特許第6330167号(P6330167)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330167
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ステレオマイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 5/027 20060101AFI20180521BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H04R5/027 Z
   H04R3/00 320
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-163557(P2014-163557)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2015-111812(P2015-111812A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2017年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2013-231998(P2013-231998)
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−105415(JP,U)
【文献】 特開2008−061186(JP,A)
【文献】 特開2013−229773(JP,A)
【文献】 特開昭57−115099(JP,A)
【文献】 特開2012−191336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0014419(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 5/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無指向性マイクロホンユニットと、
2つの双指向性マイクロホンユニットと、
を有するステレオマイクロホンであって、
上記双指向性マイクロホンユニットは、それぞれの指向軸が上記ステレオマイクロホンの指向特性の中心軸に対して、同一平面内において所定の角度を形成するように配置されていて、
上記無指向性マイクロホンユニットの音響端子は、上記双指向性マイクロホンユニットの音響端子と近接して配置されている、
ことを特徴とするステレオマイクロホン。
【請求項2】
上記双指向性マイクロホンユニットは、リボンマイクロホンユニットであって、
上記無指向性マイクロホンユニットの音響端子は、上記リボンマイクロホンユニットの振動板の長手方向の中間付近に位置するように配置されている、
請求項1記載のステレオマイクロホン。
【請求項3】
上記無指向性マイクロホンユニットの出力レベルは可変可能であって、
上記無指向性マイクロホンユニットの出力レベルに応じて指向性が変化する、
請求項1記載のステレオマイクロホン。
【請求項4】
上記双指向性マイクロホンユニットの指向軸の向きは、それぞれ独立して可変可能である、
請求項1記載のステレオマイクロホン。
【請求項5】
上記無指向性マイクロホンユニットは、上記双指向性マイクロホンユニットのそれぞれの指向軸に直交する軸が交差する点がある側に配置されている、
請求項1記載のステレオマイクロホン。
【請求項6】
上記各双指向性マイクロホンユニットのそれぞれが有する2つの音響端子は、1の音響端子同士は互いに近接し、他の音響端子同士は互いに離間している、
請求項1記載のステレオマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオ収音をすることができるステレオマイクロホンに関するものであって、詳しくは、高い周波数の音を収音するときにも指向軸が外れることがなく、また、左右それぞれの指向角を独立して可変させることができるステレオマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステレオ音を収音するためにステレオマイクロホンが用いられる。ステレオマイクロホンには、複数の方式が知られている。例えば、M(ミッド)信号に対してS(サイド)信号を加減算して、L(左)信号とR(右)信号を演算により得るMS方式のステレオマイクロホンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、XY方式のステレオマイクロホン(以下「XYステレオマイクロホン」という。)も知られている。XYステレオマイクロホンは、2つの単一指向性マイクロホンユニットを備えている。各単一指向性マイクロホンユニットのそれぞれの指向軸は、収音方向に対して、所定の角度を形成するように構成される。XYステレオマイクロホンは、各単一指向性マイクロホンユニットから出力される信号を合成することで、ステレオ信号を得るものである。
【0004】
ところで、単一指向性マイクロホンユニットを用いることなく、マイクロホンユニットの指向性を単一指向性にする方法がある。例えば、無指向性マイクロホンユニットの出力信号と双指向性マイクロホンユニットの出力信号を合成すると、その指向性は、単一指向性になる。この方法による出力信号は、単一指向性マイクロホンユニットの出力信号と同様の特性を備える信号になる。
【0005】
無指向性コンデンサマイクロホンユニットは、低周波数帯域から高周波数帯域まで変動の少ない良好な周波数応答を有している。また、双指向性リボンマイクロホンユニットは、良好な指向周波数応答を有している。したがって、無指向性マイクロホンユニットと双指向性マイクロホンユニットを組み合わせて構成した単一指向性マイクロホンユニットは、良好な周波数応答と指向性を有する。
【0006】
そこで、XYマイクロホンにおいて、上記のような組み合わせの単一指向性マイクロホンユニットを用いれば、良好な周波数応答と良好な指向性を有するステレオマイクロホンを得られる。そのためには、無指向性マイクロホンユニットと双指向性マイクロホンユニットの組を、左右一組ずつ配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−174136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の組み合わせによる単一指向性マイクロホンユニットを用いてXYステレオマイクロホンを構成する場合、新たな課題が生ずる。上記の組み合わせによる単一指向性のマイクロホンユニットでは、無指向性マイクロホンユニットの音響端子と双指向性マイクロホンユニットの音響端子のそれぞれ位置が相互に異なる。音響端子の位置が異なる場合(音響端子がずれている場合)、指向軸には周波数依存性があるため、それぞれの音響端子において収音される音は特性が異なった音になる。したがって、このような単一指向性マイクロホンユニットを用いたXYステレオマイクロホンでは、左右の指向軸が音源方向(収音方向)から外れた状態で収音されることになる。特に、波長が短くて周波数が高い音波は、指向性が鋭いため、本来の収音方向から外れた状態になりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は、高い周波数の音を収音するときにも指向軸が外れることなく、また、左右それぞれの指向性を独立して可変させることができるステレオマイクロホンを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、無指向性マイクロホンユニットと、2つの双指向性マイクロホンユニットと、を有するステレオマイクロホンであって、上記双指向性マイクロホンユニットは、それぞれの指向軸が上記ステレオマイクロホンの指向軸に対して、同一平面内において所定の角度を形成するように配置されていて、上記無指向性マイクロホンユニットは、音響端子が上記双指向性マイクロホンユニットの音響端子と近接して配置されている、ことを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い周波数の音を収音するときにも指向軸が外れることなく、また、左右それぞれの指向性を独立して可変させることができる。さらに、従来の単一指向性マイクロホンユニットでXYステレオマイクロホンを構成した場合に比べ、無指向性マイクロホンユニットを1つにすることができるステレオマイクロホンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るステレオマイクロホンの実施形態を示す平面図である。
図2】上記ステレオマイクロホンの側面図である。
図3】上記ステレオマイクロホンが備える単一指向性ユニットの例を示す外観図である。
図4】上記ステレオマイクロホンが備える双指向性ユニットの例を示す、(a)正面図、(b)側面図、(c)平面図、である。
図5】上記ステレオマイクロホンの回路構成の例を示す回路図である。
図6】上記ステレオマイクロホンと各マイクロホンユニットの周波数応答の例であって、(a)コンデンサマイクロホンユニットの周波数応答の例、(b)リボンマイクロホンユニットの周波数応答の例、(c)組み合わせによるマイクロホンユニットの周波数応答の例、を示す図である。
図7】上記ステレオマイクロホンが備える各マイクロホンユニットの指向特性の例であって(a)コンデンサマイクロホンユニットの指向特性の例、(b)リボンマイクロホンユニットの指向特性の例、(c)組み合わせによるマイクロホンユニットの指向特性の例、を示す図である。
図8】上記ステレオマイクロホンの指向特性の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るステレオマイクロホンの実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るステレオマイクロホン100の構成図である。図1は、ステレオマイクロホン100を上方から見た平面図である。図1において、ステレオマイクロホン100の筐体は、図示を省略している。ステレオマイクロホン100は、1つのコンデンサマイクロホンユニット10と、2つのリボンマイクロホンユニット20を用いて構成されている。コンデンサマイクロホンユニット10は無指向性マイクロホンユニットである。リボンマイクロホンユニット20は、双指向性マイクロホンユニットである。
【0014】
図1に示すように、ステレオマイクロホン100の指向特性の中心軸D1は、収音方向Sに向いている。2つのリボンマイクロホンユニット20のそれぞれの指向軸D2は、指向特性の中心軸D1に対して、同一平面上において所定の角度を形成している。コンデンサマイクロホンユニット10は、リボンマイクロホンユニット20の2つの指向軸D2が、同一平面上で形成する角度範囲内に配置されている。コンデンサマイクロホンユニット10は、リボンマイクロホンユニット20よりも指向特性の中心軸D1側に配置されている。
【0015】
図1のリボンマイクロホンユニット20の指向軸D2は、指向特性の中心軸D1から左右方向にそれぞれ60°ずつ傾いている。2つの指向軸D2が形成する角度は、図1に示すように、120°であり、広がりをもっている。なお、収音方向Sに対する指向軸D2の角度は45°から60°の間が適している。
【0016】
また、図1に示すように、コンデンサマイクロホンユニット10は、リボンマイクロホンユニット20の近傍に配置されている。具体的には、コンデンサマイクロホンユニット10は、リボンマイクロホンユニット20の各指向軸D2と直交する軸を考えた場合に軸同士が交差する点が存在する側に配置されている。
【0017】
ここで、コンデンサマイクロホンユニット10と、リボンマイクロホンユニット20について説明する。図3は、コンデンサマイクロホンユニット10の外観図である。コンデンサマイクロホンユニット10は無指向性マイクロホンユニットである。コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子は、図3に正対した左方向端部付近に位置している。
【0018】
図4は、リボンマイクロホンユニット20の外観を示す図である。図4(a)は正面図、図4(b)は側面図、図4(c)は平面図である。図4(b)に示すように、リボンマイクロホンユニット20は、所定の長さを有するリボン形振動板21が前後に配置されている。リボン形振動板21の外側には、それぞれのリボン形振動板21を保護する保護板23が配置されている。図4(a)に示すように、保護板23には複数の孔24が形成されている。この孔24を通過した音波がリボン形振動板21を振動させる。したがって、リボンマイクロホンユニット20の音響端子は、2つのリボン形振動板21の長手方向のそれぞれに形成される。つまり、リボンマイクロホンユニット20は、リボン形振動板21が振動する方向の一方の側に一の音響端子である第1の音響端子が形成されていて、他方の側に他の音響端子である第2の音響端子が形成されている。
【0019】
図1に戻る。リボンマイクロホンユニット20が有する2つの音響端子のうち、第1の音響端子は、ステレオマイクロホン100の中心側に向いている。第1の音響端子は、ステレオマイクロホン100の平面視における中心近くに存在する。また、第2の音響端子は、ステレオマイクロホン100の外側に向いている。第2の音響端子は、ステレオマイクロホン100の平面視における外側に存在する。
【0020】
図2は、ステレオマイクロホン100を側面図である。図2は、図1に示した矢印Aの方向からステレオマイクロホン100を見た図である。図2に示すように、リボンマイクロホンユニット20とコンデンサマイクロホンユニット10の相対的な位置が固定されている。すなわち、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子がリボンマイクロホンユニット20の振動板の長手方向の中間付近にあるように、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20は固定されている。
【0021】
図1および図2から明らかなように、リボンマイクロホンユニット20の振動板の長手方向を垂直方向とした場合の水平方向の面(水平面)内において、各リボンマイクロホンユニット20のそれぞれの第1の音響端子同士の距離は短い。すなわち、ステレオマイクロホン100は、2つのリボンマイクロホンユニット20のそれぞれの第1の音響端子が近接している。一方、リボンマイクロホンユニット20のそれぞれの第2の音響端子同士は、水平面内において所定の広がりを形成する方向に向いている。すなわち、ステレオマイクロホン100は、2つのリボンマイクロホンユニット20のそれぞれの第2の音響端子が離間している。
【0022】
また、図3を用いて説明したとおり、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子は、リボンマイクロホンユニット20の振動板の長手方向を垂直方向とした場合の水平方向の面であり、かつ、リボンマイクロホンユニット20を含む面内に配置されている。すなわち、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子は、リボンマイクロホンユニット20の第1音響端子と第2の音響端子のそれぞれに近接する位置に配置されている。
【0023】
リボンマイクロホンユニット20の第1の音響端子と第2の音響端子は、各指向軸D2を含む同一平面内にあり、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子は、各リボンマイクロホンユニット20のそれぞれの第1の音響端子及び第2の音響端子に近接する位置に配置されている。コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子とリボンマイクロホンユニット20の各第2の音響端子は、近接しているので同じ音を収音する。コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子とリボンマイクロホンユニット20の各第1の音響端子と各第2の音響端子の配置を、上記の配置のようにすることで、指向軸D2を持つ単一指向性マイクロホンと同様の指向性を実現することができる。
【0024】
ここで音響端子について説明する。この実施形態において音響端子とは、コンデンサマイクロホンユニット10およびリボンマイクロホンユニット20のそれぞれに対して実効的に音圧を与える空気の位置を指す。言い換えれば、音響端子とは、各マイクロホンユニットが備えるそれぞれの振動板と同時に動く空気の中心位置である。いうなれば、各マイクロホンユニットに対する音響的な中心である。
【0025】
上記のとおり、この実施形態において、左右2つのリボンマイクロホンユニット20は、1つの無指向性のコンデンサマイクロホンユニット10と近接して配置されている。そのため、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子とリボンマイクロホンユニット20の第1の音響端子は近接する。同様に、リボンマイクロホンユニット20の第2の音響端子もコンデンサマイクロホンユニット10の音響端子に近接する。このとき、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20が実効的に受ける音波の音圧は等価であり、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20は、指向軸D2方向において、同じ音波を収音している。そのため、左右それぞれのリボンマイクロホンユニット20の信号出力は、1つのコンデンサマイクロホンユニット10の信号出力と加算される。
【0026】
このことによって、この実施形態における複数のマイクロホンユニットの組み合わせは、指向軸D2を持つ2つの単一指向性マイクロホンとして動作するため、ステレオマイクロホン100としての指向特性を有する。
【0027】
また、2つのリボンマイクロホンユニット20は、指向特性の中心軸D1に対して線対称に配置される。そのため、2つのリボンマイクロホンユニット20のそれぞれの音響端子の位置は、中心軸D1に対してずれていない。したがって、それぞれのリボンマイクロホンユニット20とコンデンサマイクロホンユニット10の組み合わせにより構成される2つの単一指向性マイクロホンユニットは、同じ特性になる。
【0028】
ここで、コンデンサマイクロホンユニット10の周波数応答とリボンマイクロホンユニット20の周波数応答、および、これらの組み合わせにより構成されるステレオマイクロホン100の周波数応答について説明する。図6は、各周波数応答の例を示す図である。図6(a)は、コンデンサマイクロホンユニット10の周波数応答の例を示す図である。図6(b)は、リボンマイクロホンユニット20の周波数応答の例を示す図である。図6(c)は、ステレオマイクロホン100の周波数応答の例を示す図である。
【0029】
無指向性であるコンデンサマイクロホンユニット10は、弾性制御型である。したがって、コンデンサマイクロホンユニット10の周波数応答は、図6(a)に示すように、共振周波数fr以下の周波数帯域において出力レベルがほぼ一定であり、周波数の変化に対して安定している。一方、共振周波数fr1よりも高い周波数帯域では、周波数の上昇変動に対して出力レベルの変化が大きい。共振周波数fr1よりも高い周波数に対しては、出力レベルが急激に低下している。この変化量は、概ね−12dB/oct(1オクターブ当たり−12dBの低下)である。
【0030】
また、双指向性であるリボンマイクロホンユニット20は、質量制御型である。したがって、リボンマイクロホンユニット20の周波数応答は、図6(b)に示すように、共振周波数fr2以上の周波数帯域において出力レベルがほぼ一定であり、周波数の変化に対して安定している。一方、共振周波数fr2よりも低い周波数帯域では、周波数変動に対する出力レベルの変化が大きい。この変化量は、概ね12dB/oct(1オクターブ当たり12dBの上昇)である。
【0031】
ステレオマイクロホン100は、弾性制御型と質量制御型のマイクロホンユニットを組み合わせて構成されている。そこで、ステレオマイクロホン100の周波数応答は、図6(c)に示すように、弾性制御型と質量制御型の相反する周波数応答を合わせたような周波数応答になる。すなわち、ステレオマイクロホン100は、低域から高域までの広い周波数帯域において出力レベルの変動が少なく平坦で安定した周波数特性を持つ。
【0032】
なお、図6(c)に示すように、ステレオマイクロホン100の周波数応答は、低域の共振周波数fr2よりも低い周波数帯域および高域の共振周波数fr1よりも高い周波数帯域のそれぞれにおいて出力レベルが変化する。しかし、この変化量は、図6(a)および図6(b)に示した周波数応答における変化量と比べると緩やかであって、概ね6dB/octである。すなわち、ステレオマイクロホン100における周波数応答の変化は、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20の単独の周波数応答における変化に比べて、およそ1/2になる。ステレオマイクロホン100は、上記のような周波数応答を有しているので、他の方式に比べて平坦な周波数応答を実現でき、高い周波数の音波も、指向軸が外れることなく収音することができる。
【0033】
次に、ステレオマイクロホン100の指向特性について説明する。図7は、各指向特性の例を示す図である。図7(a)は、コンデンサマイクロホンユニット10の指向特性の例を示す図である。図7(b)は、リボンマイクロホンユニット20の指向特性の例を示す図である。図7(c)は、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20を組み合わせたマイクロホンユニットの指向特性の例を示す図である。
【0034】
図7(a)に示すようにコンデンサマイクロホンユニット10は無指向性であるから、全方向において音を捉える。図7(b)に示すようにリボンマイクロホンユニット20は双指向性であるから、音源方向と音源の反対方向の音を強く捉える。図7(c)は、無指向性と双指向性を組み合わせた特性であって、音源方向からの音を強く捉えるいわゆる単一指向性になる。すなわち、コンデンサマイクロホンユニット10とリボンマイクロホンユニット20を組み合わせたマイクロホンユニットの指向特性は、単一指向性になる。
【0035】
図8は、ステレオマイクロホン100の指向特性の例を示す図である。図8に示すように、ステレオマイクロホン100の指向特性は、コンデンサマイクロホンユニット10と1のリボンマイクロホンユニット20との組み合わせによる右チャンネル31の単一指向特性と、コンデンサマイクロホンユニット10と他のリボンマイクロホンユニット20との組み合わせによる左チャンネル32の単一指向性と、を組み合わせた指向特性になる。
【0036】
次に、ステレオマイクロホン100の回路構成について説明する。図5は、ステレオマイクロホン100の回路構成を示す回路図である。図5に示すように、ステレオマイクロホン100は、コンデンサマイクロホンユニット10の出力部を2つの系統に分離している。分離されたコンデンサマイクロホンユニット10のそれぞれ出力端は、各リボンマイクロホンユニット20の出力端と一緒にRchとLchを構成している。コンデンサマイクロホンユニット10の分離された出力部には、各系統に可変抵抗VR2と可変抵抗VR3が接続される。この可変抵抗VR2と可変抵抗VR3によって、コンデンサマイクロホンユニット10の出力信号のレベルは可変可能であって、分離されたそれぞれの出力が別々に独立して調整できるようになっている。また、2つのリボンマイクロホンユニット20の出力部にも、可変抵抗VR1と可変抵抗VR4が接続されている。この可変抵抗VR1と可変抵抗VR4によって、各リボンマイクロホンユニット20の出力信号は、それぞれを独立して調整可能になっている。
【0037】
コンデンサマイクロホンユニット10の一方の系統である出力端(PIN4)とリボンマイクロホンユニット20の一方の出力端(PIN5)からの出力信号によって、ステレオマイクロホン100の右チャネル(Rch)の出力信号が構成される。また、コンデンサマイクロホンユニット10の他方の出力系統である出力端(PIN2)とリボンマイクロホンユニット20の他方の出力端(PIN3)からの出力信号によって、ステレオマイクロホン100の左チャネル(Lch)の出力信号が構成される。
【0038】
以上の構成を備えるステレオマイクロホン100は、1つのコンデンサマイクロホンユニット10から出力される信号レベルを分離し、RchとLchとして利用できる。また、分離した出力信号のそれぞれのレベルは、独立して変更することができる。したがって、ステレオマイクロホン100の指向性は、コンデンサマイクロホンユニット10の出力レベルを変更することで変化する。
【0039】
具体的には、コンデンサマイクロホンユニット10からの出力信号レベルをリボンマイクロホンユニット20からの出力信号レベルに対して相対的に大きくすると、ステレオマイクロホン100の出力信号における無指向性成分が大きくなる。その結果、ステレオマイクロホン100の指向性はサブカーディオイドになる。
【0040】
また、コンデンサマイクロホンユニット10から出力される信号レベルをリボンマイクロホンユニット20から出力される信号レベルに対して相対的に小さくすると、ステレオマイクロホン100の出力信号における無指向性成分が小さくなる。これによって、ステレオマイクロホン100の指向性はハイパーカーディオイドになる。
【0041】
また、各リボンマイクロホンユニット20から出力される信号レベルをそれぞれ変化させると、ステレオマイクロホン100の指向特性の中心軸(収音軸)D1の方向を変化させることができる。すなわち、左右それぞれの音の大きさが変化するため、収音された音の左右のバランスが調整できる。
【0042】
以上説明したステレオマイクロホン100によれば、良好な周波数応答と指向性のXYステレオ方式を実現することができる。すなわち、ステレオマイクロホン100は、収音方向に対する水平面内の左右において、粒子速度成分を双指向性のリボンマイクロホンユニット20が検出し、これに対して無指向性のコンデンサマイクロホンユニット10の音声信号を、それぞれ加算する。これによって、ステレオマイクロホン100は、無指向性マイクロホンユニットが1つにも関わらず、単一指向性マイクロホンユニットを組み合わせたときと同様のステレオ収音を可能にする。
【0043】
また、ステレオマイクロホン100によれば、リボンマイクロホンユニット20の音響端子と、コンデンサマイクロホンユニット10の音響端子を近接させて配置することができる。これによって、ステレオマイクロホン100では、高い周波数を収音するときにも、指向軸が外れずに収音することができる。
【0044】
また、ステレオマイクロホン100は、無指向性成分と双指向性成分の合成比を左右それぞれにおいて可変できるから、全体の指向性を左右独立して可変できる。また、ステレオマイクロホン100は、3つのマイクロホンユニットを備えているので、それぞれの出力レベルを独立して可変することができる。
【0045】
なお、2つのリボンマイクロホンユニット20が形成する角度は、45°から60°に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意の角度に設定することができる。
【符号の説明】
【0046】
10 コンデンサマイクロホンユニット
20 リボンマイクロホンユニット
100 ステレオマイクロホン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8