(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330171
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】脚部アジャスタ
(51)【国際特許分類】
A47B 91/02 20060101AFI20180521BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20180521BHJP
F16B 12/44 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
A47B91/02
F16B7/18 A
F16B12/44 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-119953(P2013-119953)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-236801(P2014-236801A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】592193535
【氏名又は名称】タニコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【弁理士】
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】中川 芳典
(72)【発明者】
【氏名】大谷 祐次
(72)【発明者】
【氏名】水上 博之
(72)【発明者】
【氏名】水野 竜太
【審査官】
渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−022551(JP,U)
【文献】
米国特許第03045389(US,A)
【文献】
特開2000−000121(JP,A)
【文献】
特開2001−104077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/02
A47B 9/18−9/20
F16B 7/18
F16B 12/44
F16B 37/04−37/06
E04G 1/32
E04G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚本体部の端部から所定の距離に雌ねじ部材が配置されるようにした中空の前記脚本体部と、
雄ねじ部を有するレベリング部と、
前記雌ねじ部材を上下で挟んだ非一体構成の上抑え部材及び下抑え部材を含む抑え部材であって、前記上抑え部材及び前記下抑え部材の間を少なくとも前記雌ねじ部材の高さ離すことにより、前記上抑え部材及び前記下抑え部材のいずれの部分も前記端部からの高さ方向で重複することなく、前記雌ねじ部材の上方に前記上抑え部材を、前記雌ねじ部材の下方に前記下抑え部材を配置した前記抑え部材と、を備えた脚部アジャスタであって、
前記レベリング部の雄ねじ部が前記中空の脚本体部の内部にある状態で前記脚本体部が使用されることを特徴とする脚部アジャスタ。
【請求項2】
前記抑え部材のうちの一部は前記雌ねじ部材と溶接止めされている、請求項1に記載の脚部アジャスタ。
【請求項3】
前記レベリング部の底部形状が規格工具に適合するように加工されている、請求項1又は2に記載の脚部アジャスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量のある装置又は機器類に取り付けられ、当該装置又は機器類が所定の位置になるよう高さ調整できるようにするレベリング部を備えた脚部アジャスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、テーブル等の家具を含む様々な被支持対象物の水平レベルを出したり或いは被支持対象物を所望の高さに維持するために、被支持対象物を支持する脚体の下端に高さ調節用のアジャスタが設けられている。アジャスタは、例えば、内周面に雌ねじ部を有する筒状の受け具を固定し、この受け具の雌ねじ部に対して、床面に接地する接地部の上面に上向きに突設した雄ねじ部のアジャスタボルトを下方から螺合させるという構成のアジャスタが開示されている(例えば、下記特許文献1)。受け具に対するアジャスタボルトのねじ込み量を加減することにより被支持対象物の高さ調節が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3106411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したアジャスタ構成の場合、アジャスタボルトを軸線回りに回転させるに従いねじ部が露出することになる(上記特許文献1の
図1及び
図2参照)。そのため、埃や油等が充満する室内でこのようなねじ部が露出したアジャスタボルトを使用した場合、ねじ部に油や塵などが付着し易くなってしまい、清掃が面倒である。ねじ部が極端に汚れると、アジャスタボルトを回転することも困難になるという問題がある。
【0005】
例えば、調理店やコンビニエンスストア等に設置される厨房機器の一つとしてフライヤー機器がある。フライヤー機器は油槽に油を注いで加熱する。このため、フライヤー機器の使用に伴い、油槽内の油を熱したことで生じる油煙等がフライヤー機器の設置空間に充満し、フライヤー機器自体に付着する。フライヤー機器を支持する脚部にアジャスタがあれば、このアジャスタにも油や塵などが付着してしまっていた。
【0006】
このような商業用厨房機器の場合、一般社団法人 日本厨房工業会(JFEA)によって、食品設備機器の材料、構造、強度、性能、取り扱いおよび表示に関する最小限の要求事項として「業務用厨房設備機器共通基準」が定められており、この基準に準拠することが要求されている。特に、7.3.2章では、脚部に関する基準が定められていて、「機器の脚部は凹凸が少なく且つ容易に清掃できること。下部にごみが溜まりやすい脚やねじの露出する脚は認められない。」という基準を満たすことが必要である。
【0007】
したがって、厨房機器の脚部には、油塵が溜まりやすいねじ部が露出する構造は基本的に採用することができない。そこで雄ねじ部の外部露出を避けるために、アジャスタボルトと、雌ねじ部を有する受け具とを一体構造として形成することが考えられるが、製造コストが大幅に増えるので実用的ではない。
【0008】
また、厨房機器のフライヤー機器等はその油槽に大量の油が注入されるため、一般のテーブル等と異なりかなりの重量となる。ボルトのねじと受け具のねじ孔との螺合のみでフライヤー機器を支持する従来のような構成は、重量のある機器類のアジャスタとしてその耐荷重性において脆弱である。
【0009】
そこで、本発明は上述した問題点に鑑み為されたものであり、脚部のネジの露出がされることなく、耐荷重性に優れた脚部アジャスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る脚部アジャスタは、脚本体部の端部から所定の距離に雌ねじ部材が配置されるようにした中空の脚本体部と、雄ねじ部を有するレベリング部とを備え、脚本体部に固定された少なくとも1つの抑え部材が
雌ねじ部に隣接して配置され、レベリング部の雄ねじ部が脚本体部の内部にある状態でこの脚本体部が使用される構成であることを特徴とする。
【0011】
また、特に、複数の前記抑え部材によって雌ねじ部材を上下で挟むように配置されていること、及び、レベリング部の底部形状が規格工具に適合するように加工されていることを更なる特徴として含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る脚部アジャスタは、脚本体部の端部から所定の距離に雌ねじ部材が配置されるようにした中空の脚本体部と、雄ねじ部を有するレベリング部とを備え、レベリング部の雄ねじ部が脚本体部の内部にある状態でこの脚本体部が使用される構成であるため、脚本体部はレベリング部の雄ねじ部が外部に露出されないようにするカバー部材になる。このため、油煙等が充満した空間で脚部アジャスタが使用されたとしても、雄ねじ部に油や塵等が付着することはなく、清潔な状態のまま保持することができる。
【0013】
また、本発明に係る脚部アジャスタは、脚本体部に固定された少なくとも1つの抑え部材が
雌ねじ部に隣接して配置される構成であるため、脚部アジャスタが支持する被支持対象物(例えば、フライヤー機器等)の重量が大きくても、その重さを雄ねじ部と雌ねじ部材の螺合のみで支えるのではなく抑え部材と共にその被支持対象物の重量を受けることから耐荷重に優れ、脚部アジャスタの強度信頼性を向上させることができる。特に、複数の抑え部材によって雌ねじ部材を上下で挟むように配置されている構成にした場合、従来の脚部アジャスタよりも格段に耐荷重性が増大する。
【0014】
さらにまた、レベリング部の底部形状が規格工具に適合するように加工した構成の場合、規格工具を用いてレベリング部を容易に回転することが可能となり、雌ねじ部材との螺合を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態である脚部アジャスタの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態である脚部アジャスタの内部構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す脚部アジャスタ10の断面図である。脚部アジャスタ10は、雄ねじ部2を有するレベリング部1と、これに螺合する雌ねじ部材4を有する受け部とからなる。
図1は、レベリング部1の雄ねじ部2が雌ねじ部材4に螺合された状態を示している。なお、脚本体部5の上方(矢印方向)にフライヤー機器等の被支持対象物(図示せず)が設置される。
【0017】
図2は、
図1に示す脚部アジャスタ10において、レベリング部1が差し込まれる前であり、且つ、脚本体部5を分解したときの斜視図である。
図1及び
図2に示すとおり、レベリング部1は、円筒形状の金属部材を接地面から一定の高さを超えるとねじ部2を有するように加工されている。また、レベリング部1を回転させることによって被支持対象物の高さ調整を行うが、規格工具を用いた回転が容易に実現できるように、円筒の一部を規格工具の形状(例えば、六角柱)にして回転し易いようにしてもよい。本実施例のレベリング部1の場合、最下端、すなわち接地面に近い部分3が六角柱形状になるよう加工されている。
【0018】
脚本体部5は、レベリング部1の雄ねじ部2に螺合する雌ねじ部材4(すなわち、ナット)を内部に有し、L字型に曲げた2つの板金5a,5bを重ねると一つの四角柱が脚本体部として形成される。板金5a,5bは溶接止めする。さらに、脚本体部5よりも小さな板金部材をコの字型に加工した2つの抑え金具6a,6bで雌ねじ部材4を挟み込んで、脚本体部5内に収納される構造である。
なお、本実施例の場合、脚本体部5を加工し易い四角柱形状にしたが、必ずしもこれに限定するものではなく、例えば円柱に折り曲げ加工してもよい。この場合、抑え金具6a,6bも脚本体部に適宜あわせた形状にすればよい。
【0019】
雌ねじ部材4と下抑え金具6bは溶接固定される。本実施例の場合、金属の熱膨張等を考慮して上抑え金具6aと雌ねじ部材4とを溶接固定しておらず、これらの間はあそびとしての隙間を設けており、上抑え金具6a自体が脚本体部5の内面に溶接止めされる。必要に応じて上抑え金具6aについても雌ねじ部材4と溶接止めしてもよい。
【0020】
脚本体部5並びに下抑え金具6b及び上抑え金具6aは、雄ねじ部2の直径寸法にあわせた貫通孔を有し、雄ねじ部2が差し込まれて雌ねじ部材4に螺合するとねじ山が脚本体部5内に収納される。
図1は、雄ねじ部2が完全に差し込まれて脚本体部5と一体になったときの断面図を示す。
図1に示すとおり、雄ねじ部2は脚本体部5の内部に収容されて外部に露出しないため、油煙や塵などの汚染物質から保護される。その結果、脚部アジャスタ10により支持されるフライヤー機器等が長時間使用されて油煙等によって脚部アジャスタ10の清掃が必要になったときでもねじ山自体には汚染物質が付着しにくく、雄ねじ部2の回転を滑らかに動かすことができる。
【0021】
また、雌ねじ部材4を上下に挟み込んでいるコの字型の板金部材6a,6bは、雌ねじ部材4の抑え金具として機能するとともに、補強材としての役目も有する。すなわち、脚本体部5の上方(矢印方向)に設置される被支持対象物が重い場合でも、雌ねじ部材4にかかる被支持対象物の重量を下抑え金具6b及び上抑え金具6aと共に支持するため、脚部アジャスタ10の耐重量性能を従来よりも格段に向上させることが可能である。
【0022】
なお、脚アジャスタの他の実施形態としては、上述した板金部材以外にも、受け部(ナット部材)を、例えば、アルミや鉄若しくは他の金属の棒材の内部にねじを切った削り出しにより作製することができる。
【0023】
図4は、脚部アジャスタ10の耐重量性能を検証するために行った圧縮試験結果を示したグラフである。福井県工業技術センターの万能材料試験機を用いて、本実施例に係る脚部アジャスタ10の最大応力値を従来のアジャスタの場合と比較した。
なお、角パイプの上に取付けた状態の本実施例の脚部アジャスタ10に対し、速度は5mm/分で力を加えて圧縮を行った。その結果が
図4(a)である。なお、試験サンプルは3種類、すなわち3回の圧縮試験を実行した。
【0024】
本実施例の脚部アジャスタ10は、上述したように雌ねじ部材4の上下に2つの抑え金具6a,6bを配設する。この2つの抑え金具の有効性を確認するため、1つの抑え金具、即ち、下抑え金具6bのみを有する脚部アジャスタを別途準備し、その圧縮試験も行った結果が
図4(b)である。さらに、
図4(c)は、
図3に示す脚部のねじ山が外部に露出している従来型のアジャスタに対して行った試験結果である。
図4(a)と同様に、
図4(b)及び
図4(c)においても試験サンプルは3種類とした。
【0025】
なお、
図4(a)〜(c)において、横軸のひずみ量[mm]は各グラフで同一尺度になっていないことに留意されたい。各構造のアジャスタについて、総計各3回の試験結果のひずみ量と応力値の関係を明確に把握する関係上、ひずみ量の大きな
図4(c)の尺度にあわせて
図4(a)及び図(b)を表示していないためである。
【0026】
各ケースの最大応力値を各サンプルについて測定した結果を次表に示す。
【0028】
各構造のアジャスタにおける各3回の試験のうち、
図4(a)では試験サンプル#2が最大応力値2413kgf、
図4(b)では試験サンプル#3が最大応力値1574kgf、
図4(c)では試験サンプル#3が最大応力値1023kgfであった。それぞれにおいて若干のばらつきはあるが、上下抑え金具有りケース(
図4(a))、下抑え金具のみ有りケース(
図4(b))、従来型アジャスタのねじ山露出タイプ(
図4(c))の順で最大応力値が高いことが確認できた。
【0029】
特に、本実施例の脚部アジャスタ10に相当する
図4(a)と、従来型アジャスタに相当する
図4(c)を比較すると、本実施例の脚部アジャスタ10は応力が大きくなってもひずみ量は小さい。従来型アジャスタが500kgfでおよそ1〜3mmひずむのに対し、本実施例の脚部アジャスタ10において1〜3mmのひずみ量が生じるのはおよそ1000〜2000kgfの応力まで耐えられることが検証できた。
【0030】
各3回の平均最大応力をみても、上下抑え金具有りケースが最も大きいながら、平均最大ひずみ量は従来型アジャスタのねじ山露出タイプより小さく抑えている。なお、上下抑え金具有りケースの平均最大ひずみ量(2.7mm)は、下抑え金具のみ有りケースの平均最大ひずみ量(1.9mm)よりも大きいが、単位応力あたりのひずみ量を計算すると、ほぼ同様の値であることがわかった。
【0031】
さらに、加重試験後のアジャスタの外観形状の変化をみると、
図4(a)に示す本実施例の構造の脚部アジャスタ10の場合、外観、ねじ部ともに変化はなかった。ただし、2000kgf以上の加重になると、脚本体部5が変形し始め、下抑え金具6bと雌ねじ部材4を結合している溶接部や、脚本体部5a,5bを溶接止めしている複数の箇所で、溶接割れが生じた。一方、
図4(c)に示すねじ山露出タイプの場合、アジャストボルトのねじ部接合部から破断し、ねじの軸線が15mm程度内側に絞られて傾斜していた。
【0032】
以上の結果より、従来の脚部アジャスタよりも本願発明の脚部アジャスタの方が圧縮に対して耐えられる荷重は大きく、より重い上部の被支持対象物を支えられること、及びその時のひずみ(変位)も従来品より小さいことが判明した。
【符号の説明】
【0033】
1 レベリング部
2 雄ねじ部
4 雌ねじ部材
5 脚本体部
6a 上抑え金具
6b 下抑え金具
10 脚部アジャスタ