特許第6330173号(P6330173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330173
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20180521BHJP
【FI】
   H04B7/0413
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-23958(P2014-23958)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-154122(P2015-154122A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「漏洩同軸ケーブルによる高密度配置リニアセルMIMOシステムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100109162
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 將行
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
(72)【発明者】
【氏名】侯 亜飛
(72)【発明者】
【氏名】塚本 悟司
(72)【発明者】
【氏名】有吉 正行
【審査官】 太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−090044(JP,A)
【文献】 特開2005−175678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の系統の信号について、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信をするための無線通信システムであって、
前記MIMO通信の信号を受信するための少なくとも1つの移動装置と、
両端に設けられる第1および第2の給電部と複数の漏洩スロットとを有する漏洩ケーブルと、
前記漏洩ケーブルをアンテナとして前記複数の系統の信号について前記MIMO通信の信号を送信するための基地局装置と、
前記基地局装置と、前記漏洩ケーブルの前記第1および第2の給電部との間にそれぞれ配置され、前記基地局装置から前記漏洩ケーブルに対して供給される送信信号の遅延を調整するための第1および第2の遅延調整手段と、
前記移動装置の位置に応じて、前記第1および第2の遅延調整手段の遅延量を制御する制御部とを備え
前記制御部は、前記移動装置の前記位置を検出するための位置検出手段を含み、
前記第1および第2の遅延調整手段による遅延量を、前記位置に対して定められた関数値となるように設定する、無線通信システム。
【請求項2】
前記関数値は、予め実施される測定、シミュレーション、または理論式計算のいずれかを含む推定に基づき、前記第1の給電部から供給される信号と前記第2の給電部から供給される信号の前記位置における遅延時間の差が、所定量以下となるように設定する、請求項記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記移動装置は、鉄道車両であって、
前記位置検出手段は、鉄道の運行管理システムからの情報に基づいて、前記位置を検出する、請求項記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記位置検出手段は、前記移動装置から送信され前記漏洩ケーブルを伝達してきた信号の前記第1および第2の給電部での到達時間差または電力差に基づいて、前記位置を検出する、請求項記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記移動装置は、前記MIMO通信の信号を送信する手段を備え、
前記基地局装置は、前記移動装置からの送信信号を受信する手段と、
前記漏洩ケーブルの前記第1および第2の給電部と、前記基地局装置の間にそれぞれ配置され、前記漏洩ケーブルで受信された信号の遅延を調整するための第3および第4の遅延調整手段を備え、
前記制御部は、前記移動装置の位置に応じて、前記第3および第4の遅延調整手段の遅延量を制御する、請求項1記載の無線通信システム
【請求項6】
複数の系統の信号について、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を、少なくとも1つの移動装置との間で行うための無線通信装置であって、
両端に設けられる第1および第2の給電部と複数の漏洩スロットとを有する漏洩ケーブルと、
前記漏洩ケーブルをアンテナとして前記複数の系統の信号について前記MIMO通信の信号を送信するための基地局装置と、
前記基地局装置と、前記漏洩ケーブルの前記第1および第2の給電部との間にそれぞれ配置され、前記基地局装置から前記漏洩ケーブルに対して供給される送信信号の遅延を調整するための第1および第2の遅延調整手段と、
前記移動装置の位置に応じて、前記第1および第2の遅延調整手段の遅延量を制御する制御部とを備え
前記制御部は、前記移動装置の前記位置を検出するための位置検出手段を含み、
前記第1および第2の遅延調整手段による遅延量を、前記位置に対して定められた関数値となるように設定する、無線通信装置。
【請求項7】
前記関数値は、予め実施される測定、シミュレーション、または理論式計算のいずれかを含む推定に基づき、前記第1の給電部から供給される信号と前記第2の給電部から供給される信号の前記位置における遅延時間の差が、所定量以下となるように設定する、請求項記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記移動装置は、鉄道車両であって、
前記位置検出手段は、鉄道の運行管理システムからの情報に基づいて、前記位置を検出する、請求項記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記位置検出手段は、前記移動装置から送信され前記漏洩ケーブルを伝達してきた信号の前記第1および第2の給電部での到達時間差または電力差に基づいて、前記位置を検出する、請求項記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記移動装置は、前記MIMO通信の信号を送信する手段を備え、
前記基地局装置は、前記移動装置からの送信信号を受信する手段と、
前記漏洩ケーブルの前記第1および第2の給電部と、前記基地局装置の間にそれぞれ配置され、前記漏洩ケーブルで受信された信号の遅延を調整するための第3および第4の遅延調整手段とを備え、
前記制御部は、前記移動装置の位置に応じて、前記第3および第4の遅延調整手段の遅延量を制御する、請求項記載の無線通信装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩ケーブルを介してMIMO(Multiple Input - Multiple Output)通信を行う無線通信システムおよび無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブルに代表される漏洩ケーブルは、高周波ケーブルに複数の小アンテナ(スロット)を設けたもので、スロットで送受信される高周波により、ケーブル沿いに連続的な無線エリアを形成可能である。このような漏洩同軸ケーブルによる無線通信は、たとえば、日本の東海道新幹線のデジタル列車無線にも利用されている(たとえば、非特許文献1を参照)。あるいは、屋内を無線LANシステムで面内にカバーするための方法として、漏洩同軸ケーブルを配置する方法も提案されている(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、MIMO伝送は送受それぞれ複数のアンテナを用いることによって同一周波数で複数の通信信号を多重伝送する技術である。漏洩ケーブルによる通信とMIMO伝送を組み合わせ、かつ1本の漏洩ケーブルでMIMO伝送を実現する方法が特許文献2に示されている。
【0004】
図4は、特許文献2に開示された、従来の無線システムの構成を示す概念図である。
【0005】
図4では、無線通信システム2000において、基地局装置2100の一方の系統の送信出力および受信入力は、漏洩ケーブル2110の一方の端点に設けられた給電装置2114−1に接続され、基地局装置2100の他方の系統の送信出力および受信入力は漏洩ケーブル2110の他方の端点に設けられた給電装置2114−2に接続される。ここで、給電装置2114−1および給電装置2114−2は、漏洩ケーブル2110へ基地局装置2100から送出される信号と、漏洩ケーブル2110から基地局装置2100へ伝達される信号を分離するための装置である。一方、MIMO方式の端末装置2200は2本のアンテナ2210−1および2210−2を備える。
【0006】
基地局装置2100には、信号S1,S2が供給される。基地局装置2100に入力された信号S1は、変調、増幅などの後、漏洩ケーブル110へ給電装置114−1から入力され、図1の左から右に向かって漏洩ケーブル110中を進行しながら、途中のスロット112−1,112−2,112−3より順次放射される。一方、基地局装置2100に入力された信号S2は、同様に変調、増幅などの後、漏洩ケーブル110へ給電装置114−2から入力され、図1の右から左に向かって漏洩ケーブル110中を進行しながら、途中のスロット112−3,112−2,112−1より順次放射される。
【0007】
放射された各送信信号は、空間で合成されて端末装置2200のアンテナ2210−1、アンテナ2210−2で受信される。端末装置2200の受信部は、受信された信号を系統毎に分離し、信号S1,S2を再生し出力する。
【0008】
一方、端末装置2200に入力された信号T1,T2は、変調、増幅などの後、アンテナ2210−1、アンテナ2210−2から送信される。アンテナ2210−1、アンテナ2210−2からの送信信号は、空間で合成され、漏洩ケーブル2110の各スロット2112−1,2112−2,2112−3に到達する。各スロットに到達後、左側に進行しながら合成された信号は、漏洩ケーブル2110の給電装置2114−1から基地局装置2100の一方の系統の受信入力で受信される。一方、各スロットに到達後、右側に進行しながら合成された信号は、漏洩ケーブル2110の給電装置2114−2から基地局装置2100の他方の系統の受信入力で受信される。基地局装置100の受信部は、受信された信号を系統毎に分離し、信号T1,T2を再生する。
【0009】
図5は、漏洩ケーブル2110における信号の伝達状況を、伝達関数によって詳細に示した説明図である。
【0010】
図5では、漏洩ケーブル2110のスロット数が3の場合について示しており、図5(a)はアンテナ2210−1との伝達関数を、図5(b)はアンテナ2210−2との伝達関数を表している。
【0011】
図5(a)に示されるように、給電装置2114−1,2114−2から入力された信号は、漏洩ケーブルのスロット2112−1,2112−2,2112−3を介してアンテナ2210−1に到達する。したがって、伝達関数hnm,kを、漏洩ケーブル2110の給電装置2114−nからスロット2112−mを介してアンテナ2210−kに到達する伝搬路の伝達係数とし、給電装置2114−1からの入力信号をX1、給電装置2114−2からの入力信号をX2とすれば、アンテナ2210−1での受信信号Y1は、式(1)で表される。
【0012】
【数1】
一方、図5(b)に示されるように、アンテナ2210−2での受信信号Y2は式(2)で表される。
【0013】
【数2】
各伝達関数hnm,kは、その伝達経路がそれぞれ異なるため独立な値をとり、その和もまた独立である。したがって、給電装置2114−1,2114−2からアンテナ2210―1,2210−2への伝達関数は、式(3)のチャネル行列によって表現できる。
【0014】
【数3】
ただし、以下のように定義されているものとする。
【0015】
【数4】
H11、H21、H12、H22の各要素は独立であるので、図5の構成により2×2のMIMO伝送が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2011-71704号公報
【特許文献2】特開2013-90044号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】岩永伸理、千田晴康、越馬淳、久保博嗣、「東海道新幹線デジタル列車無線システム」、三菱電機技報2009年6月号、pp.367-370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このような漏洩ケーブルの長さが、長くなり、たとえば、kmのオーダーになると、漏洩ケーブルの両端からの信号の遅延時間が無視できない大きさとなり、端末装置2200で受信する信号の受信品質が劣化していまうという問題がある。
【0019】
本発明は、上記課題を解決し、漏洩ケーブルに対する無線装置の位置関係によらず、常に良好なMIMO伝送を可能であり、かつ情報伝送効率も高い無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明の1つの局面に従うと、複数の系統の信号について、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信をするための無線通信システムであって、MIMO通信の信号を受信するための少なくとも1つの移動装置と、両端に設けられる第1および第2の給電部と複数の漏洩スロットとを有する漏洩ケーブルと、漏洩ケーブルをアンテナとして複数の系統の信号についてMIMO通信の信号を送信するための基地局装置と、基地局装置と、漏洩ケーブルの第1および第2の給電部との間にそれぞれ配置され、基地局装置から漏洩ケーブルに対して供給される送信信号の遅延を調整するための第1および第2の遅延調整手段と、、移動装置の位置に応じて、第1および第2の遅延調整手段の遅延量を制御する制御部とを備える。
【0022】
好ましくは、関数値は、予め実施される測定、シミュレーション、または理論式計算のいずれかを含む推定に基づき、第1の給電部から供給される信号と第2の給電部から供給される信号の位置における遅延時間の差が、所定量以下となるように設定する。
【0023】
好ましくは、移動装置は、鉄道車両であって、位置検出手段は、鉄道の運行管理システムからの情報に基づいて、位置を検出する。
【0024】
好ましくは、位置検出手段は、移動装置から送信され漏洩ケーブルを伝達してきた信号の第1および第2の給電部での到達時間差または電力差に基づいて、位置を検出する。
【0025】
好ましくは、移動装置は、MIMO通信の信号を送信する手段を備え、基地局装置は、移動装置からの送信信号を受信する手段と、漏洩ケーブルの第1および第2の給電部と、基地局装置の間にそれぞれ配置され、漏洩ケーブルで受信された信号の遅延を調整するための第3および第4の遅延調整手段を備え、制御部は、移動装置の位置に応じて、第3および第4の遅延調整手段の遅延量を制御する。
【0026】
この発明の他の局面に従うと、複数の系統の信号について、MIMO(Multiple Input Multiple Output)通信を、少なくとも1つの移動装置との間で行うための無線通信装置であって、両端に設けられる第1および第2の給電部と複数の漏洩スロットとを有する漏洩ケーブルと、漏洩ケーブルをアンテナとして複数の系統の信号についてMIMO通信の信号を送信するための基地局装置と、基地局装置と、漏洩ケーブルの第1および第2の給電部との間にそれぞれ配置され、基地局装置から漏洩ケーブルに対して供給される送信信号の遅延を調整するための第1および第2の遅延調整手段と、移動装置の位置に応じて、第1および第2の遅延調整手段の遅延量を制御する制御部とを備える。
【0028】
好ましくは、関数値は、予め実施される測定、シミュレーション、または理論式計算のいずれかを含む推定に基づき、第1の給電部から供給される信号と第2の給電部から供給される信号の位置における遅延時間の差が、所定量以下となるように設定する。
【0029】
好ましくは、移動装置は、鉄道車両であって、位置検出手段は、鉄道の運行管理システムからの情報に基づいて、位置を検出する。
【0030】
好ましくは、位置検出手段は、移動装置から送信され漏洩ケーブルを伝達してきた信号の第1および第2の給電部での到達時間差または電力差に基づいて、位置を検出する。
【0031】
好ましくは、移動装置は、MIMO通信の信号を送信する手段を備え、基地局装置は、移動装置からの送信信号を受信する手段と、漏洩ケーブルの第1および第2の給電部と、基地局装置の間にそれぞれ配置され、漏洩ケーブルで受信された信号の遅延を調整するための第3および第4の遅延調整手段とを備え、制御部は、移動装置の位置に応じて、第3および第4の遅延調整手段の遅延量を制御する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、移動局が両端給電部から等距離にない場合の、非対称な伝送遅延による伝送特性の劣化を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】無線通信システム1000の構成を示すブロック図である。
図2】端末装置200の位置と遅延時間との関係を説明するための概念図である。
図3】制御器130により制御される可変遅延器140−1、140−2の遅延量を示した図である。
図4】従来の無線システムの構成を示す概念図である。
図5】漏洩ケーブル2110における信号の伝達状況を、伝達関数によって詳細に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムについて、図に従って説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
【0035】
図1は、無線通信システム1000の構成を示すブロック図である。
【0036】
図1に示したのは、2×2のMIMO伝送を実現するシステムの構成の例である。
【0037】
基地局装置100には、信号S1および信号S2が供給される。基地局装置100に入力された信号S1は、変調、増幅などの後、信号X1として可変遅延器140−1を介して給電装置114−1から漏洩ケーブル110へ入力され、図1の左から右に向かって漏洩ケーブル110中を進行しながら、途中のスロット112−1,112−2,112−3より順次放射される。
【0038】
一方、基地局装置100に入力された信号S2は、同様に変調、増幅などの後、信号X2として可変遅延器140−2を介して給電装置114−2から漏洩ケーブル110へ入力され、図1の右から左に向かって漏洩ケーブル110中を進行しながら、途中のスロット112−3,112−2,112−1より順次放射される。
【0039】
放射された各送信信号は、空間で合成されて端末装置200のアンテナ210−1、アンテナ210−2で受信される。端末装置200の受信部は、受信された信号を系統毎に分離し、信号S1,S2を再生し出力する。
【0040】
一方、端末装置200に入力された信号T1,T2は、変調、増幅などの後、アンテナ210−1、アンテナ210−2から送信される。アンテナ210−1、アンテナ210−2からの送信信号は、空間で合成され、漏洩ケーブル110の各スロット112−1,112−2,112−3に到達する。各スロットに到達後、左側に進行しながら合成された信号は、漏洩ケーブル110の給電装置114−1から可変遅延器141−1を介して基地局装置100の一方の系統の受信入力で受信される。一方、各スロットに到達後、右側に進行しながら合成された信号は、漏洩ケーブル110の給電装置114−2から可変遅延器141−2を介して基地局装置100の他方の系統の受信入力で受信される。基地局装置100の受信部は、受信された信号を系統毎に分離し、信号T1,T2を再生する。
【0041】
なお、給電装置114−1および114−2の構成は、たとえば、サーキュレータを用いることができ、特許文献2に開示されたのと同様の構成とすることができる。
【0042】
なお、基地局装置100においては、複数のスロット112−1〜112−3から端末装置200へ送信される信号S1および信号S2にそれぞれ重み付け処理を行い、端末装置200側では信号分離のための処理を不要とする構成も好ましい。たとえば、このような重み付けは、マルチストリームのプリコーディングとして実行することができ、その重み付けの係数は、たとえば、端末装置200からのフィードバック情報に基づいて決定される構成とすることが可能である。
【0043】
一方、端末位置検出器120は、端末装置200の位置を、漏洩ケーブル110によって形成されるサービスエリアに固有の座標系を用いて検出する。
【0044】
図1では、給電装置114−1の位置を原点(x=0)とし、端末装置200の位置(x=D)を一次元の座標系で検出する例を示している。
【0045】
また、具体的な位置の検出方法としては、たとえば、以下のような方法が挙げられる。
【0046】
i)端末装置200に、GPS(Global Positioning System)などの測位装置が搭載されている場合、端末装置200から送信装置100に対して、測位装置で得られる位置情報(たとえば、緯度・経度情報)を送信する。送信装置100では、端末装置200からの位置情報を常時モニタする。あるいは、必要に応じて、送信装置100で、受信した位置情報により、位置をモニタする処理と、所定時間後の端末装置200の位置を推定する処理を組み合わせて、位置のモニタの頻度を低減するようにしてもよい。
【0047】
なお、測位装置としては、GPSに限らず、準天頂衛星、GLONASS、Galileo、Compassのような他の衛星測位システムに対する測位装置であってもよい。また、測位装置は、衛星測位システムに対応するものだけでなく、たとえば、他の無線ビーコン信号などを用いた測位システムであってもよい。
【0048】
ii)鉄道車両のように所定の軌道上を移動する移動体に搭載される端末装置であれば、走行中の移動体の位置(たとえば、車両の位置)を、運行管理システムなどが示すキロ程を検出する方法などを用いてもよい。運行管理システムが移動体の位置を検知する手法については、たとえば、以下の文献に開示がある。この場合、送信装置100は、運行管理システムから位置情報の送信を受ける運行管理システム外の装置であってもよいし、運行管理システムと連携して動作する運行管理システムの管理下の装置であってもよい。
【0049】
文献:特開2013−258847号公報明細書
iii)あるいは、端末装置200から漏洩ケーブル110に向けて信号を送信するシステムであれば、漏洩ケーブル110の両端からそれぞれ得られる受信信号の到達時間差、あるいは電力差を用いて推定する方式であってもよい。この場合、受信信号の到達時間を決定するためには、特に限定されないが、たとえば、給電装置114−1および給電装置114−2における計時装置が、制御器130との間で伝搬時間をキャンセルすることで時刻同期しており、この計時装置によりそれぞれ到達時刻を決定する構成としてもよい。または、給電装置114−1および給電装置114−2に対してブロードキャストされる時刻情報(たとえば、GPS衛星からの時刻情報や、デジタル放送の放送波に重畳される時刻情報など)に基づいて、それぞれ、給電装置114−1および給電装置114−2の計時装置において、時刻が調整されることとしてもよい。
【0050】
端末装置200からは、たとえば、所定の信号(パイロット信号など)が定期的に送信され、給電装置114−1および給電装置114−2は、この所定の信号が受信された時刻情報を、端末位置検出器120に通知する構成としてもよい。あるいは、この所定の信号が受信された時点の信号電力を、端末位置検出器120に通知する構成としてもよい。
【0051】
この場合、たとえば、到達時間差または受信電力差と、端末装置200の位置との関係を、予めテーブルにしておくことで、端末位置検出器120において、端末装置200の位置を検出することができる。
【0052】
以上のようにして、端末装置200の位置が特定されると、次に、制御器130は、端末位置検出器120が検出した端末位置に基づき、可変遅延器140−1、140−2,141−1,141−2の遅延量を制御する。
【0053】
図2は、端末装置200の位置と遅延時間との関係を説明するための概念図である。
【0054】
図2(a)のように、漏洩ケーブルの総延長に比較し、端末装置200と漏洩ケーブル110を結ぶ距離が十分短い場合、給電装置114−1、114−2から端末装置200に到達する信号の遅延時間は、漏洩ケーブル内の伝送距離に比例した伝送遅延DTと、ケーブルから端末装置200間の距離に比例した空間伝搬遅延DCの和で近似できる。
【0055】
ここで、図2(a)のように座標系を定め、給電装置114−1から給電された信号X1と、給電装置114−2から給電された信号X2が、位置xにある端末装置200で受信されるまでの遅延時間をそれぞれ求めると、図2(b)のように表される。空間伝搬遅延DCは共通であるので、両者の間には伝送遅延DTに起因して式(8)で表される差異Δτを生じる。
【0056】
【数5】
ただし、Lは給電装置114−1と114−2間の漏洩ケーブルの長さ、νは漏洩ケーブル内の信号伝搬速度である。
【0057】
一方、信号X1,X2は、一般に同一の変調周期、かつ互いに同期したタイミングで変調・送出され、受信側でもこれらを同期したタイミングのまま受信し、分離・再生する。信号X1,X2の間には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数多重)を用いる場合にはガードインターバル(遅延時間差を吸収するために設けられるため、伝送情報量に寄与しない冗長区間)程度の微小なタイミング誤差が許容される。しかしながら、これを超えて誤差が拡大すると大きく伝送特性が劣化することが知られる。
【0058】
ただし、列車との通信に用いる無線通信システムにおいては、漏洩ケーブルの長さが1km以上に及び、式(8)で与えられる遅延時間差Δτが最大で数μs程度に達するため、伝送特性が劣化するか、あるいは数μsに対応したガードインターバルを設けるために冗長性が高まり、情報伝送効率が低下することになる。
【0059】
なお、以上では、基地局装置100から送信し、端末装置200で受信する場合で説明したが、逆方向(端末装置200が送信、基地局装置100が受信)にも同様に、給電装置114−1と114−2にそれぞれ到達する信号には、遅延時間の相違が存在する。
【0060】
基地局装置100から端末装置200への送信(ダウンリンク)の際には、可変遅延器140−1、140−2が、図2に示すような遅延時間差をキャンセルするように遅延量を制御し、端末装置200から基地局装置100への送信(アップリンク)の際には、可変遅延器141−1、141−2が、図2に示すような遅延時間差をキャンセルするように遅延量を制御する。
【0061】
図3は、図2(a)に示したのと同一の座標系を使用した場合に、可変遅延器140−1、140−2,141−1、141−2の遅延量を示した図である。
【0062】
図3は、制御器130による遅延量制御の一例であり、制御器130は、端末位置検出器120が検出した端末位置に基づき、可変遅延器140−1、140−2、141−1,141−2の遅延量を制御する。
【0063】
図3では、座標xに対し図2(a)のような遅延量が得られるサービスエリアにおいて、位置xにおける端末装置200での信号X1、X2それぞれの受信タイミングが互いに等しくなるように制御する場合を示している。
【0064】
たとえば、図3中において、移動する端末装置200がx=Dの位置にある場合は、可変遅延器140−1の遅延量は可変遅延器140−2の遅延量よりも小さく設定される。結果として、位置x=Dにおいて、信号X1、X2それぞれの遅延量が互いに等しくなる。
【0065】
なお、制御としては、たとえば、位置x=Dにおいて、信号X1、X2それぞれの遅延量を完全に互いに等しくする必要まではなく、信号X1、X2それぞれの遅延量の差が所定の値以下となるように、遅延量を制御することとしたのでよい。特に、このような所定の値は、上述したOFDM通信方式を採用する場合は、ガードインターバルの時間よりも遅延時間の差が小さくなるようにすればよい。
【0066】
なお、図2(b)のような情報は、漏洩ケーブルの伝送遅延特性から計算(シミュレーション)により求める方法や、事前にサービスエリア内の受信信号に関する遅延時間を測定し、座標xの関数となるように記録しておく方法などを用いても良い。シミュレーションにあたっては、電波信号の空間での伝搬および漏洩ケーブル内での伝搬などによる遅延時間を周知の理論式に基づいて座標xの関数として算出してもよいし、あるいは、空間および漏洩ケーブル内の無線信号の伝搬に対して周知の電磁界分析によるシミュレーションを行って、遅延時間を座標xの関数として算出してもよい。また、たとえば、事前にサービスエリア内の受信信号に関する遅延時間を測定を、複数の所定の地点で行っておき、その測定を行った地点間に存在する地点については、シミュレーションにより補間するなど、事前の実測とシミュレーションとを組み合わせてもよい。
【0067】
また、移動する端末装置200の位置は、1次元で特定される場合だけでなく、たとえば、2次元の位置(x,y)で特定されるものであってもよい。その場合は、端末装置200の位置に応じて、可変遅延器140−1および可変遅延器140−2の遅延量をどのように設定するかは、たとえば、事前にサービスエリア内の遅延時間分布を測定し、座標位置(x,y)の関数となるように、各々の遅延量のテーブルを事前に求めておくようにしてもよいし、上述したシミュレーションによってもよい。
【0068】
また、図1の実施形態では、可変遅延器によって信号の遅延時間を制御する構成を示したが、これに拠らず、基地局装置100および端末装置200の変復調処理に用いるクロック信号のタイミングを制御して遅延時間を調整する構成も好ましい。たとえば、2つの異なる送信の系統を構成とし備えることとして、全く同じ信号をあるタイミングだけずらせて生成して送信し、または、2つの異なる受信の系統を構成として備えることとして、同じ信号をあるタイミングだけずらせて受信処理(復調)する、ようにしてもよい。
【0069】
また、図1の実施形態では、通信相手方の移動装置が1つである場合を示したが、複数の移動装置が周波数分割多元接続(FDMA)、時分割多元接続(TDMA)、あるいは符号分割多元接続(CDMA)などの多元接続方式を用いて基地局装置100と通信する場合には、移動局装置それぞれの位置に対応して決定される遅延時間を、各移動装置宛の送信信号あるいは各移動装置からの受信信号に対して設定する構成も好ましい。この時、周波数、時間、符号によって峻別される各移動装置との通信チャネル毎に、対応する遅延時間を設定する。
【0070】
以上のような構成により、移動する端末装置200に対する通信において、漏洩同軸ケーブルの両端給電部からの送信信号について、非対称な伝送損がある場合でも、伝送特性の劣化を改善できる。
【0071】
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
100 無線装置、110 漏洩ケーブル、112−1,112−2,112−3,112−4 スロット、114−1,114−2 給電装置、120 端末位置検出器、130 制御器、140−1,140−2,141−1,141−2 可変遅延器、200 移動端末装置、210−1,210−2 アンテナ、1000 無線通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5