(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6330159
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】装着時にズレにくいヘッドマウントディスプレイ用防汚用シート
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20180521BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A62B18/02 C
H04N5/64 511A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-204287(P2017-204287)
(22)【出願日】2017年10月23日
【審査請求日】2017年10月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516048035
【氏名又は名称】株式会社サイバーウォーカー
(72)【発明者】
【氏名】平井孝幸
【審査官】
首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−170431(JP,A)
【文献】
特開2012−187332(JP,A)
【文献】
特許第3951985(JP,B2)
【文献】
特開平10−39246(JP,A)
【文献】
特開平7−181422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 18/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッドに汚れが付着することを防止する防汚用シートに於いて、安価で加工しやすい不織布からなり、フェイスパッドを覆い且つレンズを露出する形状の目出し部分と、目出し部分下部にヘッドマウントディスプレイに固定する為の突出形状を持ち、この突出形状がヘッドマウントディスプレイ下面に指で押さえつけられて固定される事を特徴とするヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項2】
ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッドに汚れが付着することを防止する防汚用シートに於いて、安価で加工しやすい不織布からなり、フェイスパッドを覆い且つレンズを露出する形状の目出し部分と、目出し部分下部にヘッドマウントディスプレイに固定する為の突出形状を持ち、ヘッドマウントディスプレイ下面にはこの突出形状を固定する為の固定器具を設ける事を特徴とするヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項3】
前記目出し部分下部のヘッドマウントディスプレイに固定する為の突出形状に1つもしくは複数の切り欠きを有する事で、ヘッドマウントディスプレイに防汚用シートが固定される際の皺を軽減し、突出形状がヘッドマウントディスプレイ下面にフィットし易くなる事を特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項4】
前記目出し部分上部左右端にヘッドマウントディスプレイに固定する為の突出形状を持ち、この突出形状がヘッドマウントディスプレイ上面に指で押さえつけられて固定される事を特徴とする請求項1、請求項2もしくは請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項5】
前記目出し部分上部左右端にヘッドマウントディスプレイに固定する為の突出形状を持ち、ヘッドマウントディスプレイ上面にはこの突出形状を固定する為の固定器具を設ける事を特徴とする請求項1、請求項2もしくは請求項3に記載のヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項6】
前記目出し部分の中央上部に頭頂部固定ベルトを覆うための突出形状を有する事を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4もしくは請求項5に記載のヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【請求項7】
前記目出し部分の左右に側頭部固定ベルトを覆うための突出形状を有する事を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5もしくは請求項6に記載のヘッドマウントディスプレイ防汚用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイの肌に触れる部分に汚れ等が付着することを防ぐための
シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バーチャルリアリティの体験に於いて、ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイ(
図1)が用いられる。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイは、左右のレンズ14の周りにウレタンやスポンジ等のクッション性をもった素材で形成されたフェイスパッド11と、ヘッドマウントディスプレイを頭部に固定するための側頭部固定ベルト12及び頭頂部固定ベルト13で構成されている。これらにより、ヘッドマウントディスプレイが顔面に密着し、周囲からの光を妨げることで仮想空間への没入感を増している。
【0004】
ヘッドマウントディスプレイはイベントや展示会、ショールーム等でのバーチャルリアリティ体験などで用いられることが多く、多数の体験者が連続して使用する状況では、肌に密着する部分(フェイスパッド11及びヘッドマウントディスプレイを頭部に固定するためのベルト)に皮脂や化粧品等が付着し、衛生上の問題が生じる。それを防止するため、不織布等を使った使い捨てマスクが発明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-153053
【特許文献2】実登3206912
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の使い捨てマスクは、マスクの左右に設けられた耳掛け等を用い、最初に体験者の顔面にマスクを装着してからヘッドマウントディスプレイを被って使用するものである。
【0007】
その為、装着時にヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11がマスクに接触し、フェイスパッド11とマスクの間に生じた摩擦力21によって、マスクを下に押し下げる力22が発生し、マスクが下にズレてしまう。(
図3)
その為、何度もヘッドマウントディスプレイを被り直す必要が生じてしまい、装着に時間が掛かっていた。
【0008】
また、ヘッドマウントディスプレイに設けられたフェイスパッド11を取り外しが容易な仕組みにし、これを使い捨てにする方法もあるが、不織布製のマスクと比べてコストがかかる。
【0009】
本発明は、前述の課題を解決し、ヘッドマウントディスプレイ装着時にズレにくい防汚用
シートを安価で提供できるようになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る防汚用
シートは、
防汚用シート下部および
防汚用シート上部の左右に突出部を設けることで、ヘッドマウントディスプレイに
防汚用シートを固定し易い形状としたものであり、ヘッドマウントディスプレイを装着する際にはこれらを指で押さえる等の手段で固定して用いる。
【0011】
防汚用シートをヘッドマウントディスプレイに固定する手段として、ヘッドマウントディスプレイ上部もしくは下部もしくはその両方に
防汚用シート固定器具を取り付けても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ヘッドマウントディスプレイ装着時に
防汚用シート下部の突出部分をヘッドマウントディスプレイ下部に固定し、また
防汚用シート上部左右の突出部分をヘッドマウントディスプレイ上部に固定して、帽子を被るように装着すれば、
防汚用シートのズレを軽減でき、ヘッドマウントディスプレイを簡単に装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】従来のマスクの課題(ヘッドマウントディスプレイ装着中)
【
図3】従来のマスクの課題(ヘッドマウントディスプレイ装着後)
【
図5】ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分の切り欠きを複数にした
防汚用シートの例
【
図8】ゴムの弾性を利用した
防汚用シート固定器具の例とその用法
【
図9】クリップ状の
防汚用シート固定器具の例とその用法
【
図10】かぎ状の突起を用いた
防汚用シート固定器具の例とその用法
【
図11】面ファスナー状の
防汚用シート固定器具の例とその用法
【
図12】本発明による
防汚用シートを装着する際の
防汚用シート固定例(ヘッドマウントディスプレイ下面)
【
図13】本発明による
防汚用シートを装着する際の
防汚用シート固定例(ヘッドマウントディスプレイ上面)
【
図14】
防汚用シート固定器具をヘッドマウントディスプレイに接着した例
【
図15】ベルト覆被部分を有した
防汚用シートを
防汚用シート固定器具を用いて固定した例
【
図16】本発明による
防汚用シート(ヘッドマウントディスプレイ装着中)
【
図17】本発明による
防汚用シート(ヘッドマウントディスプレイ装着後)
【発明を実施するための形態】
【0014】
防汚用シートは、たとえば不織布のような柔らかく加工しやすく、かつ安価な素材で形成されている。
【0015】
防汚用シートは
図4のような形状で、ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11を覆う目出し部分41とヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42とヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44で構成される。ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42には、切り欠き43を設ける。
【0016】
目出し部分41は、横幅200mm前後、高さ幅100mm前後の長方形もしくは楕円形等の横長形状で、中央に横幅150mm前後、高さ幅40mm前後の長方形もしくは楕円形等の開口部を設け、両目を露出できる様になっている。
【0017】
ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42は、目出し部分41の下に位置し、横幅150mm前後、高さ幅50mm前後の長方形の横長形状で、中央に切り欠き43を設けてある。
この切り欠き43は、
防汚用シートをヘッドマウントディスプレイに固定する際、ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11の湾曲によって
防汚用シートに皺が入りにくくする為のものである。
【0018】
ヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44は、目出し部分41の上側左右に位置し、それぞれ目出し部分41の角から上方に50mm程度突き出した幅30mm程度の突起状の部分である。形状は円形でも長方形でも、また楕円形等でも良い。
【0019】
ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42の切り欠き43は、
図5切り欠き51の様に複数個所に設けても良い。
【0020】
ヘッドマウントディスプレイの側頭部固定ベルト12および頭頂部固定ベルト13の防汚の為、
防汚用シートの左右および上部に、それぞれ側頭部固定ベルト覆被部分61、頭頂部固定ベルト覆被部分62の両方もしくはどちらか片方を設けても良い。側頭部固定ベルト覆被部分61は、側頭部固定ベルト12の太さより少し広い程度(高さ幅50mm前後)、横幅は左右とも100mm前後の長方形もしくはそれに近い帯状の形状である。頭頂部固定ベルト覆被部分62は、横幅50mm前後、高さ幅100mm前後の長方形もしくはそれに近い帯状の形状である。
【0021】
目出し部分41の開口部は、両目をひと続きの穴から露出する様な形状ではなく、
図7の様に中央に開口部の上下を結ぶ橋梁部71を設けても良い。これはヘッドマウントディスプレイ装着時の
防汚用シートの変形を軽減する役割を果たす。
【0022】
ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42とヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44は、指で押さえて固定することを想定した形状であるが、ヘッドマウントディスプレイ下部及びヘッドマウントディスプレイ上部の両方もしくはどちらか片方に、
防汚用シート固定器具を取り付け、これによって
防汚用シートを固定する様にしても良い。
【0023】
防汚用シート固定器具は、ゴム等の弾性素材に切れ込みを入れ
防汚用シートの端部をその切れ込みに差し込むことで抜けにくくした構造の部材(
図8A。
図8Bはその用例である)、バネ若しくは素材そのものの弾性により2枚の板で
防汚用シートの端部を挟む事で抜けにくくした構造の部材(
図9A。
図9Bはその用例である)、かぎ状の突起を有し
防汚用シートに空いた孔を引掛ける事で抜けにくくした構造の部材(
図10A。
図10Bはその用例である)、または面ファスナーの様な微細なフックを有した素材で
防汚用シート側の素材と結合して接着力を発揮する構造の部材(
図11A。
図11Bはその用例である)等であり、これらのいずれかをヘッドマウントディスプレイの上部もしくは下部の数か所に接着して用いる。
【0024】
防汚用シート固定器具は、全て同じ構造の器具を使用しても良いし、ヘッドマウントディスプレイの接着場所によって構造の違う器具を組み合わせても良い。
【実施例】
【0025】
本発明に係る防汚用
シートの装着は、ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11にマスクの目出し部分41を重ね、開口部からヘッドマウントディスプレイ内部のレンズが露出する様に置く。次にヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42をヘッドマウントディスプレイ下部に接する様に折り曲げ、それぞれ左右の親指で押さえる。(
図12)
【0026】
同様にヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44をヘッドマウントディスプレイ上部に接する様に折り曲げ、それぞれ左右の人差し指で押さえるように持つ。(
図13)
【0027】
ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42およびヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44を指で押さえる代わりに、ヘッドマウントディスプレイ下部もしくはヘッドマウントディスプレイ上部もしくはその両方に
防汚用シート固定器具を接着し、これを用いて
防汚用シートを固定しても良い。
図14はヘッドマウントディスプレイ下部に
図8〜
図11で示した
防汚用シート固定器具を接着した例である。
【0028】
図15は、
図14の例に於いて、
図6で示した側頭部固定ベルト覆被部分61および頭頂部固定ベルト覆被部分62を有した
防汚用シートを装着した例である。
【0029】
本発明によれば、ヘッドマウントディスプレイを頭部に装着する際に
防汚用シートが顔面と接触し、摩擦力161によって
防汚用シートをヘッドマウントディスプレイ上方向にずらす力162が働くが、
防汚用シートのヘッドマウントディスプレイ上部固定部分及びヘッドマウントディスプレイ下部固定部分がそれぞれヘッドマウントディスプレイの上部及び下部に固定されている為、
防汚用シートをヘッドマウントディスプレイに押さえる力163が働き、
防汚用シートが上方にズレることなくヘッドマウントディスプレイを装着することができる。(
図17)
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の
防汚用シートは、ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11を覆うように使用することで、ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッド11に汚れ等が付着することを防ぐ
防汚用シートとして利用することができる。不織布等の加工しやすい素材を使用することで、容易に大量生産でき、安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0031】
11 フェイスパッド
12 側頭部固定ベルト
13 頭頂部固定ベルト
14 レンズ
21 フェイスパッドとマスクとの間の摩擦力
22 マスクを押し下げる力
41 目出し部分
42 ヘッドマウントディスプレイ下部固定部分
43 切り欠き
44 ヘッドマウントディスプレイ上部固定部分
51 切り欠き
61 側頭部固定ベルト覆被部分
62 頭頂部固定ベルト覆被部分
71 橋梁部分
141
防汚用シート固定器具
161 額と
防汚用シートとの間の摩擦力
162
防汚用シートを押し上げる力
163
防汚用シートを押さえる力
【要約】
【課題】
ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッドの汚れを防ぎ、ヘッドマウントディスプレイ装着時にズレにくい
防汚用シートを安価で提供する。
【解決手段】
ヘッドマウントディスプレイのフェイスパッドを覆う事ができる大きさの防汚用
シートに於いて、
防汚用シート上部にヘッドマウントディスプレイ上部固定部分44および
防汚用シート下部にヘッドマウントディスプレイ下部固定部分42を設け、それぞれヘッドマウントディスプレイの上部と下部に固定することで、
防汚用シートのズレを軽減する。
【選択図】
図4