(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記衝撃吸収材が前記筐体の前記一端側に配備されていて、前記筐体の前記一端側における平面視の面積よりも平面視の面積が小さい構造部材からなることを特徴とする請求項2記載のリニア駆動装置。
前記衝突する衝撃を低減する機構が、前記微振動発生部材に印加する駆動電圧を制御することにより、前記移動体が前記他端側から前記一端側に向かって移動する際の移動速度を低下させて前記一端側部材衝突させる、あるいは、前記一端側部材に対して衝突しないように制御するものであることを特徴とする請求項1記載のリニア駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明するが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【0012】
本発明の実施の形態1におけるリニア駆動装置について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1に示すリニア駆動装置1は、表示装置にタッチパネル機能を組み込んだ電子機器や操作キーを用いた入力装置といった電子機器に用いられる。これらの電子機器本体の中には、リニア駆動方式の振動装置を予め内蔵しておき、操作者が指やペンで押圧して情報を入力したときに、振動を指やペンに返して確実に操作を行ったという感触を操作者に与えるものがある。
【0014】
図1〜
図5に示すように、本実施の形態1のリニア駆動装置1は、駆動軸9と、微振動発生部材8と、筐体3と、移動体14とを備えている。
【0015】
筐体3は駆動軸9が軸方向に変位自在となるように駆動軸9又は微振動発生部材8の少なくとも一方を支持するものである。図示の実施形態では、筐体3は、駆動軸9が軸方向に変位自在となるように駆動軸9を支持している。
【0016】
なお、
図1〜
図5の形態1では、駆動軸9の一端である下端が微振動発生部材8に連結されている。微振動発生部材8は駆動軸9を介してのみ筐体3に支持されている構造になっている。なお、本明細書、図面において、微振動発生部材8に連結している駆動軸9の一端の側を下方、駆動軸9の他方の端の側を上方として説明する。
【0017】
移動体14は、駆動軸9の軸方向の変位によって駆動軸9の軸方向に移動可能に駆動軸9と結合しており、駆動軸9の軸方向に駆動軸9上を往復移動する。
【0018】
図1〜
図5の形態1では、筐体3は角筒状で、上端側に平面視で十字状のカバー4を備えている。筐体3の上端側の端面に相当するカバー4の上側面が電子機器本体の下側面21aに当接する。
【0019】
図示の形態では、移動体14を構成する錘部16の4つの角部にそれぞれ段部16aが形成されている。一方、筐体3の上端側には、平面視で十字状のカバー4が配備されている。カバー4の上側に、例えば、両面テープ2が装着され、両面テープ2を介して、リニア駆動装置1が電子機器本体の下側面21aに装着される。
【0020】
段部16aの上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突する際、カバー4が、4つの段部16aの間に形成される溝部にはまり込む。
【0021】
筐体3の底面15の中央部及びこの位置に対応するカバー4の中央部にはそれぞれ貫通孔が形成されている。各貫通孔にはブッシュ10、5を介して駆動軸9が挿入される。
【0022】
このため、図示の形態1では、筐体3の底面15の中央部及びカバー4の中央部に形成されている貫通孔の中心を結ぶ線は筐体3の底面15及びカバー4と垂直になるように設けられる。
【0023】
移動体14を移動させる駆動機構は、微振動発生部材8と駆動軸9とで構成される。
【0024】
微振動発生部材8は、弾性薄板6と、弾性薄板6の少なくとも一面に配置した伸縮薄板7a、7bとを備えている薄板からなる。図示の実施形態では、弾性薄板6の上下両面にそれぞれ伸縮薄板7a、7bが固着されているバイモルフ型になっている。
【0025】
伸縮薄板7a、7bに駆動電圧を印加することで伸縮薄板7a、7bが伸縮して伸縮薄板7a、7bが固着している弾性薄板6の中央部と周縁部とが弾性薄板6の法線方向に相対変位する。これによって微振動発生部材8がおわん型に変形する。
【0026】
伸縮薄板7a、7bは両面に電極材料を付着させた圧電材料、電歪材料で構成される。電極材料としては、例えば、銅や銅合金等が用いられる。圧電材料、電歪材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、鉛ニオブ酸マグネシウム等がある。伸縮薄板7a、7bは円形状や多角形状に形成される。
【0027】
弾性薄板6は、例えば、銅や銅合金等の弾性材料が用いられる。なお、図示していないが、伸縮薄板7aあるいは、7bのみを弾性薄板6の片面に設けるユニモルフ型にしてもよい。また、弾性薄板6は、伸縮薄板7aあるいは、7bに対応した外形を持つことが好ましいが、対応させなくても構わない。
【0028】
また、微振動発生部材8を、いわゆるバイモルフ型やユニモルフ型といった板状の部材とするのではなく、いわゆる積層型といったタイプの部材としても構わない。その際、微振動発生部材8のみを筐体3に支持させるような構成としても構わない。
【0029】
伸縮薄板7a、7bは弾性薄板6に、例えば、導電性接着剤で固着され、微振動発生部材8の両面の各々に伸縮薄板7a、7bに電圧を印加するための配線が設けられる。図示していないが、この配線は駆動制御部に接続される。
【0030】
駆動軸9は軽量で剛性が高い、例えば、炭素系の材料が用いられ、柱状に形成される。
【0031】
駆動軸9は、その一端が微振動発生部材8に連結される。図示の実施形態では、駆動軸9の一端である軸先端部が微振動発生部材8の中心部に固定されている。固定する形態としては、例えば、軸先端部の先端面を微振動発生部材8の表面に接着剤で固定することができる。図示の形態1で駆動軸9の微振動発生部材8との接着部分が太くなっているのは、この接着剤である。駆動軸9自身は先端面まで同じ太さ、または先端面の面積を駆動軸9本体部の断面積より小さくしている。駆動軸9の先端を細くすることで、実際の変形に寄与する微振動発生部材8の面積を大きくすることができる。
【0032】
なお、駆動軸9の軸先端部を微振動発生部材8に固定する構造に替えて、微振動発生部材8に貫通孔を設け、軸先端部の側面部を固定する構成としても良い。
【0033】
上述したように、駆動軸9はブッシュ5、10を介して、軸方向に変位自在に、筐体3に支持される。
【0034】
ブッシュ5、10は、駆動軸9を支持するためのゴム等の弾性部材であり、駆動軸9を挿通するための中心孔を有している。
【0035】
カバー4の中央部の貫通孔に配置されるブッシュ5は、微振動発生部材8に固定した一端側とは反対側である他端側の駆動軸9の先端部を中心孔の内面で接着固定する。
【0036】
一方、筐体3の底面15の中央貫通孔に配置されるブッシュ10は、中心孔の内面で駆動軸9を接着固定せずに、外側から加圧支持するのみである。
【0037】
この構成により、駆動軸9は軸方向に変位するが、その変位によって駆動軸9自身が移動体14のように長い距離を移動することはない。
【0038】
移動体14は、駆動軸9の軸方向の変位によって駆動軸9の軸方向に移動可能に駆動軸9と結合している。
【0039】
この実施の形態1では、移動体14は、駆動軸9に対して移動可能に結合されている環状の支持部11と、支持部11とは別体で構成された環状の錘部16と、支持部11と錘部16とを連結する連結部13a、13bとで構成されている。
【0040】
駆動軸9に対して環状の支持部11を軸方向に移動可能に結合する形態としては、摩擦結合を採用することができる。
【0041】
摩擦結合の形態1としては、環状の支持部11を、環状の締め付け手段12によって外周側から絞めつけることにより、環状の支持部11を駆動軸9に対して摩擦結合するものがある。
【0042】
例えば、二つの同じ半円形状の分割体を組み合わせて平面視で環状の支持部11を構成し、各分割体の駆動軸9に対応する位置に、駆動軸9を収容する開口を形成する。駆動軸9を間に挟んで2つの分割体を組み合わせたときに両者の合わせ面同士の間に隙間が空くように構成しておく。そして、環状の締め付け手段12によって外周側から絞めつけることによって環状の支持部11を駆動軸9に対して摩擦結合する構造を採用できる。
【0043】
このような場合、平面視で環状の支持部11を構成する二つの同じ半円形状の分割体は、例えば、ステンレスなどの金属製にすることができる。これにより、支持部11の耐久性を向上させることができる。
【0044】
環状の支持部11の外周に装着されて、支持部11を、駆動軸9を中心とする半径方向で内側方向に向かって外周側から絞めつける環状の締め付け手段12としては、例えば、コイルばねを用いることができる。
【0045】
また、二つの同じ半円形状の分割体を組み合わせて平面視で環状の支持部11を構成し、両分割体の合わせ面同士の間に熱収縮性樹脂を充填し、熱収縮性樹脂の熱収縮力で締め付けても良い。
【0046】
なお、駆動軸9と支持部11との接触部分は点接触とすることが好ましい。安定した摩擦結合状態を保ちやすい。
【0047】
摩擦結合の形態2としては、支持部11を中央に駆動軸9が挿通する支持部貫通孔を有する形態とし、当該、支持部貫通孔に熱収縮した熱収縮性樹脂が充填されている形態を採用することができる。
【0048】
支持部貫通孔に充填された熱収縮性樹脂の熱収縮力が、駆動軸9を外側から加圧する摩擦力となる。
【0049】
支持部11には連結部13aの内周側が固定されており、連結部13aの外周側に連結部13bが固定され、連結部13a、13bに対して環状の錘部16が結合されている。
【0050】
移動体14を構成する錘部16の上側(駆動軸9の一端とは反対側の他端側)の面が駆動軸9の一端とは反対側の他端側に向いた面になる。そして、移動体14を構成する錘部16が駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した際に、移動体14の駆動軸9の一端とは反対側の他端側に向いた面を構成する部材である錘部16が、移動体14の移動を停止させる部材に対して衝突する。この実施の形態では、移動体14の移動を停止させる部材である他端側部材は電子機器本体の下側面21aである。
【0051】
図1〜
図5図示の実施の形態では、錘部16が備えている段部16aの上側面16bが、移動体14の移動を停止させる他端側部材である電子機器本体の下側面21aに対して衝突する。
【0052】
なお、カバー4が図示のような平面視で十字状の構造ではなく、板状の構造になっていて、板状のカバー4の上側面が電子機器本体の下側面21aに当接している構造にすることもできる。この場合には、移動体14を構成する錘部16が駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した際に、移動体14の駆動軸9の一端とは反対側の他端側に向いた面を構成する部材である錘部16は、移動体14の移動を停止させる他端側部材であるカバー4の下側面に対して衝突する。
【0053】
カバー4は筐体3とは別体の物とすることができる。あるいは、カバー4を筐体3と一体に形成することもできる。
【0054】
いずれにしても、上述した、移動体14が駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した際に、移動体14を構成する錘部16の上側面16bが、移動体14の移動を停止させる他端側部材に衝突する。これにより、強い衝撃を生じさせることができる。
【0055】
これにより、入力操作が行われた際に振動を指やペンに返して確実に操作を行ったという感触を操作者に与える触感フィードバックを向上させることができる。
【0056】
図示の実施形態では、上端側に平面視で十字状のカバー4が配備されていて、段部16aの上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突する際、カバー4が、4つの段部16aの間に形成される溝部にはまり込む。このように、上側面を電子機器本体の下側面21aに当接させているカバー4が開口部を備えていて、錘部16が、当該開口部を挿通する段部16aを上側(駆動軸9の一端とは反対側の他端側)に備えている構造の場合、段部16aの形態としては、例えば、以下のものがある。
【0057】
錘部16が備えている段部16aの形態1では、段部16aはその上端側が、移動体14が駆動軸9の上側に移動した際に、少なくとも、筐体3の上側の端面と同一の高さレベルで筐体3から露出するようになっている。
【0058】
例えば、
図3、
図5(c)図示のように、移動体14が駆動軸9の上側に移動した際に、段部16aの上側面16bの高さレベルが、カバー4の上側面(駆動軸9の一端とは反対側の他端側に向いた面)の高さレベルと同一になるものである。
【0059】
この構造によれば、段部16aの上側面16bは、筐体3の上端側の端面(他端側の筐体3の端面)と同一の高さレベルで筐体3から露出することができる。
【0060】
本実施の形態1のリニア駆動装置が配備されている電子機器本体の下側面21aが
図3、4図示のように筐体3の上端側の端面(カバー4の上側面)に当接している場合には、上述したように、段部16aの上側面16bの高さレベルが、筐体3の上端側の端面の高さレベルと同一になっていることにより、段部16aの上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突する。
【0061】
このように、本実施形態のリニア駆動装置では、移動体14の上側面が電子機器本体の下側面21aに衝突する。これにより、入力操作が行われた際に振動を指やペンに返して確実に操作を行ったという感触を操作者に与える触感フィードバックを向上させることができる。
【0062】
錘部16が備えている段部16aの形態2では、移動体14が駆動軸9の上側に移動した際に、少なくとも段部16aの上端側が、筐体3の上端側の端面(カバー4の上側面)から突出する形態にすることもできる。例えば、リニア駆動装置1を電子機器本体に取り付けずに移動体14を移動させたときに、少なくとも段部16aの上端側が、筐体3の上端側の端面から突出する形態である。
【0063】
このような錘部16が備えている段部16aの形態2によれば、入力操作が行われた際に振動を指やペンに返して確実に操作を行ったという感触を操作者に与える触感フィードバックをより一層向上させることができる。
【0064】
錘部16は、この実施の形態では、平面視で、四角形状である。筐体3が円筒状であれば、平面視で円形状の錘部16を採用することができる。
【0065】
錘部16としてタングステン合金のような密度が大きい材料を用いて同じ体積でも質量を大きくすることにより、錘部16が備えている段部16aの上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突した際の衝撃が大きくなるようにしている。
【0066】
この実施の形態1においては、錘部16は連結部13a、13bを介して支持部11に連結されている。図示の形態の連結部13a、13bに替えて1枚の単なる板状の連結部を採用することができる。また、連結部13a、13bに替えて、弾性を有し、支持部11と錘部16とを弾性的に連結する板状体などの部材、例えば板バネを採用することもできる。 この板バネの形状は支持部11に固定される部分と、錘部16に固定される部分と、両者を連結する複数の腕部分と、を有する構成とすることができる。
【0067】
本実施の形態1では、移動体14は支持部11と錘部16とを別体とし、両者を連結部13a、13bで連結する構成とした。しかし、移動体14全体を複数の分割体で形成し、環状の締め付け手段で締め付けることによって移動体14全体を駆動軸9に対して摩擦結合させても良い。
【0068】
本実施の形態1のリニア駆動装置1の動作の一例を説明すると次のようになる。
【0069】
微振動発生部材8の伸縮薄板7aに対して駆動電圧を印加すると、伸縮薄板7aは厚さ方向が伸び、面内方向が縮むが、弾性薄板6はそのような伸縮はしない。そこで、微振動発生部材8は中央部が上方へ変位し周縁部が下方へ変位するように変形する。駆動電圧波形は数十kHz程度の周波数の矩形波、鋸歯状波、立ち上がり時間と立ち下がり時間が異なる三角波等である。
【0070】
微振動発生部材8の中央部に一端が固定されている駆動軸9も上方へ移動し、駆動軸9に結合している移動体14も上方へ移動する。
【0071】
微振動発生部材8が所定の変形をしたところで、駆動電圧を急激に立ち下げると、微振動発生部材8の変形は弾性薄板6の弾性力により急激に元に戻る。
【0072】
それに伴い駆動軸9も元の位置に戻るが、移動体14は、駆動軸9の下方への急激な移動には追随できず、その位置に留まる。
【0073】
結果として、移動体14はわずかに上方へ移動する。
【0074】
駆動軸9のこの往復非対称な軸方向の移動によって、移動体14は1往復当たり上方へ1〜数μm移動する。
【0075】
前述のようにこの動作を数十kHzの周波数で繰り返す。
【0076】
また、移動体14を下方へ移動させるときは、駆動軸9の軸方向の移動が上下逆になるように微振動発生部材8の伸縮部材7bに対して同様の駆動電圧を印加する。このようにして、移動体14は、駆動軸9の軸方向に駆動軸9上を往復移動する。
【0077】
こうして
図4に示すように、基準位置において筐体3の底面15に当接していた移動体14は、一回あるいは、複数回、駆動軸9の軸方向上側へ移動すると、錘部16が備えている段部16aの上側面16bが、筐体3の上端側の端面に当接している電子機器本体の下側面21aに衝突する。このとき、段部16aの上側面16bは、移動体14が駆動軸9の上側に移動した際にカバー4の上側の面あるいは筐体3の上端側の端面と同一の高さレベルで筐体3から露出する。あるいは、移動体14が駆動軸9の上側に移動した際に少なくとも筐体3の上端側の端面から突出する形態になっている。
【0078】
本実施の形態1のリニア駆動装置1は以上のように動作して、移動体14は駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動し、この移動を停止させる他端側部材に対して衝突した後、逆に、移動体14は、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して元の位置に戻る。
【0079】
この元に戻って移動体14が底面15に衝突しときに一端側(
図3〜5における下側)である底面15において大きな衝撃が生じると、駆動軸9の他端側(
図3〜5における上側)で移動体14が衝突して大きな衝撃を発生させた直後に、駆動軸9の一端側(
図3〜5における下側)で2度目の衝撃が発生することになる。
【0080】
このようになると、2回連続して操作者の指やペンに振動が感じられるようになってしまい、触感フィードバックに惰性を感じて、触感フィードバックを損なうおそれがある。
【0081】
本実施形態のリニア駆動装置1は、移動体14が、他端側部材に対して衝突した後、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して一端側に存在する部材(一端側部材)に対して衝突する衝撃を低減する機構を備えている。
【0082】
衝突する衝撃を低減する機構が配備されていることにより、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14がこの移動を停止させる他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して、一端側に存在する部材である一端側部材(筐体3の底面15)に衝突しても、一端側(
図3〜5における下側)において大きな衝撃が生じることがなくなる。
【0083】
すなわち、移動体14が、他端側部材に対して衝突した後、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して一端側に存在する部材(一端側部材)に対して衝突する衝撃を低減する機構が配備されていることにより、2回連続して大きな衝撃が発生することを防止できる。これによって、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置を提供することができる。
【0084】
移動体14が、他端側部材に対して衝突した後、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して一端側に存在する部材(一端側部材)に対して衝突する衝撃を低減する機構の実施形態としては以下のようなものがある。
【0085】
(衝突する衝撃を低減する機構の実施形態1)
衝突する衝撃を低減する機構の実施形態1は、駆動軸9の一端側(
図3〜5における下側)で配備されている衝撃吸収材である。
【0086】
図2〜
図5の実施形態では、筐体3の底面15上にシート状の衝撃吸収材17が配備されている。
【0087】
衝撃吸収材17は、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14がこの移動を停止させる他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動して、一端側(
図3〜5における下側)において大きな衝撃が発生することを防止できるものであればよく、これを満たす種々の材質のもので形成することができる。
【0088】
例えば、発泡材製のシート状の衝撃吸収材17や、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のシート状の衝撃吸収材17とすることができる。
【0089】
これらのシート状の衝撃吸収材17は衝撃を吸収するという上述した目的を達成できればよいので、その厚みは、例えば、0.1mm程度にすることができる。
【0090】
図5(a)、(b)は、衝突する衝撃を低減する機構を備えていないリニア駆動装置における動作を説明するものである。駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図5(a)図示のように他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、
図5(b)図示のように、一端側部材である筐体3の底面15に衝突すると、連続して2回の大きな衝撃が発生してしまう。このようになると、2回連続して操作者の指やペンに振動が感じられるようになり、操作者は、触感フィードバックに惰性を感じ、触感フィードバックが損なわれる。
【0091】
図5(c)、(d)は、衝突する衝撃を低減する機構を備えている本実施形態のリニア駆動装置における動作を説明するものである。駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図5(c)図示のように他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、
図5(d)図示のように、一端側部材に衝突する際に、一端側である筐体3の底面15の上にシート状の衝撃吸収材17が存在していることから、衝撃が吸収される。これによって、
図5(a)、(b)図示の構造のように、連続して2回の大きな衝撃が発生することがなくなり、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置になる。
【0092】
(衝突する衝撃を低減する機構の実施形態2)
衝突する衝撃を低減する機構の実施形態2は、駆動軸9の一端側(
図3〜5における下側)にバネ部材からなる衝撃吸収材が配備されているものである。
【0093】
図6図示の実施形態では、筐体3の底面15上で、駆動軸9の周囲にコイルバネ18が配備されている。
【0094】
駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図6(a)図示のように他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、
図6(b)図示のように、一端側部材(筐体3の底面15)に接近しても、コイルバネ18が存在していることにより移動体14の移動速度が遅くなる。これによって、
図6(b)図示のように、移動体14は一端側部材(筐体3の底面15)に衝突しないか、衝突するとしても穏やかに衝突し、大きな衝撃は生じなくなる。
【0095】
これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図6(a)図示のように他端側部材に衝突して衝撃を生じさせた後、直ちに、連続して2回目の大きな衝撃が発生することがなくなり、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置になる。
【0096】
図7図示の実施形態は、駆動軸9の一端側(
図3〜5における下側)にバネ部材からなる衝撃吸収材が配備されている他の実施形態を表すものである。
【0097】
筐体3の
図6中の下側で、筐体3の内周壁に板バネ19が配備されている。
【0098】
駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図7(a)図示のように他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、
図7(b)図示のように、一端側部材(筐体3の底面15)に接近しても、板バネ19が存在していることにより移動体14の移動速度が遅くなる。これによって、
図7(b)図示のように、移動体14が一端側部材(筐体3の底面15)に衝突する際に、穏やかに衝突し、大きな衝撃は生じなくなる。
【0099】
これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が
図7(a)図示のように他端側部材に衝突して大きな衝撃を生じさせた後、直ちに、連続して2回目の大きな衝撃が発生することがなくなり、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置になる。
【0100】
ここで、板バネ19は筐体3に固定される第1部分と、移動体14に固定される第2部分と、第1部分と第2部分とを連結する複数の腕部分と、を有する構成とすることができる。
【0101】
(衝突する衝撃を低減する機構の実施形態3)
衝突する衝撃を低減する機構の実施形態3は、駆動軸9の一端側(
図3〜5における下側)に衝撃吸収材として衝突面積が小さい構造体が配備されているものである。
【0102】
図8図示の実施形態では、
図8中の筐体3の下側で、筐体3の内周壁に径方向内側に突出している小さな突起部20が配備されている。
【0103】
駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、
図8(a)、(b)図示ように、一端側部材(筐体3の底面15)に接近しても、移動体14が一端側部材(筐体3の底面15)に衝突する前に、突起部20に衝突して移動が停止される。
【0104】
突起部20の平面視における面積は、筐体3の底面15の平面視における面積よりも十分小さい。
【0105】
そこで、移動体14が筐体3の底面15に衝突する場合に比較して衝撃を十分小さくすることができる。
【0106】
これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突して大きな衝撃を生じさせた後、直ちに、連続して2回目の大きな衝撃が発生することがなくなり、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置になる。
【0107】
図9、
図10図示の実施形態は、筐体3の底面15の面積を小さくすることによって衝撃の低減を図るものである。
【0108】
図2図示の実施形態では、底面15は、筐体3の底面部のほぼ全域にわたる大きな面機を有していた。
【0109】
これに対して、
図9、10図示の実施形態では、筐体3の底面は、
図1、
図2の実施形態におけるカバー4の形状と同じく、平面視で十字状の底面15aになっている。
【0110】
これにより、
図9の底面15aの面積は、
図2図示の実施形態における底面15の面積よりも十分小さくなっている。
【0111】
そこで、移動体14が
図2図示の実施形態における筐体3の底面15に衝突する場合に比較して衝撃を十分小さくすることができる。
【0112】
これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突して大きな衝撃を生じさせた後、直ちに、連続して2回目の大きな衝撃が発生することがなくなり、良好な触感フィードバックのリニア駆動装置になる。
【0113】
(衝突する衝撃を低減する機構の実施形態4)
衝突する衝撃を低減する機構の実施形態4は、微振動発生部材8に印加する駆動電圧を制御するものである。これにより、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突した後、逆に、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、一端側部材(筐体3の底面15)に接近する際に、穏やかな速度で接近、衝突する、あるいは、衝突しないように制御するものである。
【0114】
図11はこの実施形態4における移動体14の位置の時間変化の一例を説明するものである。
【0115】
駆動電圧を印加することで移動体14が基準位置から駆動軸9に沿って上方へ移動し(A)、移動体14の上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突する(B)。確実に衝突させるために、衝突後も駆動電圧はそのまま印加されるので移動体14はさらに上昇しようとするが、移動体14は電子機器本体の下側面21aに衝突したままなので、そのままの位置を保つ(C)。
【0116】
移動体14の上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突した後、駆動軸9の軸方向の移動が上下逆になるように駆動電圧波形を変えて駆動電圧を印加することにより、移動体14は駆動軸9の軸方向で下側に向かって移動する。
【0117】
この際、上方移動モード(A)に対応するモード(D)で基準位置に戻らせると、移動体14の上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突したときと同等の衝撃で、移動体14が筐体3の底面15に衝突することになる。
【0118】
これを防止するため、最初は、モード(D)で速やかに基準位置に向かう移動を開始させ、基準位置(筐体3の底面15)に近づいた(E)の段階で、移動速度をモード(F)のように低下させる。これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突した後、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、一端側部材(筐体3の底面15)に衝突する場合に、その衝撃を小さく抑えることができる。
【0119】
図12はこの実施形態4における移動体14の位置の時間変化の他の例を説明するものである。
【0120】
移動体14の上側面16bが電子機器本体の下側面21aに衝突した後、駆動軸9の軸方向の移動が上下逆になるように駆動電圧波形を変えて駆動電圧を印加して移動体14を駆動軸9の軸方向で下側に向かって移動させるが、上方移動モード(A)よりも穏やかな速度で、モード(C)からの移動を開始させるものである。
【0121】
これによって、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動した移動体14が他端側部材に衝突した後、駆動軸9の他端側から一端側に向かって移動し、一端側部材(筐体3の底面15)に衝突する場合に、その衝撃を小さく抑えることができる。
【0122】
図13はこの実施形態4における移動体14の位置の時間変化の更に他の例を説明するものである。
【0123】
モード(C)からモード(D)で基準位置に向かう移動が開始されるが、途中のモード(H)で下方移動を停止させ、その後、次の入力操作が行われるモード(I)で、再度、上方移動を開始させて、駆動軸9の一端側から他端側に向かって移動体14を移動させて他端側部材に衝突させる動作を繰り返すものである。そして最後に一連の入力操作が終了した時(J)に基準位置に戻す。すなわち、入力操作を行っている最中は、移動体14を筐体3の底面15に衝突させないようにするものである。
【0124】
上述した実施の形態で説明してきたリニア駆動装置を備える電子機器は、表示装置にタッチパネル機能を組み込んだ電子機器や操作キーを用いた入力装置といった電子機器に限るものではない。例えば、タッチパネルに入力するためのタッチペンに内蔵しても構わないし、腕時計に内蔵しても良い。
【0125】
また、電子機器だけでなく、指輪やブローチ、バンダナといった身体装着品に組み込んでも構わない。
【0126】
上述した電子機器や身体装着品のいずれに組み込んでも、移動体14の上側面が、電子機器本体や、身体装着品本体に衝突する。そして衝突した後、移動体14が、他端側から一端側に向かって移動して一端側部材に対して衝突する衝撃を低減する機構を備えている。これにより、入力操作が行われた際に振動を指やペンなどに返して確実に操作を行ったという感触を操作者に与える触感フィードバックをさらに向上させることができる。