特許第6330105号(P6330105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6330105
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】始動発電装置および始動発電方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20180514BHJP
   H02P 6/182 20160101ALI20180514BHJP
   H02P 6/20 20160101ALI20180514BHJP
   H02P 101/25 20150101ALN20180514BHJP
   H02P 101/45 20150101ALN20180514BHJP
   H02P 103/20 20150101ALN20180514BHJP
【FI】
   H02P9/04
   H02P6/182
   H02P6/20
   H02P101:25
   H02P101:45
   H02P103:20
【請求項の数】7
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2017-512062(P2017-512062)
(86)(22)【出願日】2016年10月4日
(86)【国際出願番号】JP2016079497
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】新井 達也
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/143036(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/143032(WO,A1)
【文献】 特許第4329527(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/04
H02P 6/182
H02P 6/20
H02P 101/25
H02P 101/45
H02P 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石からなる界磁部と、第1多相巻線および第2多相巻線が並列に配設された電機子部とを有する始動発電機と、
バッテリに接続される第1正側直流端子と、前記第1多相巻線に接続された複数の第1交流端子とを有し、直流および交流間で双方向に電力を変換する第1電力変換部と、
前記第2多相巻線に接続された複数の第2交流端子を有し、前記第2交流端子を介して入出力する電流を制御する第2電力変換部と、
前記第2多相巻線の出力電圧に基づき前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知し、検知した前記位置関係に応じて前記第1電力変換部と前記第2電力変換部とを制御する制御部と
を備え、
前記制御部が、前記第2交流端子を介して入出力する電流をオフした状態で、前記第1多相巻線に前記バッテリの出力電圧を所定時間印加したときに前記第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅に基づき、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
始動発電装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記2以上の所定の電圧の時間幅と、電圧依存性が異なる複数の判定値とを比較することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
請求項1に記載の始動発電装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記2以上の所定の電圧の時間幅と、前記2以上の所定の電圧の時間幅の差分値と、電圧依存性が異なる複数の判定値とを比較することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
請求項1に記載の始動発電装置。
【請求項4】
前記制御部が、所定の領域毎に前記位置関係を検知するものであり、前記各領域の境界上において前記界磁部が形成する磁束ベクトルと前記第1多相巻線及び前記第2多相巻線に流れる電流ベクトルとの位相差が120°となることができるように前記各領域が設定されている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の始動発電装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記始動発電機の回転始動時の前記電機子部への通電パターンの切り替え位置をまたぐ複数の領域を判別することで前記位置関係を検知する
請求項1に記載の始動発電装置。
【請求項6】
前記所定の電圧は、前記2以上の巻線に発生した電圧が所定のしきい値を超える電圧であり、
前記しきい値が前記バッテリの出力電圧に基づき設定される
請求項1から5のいずれか1項に記載の始動発電装置。
【請求項7】
永久磁石からなる界磁部と、第1多相巻線および第2多相巻線が並列に配設された電機子部とを有する始動発電機と、
バッテリに接続される第1正側直流端子と、前記第1多相巻線に接続された複数の第1交流端子とを有し、直流および交流間で双方向に電力を変換する第1電力変換部と、
前記第2多相巻線に接続された複数の第2交流端子を有し、前記第2交流端子を介して入出力する電流を制御する第2電力変換部と、
前記第2多相巻線の出力電圧に基づき前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知し、検知した前記位置関係に応じて前記第1電力変換部と前記第2電力変換部とを制御する制御部と
を用い、
前記制御部が、前記第2交流端子を介して入出力する電流をオフした状態で、前記第1多相巻線に前記バッテリの出力電圧を所定時間印加したときに前記第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅に基づき、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する
始動発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動発電装置および始動発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両、特に小型二輪車などにおいては、エンジン始動時にスタータモータとして働くと共にエンジン始動後は発電機として働くACG(ACジェネレータ)スタータモータが用いられている。このACGスタータモータでは、三相DCブラシレスモータが用いられている(特許文献1)。この三相DCブラシレスモータのエンジン始動時および発電時におけるロータの位置検出では、三相巻線の各相の巻線の各々に対応してホールセンサを設け、このホールセンサを用いてロータの位置検出を行っていた。
【0003】
一方、ホールセンサを使用せずにロータの位置を検知する技術が開発されてきた(特許文献2)。特許文献2に記載されている制御装置では、ブラシレスモータが停止している場合、3相巻線のうちの2巻線に複数パターンの直流電圧を短時間印加して、ロータ位置に応じて変化する電流の立ち上がり特性を計測することでロータの停止位置を検知していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2003−83209号公報
【特許文献2】日本国特許第4801772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されている制御装置には、巻線に流れる電流を検出するための回路が必要である。電流検出回路は、一般に電圧検出回路に比べ、構成が複雑であったり、損失が大きくなってしまったりするという傾向がある。そのため、特許文献2に記載されている制御装置には、小型化が難しかったり、低価格化が難しかったりするという課題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決することができる始動発電装置および始動発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の始動発電装置の一態様は、永久磁石からなる界磁部と、第1多相巻線および第2多相巻線が並列に配設された電機子部とを有する始動発電機と、バッテリに接続される第1正側直流端子と、前記第1多相巻線に接続された複数の第1交流端子とを有し、直流および交流間で双方向に電力を変換する第1電力変換部と、前記第2多相巻線に接続された複数の第2交流端子を有し、前記第2交流端子を介して入出力する電流を制御する第2電力変換部と、前記第2多相巻線の出力電圧に基づき前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知し、検知した前記位置関係に応じて前記第1電力変換部と前記第2電力変換部とを制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記第2交流端子を介して入出力する電流をオフした状態で、前記第1多相巻線に前記バッテリの出力電圧を所定時間印加したときに前記第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅に基づき、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する。
【0008】
また、本発明の一態様は、上記の始動発電装置において、前記制御部が、前記2以上の所定の電圧の時間幅と、電圧依存性が異なる複数の判定値とを比較することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記の始動発電装置において、前記制御部が、前記2以上の所定の電圧の時間幅と、前記2以上の所定の電圧の時間幅の差分値と、電圧依存性が異なる複数の判定値とを比較することで、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記の始動発電装置において、前記制御部が、所定の領域毎に前記位置関係を検知するものであり、前記各領域の境界上において前記界磁部が形成する磁束ベクトルと前記第1多相巻線及び前記第2多相巻線に流れる電流ベクトルとの位相差が120°となることができるように前記各領域が設定されている。
【0011】
また、本発明の一態様は、上記の始動発電装置において、前記制御部が、前記始動発電機の回転始動時の前記電機子部への通電パターンの切り替え位置をまたぐ複数の領域を判別することで前記位置関係を検知する。
【0012】
また、本発明の一態様は、上記の始動発電装置において、前記所定の電圧は、前記2以上の巻線に発生した電圧が所定のしきい値を超える電圧であり、前記しきい値が前記バッテリの出力電圧に基づき設定される。
【0013】
また、本発明の始動発電方法の一態様は、永久磁石からなる界磁部と、第1多相巻線および第2多相巻線が並列に配設された電機子部とを有する始動発電機と、バッテリに接続される第1正側直流端子と、前記第1多相巻線に接続された複数の第1交流端子とを有し、直流および交流間で双方向に電力を変換する第1電力変換部と、前記第2多相巻線に接続された複数の第2交流端子を有し、前記第2交流端子を介して入出力する電流を制御する第2電力変換部と、前記第2多相巻線の出力電圧に基づき前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知し、検知した前記位置関係に応じて前記第1電力変換部と前記第2電力変換部とを制御する制御部とを用い、前記制御部が、前記第2交流端子を介して入出力する電流をオフした状態で、前記第1多相巻線に前記バッテリの出力電圧を所定時間印加したときに前記第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅に基づき、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1多相巻線にバッテリの出力電圧を所定時間印加したときに第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅を検出することで、ロータの停止位置を判定することができる。これによれば電流検出を不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態の構成例を示したブロック図である。
図2図1に示した始動発電機1の構成例を模式的に示した図である。
図3図2示した巻線部ACG1および巻線部ACG2を示す結線図である。
図4図1に示した第1電力変換部61、第2電力変換部62および制御部7の内部構成を説明するための回路図である。
図5図1に示した始動発電制御装置100のスタータモータ始動制御の一例を示したフローチャートである。
図6図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための等価回路図である。
図7図5に示したステージ判別処理(S12)で判別されるステージとロータ角度の対応関係を示す図である。
図8図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための模式図である。
図9図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図10図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図11図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための模式図である。
図12図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図13図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図14図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための模式図である。
図15図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図16図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図17図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための模式図である。
図18図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図19図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための模式図である。
図20図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するための波形図である。
図21図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのシミュレーション回路を示す回路図である。
図22図21に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのシミュレーション回路を用いた計算結果を示す波形図である。
図23図21に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのシミュレーション回路を用いた計算結果を示す波形図である。
図24図21に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのシミュレーション回路を用いた計算結果を示す波形図である。
図25図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのタイミングチャートである。
図26図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのロータ角度とパルス幅の対応関係を示す特性図である。
図27図26に示した特性図の近似曲線を示す図である。
図28図27に示した閾値の電圧特性を示す図である。
図29図27に示した近似曲線に対応するステージ判別条件を示す図である。
図30図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのフローチャートである。
図31図5に示した処理(S15)を説明するための波形図である。
図32図1に示した始動発電制御装置100の発電制御の一例を示したフローチャートである。
図33図32に示した処理(S22)を説明するための波形図である。
図34】本発明の第2の実施形態を説明するための模式図である。
図35】本発明の第2の実施形態を説明するための波形図である。
図36】本発明の第2の実施形態を説明するための特性図である。
図37】本発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図38】本発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図39】本発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図40】本発明の第2の実施形態を説明するためのフローチャートである。
図41】本発明の第2の実施形態を説明するための特性図である。
図42図4に示した回路の一部を示す図である。
図43図1に示した始動発電機1の回転始動時の通電パターンの一例を示す図である。
図44図43に示した通電パターンとロータ角度との対応関係を示す図である。
図45図1に示した始動発電機1の回転始動時の他の通電パターンを示す図である。
図46図45に示した通電パターンとロータ角度との対応関係を示す図である。
図47図43に示した通電パターンと図45に示した通電パターンを比較する際に用いる波形図である。
図48図43に示した通電パターンと図45に示した通電パターンを比較する際に用いる波形図である。
図49図43に示した通電パターンと図45に示した通電パターンを比較する際に用いる波形図である。
図50】本発明の第3の実施形態に係る図5に示したステージ判別処理(S12)を説明するためのフローチャートである。
図51図50に示したステージ判別処理の動作例を説明するためのロータ角度とパルス幅の対応関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して本発明第1の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の参照符号を用いている。図1は、本発明の第1の実施形態の始動発電制御装置100の構成例を示したブロック図である。図1に示した始動発電制御装置100は、始動発電機(ACGスタータモータ)1と、第1電力変換部61と、第2電力変換部62と、制御部7とを備える。始動発電機1は、クランクシャフト3に直結されていて、エンジン2の回転に同期して回転する。第1電力変換部61、第2電力変換部62および制御部7は、バッテリ9の正極が接続されるとともに、接地されている。バッテリ9は、負極が接地された2次電池である。また、スタータスイッチ8の一端がバッテリ9の正極に接続され、スタータスイッチ8の他端が制御部7に接続されている。スタータスイッチ8は、ユーザがエンジン2を始動する際に操作するスイッチである。また、制御部7には、エンジン水温計5の出力が接続されている。
【0017】
始動発電機1は、第1電力変換部61および第2電力変換部62の制御によって、スタータモータとして動作したり、発電機として動作したりする。始動発電機1は、巻線部ACG1と巻線部ACG2と図2に示す界磁部15とを備える。巻線部ACG1はスター結線された3相巻線(多相巻線)を構成する巻線U1、V1およびW1を備える。巻線部ACG2はスター結線された3相巻線を構成する巻線U2、V2およびW2を備える。中性点N1は巻線部ACG1を構成するスター結線の中性点である。中性点N2は巻線部ACG2を構成するスター結線の中性点である。巻線U1、V1およびW1と、巻線U2、V2およびW2とは、図示してない同一の電機子鉄心に巻かれていて、電気的に絶縁されている1組の電機子巻線である。なお、巻線部ACG1と巻線部ACG2と図示してない電機子鉄心とは電機子部を構成する。なお、巻線部ACG1と巻線部ACG2とはスター結線に限らず、デルタ結線で構成されていてもよい。
【0018】
図2は、図1に示す始動発電機1における界磁部15と、電機子鉄心16と巻線部ACG1と巻線部ACG2とからなる電機子部161との構成例を軸方向から見て模式的に示した図である。図2に示した構成例では、始動発電機1は、界磁部15を複数組のN極の永久磁石15NおよびS極の永久磁石15Sから構成したアウターロータ型のブラシレスモータである。この場合、巻線部ACG1を構成する巻線U1、V1およびW1は、それぞれ、電機子鉄心16に対して120度おきに配設された巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3および巻線W1−1〜W1−3から構成されている。巻線部ACG2を構成する巻線U2、V2およびW2は、それぞれ、電機子鉄心16に対して120度おきに配設された巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3および巻線W2−1〜W2−3から構成されている。図2に示した構成例では、界磁部15の極数が12である。界磁部15は、各極が交互に配設されたN極の永久磁石15N−1、3、5、7、9および11と、S極の永久磁石15S−2、4、6、8、10および12とから構成されている(なお以下では永久磁石を単に磁石ともいう)。電機子鉄心16のスロット数は18であり、各スロットには、巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3または巻線W1−1〜W1−3のうちの1つと、巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3または巻線W2−1〜W2−3のうちの1つとが交互に巻回されている。図3に示すように、巻線U1−1〜U1−3、巻線V1−1〜V1−3および巻線W1−1〜W1−3は、それぞれ直列接続されていて、巻線U1−3、巻線V1−3および巻線W1−3の各一端が中性点N1で互いに接続されている。同様に、巻線U2−1〜U2−3、巻線V2−1〜V2−3および巻線W2−1〜W2−3は、それぞれ直列接続されていて、巻線U2−3、巻線V2−3および巻線W2−3の各一端が中性点N2で互いに接続されている。
【0019】
なお、以下の説明において、回路の接続先として巻線U1または巻線U2という呼称を用いた場合、中性点N1または中性点N2とは逆の端子である巻線U1の入出力端子または巻線U2の入出力端子を指し示す。巻線V1、巻線W1、巻線V2、および巻線W2についても同様とする。また、巻線U1、巻線U2、巻線V1、巻線W1、巻線V2、巻線W2、中性点N1および中性点N2を、単に符号U1、U2、V1、W1、V2、W2、N1およびN2で表す場合もある。
【0020】
なお、図1において、エンジン2は例えば小型二輪車に搭載された発動機である。クランクシャフト3は、エンジン2の構成部品であり、エンジン2が備える図示していないピストンの往復運動を回転運動に変換する軸である。エンジン水温計5は、エンジン2の冷却水の温度を検知するセンサである。
【0021】
次に、図4を参照して、図1に示した第1電力変換部61、第2電力変換部62および制御部7の内部構成の一例について説明する。図4に示したように、第1電力変換部61は、6個のnチャネルMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ、以下、MOSFETと記す(スイッチ素子))(Q1)〜(Q6)を備え、3相ブリッジ直交変換回路(多相ブリッジ回路)を構成する。第1電力変換部61は、直流入出力線の正側(ハイサイド)直流端子614(第1正側直流端子)をバッテリ9の正極に、負側(ローサイド)直流端子615をバッテリ9の負極に接続している。第1電力変換部61は、バッテリ9と巻線部ACG1との間、またはバッテリ9と巻線部ACG1および巻線部ACG2との間で、交流および直流間の双方向の電力変換を行う。また、第1電力変換部61の各交流端子(第1交流端子)611、612および613には、巻線部ACG1の各巻線U1、V1およびW1が接続されている。
【0022】
第2電力変換部62は、3個の交流端子(第2交流端子)621、622および623と、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)とを備える。交流端子621は、巻線部ACG2の巻線U2とMOSFET(Q7)のドレインとに接続されている。交流端子622は、巻線部ACG2の巻線V2とMOSFET(Q8)のドレインとに接続されている。交流端子623は、巻線部ACG2の巻線W2とMOSFET(Q9)のドレインとに接続されている。MOSFET(Q7)のソースは、第1電力変換部61の交流端子611に接続されている。MOSFET(Q8)のソースは、第1電力変換部61の交流端子612に接続されている。MOSFET(Q9)のソースは、第1電力変換部61の交流端子613に接続されている。第2電力変換部62は、MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオンまたはオフすることで、交流端子621、622および623を介して入出力する電流を制御する。この場合、第2電力変換部62は、MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオンまたはオフすることで、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2をそれぞれ第1電力変換部61の各交流端子611、612および613に接続したり、分離したりする。
【0023】
また、この場合、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、巻線部ACG1の各巻線U1、V1およびW1が接続されている第1電力変換部61の各交流端子611、612および613と、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2との間に介挿されている。そして、3個のMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2を、オンすることで各交流端子611、612および613に対して接続したり、オフすることで各交流端子611、612および613から分離したりする。
【0024】
また、各MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)は、ドレイン・ソース間に寄生ダイオードD7、D8およびD9が形成されている(なお、他のMOSFETについては寄生ダイオードは不図示)。寄生ダイオードD7、D8およびD9の向きは、各交流端子611、612および613に対して同一であり、この場合、アノードが各交流端子611、612および613に接続されている。また、カソードは、巻線部ACG2の各巻線U2、V2およびW2に接続されている。このように寄生ダイオードD7、D8およびD9の向きをそろえることで、各MOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)をオフした場合に、モータ動作における第1電力変換部61を介したバッテリ9から巻線部ACG2への電流の流れ込みおよび発電動作における第1電力変換部61を介した巻線部ACG2からバッテリ9への電流の流れ出しを遮断することができる。なお、寄生ダイオードD7、D8およびD9の向き(すなわちMOSFET(Q7)、(Q8)および(Q9)のドレインおよびソースの向き)は、図示したものと逆向きであってもよい。
【0025】
制御部7は、MOSFETゲートドライブ回路71と、CPU(中央処理装置)72と、検出・判定回路部73と、抵抗76−1〜76−4とを備える。なお、制御部7は、他に、センサやアクチュエータ等との間の入出力を接続することで、エンジン2の点火制御等を行うこともできる。検出・判定回路部73は、ゼロクロス検出回路74と、ロータ位置判定回路75とを備える。
【0026】
抵抗76−1は一端を巻線U2に接続し、他端を接地する。抵抗76−2は一端を巻線V2に接続し、他端を接地する。抵抗76−3は一端を巻線W2に接続し、他端を接地する。そして、抵抗76−4は一端を中性点N2に接続し、他端を接地する。抵抗76−1〜76−4の端子電圧が、検出・判定回路部73へ入力される。
【0027】
ゼロクロス検出回路74は、巻線U2、V2およびW2で発生した誘起電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス検出回路74は、ゼロクロス点を検出した場合に、ロータ位置が予め定めたどのステージにあるのかを示す信号であるステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0028】
ロータ位置判定回路75は、始動発電機1の停止時に、次のようにしてロータの位置が予め定めたどのステージにあるのかを判定し、判定結果をCPU72へ出力する。ここで、始動発電機1の停止時とは、エンジン2の停止時を意味する。また、ロータの位置とは、界磁部15と、巻線部ACG1および巻線部ACG1との間の相対的な位置関係を意味する。ロータ位置判定回路75によるステージの判定は、第2電力変換部62によって、巻線部ACG2を電気的に開放した状態で行われる。ロータ位置判定回路75は、第1電力変換部61を使って巻線部ACG1に予め決められたモータが動かない程度の短パルスを通電した場合に、もう一方の巻線部ACG2に誘起される電圧情報(パルス幅)をもって、ロータステージを判定する。
【0029】
CPU72は、ゼロクロス検出回路74の出力、ロータ位置判定回路75の出力等に基づいて、MOSFET(Q1)〜(Q9)をオンまたはオフするための制御信号を生成してMOSFETゲートドライブ回路71へ出力する。
【0030】
MOSFETゲートドライブ回路71は、CPU72から入力した制御信号に応じて、MOSFET(Q1)〜(Q9)の各ゲート信号を生成し、MOSFET(Q1)〜(Q9)の各ゲートに供給する。
【0031】
次に、図5図33を参照して、図1図4を参照して説明した始動発電制御装置100の動作例について説明する。まず、図5図31を参照して、始動発電機1をエンジン2の始動を行うスタータモータとして動作させる場合について説明する。次に、図32および図33を参照して、始動発電機1を発電機として動作させる場合について説明する。
【0032】
図5は、図1に示した始動発電制御装置100におけるスタータモータ始動制御の一例を示したフローチャートである。エンジン2が停止している状態で図示していないイグニションスイッチがユーザによってオンされた場合、制御部7に対してバッテリ9から電力が供給され、CPU72が所定の初期処理を行った後、図5に示した処理を開始する。まず、CPU72は、スタータスイッチ8がオンされるまで待機する(ステップS11でNOの繰り返し)。ユーザがスタータスイッチ8をオンすると、CPU72はステージ判別処理を実行する(ステップS11でYESからステップS12)。
【0033】
ステップS12において、CPU72は、まず、第2電力変換部62のMOSFET(Q7)〜(Q9)をオフし、巻線部ACG1と巻線部ACG2とを電気的に分離する。次に、CPU72は、第1電力変換部61のMOSFET(Q1)〜(Q6)をオンまたはオフに制御することで、巻線部ACG1に予め決められたモータが動かない程度の短パルスを通電する。一方、ロータ位置判定回路75は、巻線部ACG2に誘起される電圧を取り込み、ロータステージを判定する。
【0034】
ここで、図6を参照して、図5のステップS12においてセンサレスでロータ位置を判別する処理の基本原理について説明する。図6は、巻線部ACG1と巻線部AGC2におけるU相およびW相についての等価回路である。ここでは、巻線部ACG1が有する巻線を一次巻線とし、巻線部ACG2が有する巻線を二次巻線として説明する。本実施形態では、巻線U1と巻線W1とを直列接続した一次巻線に短パルスを通電し(すなわちU1とW1の線間に電圧を印加し)、二次巻線に発生する電圧(具体的には巻線U2の相電圧U2−N2と巻線W2の相電圧W2−N2)を計測することで、ロータ位置を判別する。この場合、一次巻線と二次巻線は、図6に示すように、磁石を経由した磁気回路を形成しトランスと見なすことが出来る。図6は、巻線U1を表す巻線202と巻線W1を表す巻線203とを一次側巻線とし、巻線W2を表す巻線206と巻線U2を表す巻線207とを二次側巻線とするトランス200を示す。この場合、一次側巻線は、漏れインダクタンス201および204を有し、二次側巻線は、漏れインダクタンス205および208を有する。
【0035】
一次巻線に通電したときの一次電流Ipは二次巻線の電流が無視できるほど小さいので次式となる。
【0036】
【数1】
【0037】
ここで、Vは一次巻線へのパルス通電電圧、Rは一次巻線抵抗、Lは一次巻線インダクタンス、τはL/Rである。一次巻線のU1巻線、W1巻線のターン数をNp、磁路抵抗をRmu、Rmwとする。それぞれの巻線から発生する磁束φpu、φpwは以下となる。ただしVu、Vwは巻線電圧でありVu/Vw=Lu/Lwの関係がある。時定数をτu=Lu/R、τw=Lw/Rとおく。
【0038】
【数2】
【0039】
一次巻線と二次巻線をトランス回路として漏れ磁束を加味して等価回路で表すと図6のように表現できるが、一次巻線、二次巻線の有効インダクタンスは漏れ磁束により低下する。この漏れ磁束により二次巻線と交鎖する有効磁束φsは一次、二次巻線の結合係数をKであらわすと次式となる。
【0040】
【数3】
【0041】
よって二次巻線に誘導される電圧Vsは二次巻線の巻線数をNsとすると次式となる。
【0042】
【数4】
【0043】
電圧Vsは、
【0044】
【数5】
【0045】
を最大値とする時間t=+0で指数関数的に減衰する電圧となる。
【0046】
よって二次巻線のそれぞれに誘起される電圧は、U1巻線とW2巻線、W1巻線とU2巻線がそれぞれ磁気結合していることを考慮すると次式で表される。ただしVsu、Vswの式にではNp=Nsとする。
【0047】
【数6】
【0048】
【数7】
【0049】
の関係式を上式に代入すると
【0050】
【数8】
【0051】
となる。
【0052】
Np、Ns、R、Kはモータの構造によって定まる値であり、二次巻線の誘起電圧は上式から一次巻線の磁気抵抗、インダクタンスにより決定される。すなわち磁石と一次、二次巻線との位置が定まれば、磁石のつくる磁界と巻線が作る磁界が強めあうか弱めあうかによって変化する磁気抵抗(インダクタンス)によって二次巻線の誘起電圧は一意的に定まる。
【0053】
減衰率はexp(−t/τ)、τ=L/R であることから減衰率を計測する事によってインダクタンスを知ることが出来る。すなわち磁石の位置を特定することが出来る。
【0054】
いまVsに対し適当な閾値をもった電圧判定回路を設け閾値を下回った時の時刻を計測することによって減衰率の大小、すなわちインダクタンスを計測することになる。よって二次巻線のU、W相に誘起される電圧をパルス化しその時間を計測する事によって磁石の位置を検出することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、二重巻線は、ACG1(U1、V1、W1)ACG2(U2、V2、W2、N2)から構成されており、電気的、磁気的に分離されている。図2に示した例では、巻線部ACG1と巻線部ACG2は一つ飛びに巻線(U1⇒V2⇒W1⇒U2…)されている(ただし、他の巻き方もありうる。)。巻線部ACG1に例えばU1からW1に通電すると隣り合うW2、U2に磁力線の変化を生じそれにともなう誘起電圧が発生する。対向する磁石の極との関係(同極、異極、磁石に対して中央か端によっているか)によって巻線のインダクタンスが変化することで誘起電圧の大きさは変化する。U1、W1は直列接続であるから同じ電流で励磁される。発生する磁束は対向する磁石の極性と位置関係のみで決定される。例えば、U1、W1が励磁され対向する磁石の極が異極の場合、磁気抵抗が増加しインダクタンスが小さくなる。同極の場合は磁気抵抗が減少し、インダクタンスは大きくなる。
【0056】
なお、本実施形態では、電気角の1周期360度を60度毎のステージ1〜ステージ6に6分割してロータ位置を判別する。各ステージは、図7に示すようにそれぞれロータ角度(機械角)で10度毎に対応する。ロータ角度0〜10度がステージ3、ロータ角度10〜20度がステージ2、ロータ角度20〜30度がステージ6、ロータ角度30〜40度がステージ4、ロータ角度40〜50度がステージ5、そして、ロータ角度50〜60度がステージ1に対応する。図7に示すパターンを6回繰り返すことでロータ角度360度に対応する。
【0057】
次に、図8を参照して、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ1とステージ3の境界で巻線U2およびW2に発生する誘起電圧について詳細に説明する。図8は、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ1とステージ3の境界(機械角0度)でのロータ位置関係と発生する磁力線を模式的に示す。この場合、U1、W2のインダクタンスは、W1、U2のインダクタンスとそれぞれ等しい。
【0058】
なお、図8および後述する図11および図14では、巻線部ACG1にパルス通電する前の磁力線を白抜きの矢線で示し、通電時の磁力線を黒矢線で示している。また、各図では磁力線の本数の違いを模式的に表すため、1本の磁力線を太線の矢線を用いて示し、0.5本の磁力線を細線の矢線を用いて示している。
【0059】
図8に示す場合、通電前のU1、W1巻線は対向する磁石に対し同位置にあるため磁石による磁気抵抗、インダクタンスが同等である。巻線を通過する磁力線数は等しくV1巻線は磁石の中央に位置するため巻線を貫通する磁力線は存在しない。U1⇒W1と通電するとU1巻線はN極、W1巻線はS極に磁化され、対向する磁石は異極のため磁気抵抗は大きくインダクタンスは小さい。巻線を通過する磁力線は増加するが、磁力線は磁気抵抗によって抑えられる。U1巻線が作る磁力線はW2巻線へ流入し、W1巻線が作る磁力線はU2巻線へ流入する。U2、W2に誘起される電圧は磁力線が抑えられるために小さい。U2巻線は中点N2から見てプラスW2巻線は中点から見てマイナスの大きさが全く同じ電圧が発生する。
【0060】
図9は、図8に示す位置関係において、巻線U1から巻線W1へ2ms通電した際に、U2巻線、V2巻線およびW2巻線で観測された誘起電圧波形を示す。また、図10は、図8に示す位置関係において観測された、巻線U1から巻線W1への通電パルス、U2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧を示す。図10に示すU2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧は、図9に示すU2巻線誘起電圧、W2巻線誘起電圧、およびV2巻線誘起電圧を、閾値約0.7Vで2値化した波形である。図9および図10に示すように、ステージ1とステージ3の境界(機械角0度)では、U2巻線パルス電圧のパルス幅と、W2巻線パルス電圧のパルス幅がほぼ等しい。
【0061】
次に、図11を参照して、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ3とステージ2の境界で巻線U2およびW2に発生する誘起電圧について詳細に説明する。図11は、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ3とステージ2の境界(機械角10度)でのロータ位置関係と発生する磁力線を模式的に示す。この場合、U1、W2のインダクタンスは、W1、U2のインダクタンスより大きい。
【0062】
図11に示す場合、U1巻線はNS極の中央に位置しており交差磁束が存在しないため磁気抵抗は小さい。すなわちインダクタンスが大きい。一方W1巻線は磁石の中央付近に位置しているため、磁石と異極で励磁されると磁気抵抗は大きくなる。すなわちインダクタンスが小さい。U1⇒W1と通電するとU1巻線はN極、W1巻線はS極に磁化される。W1巻線は対向する磁石は異極のため巻線を通過する磁力線は増加するが磁気抵抗が大きいために磁力線はU1巻線による磁束よりも小さくなる。U1巻線の磁力線はV2巻線とW2巻線と交鎖しW1巻線はU2巻線とV2巻線と交差する。V2巻線にはU1、W1巻線による磁力線が干渉しあい一時的に磁気抵抗が小さくなる。このためにW2巻線と交差する磁束は誘起電圧は減衰波形とならずW1巻線との干渉が終わるまで平坦な波形を継続し、干渉が終わったのち減衰波形となる。W1の磁力線は磁石のそれと一致しているので磁気抵抗を上げる方だがU1は向きが逆なので磁気抵抗を下げる方向となる仮にU1がW1より勝るとV2の磁気抵抗は下がることになり、W1の磁力線が増加する。W1が勝ると磁気抵抗は大きくなる。お互いに磁力線が増減するのを妨げることになりV2巻線に誘起電圧は発生しない。この作用によりU2、W2磁極を貫通する磁力線が影響を受ける。すなわちV2磁極の磁気抵抗をRv2、W2磁極の磁気抵抗をRw2とし、U1磁極の起磁力をHu1とすればU1磁極からW2磁極を貫通する磁力線はHu1×Rv2(Rv2+Rw2)となる。この式の意味する所は磁気回路的にU1磁極とV2、W2磁極は並列回路で表され、W2巻線の磁力線はV2磁極の磁気抵抗に影響を受けるということを表している。磁束密度が飽和状態に近づくと磁力線は増えない。
【0063】
図12は、図11に示す位置関係において、巻線U1から巻線W1へ2ms通電した際に、U2巻線、V2巻線およびW2巻線で観測された誘起電圧波形を示す。また、図13は、図11に示す位置関係において観測された、巻線U1から巻線W1への通電パルス、U2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧を示す。図13に示すU2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧は、図12に示すU2巻線誘起電圧、W2巻線誘起電圧、およびV2巻線誘起電圧を、閾値約0.7Vで2値化した波形である。図12および図13に示すように、ステージ3とステージ3の境界(機械角10度)では、U2巻線パルス電圧のパルス幅が、W2巻線パルス電圧のパルス幅より短い。
【0064】
次に、図14を参照して、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ4とステージ6の境界で巻線U2およびW2に発生する誘起電圧について詳細に説明する。図14は、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ4とステージ6の境界(機械角30度)でのロータ位置関係と発生する磁力線を模式的に示す。この場合、U1、W2のインダクタンスは、W1、U2のインダクタンスと等しい。
【0065】
図14に示す場合、通電前のU1、W1巻線は対向する磁石に対し同位置にあるため磁石による磁気抵抗、インダクタンスが同等である。巻線を通過する磁力線数は等しくV1巻線は磁石の中央に位置するため巻線を貫通する磁力線は存在しない。U1⇒W1と通電するとU1巻線はN極、W1巻線はS極に磁化され、対向する磁石は同極のため磁気抵抗は小さくインダクタンスは大きい。巻線を通過する磁力線は増加するがインダクタンスはステージ1−3境界より大きい為磁力線の増加はステージ1−3境界より大きい。W1も同様である。U1巻線が作る磁力線はW2巻線へ流入し、W1巻線が作る磁力線はU2巻線へ流入する。U2巻線は中点N2から見てプラスW2巻線は中点から見てマイナスの大きさが全く同じ電圧が発生する。
【0066】
図15は、図14に示す位置関係において、巻線U1から巻線W1へ2ms通電した際に、U2巻線、V2巻線およびW2巻線で観測された誘起電圧波形を示す。また、図16は、図14に示す位置関係において観測された、巻線U1から巻線W1への通電パルス、U2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧を示す。図16に示すU2巻線パルス電圧、W2巻線パルス電圧、およびV2巻線パルス電圧は、図15に示すU2巻線誘起電圧、W2巻線誘起電圧、およびV2巻線誘起電圧を、閾値約0.7Vで2値化した波形である。図15および図16に示すように、ステージ4とステージ6の境界(機械角30度)では、U2巻線パルス電圧のパルス幅が、W2巻線パルス電圧のパルス幅とほぼ等しい。
【0067】
次に、図17図20を参照して、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ1とステージ3の境界からわずかに位置がずれた場合に巻線U2およびW2に発生する誘起電圧について詳細に説明する。図17は、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ1とステージ3の境界付近(機械角0.5度)でのロータ位置関係を模式的に示す。図18は、図17に示す位置関係において観測された、巻線U1から巻線W1への通電パルス、U2巻線パルス電圧およびW2巻線パルス電圧を示す。図19は、図2に示した界磁部15と電機子部161との組み合わせにおけるステージ1とステージ3の境界付近(機械角359.5度)でのロータ位置関係を模式的に示す。図20は、図19に示す位置関係において観測された、巻線U1から巻線W1への通電パルス、U2巻線パルス電圧およびW2巻線パルス電圧を示す。
【0068】
上述した図8および図10に示すように、ステージ1とステージ3の境界中央に位置するとU2、W2に極性の異なる大きさの同じ電圧が発生し、V2巻線には電圧が発生しない。これに対し、図17に示すように境界からわずかにずらした場合、図18に示すようにパルス幅は明らかに変化する。図18に示す波形は図8に示す平衡状態からロータを僅かにずらした(ステージ3方向に0.5度ずらした)時のパルス変換した波形である。W1巻線はU1巻線より磁石の中央に近いために磁気抵抗が大きく通電時に貫通する磁力線はU1巻線より少ない。このためU2に誘起される電圧はW2のそれより小さく(パルス幅は短く)なる。
【0069】
また、同様に、図19に示すように境界から逆方向にわずかにずらした場合でも、図20に示すようにパルス幅は明らかに変化する。図20の波形は上記平衡状態からロータを僅かにずらした(ステージ1方向に0.5度ずらした)時のパルス変換した波形である。U1巻線はW1巻線より磁石の中央に近いために磁気抵抗が大きく通電時に貫通する磁力線がW1巻線より少ない。このためW2に誘起される電圧はU2のそれより小さく(パルス幅は短く)なる。
【0070】
次に、図21図24を参照して、ステージ1とステージ3の境界中央付近での動作を回路シミュレータによってシミュレーションした結果について説明する。図21はシミュレーションにおいて用いた回路を示す。図21において、電源100には、一次巻線のW1巻線に相当するインダクタL101と一次巻線のU1巻線に相当するインダクタL103とが抵抗R109および抵抗R110を介して接続されている。電源101からは2msのパルス幅を有する電圧が出力される。また、二次巻線のU2巻線に相当するインダクタL102と二次巻線のW2巻線に相当するインダクタL104とが中性点N2において接続されている。各インダクタのインダクタンスは実験結果に基づいて算出した値を設定する。二次側のトランジスタQ101〜Q104、ダイオードD101〜D104、抵抗R101〜R108からなる回路は、インダクタL102およびインダクタL104に生じた電圧が約0.7Vを超えた場合に負側出力または正側出力をHレベルにし、超えない場合に負側出力または正側出力をLレベルにするための回路を構成している。図22は、電源101から2msのパルス幅の電圧を出力したときの、ステージ1とステージ3の境界(機械角度0度)における正側出力と負側出力とU2巻線電圧とW2巻線電圧の時間変化のシミュレーション結果を示す。図23は、電源101から2msのパルス幅の電圧を出力したときの、ステージ1とステージ3の境界付近(機械角度0.5度)における正側出力と負側出力とU2巻線電圧とW2巻線電圧の時間変化のシミュレーション結果を示す。図24は、電源101から2msのパルス幅の電圧を出力したときの、ステージ1とステージ3の境界付近(機械角度359.5度)における正側出力と負側出力とU2巻線電圧とW2巻線電圧の時間変化のシミュレーション結果を示す。図22図24から明らかなように、ステージ1とステージ3の境界付近では、U2巻線電圧のパルス幅とW2巻線電圧のパルス幅を比較することでステージの判別を精度良く行うことができる。
【0071】
以上のような理論的および実験的な検証に基づき、本実施形態では、次のようにしてロータ位置判定を行う。すなわち、まず、事前に、図25に示す所定のパルス幅の通電パルスをU1−W1間に供給した際の相電圧U2−N2をパルス変換(2値化)したU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅と、相電圧W2−N2をパルス変換したW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅と、立上り時間T1と立下り時間T2とを実験的にあるいはシミュレーションによって、所定のロータ角度毎に取得する。U2−N2誘起電圧UvおよびW2−N2誘起電圧Wvは、U2−N2相電圧およびW2−N2相電圧の絶対値を所定の閾値を用いて2値化したHまたはLレベルの2値信号である。また、立上り時間T1は、パルス供給後にU2−N2誘起電圧UvとW2−N2誘起電圧Wvの排他的論理和がHレベルに立ち上がるまでの時間である。立下り時間T2は、パルス供給後、Hレベルに立ち上がった後Lレベルに立ち下がるまでの時間である。
【0072】
図26は、ロータ角度(°)を変化させながら、一次巻線のU1−W1間に2msのパルス幅でバッテリ電圧を印加した場合に二次巻線のW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅とU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅を計測した結果を示す特性図である。横軸はロータ角度(°)であり、縦軸はパルス幅である。W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅がU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅より大きい場合、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅が図25に示す立下り時間T2であり、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅が立上り時間T1である。W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅がU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅より小さい場合、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅が図25に示す立上り時間T1であり、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅が立下り時間T2である。
【0073】
さらに、事前に、図26に示す特性を図27に示す直線近似による特性図に置き換えるとともに、図27に示す特性図から、閾値Ta、Tb、TcおよびTdを決定する。閾値Taは、ステージ3とステージ2の境界またはステージ5とステージ1の境界における立上り時間T1のパルス幅である。閾値Tbは、ステージ1とステージ3の境界おける立上り時間T1のパルス幅である。閾値Tcは、ステージ2とステージ6の境界またはステージ4とステージ5の境界における立上り時間T1のパルス幅である。閾値Tdは、ステージ3とステージ2の境界またはステージ5とステージ1の境界における立下り時間T2のパルス幅である。また、各閾値は、Ta<Tb<Tc<Tdの関係を有する。なお、近似曲線におけるパルス幅の最大値は通電パルスの時間幅2ms=2000μsを上限値とした。
【0074】
さらに、事前に、図28に示すように、図27に示す閾値Ta、Tb、TcおよびTdのバッテリ電圧に対する依存特性を取得する。図28は、図1に示すバッテリ9の電圧を変化させた場合に、図27に示す近似特性の変化にともなう閾値Ta、Tb、TcおよびTdの変化を実験的に取得した結果を示す。横軸はバッテリ電圧、縦軸は閾値の時間である。閾値Taや閾値Tdに比べて閾値Tbと閾値Tcの電圧依存性が特に低電圧の領域で大きい。なお、図28に示すバッテリ電圧に対する依存特性は、W2相電圧(W2−N2電圧)およびU2相電圧(U2−N2電圧)を2値化する際に基準とする判定値(電圧値)を一定として計測されている。ただし、閾値Ta〜Td(時間)を一定として、2値化する際に基準とする判定値(電圧値)をバッテリ電圧に応じて変化させることで、バッテリ電圧に対する依存特性に対して対応することも可能である。
【0075】
また、図29に示すように、立上り時間T1、立下り時間T2、およびW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅とU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅のどちらが大きいのかを示す順番を組み合わせることで、各ステージを分類した。ステージ3は、立上り時間T1についてT1≦Tbであり、立下り時間T2についてTb≦T2≦2000μsであり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より大きい。ステージ2は、立上り時間T1についてTa≦T1≦Tcであり、立下り時間T2についてTd≦T2であり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より大きい。ステージ6は、立上り時間T1についてTc≦T1であり、立下り時間T2についてT2≦Tdであり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より大きい。ステージ4は、立上り時間T1についてTc≦T1であり、立下り時間T2についてT2≦Tdであり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より小さい。ステージ5は、立上り時間T1についてTa≦T1≦Tcであり、立下り時間T2についてTd≦T2であり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より小さい。ステージ1は、立上り時間T1についてT1≦Tbであり、立下り時間T2についてTb≦T2≦2000μsであり、w相のパルス幅がu相のパルス幅より小さい。
【0076】
図29に示す分類に基づき、ロータ位置判定回路75は、図5のステップS12において、図30に示す処理の流れで、巻線部ACG2に誘起される電圧を取り込み、ロータステージを判定する。すなわち、ロータ位置判定回路75は、バッテリ電圧を計測し(ステップS101)、判定値または閾値を選択する(ステップS102)。次にU1からW1へ2msの時間、バッテリ電圧を印加する(ステップS103)。次に、ロータ位置判定回路75は、立上り時間T1と立下り時間T2を計測する(ステップS104)。
【0077】
次に、ロータ位置判定回路75は、Ta<T1<TcかつTd<T2が成立するか否かを判定し(ステップS105)、成立する場合には(ステップS105:YES)、立上り時間T1が経過した時点でU2−N2誘起電圧UvがHレベル(U2がHi)でW2−N2誘起電圧WvがLレベル(W2がLo)であるか否かを判定する(ステップS106)。UvがHレベルでWvがLレベルの場合(ステップS106:YES)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ5であると判定する(ステップS107)。UvがHレベルでないかWvがLレベルでない場合(ステップS106:NO)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ2であると判定する(ステップS108)。
【0078】
一方、ステップS105の条件が成立しない場合(ステップS105:NO)、ロータ位置判定回路75は、T1<TbかつTb<T2<Tdが成立するか否かを判定する(ステップS109)。T1<TbかつTb<T2<Tdが成立する場合、ロータ位置判定回路75は、立上り時間T1が経過した時点でU2−N2誘起電圧UvがHレベル(U2がHi)でW2−N2誘起電圧WvがLレベル(W2がLo)であるか否かを判定する(ステップS110)。UvがHレベルでWvがLレベルの場合(ステップS110:YES)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ1であると判定する(ステップS111)。UvがHレベルでないかWvがLレベルでない場合(ステップS110:NO)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ3であると判定する(ステップS112)。他方、T1<TbでないかTb<T2<Tdでない場合(ステップS109:NO)、ロータ位置判定回路75は、立上り時間T1が経過した時点でU2−N2誘起電圧UvがHレベル(U2がHi)でW2−N2誘起電圧WvがLレベル(W2がLo)であるか否かを判定する(ステップS113)。UvがHレベルでWvがLレベルの場合(ステップS113:YES)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ4であると判定する(ステップS114)。UvがHレベルでないかWvがLレベルでない場合(ステップS113:NO)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ6であると判定する(ステップS115)。
【0079】
以上のようにして、ロータ位置判定回路75は図5のステップS12におけるステージ判別処理を実行する。
【0080】
なお、図30に示すフローでは、ロータ位置判定回路75はまずステージ2およびステージ5の確認を実施する。次にステージ1およびステージ3の確認、次にステージ4およびステージ−6の確認を実施する。ステージ4およびステージ6は図28に示すようにバッテリ電圧が9Vを下回ると判定に用いる閾値Tcの線形性が崩れ特性が劣化するため(ただし、境界を境としたHレベルとLレベルの逆転関係は変わらない)ステージ2またはステージ5と誤認識する可能性があるため特性劣化のないステージ2およびステージ5、ならびにステージ1およびステージ3を先に調べる。ステージ4およびステージ6は時間での判定ではなくHレベルとLレベルの関係性のみで判定する方法とする。簡単だが確実性が高い。ステージ境界上の判定は行えないためT1時間経過時のU2とW2のレベルからステージ1およびステージ3とステージ4およびステージ6を識別する。
【0081】
次に、図5において、CPU72は、ロータ位置判定回路75においてステージ判別処理が正常に終了したか否かを判定する(ステップS13)。一方、ステージ判別処理が正常に終了していない場合(ステップS13でNOの場合)、CPU72は、ステップS12の判別処理を再度、実行する(ステップS11でYESからステップS12)。他方、ステージ判別処理が正常に終了していた場合(ステップS13でYESの場合)、CPU72は、ロータ位置判定回路75の判定結果に対応した通電パターンで第1電力変換部61および第2電力変換部62のMOSFET(Q1)〜(Q9)の通電制御を開始する(ステップS14)。その際、CPU72は、例えば、第1電力変換部61の通電角を180°に設定し、第2電力変換部62の通電角を120°以上180°未満に設定する。あるいは、CPU72は、例えば、第1電力変換部61および第2電力変換部62の通電角をともに120°に設定する。
【0082】
次に、始動発電機1が回転を開始した後、ゼロクロス検出回路74が巻線部ACG2の出力電圧のゼロクロス点に基づきステージ信号を生成してCPU72に対して出力する(ステップS15)。そして、ステップS15では、CPU72が、第1電力変換部および第2電力変換部に対して、ゼロクロス検出回路74によって検出されたステージに対応したパターンにて通電制御を行う。
【0083】
ここで、図31を参照して、スタータモータ始動制御時の回転時における巻線部ACG2の電圧波形について説明する。図31は、巻線部ACG2の巻線U2の出力電圧波形と、ロータ位置判定回路75による巻線U2の出力電圧のゼロクロス点の検出波形とを模式的に示した波形図である。この場合、ステップS14およびステップS15における第2電力変換部62の通電角は120°に設定している。図31において、ゼロクロス点の検出波形は、出力電圧のゼロクロス点において出力電圧の変化と同一方向で立ち上がりまたは立ち下がる。なお、巻線部ACG2の電圧波形には、相を切り替えるタイミング(破線の領域A1)でノイズが発生する。そのため、ロータ位置判定回路75では、切り替えタイミングでノイズをマスクしゼロクロス検出に支障が出ないようにすることが望ましい。ゼロクロス検出回路74は、巻線U2、V2およびW2の各出力電圧波形から各相の検出波形を生成し、各相の検出波形に基づきロータ位置を表すステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0084】
次に、図5において、CPU72は、エンジンの始動が完了したか否かを判定する(ステップS16)。エンジンの始動が完了していない場合(ステップS16でNOの場合)、CPU72は、ステップS15へ戻り、ゼロクロス検出回路74が検出したステージに対応したパターンにて通電制御を続行する(ステップS15)。エンジンの始動が完了していた場合(ステップS16でYESの場合)、CPU72は、モータ通電を停止し、スタータモータ始動制御を終了する(ステップS17)。
【0085】
以上のように、スタータモータ制御においては、まず、第2電力変換部62のMOSFETを全てオフする。そして、第1電力変換部61を使って、巻線部ACG1に予め決められた通電パターンに従って、モータが動かない程度の短パルスを通電する。そして、もう一方の巻線部ACGに誘起される電圧情報をもって、ロータ位置判定回路75が停止時におけるロータステージを判定する。次に、CPU72が、ロータ位置判定回路75により特定されたロータステージに対応した通電パターンを用いて、巻線部ACG1および巻線部ACG2の各相に接続された第1電力変換部61と第2電力変換部62の通電を開始する。そして、通電開始後は、ゼロクロス検出回路74が検出した巻線部ACG2のゼロクロスポイントから導出されるロータ位置情報に基づいてCPU72が巻線部ACG1および巻線部ACG2にエンジンの始動が完了するまで通電する。これによって、本実施形態では、始動時に、巻線部ACG2をゼロクロスポイント検出用に使用することが可能になるとともに、巻線部ACG1と巻線部ACG2との両方を始動巻線として使用することが可能になる。また、例えば、巻線部ACG1の通電モードを180°とし、巻線部ACG2の通電モードをゼロクロスポイントの検出が可能なできるだけ大きな通電角とすることで、巻線部ACG1と巻線部ACG2との両方を180°通電モードとする場合からの始動トルクの低減を極力抑えることができる。
【0086】
次に、図32および図33を参照して、始動発電機1を発電機として動作させる場合について説明する。図32は、図1に示した始動発電制御装置100における発電制御の一例を示したフローチャートである。エンジン2の始動完了後、CPU72は、第2電力変換部62の各MOSFET(Q7)〜(Q9)をオフする(ステップS21)。
【0087】
次に、CPU72は、ゼロクロス検出回路74が巻線部ACG2の出力電圧のゼロクロス点に基づいて生成したステージ信号を入力する(ステップS22)。
【0088】
ここで、図33を参照して、発電制御時の巻線部ACG2の電圧波形について説明する。図33は、巻線部ACG2の巻線U2の出力電圧波形と、ロータ位置判定回路75による巻線U2の出力電圧のゼロクロス点の検出波形とを模式的に示した波形図である。この場合、第2電力変換部62はオフ状態に制御されている。ゼロクロス点の検出波形は、出力電圧のゼロクロス点において出力電圧の変化と同一方向で立ち上がりまたは立ち下がる。ゼロクロス検出回路74は、図33に示したような巻線U2、V2およびW2の各出力電圧波形から各相の検出波形を生成し、各相の検出波形に基づきロータ位置を段階的に表すステージ信号を生成してCPU72に対して出力する。
【0089】
次に、CPU72は、バッテリ9の電圧値に基づき第1電力制御部61の通電角を計算する(ステップS23)。 次に、CPU72は、第1電力変換部61から巻線部ACG1へステップS23で計算した遅角量に基づく遅角パターンを出力する(ステップS24)。そして、CPU72は、ステップS22へ戻り、上述した処理を再度実行する。
【0090】
以上のように、発電制御においては、エンジン始動後に第2電力変換部62のMOSFETを全オフとすることで、余剰な発電電力の発生を防いでいる。また、ゼロクロス検出回路74によって、巻線部ACG2の巻線両端に発生する無負荷電圧のゼロクロスポイントからロータ位置を導出することで、巻線部ACG1の交流電圧を第1電力変換部61にて位相制御するに必要なタイミングを生成する。これによって、本実施形態によれば、バッテリ9や図示していない電装負荷に最適な電力を供給することができる。
【0091】
以上のように、第1の実施形態によれば高価なセンサを用いず、かつサブコイルを用いることなく、簡易な方法で安価にロータの位置決めが可能となる。
【0092】
また、第1の実施形態は、3相巻線(多相巻線)である巻線部ACG1と巻線部ACG2とが並列に配設された電機子部と、永久磁石からなる界磁部とを備えた始動発電機1(ACGスタータモータ)と、巻線部ACG1または巻線部ACG1および巻線部ACG2に接続され、交流および直流間の電力変換を行う第1電力変換部61と、巻線部ACG1の各端部に接続されている第1電力変換部61の各交流端子611、612および613と、巻線部ACG2の各端部との間に介挿され、各交流端子611、612および613に対して巻線部ACG2の各端部の接続および分離を行う複数のMOSFET(スイッチ素子)(Q7)〜(Q9)とを備えている。この構成によれば、電力損失の低減等、始動発電機1の制御特性を容易に向上させることができる。
【0093】
また、以上のように、第1の実施形態によれば、巻線部を例えば2分割して両方を使用する場合と片方を使用する場合とで使い分けることで、発電と電気負荷とのバランスを適正化することができる。この構成によれば、スタータモータのトルク特性を満たすように巻線仕様を設計したモータを、発電機として使用したときに電気負荷とのアンバランスによって発生する余剰電力を低減することができる。すなわち、巻線部の環流電流を減らし、巻線やパワーデバイス素子の発熱(電力損失)を小さくすることができる。よって、モータトルクを損なうことなく発電時の余剰電力を容易に削減することができる。これによってエンジン2の燃費向上やフリクションの低減が可能となる。
【0094】
また、発電制御時に、環流電流を減らすことで電機子巻線とパワーデバイスの発熱を低減することができる。
【0095】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、巻線部ACG1および巻線部ACG2が並列に配置された始動発電機1が、エンジン2の始動に用いられる場合、および発電機として用いられる場合の双方において、巻線部ACG2をロータの位置を検出する検出巻線として用いるため、ホールセンサを設けずに、ロータの位置を高い精度で検出することができる。このため、高価なホールセンサを高い取付精度に対応して配置する必要がないため、価格が安くかつ高い精度でロータの検出が可能な始動発電機を提供することができる。
【0096】
また、本発明の第1の実施形態によれば、巻線部ACG1(第1多相巻線)に1回だけ所定の線間電圧を印加したときに、巻線部ACG2(第2多相巻線)に発生する相電圧の値を検出することで、ロータの停止位置を判定することができる。これによれば電流検出を不要とすることができる。すなわち、本発明の第1の実施形態によれば、第1多相巻線にバッテリの出力電圧を所定時間印加したときに第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅を検出することで、ロータの停止位置を判定することができる。これによれば電流検出を不要とすることができる。また、本発明の第1の実施形態によれば、1回の通電でロータの停止位置(ステージ)を判定することができるので、判定時間と電力消費を低減することができる。また、ステージの境界付近では、時間幅の比較によって隣接する2つのステージのうちのどちらなのかを判別することができるので、ステージ境界付近での位置検出精度を容易に高めることができる。
【0097】
<第2の実施形態>
次に、図34図41を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、ハードウェアの構成は同一であり、ソフトウェアの構成すなわち動作が一部異なる。具体的には、図5に示すステップS12のステージ判別処理の内容と、ステップS14の回転始動時の通電パターンが異なる。
【0098】
まず、図34および図35を参照して。第2の実施形態が課題とした事項と、第2の実施形態の効果について説明する。エンジンセル始動時にピストン位置が圧縮上死点にある場合、燃焼室は圧縮された状態となっており、圧縮力に打ち勝ってクランキングするには大きな始動トルクを必要とする。モータのトルクはロータ磁石の磁束ベクトルと電機子巻線に通電した電流ベクトルが90°の位相差にあるときに最大となる。しかしながら三相ブラシレスモータにおける磁束ベクトルの検出方法であるホールセンサは分解能が60°であるため図34のように磁束と電流のベクトルはステージ内の位相差は60°〜120°で変化してしまう。例えば磁束ベクトル(実線)がステージ6にあってステージ4の境界にある場合、電流ベクトル(破線)との位相差は60°となりトルクは小さくなる。同様にステージ2との境界では120°の位相で、これもトルクは小さくなる。ステージ6の中央では位相差が90°となってトルクは最大となる。よってロータ位置がステージの境界付近ではトルクは小さくなり、エンジン圧縮上死点においてエンジンクランキングが正常に行われない恐れがある。
【0099】
図35(a)はステージ6とステージ2の境界上にあり電流位相120°で通電した時の電流波形を示す。図35(c)はステージ6とステージ4の境界上にあり電流位相60°で通電した時の電流波形を示す。図35(b)は図35(a)で通電した際のモータ誘起電圧波形を示す。図35(d)は図35(c)で通電した際のモータ誘起電圧波形を示す。
【0100】
図35(b)に示すように、ステージ6でステージ2より(ステージ6とステージ2の境界上)の場合、ステージ6のパターンで通電すると、磁束ベクトルと電流ベクトルが120°の関係となり、18msの1回の通電で、モータが1+1/2回転している。一方、図35(d)に示すように、ステージ6でステージ4よりの(ステージ6とステージ4の境界上)場合、ステージ6のパターンで通電すると、磁束ベクトルと電流ベクトルが60°の関係となり、18msの1回の通電で、モータが3/4回転している。
【0101】
図35(a)と図35(c)では電流波形の立上り時間が異なる。120°位相差の通電は60°位相差の通電より電流波形の傾きが急駿ではない。これは磁石と巻線に位置により定まるインダクタンスの差によるもので電流位相120°の方がインダクタンスが大きい。トルクはインダクタンスに比例するため電流位相120°で通電したほうが電流位相60°より大きなトルクを得ることが出来る。
【0102】
第2の実施形態では、ステージの境界上において電流位相120°で通電を行うことが可能となるように、ステージの判別の仕方を次のように設定している。第2の実施形態によれば、ステージの境界を容易に判別できるようにすることで、境界上において電流位相120°(すなわち磁束ベクトルと電流ベクトルの位相差120°)で通電を行うことを可能とし、クランキング性能を向上させることができる。これは、磁束ベクトルと電流ベクトルの位相差が120°と60°では120°の方がトルクが大きいことによる。
【0103】
次に、図36および図37を参照して、各ステージの判定の仕方について説明する。図36は、図26と同様に、ロータ角度を変化させながら、一次巻線のU1−W1間に3msのパルス幅でバッテリ電圧を印加した場合に二次巻線のW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1とU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅t2を計測した結果を示す特性図である。横軸は電気角であり、縦軸はパルス幅である。Wv(11.5V)、(12.0V)および(12.5V)は、バッテリ電圧が11.5V、12.0Vおよび12.5Vの場合のパルス幅t1の変化を示す。Uv(11.5V)、(12.0V)および(12.5V)は、バッテリ電圧が11.5V、12.0Vおよび12.5Vの場合のパルス幅t2の変化を示す。また、図36は、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅t2からW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1を差し引いた値の曲線も示している。Uv−Wv(11.5V)、(12.0V)および(12.5V)は、バッテリ電圧が11.5V、12.0Vおよび12.5Vの場合のt2−t1の変化を示す。
【0104】
また、Ha〜Hjは判定の基準値(閾値)(以下、判定値Ha〜Hjと呼ぶ)を示す。判定値Haは、パルス幅t2に対するステージ5とステージ1の判定基準である。判定値Hbは、パルス幅t1に対するステージ5とステージ1の判定基準である。判定値Hcは、パルス幅t2−パルス幅t1対するステージ5とステージ1の判定基準である。判定値Hdは、パルス幅t2に対するステージ1とステージ3の判定基準である。判定値Heは、パルス幅t2−パルス幅t1に対するステージ1とステージ3の判定基準である。判定値Hfは、パルス幅t2に対するステージ4とステージ5の判定基準である。判定値Hgは、パルス幅t1に対するステージ4とステージ5の判定基準である。判定値Hkは、パルス幅t1に対するステージ6とステージ4の判定基準である。判定値Hlは、パルス幅t2−パルス幅t1対するステージ6とステージ4の判定基準である。判定値Hhは、パルス幅t2に対するステージ2とステージ6の判定基準である。判定値Hiは、パルス幅t1に対するステージ3とステージ2の判定基準である。判定値Hjは、パルス幅t2−パルス幅t1対するステージ3とステージ2の判定基準である。
【0105】
また、図6は、通電角120°で進角30°の位置となるように設置された3個のホール素子を用いて検出されるステージの境界位置を△の印(頂点)d1〜d6で示している。位置d1は通電角120°進角30°でのステージ1とステージ3の境界である。位置d2は通電角120°進角30°でのステージ3とステージ2の境界である。位置d3は通電角120°進角30°でのステージ2とステージ6の境界である。位置d4は通電角120°進角30°でのステージ6とステージ4の境界である。位置d5は通電角120°進角30°でのステージ4とステージ5の境界である。位置d6は通電角120°進角30°でのステージ5とステージ1の境界である。
【0106】
第2の実施形態では、ステージの境界上にあるときに磁束と電流の位相差が120°となることができるように各ステージの境界を設定している。このため、位置d1〜d6に対して電気角で15°進角させた位置を各ステージの境界としている。すなわち、位置d1に対して電気角で15°進角させた位置をステージ1とステージ3の境界としている。位置d2に対して電気角で15°進角させた位置をステージ3とステージ2の境界としている。位置d3に対して電気角で15°進角させた位置をステージ2とステージ6の境界としている。位置d4に対して電気角で15°進角させた位置をステージ6とステージ4の境界としている。位置d5に対して電気角で15°進角させた位置をステージ4とステージ5の境界としている。位置d6に対して電気角で15°進角させた位置をステージ5とステージ1の境界としている。
【0107】
次に、図37を参照して、第2の実施形態おけるロータ位置判定回路75の動作例について説明する。図37に示す処理において、ロータ位置判定回路75は、まず、バッテリ電圧を読み込む(ステップS200)。次に、ロータ位置判定回路75は、第2電力変換部62の各MOSFET(Q7)〜(Q9)をオフし、第1電力変換部61のMOSFET(Q1)および(Q6)をオンして、一次巻線のU1巻線とW1巻線(U相からW相)に3msの間通電する(ステップS201)。次に、ロータ位置判定回路75は、ステップS200で読み込んだバッテリ電圧に応じて判定値(閾値)Ha〜Hjの値を所定の値の中から選択する(ステップS202)。
【0108】
パルス幅t1およびパルス幅t2は、例えば図41に示すようにバッテリ電圧に対する依存性がある。また、この電圧依存性は、ロータ位置によって変化する。図41は、図36と同様に、ロータ角度を変化させながら、一次巻線のU1−W1間に2msのパルス幅でバッテリ電圧を印加した場合に二次巻線のW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1とU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅t2を計測した結果を示す特性図である。横軸は電気角であり、縦軸はパルス幅である。Wv14〜Wv9は、バッテリ電圧が14V〜9Vの場合のパルス幅t1の変化を示す。Uv14〜Uv9は、バッテリ電圧が14V〜9Vの場合のパルス幅t2の変化を示す。また、Uv−Wv14〜Uv−Wv9は、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅t2からW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1を差し引いた値の曲線である。図41に示すように、ステージ4とステージ6の境界付近では電圧依存性が大きいのに対してステージ1とステージ3の境界、ステージ3とステージ2の境界、およびステージ5とステージ1の境界は、電圧依存性が比較的小さい。ただし、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅t2からW2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1を差し引いた値は、電圧依存性が比較的小さい。そこで、第2の実施形態では、ステージ(ロータ位置)によって異なる電圧変化に対応するように、電圧変化に対する判定値の変化の割合がステージ(ロータ位置)によって異なるように、バッテリ電圧に応じて判定値を複数の所定の値の中から選択している。なお、判定値の値は予め全ての電圧に応じた値を用意しておかずに補間計算を用いて計算することもできる。また、第2の実施形態では、パルス幅t1およびパルス幅t2に加え、電圧依存性が全ステージにわたって比較的小さいパルス幅t2−パルス幅t1を比較対象とすることでステージの判定精度を高めている。
【0109】
次に、ロータ位置判定回路75は、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅t1が検出されるまで待機する(ステップS203:NOの繰り返し)。次に、ロータ位置判定回路75は、パルス幅t1が検出されると(ステップS203:YES)、ロータ位置判定回路75は、U2−N2誘起電圧UvとW2−N2誘起電圧Wvの状態(HレベルかLレベルか)を読み込む(ステップS204)。次に、ロータ位置判定回路75は、U2−N2誘起電圧Uvが"1"(Hレベル)かつW2−N2誘起電圧Wvが"0"(Lレベル)であるか否かを判定する(ステップS205)。以下、本実施形態において各値について名称の記載を適宜省略する。
【0110】
Uv=1かつWv=0である場合(ステップS205:Y)、ロータ位置判定回路75は、ステージ1、ステージ3、ステージ5、およびステージ4の順にステージ判定をおこなう。まず、ロータ位置判定回路75は、Ha≧t2≧HdかつHb≧t1かつHc≧t2−t1≧Heであるか否かを判定する(ステップS206)。Ha≧t2≧HdかつHb≧t1かつHc≧t2−t1≧Heであれば(ステップS206:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ1であると判定する(ステップS207)。Ha≧t2≧HdかつHb≧t1かつHc≧t2−t1≧Heでなければ(ステップS206:N)、ロータ位置判定回路75は、Hd≧t2かつHe≧t2−t1であるか否かを判定する(ステップS208)。Hd≧t2かつHe≧t2−t1であれば(ステップS208:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ3であると判定する(ステップS209)。Hd≧t2かつHe≧t2−t1でなければ(ステップS208:N)、ロータ位置判定回路75は、Hf≦t2かつHg≧t1であるか否かを判定する(ステップS210)。Hf≦t2かつHg≧t1であれば(ステップS210:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ5であると判定する(ステップS211)。Hf≦t2かつHg≧t1でなければ(ステップS210:N)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ4であると判定する(ステップS212)。
【0111】
一方、Uv=1かつWv=0でない場合(ステップS205:N)、ロータ位置判定回路75は、ステージ2、ステージ3、ステージ6、およびステージ4の順にステージ判定をおこなう。まず、ロータ位置判定回路75は、Hf≧t2≧HiかつHh≧t1かつHj≦t2−t1であるか否かを判定する(ステップS213)。Hf≧t2≧HiかつHh≧t1かつHj≦t2−t1であれば(ステップS213:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ2であると判定する(ステップS214)。Hf≧t2≧HiかつHh≧t1かつHj≦t2−t1でなければ(ステップS213:N)、ロータ位置判定回路75は、Hi≧t2かつHj≧t2−t1であるか否かを判定する(ステップS215)。Hi≧t2かつHj≧t2−t1であれば(ステップS215:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ3であると判定する(ステップS215)。Hi≧t2かつHj≧t2−t1でなければ(ステップS215:N)、ロータ位置判定回路75は、Hf≦t2かつHk≧t1であるか否かを判定する(ステップS217)。Hf≦t2かつHk≧t1であれば(ステップS217:Y)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ6であると判定する(ステップS218)。Hf≦t2かつHk≧t1でなければ(ステップS217:N)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ4であると判定する(ステップS219)。
【0112】
以上のようにして、ロータ位置判定回路75は図5のステップS12におけるステージ判別処理を実行する。
【0113】
次に、図38図40を参照して、第2の実施形態における図5に示すステップS14での通電開始時の処理について説明する。図38は120°通電での正転時の通電開始処理の流れを示す。図39は120°通電での逆転時の通電開始処理の流れを示す。図40は180°通電での正転時の通電開始処理の流れを示す。
【0114】
図38に示す120°通電での正転時の通電開始処理では、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1であると判定された場合(ステップS220:Y)、U相からV相への流れで通電を開始する(ステップS221)。なお、例えば、U→Vは、U相をバッテリ9の正極側に接続し、V相を接地するという接続状態を表す。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ2であると判定された場合(ステップS222:Y)、V相からW相への流れで通電を開始する(ステップS223)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ3であると判定された場合(ステップS224:Y)、U相からW相への流れで通電を開始する(ステップS225)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ4であると判定された場合(ステップS226:Y)、W相からU相への流れで通電を開始する(ステップS227)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ5であると判定された場合(ステップS228:Y)、W相からV相への流れで通電を開始する(ステップS229)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1〜ステージ5ではないと判定された場合(ステップS220、ステップS222、S224、S226およびS228:N)、ステージ6に対応させてV相からU相への流れで通電を開始する(ステップS230)。
【0115】
図39に示す120°通電での逆転時の通電開始処理では、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1であると判定された場合(ステップS240:Y)、V相からW相への流れで通電を開始する(ステップS241)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ2であると判定された場合(ステップS242:Y)、W相からU相への流れで通電を開始する(ステップS243)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ3であると判定された場合(ステップS244:Y)、V相からU相への流れで通電を開始する(ステップS245)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ4であると判定された場合(ステップS246:Y)、U相からV相への流れで通電を開始する(ステップS247)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ5であると判定された場合(ステップS248:Y)、U相からW相への流れで通電を開始する(ステップS249)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1〜ステージ5ではないと判定された場合(ステップS240、ステップS242、S244、S246およびS248:N)、ステージ6に対応させてW相からV相への流れで通電を開始する(ステップS250)。
【0116】
図40に示す180°通電での正転時の通電開始処理では、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1であると判定された場合(ステップS260:Y)、U相からV相およびW相への流れで通電を開始する(ステップS261)。なお、例えば、「U→V,W」は、U相をバッテリ9の正極側に接続し、V相およびW相を接地するという接続状態を表す。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ2であると判定された場合(ステップS262:Y)、V相からU相およびW相への流れで通電を開始する(ステップS263)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ3であると判定された場合(ステップS264:Y)、U相およびV相からW相への流れで通電を開始する(ステップS265)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ4であると判定された場合(ステップS266:Y)、W相からU相およびV相への流れで通電を開始する(ステップS267)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ5であると判定された場合(ステップS268:Y)、U相およびW相からV相への流れで通電を開始する(ステップS269)。また、CPU72は、ロータ位置判定回路75によってロータ位置がステージ1〜ステージ5ではないと判定された場合(ステップS260、ステップS262、S264、S266およびS268:N)、ステージ6に対応させてV相およびW相からU相への流れで通電を開始する(ステップS270)。
【0117】
第2の実施形態によれば、図36に示すように、通電角120°で進角30°の位置d1〜d6を境界の位置とせず、位置d1〜d6をステージ内に含む形で通電パターンを決定するステージ1〜ステージ6を設定および検出することができる。また、第2の実施形態によれば、ロータ位置判定回路75が、ステージ(所定の領域)毎にロータ位置を検知するものであり、各ステージの境界上において界磁部が形成する磁束ベクトルと多相巻線に流れる電流ベクトルとの位相差が120°となることができるように各ステージを設定することができる。したがって、第2の実施形態では、従来のステージの境界の位置d1〜d6上において電流位相120°で通電を行うことが可能となり、回転開始時のトルクを大きくすることができる。
【0118】
なお、ステージを判定する順番については、第2の実施形態では次のようにしている。すなわち、パルス時間方式によるステージ判定は原理式から電圧(バッテリ電圧)に依存する。特にU相からW相に通電する場合、ステージ4、5−6、1−2−3の順で影響を受ける。そこで、先に安定しているステージ1、2を判定し次にステージ3を判定する。ステージ5の判定は接しているステージ1でないので判定は片側のみで済む。残るのは一番判別しにくいステージ4が残るが自動的にステージ4となるので判定を行う必要はない。
【0119】
<第3の実施形態>
次に、図42図51を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。本発明の第3の実施形態は、上記第1の実施形態と比較して、ハードウェアの構成は同一であり、ソフトウェアの構成すなわち動作が一部異なる。具体的には、図5に示すステップS12のステージ判別処理の内容と、ステップS14の回転始動時の通電パターンが異なる。まず、図42図46を参照して、回転始動時の通電パターンの違いについて説明する。回転始動時の通電パターンには、180度通電、120度通電等、種々のものがあるが、ここでは120度通電を例として説明する。図42は、図4に示す巻線部ACG1と第1電力変換部61を示すとともに、回転始動時の通電パターンを表す記号UH、VH、WH、UL、VL、およびWLを新たに書き加えた図である。例えば、ハイサイドがUHで、ローサイドがWLという通電パターンは、MOSFET(Q1)とのMOSFET(Q6)がオンし、MOSFET(Q2)〜(Q5)がオフすることを意味する。
【0120】
図43は、図7を参照して説明した各ステージと、120度通電時に通電されるハイサイドのMOSFETとローサイドのMOSFETとの対応関係を模式的に示す図である。例えばステージ3では、ハイサイドがUHで、ローサイドがWLである。同様に、ステージ1では、ハイサイドがUHで、ローサイドがVLである。同様に、ステージ5では、ハイサイドがWHで、ローサイドがVLである。
【0121】
図44は、図43に示す関係とロータ角度との関係を示す図である。図43および図44に示す通電パターンでは、ハイサイドの切り替わり位置およびローサイドの切り替わり位置は、いずれかのステージの切り替わりの位置と一致している。例えば、ハイサイドがUHからVHに切り替わる位置は、ステージ3とステージ2の境界である。また、例えば、ローサイドがWLからULに切り替わる位置は、ステージ2とステージ6の境界である。
【0122】
ところで、第1の実施形態では、ロータ位置判定回路75が、ロータ位置をステージ単位で判別している。すなわち、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置がステージ1からステージ6のどのステージ内に位置しているのかを判別している。また、ホールセンサを用いるブラシレスモータでも一般的にはステージ単位で判別している。そのため、第1の実施形態やホールセンサを用いるものではステージ内の位置を特定することができない。例えばロータがステージ1にある場合にステージ3よりなのかステージ5に近いのか、あるいはステージ1の中央なのかということを判別することができない。よってステージ1を判別したらロータがどこにあっても通電パターンはUH⇒VLとなる。この場合発生するトルクはロータの位置により影響を受けてしまう。例えば回転がCW方向(時計回り)であってステージ5に近ければトルクは大きくなるが、ステージ3に近いとトルクは小さくなってしまう。ステージ3に近い場合はUH⇒WLと通電したほうがトルクは大きくなる。この様に第1の実施形態やホールセンサが示すロータ位置情報ではトルクが小さくなってしまう可能性があり、バッテリが消耗している場合モータ始動に時間を要したり、始動できないことが考えられる。
【0123】
そこで、第3の実施形態では、ロータがステージのどちらによっているのかを判別可能とする。また、通電パターンを図43に示すものからCW方向へ30°回転させた図45に示す通電パターンとすることによって常に最大トルクが発生することができるようにした。例えばステージ1でステージ3に近い場合はVH⇒WLと通電し、ステージ5に近い場合はUH⇒VLと通電を切替えることで最大トルクを発生させられるようにする。この構成によればバッテリが消耗している場合でも確実にモータを始動することが可能である。
【0124】
図45は、図43と同様に、図7を参照して説明した各ステージと、120度通電時に通電されるハイサイドのMOSFETとローサイドのMOSFETとの対応関係を模式的に示す図であえる。例えばステージ3では、ステージ1よりの場合にハイサイドがUH、ステージ2よりの場合にハイサイドがVHで、ローサイドはWLである。同様に、ステージ1では、ハイサイドがUHで、ステージ3よりの場合にローサイドはWL、ステージ5よりの場合にローサイドはVLである。同様に、ステージ5では、ステージ1よりの場合にハイサイドがUH、ステージ4よりの場合にハイサイドがWHで、ローサイドはVLである。
【0125】
図46は、図45に示す関係とロータ角度との関係を示す図である。図45および図46に示す通電パターンでは、ハイサイドの切り替わり位置およびローサイドの切り替わり位置は、ステージの切り替わりの位置とは一致していない。
【0126】
ここで、図47図49を参照して、図45および図46に示す第3の実施形態の通電パターンと、図43および図44に示す通電パターンとの発生トルクの差異について説明する。図47および図48は、図43および図44に示す通電パターンの場合、図49は、図45および図46に示す第3の実施形態の通電パターンの場合である。図47は、ロータ位置がステージ5によっているステージ1の場合に、UH⇒VLで20ms通電したときに二次巻線U2、V2およびW2の相電圧を観測した結果を示す波形図である。図47は、二次巻線U2、V2およびW2の相電圧が大きく、20msの通電で速度が比較的大きくなったことを示す。図48は、ロータ位置がステージ3によっているステージ1の場合に、UH⇒VLで20ms通電したときに二次巻線U2、V2およびW2の相電圧を観測した結果を示す波形図である。図47と比較すると、図48の波形は、振幅が小さい。つまり、図47の場合に比べ、図48の場合はロータに与えられた駆動トルクが小さかったことを示している。一方、図49は、ロータ位置がステージ5またはステージ3によっているステージ1の場合に、UH⇒VLまたはUH⇒WLで20ms通電したときに二次巻線U2、V2およびW2の相電圧を観測した結果を示す波形図である。本通電パターンでは、ステージ5によっている場合でもステージ3によっている場合でも同様の波形となることを確認している。図49の波形から、図49の場合に、図47の場合と同様の駆動トルクが発生していたことが確認された。
【0127】
図50は第3の実施形態おけるロータ位置判定回路75の動作例を示すフローチャートである。すなわち、図50は第3の実施形態におけるステージ判別処理(図5のステップS12の処理)の内容を示すフローチャートである。図51は、図26に示す特性図に、通電パターンを表す各記号UH、VH、WH、UL、VL、およびWLが対応するロータ角度の範囲と、ロータ角度を区分する複数の領域R1〜R25の範囲を追記したものである。また、図51には、図50に示す処理で使用する閾値TH1、TH2、TH3およびTH4を示している。
【0128】
図51に示すように、領域R1は、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅がU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅より大きい範囲に対応している。領域R1では、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅が立下り時間T2に対応し、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅が立上り時間T1に対応する。領域R2は、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅がU2−N2誘起電圧Uvのパルス幅より小さい範囲に対応している。領域R2では、W2−N2誘起電圧Wvのパルス幅が立上り時間T1に対応し、U2−N2誘起電圧Uvのパルス幅が立下り時間T2に対応する。
【0129】
領域R1は、2つの領域R11と領域R12に区分される。領域R11は、領域R1において、立上り時間T1が閾値TH1未満の範囲に対応する。領域R12は、領域R1において、立上り時間T1が閾値TH1以上の範囲に対応する。
【0130】
また、領域R1は、3つの領域R13と領域R14と領域R15に区分される。領域R13は、領域R11において、立下り時間T2が閾値TH3未満の範囲に対応する。領域R15は、領域R12において、立下り時間T2が閾値TH4未満の範囲に対応する。領域R14は、領域R1において、領域R13または領域R15以外の範囲に対応する。
【0131】
領域R2は、2つの領域R21と領域R22に区分される。領域R21は、領域R2において、立上り時間T1が閾値TH1以上の範囲に対応する。領域R22は、領域R2において、立上り時間T1が閾値TH1未満の範囲に対応する。
【0132】
また、領域R2は、3つの領域R23と領域R24と領域R25に区分される。領域R25は、領域R22において、立下り時間T2が閾値TH2未満の範囲に対応する。領域R23は、領域R21において、立下り時間T2が閾値TH4未満の範囲に対応する。領域R24は、領域R2において、領域R23または領域R25以外の範囲に対応する。
【0133】
各領域と通電パターンUH、VH、WH、UL、VL、およびWLとの対応関係は、次の通りである。すなわち、通電パターンUHは、領域R22と領域R13を組み合わせた範囲に対応する。通電パターンVHは、領域R14の範囲に対応する。通電パターンWHは、領域R21と領域R15を組み合わせた範囲に対応する。通電パターンULは、領域R12と領域R23を組み合わせた範囲に対応する。通電パターンVLは、領域R24の範囲に対応する。通電パターンWLは、領域R11と領域R25を組み合わせた範囲に対応する。このように、領域R11〜R15またはR21〜R25を組み合わせることで、通電パターンUH、VH、WH、UL、VL、およびWLの該当範囲を表すことができる。したがって、図5のステップS12においてロータの停止位置が領域R11〜R15またはR21〜R25のどこに位置しているのかを判別することで、図5のステップ14において図45に示す通電パターンによって始動発電機1を回転始動することができる。
【0134】
次に、図50を参照して、第3の実施形態おけるロータ位置判定回路75の動作例について説明する。図50に示す処理において、ロータ位置判定回路75は、第2電力変換部62の各MOSFET(Q7)〜(Q9)をオフし、第1電力変換部61のMOSFET(Q1)および(Q6)をオンして、一次巻線のU1巻線とW1巻線に2msの間通電する(ステップS301)。次に、ロータ位置判定回路75は、立上り時間T1が検出されるまで待機する(ステップS302:NOの繰り返し)。立上り時間T1が検出されると(ステップS302:YES)、ロータ位置判定回路75は、立下り時間T2が検出されるまで、W2−N2誘起電圧WvとU2−N2誘起電圧Uvの状態を繰り返し取り込む(ステップS303→ステップS304:NO→ステップS303の繰り返し)。立下り時間T2が検出されると(ステップS304:YES)、ロータ位置判定回路75は、U2−N2誘起電圧Uvが“1”(Hレベル)かつW2−N2誘起電圧Wvが“0”(Lレベル)であるか否かを判定する(ステップS305)。以下、各値について名称の記載を適宜省略する。なお、Uv=1かつWv=0の場合、ロータ位置は領域R2内にあり、Uv=1かつWv=0でない場合、ロータ位置は領域R1内にある。
【0135】
Uv=1かつWv=0でない場合(ステップS305:NO)、ロータ位置判定回路75は、T1<TH1であるか否かを判定する(ステップS306)。T1<TH1の場合(ステップS306:YES)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置が領域R11内にあると判定し(ステップS307)、T2<TH3であるか否かを判定する(ステップS308)。ロータ位置判定回路75は、T2<TH3の場合(ステップS308:YES)、ロータ位置が領域R13内にあると判定し(ステップS309)、そうでない場合(ステップS308:NO)、ロータ位置が領域R14内にあると判定する(ステップS310)。
【0136】
一方、T1<TH1でない場合(ステップS306:NO)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置が領域R12内にあると判定し(ステップS311)、T2<TH4であるか否かを判定する(ステップS312)。ロータ位置判定回路75は、T2<TH4の場合(ステップS312:YES)、ロータ位置が領域R15内にあると判定し(ステップS313)、そうでない場合(ステップS312:NO)、ロータ位置が領域R14内にあると判定する(ステップS314)。
【0137】
他方、Uv=1かつWv=0である場合(ステップS305:YES)、ロータ位置判定回路75は、T1<TH1であるか否かを判定する(ステップS315)。T1<TH1の場合(ステップS315:YES)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置が領域R22内にあると判定し(ステップS316)、T2<TH2であるか否かを判定する(ステップS317)。ロータ位置判定回路75は、T2<TH2の場合(ステップS317:YES)、ロータ位置が領域R25内にあると判定し(ステップS318)、そうでない場合(ステップS317:NO)、ロータ位置が領域R24内にあると判定する(ステップS319)。
【0138】
一方、T1<TH1でない場合(ステップS315:NO)、ロータ位置判定回路75は、ロータ位置が領域R21内にあると判定し(ステップS320)、T2<TH4であるか否かを判定する(ステップS321)。ロータ位置判定回路75は、T2<TH4の場合(ステップS321:YES)、ロータ位置が領域R23内にあると判定し(ステップS322)、そうでない場合(ステップS321:NO)、ロータ位置が領域R24内にあると判定する(ステップS323)。
【0139】
以上のようにして、ロータ位置判定回路75は、始動発電機1の回転始動時の電機子部161への通電パターンの切り替え位置をまたぐ複数の領域を判別することで位置関係を検知する。このようにして、図5に示すステップS12のステージ判別処理が終了すると、図5に示すステップS14では、ロータが領域R11〜R15またはR21〜R25のどこに位置しているのかを示す判別結果に基づいて図45および図46に示した通電モードが選択される。
【0140】
よって、第3の実施形態によれば、図45に示す通電パターンとすることによって常に最大トルクが発生することができ、バッテリが消耗している場合でも確実にモータを始動することが可能である。
【0141】
以上のように、本発明の各実施形態によれば、巻線部ACG1および巻線部ACG2が並列に配置された始動発電機1が、エンジン2の始動に用いられる場合、および発電機として用いられる場合の双方において、巻線部ACG2をロータの位置を検出する検出巻線として用いるため、ホールセンサを設けずに、ロータの位置を高い精度で検出することができる。このため、高価なホールセンサを高い取付精度に対応して配置する必要がないため、価格が安くかつ高い精度でロータの検出が可能な始動発電機を提供することができる。
【0142】
また、本発明の各実施形態によれば、巻線部ACG1(第1多相巻線)に1回だけ所定の線間電圧を印加したときに、巻線部ACG2(第2多相巻線)に発生する相電圧の値を検出することで、ロータの停止位置を判定することができる。これによれば電流検出を不要とすることができる。すなわち、本発明の第1の実施形態によれば、第1多相巻線にバッテリの出力電圧を所定時間印加したときに第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅を検出することで、ロータの停止位置を判定することができる。これによれば電流検出を不要とすることができる。また、本発明の第1の実施形態によれば、1回の通電でロータの停止位置(ステージや領域)を判定することができるので、判定時間と電力消費を低減することができる。また、ステージや領域の境界付近では、時間幅の比較によって隣接する2つのステージや領域のうちのどちらなのかを判別することができるので、ステージや領域の境界付近での位置検出精度を容易に高めることができる。
【0143】
なお、本発明の実施形態は上記のものに限定されず、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、停止位置を検出する際に、V2相の電圧の発生時刻やパルス幅あるいはパルス幅の差分値を加味して、U2相、W2相およびV2相の誘起電圧に基づいて位置判定を行ってもよい。また、停止位置を検出する際に、U1、W1およびV1の3相に通電した状態で2次巻線に発生する電圧を計測することで位置判定を行ってもよい。
【符号の説明】
【0144】
100、100a、100b 始動発電制御装置
1 始動発電機
ACG1、ACG2 巻線部
61、61b 第1電力変換部
62、62a 第2電力変換部
7、7a、7b 制御部
U1、V1、W1、U2、V2、W2 巻線
72 CPU
73 検出・判定回路部
74 ゼロクロス検出回路
75 ロータ位置判定回路
Q1〜Q14、Q17〜Q19 MOSFET
【要約】
本発明の一実施形態に係る始動発電装置は、永久磁石からなる界磁部と、第1多相巻線および第2多相巻線が並列に配設された電機子部とを有する始動発電機と、バッテリに接続される第1正側直流端子と、前記第1多相巻線に接続された複数の第1交流端子とを有し、直流および交流間で双方向に電力を変換する第1電力変換部と、前記第2多相巻線に接続された複数の第2交流端子を有し、前記第2交流端子を介して入出力する電流を制御する第2電力変換部と、前記第2多相巻線の出力電圧に基づき前記界磁部と前記電機子部との位置関係を検知し、検知した前記位置関係に応じて前記第1電力変換部と前記第2電力変換部とを制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記第2交流端子を介して入出力する電流をオフした状態で、前記第1多相巻線に前記バッテリの出力電圧を所定時間印加したときに前記第2多相巻線を構成する2以上の巻線に発生した2以上の所定の電圧の時間幅に基づき、前記始動発電機の停止時における前記位置関係を検知する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
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図50
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