(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、レンズの曲面上にモスアイ構造を形成することが期待されている。ここで曲面上に微細パターンを転写するためには、曲面状の型が必要になる。しかしながら、曲面等の非平面上に微細パターンを転写するためのインプリント用型を作成することは、非常に困難であると共にコストが掛かるという問題があった。
【0005】
そこで本発明では、簡易かつ安価に、微細パターンを有するフィルムに立体形状を成形することができる成形装置及び成形方法、立体形状の表面に微細パターンを転写することができるインプリント用型、並びに当該インプリント用型を用いたインプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の成形装置は、微細パターンを有するフィルムに、当該フィルムの厚みを超える立体形状を成形するためのものであって、前記フィルムを前記微細パターン側から流体によって加圧するための加圧室と、当該加圧室内の流体の圧力を調節する加圧手段と、を有する加圧部と、前記立体形状からなる受圧面を有し、前記フィルムを支持する受圧ステージと、を具備することを特徴とする。
【0007】
この場合、前記フィルムの材質によっては、当該フィルムの温度を調節する温調部を具備する方が好ましい。また、前記受圧面は、少なくとも立体形状の表面が鏡面状に形成される方が好ましい。また、前記フィルムと前記受圧ステージとの間の雰囲気を減圧するための減圧室を有する減圧部を具備する方が好ましい。
【0008】
また、本発明の成形方法は、微細パターンを有するフィルムに、当該フィルムの厚みを超える立体形状を成形するための方法であって、前記立体形状からなる受圧面を有する受圧ステージ上に、前記微細パターンが形成されていない面が受圧面側になるように前記フィルムを配置する配置工程と、前記微細パターン側から流体によって前記フィルムを前記受圧ステージに加圧する加圧工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
この場合、前記フィルムの材質によっては、当該フィルムを加熱する加熱工程を有する方が好ましい。また、前記受圧面は、少なくとも前記立体形状の表面が鏡面状に形成される方が好ましい。また、前記加圧工程の前に、前記フィルムと前記受圧ステージとの間の雰囲気を減圧する減圧工程を有する方が好ましい。
【0010】
また、本発明のインプリント用型は、可撓性を有するフィルムからなるものであって、前記フィルムの厚みを超える立体形状と、当該立体形状上に形成され前記フィルムの厚みより小さい深さを有する成型パターンとを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のインプリント方法は、被成形物の立体形状からなる被成形面にインプリント用型の成型パターンを転写するためのものであって、前記立体形状と略同一の立体形状が形成された成型面上に前記成型パターンを有するインプリント用型を、前記成型面が前記被成形面側となるように受圧ステージ上の被成形物に配置する配置工程と、前記インプリント用型を流体によって前記被成形物に加圧する加圧工程と、を有することを特徴とする
この場合、前記加圧工程の前に、前記インプリント用型と前記被成形物との間の雰囲気を減圧する減圧工程を有する方が好ましい。また、前記受圧ステージは、前記被成形物と接触する部分に緩衝材を有する方が好ましい。更に、前記受圧ステージは、前記被成形物の被成形面との境界部分に緩衝材を有する方が好ましい。
【0012】
なお、光インプリントを行う場合には、前記被成形物に光を照射する光照射工程を有する。また、熱インプリントを行う場合には、前記被成形物をガラス転移温度以上に加熱する加熱工程を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の成形装置及び成型方法は、立体形状上に微細パターンを有するフィルムを簡易かつ安価に成形することができる。また、本発明のインプリント方法は、立体形状上に微細パターンを有するフィルムをインプリント用型として用いることにより、立体形状を有する被成形物上に簡易かつ安価に精密な微細パターンを転写することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の成形装置は、
図1〜3に示すように、微細パターン20aを有するフィルム20(
図4参照)に、当該フィルム20の厚みを超える立体形状を成形するための成形装置であって、フィルム20を微細パターン20a側から流体によって加圧するための加圧室30と、当該加圧室30内の流体の圧力を調節する加圧手段35と、を有する加圧部3と、立体形状からなる受圧面321を有し、フィルム20を支持する受圧ステージ32と、で主に構成される。また、フィルム20の材質によっては、フィルム20の温度を調節する温調部(図示せず)を更に有する。
【0016】
ここで微細パターン20aとは、フィルム20の厚みより小さい深さの凹凸からなる幾何学的な形状をいう。例えば、モスアイとして機能する凹凸構造などが該当する。微細パターン20aは、平面方向の凸部の幅や凹部の幅の最小寸法が100μm以下、10μm以下、2μm以下、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。また、深さ方向の寸法も、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。
【0017】
また、フィルム20とは、所定の温度と圧力によって立体形状を形成できるものであればどのようなものでも良いが、例えば、樹脂や金属を用いることができる。樹脂としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、などの熱可塑性樹脂を用いることができる。金属としては、ニッケルや金、銀等を用いることができる。
【0018】
加圧部3は、フィルム20を流体によって直接的に加圧するための加圧室30と、加圧室30内の流体の圧力を調節する加圧手段35とで構成される。また、加圧室30は、例えば、フィルム20と、加圧室用筐体33と、フィルム20と加圧室用筐体33との間を密閉する密閉手段34と、で構成すれば良い。
【0019】
加圧室用筐体33は、開口部を有する有底筒状に形成され、開口部をフィルム20によって閉じることにより、密閉された空間である加圧室30を構成するものである。この開口部は、フィルム20に成形される立体形状より大きく形成される。材質は、成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、ステンレス鋼などの金属を用いることができる。なお、フィルム20は、微細パターン20aが加圧室30側に向くように開口部を閉じる。
【0020】
密閉手段34は、加圧室30を密閉にするために、加圧室用筐体33とフィルム20との間を密接させるものである。例えば、
図1に示すように、密閉手段34としてOリングを用意すると共に、加圧室用筐体33の側壁33aの受圧ステージ32側端部にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝33bを形成し、この溝にOリングを配置すれば良い。これにより、フィルム20を加圧室用筐体33と受圧ステージ32とによって挟持し、加圧室用筐体33とフィルム20とを密接させることができるので、加圧室30内を密閉することができる。また、加圧室用筐体33とフィルム20との間に傾きがあっても、その平行度がOリングのつぶし代以内であれば、加圧室30を確実に密閉することができる。
【0021】
なお、加圧室30の開閉には、開閉手段を用いる。開閉手段は、図示しないが、加圧室用筐体33と受圧ステージ32の距離を調節するように、相対的に移動するものである。例えば、電気モータとボールねじによって、加圧室用筐体33を受圧ステージ32に対して相対的に近接又離間すれば良い。もちろん、加圧室用筐体33を受圧ステージ32に対して相対的に近接又離間できるものであればどのようなものでも良く、油圧式又は空圧式のシリンダによって移動することもできる。
【0022】
加圧手段35は、受圧ステージ32の立体形状をフィルム20に転写可能な圧力まで、加圧室30内の流体の圧力を調節可能であればどのようなものでも良い。例えば、
図1に示すように、加圧室用筐体33に加圧室用気体給排流路351を接続し、加圧室用気体給排流路351を介して加圧室30へ空気や不活性ガス等の気体を給気又は排気すれば良い。当該気体の供給には、圧縮された気体を有するボンベやコンプレッサー等の気体供給源352を用いることができる。また、気体の排気には、図示しないが、脱気弁の開閉によって気体を排気するようにすれば良い。なお、適宜安全弁等を設けても良い。
【0023】
受圧ステージ32は、加圧部3の圧力を受けたフィルム20を支持すると共に、フィルム20へ立体形状を転写するためのものである。立体形状は、受圧ステージのフィルム20と接触する側の面である受圧面321に形成される。ここで立体形状とは、深さ方向に対してフィルム20の厚みを超える大きさの形状を意味し、例えば、凸レンズや凹レンズの曲面に相当するものなどが該当する。また、受圧面321は、少なくとも立体形状の表面が微細パターン20aや立体形状の機能を損なわないような表面粗さの鏡面状に形成される方が好ましい。材質は、成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、炭素鋼等の鉄材やSUSなどの金属を用いることができる。また、フィルム20を受圧ステージ32側から加熱する場合には、金属等の熱伝導性の高いものを用いる方が好ましい。また、フィルム20を加圧室30側から加熱する場合には、受圧ステージ32側に熱が逃げるのを防止するため熱伝導性の低いものを用いても良いが、加熱むらを防止するため、ステージ表面は熱伝導性の高いもので構成する方が好ましい。
【0024】
温調部は、図示しないが、フィルム20を加熱又は冷却することによりフィルム20の温度を調節するものである。温調部は、フィルム20を直接的又は間接的に加熱する加熱手段や冷却する冷却手段で構成される。
【0025】
加熱手段は、フィルム20を受圧ステージ32に加圧した際に立体形状に変形できる温度、例えば樹脂フィルムであれば、当該樹脂のガラス転移温度以上又は溶融温度以上に加熱することができるものを用いれば良い。また、フィルム20を受圧ステージ32側から加熱するものでも、加圧室30側から加熱するものでも良い。具体的には、受圧ステージ32内や、受圧ステージ32を載置するステージ本体320にヒータを設けて受圧ステージ32側からフィルム20を加熱するものを用いることができる。また、加圧室30にセラミックヒータやハロゲンヒータのような電磁波による放射によって加熱する放射熱源を設け、フィルム20を加熱するものを用いることもできる。また、加圧室30に供給する気体を加熱しておき、加熱気体によって加熱することも可能である。なお、フィルム20の材質が金属である場合などには、加熱手段を省略することも可能である。
【0026】
冷却手段は、フィルム20を、所定温度、例えば樹脂フィルムであれば、当該樹脂のガラス転移温度未満又は溶融温度未満に冷却することができるものを用いれば良い。また、フィルム20を受圧ステージ32側から冷却するものでも、加圧室30側から冷却するものでも良い。具体的には、受圧ステージ32内又はステージ本体320に冷却用の水路を設けて受圧ステージ32側からフィルム20を冷却するものを用いることができる。また、加圧室30に冷却用の気体や液体を循環させて冷却するものを用いても良い。
【0027】
また、温調部は、上述した加熱手段や冷却手段を複数組み合わせたものでも構わない。
【0028】
なお、本発明の成形装置は、フィルム20と受圧ステージ32の間の雰囲気を減圧するための減圧室を有する減圧部4を備えていても良い。これにより、フィルム20と受圧ステージ32の間に存在する気体を除去し、フィルム20と受圧ステージ32を均一に押圧して成形することができる。
【0029】
減圧部4としては、例えば
図1に示すように、フィルム20を内包する減圧室40と、減圧室40内の気体を排出する減圧手段45とで構成すれば良い。
【0030】
減圧室40は、減圧室用筐体と、減圧室用密閉手段44と、受圧ステージ32又は受圧ステージ32を載置するステージ本体320とで構成される。
【0031】
減圧室用筐体は、例えば、加圧室用筐体33と、加圧室用筐体33の上部から水平に延伸するフランジ部431と、加圧室用筐体33を覆うようにフランジ部431から垂下する蛇腹432と、で構成することができる。この場合、加圧室30も減圧室40の一部となる。
【0032】
減圧室用密閉手段44は、減圧室40を密閉するために、減圧室用筐体33と受圧ステージ32又はステージ本体320との間を密接させるものである。例えば、
図1に示すように、減圧室用密閉手段44としてOリングを用意すると共に、蛇腹432のステージ本体側端部にOリングの断面の直径より浅い凹状の溝432bを形成し、この溝432bにOリングを配置すれば良い。これにより、減圧室40内を密閉することができる。また、減圧室用筐体と受圧ステージ32との間に傾きがあっても、その平行度がOリングのつぶし代以内であれば、減圧室40を確実に密閉することができる。
【0033】
なお、減圧室用筐体、減圧室用密閉手段44は、減圧した際の外力に耐えられる強度を有するものであることは言うまでもない。
【0034】
減圧手段45は、減圧室40に接続される減圧室用気体給排流路451と、減圧室用気体給排流路451を介して減圧室40内の気体を排気する減圧用ポンプ452とで構成すれば良い。
【0035】
減圧用ポンプ452は、フィルム20と受圧ステージ32を加圧した際に転写不良が生じない範囲まで減圧室40を減圧できるものであれば良い。
【0036】
また、減圧室40内において、減圧時にフィルム20と受圧ステージ32の間を離し、フィルム20と受圧ステージ32との間の気体を除去し易くするための離間手段46を設けても良い。これにより、気体の除去を確実に行い、転写不良を防止することができる。離間手段46は、フィルム20と受圧ステージ32の間に隙間を形成するものであればどのようなものでも良いが、例えば
図1に示すように、フィルム20の端部を挟持する挾持部461と、フィルム20と受圧ステージ32が離間する方向に当該挟持部461を移動させる昇降手段(図示せず)とで構成すれば良い。
【0037】
挾持部461は、例えば、ばね等の弾性力を付勢して挾持するクリップ等を用いることができる。
【0038】
昇降手段としては、油圧式又は空圧式のシリンダによって移動させるものや、電動モータとボールねじによって移動させるもの等を用いることができる。
【0039】
次に、本発明の成形方法を本発明の成形装置を用いて説明する。
【0040】
本発明の成形方法は、微細パターン20aを有するフィルム20(
図4参照)に、当該フィルム20の厚みを超える立体形状を成形するための成形方法であって、配置工程と加熱工程と加圧工程とからなる。
【0041】
配置工程では、立体形状からなる受圧面321を有する受圧ステージ32上に、微細パターン20aが形成されていない面が受圧面321側になるようにフィルム20を配置する。換言すると、成形中に微細パターン20aが損傷するのを防止するため、微細パターン20aが形成されている面を形成装置の加圧室30側にする。この場合、受圧面321は、少なくとも立体形状の表面が微細パターン20aや立体形状の機能を損なわないような表面粗さの鏡面状に形成される方が好ましい。
【0042】
加熱工程では、温調部の加熱手段によって、加圧工程時にフィルム20が立体形状に変形できる温度、例えば、樹脂フィルムの場合には当該樹脂のガラス転移温度以上に加熱する。一方、フィルム20の材質が金属である場合などには、加熱工程を省略することも可能である。
【0043】
加圧工程では、微細パターン20a側から流体によってフィルム20を受圧ステージ32に加圧する。すなわち、開閉手段によって加圧室用筐体33及び密閉手段34をフィルム20及び受圧ステージ32に押し付けて加圧室30を構成する。次に加圧手段35によって加圧室30に流体を供給し、加圧室30内の流体圧を上げる。これにより、フィルム20が受圧ステージ32の立体形状に変形する。
【0044】
この後、温調部の冷却手段又は自然冷却によって、フィルム20の温度を所定温度以下、例えば樹脂フィルムの場合には、当該樹脂のガラス転移温度以下に冷却する冷却工程を経て、フィルム20に立体形状が成形される。
【0045】
なお、加圧工程の前に、フィルム20と受圧ステージ32との間の雰囲気を減圧する減圧工程を有する方が良い。例えば、蛇腹432とステージ本体320の間を減圧室用密閉手段44を介して密閉し、減圧室40を構成する。次に減圧手段45によって減圧室40の気体を排気し、減圧室内の気圧を下げる。これにより、フィルム20と受圧ステージ32の間に存在する気体を除去し、フィルム20と受圧ステージ32を均一に押圧して成形することができる。なお、減圧する際には、離間手段46を用いて、フィルム20と受圧ステージ32の間を離し、フィルム20と受圧ステージ32との間の気体を確実に除去する方が好ましい。
【0046】
このようにして、簡易かつ安価に、微細パターン20aを有するフィルム20に立体形状を成形することができる。なお、このようにして形成されたものは、
図6に示すように、可撓性を有するフィルムからなり、フィルムの厚みを超える立体形状と、当該立体形状上に形成されフィルムの厚みより小さい深さを有する成型パターン1aとを有するインプリント用型1として用いることもできる。このインプリント用型1を用いれば、インプリント技術を用いて、当該立体形状を有する被成形物に成型パターン1aを精密に転写することができる。立体形状と成型パターン1aの組み合わせの例としては、例えば、レンズ曲面(立体的形状)と当該曲面状に形成されたモスアイ構造(成型パターン)が該当する。
【0047】
次に、
図6〜
図8を用いて、立体的形状を有する被成形物2に成型パターン1aを転写する方法について説明する。本発明のインプリント方法は、被成形物2の立体形状からなる被成形面2aにインプリント用型1の成型パターン1aを転写するための方法であって、上述した本発明のインプリント用型1を、受圧ステージ32A上の被成形物2に配置する配置工程と、インプリント用型1を流体によって被成形物2に加圧する加圧工程と、からなる。また、光インプリントを行う場合には、被成形物2に光を照射する光照射工程を有し、熱インプリントを行う場合には、被成形物2をガラス転移温度以上に加熱する加熱工程を有する。
【0048】
ここで、被成形物2とは、例えばレンズの曲面のような所定の立体的形状を有するガラスやシリコン等の無機化合物、金属、樹脂等の表面に、熱可塑性樹脂や重合反応性基含有化合物類の重合反応(熱硬化、または光硬化)によって製造される樹脂からなる薄膜を形成したものが挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0050】
重合反応性基含有化合物類の重合反応(熱硬化、または光硬化)によって製造される樹脂としては、エポキシド含有化合物類、(メタ)アクリル酸エステル化合物類、ビニルエーテル化合物類、ビスアリルナジイミド化合物類のようにビニル基・アリル基等の不飽和炭化水素基含有化合物類等を用いることができる。この場合、熱的に重合するために重合反応性基含有化合物類を単独で使用することも可能であるし、熱硬化性を向上させるために熱反応性の開始剤を添加して使用することも可能である。更に光反応性の開始剤を添加して光照射により重合反応を進行させて成型パターン1aを形成できるものでもよい。熱反応性のラジカル開始剤としては有機過酸化物、アゾ化合物が好適に使用でき、光反応性のラジカル開始剤としてはアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、キサントン誘導体等が好適に使用できる。また、反応性モノマーは無溶剤で使用しても良いし、溶媒に溶解して塗布後に脱溶媒して使用しても良い。
【0051】
なお、被成形物2は、上述した樹脂のみで形成されたものを用いても良い。
【0052】
本明細書においては、被成形物2として、凸レンズ上に光硬化性樹脂を塗布したものを用いて説明する。なお、光硬化性樹脂の塗布は、凸レンズ上に均一な膜を形成できるものであれば、既存の技術を用いることができる。
【0053】
また、当該インプリントを行うためのインプリント装置は、
図6に示すように、受圧ステージ32Aを除き、上述した成形装置と同様の装置を用いることができるため、同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
受圧ステージ32Aは、被成形物2の一面と略同一の形状に形成された受圧面321Aを有し、加圧部3の圧力を受けた被成形物2を支持するためのものである。材質は、成形条件に対し、耐圧性、耐熱性を有するものであればどのようなものでも良く、例えば、炭素鋼等の鉄材やSUSなどの金属を用いることができる。また、フィルム20を受圧ステージ32A側から加熱する場合には、金属等の熱伝導性の高いものを用いる方が好ましい。また、フィルム20を加圧室30側から加熱する場合には、受圧ステージ32A側に熱が逃げるのを防止するため熱伝導性の低いものを用いても良いが、加熱むらを防止するため、ステージ表面は熱伝導性の高いもので構成する方が好ましい。また、受圧ステージ32Aは、被成形物2と接触する部分にPDMS等の樹脂からなる緩衝材322を有する方が好ましい。これにより、被成形物2表面の損傷を防止することができる。また、受圧ステージ32Aは、被成形物2の被成形面2aとの境界部分にもPDMS等の樹脂からなる緩衝材323を有する方が好ましい。これにより、受圧ステージ32Aと被成形物2との境界部分でインプリント用型1が流体圧によって損傷するのを防止することができる。
【0055】
また、光インプリントを行う場合には、光照射手段(図示せず)を有する。光照射手段は、加圧室側に設けても良いし、受圧ステージ32A側に設けても良い。ただし、加圧室30側に設ける場合には、インプリント用型1を光透過性のあるものにする必要があり、受圧ステージ32A側に設ける場合には、被成形物2や受圧ステージ32Aを光透過性のあるものにする必要がある。
【0056】
配置工程では、
図7に示すように、被成形物2の立体形状と略同一の立体形状が形成された成型面1b上に成型パターン1aを有するインプリント用型1を、成型面1bが被成形面2a側となるように受圧ステージ32A上の被成形物2に配置する。
【0057】
加圧工程では、開閉手段によって加圧室用筐体33及び密閉手段34をインプリント用型1及び受圧ステージ32Aに押し付けて加圧室30を構成する。次に加圧手段35によって加圧室30に流体を供給し、加圧室30内の流体圧を上げる。これによりインプリント用型1は、流体によって被成形物2に加圧され、光硬化性樹脂に成型パターン1aが形成される。
【0058】
この後、被成形物2に光を照射する光照射工程を経ることにより、光硬化性樹脂が硬化し成型パターン1aが定着する。
【0059】
最後に、被成形物2からインプリント用型1を離型する離型工程を終了すれば、立体的形状を有する被成形物2に成型パターン1aを転写することができる。
【0060】
なお、加圧工程の前に、インプリント用型1と被成形物2との間の雰囲気を減圧する減圧工程を有する方が良い。例えば、蛇腹432とステージ本体の間を減圧室用密閉手段44を介して密閉し、減圧室40を構成する。次に減圧手段45によって減圧室40の気体を排気し、減圧室内の気圧を下げる。これにより、インプリント用型1と被成形物2の間に存在する気体を除去し、インプリント用型1と被成形物2を均一に押圧して成型パターン1aを転写することができる。なお、減圧する際には、離間手段46を用いて、インプリント用型1と被成形物2の間を離し、インプリント用型1と被成形物2との間の気体を確実に除去する方が好ましい。
【0061】
なお、上記説明では、光インプリントを行う場合について説明したが、凸レンズ上に熱可塑性樹脂を塗布したものを被成形物2として用いる場合には、熱インプリントを行うことも勿論可能である。この場合には、インプリント用型1を、受圧ステージ32A上の被成形物2に配置する配置工程の後に、当該熱可塑性樹脂を当該樹脂のガラス転移温度以上に加熱する加熱工程を行う。次に、インプリント用型1を流体によって被成形物2に加圧する加圧工程、フィルムを当該樹脂のガラス転移温度以下に冷却する冷却工程、被成形物2からインプリント用型1を離型する離型工程を行えば良い。
【0062】
加熱工程では、温調部の加熱手段によって、被成形物2の熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上に加熱する。もちろん、インプリント用型1の材質は、加熱工程における加熱温度よりも高い耐熱性が必要である。
【0063】
また、冷却工程では、温調部の冷却手段又は自然冷却によって、被成形物2の熱可塑性樹脂をガラス転移温度以下に冷却すれば良い。