(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る錠前10の構成を示す斜視図である。
図2(A)は、第1実施形態に係る錠前10において、錠本体12の裏面板35を外して錠本体12の内部を裏面側から見た場合の構成図であり、
図2(B)は裏面板35の上面図を示している。
【0015】
まず、実施形態に係る錠前10の基本的な構成を説明する。
錠前10は、掛止板11と、錠本体12と、を備えている。この錠前10は、ランドセル等の鞄の蓋部材に一端が固定された掛止板11を、鞄本体に固定された錠本体12の操作部14に嵌合させて、操作部14を回動させることで鞄の施錠及び開錠可能な錠前であり、掛止板11を錠本体12の表面に押し当てることにより自動で施錠動作が実行されるものである。
【0016】
掛止板11は、鉄やその合金等により長方形の平板に形成された本体に、横に長い長方形の嵌合孔13(13a,13b)をその長手方向に所要の間隔を置いて形成している。なお、掛止板11の本体に設けられる嵌合孔13は、1つでもよいし、錠本体12との嵌合位置を調整するために複数設けてもよい。
【0017】
錠本体12は、鉄や硬質樹脂製等で形成されて、鞄本体の外面に固定される。錠本体12は、その表面中央部に、掛止板11を押し当てるための押当面が形成されており、この押当面のほぼ中央部上に、掛止板11の嵌合孔13が嵌合される本体突起部15が突設されている。
【0018】
本体突起部15は、平面形状が掛止板11の嵌合孔13の平面形状とほぼ同形で若干小形の長方形に形成され、その突出高さは掛止板11の板厚による高さよりも若干高くなるように形成される。本体突起部15には、その頂端中央部から錠本体12の厚さ方向に貫通する、平面が円形の軸孔(図示省略)が形成されている。
【0019】
操作部14は、硬質樹脂又は金属等で形成された直方体の本体と、この本体の一方の面に中実円柱状の回転軸20(
図3)とが一体に形成されている。操作部14の本体は、掛止板11の嵌合孔13が挿通可能な形状と大きさに形成されている。操作部14は、本体突起部15上にこの突起部と同心状に配設されて、操作部14の回転軸20は、本体突起部15に形成された軸孔を介して内部に挿通されて、錠本体12内のロータ19に嵌入されて結合される。
【0020】
また、錠本体12の押当面には、ロータ係止部16を挿通させるピン挿通孔が形成されている。このピン挿通孔は、本体突起部15の近傍に設けられて、錠本体12の厚さ方向に貫通している。ロータ係止部16は、操作部14が開錠位置(操作部14が本体突起部15の長手方向に合う位置)のときは、錠本体12の押当面から突出している。一方、掛止板11を錠本体12の押当面に押し当てて施錠するとき、すなわち操作部14を開錠位置から回転させて掛止板11を錠本体12に係止させるときは、掛止板11によりロータ係止部16は押し下げられる。なお、ロータ係止部16の構成、動作については後述する。
【0021】
ガイド17(17a,17b)は、掛止板11を錠本体12の押当面に案内するための土手であり、錠本体12表面の上方に突出して設けられている。また、錠本体12の長手方向両端部には、鞄本体に錠本体12を固定するために、錠本体12を支持する支持部の軸を鞄の内側へ貫通させるための左右一対の挿通孔18(18a,18b)が設けられている。
【0022】
続いて、第1実施形態に係る錠前10の具体的な構成について説明する。
図2に示すように第1実施形態に係る錠前10の錠本体12は、ロータ19と、ロータ係止部16と、ロータ磁石22と、第1本体磁石24と、第2本体磁石25と、を備えている。ロータ19などの錠本体12内部の構成は、裏面板35と錠本体12の天板(錠本体12の表面板)との間の空間に配置される。
【0023】
ロータ19は、錠本体12内で操作部14の回転軸20と接続された、操作部14と一体に回転可能な回転板である。ロータ19は、操作部14の配置が本体突起部15の長手方向に平行な開錠位置と、本体突起部15の長手方向に対して直角となる施錠位置との間を可逆的に回動する。
【0024】
なお、ロータ19に嵌入されて接続された操作部14の回転軸20は、錠本体12の裏面板35まで延伸されて、裏面板35に設けられた回転軸挿通孔36に挿通されて裏面板35から突出される。裏面板35から突出した回転軸20の下端部は、かしめられてワッシャー等を介して裏面板35に固定される。また、回転軸20を裏面板35に固定するのでは無く、回転軸20の端部をロータ19に直接かしめて固定してもよい。
【0025】
ロータ19は、硬質樹脂等により平面が円形に形成された本体を有して、この本体の外周部には、外方に直角に突出した、平面が扇状のロータ段部21が形成されている。さらに、ロータ19の本体には、ロータ段部21が形成された位置と反対側に、外方に突出して、ロータ磁石22を収容するための溝が設けられた突出部が形成されている。
【0026】
ロータ磁石22は、ロータ19に設けられた突出部に配置される永久磁石である。このロータ磁石22は、磁石の一方の極性がロータ19の外側に向けて配置され、磁石の他方の極性がロータ19の内側(中心)を向くように突出部の溝に配置される。例えば、ロータ磁石22のN極がロータ19の外側に向けて配置され、S極がロータ19の内側を向くように配置される。
【0027】
ロータ係止部16は、操作部14が開錠位置のときにロータ19を係止して回転を規制する一方、操作部14を回転させて施錠するときにロータ19の係止を解除する係止ピンである。ロータ係止部16は、硬質樹脂等により棒状に形成された本体と、本体の外方に直角に突出した、平面が円形の係止段部23とが一体に形成されている。そして、ロータ係止部16には、一端が係止段部23に接して、他端が錠本体12の裏面板35と接する付勢バネ28が嵌入されている。なお、ロータ係止部16の下端部は、錠本体12の裏面板35まで延伸されて、裏面板35に設けられた係止部挿通孔37から突出可能に構成される。
【0028】
操作部14が開錠位置まで回転されて、掛止板11が錠本体12の押当面に押し当てられていないとき、係止段部23は付勢バネ28により錠本体12の天板方向に付勢されて、係止段部23とロータ段部21の端部とは係合する。一方、掛止板11が押当面に押し当てられてロータ係止部16が押し下げられたとき、付勢バネ28は収縮して、係止段部23は押し下げられて、係止段部23とロータ段部21との係合は解除される。
【0029】
第1本体磁石24及び第2本体磁石25のそれぞれは、錠本体12の天板に固定された永久磁石であり、ロータ19の外側の異なる位置に配置される。
【0030】
第1本体磁石24は、ロータ磁石22においてロータ19の外側に向けられた極性と同じとなる極性がロータ19の方向に向けて配置されている。例えば、ロータ磁石22においてロータ19の外側に向けられた極性がN極の場合には、第1本体磁石24のN極はロータ19の方向に向けて配置される。
【0031】
そして、第1本体磁石24は、ロータ19がロータ係止部16により係止されているときに、ロータ磁石22と向き合うように配置される。
【0032】
一方、第2本体磁石25は、ロータ磁石22においてロータ19の外側に向けられた極性と反対となる極性がロータ19の方向に向けて配置されている。例えば、ロータ磁石22においてロータ19の外側に向けられた極性がN極の場合には、第2本体磁石25のS極はロータ19の方向に向けて配置される。
【0033】
第2本体磁石25は、ロータ19の係止が解除されたときにロータ磁石22を吸着して回転させて、操作部14の施錠位置でロータ磁石22と向き合うように配置されている。
【0034】
このように第1本体磁石24及び第2本体磁石25を配置することで、操作部14が開錠位置にあるとき、すなわちロータ19が係止されているときには、第1本体磁石24とロータ磁石22との間には反発する力が働く。このとき、ロータ磁石22は、反対の極性を有する第2本体磁石25の方向に吸着され、回転が誘発されるがロータ係止部16の働きによりロータ19の回転は規制される。なお、第1本体磁石24側に設けられたストッパ26は、係止位置から逆方向(
図2中の左回り)へのロータ19の回転を規制するためのものである。
【0035】
一方、ロータ19の係止が解除されたときには、ロータ磁石22が第1本体磁石24と向き合う位置から第2本体磁石25の配置方向に吸着されることで、ロータ19は回転する。なお、第2本体磁石25側に設けられたストッパ27は、操作部14の施錠位置からロータ19がさらに回転することを規制するためのものである。
【0036】
なお、第1本体磁石24及び第2本体磁石25の配置は、
図2に示す位置関係に限定されるものでは無く、ロータ19の係止時に操作部14が開錠位置で保持される一方、ロータ19の係止が解除されたときに、磁力による吸着力により操作部14が施錠位置まで回転する配置に適宜調整される。
【0037】
図3(A)は、操作部14が開錠位置にある場合の、操作部14、ロータ19、ロータ係止部16、及び2つの本体磁石の位置関係を説明する斜視図であり、
図3(B)は、錠本体12の裏面側から見た上面図である。
【0038】
図4(A)は、操作部14が施錠位置にある場合の位置関係を説明するための斜視図であり、
図4(B)は、錠本体12の裏面側から見た上面図である。
【0039】
なお、
図3〜
図4では、錠本体12の構成を分かり易く説明するために、錠本体12の天板、裏面板等の一部の構成を省略して図示している。
図3(A)、
図4(A)では、図面の上側が錠本体12の裏面側であり、図面の下側が錠本体12の天板側となる。
【0040】
図3に示すように、操作部14が開錠位置にあり、掛止板11によりロータ係止部16が押圧されていない場合、ロータ係止部16の係止段部23と錠本体12の裏面との間に設けられた付勢バネ28により、ロータ係止部16は錠本体12の天板方向に付勢される。係止段部23は、ロータ段部21とほぼ同じ高さに持ち上げられるため、ロータ段部21を係止する。これにより、ロータ磁石22が、第2本体磁石25の方向に向かう回転は規制される。
【0041】
一方、
図4に示すように、掛止板11によりロータ係止部16が押圧される場合、付勢バネ28が収縮して、ロータ係止部16の係止段部23は錠本体12の裏面方向に押し下げられる。係止段部23が裏面方向に押されることで、係止段部23とロータ段部21との係止は解除される。ロータ磁石22が、反対の極性がロータ方向に向けられた第2本体磁石25に吸着されることで、ロータ19は操作部14が施錠位置となるまで自動で回転する。
【0042】
続けて、第1実施形態における錠前10の動作について具体的に説明する。
図5(A)は、操作部14が開錠位置にある場合に、錠本体12を表面側から見た場合の図であり、
図5(B)は、開錠時の錠本体12の構成を、錠本体12の裏面側から見た説明図である。なお、
図5、
図6では、ロータ磁石22においてロータ19の外側に向けられた極性をN極として、第1本体磁石24、第2本体磁石25においてロータ19側に向けられた極性を、それぞれN極、S極として説明する。
【0043】
操作部14が開錠位置にあり、ロータ19が係止されているとき、ロータ磁石22と第1本体磁石24とが向き合う。ロータ磁石22と第1本体磁石24とは、N極同士が向き合うため互いに反発する。ロータ磁石22は、反対の極性であるS極が向けられた第2本体磁石25の方向に吸着されるが、ロータ係止部16により回転が規制される。
【0044】
図6(A)は、掛止板11が錠本体12の押当面に押し当てられて、操作部14が施錠位置となった場合の、錠本体12を表面側から見た場合の図であり、
図6(B)は、施錠時の錠本体12の構成を、錠本体12の裏面側から見た説明図である。
【0045】
掛止板11が錠本体12の押当面に配置されると、ロータ係止部16によるロータ19の係止が解除される。ロータ磁石22が、反対の極性であるS極が向けられた第2本体磁石25に吸着されることで、ロータ19は操作部14が施錠位置となるまで自動で回転する。
【0046】
このように、第1実施形態に係る錠前10によれば、ロータ19及び錠本体12に磁石を設けて、磁気的な作用を用いて施錠動作を行うことで、ロータ19の回転に用いるバネを削除した簡易な構成で自動での施錠動作を実現できる。
【0047】
また、ロータ磁石22、及び2つの本体磁石は、金属製の掛止板11を用いた場合には、掛止板11を錠本体12の押当面に吸着して固定することができるので、施錠の確実性を向上させることができる。
【0048】
なお、上記の第1実施形態では、操作部14を施錠位置から開錠位置に右回りに回転させる構成について説明したが、第1本体磁石24などを反対側に配置することで、施錠位置から開錠位置に左回りに回転させる構成にしてもよい。
【0049】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る錠前10の構成を説明する斜視図である。
図8は、錠前10において、錠本体12の裏面板35を外して裏面側から見た場合の構成図である。なお、第1実施形態と構成的、動作的に同様となる部分については説明を適宜省略する。
【0050】
第2実施形態に係る錠前10の錠本体12では、操作部14が施錠位置から右回り及び左回りの両方向に回転可能に構成されており、ロータ19の内部に第1ロータ磁石29及び第2ロータ磁石30の2つの永久磁石が設けられている。
【0051】
ロータ19は、第1ロータ磁石29及び第2ロータ磁石30を収容するための溝が設けられた2つの突出部が形成されている。
【0052】
第1ロータ磁石29は、磁石の一方の極性がロータ19の外側に向けて配置され、磁石の他方の極性がロータ19の内側(中心)を向くように突出部の溝に配置される。例えば、第1ロータ磁石29のN極がロータ19の外側に向けて配置される。
【0053】
第2ロータ磁石30は、第1ロータ磁石29においてロータ19の外側に向けて配置された極性と反対となる極性がロータ19の外側に向けて配置され、他方の極性がロータ19の内側(中心)を向くように突出部の溝に配置される。例えば、第1ロータ磁石29のN極がロータ19の外側に向けて配置された場合、第2ロータ磁石30のS極がロータ19の外側に向けて配置される。
【0054】
第2ロータ磁石30の位置は、
図8に示すように、例えば第1ロータ磁石29の位置から回転軸20を中心にして90度回転した位置に配置される。
【0055】
第1本体磁石24及び第2本体磁石25は、錠本体12の天板に固定されて設けられる2つの永久磁石である。
【0056】
第1本体磁石24は、一方の極性がロータ19側に向けられている。
第1本体磁石24は、操作部14を一方の回転方向(例えば右回り)に回転させてロータ19が係止されたとき、極性が同じとなる第1ロータ磁石29または第2ロータ磁石30と向き合う。そして、ロータ19の係止が解除されたときに、極性が異なる第1ロータ磁石29または第2ロータ磁石30を吸着して回転させて操作部14の施錠位置で向き合うように配置されている。
【0057】
第2本体磁石25は、錠本体12で第1本体磁石24と異なる位置に設けられており、第1本体磁石24の一方の極性と反対となる極性がロータ19側に向けられている。
【0058】
第2本体磁石25は、他方の回転方向(例えば左回り)に回転させてロータ19を係止したときに、極性が同じとなる第1ロータ磁石29または第2ロータ磁石30と向き合う。そして、第2本体磁石25は、ロータ19の係止が解除されたときに、極性が異なる第1ロータ磁石29または第2ロータ磁石30を吸着して回転させて操作部14の施錠位置で向き合うように配置されている。
【0059】
例えば、第1本体磁石24、第2本体磁石25においてロータ19側に向けられた極性を、それぞれS極、N極とする。
図8に示すように、第1本体磁石24を錠本体の裏面側から見て左側に配置し、第2本体磁石25を右側に配置する。第2本体磁石25は、第1本体磁石24の位置から回転軸20を中心にして略90度回転した位置に配置する。そして、第1ロータ磁石29のロータ外側に向けられた極性をN極、第2ロータ磁石30のロータ外側に向けられた極性をS極とする。
【0060】
この場合、第1本体磁石24は、操作部14を右回りに回転させてロータ19が係止されたとき、極性が同じとなる第2ロータ磁石30と向き合う。ロータ19の係止が解除されたときは、極性が異なる第1ロータ磁石29を吸着して回転させて操作部14の施錠位置で向き合う。
【0061】
第2本体磁石25は、左回りに回転させてロータ19を係止したときに、極性が同じとなる第1ロータ磁石29と向き合う。そして、ロータ19の係止が解除されたときは、極性が異なる第2ロータ磁石30を吸着して回転させて操作部14の施錠位置で向き合う。
【0062】
ロータ19の係止が解除されたときには、それぞれ2つのロータ磁石と本体磁石は、互いに極性が異なる磁石同士が向き合い吸着して、操作部14の施錠位置を保持する。
【0063】
なお、第2実施形態に係る錠前10では、回転方向を規制するためのストッパは設けておらず、ロータ19の2つの突出部が逆方向への回転を規制するストッパの役割を有する。
【0064】
図9(A)は、操作部14を右回りに回転させて、操作部14が開錠位置にある場合の、操作部14、ロータ19、2つのロータ磁石、ロータ係止部16、及び2つの本体磁石の位置関係を示す斜視図であり、
図9(B)は、錠本体12の裏面側から見た上面図である。
【0065】
図10(A)は、掛止板11によりロータ係止部16が押圧されて、ロータ19の係止が解除された場合の位置関係を説明するための斜視図であり、
図10(B)は、錠本体12の裏面側から見た上面図である。
【0066】
図9に示すように、操作部14が開錠位置にある場合に、ロータ係止部16は押圧されてないため、係止段部23と錠本体12の裏面との間に設けられた付勢バネ28により、ロータ係止部16は錠本体12の天板方向に付勢される。
【0067】
係止段部23は、ロータ段部21とほぼ同じ高さに持ち上げられて、ロータ段部21を係止する。このため、第2ロータ磁石30が、異なる極性がロータ側に向けられた第2本体磁石25に向かう回転は規制される。
【0068】
図10に示すように、掛止板11によりロータ係止部16が押圧された場合、付勢バネ28が収縮して、係止段部23は錠本体12の裏面方向に押される。係止段部23が裏面方向に押されることで、係止段部23とロータ段部21との係止は解除される。これにより、第2ロータ磁石30が、第2本体磁石25の方向に吸着されて、第2ロータ磁石30と第2本体磁石25とが向き合う位置、すなわち操作部14が施錠位置になるまでロータ19は自動で回転する。
【0069】
続けて、第2実施形態における錠前10の動作について具体的に説明する。
図11(A)は、操作部14を右回りに回転させて開錠位置にした場合に、錠本体12を表面側から見た場合の説明図であり、
図11(B)は、開錠位置での錠本体12の構成を、裏面側から見た説明図である。
【0070】
ここでは、第1ロータ磁石29のロータ外側に向けられた極性をN極、第2ロータ磁石30のロータ外側に向けられた極性をS極、第1本体磁石24、第2本体磁石25においてロータ19側に向けられた極性を、それぞれS極、N極として説明する。
【0071】
操作部14を右回りに回転させて操作部14が開錠位置にすると、ロータ19がロータ係止部16により係止される。このとき、第1本体磁石24のS極は、極性が同じとなる第2ロータ磁石30と向き合う。同じ極性であるS極同士が向き合うため、互いに反発して、第2ロータ磁石30のS極は、反対の極性のN極が向けられた第2本体磁石25の方向に吸着されるが、ロータ係止部16により回転が規制される。
【0072】
図12(A)は、掛止板11が錠本体12の押当面に配置されて、ロータ19の係止が解除された場合に、錠本体12を表面側から見た場合の説明図であり、
図12(B)は、施錠時の錠本体12の構成を、裏面側から見た説明図である。
【0073】
掛止板11が錠本体12の押当面に配置されると、ロータ係止部16によるロータ19の係止が解除される。第2ロータ磁石30のS極は、反対の極性のN極が向けられた第2本体磁石25の方向に吸着されて、第2ロータ磁石30と第2本体磁石25とが向き合う位置、すなわち操作部14が施錠位置になるまでロータ19は回転する。このとき、第1ロータ磁石29のN極は、反対の極性のS極が向けられた第1本体磁石24と向き合い吸着する。これより、操作部14は、2組の磁石の吸着力で施錠位置に保持される。
【0074】
図13(A)は、操作部14を左回りに回転させて開錠位置にした場合に、錠本体12を表面側から見た場合の説明図であり、
図13(B)は、開錠位置での錠本体12の構成を、裏面側から見た説明図である。
【0075】
操作部14を左回りに回転させて操作部14が開錠位置にすると、ロータ19がロータ係止部16により係止される。このとき、第2本体磁石25のN極は、極性が同じとなる第1ロータ磁石29と向き合う。同じ極性であるN極同士が向き合うため、互いに反発して、第1ロータ磁石29のN極は、反対の極性のS極が向けられた第1本体磁石24の方向に吸着されるが、ロータ係止部16により回転が規制される。なお、係止解除時の構成は、
図12と同様になるため、説明を省略する。
【0076】
このように、第2実施形態に係る錠前10によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、ロータ19に2つの磁石を設けることで、操作部14を施錠位置から右回り及び左回りの両方向に回転する構成であっても、自動での施錠動作をより安定的に実現できる。
【0077】
図14は、実施形態に係る錠前10を装着したランドセル100の底部(底部外面)の斜視図である。
【0078】
ランドセル100は、合成樹脂製又は皮革製等のランドセル本体31と、このランドセル本体31の底部と反対側で開口する開口部を閉じる冠部材32と、を備える。冠部材32は、ランドセル100の開口部の背板38側の一辺に一端が固定され、ランドセル本体31の開口部を覆って、ランドセル本体31の底部まで延設されている。
【0079】
ランドセル本体31は、ランドセル100を小学生等のユーザが背負ったときにユーザの背中に接する背板38、ユーザが背負うときに使用する左右一対の肩ベルト33が設けられる。また、ランドセル本体31の底部には、この左右一対の肩ベルト33の下端側に配設された金属製のリングを回動可能に支持する支持部34が固定される。
【0080】
そして、剛性を有するこの底部に、錠本体12が固定される。また、冠部材32の先端部にはほぼY字状のベロが接続されて、このベロの先端に掛止板11が固着される。
【0081】
さらに、
図15(A)〜(C)は、実施形態に係る錠前10のその他の適用例を示す斜視図である。
図15(A)は、工具箱等に用いられる箱型のケース101に錠前10を適用する場合を示している。ケース101の本体部に錠本体12が配置されており、蓋部に掛止板11が固定されている。
図15(B)は、スーツや楽器などの収容等に用いられる長方形のケース102に錠前10(10a,10b)を適用する場合を示している。ケース102の本体部の側面に2つの錠本体12が配置されており、蓋部の側面に2つの掛止板11が固定されている。
【0082】
図15(C)は、日記帳103に錠前10を適用する例を示している。日記帳103の一方の開閉表紙部に錠本体12が配置されており、他方の開閉表紙部に掛止板11が固定されており、日記帳103の施錠及び開錠が可能となっている。
【0083】
なお、実施形態に係る錠前10は、上記の適用例に限定されるものでは無く、旅行用の鞄など各種の鞄、ケース、手帳、財布等に適用することができる。
【0084】
以上述べた各実施形態の錠前10によれば、ロータ及び錠本体に磁石を設けて、磁気的な作用を用いて施錠動作を行うことで、ロータの回転に用いるバネを削除した簡易な構成で自動での施錠動作を実現する錠前を実現できる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【解決手段】錠前10は、操作部を回動させることで施錠及び開錠可能な錠前であって、錠本体12の内部で操作部に接続されて、操作部と一体に回転可能なロータ19と、操作部が開錠位置のときにロータ19を係止して回転を規制する一方、施錠するときにロータ19の係止を解除するロータ係止部16と、ロータ19に設けられて、一方の極性がロータの外側に向けて配置されたロータ磁石22と、錠本体12内に設けられて、ロータ磁石22の一方の極性と同じとなる極性がロータ19の方向に向けて配置された第1本体磁石24と、錠本体12内で第1本体磁石24と異なる位置に設けられて、第1本体磁石24の一方の極性と反対となる極性がロータ19の方向に向けて配置された第2本体磁石25と、を備える。