFの場合にクローズ状態となることによって第3の流路C3を遮断し、ソレノイド92がONの場合にオープン状態となることによって第3の流路C3を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイドがOFFの場合にオープン状態となることによって第3の流路C3を開放し、ソレノイドがONの場合にクローズ状態となることによって第3の流路C3を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0124】
第1の切替弁90をノーマリーオープン弁として構成した場合、万一、第1の切替弁90が作動しなくなった場合であっても、第3の流路C3が開放された状態、すなわち、メインバルブ48の第1チェック弁48bとチルトシリンダ14の下室14gとが連通した状態で維持されるので、チルトシリンダ14を用いた船外機300の角度調整を行うことができる。
【0125】
一方で、第1の切替弁90をノーマリークローズ弁として構成した場合、万一、第1の切替弁90が作動しなくなった場合であっても、第3の流路C3が遮断された状態、すなわち、メインバルブ48の第1チェック弁48bとチルトシリンダ14の下室14gとが遮断された状態で維持されるので、チルトシリンダ14によって船外機300を保持し続けることができる。
【0126】
また、上記の説明では、ソレノイド92がオンオフソレノイドであり、プランジャ94が第3の流路C3を遮断状態及び開放状態の何れか一方の状態とする構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではない。ソレノイド92として比例ソレノイドを採用し、プランジャ94を遮断状態位置から開放状態位置までの任意の位置に制御可能な構成としてもよい。このような構成とすることにより、第3の流路C3を通過する作動油の流量をきめ細かく制御することができるので、船外機300の上昇及び下降をよりきめ細かく制御することができる。
【0127】
(第2の切替弁160)
第8の流路C8上に設けられた第2の切替弁160は、
図9に示すように、ソレノイド162と、ソレノイド162によって駆動され、第8の流路C8を遮断状態又は開放状態とするプランジャ164とを備えている。ソレノイド162には、制御部100、制御部100a又は制御部100bから制御信号SIG_CONTが供給され、制御信号SIG_CONTに基づき、ソレノイド62のON/OFFが切り替えられる。
【0128】
ここで、第2の切替弁160のソレノイド162に供給される制御信号SIG_CONTは、一般に、第1の切替弁90のソレノイド92に供給される制御信号SIG_CONTとは独立した制御信号である。
【0129】
第2の切替弁160は、ソレノイド162がOFFの場合にクローズ状態となることによって第8の流路C8を遮断し、ソレノイド162がONの場合にオープン状態となることによって第8の流路C8を開放するノーマリークローズ弁として構成してもよいし、ソレノイドがOFFの場合にオープン状態となることによって第8の流路C8を開放し、ソレノイドがONの場合にクローズ状態となることによって第8の流路C8を遮断するノーマリーオープン弁として構成してもよい。
【0130】
第2の切替弁160をノーマリーオープン弁として構成した場合、万一、第2の切替弁160が作動しなくなった場合であっても、第8の流路C8が開放された状態、すなわち、トリムシリンダ12の上室12fとタンク18とが連通した状態で維持されるので、トリムシリンダ12を用いた船外機300の上昇動作を行うことができる。
【0131】
一方で、第2の切替弁160をノーマリークローズ弁として構成した場合、万一、第2の切替弁160が作動しなくなった場合であっても、第8の流路C8が遮断された状態、すなわち、トリムシリンダ12の上室12fとタンク18とが遮断された状態で維持される。このため、ポンプ42が逆転し、作動油がポンプ42からメインバルブ48の第2シャトル室48eに圧送される下降動作において、バルブ82を通過した作動油がタンク18に還流してしまい、トリムシリンダ12の上室12fに供給されないといった状況を防ぐことができる。
【0132】
なお、プランジャ164には、第8の流路C8の遮断状態においてトリムシリンダ12の上室12fからの作動油の流出を止めるためのバルブ166が設けられている。
【0133】
また、上記の説明では、ソレノイド162がオンオフソレノイドであり、プランジャ164が第3の流路C3を遮断状態及び開放状態の何れか一方の状態とする構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではない。ソレノイド162として比例ソレノイドを採用し、プランジャ164を遮断状態位置から開放状態位置までの任意の位置に制御可能な構成としてもよい。このような構成とすることにより、第8の流路C8を通過する作動油の流量をきめ細かく制御することができるので、船外機300の上昇及び下降をよりきめ細かく制御することができる。
【0134】
(第1の切替弁90及び第2の切替弁160の制御例)
以下では、第1の切替弁90及び第2の切替弁160の制御例について説明する。
【0135】
(制御例1 第1の切替弁90:オープン、第2の切替弁160:オープン)
本例では、制御部100、制御部100a、又は制御部100bは、第1の切替弁90をオープン状態とし、第2の切替弁160もオープン状態とする。
【0136】
本例では、ポンプ42が正転することによる船外機昇降装置1aの上昇動作において、チルトシリンダ14の下室14g及びトリムシリンダ12の下室12gに作動油が供給される。また、ポンプ42が逆転することによる船外機昇降装置1aの下降動作において、チルトシリンダ14の下室14g及びトリムシリンダ12の下室12gから作動油が回収される。
【0137】
したがって、本例では、チルトシリンダ14及びトリムシリンダ12の双方を用いて、船外機300の上昇及び下降動作を行うことができる。
【0138】
(制御例2 第1の切替弁90:オープン、第2の切替弁160:クローズ)
本例では、制御部100、制御部100a、又は制御部100bは、第1の切替弁90をオープン状態とし、第2の切替弁160をクローズ状態とする。
【0139】
本例では、ポンプ42が正転することによる船外機昇降装置1aの上昇動作において、チルトシリンダ14の下室14gには作動油が供給される。一方、トリムシリンダ12の上室12fから作動油が排出されないため、トリムシリンダ12の下室12gには作動油が供給されない。
【0140】
ポンプ42によって供給される単位時間当たりの作動油量は、第1の切替弁90及び第2の切替弁160の状態に依らず略一定である。このため、本例では、制御例1に比べて、チルトシリンダ14が速く上昇するので、船外機300の上昇を速く行うことができる。
【0141】
(制御例3 第1の切替弁90:クローズ、第2の切替弁160:オープン)
本例では、制御部100、制御部100a、又は制御部100bは、第1の切替弁90をクローズ状態とし、第2の切替弁160をオープン状態とする。
【0142】
本例では、ポンプ42が正転することによる船外機昇降装置1aの上昇動作において、チルトシリンダ14の下室14gには作動油が供給されず、トリムシリンダ12の下室12gには作動油が供給される。また、ポンプ42が逆転することによる船外機昇降装置1aの下降動作において、チルトシリンダ14の下室14gからは作動油が回収されず、トリムシリンダ12の下室12gからは作動油が回収される。
【0143】
例えば、船艇係留場所が浅瀬等である場合、船外機が湖底に接触し破損しないように、船外機昇降装置1をトリム域中間程度に設定して航行させるという状況が生じ得る。その後、第1の切替弁90がオープン状態、第2の切替弁160がクローズ状態となっている状態で係留地点でエンジンを止めると、船外機300を上昇させる動作において、チルトシリンダ14のピストンロッド14fは上昇するものの、トリムシリンダ12のピストンロッド12fは中間位置で固定されてしまうという状況が生じ得る。このような状況において、トリムシリンダ12のピストンロッド12fを下降させるために、制御部100、制御部100a、又は制御部100bは、第1の切替弁90をクローズ状態、第2の切替弁160をオープン状態とすればよい。
【0144】
また、以下のような場合にも、制御部100が制御部100、制御部100a、又は制御部100bは、第1の切替弁90をクローズ状態、第2の切替弁160をオープン状態としてもよい。チル卜シリンダ14のみを用いて船外機300を上昇又は下降させたことにより、トリムシリンダ12のピストンロッド12fの先端がスイベルブラケット80から離れているという状況が生じ得る。このような状況において、船外機300のエンジンをオンとする前に、制御部100、制御部100a、又は制御部100bが、第1の切替弁90をクローズ状態、第2の切替弁160をオープン状態としてトリムシリンダ12のピストンロッド12fを動作させることによりピストンロッド12fの先端をスイベルブラケット80に接触させ、チルトシリンダ14のピストンロッド14f及びトリムシリンダ12のピストンロッド12fを用いて船外機300を保持する。
【0145】
〔実施形態5〕
以下では、実施形態5として、実施形態1及び2において説明した船体状態信号SIG_INの他の具体例について説明する。船体状態信号SIG_INは、実施形態1及び2において説明した具体例に代えて、又は、実施形態1及び2において説明した具体例に加えて、後述する他の具体例の1又は複数を含む構成とすることができる。
【0146】
なお、実施形態3において説明したように、実施形態3に係るデジタル信号D_SIGは、船体状態信号SIG_INが含む情報と同等の情報を含む。従って、以下において、船体状態信号SIG_INに関し説明する事項は実施形態1及び2のみならず、実施形態3に係るデジタル信号D_SIGに対しても適用されるものである。
【0147】
船体状態信号SIG_INに含まれ得る信号は、
(A)船外機300から取得可能な船外機性能信号
(B)船体(本体)200から取得可能な船体(本体)性能信号
に分類される。
【0148】
船外機300から取得可能な船外機性能信号、及び、当該船外機性能信号を参照した制御部100、100a、100b(以下単に制御部とも記載する)による制御例は以下の通りである。
【0149】
(A−1)イグニッション信号
イグニッション信号は、船外機300のイグニッションのオンオフを示す信号である。
【0150】
制御部は、例えば、イグニッションオンである場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、イグニッションオフである場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0151】
(A−2)チルト/トリム制御信号
チルト/トリム制御信号は船外機300のチルト及び/又はトリムを制御するための信号である。
【0152】
制御部は、チルト/トリム制御信号に応じて、切替弁60を切り替える。
【0153】
(A−3)エンジンニュートラル信号
エンジンニュートラル信号は、船外機300のエンジンがニュートラルであるか否かを示す信号である。
【0154】
制御部は、例えば、エンジンがニュートラルでない場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンがニュートラルである場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0155】
(A−4)トリム角度信号
トリム角度信号は、船外機300のトリムの角度を示す信号である。
【0156】
制御部は、例えば、船外機300のトリムの角度が所定の値よりも小さい場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、船外機300のトリムの角度が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0157】
(A−5)エンジン水温信号
エンジン水温信号は、船外機300のエンジンの水温を示す信号である。
【0158】
制御部は、例えば、エンジンの水温が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの水温が所定の値よりも小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0159】
(A−6)エンジン油温信号
エンジン水温信号は、船外機300のエンジンの油温を示す信号である。
【0160】
制御部は、例えば、エンジンの油温が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの油温が所定の値よりも小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0161】
(A−7)エンジン油圧信号
エンジン油圧信号は、船外機300のエンジンの油圧を示す信号である。
【0162】
制御部は、例えば、エンジンの油圧が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、エンジンの油温が所定の値よりも小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0163】
(A−8)水位信号
水位信号は、船外機300における水面の水位を示す信号である。
【0164】
制御部は、水位信号に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、水位信号の示す水位が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、水位信号の示す水位が所定の値より小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0165】
(A−9)スロットル開度信号
スロットル開度信号は、船外機300のエンジンのスロットルの開度を示す信号である。
【0166】
制御部は、例えば、スロットルの開度が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、スロットルの開度が所定の値より小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0167】
(A−10)船速信号(水流信号)
船速信号は、船速を示す信号である。船速は水流の速さを参照して特定されるので、船速信号は、水流信号と呼んでもよい。
【0168】
制御部は、船速が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、船速が所定の値より小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0169】
(A−11)バッテリー電圧信号
バッテリー電圧信号はバッテリーの電圧を示す信号である。
【0170】
制御部は、バッテリーの電圧に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、バッテリーの電圧が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、バッテリーの電圧が所定の値より小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0171】
(A−12)大気圧信号
大気圧信号は、大気圧を示す信号である。制御部は、大気圧に応じて、切替弁60を切り替える。
【0172】
(A−13)ジェネレータ出力電圧
上述した実施形態1〜11及び本実施形態に係る船外機300は、当該船外機300が備えるエンジン301に接続されたジェネレータを備えている。
【0173】
図10は、船外機300のエンジン301周辺の構成を示すブロック図である。
図10に示すように、船外機300は、エンジン301、エンジン301からプロペラ303に動力を伝達する動力伝達機構302、エンジン301により駆動されるジェネレータ(発電機)310、及びメインバッテリー311を備えている。また、一例として船外機300は、メインバッテリー311に加え、予備バッテリーも搭載可能に構成されている。
【0174】
図17に示すように、ジェネレータ310からは、メインバッテリー310aへの導線310aに加え、予備バッテリーへの導線310bが引き出されている。当該導線310bは制御部100、100a、100bに接続され、当該導線310bの電位は、制御部によりジェネレータの出力電圧として参照される。
【0175】
本例に係る制御部は、船体状態信号SIG_INとして、ジェネレータの出力電圧を参照し、当該ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第1閾値以上である場合に、航行状態と判定し、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行う。ここで、電圧に関する上記第1閾値は、例えば、適宜設定された正の値を有する。
【0176】
また、制御部は、船体状態信号SIG_INとして、ジェネレータの出力電圧を参照し、当該ジェネレータの出力電圧が、電圧に関する第2閾値を超える場合に、航行状態と判定し、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行う構成としてもよい。ここで、電圧に関する上記第2閾値は、例えば、適宜設定された0以上の値を有する。
【0177】
なお、以上例示した信号のうち、(A−1)〜(A−11)、及び(A−13)は、船外機300の状態を示す状態信号と捉えることもできる。
【0178】
続いて、船体200から取得可能な船体(本体)性能信号、及び、当該船体(本体)性能信号を参照した制御部による制御例は以下の通りである。
【0179】
(B−1)衝撃信号
衝撃信号は、船体200が受ける衝撃を示す信号である。
【0180】
制御部は、衝撃信号に応じて切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、船体200が受ける衝撃、又は衝撃信号自体の有無に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、衝撃が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、衝撃が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0181】
(B−2)方位信号
方位信号は、船体200の進行方向を示す信号である。制御部は、方位信号に応じて、切替弁60を切り替える。
【0182】
(B−3)ソナー信号
ソナー信号は、船体200が備えるソナーから供給される信号である。
【0183】
制御部は、ソナー信号に応じて、切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、ソナー信号が示す障害物の有無、又は、ソナー信号自体の有無に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、障害物がある場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0184】
(B−4)GPS信号
GPS信号は、船体200が備えるGPS(Global Positioning System)装置から供給される信号である。なお、GPS装置は船体の上または近辺にあっても良い。
【0185】
制御部は、GPS信号が示す船速が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、GPS信号が示す船速が所定の値より小さい場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0186】
(B−5)トランサム振動信号
トランサム振動信号は、船体200が備えるトランサムの振動を示す信号である。
【0187】
制御部は、トランサム振動信号に応じて、切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、トランサム振動信号の示す振動、又は、トランサム振動信号自体の有無に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、トランサムの振動が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、トランサムの振動が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0188】
(B−6)水温信号
水温信号は、船体200の周囲の水温を示す信号である。制御部は、水温信号に応じて、切替弁60を切り替える。
【0189】
(B−7)振動信号
振動信号は、船体200の振動を示す信号である。
【0190】
制御部は、振動信号に応じて、切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、振動信号の示す振動、又は振動信号自体の有無に応じて切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、振動信号の示す振動が所定の値以上である場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、振動信号の示す振動が所定の値より小さい場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0191】
(B−8)IP画像信号
IP画像信号は、船体200の周辺の状況を示す画像信号である。
【0192】
制御部は、IP画像信号に応じて、切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、IP画像信号の示す障害物の有無、または、IP画像信号自体の有無に応じて切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、障害物がある場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0193】
(B−9)レーダー信号
レーダー信号は、船体200が備えるレーダーから供給される信号である。
【0194】
制御部は、レーダー信号に応じて、切替弁60を切り替える。より具体的には、制御部は、レーダー信号が示の障害物の有無、または、レーダー信号自体の有無に応じて切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、障害物がある場合に、
図6における「エンジンオン又はインギヤ」の状態の制御と同様の制御を行い、障害物がない場合、または、信号が無い場合に、
図6における「エンジンオフ又はインギヤでない」の状態の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0195】
(B−10)音声信号
音声信号は、操船者(ユーザ)の音声を示す信号である。
【0196】
制御部は、音声信号に応じて、切替弁60を切り替える。制御部は、例えば、音声信号に含まれる音声指示を参照して、
図6の制御と同様の制御を行う構成とすればよい。
【0197】
なお、以上例示した信号のうち、(B−1)〜(B−9)は、船体(本体)200の状態を示す状態信号と捉えることもできる。
【0198】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御部100、100a、100bは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0199】
後者の場合、制御部100、100a、100bは、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0200】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【解決手段】船外機昇降装置(1)は、ポンプ(42)とチルトシリンダ(14)の第2室とを接続する第1の油路と、トリムシリンダ(12)の第2室に接続された第2の油路と、第1の油路上に設けられた切替弁(60)と、船体状態信号を参照して切替弁(60)を制御する制御部(100)とを備えている。