(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記医薬組成物は、前記活性成分を、(i)ヒトに経口投与後、約6時間から約10時間にわたって一定の速度で、(ii)ヒトに経口投与後、約6時間から約10時間にわたって速度を減少させながら、又は、(iii)ヒトに経口投与後、約6時間から約10時間にわたってパルスで、完全に放出する、ことを特徴とする請求項2に記載の医薬組成物。
ベンダムスチン、又はその薬学的に許容可能なエステル、塩、或いは溶媒和物と、HDAC阻害剤は、単一化した剤形で処方される、ことを特徴とする請求項9に記載の組み合わせの製品。
ベンダムスチン、又はその薬学的に許容可能なエステル、塩、或いは溶媒和物と、HDAC阻害剤は、別個の剤形で処方される、ことを特徴とする請求項9に記載の組み合わせの製品。
【発明を実施するための形態】
【0076】
癌は、癌抑制遺伝子の機能の喪失、および/または、癌遺伝子の機能の獲得あるいは過剰活性化をもたらす染色体の異常と同様に、遺伝子の突然変異と欠失のような遺伝子欠損の疾患と考えられている。
【0077】
癌は、腫瘍内部の遺伝子発現におけるゲノム規模の変化を特徴としている。これらの変化は、細胞周期を経て進化する、アポトーシスを回避する、または、化学療法に対する耐性を有するようになる腫瘍の能力を促進する。HDAC阻害剤は、これらの変化のいくつかを逆転させ、正常細胞のパターンのようなパターンを回復させることができる。
【0078】
ヒトゲノムは、細胞の必要性に依存して遺伝子のスイッチを入れたり切ったりする、遺伝子の複雑なネットワークからなる。遺伝子のスイッチを入れるまたは切る方法の1つは、ヒストンタンパク質の化学的修飾を用いる。ヒストンタンパク質は染色体の構造成分であり、遺伝物質であるDNAが配される足場を形成する。よく研究されたヒストン修飾は、アセチル化および脱アセチル化、すなわち、ヒストンアセチルトランスフェラーゼおよびヒストンデアセチラーゼとしても知られている酵素のファミリーによって触媒される修飾である。
【0079】
化合物1によるHDAC酵素の阻害は、アセチル化された状態、すなわち、転写が生じることを可能にする状態(遺伝子の「スイッチを入れる」こととみなすことができる)に有利なように均衡を崩す。細胞が化合物1で処理されると、先だって沈静化していた遺伝子の波に最初にスイッチが入る。これらの遺伝子のいくつかはそれ自体が制御因子であり、さらに別の遺伝子の発現を活性化または抑制する。その結果は遺伝子発現の変化のオーケストラである:いくつかの遺伝子がスイッチを入れられ、それ以外の遺伝子はスイッチを切ったままの状態である。
【0080】
化学療法および/または放射線治療の後、患者の腫瘍のなかには、治療に適合し、かつ、細胞死に対する耐性を持つようになるための腫瘍による戦略として、特定の遺伝子のスイッチを入れるものもある。多くの癌で生じる遺伝子変化の1つの例は、DNA修復遺伝子RAD51の活性化である。DNAに損傷を与える化学療法あるいは放射線による治療に反応して、腫瘍は、これらの薬剤によって与えられたDNA損傷を修復するのを助けるための適応戦略として、DNA修復遺伝子(RAD51を含む)のスイッチを入れることがしばしばある。前臨床モデルでは、化合物1は、RAD51(また他のDNA修復遺伝子)のスイッチを切って、損傷を受けたDNAを修復する腫瘍の能力を効果的に阻害して、化学療法と放射線に対して腫瘍を感作させる。
【0081】
(HDAC阻害剤の前臨床活性)
前臨床研究では、化合物1のようなHDAC阻害剤は、腫瘍特異性を備えた抗癌活性を有することがわかっている。これらの研究は、化合物1のようなHDAC阻害剤のインビトロおよびインビボでの活性に関する重要な情報を提供し、抗癌効果の基礎となる分子の機構を決定した。
【0082】
インビトロ:化合物1は、多くの腫瘍細胞株に対して活性であり、肺、結腸、前立腺、膵臓および脳の腫瘍のマウスモデルで効果的である。
【0083】
エクスビボ:化合物1は、結腸、卵巣、肺、および、多くの血液の癌の患者からの主要なヒト腫瘍において活性である。
【0084】
広範囲な安全性と毒物学に関する研究が多くの動物種で実施されている。化合物1の作用機序は研究されており、腫瘍細胞に対する多面的な攻撃:p21および他の腫瘍抑制因子および細胞周期遺伝子のアップレギュレーション、活性酸素種の誘発および酸化防止剤経路の減衰、カルシウムホメオスタシスにおける変化とERストレスの増加、DNA修復経路のダウンレギュレーションとDNA損傷の増加、細胞死受容体によるアポトーシスの直接的な誘導およびカスパーゼの活性化、を含んでいる。
【0085】
化合物1はヒドロキサメートベースのHDAC阻害剤である。単独療法か併用療法のいずれかとしてヒトの癌を処置する方法、薬物動態学および薬力学的な戦略、投薬レジメンと同様に、化合物1を含む医薬組成物が本明細書で記載されている。
【0086】
(化合物1の治療効果および薬力学的効果)
癌のヒトを参加させる治験において、溶液形態の化合物1は、単一の経口投与量として、および、複数回の2時間のIV注入量として、2mg/kg投与された。IVと経口投与についてAUC
0−∞として測定された全身暴露は、それぞれ5.9μM*hrおよび1.45μM*hrであり、ヒトにおいて約27%の経口バイオアベイラビリティを示した。
【0087】
HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の治療効果は、HDAC阻害剤を、経口で1日2回(2回の用量は約4−約6時間おいて連続して投与される)、経口で1日3回(3回の用量は約4−約6時間おいて連続して投与される)、静脈内で、または、継続的に、投与することによって、癌のヒトにおいて達成される。前述の投薬レジメンは、HDAC阻害剤の有効な血漿濃度を少なくとも連続6時間ヒトにおいて維持する能力を促進する。
【0088】
化合物1の治療効果は、化合物1(即時放出型の経口カプセル)を1日2回(2回の用量は約4−約6時間おいて連続して投与される)投与することによって、癌のヒトにおいて達成される。いくつかの実施形態では、1日2回の投薬は、1日3回の投薬と比較して、血小板減少症の発生率を低下させる。
【0089】
治療効果については、ヒトにおける化合物1の有効な血漿濃度は、投薬日に、各日少なくとも連続して6時間、少なくとも連続して7時間、または、少なくとも連続して8時間維持されなければならない。治療効果については、ヒトにおける化合物1の有効な血漿濃度は、投薬日に、各日少なくとも連続して6時間維持されなければならない。治療効果については、ヒトにおける化合物1の有効な血漿濃度は、投薬日に、各日少なくとも連続して7時間維持されなければならない。いくつかの実施形態では、治療効果については、ヒトにおける化合物1の有効な血漿濃度は、投薬日に、各日連続して約6時間から約8時間、維持されなければならない。いくつかの実施形態では、ヒトにおける化合物1の有効な血漿濃度は、投薬日に、少なくとも連続して6時間(ただし、連続して12、13あるいは14時間を超えない)維持されなければならない。いくつかの実施形態では、投薬日に、少なくとも連続して6時間(ただし、連続して14時間を超えない)化合物1の有効な血漿濃度を維持することは、腫瘍細胞の増殖の阻害の効果を増強し、血小板減少症の発生率を最小限にする。いくつかの実施形態では、投薬日に、連続して約6時間から約8時間のあいだ化合物1の有効な血漿濃度を維持することは、腫瘍細胞の増殖の阻害の効果を増強し、血小板減少症の発生率を最小限にする。
【0090】
即時放出性カプセルまたは経口溶液として投与された、ヒトにおける化合物1の経口バイオアベイラビリティは約27%であることがわかった。薬物動態学における差が絶食状態と摂食状態の実験動物で観察された。化合物1は腸で優先的に吸収されるように思われる。
【0091】
1つの態様において、化合物1のようなHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩に対して信頼できる治療効果および薬力学的効果を与える方法が本明細書で提示されており、該方法は、制御放出製剤の形態で、HDAC阻害剤または薬学的に許容可能な塩を投与する工程を含んでいる。制御放出製剤は投薬日に一度可能である。制御放出製剤は、胃よりもむしろ腸で活性な剤(つまり、化合物1などのHDAC阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩)の放出も可能にする。
【0092】
1つの態様では、制御放出製剤は多粒子薬物送達系である。多粒子薬物送達系は、各々が望ましい特徴を示す、非常に多くの分離した小さな単位からなる経口投与剤形である。これらの系では、薬物原料の量は、一般的に0.05−2.00mmの直径を備えた何千もの球状粒子からなる複数の小単位で分かれている。多粒子の剤形は、活性物質が多くの小さな独立した小単位として存在する医薬製剤である。推奨された総投与量を送達するために、これらの小単位はカプセルに入れられるか、あるいは錠剤に圧縮される。多粒子は、胃内容排出にそれほど依存しておらず、したがって、胃腸通過時間における被検体間および被検体内の変動は少ない。さらに、多粒子はよりよく分布しており、局所刺激を引き起こしたり、あるいは、食物の存在によって影響を受けたりする傾向は少ない。
【0093】
多粒子剤形は、バイオアベイラビリティの増加、局所刺激のリスクの低下、および、予測可能な胃内容排出といった利点を提供する。いくつかの実施形態では、多粒子系は、従来の製剤よりも優れた複製可能な薬物動態学的挙動を示す。
【0094】
数分以内に生じる制御放出製剤(例えば、錠剤またはカプセル)の崩壊の後、個々の小単位は胃腸管を迅速に通過する。これらの小単位が2mm未満の直径を有する場合、幽門が閉じていても、それらは絶えず胃を出ることができる。これらは血漿レベルとバイオアベイラビリティにおける個体間および個体内での変動を少なくする。
【0095】
他の制御放出型経口医薬剤形は、多粒子薬物送達系で観察されるのと同じ利点を提供することができる。
【0096】
(休薬日)
血小板減少症は、HDAC阻害剤化合物による処置を受けるヒトで観察される副作用である。血小板減少症は、血液中で正常時よりも血小板が少ない状態のことである。これによってあざができやすくなったり、傷から大量の出血をしたり、粘膜やその他の組織から出血したりする可能性がある。血小板減少症は、ヒトに投与されるHDAC阻害剤化合物の一日の投与量を減らすことによって典型的に鎮められる。しかしながら、HDAC阻害剤化合物の一日投与量を減らすと、HDAC阻害剤化合物に対する治療効果および薬力学的効果が達成されないこともある。
【0097】
グレード4の血小板減少症の発生率を制限しつつ、HDAC阻害剤への治療効果と薬力学的効果を達成するための投薬レジメンが本明細書で提示されており、これは、投薬の各日に少なくとも連続して6時間、HDAC阻害剤の有効な血漿濃度を維持するのに十分な量のHDAC阻害剤を毎日連続して5−9日間投与することと、その後、HDAC阻害剤を連続して5−9日間投与しないことを含んでいる。いくつかの実施形態では、投薬日に、HDAC阻害剤の有効な血漿濃度は、連続して少なくとも6時間、少なくとも7時間、または、少なくとも8時間、ただし、連続して12、13あるいは14時間を超えずに維持される。いくつかの実施形態では、投薬日に、HDAC阻害剤は、連続して約6時間−約8時間のあいだ、HDAC阻害剤の有効な血漿濃度を維持するのに十分な量で投与される。いくつかの実施形態では、HDAC阻害剤は経口で投与される。いくつかの実施形態では、投薬日に、HDAC阻害剤の有効な血漿濃度は、多くとも連続して12、13、または14時間維持される。他の実施形態では、HDAC阻害剤は非経口で投与される。
【0098】
グレード4の血小板減少症の発生率を制限しつつ、HDAC阻害剤に対する治療効果と薬力学的効果を達成するための投薬レジメンが本明細書で提示されており、これは、(a)連続して7日間、HDAC阻害剤(即時放出性経口医薬組成物)の1日2回の経口投与と、その後のHDAC阻害剤を投与しない連続して7日間の休薬日、または、(b)連続して7日間、HDAC阻害剤(即時放出性経口医薬組成物)の1日1回の経口投与と、その後のHDAC阻害剤を投与しない連続して7日間の休薬日、とを含む。前述の投薬レジメンは、さらに、HDAC阻害剤の連続して5−9日間の投与と、その後のHDAC阻害剤を投与しない連続して2−9日間の休薬日も含んでいる。
【0099】
グレード4の血小板減少症の発生率を制限しつつ、化合物1に対する治療効果と薬力学的効果を達成するための投薬レジメンが本明細書で提示されており、これは、(a)連続して7日間、化合物1(即時放出性経口医薬組成物)の1日2回の経口投与と、その後の化合物1を投与しない連続して7日間の休薬日、(b)連続して7日間、化合物1(即時放出性経口医薬組成物)の1日1回の投与と、その後の化合物1を投与しない連続して7日間の休薬日、とを含んでいる。前述の投薬レジメンは、さらに、連続して5−9日間の化合物1の投与と、その後の化合物1を投与しない連続して2−9日間の休薬日、とを含んでいる。
【0100】
前述の投薬レジメンは、さらに、連続して5−9日間の化合物1の投与と、その後の化合物1を投与しない連続して2−9日間の休薬日、とを含んでいる。
【0101】
(HDAC阻害剤化合物)
N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド(化合物1)は以下の構造を有する。
【0103】
1つの態様では、化合物1は、薬学的に許容可能な塩として、本明細書に記載された医薬組成物と方法で使用される。1つの態様では、化合物1は塩酸塩として使用される。1つの態様では、化合物1はトシレート塩として使用される。
【0104】
化合物1のさらなる薬学的に許容可能な塩は次のものを含んでいる:(a)化合物1の酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウムまたはカルシウム)、または、アルミニウムイオンに置き換えられるとき、あるいは、アンモニウム陽イオン(NH4
+)に置き換えられるときに形成される塩、(b)エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ジシクロヘキシルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのアルキルアミンを含んでいる薬学的に許容可能な有機塩基に化合物1を反応させることによって形成された塩、および、アルギニン、リジンなどのようなアミノ酸を含む塩、(c)酸付加塩を提供する、薬学的に許容可能な酸に化合物1を反応させることによって形成された塩。薬学的に許容可能な酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタリン酸など、あるいは、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸(cyclopentanepropionic acid)、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、トリフルオロ酢酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]オクタ−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸(glucoheptonic acid)、4,4’−メチレンビス−(3−ヒドロキシ−2−エン−1−カルボン酸)、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸(tertiary butylacetic acid)、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸、などの有機酸を含んでいる。
【0105】
さらなる薬学的に許容可能な塩は、Berge et al., J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1−19; and “Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, and Use,” Stah and Wermuth, Ed.; Wiley−VCH and VHCA, Zurich, 2002.に記載されている。
【0106】
いくつかの実施形態において、様々な代謝反応の影響を受けやすい本明細書で記載された化合物の芳香環部分上の部位が修飾され、その結果、様々な代謝反応が減少し、最小化され、または、除去される。そのような修飾は、一例として、ハロゲン、ジューテリウムなどの芳香族環構造での適切な置換基の取り込みを含んでいる。1つの態様では、本明細書で記載されたHDAC阻害剤化合物は、代謝反応の影響を受けやすい部位で重水素化される。
【0107】
本明細書に記載された化合物は、本明細書で提示された様々な式および構造で列挙されたものと同一のアイソトープで標識した化合物を含んでいるが、1以上の原子が自然で一般にみられる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量の数を有する1つの原子と置き換えられる。本発明の化合物に組み入れることができるアイソトープの例は、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素および塩素のアイソトープ、例えば、それぞれ、
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
18O、
17O、
35S、
18F、
36Clを含んでいる。本明細書に記載された特定のアイソトープで標識した化合物、例えば、
3Hおよび
14Cのような放射性同位体が組み入れられるものは、薬物および/または基質組織内分布の分析に役立つ。さらに、ジューテリウム(つまり
2H)のようなアイソトープによる置換は、優れた代謝安定性に起因する特定の治療上の利点、例えば、インビボでの半減期の増加、または、必要用量の減少をもたらすことができる。
【0108】
本明細書に記載された医薬組成物、薬物動態学的戦略、投薬レジメン、処置の方法、および、併用療法で使用される他のHDAC阻害剤化合物は、式(I)の構造を含む化合物、または、その薬学的に許容可能な塩を含んでおり、
【0110】
ここで、
Xは−O−、−NR
2−、または、S(O)
nであり、nは0、1、または2であり、R
2は水素、−CH
3、−CH
2CH
3であり、
Yはエチレン、プロピレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、−CH(C
2H
5)CH
2−、−CH(CH(CH
3)
2)CH
2−、および、−CH(CH
3)CH
2−であり、
R
3は水素、−CH
3、または、−CH
2CH
3であり、
Arはフェニル、ナフチル、キノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、トランスフェニル(trans phenyl)CH=CH−、または、トランス(ベンゾフラン−2−イル)CH=CH−であり、ここで、Arは、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、−OH、1−シクロプロピルピペリジン−4−イルオキシ、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)ピペリジン−4−イルオキシ、N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチルアミノメチル、2−メトキシエトキシメチル、フェノキシメチル、2−メトキシエトキシ、2−モルホリン(morpholin)−4−イルエトキシ、ピリジン−3−イルメトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−N,N−ジメチルアミノエトキシ、メトキシメチル、3−i−プロポキシメチル、モルホリン−4−イルメチル、3−ヒドロキシプロピルオキシメチル、2−フルオロフェノキシメチル、3−フルオロフェノキシメチル、4−フルオロフェノキシ−メチル、3−メトキシプロピルオキシメチル、ピリジン−4−イルオキシメチル、2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル、2−オキソピリジン−1−イルメチル、2,2,2−トリフルオロエトキシメチル、4−イミダゾール−1−イルフェノキシメチル、4−[1.2.4−トリアジン−1−イル−フェノキシメチル、2−フェニルエチル、ピロリジン−1−イルメチル、ピペリジン−1−イルメチル、4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシメチル、4−フルオロフェニルチオメチル、4−フルオロフェニルスルフィニルメチル、4−フルオロフェニルスルホニルメチル、ピリジン−3−イルメチルオキシメチル、テトラヒドロピラン−4−イルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、2−ピロリジン−1−イルエチルオキシ、ピペリジン−4−イルオキシ、N−メチル−N−ベンジルアミノメチル、N−メチル−N−2−フェニルエチルアミノメチル、3−ヒドロキシプロピルチオメチル、3−ヒドロキシプロピルスルフィニルメチル、3−ヒドロキシプロピルスルホニル−メチル、N−メチル−N−2−インドール−3−イルエチルアミノメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)エチル、N−ヒドロキシアミノカルボニル−メチルアミノメチル、または、3−(2−カルボキシエチルアミノ−メチル)から独立して選ばれた1つまたは2つの置換基で随意に置換される。
【0111】
いくつかの実施形態では、Arは、ベンゾフラン−2−イルであり、N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチルアミノメチル、2−フルオロフェノキシメチル、3−フルオロフェノキシメチル、4−フルオロフェノキシ−メチル、ヒドロキシル−4−イルオキシメチル、2,4,6−トリフルオロフェノキシ−メチル、2−オキソピリジン−1−イルメチル、2,2,2−トリフルオロエトキシ−メチル、4−イミダゾール−1−イルフェノキシ−メチル、4−[1.2.4−トリアジン−1−イル−フェノキシメチル、2−フェニルエチル、3−ヒドロキシプロピルオキシメチル、2−メトキシエチルオキシメチル、ピロリジン−1−イルメチル、ピペリジン−1−イルメチル、4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシメチル、4−フルオロフェニルチオメチル、4−フルオロフェニルスルフィニルメチル、4−フルオロフェニルスルホニルメチル、2−(3−トリフルオロメトキシフェニルエチル)、N−メチル−N−ベンジルアミノメチル、N−メチル−N−2−フェニルエチルアミノメチル、3−ヒドロキシプロピル−チオメチル、3−ヒドロキシプロピルスルフィニル−メチル、3−ヒドロキシプロピルスルホニルメチル、N−メチル−N−2−インドール−3−イルエチルアミノメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、N−ヒドロキシアミノカルボニル−メチルアミノメチル、または、2−カルボキシエチルアミノメチルを含むベンゾフラン−2−イル環の3−の位置でモノ置換される。
【0112】
いくつかの実施形態では、Arはベンゾフラン−2−イルであり、N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチルアミノメチル、2−メトキシエトキシメチル、メトキシメチル、3−i−プロポキシメチル、モルホリン−4−イルメチル、3−ヒドロキシプロピルオキシメチル、3−メトキシプロピルオキシメチル、ピロリジン−1−イルメチル、または、ピペリジン−1−イルメチルを含むベンゾフラン−2−イル環の3−の位置でモノ置換される。
【0113】
いくつかの実施形態では、Arはベンゾフラン−2−イルであり、1−シクロプロピルピペリジン−4−イルオキシ、ピペリジン−4−イルオキシ、テトラヒドロピラン−4−イルオキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、2−ピロリジン−1−イルエチルオキシ、または、1−(2,2,2−トリフルオロエチル)ピペリジン−4−イルオキシを含むベンゾフラン−2−イル環の5−の位置で置換される。
【0114】
いくつかの実施形態では、Arは、トランスフェニルCH=CH−であり、ここで、フェニルはメチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、または、−OHから独立して選ばれた1つまたは2つの置換基で随意に置換される。いくつかの実施形態では、ArはトランスフェニルCH=CH−である。
【0115】
いくつかの実施形態では、Arはナフチルであり、ナフチルは、1つまたは2つの置換基で随意に置換される。
【0116】
いくつかの実施形態では、Arはキノリニルであり、キノリニルは1つまたは2つの置換基で随意に置換される。
【0117】
いくつかの実施形態では、Arはキノリニルであり、キノリニルは、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、−OH、2−メトキシエトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、メトキシメチル、3−i−プロポキシメチル、3−ヒドロキシプロピルオキシメチル、3−メトキシプロピルオキシメチル、または、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシメチルから独立して選ばれた1つまたは2つの置換基で随意に置換される。
【0118】
いくつかの実施形態では、Xは−O−であり、R
3は水素である。
【0119】
いくつかの実施形態では、Xは−S(O)
nであり、R
3は水素である。
【0120】
いくつかの実施形態では、Yはエチレンである。いくつかの実施形態では、Yはエチレンまたは−CH(C
2H
5)CH
2−である。いくつかの実施形態では、Yは−CH(C
2H
5)CH
2−である。
【0121】
いくつかの実施形態では、Xは−O−であり、R
3は水素であり、Yはエチレンまたは−CH(C
2H
5)CH
2−である。
【0122】
医薬組成物、薬物動態学的戦略、投薬レジメン、処置の方法、および併用療法での使用について検討されるさらに他のHDAC阻害剤化合物は、式(II)の構造を含む化合物、または、その薬学的に許容可能な塩を含んでおり、
【0124】
ここで、
Xは−O−、−NR
2−、または、−S(O)
nであり、nが0、1、または2であり、R
2は水素、−CH
3、−CH
2CH
3であり、
Yはエチレン、プロピレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、−CH(C
2H
5)CH
2−、−CH(CH(CH
3)
2)CH
2−、および、−CH(CH
3)CH
2−であり、
R
3は水素、−CH
3、または、−CH
2CH
3であり、
Arはフェニル、ナフチル、キノリニル、ベンゾフラニル、または、ベンゾチエニルであり、ここで、Arは、クロロ、フルオロ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチレンジオキシ、−OHから独立して選ばれた1つまたは2つの置換基で随意に置換され、
R5は、トリフルオロメチル、メチル、エチル、N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチルアミノメチル、2−メトキシエトキシメチル、フェノキシメチル、メトキシメチル、3−i−プロポキシメチル、モルホリン−4−イルメチル、3−ヒドロキシプロピルオキシメチル、2−フルオロフェノキシメチル、3−フルオロフェノキシメチル、4−フルオロフェノキシ−メチル、3−メトキシプロピルオキシメチル、ピリジン−4−イルオキシメチル、2,4,6−トリフルオロフェノキシメチル、2−オキソピリジン−1−イルメチル、2,2,2−トリフルオロエトキシメチル、4−イミダゾール−1−イルフェノキシメチル、2−フェニルエチル、ピロリジン−1−イルメチル、ピペリジン−1−イルメチル、4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イルメチル、4−メチルピペラジン−1−イルメチル、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシメチル、4−フルオロフェニルチオメチル、4−フルオロフェニルスルフィニルメチル、4−フルオロフェニルスルホニルメチル、ピリジン−3−イルメチルオキシメチル、N−メチル−N−ベンジルアミノメチル、N−メチル−N−2−フェニルエチルアミノメチル、3−ヒドロキシプロピルチオメチル、3−ヒドロキシプロピルスルフィニルメチル、3−ヒドロキシプロピルスルホニル−メチル、N−メチル−N−2−インドール−3−イルエチルアミノメチル、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)エチル、2−(3−トリフルオロメトキシフェニル)エチル、N−ヒドロキシアミノカルボニル−メチルアミノメチル、または、3−(2−カルボキシエチルアミノ−メチル)である。
【0125】
いくつかの実施形態では、Arはベンゾフラニルである。
【0126】
いくつかの実施形態では、R5は、N,N−ジメチルアミノメチル、N,N−ジエチルアミノメチル、ピロリジン−1−イルメチル、または、ピペリジン−1−イルメチルである。
【0127】
いくつかの実施形態では、HDAC阻害剤は以下から選ばれる:N−ヒドロキシ−4−[2−(4−メトキシキノリン−2−イルカルボニルアミノ)エトキシ]ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−[2S−(トランス−シンナモイルアミノ(cinnamoylamino)−ブトキシ]ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−[2R−(トランス−シンナモイルアミノ(cinnamoylamino)−ブトキシ]ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[4−(2−メトキシエトキシ)キノリン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−[2S−(ベンゾチオフェン−2−イルカルボニルアミノ)ブトキシ]−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2S−[ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]ブトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(メトキシメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(N,N−ジメチルアミノメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(i−プロポキシメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(3−ヒドロキシプロポキシメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(2−メトキシエチルオキシメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(ピロリジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(ピペリジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[3−(4−メチルピペラジン−1−イルメチル)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]−エトキシ}ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[5−(テトラヒドロピラン−4−イルオキシ)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[5−(2−ピロリジン−1−イルエチルオキシ)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]エトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2S−[5−(2−ピロリジン−1−イルエチルオキシ)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]ブトキシ}−ベンズアミド、N−ヒドロキシ−4−{2−[5−(2−ピロリジン−1−イルエチルオキシ)ベンゾフラン−2−イルカルボニルアミノ]−1R−メチル−エトキシ}ベンズアミド、および、N−ヒドロキシ−4−{2−[(3−(ベンゾフラン−2−イル)−4−(ジメチルアミノ)−but−2−エノイル)アミノ]−エトキシ}ベンズアミド、または、その薬学的に許容可能な塩から選択される。
【0128】
いくつかの実施形態では、HDAC阻害剤は、WO2004/092115またはWO2005/097770で開示されたHDAC阻害剤から選択され、いずれの文献も引用によって本明細書に組み込まれる。
【0129】
(形態と相)
その薬学的に許容可能な塩とその薬学的に許容可能な溶媒和物を含むHDAC阻害剤(例えば、化合物1)は様々な形態であり、限定されないが、非晶相、部分的に結晶形態、結晶形態、製粉された形態、およびナノ粒子の形態を含んでいる。結晶形態は多形体として知られている。多形体は、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配置を含んでいる。この配置は、物質と賦形剤の有効期間または安定性と同様に、生理化学的パラメータ、製剤パラメータ、および処置のパラメータにも著しく影響を与える可能性がある。多形体は一般的に、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、水晶の形状、視覚的および電気的な性質、安定性、および溶解度を有している。再結晶化溶媒、結晶化速度、および保存温度のような様々な要因により、単結晶形態が優位を占めている。1つの態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の結晶形態は、本明細書に記載された医薬組成物の中で使用される。1つの態様では、化合物1のHCl塩の結晶形態は、本明細書に記載された医薬組成物の中で使用される。1つの態様では、非晶質の化合物1は本明細書に記載された医薬組成物の中で使用される。1つの態様では、化合物1の非晶質のHCl塩は本明細書に記載された医薬組成物の中で使用される。
【0130】
(用語)
「バイオアベイラビリティ」は、研究されている動物またはヒトの体循環へと送達される、投与されたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の重量の割合を指す。静脈内に投与される際の薬物の合計暴露(AUC(
0−∞))は一般に、100%生物が利用可能である(F%)と定義される。「経口バイオアベイラビリティ」は、静脈内注射と比較して、医薬組成物が経口で摂取される際に、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩が、全身循環に吸収される程度を指す。
【0131】
「血液血漿濃度」は、被検体の血液の血漿成分中のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の濃度を指す。HDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の血漿濃度は、代謝および/または他の治療薬との相互作用に関連する変動性によって被検体間で著しく変わることもあることが理解されよう。1つの態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の血液血漿濃度は、被検体によって異なる。同様に、最大血漿濃度(C
max)または最大血漿濃度(T
max)に達する時間などの値、あるいは、血漿濃度時間曲線(AUC(
0−∞))の下の総面積は、被検体によって異なる。この変動性ゆえに、1つの実施形態では、HDAC「阻害剤」(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の「治療上有効な量」を構成するのに必要な量は、被検体によって異なる。
【0132】
HDAC阻害剤の「有効な血漿濃度」は、癌の処置に有効な暴露レベルをもたらす、血漿中のHDAC阻害剤の量のことを言う。
【0133】
「薬物吸収」または「吸収」は一般的に、薬物の投与部位から障壁を横切って血管または薬物の作用部位への薬物の移動(例えば、胃腸管から門脈またはリンパ系へと移動する薬物)のプロセスのことを言う。
【0134】
「測定可能な血清中濃度」または「測定可能な血漿濃度」は、投与後に血流に吸収された血清のml、dl、またはlごとの治療薬のmg、μg、またはngで一般に測定される、血清または血漿の濃度について記載している。本明細書で用いられるように、測定可能な血漿濃度は一般にng/mlまたはμg/mlで測定される。
【0135】
「薬力学」は、作用部位での薬物の濃度に関連して観察される生物学的反応を決定する要因を指す。
【0136】
「薬物動態学」は、作用部位での薬物の適切な濃度の達成および維持を決定する要因を指す。
【0137】
(医薬組成物)
1つの実施形態では、経口医薬組成物は、活性化合物を薬学的に使用される調整物へと処理するのを促す賦形剤および助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体(つまり、非活性成分)を使用して、従来のやり方で製剤化される。適切な技術、担体および賦形剤は、例えば、そのまま引用することで本明細書に組み込まれる、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington‘s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; and Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins1999) で説明されているものを含む。
【0138】
用語「医薬組成物」は、担体、安定化剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、コーティング、および/または賦形剤のような他の不活性な化学成分と活性な剤(または成分)との混合物を指す。医薬組成物は、ヒトへの化合物の投与を促進する。1つの態様では、活性剤はHDAC阻害剤(例えば、化合物1)である。1つの態様では、活性剤は化合物1のHCl塩である。
【0139】
本明細書で使用されるような「制御放出」は、完全に即時放出ではない任意の放出プロフィールを指す。
【0140】
経口投与については、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはHCl塩などのその薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な担体または賦形剤と活性化合物を組み合わせることによって製剤化される。そのような担体により、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩は、治療される患者によって経口摂取される錠剤、散剤、丸剤、カプセルなどとして製剤化可能となる。
【0141】
医薬組成物は、活性成分として、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、および、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩を含む。
【0142】
他の実施形態では、医薬組成物は、ベンダムスチンと組み合わせて、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤、および、HDAC阻害剤または薬学的に許容可能な塩を含む。
【0143】
本明細書に記載された経口の固形剤形の製剤は、結晶形態、非晶相、半結晶形態、半非晶相、またはその混合物で存在している、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の粒子またはその薬学的に許容可能な塩を含んでいる。
【0144】
1つの態様では、本明細書に開示された医薬組成物は、経口の固形剤形の形をしている。経口の固形剤形は、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、ミニ錠剤、粒子、ビーズ、ペレットなどを含んでいる。
【0145】
本明細書に記載された医薬組成物は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩と、以下の1つ以上を含んでいる:(a)結合剤、(b)コーティング、(c)崩壊剤、(d)充填剤(希釈剤)、(e)潤滑剤、(f)流動促進剤(glidants)(流れ促進剤(flow enhancers)、(g)圧縮助剤(compression aids)、(h)着色剤、(i)甘味料、(j)保存剤、(k)懸濁化剤(suspensing)/分散剤、(l)膜形成剤/コーティング、(m)香料、(n)印刷インク、(o)ゲル化剤、(p)第2の治療上活性な剤。
【0146】
1つの態様では、本明細書に記載された医薬組成物は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩に加えて、以下の1つ以上を含んでいる:(a)ステアリン酸マグネシウム、(b)ラクトース、(c)微結晶性セルロース、(d)ケイ酸化微結晶性セルロース、(e)マンニトール、(f)デンプン(トウモロコシ)、(g)二酸化ケイ素、(h)二酸化チタン、(i)ステアリン酸、(j)デンプングリコール酸、(k)ゼラチン、(l)滑石、(m)ショ糖、(n)アスパルテーム、(o)ステアリン酸カルシウム、(p)ポビドン、(q)アルファ化デンプン、(r)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(s)OPA生成物(コーティング&インク)、(t)クロスカルメロース、(u)ヒドロキシプロピルセルロース、(v)エチルセルロース、(w)リン酸カルシウム(二塩基)、(x)クロスポビドン、(y)セラック(および、光滑剤(glaze))、(z)炭酸ナトリウム。
【0147】
薬学的に許容可能なビヒクル、担体、希釈剤、または、賦形剤、あるいはその混合物中の有効な成分またはその薬学的に許容可能な塩、および、本明細書に記載されるような1以上の放出制御型賦形剤を含む医薬組成物も本明細書で提供されている。適切に修正された放出剤形のビヒクルは、限定されないが、親水性または疎水性のマトリックス装置、水溶性の分離層コーティング、腸溶コーティング、浸透圧装置、多粒子装置、またはその組み合わせを含む。医薬組成物はさらに非放出制御型(non−release controlling)賦形剤を含んでもよい。
【0148】
活性成分、あるいは、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、またはプロドラッグの組み合わせと、従来の錠剤化プロセスを用いて錠剤のコアを形成し、その後コアをコーティングするための1つ以上の錠剤化賦形剤とを含む、膜をコーティングした剤形の医薬組成物が本明細書で提供される。錠剤のコアは、従来の顆粒化方法を用いて、例えば、湿式または乾式造粒法を用いて、顆粒の随意の粉砕、および、その後の圧縮とコーティングによって、製造することができる。造粒方法は例えば、Voigt, pages 156−69に記載されている。
【0149】
顆粒の製造に適した賦形剤は例えば、流れ調整(flow−conditioning)特性を随意に有する粉状充填剤、例えば、タルク、二酸化ケイ素、例えば、Syloid(登録商標)タイプ(Grace)、例えば、SYLOID 244 FPの合成の非晶質の無水ケイ酸、例えば、Avicel(登録商標)タイプ(FMC社)の、例えば、AVICEL PH101、102、105、RC581、または、RC591タイプの、Emcocel(登録商標)タイプ(Mendell社)、あるいは、Elcema(登録商標)タイプ(Degussa)の微結晶性セルロース;砂糖、糖アルコール、デンプン、またはデンプン誘導体、例えば、ラクトース、デキストロース、サッカロース、グルコース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、または、アミロペクチン、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、あるいは三ケイ酸マグネシウムなどの炭水化物;ゼラチン、トラガカントゴム、寒天、アルギン酸、セルロースエーテルなどの結合剤、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコールまたはエチレンオキシドホモポリマー、特におよそ2.0x10
3から1.0x10
5の重合度と、1.0x10
5から5.0x10
6の近似分子量を有しているもの、例えば、Polyox(登録商標)(Union Carbide)という名前で知られている賦形剤、ポリビニルピロリドンまたはポビドン、特に、およそ1000の平均分子量と約500から約2500までの重合度を有しているもの、および、寒天またはゼラチン;界面活性物質、例えば、アルキル硫酸塩タイプのアニオン界面活性剤、例えば、アルキルエーテル硫酸塩タイプのナトリウム、カリウム、または、マグネシウムn−硫酸ドデシル、n−硫酸テトラデシル、n−硫酸ヘキサデシル、または、n−硫酸オクタデシル、例えば、アルカンスルホン酸塩のナトリウム、カリウム、マグネシウムn−ドデシルオキシエチル硫酸塩、n−テトラデシルオキシエチル硫酸塩、n−ヘキサデシルオキシエチル硫酸塩、または、n−オクタデシルオキシエチル硫酸塩、例えば、脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステルタイプのナトリウム、カリウム、マグネシウムn−ドデカンスルホン酸塩、n−テトラデカンスルホン酸塩、n−ヘキサデカンスルホン酸塩、または、n−オクタデカンスルホン酸塩、あるいは、非イオン性界面活性剤、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、または、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリステアレートまたはソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、またはポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどの脂肪酸ポリヒドロキシアルコールエステルのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチルステアリン酸塩、ポリエチレングリコール400ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール2000ステアリン酸塩、特にPluronics(登録商標)(BWC)またはSynperonic(登録商標)(ICI)タイプのエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック重合体などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル。
【0150】
腸溶コーティング剤形の医薬組成物も本明細書でさらに提供され、医薬組成物は、活性成分またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいはプロドラッグの組み合わせ、および、腸溶コーティング剤形で使用される1つ以上の放出制御型賦形剤を含んでいる。医薬組成物はさらに非放出制御型賦形剤を含んでもよい。
【0151】
さらに、即時放出成分と少なくとも1つの遅延放出成分を有し、0.5時間から最大8時間までに別々の少なくとも2つの連続したパルスの形をした化合物を不連続的に放出することができる、剤形の医薬組成物が提供される。該医薬組成物は、活性成分と、崩壊可能な半透過性の膜に適し、膨潤可能な物質としても適している、1以上の放出制御型賦形剤および非放出制御型賦形剤との組み合わせを含んでいる。
【0152】
さらに、被検体に経口投与される剤形の医薬組成物が本明細書で提供され、該医薬組成物は、活性成分またはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、あるいはプロドラッグ、および、アルカリで部分的に中和されるとともに陽イオン交換容量と胃液耐性の外側層を有する胃液耐性のポリマー層状材料を含む中間反応層で囲まれた、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤または担体の組み合わせを含んでいる。
【0153】
経口投与用の遅延放出性カプセルとして腸溶コーティングされた顆粒の形で活性成分を含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0154】
本明細書で提供されるような医薬組成物は、単位剤形あるいは複数回投与剤形で提供されてもよい。本明細書で用いられるような単位剤形は、ヒトおよび動物の被検体への投与に適しており、当該技術分野で知られているように個別にパッケージ化された、物理的に分離している単位のことをいう。それぞれの単位用量は、必要とされる医薬担体あるいは賦形剤と関連して、所望の治療効果をもたらすのに十分なあらかじめ決められた活性成分の量を含んでいる。単位剤形の例は個々にパッケージ化された錠剤およびカプセルを含んでいる。単位剤形は分割してまたはその倍数単位で投与されてもよい。多数回投与剤形は、分離した単位剤形で投与される、単一の容器で梱包された複数の同じ単位剤形である。多数回投与剤形の例は、錠剤またはカプセルの瓶を含んでいる。
【0155】
医薬剤形は様々な方法で製剤化でき、即時放出、持続放出、および遅延放出を含む様々な薬物放出プロフィールを提供することができる。場合によっては、一定の時間が過ぎるまで、投与後、薬物の放出を回避すること(すなわち、徐放)、あらかじめ決められた時間を超えて実質的に連続した放出を提供すること(すなわち、持続放出)、または、薬物投与後すぐに放出すること(すなわち、即時放出)が望ましいこともある。
【0156】
HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩を含む経口製剤は、以下の形で提示される:錠剤、カプセル、丸剤、ペレット、ビーズ、顆粒、混合散剤。カプセル剤は、薬学的に許容可能なデンプン(例えばトウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカデンプン)、砂糖、人工甘味料、結晶性セルロースおよび微結晶性セルロースなどの粉末セルロース、小麦粉、ゼラチン、ゴムなどの不活性な充填剤および/または希釈剤と活性化合物との混合物を含んでいる。錠剤製剤は、従来の圧縮、湿式造粒法または乾式造粒法によって作られてもよく、薬学的に許容可能な希釈剤、結合剤、潤滑剤、崩壊剤、表面修飾剤(界面活性剤を含む)、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、ケイ酸塩複合体、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、蔗糖、ソルビトール、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、滑石、乾燥したデンプン、および粉糖を含む懸濁化剤または安定化剤を利用する。いくつかの実施形態では、表面修飾剤は、非イオン性および陰イオン性の表面修飾剤を含んでいる。例えば、表面修飾剤は、限定されないが、ポロクサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、硫酸ドデシルナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、および、トリエタノールアミンを含む。
【0157】
1つの態様では、本明細書に記載された経口製剤は、活性化合物の吸収を変化させるために、標準遅延または時間放出製剤を用いる。
【0158】
結合剤または造粒機(granulator)は、圧縮後に錠剤を確実に無傷なままにしておくために、錠剤に粘着性を与える。適切な結合剤または造粒機は、限定されないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびあらかじめゼラチン化したデンプン(例えば、STARCH1500)のようなデンプン、ゼラチン、蔗糖、グルコース、デキストロース、糖蜜およびラクトースなどの砂糖、アカシア、アルギン酸、アルギン酸塩、トチャカの抽出物、パンワールガム(Panwar gum)、ガティガム(ghatti gum)、イサゴールハスク(isabgol husks)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム(Veegum)、ラーチアラボガラクタン(larch arabogalactan)、粉状のトラガント、およびグアーガムなどの天然ガムと合成ゴム、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース、AVICEL(登録商標)−PH−101、AVICEL(登録商標)−PH−103、AVICEL(登録商標) RC−581、AVICEL(登録商標)−PH−105(FMC社、ペンシルベニア州マーカスフック)などの微結晶性セルロース、および、これらの混合物を含む。適切な充填剤は、限定されないが、滑石、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrates)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、あらかじめゼラチン化したデンプン、および、その混合物を含む。結合剤のレベルは、本明細書で提供される医薬組成物において約50重量%−約99重量%である。
【0159】
適切な希釈剤は、限定されないが、リン酸ジカルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、蔗糖、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥したデンプン、および、粉糖を含む。
【0160】
適切な崩壊剤は、限定されないが、寒天、ベントナイト、メチルセルロースとカルボキシメチルセルロースのようなセルロース、木材製品、天然の海綿、陽イオン交換樹脂、アルギン酸、グアーガムおよびVeegum HVなどのガム、柑橘類の髄質、クロスカルメロースなどの架橋セルロース、クロスポビドンなどの架橋重合体、架橋デンプン、炭酸カルシウム、ナトリウムデンプングリコレートなどの微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、および、あらかじめゼラチン化されたデンプンなどのデンプン、粘土、アライン(aligns)、および、その混合物を含む。本明細書で提供される医薬組成物中の崩壊剤の量は、製剤の種類によって変わり、当業者には容易に識別可能である。1つの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、崩壊剤の約0.5重量%から約15重量%まで、または、約1重量%から約5重量%までを含んでいる。
【0161】
適切な潤滑剤は、限定されないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、グリセリンベヘネート(grycerol behenate)およびポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、滑石、落花生油、綿実油、ひまわり油、胡麻油、オリーブオイル、トウモロコシ油およびダイズ油を含む、水素化した植物油、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、エチルラウレート(laureate)、寒天、デンプン、ヒカゲノカズラ、AEROSILR 200(メリーランド州ボルチモアのW.R.Grace社)およびCAB−O−SILR(マサチューセッツ州ボストンのCabot社)などのシリカまたはシリカゲル、および、これらの混合物を含む。1つの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、潤滑剤の約0.1重量%から約5重量%までを含む。
【0162】
適切な流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、CAB−O−SILR(マサチューセッツ州ボストンのCabot社)およびアスベストを含まない滑石を含んでいる。着色料は、アルミナ水和物に懸濁した、承認および保証された、水溶性のFD&C染料および不水溶性のFD&C染料、ならびに、レーキ顔料(color lakes)、および、これらの混合物のいずれかを含んでいる。レーキ顔料は、重金属の水和酸化物に対する水溶性染料の吸収による組み合わせである。
【0163】
多くの担体と賦形剤は、同じ製剤内でも複数の機能に役立つこともあることが理解されよう。
【0164】
さらなる実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、圧縮された錠剤、粉薬錠剤、急速に溶解する錠剤、多重圧縮錠剤(multiple compressed tablets)、または、腸溶コーティング錠剤、砂糖でコーティングされた錠剤、または、膜でコーティングされた錠剤として提供されてもよい。
【0165】
腸溶コーティングは、胃酸の作用に耐えるが、腸で溶けるまたは分解するコーティングである。
【0166】
1つの態様において、本明細書で開示された経口の固形剤形は、腸溶コーティングを含んでいる。腸溶コーティングは、以下の1つ以上を含んでいる:酢酸フタル酸セルロース、アクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、セルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(ヒプロメロースアセテートサクシネート)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体、メタクリル酸共重合体、酢酸セルロース(ならびに、そのサクシネートおよびフタレートバージョン)、スチロールマレイン酸共重合体、ポリメタクリル酸/アクリル酸共重合体、ヒドロキシエチルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートテトラヒドロフタレート、アクリル樹脂、セラック。
【0167】
腸溶コーティングは、小腸に達するまで溶けないように、錠剤、丸剤、カプセル、ペレット、ビーズ、顆粒、粒子などに塗布されたコーティングである。
【0168】
糖衣錠は糖衣で囲まれた圧縮錠剤であり、これは、好ましくない味または匂いを隠す際に、および、酸化から錠剤を保護する際に有益なこともある。
【0169】
膜でコーティングされた錠剤は、水溶性材料の薄層または膜で覆われた圧縮錠剤である。膜のコーティングは、限定されないが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール4000、および、酢酸フタル酸セルロースを含む。膜のコーティングは糖衣と同じ一般的な特性を与える。多重圧縮錠剤は、層状の錠剤、圧縮によってコーティングされた錠剤、または、乾燥によってコーティングされた錠剤を含む、2以上の圧縮サイクルによって作られた圧縮錠剤である。
【0170】
錠剤の剤形は、結合剤、崩壊剤、制御放出ポリマー、潤滑剤、希釈剤、および/または着色剤を含む、本明細書に記載された1以上の担体または賦形剤と組み合わせて、あるいは、単独で、粉末形態、結晶形態、または、顆粒形態で、活性成分から調製されてもよい。香味料および甘味料は、咀嚼可能な錠剤と錠とロゼンジの形成に特に役立つ。
【0171】
本明細書で提供される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、または、アルギン酸カルシウムから作ることができる、ソフトカプセルまたはハードカプセルとして提供されてもよい。乾式充填カプセル(DFC)としても知られているハードゼラチンカプセルは2つの部分からなり、1つがもう一方の上を滑り、したがって、活性成分を完全に囲んでいる。ソフト弾性カプセル(SEC)は、グリセリン、ソルビトール、または同様のポリオールの追加によって可塑化される、ゼラチンシェルなどの軟らかで球状のシェルである。カプセルは、活性成分の溶解を修正または保持するために、当業者に知られているようにコーティングされてもよい。
【0172】
着色料および香味料は、上記の剤形のすべてで使用されてもよい。
【0173】
本明細書で提供される医薬組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、および、プログラムされた放出の形態を含む、即時放出剤形または修正された放出剤形として製剤化されてもよい。
【0174】
本明細書で提供される医薬組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、および、プログラムされた放出の形態を含む、即時放出剤形または修正された放出剤形の形態である。
【0175】
(制御放出)
1つの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、制御放出剤形の形態である。本明細書で使用されるように、用語「制御放出」は、経口で投与されると、活性成分の放出の速度または場所が即時放出剤形とは異なる剤形を指す。制御放出剤形は、遅延放出、徐放、長期放出、持続放出、パルス放出、修飾放出、標的放出、および、プログラム放出の形態を含む。制御放出剤形の医薬組成物は、限定されないが、マトリックス制御放出装置、浸透圧制御放出装置、多粒子制御放出装置、イオン交換樹脂、腸溶コーティング、多層コーティング、およびこれらの組み合わせを含む、当業者に知られている様々な修正された放出装置および方法を使用して調製される。活性成分の放出速度は粒径を変えることによっても修正することができる。
【0176】
HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩を含む、本明細書に記載された製剤を含む薬学的な固形の経口剤形は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩の制御放出を提供するために製剤化される。
【0177】
即時放出型組成物とは対照的に、制御放出型組成物は、あらかじめ決められたプロフィールに従って、長時間にわたってヒトに薬剤を送達することを可能にする。そのような放出の速度は、長時間にわたって治療上有効なレベルの薬剤を提供し、それによって、より長い時間の薬理反応を与えることができる。このような長時間の薬理反応は、対応する短時間作用型の即時放出性調製物では達成されない多くの固有の利点を提供する。1つの態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩の制御放出型組成物は、長時間にわたって、治療上有効なレベルのHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を提供し、それによって、より長い時間の薬理反応を与える。
【0178】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された固形の剤形は、腸溶コーティングした遅延放出型の経口剤形として、すなわち、胃腸管の小腸内での放出に影響を与えるために腸溶コーティングを利用する、本明細書に記載されたような医薬組成物の経口剤形として、製剤化することができる。腸溶コーティング剤形は、それ自体がコーティングされたまたはコーティングされていない活性成分および/または他の組成成分の顆粒、粉末、ペレット、ビーズ、または、粒子を含有する、圧縮された、または、成型された、または、押し出された錠剤/型(コーティングされたまたはコーティングされていない)である。1つの態様では、腸溶コーティングした経口剤形は、それ自体がコーティングされたまたはコーティングされていない固形の担体または組成物のペレット、ビーズ、または、顆粒を含有する、カプセル(コーティングされたまたはコーティングされていない)である。
【0179】
本明細書で使用されるような用語「遅延放出」は、遅延放出の変更形態がなかったなら達成されていたであろう場所よりもさらに遠位の胃管中の一般に予測可能な位置での放出を達成することができるような送達を指している。いくつかの実施形態では、遅延放出のための方法はコーティングである。全コーティングが約5よりも下のpHで胃腸液に溶けず、約5以上のpHでは溶けるように、いかなるコーティングも十分な厚さまで塗られなければならない。胃腸管下部への送達を達成するために本発明を実施する際に、pH依存性の溶解度プロフィールを示すどんな陰イオンポリマーも腸溶コーティングとして使用することができることが予想される。いくつかの実施形態では、本発明で使用されるポリマーは陰イオンのカルボン酸重合体である。他の実施形態では、ポリマーおよびその互換性をもつ混合物、および、それらの特性のうちのいくつかは、限定されないが、含んでいる。
【0180】
セラックは精製されたラックとも呼ばれる。このコーティングはpH>7の培地で溶解する。
【0181】
アクリルポリマー。アクリルポリマーの能力(主として生体液中での溶解度)は、置換の程度と種類によって変動し得る。適切なアクリルポリマーの例は、メタクリル酸共重合体およびアンモニアメタクリル酸塩共重合体を含んでいる。オイドラギット(登録商標)(Eudragit)シリーズのE、L、R、S、RL、RSおよびNE(Rohm Pharma)が、有機溶媒、水分散液、または、乾燥粉末中で可溶化するものとして利用可能である。オイドラギットシリーズのRL、NE、およびRSは、胃腸管で不溶性であるが、透過性であり、主に結腸を標的とする際に使用される。オイドラギットシリーズEは胃で溶ける。オイドラギットシリーズL、L−30D、およびSは、胃では不溶性であり、腸で溶ける。
【0182】
セルロース誘導体。適切なセルロース誘導体の例は、エチルセルロースであり、無水フタル酸とセルロースの部分的な酢酸塩エステルとの反応混合物である。その能力は、置換の程度と種類によって変動し得る。酢酸フタル酸セルロース(CAP)はpH>6で溶ける。Aquateric(登録商標)(FMC)は、水性ベースの系で、粒子が<1μmの噴霧乾燥させたCAP偽ラテックス(psuedolatex)である。Aquateric中の他の成分は、プルロニック(pluronics)ツイーン、および、アセチル化したモノグリセリドを含み得る。他の適切なセルロース誘導体は、酢酸セルローストリメリテート(Eastman)、メチルセルロース(Pharmacoat、Methocel)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースサクシネート(HPMCS)、および、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(例えば、AQOAT(Shin Etsu))を含む。その能力は、置換の程度と種類によって変動し得る。例えば、HP−50、HP−55、HP−55S、HP−55FのグレードなどのHPMCPが適切である。その能力は、置換の程度と種類によって変動し得る。例えば、適切なグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートは、限定されないが、pH5で溶けるAS−LG(LF)、pH 5.5で溶けるAS−MG(MF)、および、それよりも高いpHで溶けるAS−HG(HF)を含んでいる。これらのポリマーは、水分散液のための顆粒または細粉として提供される。
【0183】
ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)。PVAPはpH>5で溶け、水蒸気と胃液に対してはさほど浸透性がない。
【0184】
いくつかの実施形態では、コーティングは、可塑剤、および、場合によっては、当該技術分野で周知の着色剤、滑石、および/または、ステアリン酸マグネシウムなどの他のコーティング賦形剤を含むことができ、通常はこれらを含んでいる。適切な可塑剤は、クエン酸トリエチル(Citroflex 2)、トリアセチン(グリセリルトリアセタート)、クエン酸アセチルトリエチル(Citroflec A2)、カーボワックス(商標)400(ポリエチレングリコール400)、フタル酸ジエチル、クエン酸トリブチル、アセチル化されたモノグリセリド、グリセロール、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、および、フタル酸ジブチルを含んでいる。特に、陰イオン性カルボン酸アクリルポリマーは一般に、可塑剤、とりわけ、フタル酸ジブチル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル、およびトリアセチンの10−25重量%を含んでいる。スプレーまたはパンによるコーティングなどの従来のコーティング技術が、コーティングを施すために使用される。コーティングの厚さは、経口剤系が腸管中の所望の局所送達部位に到達するまで、元の状態を確実に保つのに十分なものでなければならない。
【0185】
着色剤、脱粘着剤(detackifiers)、界面活性剤、消泡剤、潤滑剤(例えば、カルナバワックス(carnuba wax)またはPEG)は、コーティング材料を可溶性にするまたは分散させるために、および、コーティングとコーティングされた製品を改善するために、可塑剤に加えてコーティングに加えられてもよい。
【0186】
特に適切なメタクリル共重合体は、ドイツのRohm Pharmaによって製造されている、オイドラギット L(登録商標)、とりわけ、L−30D(登録商標)およびオイドラギット 100−55(登録商標)である。オイドラギット L−30D(登録商標)では、遊離カルボキシル基対エステル基の比率はほぼ1:1である。さらに、共重合体は、5.5よりも下のpH、一般に1.5−5.5のpH(つまり、上部胃腸管の体液に存在するpH)を有する胃腸液において不溶性であるが、5.5よりも上のpH(すなわち、小腸の中に存在するpH値)では容易に溶けるか一部溶けることが知られている。
【0187】
いくつかの実施形態では、材料は、セラック、アクリルポリマー、セルロース誘導体、ポリビニルアセテートフタレート、および、その混合物を含んでいる。他の実施形態では、材料は、オイドラギット(登録商標)シリーズE、L、RL、RS、NE、L、L300、S、100−55、酢酸フタル酸セルロース、Aquateric、セルロースアセテートトリメリテート、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、およびCottericを含んでいる。
【0188】
いくつかのタイプの薬物について、薬物を「パルス」で放出することが望ましく、単一剤形は、薬物の初回投与量を与え、その後、放出しない休止期間が続き、その後、薬物の第2の投与量が放出され、1以上のさらなる放出しない休止期間と薬物放出「パルス」がそのあとに続く。代替的に、剤形の投与後の一定期間、いかなる薬物も放出されず、その後に1回分の薬物が放出され、1以上のさらなる薬物を放出しない休止期間と薬物放出「パルス」がそのあとに続く。
【0189】
パルスによる薬物送達は、例えば、半減期が短く一日に2、3回投与される活性剤と、あらかじめ全身で広範囲に代謝される活性剤と、および、最適な薬力学的効果を有するために特定の血漿レベルを維持しなければならない活性剤を用いて有用である。
【0190】
パルス剤形は、制御された遅延時間の後のあらかじめ決められた時点で、または、特定の部位で、1以上の即時放出パルスを提供することができる。HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩を含む本明細書に記載された製剤を含むパルス剤形は、記載されてきた様々なパルス製剤を用いて投与される。例えば、そのような製剤は、限定されないが、米国特許番号5,011,692号、5,017,381号、5,229,135号、5,840,329号、4,871,549号、5,260,068号、5,260,069号、5,508,040号、5,567,441号、および、5,837,284号に記載されたものを含む。1つの実施形態では、制御放出剤形は、各々が本明細書に記載された製剤を包含する少なくとも2つの粒子群(つまり、多粒子)を含むパルス放出型の固形の経口剤形である。第1の粒子群は、哺乳動物による摂取後、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩の実質的に即時投与量を提供する。第1の粒子群は、コーティングされないか、あるいは、コーティングおよび/またはシーラントを含み得る。第2の粒子群はコーティングされた粒子を含んでおり、1以上の結合剤と混合して、前記製剤中で、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)または薬学的に許容可能な塩の総投与量の約2重量%−約75重量%、好ましくは約2.5重量%−約70重量%、および、さらに好ましくは、約40重量%−約70重量%を含む。コーティングは、第2の投与量を放出する前、消化後に約2−7時間の遅延を与えるのに十分な量の薬学的に許容可能な成分を含んでいる。適切なコーティングは、ほんの一例として、単独の、あるいは、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース)と混合した、アクリル樹脂(例えばオイドラギット(登録商標) EPO、オイドラギット(登録商標)L30D−55、オイドラギット(登録商標)FS 30D、オイドラギット(登録商標)L100−55、オイドラギット(登録商標)L100、オイドラギット(登録商標)S100、オイドラギット(登録商標)RD100、オイドラギット(登録商標)E100、オイドラギット(登録商標)L12.5、オイドラギット(登録商標)S12.5、および、オイドラギット(登録商標)NE30D(オイドラギット(登録商標)NE 40D))などのpH感受性コーティング(腸溶コーティング)、あるいは、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)またはその薬学的に許容可能な塩を含む製剤の異なる放出を提供するために様々な厚さを有する非腸溶コーティング、といった1以上の異なるように分解可能なコーティングを含む。
【0191】
(多粒子制御放出装置)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、多粒子制御放出装置である。多粒子制御放出装置は、直径約10μm〜約3mm、約50μm〜約2.5mm、又は約100μm〜約1mmの範囲の多数の粒子、顆粒、又はペレットを含む。このような多粒子は、湿式造粒、乾式造粒、押出/球形化、ローラー圧縮、溶融凝固化、種芯のスプレーコーティング、及びそれらの組み合わせによって作られる。例えば、Multiparticulate Oral Drug Delivery;Marcel Dekker:1994;及びPharmaceutical Pelletization Technology;Marcel Dekker:1989を参照。
【0192】
本明細書に記載されるような他の賦形剤又は担体は、多粒子を処理し、形成することを補助するように、医薬組成物とブレンドされる。結果として生じる粒子はそれ自体、多粒子装置を構成してもよいし、または様々な膜形成材料、例えば腸溶性ポリマー、水膨潤、及び水溶性ポリマーなどによってコーティングされてもよい。多粒子は、さらに、カプセル又は錠剤として処理することができる。
【0193】
腸内保護薬剤吸収系(IPDAS)は、錠剤の形態に圧縮される高密度の制御放出ビーズからなる多粒子錠剤技術である。ビーズは、押出球状化などの技術によって製造することができ、制御放出は、結果として生じるビーズをコーティングするための異なるポリマー系を使用して達成することができる。あるいは、薬剤はまた、ノンパレイユ種子などの不活性担体上でコーティングされて、即時放出多粒子を製造することができる。制御放出は、これらの即時放出多粒子上にポリマー膜を形成することによって達成することができる。IPDAS錠剤が摂取されると、それは急速に崩壊し、薬物を含有するビーズを胃の中で分散させる。ビーズは、続いて十二指腸に入り、摂食状態とは無関係に、制御的かつ段階的な態様で胃腸管に沿って進む。多粒子からの活性成分の放出は、ポリマー膜及び/又は押出/球形化多粒子において形成されるポリマー/活性成分のマイクロマトリックスのいずれかを介する分散のプロセスを介して生じる。IPDASの腸内保護は、胃腸管の全体にわたる薬物の広い分散を保証する製剤の多粒子の性質のおかげである。
【0194】
スフェロイド経口薬吸収系(SODAS)は、カスタマイズされた剤形の製造を可能にし、個々の薬物候補のニーズに直接答える多粒子技術である。それは、少なくとも12時間維持する作用の迅速な開始を生じさせるために、薬物の即時放出及びそれに続く持続放出を含む多くの特別にあつられた薬物放出プロフィールを提供することができる。あるいは、薬物放出を数時間遅らせる反対のシナリオを達成することができる。
【0195】
プログラム可能な経口薬物吸収系(PRODAS)は、硬質ゼラチンカプセルに含まれる多くのミニ錠剤として提示される。故に、それは、カプセル内において錠剤化技術の利点を組み合わせる。多くの異なるミニ錠剤を組み込むことが可能であり、各ミニ錠剤は、個別に製剤化され、胃腸管内の異なる部位で薬物を放出するようにプログラムされる。これらの組み合わせは、即時放出、遅延放出、及び/又は制御放出のミニ錠剤を含むことができる。高い薬物装填ができるように異なる大きさのミニ錠剤を組み込むことも可能である。その大きさは、通常直径1.5〜4mmの範囲である。
【0196】
当業者に既知の制御放出系の多くの他のタイプは、本明細書に記載される製剤とともに用いられるのに適している。このような送達系の例として、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ無水物、ポリカプロラクトンなどのポリマーベース系;コレステロール、コレステロールエステル及び脂肪酸などのステロールを含む脂質又はモノ−、ジ−及びトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である多孔質マトリックスの非ポリマーベース系;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベース系;従来の結合剤を用いるワックスコーティング、生体内分解性剤形、圧縮錠剤などが挙げられる。例えば、Liberman et al.,Pharmaceutical Dosage Forms,2 Ed.,Vol.1,pp.209−214(1990);Singh et al.,Encyclopedia of harmaceutical Technology,2
nd Ed.,pp.751−753(2002);米国特許第4327725号、第4624848号、第4968509号、第5461140号、第5456923号、第5516527号、第5622721号、第5686105号、第5700410号、第5977175号、第6465014号、及び第6932983号を参照。
【0197】
(マトリックス制御放出装置)
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、当業者に既知のマトリックス制御放出装置を使用して作製される修飾放出剤形である(Takadara et al、「Encyclopedia of Controlled Drug Delivery,」 Vol.2,Mathiowitz ed.,Wiley,1999参照)。
【0198】
一実施形態では、本明細書において修飾放出剤形で提供される医薬組成物は、浸食性マトリックス装置を使用して製剤化される。当該修飾放出剤形は、水膨潤性、浸食性、又は可溶性ポリマーである。水膨潤性、浸食性、又は可溶性ポリマーは、多糖類及びタンパク質などの合成ポリマー、天然に存在するポリマー、及びその誘導体を含む。
【0199】
浸食性マトリックスの形成に有用な材料としては、キチン、キトサン、デキストラン、及びプルラン;ガム寒天、アラビアゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、トラガカントゴム、カラゲナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、及びスクレログルカン;デキストリンやマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水コロイド;レシチンなどのリン脂質;アルギン酸塩;アルギン酸プロピレングリコール;ゼラチン;コラーゲン;及びエチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、セルロースプロピオネート(CP)、セルロースブチレート(CB)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートトリメリテート(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)などのセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセロール脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸又はメタクリル酸(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America,Inc.,Piscataway,NJ)の共重合体;ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリラクチド;L−グルタミン酸とエチル−L−グルタメートの共重合体;分解性乳酸−グリコール酸共重合体;ポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸;及びホモポリマー及びブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、(2−ジメチルアミノエチル)メタクリレート、及び(トリメチルアミノエチル)メタクリレートクロライドの共重合体などの他のアクリル酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、非浸食マトリックス装置で製剤化される。活性成分は、不活性マトリックス中に溶解又は分散しており、一旦投与されると、主に不活性マトリックスを介する分散によって放出される。非浸食性マトリックス装置としての使用に適した材料としは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、イオノマーポリエチレンテレフタラート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体を有する塩化ビニル共重合体、、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネート共重合体などの不溶性プラスチック、及び;エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルなどの親水性ポリマー、及び;カルナバワックス、微結晶性ワックス、及びトリグリセリドなどの脂肪族化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
マトリックス制御放出系において、例えば、用いられるポリマー型、ポリマー粘度、ポリマー及び/又は活性成分の粒径、活性成分とポリマーとの比率、および組成物中の他の賦形剤又は担体により、所望の放出動態を制御することができる。
【0202】
一態様では、修飾放出剤形は、直接圧縮、乾燥又は湿式造粒、それに続く圧縮、溶融造粒、それに続く圧縮を含む、当業者に既知の方法により調製される。
【0203】
いくつかの実施形態では、マトリックス制御放出系は、腸溶性コーティングを含み、その結果、薬物が胃の中で放出されない。
【0204】
(浸透性制御放出装置)
いくつかの実施形態では、本明細書において修飾放出剤形で提供される医薬組成物は、浸透性制御放出装置を使用して作製される。当該浸透性制御放出装置は、1チャンバシステム、2チャンバシステム、非対称膜技術(AMT)、及び押出加工コア系(ECS)を含む。一般に、このような装置は、少なくとも2つの成分:(a)活性成分を含有するコアと;(b)当該コアを封入する、少なくとも1つの送達ポートを有する半透膜と、を有する。半透膜は、使用される水性環境からコアへの水の流入を制御することにより、押し出しによって送達ポートを介して薬物放出を生じさせる。
【0205】
活性成分に加えて、浸透性装置のコアは、随意に浸透圧剤を含む。当該浸透圧剤は、使用される環境から装置のコア内に水を搬送するための駆動力を生成する。「オスモポリマー」や「ヒドロゲル」とも呼ばれる浸透圧剤の水膨潤性親水性ポリマーの1つのクラスとしては、親水性ビニル及びアクリルポリマー、アルギン酸カルシウムなどの多糖類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル)酸、ポリ(メタクリル)酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVP共重合体、メチルメタクリレート及び酢酸ビニルなど疎水性モノマーを有するPVA/PVP共重合体、大きなPEOブロックを含有する親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、及びデンプングリコール酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
浸透圧剤の他のクラスは、オスモゲンである。オスモゲンは、周辺のコーティングのバリアにわたって浸透圧勾配に影響を与えるように水を吸収することができる。好適なオスモゲンは、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムなどの無機塩類;デキストロース、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びキシリトールなどの糖;アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p−トルエンスルホン酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸;尿素;及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0207】
溶解速度が異なる浸透圧剤は、活性成分がどれだけ迅速に剤形から最初に送達されるかに影響を与えるように用いることができる。例えば、Mannogeme EZ(SPI Pharma、Lewes、DE)などの非晶質糖は、所望の治療効果を迅速に生成するために最初の2、3時間の間、より速い送達を提供し、長期間にわたって所望のレベルの治療効果又は予防効果を維持するために残りの量の段階的かつ継続的な放出を提供するように用いることができる。この場合、活性成分は、代謝され排泄された量の活性成分を置き換えるような速度で放出される。
【0208】
コアはまた、剤形の性能を高めるために、又は安定もしくは処理を促進するために、本明細書に記載されるような多種多様な他の賦形剤及び担体を含むことができる。
【0209】
半透過性膜の形成に有用な材料は、生理学的に関連するpHで水透過性及び水不溶性を有するか、又は架橋などの化学的変化によって水不溶性となる様々なグレードのアクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロース誘導体を含む。コーティングの形成に有用な好適なポリマーの例としては、可塑化、非可塑化、及び強化酢酸セルロース(CA)、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、CAプロピオン酸、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAエチルカルバメート、CAP、CAメチルカルバメート、CAコハク酸、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、CAジメチルアミノアセテート、CAエチルカーボネート、CAクロロアセテート、CAエチルオキサレート、CAメチルスルホネート、CAブチルスルホネート、CA p−トルエンスルホン酸、寒天アセテート、アミローストリアセテート、βグルカンアセテート、βグルカントリアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、ローカストビーンガムのトリアセテート、ヒドロキシル化エチレン−ビニルアセテート、EC、PEG、PPG、PEG/PPG共重合体、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリ(アクリル)酸及びエステル及びポリ−(メタクリル)酸及びエステル及びそれらの共重合体、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリビニルエステル及びエーテル、天然ワックス、合成ワックスが挙げられる。
【0210】
半透過膜は、疎水性微多孔膜であってもよい。ここでは、孔は、米国特許第5798119号に開示されるように、実質的にガスで充填され、水性媒体によって湿潤されていないが、水蒸気に対して透過性である。このような疎水性であるが水蒸気透過性の膜は、典型的には、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステル及びエーテル、天然ワックス、及び合成ワックスなどの疎水性ポリマーからなる。
【0211】
半透膜の送達ポートは、機械的又はレーザードリルによって、コーティングの後に形成してもよい。送達ポートはまた、水溶性材料のプラグの浸食によって、又はコアのくぼみにわたる膜のより薄い部分の破裂によって、in situで形成してもよい。さらに、送達ポートは、米国特許第5612059号及び第5698220号に開示されるタイプの非対称膜コーティングの場合のように、コーティングプロセス中に形成してもよい。
【0212】
放出される活性成分の総量及び放出速度は、半透膜の厚さ及び多孔性、コアの組成、及び送達ポートの数、大きさ、及び位置により実質的に調整することができる。
【0213】
浸透性制御放出剤形の医薬組成物は、製剤の性能又は処理を促進するために、本明細書に記載されるような追加の従来の賦形剤または担体をさらに含んでもよい。
【0214】
浸透性制御放出剤形は、当業者に既知の従来の方法及び技術に従って調製することができる(上記のRemington:The Science and Practice of Pharmacy; Santus and Baker, J. Controlled Release 1995, 35, 1−21; Verma et al., Drug Development and Industrial Pharmacy 2000, 26, 695−708;Verma et al., J.Controlled Release 2002,79,7−27参照)。
【0215】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、AMT制御放出剤形として製剤化される。当該AMT制御放出剤形は、活性成分及び他の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含むコアをコーティングする非対称浸透膜を含む。米国特許第5612059号及び国際特許出願公報第2000/17918号を参照。AMT制御放出剤形は、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒法、及びディップコーティング法を含む、当業者に既知の従来の方法及び技術に従って調製することができる。
【0216】
特定の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、ESC制御放出剤形として製剤化される。当該ESC制御放出剤形は、活性成分、ヒドロキシルエチルセルロース、及び他の薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を含むコアをコーティングする浸透膜を含む。
【0217】
(多層錠剤)
一態様では、制御放出製剤は、多層錠剤の形態である。多層錠剤は、不活性コアを含み、当該不活性コア上に、層状の薬物(および任意の賦形剤)が塗布され、続いて腸溶コーティングがされる。薬物の第2の層は、第1の腸溶コーティング上に塗布され、続いて薬物の第2の層上に第2の腸溶コーティングがされる。腸溶コーティングは、各層からの薬物の放出が少なくとも3〜6時間、時間的に離れていることを確実にする必要がある。
【0218】
(即時放出)
いくつかの実施形態では、本明細書において即時放出剤形で提供される医薬組成物は、USP XXII,1990(The United States Pharmacopeia.)に記載されるように、治療上有効な成分又はそれらの組み合わせの少なくとも75%を放出し、及び/又は錠剤コアに含まれる特定の治療薬又はそれらの組み合わせの即時放出性錠剤の崩壊又は溶解要件を満たすことができる。即時放出医薬組成物は、カプセル、錠剤、経口液剤、粉末、ビーズ、ペレット、粒子などを含む
【0219】
(非経口投与)
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、局所又は全身投与のために、注射、輸液、又は移植によって非経口的に投与することができる。本明細書中で使用されるように、非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液包内、及び皮下の投与が挙げられる。
【0220】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、任意の剤形で製剤化することができる。当該任意の剤形は、溶液、懸濁剤、乳剤、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノシステム、及び注射前の液状の溶液又は懸濁液に適した固体剤形を含む非経口投与に適している。このような剤形は、医薬科学分野の当業者に既知の従来の方法に従って調製することができる(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,前出参照)。
【0221】
非経口投与を意図した医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能なされる担体及び賦形剤を含んでもよい。当該担体及び賦形剤は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤又は防腐剤、安定化剤、溶解促進剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁及び分散剤、湿潤又は乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート剤、凍結保護物質、溶解保護剤、増粘剤、pH調整剤、及び不活性ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0222】
適切な水性ビヒクルとしては、水、生理食塩水、生食水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、等張性デキストロース注射、滅菌水注射、デキストロース及び乳酸リンゲル注射が挙げられるが、これらに限定されない。非水性ビヒクルとしては、植物起源の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、ヤシ油の中鎖トリグリセリド、及びヤシ種子油が挙げられるが、これらに限定されない。水混和性ビヒクルとしては、エタノール、1,3−ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0223】
適切な抗菌剤又は防腐剤としては、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びp−ヒドロキシ安息香酸プロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、メチル−及びプロピル−パラベン、及びソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な等張剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、及びデキストロースが挙げられるが、これらに限定されない。適切な緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。適切な抗酸化剤としては、亜硫酸水素塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む本明細書に記載されるものである。適切な局所麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられるが、これに限定されない。適切な懸濁及び分散剤としては、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む本明細書に記載されるものである。適切な乳化剤としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80、及びオレイン酸トリエタノールアミンを含む本明細書に記載されるものが挙げられる。適切な金属イオン封鎖又はキレート剤としては、EDTAが挙げられるが、これに限定されない。適切なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び乳酸が挙げられるが、これらに限定されない。適切な錯化剤としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル7−β−シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)CyDex,Lenexa,KS)を含むシクロデキストリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、単回又は複数回用量投与用に製剤化してもよい。単回投与製剤は、アンプル、バイアル、又は注射器で梱包される。複数回投与の非経口製剤は、静菌又は静真菌濃度で抗菌剤を含む必要がある。当該分野で既知でありかつ実施されているように、すべての非経口製剤は、無菌でなければならない。
【0225】
一実施形態では、医薬組成物は、すぐ使用できる無菌溶液として提供される。別の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルを用いて再構成される、凍結乾燥粉末及び皮下注射用錠剤を含む滅菌乾燥可溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、すぐ使用できる無菌懸濁液として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルを用いて再構成される滅菌乾燥不溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、すぐ使用できる滅菌乳剤として提供される。
【0226】
(薬物動態分析)
一実施形態では、任意の標準的な薬物動態プロトコルは、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)を含む本明細書に記載される製剤の投与後のヒトにおける血漿濃度プロフィールを決定し、それによってその製剤が、本明細書に記載される薬物動態的及び薬力学的基準を満たしているかどうかを確立するように使用される。例えば、無作為化単回投与クロスオーバー試験は、健常成人ヒト被験体の群を用いて行われる。特定の目的には、より小さな群で十分であるが、被験体の数は、統計分析のばらつきを適切に制御するのに十分であるべきであり、典型的には約10以上である。各被験体は、時間ゼロにおいて単回投与(例えば、約10mg〜約300mgの化合物1を含む用量)の投与を受ける。血液試料は、投与前(例えば15分前)及び投与後数回の間隔で各被験体から収集される。特定の例では、いくつかの試料を、最初の1時間以内に採取し、その後、より少ない頻度で採取する。例示的に、血液試料は、0(投与前)、投与後0.25、0.5、1、2、3、4、6、8、12及び16時間後に収集される。同一の被験体が第2の試験製剤の研究のために使用される場合には、少なくとも10日の期間が、第2の製剤の投与までに経過する必要がある。血漿は、遠心分離によって血液試料から分離され、当該分離された血漿は、検証済みの高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(例えば、LC−MS/MS、LC/APCI−MS/MS)処置、例えば、Ramu et al,Journal oF Chromatography B,751(2001)49−59などの処置によって、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)について分析される。
【0227】
所望の薬物動態学的プロフィール及び薬力学的効果を与える任意の製剤は、本方法による投与に適している。
【0228】
(投薬及び治療レジメンの方法)
一実施形態では、本明細書に記載されるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を含む組成物は、癌の症状のうちの少なくとも1つを部分的に阻止するのに十分な量で、癌を有するヒトに投与される。この使用に有効な量は、癌の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態、体重、及び薬物への応答、及び/又は処置する医師の判断に依存する。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような化合物、組成物の投与、又は治療は、慢性投与を含む。特定の実施形態では、慢性投与は、患者の状態が改善せず及び/又は医師の裁量に基づく特定の場合に利用される。特定の実施形態では、慢性投与は、癌の症状を改善し、それ以外の場合には癌の症状を制御するために、例えば他の患者の一生にわたることを含む長期間の投与を含む。
【0230】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物、組成物の投与、又は治療は、連続的に与えられる。
【0231】
いくつかの態様では、投与される薬物の投与は、一定期間(すなわち、「休薬期間」)、一時的に中断される。休薬期間の長さは、4日と9日との間で変化する。
【0232】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)を含む医薬組成物は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の連続した連日投与、それに続くHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の連日の非投与を含む周期で癌を有するヒトに投与される。HDAC阻害剤(例えば、化合物1)のこのような投薬スケジュールにより、グレード4の血小板減少症の発生率を制限しながら、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)に対する薬力学的応答を達成することを可能にする。グレード4の血小板減少症は、典型的には、ヒトの血小板の数が1mm
2あたり25000未満の場合を含む。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)を含む医薬組成物は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の5、6、7、8、または9日連続した連日投与、それに続くHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の5、6、7、8、または9日連続した非投与を含む周期で癌を有するヒトに投与される。
【0233】
ヒトがHDAC阻害剤(例えば、化合物1)以外の第2の薬物で併用療法を受けている場合、第2の薬物を用いた処置は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)が投与されない日には中止されない。一態様では、ヒトがHDAC阻害剤(例えば、化合物1)以外の第2の薬物で併用療法を受けている場合、第2の薬物を用いた処置は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)が投与されない日には中止される。
【0234】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の即時放出製剤は、1日2回、ヒトに投与される。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の即時放出製剤は、1日2回、ヒトに投与され、2回の即時放出用量は、約3時間から約6時間離れて投与される。
【0235】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の制御放出製剤は、1日1回、ヒトに投与される。一態様では、1日1回、ヒトに投与されるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の制御放出製剤は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の2つの即時放出製剤の毎日の投与から得られるであろう同量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を提供する。一態様では、1日1回、ヒトに投与されるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の制御放出製剤は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の2つの即時放出製剤の毎日の投与から得られるであろう同量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を提供し、ここでは、2回の即時放出用量は、約3時間から約6時間離れて投与される。
【0236】
(日量)
特定の実施形態では、ほんの一例として、投与されるベンダムスチンなどのアルキル化剤と組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の薬学的に許容可能な塩の量は、非限定的な例として、利用される製剤のタイプ、癌の種類とその重症度、ヒトのID(例えば体重、年齢)、及び/又は投与経路を含む要因に依存して変化する。様々な実施形態では、所望の用量は、単回用量で、または例えば1日に2、3、4以上のサブ用量として、同時(又は短期間にわたって)又は適切な間隔で投与される分割用量で都合よく提示される。
【0237】
一実施形態では、HDAC阻害剤は、いくつかの実施形態では、静脈内注射を介して投与されるベンダムスチンと組み合わせて、本明細書に示されているように投与される。一実施形態では、HDAC阻害剤は、21日の処置周期の1日目及び2日目に投与されるベンダムスチンと組み合わせて、本明細書に示されているように投与される。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、正確な投与用量の投与に適した単位剤形である。単位剤形において、製剤は、適切な量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩を含有する単位用量に分割される。一実施形態では、単位剤形は、個別の量の製剤を含有する梱包の形態である。非限定的な例は、バイアル又はアンプルで梱包された錠剤又はカプセル、及び粉末である。一実施形態では、水性懸濁液組成物は、単回用量の再密閉不可能な容器で梱包される。あるいは、複数用量の再密閉可能な容器が使用される。その場合には、それが組成物に保存剤を含むことが典型的である。
【0239】
ヒトに投与される化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩の1日の量は、約10mg/mm
2〜約200mg/mm
2の範囲である。一態様では、ヒトに投与される化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩の1日の量は、約30mg/mm
2〜約90mg/mm
2の範囲である。一態様では、ヒトに投与される化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩の1日の量は、約20mg/mm
2、約30mg/mm
2、約40mg/mm
2、約50mg/mm
2、約60mg/mm
2、約70mg/mm
2、約80mg/mm
2、または約90mg/mm
2を含む。
【0240】
一態様では、化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩は、約20mg/mm
2、約30mg/mm
2、約40mg/mm
2、約50mg/mm
2、約60mg/mm
2、約70mg/mm
2、約80mg/mm
2、または約90mg/mm
2の化合物1を含む即時放出製剤として投与される。一態様では、化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩は、約30mg/mm
2の化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩を含む即時放出製剤として投与される。
【0241】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、2つの即時放出製剤として投与され、ここでは、第2の即時放出製剤は、最初の用量が投与された後、約4時間〜約6時間後に投与される。各即時放出製剤は、本明細書に記載されるように、同量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩を含む。2つの即時放出製剤は、副作用を最小限にしながら治療的及び薬力学的効果のために必要とされるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の持続的有効血漿レベルを提供する。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の持続的有効血漿レベルは、約6時間〜約8時間維持される。
【0242】
一態様では、化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩は、約30mg/mm
2、約40mg/mm
2、約50mg/mm
2、約60mg/mm
2、約70mg/mm
2、約80mg/mm
2、または約90mg/mm
2の化合物1を含む制御放出製剤として投与される。一態様では、化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩は、約60mg/mm
2の化合物1、又はその薬学的に許容可能な塩を含む制御放出製剤として投与される。
【0243】
一態様では、即時放出製剤は、約10mg〜約300mgの化合物1を含む。一態様では、即時放出製剤は、約20mg〜約200mgの化合物1を含む。
【0244】
一態様では、制御放出製剤は、約20mg〜約600mgの化合物1を含む。一態様では、即時放出製剤は、約40mg〜約400mgの化合物1を含む。
【0245】
(癌)
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける癌の処置に使用される。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける血液癌の処置に使用される。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける固形腫瘍の処置に使用される。
【0246】
血液癌は、白血病又はリンパ腫などの血液又は骨髄の癌を含む。
【0247】
リンパ腫は、免疫系の細胞において始まる癌である。リンパ腫の2つの基本的なカテゴリがある。一種類は、リード−スタンバーグ細胞と呼ばれる種類の細胞の存在によって特徴付けられるホジキンリンパ腫である。もう一方のカテゴリは、免疫系細胞の大規模かつ多様な癌の群を含む非ホジキンリンパ腫である。非ホジキンリンパ腫は、遅発性(成長の遅い)経過及び侵攻性(成長が速い)経過を有する癌にさらに分けることができる。
【0248】
白血病は、骨髄などの血液形成組織において始まり、多数の血液細胞を産生させ、当該血液細胞を血流に進入させる癌である。
【0249】
一態様では、癌は、固形腫瘍、又はリンパ腫もしくは白血病である。一態様では、癌は、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、芽腫瘍、又は芽細胞腫である。
【0250】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、以下から選択される癌の処置に使用される:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;肺:気管支癌(扁平上皮細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞(気管支)癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫;胃腸:食道(扁平上皮細胞癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(腺管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、ビポーマ)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫);尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(精上皮腫、奇形腫、胎生期癌、奇形癌、絨毛癌、肉腫、間質細胞癌、線維腫、線維腺腫、腺腫様腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝癌(肝細胞癌)、胆管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;骨:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫(osteochronfroma(骨軟骨外骨腫))、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液様線維腫(chondromyxofibroma)、類骨骨腫及び巨大細胞腫瘍;神経系:頭蓋骨(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽腫、神経膠腫、上衣腫、胚細胞腫[松果体腫]、多形性膠芽腫、乏突起、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄(神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍子宮頸部異形成)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、類内膜腫瘍、膠芽腫、明細胞癌、未分類の癌]、顆粒膜−莢膜細胞腫、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫[胎児性横紋筋肉腫]、卵管(癌腫);血液学的:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫]、皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ、異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;副腎:神経芽細胞腫;胆嚢癌。
【0251】
一態様では、癌は、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、肝臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、胃癌、胃腸管間質腫瘍、膵癌、胚細胞腫瘍、肥満細胞腫瘍、神経芽細胞腫、肥満細胞症、精巣癌、グリア芽腫、星状細胞腫、リンパ腫、メラノーマ、骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、骨髄異形成症候群、及び慢性骨髄性白血病(CML)である。
【0252】
一態様では、癌はリンパ腫である。一態様では、リンパ腫は、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫である。
【0253】
一態様では、癌は、T細胞リンパ腫又は白血病である。
【0254】
一態様では、T−細胞リンパ腫は、末梢T細胞リンパ腫である。別の態様では、T細胞リンパ腫又は白血病は、T細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫である。さらに別の態様では、T細胞リンパ腫は、皮膚T細胞リンパ腫である。別の態様では、T細胞リンパ腫は、成人T細胞リンパ腫である。一態様では、T−細胞リンパ腫は、末梢T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、NK/T細胞リンパ腫、又は成人T細胞白血病/リンパ腫である。
【0255】
一実施形態では、癌は、肉腫である。肉腫は、筋肉、脂肪、線維組織、血管、又は身体の他の支持組織で始まる癌である。肉腫は、以下のうちのいずれか1つを含む:歯槽軟部肉腫、血管肉腫、性皮膚、デスモイド腫瘍、線維形成性小円形細胞腫瘍、骨外軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、線維肉腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、悪性線維性組織球腫、神経線維肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、横紋筋肉腫、滑膜肉腫、アスキン腫瘍、ユーイング腫瘍、悪性血管内皮腫、悪性神経鞘腫、骨肉腫、軟骨肉腫。
【0256】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける軟組織肉腫の処置に使用される。
【0257】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける成症候群(MDS)の処置に使用される。
【0258】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける慢性骨髄性白血病(CML)の処置に使用される。
【0259】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける非ホジキンリンパ腫の処置に使用される。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおけるホジキン病の処置に使用される。
【0260】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける多発性骨髄腫の処置に使用される。
【0261】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、慢性リンパ球性白血病の処置に使用される。一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、急性リンパ球性白血病の処置に使用される。
【0262】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける固形腫瘍の処置に使用される。
【0263】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、又はその薬学的に許容可能な塩は、及びいくつかの実施形態では、ベンダムスチンと組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)、又はその薬学的に許容可能な塩は、ヒトにおける肉腫の処置に使用される。
【0264】
(さらなる併用療法)
一実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法はまた、処置されている癌に対する特定の有用性について選択される他の治療試薬と組み合わせて使用される。一般に、本明細書に記載される組成物、及び併用療法が用いられる実施形態における他の剤は、同じ医薬組成物で投与する必要はなく、異なる物理的及び化学的特性を有するので、異なる経路で投与される。一実施形態では、最初の投与は、確立されたプロトコルに従って行われ、その後、観察された効果、投与量、投与様式及び投与回数に基づいて、さらに変更される。
【0265】
特定の実施形態では、使用される化合物の特定の選択は、主治医の診断、患者の状態についての主治医の判断、及び適切な処置プロトコルに依存する。様々な実施形態では、癌の性質、患者の状態、及び使用される化合物の実際の選択に依存して、化合物は、共に(例えば、同時に、本質的に同時に、又は同じ処置プロトコル内で)又は連続的に投与される。特定の実施形態では、処置プロトコル中の各治療剤の投与順序及び投与の反復回数の決定は、処置している疾患及び患者の状態の評価に基づく。
【0266】
一実施形態では、癌を処置するための投薬レジメンは、種々の要因に応じて変更されることが理解される。これらの要因としては、ヒトが罹患している癌の種類、並びにヒトの年齢、体重、性別、食事、及び医学的状態が挙げられる。従って、一実施形態では、実際に用いられる投薬レジメンは大きく変化するので、当該投薬レジメンは、本明細書に記載される投薬レジメンから逸脱する。特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)と、さらなる薬剤との組み合わせによる癌の処置により、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)及び/又は第2の剤の有効量を減らすことができる。
【0267】
本明細書に記載される製剤は、個々の患者の臨床状態、投与方法、投薬スケジュール、及び医師に既知の他の要因を考慮して、良好な医療行為に従って投与及び投薬される。
【0268】
企図する医薬組成物は、例えば、1日1回、1日2回、1日3回等の投与を可能にする治療的有効量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を提供する。一態様では、医薬組成物は、1日1回の投薬を可能にする有効量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を提供する。
【0269】
特定の例では、別の治療剤と組み合わせてHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を投与することが適切である。
【0270】
特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の治療的有効性は、アジュバント(すなわち、アジュバントはそれ自体で、最小限の治療上の利益を有するが、別の治療剤と組み合わせて、患者に対する全体的な治療上の利益を高める)の投与によって高まる。いくつかの実施形態では、患者が享受する利益は、治療上の利益を有する別の治療剤(治療レジメンも含む)とともにHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を投与することによって増加する。特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の投与を伴う癌の処置において、癌に対する他の治療剤又は療法を患者に提供することによっても、治療上の利益の増加をもたらす。様々な実施形態では、第2の剤と組み合わせたHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の個人への投与は、当該個人に、例えば相加的又は相乗的利益を提供する。
【0271】
薬物が併用治療で使用される場合、治療上有効な量は変化する。併用治療レジメンにおいて使用される場合の薬物及び他の剤の治療上有効な量の決定は、任意の態様で達成される。例えば、メトロノーム投与の使用、すなわち毒性副作用を最小限に抑えるために、より頻繁により少ない投与量を提供することを利用することができる。特定の例では、併用療法により、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)及び第2の剤のいずれかの薬剤を単独投与する場合に得られるであろうよりも少ない治療上有効な量を、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)及び第2の剤のいずれか又は両方が有することができる。
【0272】
併用治療レジメンは、非限定的な例として、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の投与が第2の剤を用いた処置前、処置中、又処置後に開始され、第2の剤を用いた処置中の任意の時間まで、又は第2の剤を用いた処置の終了後まで継続される治療レジメンを含む。それはまた、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)と、組み合わせて使用される第2の剤とが同時に投与されるか、又は異なる時間で及び/又は処置期間中に減少又は増加する間隔で投与される処置を含む。併用治療は、患者の臨床管理を支援するために様々な時間において開始および停止する定期的な処置をさらに含む。
【0273】
いずれの場合も、複数の治療剤(そのうちの1つはHDAC阻害剤(例えば、化合物1))は、例えば同時を含む任意の順序で投与される。投与が同時である場合、複数の治療剤は、様々な実施形態では、単一かつ統一された形態で、又は複数の形態(例えば、単一丸薬として、又は2つの別々の丸剤として)で提供される。様々な実施形態では、治療剤のうちの1つは、複数回投与で与えられるか、又は両方が複数回投与として与えられる。複数の薬剤の投与が同時でない特定の実施形態では、複数の薬剤の投与間のタイミングは、例えば、0週間より長く4週間より短い範囲を含む任意の許容可能な範囲である。いくつかの実施形態では、併用の方法、組成物及び製剤は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)と、第2の剤と、第3の剤とを含む。さらなる実施形態では、追加の薬剤もまた利用される。
【0274】
特定の実施形態では、最初の投与は、例えば、丸剤、カプセル剤、錠剤、溶液、懸濁液等、又はそれらの組み合わせなど経口投与を介する。特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、癌の発症が検出又は疑われた後、実施可能になったらすぐに投与され、かつ、癌の処置のために必要な期間投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載される薬剤、製剤又は組成物は、非限定的な例として、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、又は1ヶ月より長い期間を含む、癌の処置のために必要な期間投与される。
【0275】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、以下の中から選択される少なくとも1つの追加の治療剤と組み合わせてヒトに投与される:DNA損傷剤;トポイソメラーゼI又はII阻害剤;アルキル化剤;PARP阻害剤;プロテアソーム阻害剤;RNA/DNA代謝拮抗剤;抗有糸分裂剤;免疫調節剤;抗血管新生剤;アロマターゼ阻害剤;ホルモン調節剤;アポトーシス誘発剤;キナーゼ阻害剤;モノクローナル抗体;アバレリックス;ABT−888;アルデスロイキン;アルデスロイキン;アレムツズマブ;アリトレチノイン;アロプリノール;アルトレタミン;アミホスチンアナストロゾール;三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;アザシチジン;AZD−2281;ベンダムスチン;ペリフォシン、レナリドマイド(lenalinomide);クロロキン;ベバシズマブ;ベキサロテン;ブレオマイシン;ボルテゾミブ;BSI−201;ブスルファン;ブスルファン;カルステロン;カペシタビン;カルボプラチン;カーフィルゾミブ(carfilozib);カルムスチン;カルムスチン;セレコキシブ;セツキシマブ;クロラムブシル;シスプラチン;クラドリビン;クロファラビン;シクロホスファミド;シタラビン;シタラビンリポソーム;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダルベポエチンアルファ;ダサチニブ;ダウノルビシンリポソーム;ダウノルビシン;デシタビン;デニロイキン;デクスラゾキサン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシンリポソーム;プロピオン酸ドロモスタノロン;エピルビシン;エポエチンアルファ;エルロチニブ;エストラムスチン;リン酸エトポシド;エトポシド;エキセメスタン;フィルグラスチム;フロクスウリジン;フルダラビン;フルオロウラシル;フルベストラント;ゲフィチニブ;ゲムシタビン;ゲムツズマブオゾガマイシン;酢酸ゴセレリン;ヒストレリン酢酸;ヒドロキシ;イブリツモマブチウキセタン;イダルビシン;イホスファミド;メシル酸イマチニブ;インターフェロンアルファ2a;インターフェロンアルファ−2b;イリノテカン;レナリドミド;レトロゾール;ロイコボリン;酢酸ロイプロリド;レバミゾール;ロムスチン;メクロレタミン;酢酸メゲストロール;メルファラン;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトキサレン;マイトマイシンC;マイトマイシンC;ミトタン;ミトキサントロン;ナンドロロンフェニルプロピオン酸エステル(nandrolone phenpropionate);ネララビン;NPI−0052;ノフェツモマブ(nofetumomab);オプレルベキン;オキサリプラチン;パクリタキセル;パクリタキセルタンパク質結合粒子;パリフェルミン;パミドロネート;パニツムマブ;パガデマーゼ;ペガスパルガーゼ;ペグフィルグラスチム;ペメトレキセドニナトリウム;ペントスタチン;ピポブロマン;プリカマイシン;ミトラマイシン;ナトリウムポルフィマー;プロカルバジン;キナクリン;RAD001;ラスブリカーゼ;リツキシマブ;サルグラモスチム;サルグラモスチム;ソラフェニブ;ストレプトゾシン;スニチニブリンゴ酸塩;タモキシフェン;テモゾロミド;テニポシド;テストラクトン;サリドマイド;チオグアニン;チオテパ;トポテカン;トレミフェン;トシツモマブ;トシツモマブ/I−131トシツモマブ;トラスツズマブ;トレチノイン;ウラシルマスタード;バルルビシン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ボリノスタット;ゾレドロネート;及びゾレドロン酸。特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、ベンダムスチン及びリツキシマブと組み合わせてヒトに投与される。特定の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、ベンダムスチン及びリツキシマブと組み合わせてヒトに投与される。
【0276】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリンインタラクタ、DNA相互作用剤、DNAアルキル化剤、及び/又は白金錯体と組み合わせてヒトに投与される。
【0277】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、オキサリプラチン、チロシンキナーゼ阻害剤、イリノテカン(CPT−11)、アザシチジン、フルダラビン(Fludaribine)、又はベンダムスチンと組み合わせでヒトに投与される。
【0278】
チロシンキナーゼ阻害剤としては、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、セマキサニブ、セジラニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、レスタウルチニブ、バタラニブ、及びソラチニブ(soratinib)が挙げられるが、これらに限定されない、。
【0279】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、DNA損傷抗癌剤及び/又は放射線療法と組み合わせてヒトに投与される。
【0280】
DNA損傷抗癌剤及び/又は放射線療法としては、電離放射線、放射線類似薬剤、単官能性アルキル化剤(例えば、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、テモゾロミド)、二官能性アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、マイトマイシンC、シスプラチン)代謝拮抗剤(例えば5−フルオロウラシル、チオプリン、葉酸類似体)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン)、複製阻害剤(例えば、アフィジコリン、ヒドロキシ尿素)、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、血管新生阻害剤、細胞増殖及びシグナル伝達経路の阻害剤、アポトーシス誘導剤、細胞周期チェックポイントを妨害する薬剤、ビホスホネート、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0281】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、生来多剤耐性(MDR)の阻害剤と組み合わせてヒトに投与され、特に、輸送体タンパク質の高レベル発現に関連付けられたMDRの阻害剤と組み合わせてヒトに投与される。このようなMDR阻害剤としては、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(バルスポダール)などのp−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤が挙げられる。
【0282】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、悪心又は嘔吐を処置するために制吐剤と組み合わせてヒトに投与される。嘔吐は、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)の単独の使用から生じ得る、又は放射線療法との併用によるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)の使用から生じ得る急性、遅延、後期、及び予測性嘔吐を含む。制吐剤としては、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト(オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、及びザチセトロンなど)、GABA
B受容体アゴニスト(バクロフェンなど)、コルチコステロイド類(米国特許第2789118号、第2990401号、第3048581号、第3126375号、第3929768号、第3996359号、第3928326号及び第3749712号に開示されるデキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、又はその他のものなど)、ドーパミン拮抗薬(ドンペリドン、ドロペリドール、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、メトクロプラミドなど)、抗ヒスタミン薬(H1ヒスタミン受容体拮抗薬、例えばシクリジン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、メクリジン、プロメタジン、ヒドロキシジンなど)、大麻類(大麻、マリノール、ドロナビノールなど)、及びその他(トリメトベンズアミド、生姜、エメトロール(emetrol)、プロポフォールなど)が挙げられる。
【0283】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドの中から選択される抗嘔吐剤と組み合わせてヒトに投与される。
【0284】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、貧血の処置に有用な薬剤と組み合わせてヒトに投与される。このような貧血治療剤は、例えば、連続的赤血球形成受容体活性化剤(エポエチン−αなど)である。
【0285】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、好中球減少症の処置に有用な薬剤と組み合わせてヒトに投与される。好中球減少症の処置に有用な薬剤の例としては、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)などの好中球の産生及び機能を調節する造血成長因子が挙げられるが、これに限定されない。G−CSFの例としては、フィルグラスチムが挙げられる。
【0286】
いくつかの実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、少なくとも1つのCYP酵素の阻害剤と組み合わせてヒトに投与される。HDAC阻害剤が1つ以上のCYP酵素によって代謝される状況においては、CYP阻害剤との同時投与により、HDAC阻害剤のインビボ代謝を減少させ、HDAC阻害剤の薬物動態学的特性を改善する。
【0287】
他の併用療法は、国際特許出願公報第08/082856号及び第07/109178号に開示されており、その両方が本明細書にその全体が参照により援用される。
【0288】
(放射線療法)
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、放射線療法と組み合わせて投与される。放射線療法(放射線治療とも呼ばれる)は、電離放射線を用いる癌及び他の疾患の処置である。電離放射線は、遺伝物質に損傷を与え、これらの細胞が成長し続けることを不可能にすることによって、処置されている領域(「標的組織」)における細胞を傷つけたり、破壊するエネルギーを堆積させたりする。放射線は、癌細胞及び正常細胞の両方を損傷するが、後者は、より良好に自己を修復し、適切に機能することができる。放射線療法は、皮膚、舌、喉頭、脳、乳房、前立腺、結腸、子宮及び/又は頚部の癌などの局所的な固形腫瘍を処置するように使用することができる。それはまた、白血病及びリンパ腫(それぞれ造血細胞及びリンパ系の癌)を処置するように使用することができる。
【0289】
癌細胞に放射線を送達するための技術は、腫瘍又は体腔内に放射性インプラントを直接配置することである。これは、内部放射線療法(近接照射療法、組織内照射、及び腔内照射は、内部放射線療法の種類である。)と呼ばれる。内部放射線療法を使用すると、放射線量が小さな領域に集中し、患者は、数日間入院する。内部放射線療法は、舌、子宮、前立腺、結腸、子宮頸部の癌に頻繁に使用される。
【0290】
用語「放射線療法」又は「電離放射線」は、α、β及びγ放射線及び紫外線を含むが、これらに限定されない全ての形態の放射線を含む。同時又は連続的な化学療法を用いるまたは用いない放射線療法は、頭頸部、乳房、皮膚、肛門性器の癌、及びケロイド、デスモイド腫瘍、血管腫、動静脈奇形並びに組織球Xなどの特定の非悪性疾患に対する効果的な方法である。
【0291】
放射線が誘発する正常組織線維症(radiation−induced normal tissue fibrosis)又は化学療法が誘発する組織壊死(chemotherapy−induced tissue necrosis)などの少なくとも1つの他の治療的処置に起因する副作用を減少させるために、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)を使用する方法が提供され、本明細書において提供される方法はまた、放射線療法及び他の抗癌剤を用いて腫瘍細胞増殖を相乗的に阻害する。
【0292】
(RAD51)
DNA損傷は、染色体不安定、発癌、細胞死、細胞の深刻な機能障害を引き起こす。DNA修復系は、生細胞の生存にとって非常に重要である。二本鎖DNA切断の修復に関与する2つの主要なDNA修復機構は、相同組換え(HR)及び非相同の末端結合(NHEJ)である。真核RAD51遺伝子は、大腸菌RecAのオルソログであり、遺伝子産物RAD51のタンパク質は、相同組換えにおいて中心的な役割を果たす。
【0293】
抗癌剤などの多くの治療的処置は、細胞にDNA損傷を与える生産する能力を介して治療効果を発揮する。癌細胞などの細胞が、活性なDNA修復機構を有する場合、そのような処置の治療効果は、損なわれることがあり、所望の治療効果を達成するためには高用量が必要とされることがある。
【0294】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、癌を有するヒトにおける細胞DNA修復活性を低下させるように使用される。
【0295】
一態様では、併用療法において細胞DNA修復活性を低下させるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を使用することによって癌を処置する方法が提示される。HDAC阻害剤(例えば、化合物1)がRAD51又はBRCA1を伴うDNA修復メカニズムを妨害する併用療法の方法が記載される。
【0296】
一態様では、DNAの非相同末端結合における欠損に関連付けられた癌を処置するための方法は、(a)DNAの非相同末端結合における欠損に関連付けられた癌を有するヒトに、治療上有効な量のHDAC阻害剤(例えば、化合物1)を投与する工程と;(b)当該ヒトに、細胞DNAを損傷することのできる処置を施す工程と、を含む。
【0297】
DNAの非相同末端結合における欠損は、Ku70、Ku80、Ku86、Ku、PRKDC、LIG4、XRCC4、DCLRE1C、及びXLFからなる群から選択される遺伝子における欠陥を含む。一態様では、癌は、バーキットリンパ腫、慢性骨髄性白血病、及びB細胞リンパ腫から選択される。一態様では、癌は、本明細書に記載される。
【0298】
一態様では、HDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、ヒトにおけるテロメラーゼ非依存性テロメア維持(alternative lengthening of telomere ATL)陽性癌の処置に使用される。
【0299】
RAD51の活性を阻害することを含む追加的な併用療法、処置戦略など(例えば、HDAC阻害剤(例えば、化合物1))は、米国特許公開第20080153877号及び国際特許出願公報第08/082856号(その両方が参照により本明細書に援用される)に開示される。
【0300】
(キット/製品)
本明細書に記載の使用される治療方法における使用に関して、キット及び製品もまた、本明細書に記載される。このようなキットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器を受容するように区画化された担体、パッケージ又は容器を含む。容器の各々は、本明細書に記載される方法において使用される別個の要素のうちの1つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験チューブを含む。一実施形態では、容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0301】
本明細書中において提供される製品は、梱包材を含む。医薬品を梱包する際に使用される梱包材は、例えば、米国特許第5323907号、第5052558号及び第5033252号を含む。医薬梱包材の例としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、ポンプ、袋、容器、ボトル、及び選択された製剤と、意図する投与及び処置の様式とに適した任意の梱包材が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において提供される化合物及び組成物の幅広い製剤が企図される。
【0302】
このようなキットは、随意に、同定記述もしくはラベル、又は本明細書に記載される方法におけるその使用に関する指示を含む。
【0303】
一実施形態では、ラベルは、容器上にあるか、又は容器に関連付けられる。一実施形態では、ラベルを形成する文字(letter)、数字やその他の記号(character)が容器自体に付着され、成形され、又はエッチングされる場合には、ラベルは容器上にある。ラベルが例えば梱包挿入物として容器も保持する入れ物又は担体内に存在する場合には、ラベルは容器に関連付けられている。一実施形態では、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されることを示すように使用される。ラベルはまた、本明細書に記載される方法におけるように、内容物の使用のための指示を示す。
【0304】
特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書において提供される化合物を含有する1つ以上の単位剤形を含有するパック又はディスペンサ装置で与えられる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属又はプラスチックホイルを含有する。一実施形態では、パック又はディスペンサ装置は、投与のための指示書が添付される。一実施形態では、パック又はディスペンサにはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府当局により定められた形態の容器に関連付けられた通知書を伴う。当該通知書は、ヒト又は動物への投与のための薬物の形態に対する当該政府当局の承認を反映している。このような通知書は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によってされた承認された標示、又は承認された製品挿入物である。
【0305】
(実施例)
実施例は、例示目的で提供されるに過ぎず、本明細書において提供される特許請求の範囲を限定しない。
【0306】
(化合物1(HCl)の合成)
米国特許第7276612号の実施例7において概説するように化合物1(HCl)を調製する。米国特許第7276612号の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
(実施例1:化合物1のIV溶液)
【0307】
ヒトにおける最初の臨床試験のための静脈内(IV)溶液として化合物1を製剤化した。IV溶液は、等張食塩水で希釈した後の、注入投与を意図した水溶液製剤である。各単回使用バイアルは、等張食塩水における化合物1の5mg/mL(0.5%)溶液25mL、及び50mM乳酸緩衝液(pH4.0〜4.5)を含有する。臨床製剤中の全ての賦形剤は、公定賦形剤であり、一般に非経口製剤において使用される。当該製剤の定量的組成を表1に示す。推奨される貯蔵条件は、2℃〜8℃である。
【0309】
(実施例2.即時放出カプセル)
微結晶性セルロース、ラクトース及びステアリン酸マグネシウムと、化合物1のHCl塩とを混合し、次いで、当該混合物をゼラチンカプセルに添加することによって即時放出カプセルを製剤化する(表2参照)。カプセルを2つの強度で製造する。20mgの用量強度は、大きさ4のスウェーデンオレンジ色の硬質ゼラチンカプセル内に化合物1の20mgのHCl塩を含む。100mgの用量強度は、大きさ2の暗緑色の硬質ゼラチンカプセル内に化合物1の100mgのHCl塩を含む。当該カプセルを、30ccのHDPEボトルで梱包し、誘導シールで密封し、子供用に安全にできたネジ蓋で蓋をする。20mgの用量強度は、ボトルあたり50カプセルで梱包する。100mgの用量強度は、ボトルあたり30カプセルで梱包する。制御された室温20〜25℃(68〜77°F)でボトルを保存する。
【0310】
【表2】
(実施例3:持続放出性の多粒子パルス製剤)
【0311】
80gの塩化ナトリウム及び24gのポリビニルピロリドンを、1.2kgの水に溶解し、400gの粉砕した化合物1(HCl)をその中に懸濁させる。
【0312】
流動床コーターでは、400gのデンプン/糖の種(30/50メッシュ)を、当該種が所望の薬効で均一にコーティングされるまで、温かい空気中に懸濁させ、化合物1(HCl)懸濁液で噴霧コーティングする。
【0313】
イソプロピルアルコール中のステアリン酸マグネシウムを、乾燥したポリマー2とステアリン酸マグネシウム1との割合で、Eudragit NE30D(Rohm Pharma of Weiterstadt製、ドイツ)と混合する。十分な量のポリマー懸濁液を活性コア上に噴霧することで、特定の膜コーティングの厚さが得られ、ペレットの集団について特定の遅延時間及び放出速度が達成される。最終のコーティングしたペレットを、50℃で2時間乾燥させ、水分を完全にかつ確実に除去し、コア内容物を安定化させる。
【0314】
異なる遅延時間及び放出速度を有するように、異なるコーティングの厚さを使用して少なくとも1つ以上のバッチで手順を繰り返す。この実施例では、2つの集団を調製し、一方はコーティングによる10%の重量増加を有し、他方は30%の重量増加を有する。所定の割合で2つの集団を一緒に混合し、当該混合物をカプセルに充填することによって、単位用量を調製する。
【0315】
ヒトへの単位用量の経口投与後、ペレットの第1の集団は、約2〜3時間の初期遅延時間が経過するまで、化合物1(HCl)を放出し始めない。ペレットの第2の集団は、約6〜7時間の初期遅延時間が経過するまで、化合物1(HCl)を放出し始めない。ペレットのそれぞれの集団の平均放出時間(薬物の半分が放出された時間)は、少なくとも3〜4時間、互いに離れていなければならない。
【0316】
流動床コーターは、当技術分野において周知であるが、当技術分野で周知の他のコーティング装置及び方法を用いてもよい。
【0317】
(実施例4:持続放出性の代替の多粒子パルス製剤)
活性コアを、実施例3のように調製する。ステアリン酸マグネシウム及びトリアセチン可塑剤を、1:0.6:2の乾燥重量比でEudragit RS 30D懸濁液と混合する。ポリマー懸濁液を、実施例3のようにコア上にコーティングし、複数の集団を調製する。各集団は、特定のコーティングの厚さを有し、使用される水性環境において、薬物の特定の遅延時間及び放出速度を提供する。
【0318】
ペレットの異なる集団を混合し、当該混合物を、実施例3に記載したようにカプセルに充填するように使用する。
【0319】
(実施例5:パルス製剤−カプセルの錠剤)
化合物1(HCl塩)の投与用のパルス放出剤形を、(1)2つの個々の圧縮された錠剤であって、各々が異なる放出プロフィールを有する錠剤を製剤化し、続いて(2)当該2つ錠剤をゼラチンカプセル内に封入し、当該カプセルを閉じて密封することによって調製する。2つの錠剤の成分は、以下の通りである。
【0321】
流動床造粒機を用いて行うことができるように、個々の薬物粒子及び他のコア成分を湿式造粒することによって錠剤を調製し、又は成分の混合物を直接圧縮することによって錠剤を調製する。錠剤1は、投与後1〜2時間以内に活性剤を完全に放出する即時放出剤形である。
【0322】
即時放出性錠剤の半分をDelayed Coating No.1でコーティングして、錠剤2を得る。錠剤2は、投与後約3−5時間、化合物1(HCl)の放出を遅延させる。即時放出性錠剤の半分をDelayed Coating No.2でコーティングして、錠剤3を得る。錠剤3は、投与後約4−9時間、化合物1(HCl)の放出を遅延させる。コーティングは、スプレーコーティング等などの従来のコーティング技術を用いて行う。
【0325】
患者へのカプセルの経口投与は、結果として2つのパルスを有する放出プロフィールをもたらはずである。化合物1(HCl)の初期放出は、投与後、約3〜5時間で生じ、第2の錠剤からの化合物1(HCl)の放出は、投与後、約7〜9時間で生ずる。
(実施例6:パルス製剤−カプセル又は錠剤のビーズ)
【0326】
薬物含有ビーズが錠剤の代わりに使用される以外は、実施例5の方法を繰り返す。ラクトースなどの不活性支持体材料を薬物でコーティングすることによって即時放出ビーズを調製する。約3〜5時間の薬剤を放出しない期間を提供するのに十分な量の腸溶コーティング材で即時放出ビーズをコーティングする。約7〜9時間の薬剤を放出しない期間を提供するのに十分な、より多くの量の腸溶コーティング材で即時放出ビーズをコーティングすることによってビーズの第2の画分を調製する。コーティングしたビーズの2つの群を、実施例5のように封入し、又は緩衝剤の存在下で単一のパルス放出性錠剤に圧縮する。
【0327】
(実施例7:持続放出性錠剤)
先ず持続放出性賦形剤を調製することによって化合物1(HCl)の持続放出性錠剤を調製する。必要量のキサンタンガム、ローカストビーンガム、薬学的に許容可能な疎水性ポリマー及び不活性希釈剤を2分間、高速ミキサー/造粒機内でドライブレンドすることによって持続放出性賦形剤を調製する。チョッパー/羽根車を動かしている間、水を加え、混合物をさらに2分間造粒した。次いで、顆粒を、4〜7%の乾燥重量損失(「LOD」)に達するまで流動床乾燥機内で乾燥させた。次いで、顆粒を、20メッシュスクリーンを使用して粉砕した。持続放出性賦形剤の成分を下記の表6に記載する。
【0329】
次に、上記で詳述したように調製した持続放出性賦形剤を、10分間、V−ブレンダー内で、所望の量の化合物1(HCl)とドライブレンドする。以下の実施例のために、適量の錠剤化潤滑剤Pruv(登録商標)(ステアリルフマル酸ナトリウム、NF)を添加し、混合物をさらに5分間ブレンドする。この最終混合物を錠剤に圧縮する。各錠剤は、化合物1(HCl)の10重量%を含有する。製造された錠剤は、500mgの重さがあった(直径は3/8インチであり、硬度は2.6 Kpである)。錠剤の割合は以下の表7に記載される。
【0331】
次いで、溶出試験を錠剤に対して行う。当該溶出試験は、自動化USP溶解装置(Paddle Type II、pH7.5の緩衝剤、500mLで50rpm)において実施する。錠剤は、2時間で化合物1(HCl)の約30%を放出し、化合物1(HCl)の約98%が12時間後に放出されるような持続放出が続くはずである。
【0332】
(実施例8:コーティングした持続放出性錠剤)
必要量のキサンタンガム、ローカストビーンガム及び不活性希釈剤をドライブレンドすることによって、上記のように持続放出性賦形剤を調製した。成分の添加後に造粒にさらに2分費やした(添加後の合計4分間の造粒)。エチルセルロース水分散液を、上記の方法において水の代わりに使用した。持続放出性賦形剤の成分を下記の表8に記載する。
【0334】
キサンタンガム及びローカストビーンガムを、10分間、V−ブレンダー内でドライブレンドし、デキストロースを添加し、さらに5分間、混合物をブレンドする。次いで、エチルセルロース水性分散液を添加し、さらに5分間ブレンドする。次いで、結果として得られた顆粒を、錠剤化潤滑剤として、ステアリルフマル酸ナトリウムを有する錠剤に圧縮する。次いで、錠剤を、追加のエチルセルロース水性分散液でコーティングする。これを達成するために、エチルセルロース(Surelease(登録商標)、400g)を、水(100g)と混合して、水性懸濁液を形成する。その後、当該錠剤をKeith Mechineryコーティングパン(直径350mm;パン速度20rpm;スプレーガンのノズル0.8mm;錠剤の床温度40℃〜50℃;バッチあたりのチャージ1kg;乾燥した空気−Conair Prostyle 1250、60℃〜70℃)内でコーティングする。錠剤を、約5%の重量増加までコーティングする。錠剤は約500mgの重さがあるはずである。錠剤の割合を以下の表9に記載する。
【0336】
胃腸管を介する通路をモデル化するような方法で、自動化USP溶解装置において溶解試験を行う。コーティングした錠剤は、最初の1〜2時間中に10%より多くの化合物1(HCl)を放出してはならない、その後、化合物1(HCl)の約90%〜100%を12時間後に放出するように、安定した速度で化合物1(HCl)を放出しなければならない。
【0337】
(実施例9:インビトロ放出プロフィール)
溶解プロフィールを、37℃、100RPMでUnited States Pharmacopeia ApparatusIを使用して得る。溶解媒体を、0〜2時間、0.1N HClで始めて、時間と共に変化させる。2〜4時間、媒体は、pH6.5のリン酸緩衝液であり、4〜24時間、媒体は、pH7.5のリン酸緩衝液であった。
【0338】
代替的には、溶解プロフィールを、USP TypeIII(VanKel Bio−DisII)装置を使用して行う。
【0339】
(実施例10:インビトロ摂食/絶食溶解プロトコル)
試験製剤を、様々な溶解条件下で評価して、pH、媒体、攪拌及び装置の効果を判定する。溶解試験は、USP TypeIII(VanKel Bio−DisII)装置を使用して行う。一連の製剤の摂食状態と絶食状態との間の溶解反応速度における差異(もしあれば)を判定するために、インビトロ溶解実験を30%のピーナッツ油(「摂食(fed)」)を含有する溶液内で行って、典型的な脂肪摂取(dietary fat load)をした胃腸管をモデル化する。対照が、脂肪摂取を欠く(「絶食(fasted)」)溶液における溶解速度を決定した。pH−タイムプロトコル(酸からアルカリの範囲にわたって消化過程をモデル化する)を以下の表10に記載する。攪拌は15cpmである。試験した試料の容量は250mLである。
【0341】
錠剤上の腸溶コーティングは、絶食状態と摂食状態とで大きく異ならない溶解速度を提供する錠剤を提供することが期待される。
【0342】
(実施例11:インビトロ用量スケジューリング研究)
ヒト細胞株:Jurkat(白血病)及びHCT−116(結腸腫瘍)を使用して様々な投薬レジメンをモデル化するために、ヒト患者からの薬物動態(PK)データを使用した。HDAC阻害剤(例えば、化合物1)を用いて又は用いないでヒト細胞株を処理した。細胞を、異なるレジメン及び濃度に従って培養し、処理して、対応する投薬レジメン(持続的低用量:0.2μM;静脈(IV):2μMの3時間+0.3μMの4時間;経口BID:0.4μMの4時間×2、4時間離れて;経口連続(oral consecutive)BID:0.4μMの8時間;経口連続TID:0.266μMの12時間)をモデル化し、その後、ヒトのインビボPKを模倣するために洗い流した。
【0343】
図1及び
図2は、インビトロ用量スケジューリングの研究の結果を要約する。少なくとも8時間にわたるHDAC阻害剤(つまり、化合物1)の連続的な暴露が良好な効力をもたらしたと判定された。8時間の暴露でモデル化したIV投与と同様に、中断して投与するよりも連続して(つまり、4時間離れて)投与する場合、経口BID投与はより有効である。1日3回の経口投与(TID投与)は、1日2回の投与(BID投与)よりも良好であり、連続的な0.2μMレベルに近づいた。
【0344】
アネキシンV−FITC及びヨウ化プロピジウム(PI)で染色した後、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を使用してアポトーシスを分析することによって細胞生存率を調べた。簡潔には、処置後、1×10
6の細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、次いで、製造業者のプロトコルに従って結合緩衝液内のアネキシンV−FITC/PIで標識化した。Beckman Coulter FACS装置(instrument)(Fullerton、CA)上で、FITC及びPIの蛍光シグナルをそれぞれ518nm及び620nmで検出した。データは、Flow Joソフトウェア(Tree Star、Ashland、OR)を用いて分析した。
【0345】
(実施例12:進行癌患者における化合物1(HCl)の経口カプセル形態の安全性と耐用性の第1相試験)
これは、進行癌を有する患者に経口投与された化合物1(HCl)の安全性、薬物動態、及び薬力学の第1相用量漸増試験である。
【0346】
(目的)
この試験は、進行癌を有する患者において重篤な副作用を引き起こすことなく摂取することができる化合物1(HCl)の最高用量を決定することを目的とする。当該試験は、試験薬(化合物1(HCl))の安全性、及び処置スケジュールが患者によって許容されか否かに着目する。
【0347】
(試験デザイン)
第1相用量漸増試験では、最大7コホートは、最大耐量に達するまで、28日周期内の3つの異なる投薬スケジュール(5日間の投与に続いて2日間の非投与、5日間の投与に続いて9日間の非投与、7日間の投与に続いて7日間の非投与)に従って、30mg/m
2の用量から始まり、約4〜6時間の間隔をあけて、最大90mg/m
2の用量で化合物1(HCl)を1日2回又は3回、経口で受け取る。
【0348】
(適格性)
患者は、以下の基準を満たすべきである:少なくとも18歳以上;標準的治療後、又は標準的な治療法が存在しないために再発した組織学的に確認された測定可能な固形腫瘍、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、慢性リンパ性白血病、又は多発性骨髄腫;難なく経口カプセルを飲み込む能力;推定寿命>12週間;ECOGパフォーマンスステータス≦2;クレアチニン≦1.5×制度化された基準上限値(ULN);総ビリルビン≦1.5×制度化されたULN(記述されたギルバート症候群から上昇していない場合);AST及びALT≦2.5×制度化されたULN(肝転移の存在下では、≦5×制度化されたULN);血小板数≧100000/μL;ANC≧1500/μL;Hgb≧9.0g/dL;コルチコステロイドによる処置を受けていない、以前に処置した安定した無症候性脳転移を有する患者は被験体となりえる;自ら進んで書面によるインフォームドコンセントに署名できる。
【0349】
(結果)
即時放出カプセル製剤を用いて送達する場合、化合物1の治療効果は、投与用にスケジュールされた日において2回又は3回の連続した投与(各投与は4〜6時間離して投与)で達成された。当該投与は、毎日同じ時間に行われた。0.63から2.15μM・hの日々の暴露範囲にわたって、1日2回(BID)の連続投与と比較した場合、1日3回(TID)の連続投与は、血小板減少症のより高い平均グレードと関連付けられていた。即時放出カプセル製剤を用いて送達する場合、化合物1の治療効果は、投与用にスケジュールされた日において4〜6時間離した2回の投与で達成された。2回の投与は、毎日同じ時間に行われ、2回目の投与は、初回の投与から約4〜6時間後に行われた。
【0350】
固形腫瘍及びリンパ腫の患者においては、7日間連続した経口投与に続いて7日間連続した非投与からなる周期で患者が薬物を受け取った場合には、化合物1に対する薬力学的応答は、グレード4の血小板減少症の発生率(血小板の数<25000/mm
2)が限定されて達成された。患者が25000/mm
2までの血小板の処置関連の減少を経験する場合には、血小板減少症の重症度は、5日間連続した経口投与に続いて9日間連続した非投与からなる周期で改善し得る。
【0351】
以下の薬物動態情報は、実施例2のカプセル製剤の30mg/mm
2の用量を受けた患者に対して判定された。固形腫瘍の癌患者は、実施例2の30mg/mm
2の用量のカプセル製剤を受けた。投与後24時間までに収集された血液試料を薬物動態学的評価のために分析した。血漿を遠心分離により回収し、分析までおよそ−70℃で保存した。化合物1の濃度は、HPLC勾配システム(Hewlett Packard model 1100)を用いて血漿において判定し、Sciex API 3000及び逆相カラム(Phenomenex、Luna C18、3.0μm、50×2mm i.d.)を用いて遠心分離した。移動相勾配は、水中の0.2%のギ酸(A)及びメタノール中の0.2%ギ酸(B)からなった。流速は0.4mL/分であり、実行時間は2.75分であった。薬物動態分析は、WinNonlin Professional Edition(Pharsight Corporation、Version 5.2)を用いて行った。名目上のサンプリング時間と名目上の用量レベルを使用した。化合物1の血漿濃度のAUC
0−4hは、0.272±0.051μM・h(平均±SE)であった。
【0352】
60mg/mm
2の用量における平均AUC
0−8hの95%信頼区間は、30mg/mm
2の即時放出カプセル製剤の単回投与に基づいて、0.210〜0.742μM・hと推定される。1日1回の経口制御放出製剤の用量−正規化平均AUC
0−8hは、0.0035〜0.0124(μM・h)/(mg/m
2)の範囲であると計算される。
【0353】
(実施例13:併用療法:神経芽細胞腫のインビトロ及びインビボモデルにおけるボルテゾミブ及び化合物1)
神経芽腫の現在の処置は、多くの場合、化学療法抵抗により失敗する。現在の研究では、神経芽腫の処置における化合物1及びプロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブの効果を調べた。
【0354】
神経芽腫細胞株及び患者由来の初代神経芽腫培養物を、ボルテゾミブ単独、化合物1単独、又は両方の薬剤の組み合わせで48時間処理した。細胞をまた、HDAC阻害剤であるボリノスタット、酪酸ナトリウム及びバルプロ酸で処理し、生存率を、カルセインAMアッセイによって評価した。処理した細胞からのmRNAを、U133+mRNA発現アレイ及びIngenuity分析を使用して6時間及び24時間で評価した。活性酸素種(ROS)を測定するためにジクロロフルオレセイン(DCF)を使用した。細胞生存率測定を、N−アセチルシステイン(NAC)の存在下で繰り返した。ウェスタンブロットは、カスパーゼ−3及びPARP開裂を評価した。ヌードマウスの皮下に10
7のSMS−KCNR細胞を注射し、1日用量、0.5mg/kgのボルテゾミブで、12.5mg/kgの化合物1で、又は2つの薬剤の組み合わせで処理した。腫瘍を測定し、1週間に2回画像化した。
【0355】
神経芽腫細胞株及び患者の細胞は、ボルテゾミブのIC
50<50nM及び化合物1のIC
50<200nMでボルテゾミブ及び化合物1に対する感受性を示した。ボルテゾミブと化合物1との組み合わせは、相乗的だった。発現解析は、NOTCH2とそのリガンド並びにc−junのアップレギュレーションを示した。NFk−B及びMYCNの両方は、有意にダウンレギュレートされた。DCF分析は、ROSの形成を示し、生存率測定は、NACの存在下でカスパーゼ媒介アポトーシスの阻害を示した。有意な生存利益を有する単剤処置群と比較した場合、神経芽細胞腫異種移植マウスモデルは、ボルテゾミブ及び化合物1の両方で処置したマウスにおいて腫瘍体積の減少を示した。
【0356】
ボルテゾミブ及び化合物1は、インビトロ及びインビボの両方で神経芽細胞腫の増殖を相乗的に阻害する(
図10)。この併用療法は有効であり、マウスモデルにおける耐容性が良好である。
【0357】
(実施例14:癌処置におけるベンダムスチン及びHDAC阻害剤の併用療法)
結腸癌: HCT−116(結腸癌)固形腫瘍を、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)又はベンダムスチン、もしくは化合物1とベンダムスチンとの組み合わせで処理した。細胞を、異なるレジメン及び濃度に従って培養し、処理して、対応する投薬レジメンをモデル化し、その後、ヒトのインビボPKを模倣するために洗い流した。ベンダムスチンとHDAC阻害剤(つまり、化合物1)との組み合わせの場合、最初に、様々な用量のHDAC阻害剤(つまり、化合物1)で18時間、細胞を処理し、次いで、様々な用量のベンダムスチンで3日間処理した。
【0358】
図3に示すように、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)の不存在下では、100μMまでのベンダムスチンの投与は、約10%の非生存細胞しかもたらさなかった。
しかしながら、
図3にはっきりと示すように、ベンダムスチンとHDAC阻害剤(つまり、化合物1)との組み合わせは、非常に強力であり、かつ、個別に投与される化合物よりも著しく効果的である。表11に示すように、当該組み合わせは、1下の併用指数(CI)を有し、相乗的な作用機序(synergistic mechanism of action)を示す。故に、ベンダムスチン及び化合物1は、インビトロ及びインビボの両方で結腸癌を相乗的に阻害する。
【0360】
多発性骨髄腫: 3つの異なる多発性骨髄腫細胞株U266、NCI−H929及びRPMI−8266を、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)とベンダムスチンとの相乗的な活性について試験した。
図4は、U266細胞株の結果を示す。ベンダムスチンと化合物1との組み合わせで処理した細胞についてのアポトーシスマーカーの大きな増加は、当該組み合わせが実際に強力な多発性骨髄腫の阻害剤であることを示す。表12は、当該組み合わせが1未満の併用指数(CI)を有し、相乗的な作用機序であることを示す。ベンダムスチン及び化合物1は、インビトロ及びインビボの両方で多発性骨髄腫を相乗的に阻害する。
【0362】
リンパ腫: HDAC阻害剤(つまり、化合物1)とベンダムスチンとの併用投与の効果を、異なる種類のリンパ腫で研究した。相乗的な活性が、マントル細胞リンパ腫及びびまん性大細胞リンパ腫におけるHDAC阻害剤(つまり、化合物1)とベンダムスチンとの組み合わせに対して観察された。
図5の5A及び5Bは、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)及び/又はベンダムスチンで処理したリンパ腫細胞のアポトーシスマーカーの増加を示す。図は、明らかにHDAC阻害剤(つまり、化合物1)とのベンダムスチンの組み合わせにより有効性が向上したことを示す。表13は、当該組み合わせが相乗的な作用機序を示す1下の併用指数(CI)を有することを示す。
図5の5A及び5B並びに表13に基づくと、ベンダムスチン及び化合物1は、インビトロ及びインビボの両方でリンパ腫を相乗的に阻害すると推測される。
【0364】
HDAC阻害剤による前処理は、ベンダムスチンとの併用において非常に良好な相乗作用をもたらす
【0365】
HDAC阻害剤(つまり、200nMの化合物1)又はベンダムスチン(50μM)でH929多発性骨髄腫細胞を1日又は3日間処理した。最初にベンダムスチン又はHDAC阻害剤を添加し、24時間後に他方を添加することにより追加のシーケンスを試験した。HDAC阻害剤(つまり、化合物1)とその24時間後のベンダムスチンは、この一連において最多の細胞死を引き起こした(
図8)。
【0366】
(実施例15:ベンダムスチン及びHDAC阻害剤の相乗的機能におけるRAD51の役割)
RAD51遺伝子は、BRCA1、BCRA2及び腫瘍抑制因子であるp53を含む多くの主要な癌遺伝子と関連付けられる。RAD51の活性は、p53との直接的なタンパク質間相互作用によって調節される。p53が存在しない又は変異している場合には、RAD51は、DNA修復活性を増加させた。増加したRAD51活性の正味の効果により、癌細胞にDNA損傷を効果的に修復させて、放射線及び化学療法治療を中和することである。
【0367】
図3に示すように、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)の不存在下では、100μMまでのベンダムスチンの投与は、約10%の非生存細胞しかもたらさなかった。
しかしながら、
図3に示すように、ベンダムスチンとHDAC阻害剤(つまり、化合物1)との組み合わせは、非常に強力であり、かつ、個別に投与される化合物よりも著しく効果的である。表11に示すように、当該組み合わせは、(Calcusyn(Biosoft、Ferguson、MO)ソフトウェアプログラムを使用するChou and Talayの方法に基づく)相乗的な作用機序を示す、1下の併用指数(CI)を有する。故に、ベンダムスチン及び化合物1は、インビトロ及びインビボの両方で結腸癌を相乗的に阻害する。
【0368】
図6の6Aは、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)による、及びHDAC阻害剤(つまり、化合物1)とベンダムスチンとの組み合わせによるRAD51のダウンレギュレーションを示す。HDAC阻害剤(つまり、化合物1)とベンダムスチンとの組み合わせの相乗的な活性は、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)によるRAD51のダウンレギュレーションに起因し得ると仮定される。RAD51は、細胞における2つの主要なDNA二本鎖切断(DSB)修復経路のうちの1つである相同組換え(HR)の必須成分を表し;その成分Ku70及びDNA−PKcsの2つによってここに表される第2の経路である非相同末端結合(NHEJ)は、これらの処置の影響を受けない。
図6の6B及び6Cは、化合物1とベンダムスチンとの組み合わせが多発性骨髄腫細胞株NCI−H929及びU266においてカスパーゼ開裂及びアポトーシスを相乗的に増加させるという結果をもたらすことを示す。上記で説明したように、ベンダムスチン−化合物1の組み合わせの相乗的な抗多発性骨髄腫活性は、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)に起因するRAD51レベルの減少によるものであり得る。
【0369】
図9は、Jurkat細胞において、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)による前処理がベンダムスチンによって引き起こされたRAD51のアップレギュレーションを抑制し、これにより、DNA損傷の修復を阻害し、ベンダムスチンの作用を増強したことを示す。0.2μmのHDAC阻害剤(つまり、化合物1)を用いて、細胞を前もって1日、前処理し、次いで、当該細胞に20μmのベンダムスチンを1日添加した。
【0370】
(実施例16:単独で又はベンダムスチンとの組み合わせでHDAC阻害剤が投与された、H929(多発性骨髄腫)を保有する雌SCIDマウスを用いる腫瘍増殖阻害試験)
2〜3の完全な投与周期にわたって5日連続した投与に続いて2日間の非投与の間、腹腔内経路(IP)によって化合物1BIDなどのHDAC阻害剤が投与された雌SCIDマウスにおいてH929細胞株の腫瘍増殖阻害を評価した。100μL/マウスの容量、1×10
7細胞密度でH929MM細胞をマウスの右後肢脇腹に皮下接種した。4群の動物(n=8/群)は、ビヒクル(BID、IP、5d/wk)、PCI−24781単独(12mg/kg BID、IP、5d/wk)、ベンダムスチン単独5.0mg/kg(qd、IP、2d/wk、Tu、Th)、又はそれらの組み合わせを受け取った。全ての動物について、毎週最低2回、体重値及び腫瘍測定値を収集した。血液及び腫瘍試料を、薬力学的評価のために試験終了時に収集した。
【0371】
図7に示すように、HDAC阻害剤単独及びベンダムスチン単独は、それぞれ73%及び79%の腫瘍増殖阻害を示したのに対し、それらの組み合わせは、著しく優れた93%の腫瘍増殖阻害を示した。試験終了時の体重損失は、単剤では<2.2%であり、組み合わせでは8.1%であった。従って、許容可能な毒性が体重損失によって測定される状況で、ベンダムスチンとのHDAC阻害剤の組み合わせは、単剤単独と比較して、H929多発性骨髄腫腫瘍増殖を著しく大きく阻害した。
【0372】
(実施例17:クロロキン、ペリフォシン、又は白金との組み合わせのHDAC阻害剤)
【0373】
クロロキンとの組み合わせのHDAC阻害剤:
【0374】
図11に示すように、本明細書に記載されるHDAC阻害剤(例えば、化合物1)は、クロロキンと相乗的に作用することが認められた。クロロキンは、オートファジー阻害剤である。従って、当該組み合わせは、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)によって活性化されたアポトーシス経路に腫瘍及び/又は骨髄腫細胞を駆動すると仮定される。
【0375】
ペリフォシンとの組み合わせのHDAC阻害剤:
【0376】
ペリフォシンは、AKT経路阻害剤である。
図12に示すように、HDAC阻害剤(つまり、化合物1)による最大24時間のHCT−116細胞の前処理、及びそれに続くペリフォシンの投与は、骨髄腫細胞株及び結腸腫瘍細胞におけるペリフォシンとHDAC阻害剤(つまり、化合物1)との相乗作用をもたらした。
【0377】
白金との組み合わせのHDAC阻害剤(つまり、化合物1):
【0378】
本明細書に記載されるHDAC阻害剤は、シスプラチンやカルボプラチンなどの白金含有剤を用いて相乗的に腫瘍細胞を阻害することが示されている。重要なことは、白金耐性の腫瘍細胞においては、HDAC阻害剤は、シスプラチン及び/又はカルボプラチンとの組み合わせで腫瘍を効果的に阻害したことを実証した。
図13は、シスプラチンと本明細書に記載されるHDAC阻害剤(つまり、化合物1)との組み合わせによる、白金耐性の卵巣腫瘍細胞の相乗的阻害を実証する。
【0379】
本明細書に記載される実施例及び実施形態は、例示的な目的のみのためであり、様々な変形又は変更が、添付の特許請求の範囲及び開示の精神及び範囲内に含まれるべきであることが当業者に示唆されている。当業者によって理解されるように、上記実施例に記載されている特定の成分は、他の機能的に同等の成分、例えば、希釈剤、結合剤、潤滑剤、充填剤、コーティング剤等によって置換してもよい。