特許第6330181号(P6330181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330181
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】アーム装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20180521BHJP
   B25J 18/02 20060101ALI20180521BHJP
   B25J 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B66F9/06 W
   B25J18/02
   B25J1/00
   B66F11/04
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-168125(P2016-168125)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-34931(P2018-34931A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2017年10月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】関 啓明
(72)【発明者】
【氏名】中山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】辻 一宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】垣内 聡
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−69545(JP,A)
【文献】 特開平9−71398(JP,A)
【文献】 特開昭64−60213(JP,A)
【文献】 特開2005−20853(JP,A)
【文献】 特開2007−236121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/06
B66F 11/04
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高所作業車のバケットの側壁に設けられる基部と、
退可能なアーム部と、を備え、
前記アーム部は、前記基部と連結し、前記バケットの側壁に沿って進退可能な第一アーム部と、前記第一アーム部に設けられ、前記第一アーム部が進退する方向と平行な方向において前記第一アーム部に対して進退可能であって、工具が取り付け可能な第二アーム部と、を有することを特徴とするアーム装置。
【請求項2】
前記工具は、前記第二アーム部の先端に取り付け可能となっており、
前記第一アーム部および前記第二アーム部がそれぞれ最も後退した状態において、前記第一アーム部が前記バケットの側壁の前面に位置し、前記第二アーム部の先端が前記バケットに乗る作業者の手が届く位置にあることを特徴とする請求項1記載のアーム装置。
【請求項3】
前記第一アーム部は、間隔を保って配される一対のプーリと、
一対の前記プーリに架け渡され、一対の架渡部を有する環状のベルトと、を備え、
一方の前記架渡部が前記基部に連結しており、
前記第二アーム部は、他方の前記架渡部に連結し、長手方向が前記架渡部に平行であるシャフトを備えていることを特徴とする請求項1または2記載のアーム装置。
【請求項4】
前記第一アーム部は、第一ねじ軸と、
前記基部と連結し、前記第一ねじ軸に取り付けられる第一ナットと、
前記第一ねじ軸に設けられ、前記第一ねじ軸の回転に伴って回転する第一歯車と、を備え、
前記第二アーム部は、前記第一ねじ軸と平行な方向に軸を有する第二ねじ軸と、前記第二ねじ軸に取り付けられる第二ナットと、前記第二ナットと連結し、前記第一歯車に噛み合って前記第一歯車の回転に伴って回転する第二歯車と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載のアーム装置。
【請求項5】
前記第一アーム部および前記第二アーム部がそれぞれ最も後退した状態において、前記基部が、前記一方の架渡部の前記アーム部の進退方向における前側の部分に連結し、前記シャフトの後側の部分が、前記他方の前記架渡部の前記アーム部の進退方向における後側の部分に連結していることを特徴とする請求項3記載のアーム装置。
【請求項6】
前記第一歯車は、前記第一ねじ軸のうち第一ナットより前側に設けられ、
前記第一アーム部および前記第二アーム部がそれぞれ最も後退した状態において、第一ナットが、第一ねじ軸の前側に位置し、第二ナットが、第二ねじ軸の前側に位置していることを特徴とする請求項4記載のアーム装置。
【請求項7】
前記基部は、前記バケットに対し移動可能であり、前記アーム部は、前記バケットの側壁に対し、傾斜可能であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のアーム装置。
【請求項8】
前記基部に操作部備え、
前記操作部に対して前記アーム部が進退する方向と平行な方向に力が作用すると、その力の向きに応じて前記アーム部が進退し、
前記操作部に対して前記基部が移動する方向と平行な方向に力が作用すると、その力の向きに前記基部および前記アーム部が移動し、
前記操作部に対して前記アーム部が傾斜する方向に力が作用すると、その力の向きに前記アーム部が傾斜することを特徴とする請求項7記載のアーム装置。
【請求項9】
前記操作部が、前記アーム部の傾斜に伴って傾斜することを特徴とする請求項8記載のアーム装置。
【請求項10】
前記操作部は柱状であって、その長手方向が前記アーム部の進退方向に平行となっていることを特徴とする請求項8または9記載のアーム装置。
【請求項11】
前記工具と、
前記工具自体を駆動させる工具駆動部を備え、
前記操作部に対してその軸を中心として回転させることにより、前記工具の駆動を操作することを特徴とする請求項10記載のアーム装置。
【請求項12】
前記工具と、
前記工具自体を駆動させる工具駆動部と、
前記工具の駆動を操作する工具操作部と、を備えることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6,7、8、9または10記載のアーム装置。
【請求項13】
前記工具操作部が、前記基部に備えられていることを特徴とする請求項12記載のアーム装置。
【請求項14】
記工具駆動部に作用する負荷に応じて、前記工具操作部の操作に対して抵抗を付与する抵抗付与手段備えることを特徴とする請求項12または13記載のアーム装置。
【請求項15】
前記工具操作部は、前記基部において回転可能に支持されるレバーからなり、
前記抵抗付与手段は、前記レバーの回転軸に平行な方向を軸として回転するリンク部と、前記リンク部を回転させる抵抗駆動部と、前記レバーと前記リンク部に連結する弾性部材と、前記工具駆動部にかかる負荷を計測する負荷計測部と、を備え、
前記レバーの回転より前記工具駆動部の駆動が制御され、
前記負荷計測部で計測される負荷の信号に基づいて、前記抵抗駆動部によりリンク部が回転し、前記弾性部材が伸縮することを特徴とする請求項14記載のアーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電設備などの工事に用いられるアーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電線などの配電設備に関する工事においては、主に、通電した状態で工事を行う間接活線工法が採用される。通常、間接活線工法では、複数の作業者が高所作業車のバケットに搭乗し、間接活線工具を支持して操作することにより工事が行われる。
ところで、電線などの配電設備は、高度成長期に設けられたものが多く、今後これらの維持補修作業がかなり増加することが予測されている。これに対し、配電設備に関する工事を行う作業者は、人口減などの理由により、年々減少しており、今後工事を行う作業者が不足することが予測されている。そのため、工事を効率化し、個々の工事に従事する作業者の数を削減することが望まれている。
【0003】
このような問題を解決するものとして、例えば特許文献1には、アームを備える配電作業ロボットが提案されている。
しかしながら、上記のような従来の配電作業ロボットは、非常に高価であり、工事件数に見合った台数を確保することができないという問題がある。また、従来の配電作業ロボットは、アームの操作が複雑であり、熟練した作業者でなければ適切に操作することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−076688号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低コストで製造することができ、工事に従事する作業者の数を削減することができるアーム装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
アーム装置は、高所作業車のバケットに設けられる基部と、基部に設けられ、進退可能なアーム部とを備え、アーム部が、基部に対して進退可能な第一アーム部と、第一アーム部に設けられ、第一アーム部が進退する方向と平行な方向において第一アーム部に対して進退可能であって、工具が取り付け可能な第二アーム部とを有している。
【0007】
アーム装置は、第一アーム部が、間隔を保って配される一対のプーリと、一対のプーリに架け渡され、一対の架渡部を有する環状のベルトとを備え、一方の架渡部が基部に連結しており、第二アーム部が、他方の架渡部に連結し、長手方向が架渡部に平行であるシャフトを備えるものであってもよい。
【0008】
アーム装置は、第一アーム部が、第一ねじ軸と、基部と連結し、第一ねじ軸に取り付けられる第一ナットと、第一ねじ軸に設けられ、第一ねじ軸の回転に伴って回転する第一歯車と、を備え、第二アーム部が、第一ねじ軸と平行な方向に軸を有する第二ねじ軸と、第二ねじ軸に取り付けられる第二ナットと、第二ナットと連結し、第一歯車に噛み合って第一歯車の回転に伴って回転する第二歯車とを備えるものであってもよい。
【0009】
アーム装置は、基部がバケットに対し移動可能であってもよい。
【0010】
アーム装置は、アーム部がバケットに対し傾斜可能であってもよい。
【0011】
アーム装置は、操作部を備え、操作部に対してアーム部が進退する方向と平行な方向に力が作用すると、その力の向きに応じてアーム部が進退し、操作部に対して基部が移動する方向と平行な方向に力が作用すると、その力の向きに基部およびアーム部が移動し、操作部に対してアーム部が傾斜する方向に力が作用すると、その力の向きにアーム部が傾斜するものであってもよい。
【0012】
アーム装置は、工具を操作する工具操作部を備えるものであってもよい。
【0013】
アーム装置は、工具操作部が、操作部であって、操作部に対して回転させる力が作用すると、工具が作動するものであってもよい。
【0014】
アーム装置は、工具を駆動する工具駆動部と、工具駆動部に作用する負荷に応じて、工具操作部の操作に対する抵抗を付与する抵抗付与手段とを備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
アーム装置は、従来の装置に比べ、非常に低コストで製造することができる。また、アーム装置によると、工事に従事する作業者の人数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】高所作業車のバケットに取り付けられた本発明の実施形態のアーム装置を示す側面図である。
図2】アーム装置を示す斜視図である。
図3】アーム装置を示す正面図である。
図4】アーム装置を示す側面図である。
図5】基部を拡大して示す側面図である。
図6】アーム装置を示す側面図であって、アーム部が前進した状態を示す。
図7】アーム部の一の形態であって、アーム部が前進する前の状況(後退した状況)を示す模式図である。
図8】アーム部の一の形態であって、アーム部が前進した状況を示す模式図である。
図9】アーム部の他の形態であって、アーム部が前進する前の状況(後退した状況)を示す模式図である。
図10】アーム部の他の形態であって、アーム部が前進した状況を示す模式図である。
図11】アーム装置の先端側および工具を示す分解斜視図である。
図12】アーム装置を示す側面図であって、アーム部が前進し、かつ、傾斜した状態を示す。
図13】基部を拡大して示す側面図であって、操作ユニットが傾斜した状態を示す。
図14】操作ユニットを示す縦断面図である。
図15】操作ユニットを示す横断面図であり、(A)は操作部が初期位置に位置した状態、(B)は操作部が横方向に移動した状態、(C)は操作部がアーム部の傾斜方向に移動した状態、(D)は操作部が回転した状態を示す。
図16】アーム装置の制御系を示すブロック図である。
図17】レバーユニットを拡大して示す側面図である。
図18】レバーユニットの機能を示す模式図であり、(A)はリンク部がレバーから離れた状態、(B)はリンク部がレバーに近づいた状態を示す。
図19】アーム装置を用いて電線の工事を行う様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態のアーム装置について説明する。図1ないし図4は、アーム装置1を示す。本実施形態において、アーム装置1は、高所作業車150のバケット152に3つ備えられている。
【0018】
高所作業車150は、従来のものであり、旋回、傾斜および伸縮可能なブーム154の先端にバケット152を備えている。バケット152は、作業者が作業を行うスペースであり、箱状であって上部が開口している。バケット152の前側の側壁には、横方向に延びる一対のレール12,12が、上下に間隔を保って備えられている。また、一対のレール12,12の間には、レール12と平行に延びるラック14が設けられている。
【0019】
以下の説明において方向に関しては、バケット152の前側の側壁の壁面に直交する方向を前後方向とし、水平方向において前後方向に直交する方向を横方向とし、前後方向および横方向と直交する方向を上下方向とする。
【0020】
個々のアーム装置1は、基部10と、アーム部40と、を備えている。
【0021】
基部10は、図2ないし図5に示すように、レール12に沿って移動するように一対のレール12,12に取り付けられている。基部10は、ラック14に噛み合って前後方向を軸として回転するピニオン16と、ピニオン16を回転させる移動駆動部18とを備えている。移動駆動部18には、モータが用いられている。基部10および後述する基部10に取り付けられるアーム部40は、ピニオン16がラック14上で回転することにより、レール12に沿って横方向に移動する。
【0022】
基部10は、アーム部40を支持するアーム支持部20を備えている。アーム支持部20は、一対の傾斜部22,22と、アーム連結部24と、を備えている。一対の傾斜部22,22は、それぞれ帯状であって、基部10の左右において下部が横方向を軸として傾斜可能に支持されている。アーム連結部24は、傾斜部22の上部に設けられており、後述する第一アーム部50の第一ねじ軸160またはベルト60に連結する。また、アーム連結部24は、第一アーム部50の進退を案内するものとして、一対のスライド部26,26を備えている。一対のスライド部26,26は、後述する第一アーム部50のハウジング52の左右の側面に設けられる溝部53,53にそれぞれスライド可能に嵌められている。
【0023】
基部10は、アーム部40を傾斜させるために、ねじ軸30と、傾斜駆動部32と、ナット34を有する昇降部36と、傾斜支持部38と、を備えている。ねじ軸30は、その軸が上下方向に平行であり、傾斜駆動部32により軸を中心として回転する。ねじ軸30には昇降部36のナット34が取り付けられている。傾斜支持部38は、帯状であって、その下部において、昇降部36に横方向を軸として傾斜可能に支持されている。また、傾斜支持部38は、その上部において、アーム連結部24に横方向を軸として傾斜可能に支持されている。ナット34、昇降部36および傾斜支持部38が、ねじ軸30の回転に伴って昇降することにより、傾斜支持部38を介してアーム連結部24およびアーム連結部24に連結するアーム部40が、横方向を軸として傾斜する。
【0024】
図6に示すように、アーム部40は、第一アーム部50と、第二アーム部70と、を備えている。第一アーム部50および第二アーム部70は、それぞれ長手方向が平行になっている。第一アーム部50は、基部10に連結しており、その長手方向において基部10に対して進退し、第二アーム部70は第一アーム部50に設けられ、その長手方向において第一アーム部50に対して進退する。
【0025】
以下の説明において、第一アーム部50および第二アーム部70の進退を、単にアーム部40の進退または伸縮ということがあるものとする。また、アーム部40の進退について、下向きに進退することを後退というものとし、上向きに進退することを前進というものとする。
【0026】
以下、アーム部40の代表的な二つの形態について説明する。
【0027】
アーム部40の一の形態は、図6図7および図8に示すように、第一アーム部50が、ハウジング52と、一対のプーリ54,54と、進退駆動部56と、ベルト60と、を備えている。
ハウジング52は、各構成を覆うためのものであり、後述する第二アーム部70がその進退に伴って出入りできる構造となっている。ハウジング52の左右の側面には、第一アーム部50の長手方向に延びる溝部53,53が設けられている。左右の側面の溝部53,53には、上述した一対のスライド部26,26がそれぞれスライド可能に嵌められている。
一対のプーリ54,54は、ハウジング52内に、第一アーム部50の長手方向において間隔を保って配されている。各プーリ54は、ハウジング52に横方向を軸として回転可能に支持されている。一対のプーリ54,54のうち下側のプーリ54には、プーリ54を回転させる進退駆動部56が取り付けられている。進退駆動部56には、モータが用いられている。
一対のプーリ54,54には環状のベルト60が架け渡されている。ベルト60は、プーリ54の回転に伴って回転するようになっている。ベルト60に関し、一対のプーリ54,54の間に架け渡され、第一アーム部50の長手方向に延びるベルト60の前側の部分と後ろ側の部分のことを架渡部62というものとする。ベルト60のうち後側の架渡部62は一の方向(第一アーム部50の長手方向)に進行し、ベルト60のうち前側の架渡部62は逆方向に進行する。後側の架渡部62は、基部10のアーム連結部24に連結している。ベルト60の素材は、特に限定されるものではないが、絶縁性を有する素材が好ましく、例えばその素材にはゴムなどのエラストマ性のものを用いることができる。
第一アーム部50は、第一アーム部50の進退を案内するため、第一シャフト64と、アーム連結部24に連結し、第一シャフト64が通される第一ガイド部66と、を備えるものであってもよい。
【0028】
第二アーム部70は、第二シャフト72を備えている。第二シャフト72は、その長手方向が第一アーム部50の長手方向、言い換えればベルト60の架渡部62,62に平行となっている。また、第二シャフト72は、連結片76を介してベルト60の前側の架渡部62に連結している。また、第二シャフト72は、第二ガイド部74に通されている。第二ガイド部74は、第二シャフト72の長手方向における進退を案内するためのものであり、ハウジング52に設けられている。
【0029】
上記形態のアーム部40の進退(伸縮)について説明する。第一アーム部50は、ベルト60の架渡部62が基部10のアーム連結部24に連結しているため、プーリ54,54に架け渡されたベルト60が回転すると、その長手方向において基部10に対して進退する。第二アーム部70は、第二シャフト72が連結片76を介してベルト60の架渡部62に連結しているため、ベルト60が回転すると、その長手方向において第一アーム部50に対して進退する。第一アーム部50および第二アーム部70は、連動して進退し、第一アーム部50が前進するときは第二アーム部70も前進し、第一アーム部50が後退するときは第二アーム部70も後退する。第一アーム部50および第二アーム部70が進退する向きは、プーリ54(ベルト60)が回転する向きによる。
第二アーム部70は、後退した状態では、その大部分がハウジング52内に収容され(図2図3および図4参照)、前進するに従ってハウジング52から延伸する(図6参照)。アーム部40は、このような構成により、最も前進した状態の長さを、最も後退した状態の長さの約2倍とすることもできる。
【0030】
次に、アーム部40の他の形態について図5図6図9および図10を参照しながら説明する。アーム部40の他の形態は、第一アーム部50が、ハウジング52と、進退駆動部56と、第一ねじ軸160と、第一ナット162と、第一歯車164と、を備えている。
ハウジング52は、各構成を覆うためのものであり、後述する第二アーム部70の第二ねじ軸170がその進退に伴って出入りできる構造となっている。ハウジング52の左右の側面には、第一アーム部50の長手方向に延びる溝部53,53が設けられている。左右の側面の溝部53,53には、上述した一対のスライド部26,26がそれぞれスライド可能に嵌められている。
第一ねじ軸160はハウジング52内に設けられており、同じくハウジング52内に設けられた進退駆動部56によりその軸を中心として回転する。進退駆動部56には、モータが用いられている。第一ナット162は、第一ねじ軸160に取り付けられている。また、第一ナット162は、基部10のアーム連結部24に連結している。第一ねじ軸160の先端側には、第一歯車164が同軸で取り付けられている。第一歯車164は、第一ねじ軸160の回転に伴って回転する。
【0031】
第二アーム部70は、第二歯車174と、第二ナット172と、第二ねじ軸170と、を備えている。第二歯車174は、第一歯車164に噛み合って、第一歯車164の回転に伴って第一ねじ軸160に平行な軸を中心として回転する。第二歯車174の下面には、第二ナット172が第二歯車174と同軸で連結されている。第二ナット172には、第二ねじ軸170が取り付けられている。第二ねじ軸170の軸は第一ねじ軸160の軸に平行となっている。
【0032】
上記他の形態のアーム部40の進退(伸縮)について説明する。第一アーム部50は、進退駆動部56の駆動により第一ねじ軸160が回転すると、基部10のアーム連結部24に連結する第一ナット162に取り付けられた第一ねじ軸160がその軸方向に進退するため、その長手方向において基部10に対して進退することとなる。第二アーム部70は、第一ねじ軸160に取り付けられた第一歯車164の回転に伴って、第二歯車174および第二ナット172が回転し、第二ナット172に取り付けられた第二ねじ軸170がその軸方向に進退するため、その長手方向において第一アーム部50に対して進退することとなる。第一アーム部50および第二アーム部70は、連動して進退し、第一アーム部50が前進するときは第二アーム部70も前進し、第一アーム部50が後退するときは第二アーム部70も後退する。第一アーム部50および第二アーム部70が進退する向きは、第一ねじ軸160の回転の向きによる。
第二アーム部70の第二ねじ軸170は、後退した状態では、その大部分がハウジング52内に収容され(図2図3および図4参照)、前進するに従ってハウジング52から延伸する(図6参照)。アーム部40は、このような構成により、最も前進した状態の長さを、最も後退した状態の長さの約2倍とすることもできる。
【0033】
以上に示したアーム部40のうち第二アーム部70の先端には、図1図11に示すように、工事に用いられる工具140が着脱可能に取り付けられる着脱部78が備えられている。着脱部78は、取り付ける工具140に応じて、アーム部40の長手方向を軸として回転するものであってもよい。第二アーム部70の先端に取り付けられる工具140としては、例えば図2に示すような間接活線工法で用いられるヤットコ142や皮剥ぎ器144などが挙げられる。第二アーム部70または工具140には、工具140を直接または着脱部78を介して駆動させるための工具駆動部79が備えられている。工具駆動部79は、本実施形態では、第二アーム部70に備えられており、第二アーム部70の長手方向を軸として着脱部78を回転駆動するようになっている。アーム装置1は、工具140ごとに駆動に必要な力が異なるため、工具駆動部79による駆動力を工具140の駆動に適した力に変換できるように、第二アーム部70または工具140に駆動変換機構を備えてもよい。
【0034】
アーム部40は、アーム部40を最も後退させた状態において、第二アーム部70の先端がバケット152で作業をする作業者の手が届く位置にあることが望ましい。アーム部40をこのようにすると、作業者が工具140を交換しやすくなる。
【0035】
アーム装置1は、上記の構成により、図3図6図12の図中の太矢印が示すように、基部10およびアーム部40が横方向に移動し、アーム部40が横方向を軸として傾斜し、アーム部40が進退する。
【0036】
アーム装置1は、図5に示すように、基部10とアーム部40の移動、アーム部40の進退およびアーム部40の傾斜を操作する操作部81を有する操作ユニット80をアーム連結部24の上部に備えている。操作ユニット80は、アーム連結部24に備えられているため、基部10およびアーム部40と伴に移動し、図13に示すようにアーム部40の傾斜に伴って傾斜する。
【0037】
アーム装置1は、操作部81に対してアーム部40が進退する方向と平行な方向の力が作用すると、その力の向きに応じて第一アーム部50および第二アーム部70が進退し、操作部81に対して基部10が移動する方向と平行な方向の力が作用すると、その力の向きに基部10およびアーム部40が移動し、操作部81に対して基部10が傾斜する方向に力が作用すると、その力の向きにアーム部40が傾斜する。
【0038】
以下、このような操作部81による操作を可能とする操作ユニット80の一例について説明する。
操作ユニット80は、図5および図13ないし図16に示すように、操作部81と、外枠部82と、弾性部材84と、外枠支持部86と、変位計測部88と、を備えている。
操作部81は、手で握ることが可能な円柱状のものであって、その長手方向がアーム部40の進退方向に平行となっている。操作部81は、その上部および下部が外枠部82,82により覆われている。上下の外枠部82,82は、外枠支持部86により支持されている。外枠部82は、4つの側壁と上壁または底壁とからなる箱状のものである。外枠部82は、4つの側壁の壁面がそれぞれ前後方向または横方向に直交しており、上壁または底壁の壁面が上下方向に直交している。
【0039】
操作部81は、図14および図15に示すように、弾性部材84を介して外枠部82の4つの側壁および上壁または底壁に支持されている。弾性部材84としては、ゴムなどのエラストマや合成樹脂などを用いることができる。操作部81は、弾性部材84を介して外枠部82に支持されているため、作業者が操作部81に対して直線的に力を作用させると力が作用する方向に移動し、また作業者が操作部81に対して回転させる力を作用させると、回転する。また、操作部81は、力が作用しなくなると、弾性部材84の復元力により初期位置に戻る。
【0040】
図14および図15に示すように、外枠部82のうち、上壁または底壁の内面と、前壁および後壁の内面の少なくとも一方と、左壁および右壁の内面の少なくとも一方には、操作部81の変位を計測する変位計測部88が備えられている。変位計測部88には、例えば変位計を用いることができる。
【0041】
変位計測部88は、図16に示すように、移動駆動部18、傾斜駆動部32および進退駆動部56とともに、制御部100に電気的に接続されている。また、制御部100は、機能的構成として、移動制御部102、傾斜制御部104および進退制御部106を備えている。制御部100は、例えばCPUなどを有するマイクロコンピュータにより構成される。
【0042】
次にアーム装置1の操作について説明する。アーム装置1は、作業者が操作部81に力を加えて操作部81を移動させたり回転させたりすると、変位計測部88が操作部81の変位を計測し、変位計測部88が計測した信号に基づいて、制御部100が移動駆動部18、傾斜駆動部32および進退駆動部56を制御することにより基部10およびアーム部40が移動し、アーム部40が傾斜し、アーム部40が進退し、または工具140が作動する。
【0043】
アーム装置1の操作をより具体的に説明すると、図15(B)に示すように操作部81を横方向に動かすと、外枠部82に設けた変位計測部88のうち左壁または右壁の内面に設けられた変位計測部88において主な変位の信号が計測され、このような変位の計測に基づいて制御部100の移動制御部102が、移動駆動部18を制御し、操作部81が移動した方向に基部10およびアーム部40を移動させる。主な変位の信号か否かの判断は、例えば変位計測部88で計測した信号と閾値の大きさとを比較することにより行うことができる。
また、図5および図15(C)に示すように操作部81をアーム部40の傾斜方向(前後方向)に動かすと、外枠部82に設けた変位計測部88のうち前壁または後壁の内面に設けられた変位計測部88において主な変位の信号が計測され、このような変位の計測に基づいて制御部100の傾斜制御部104が、傾斜駆動部32を制御し、操作部81が移動した方向にアーム部40を傾斜させる。
また、図5に示すように操作部81をアーム部40が進退する方向(長手方向)に動かすと、各外枠部82に設けた変位計測部88のうち上壁または底壁の内面に設けられた変位計測部88において主な変位の信号が計測され、このような変位の計測に基づいて制御部100の進退制御部106が進退駆動部56を制御し、操作部81が移動した方向に第一アーム部50および第二アーム部70を前進または後退させる。
【0044】
上記操作部81は、工具140を操作する工具操作部としても機能する。具体的には、図15(D)に示すように操作部81をその軸を中心にして回転させると、外枠部82に設けた変位計測部88のうち前壁または後壁および左壁または右壁の内面に設けられた変位計測部88において主な変位の信号が計測され、このような変位の計測に基づいて制御部100の工具制御部108が工具駆動部79を制御し、工具140を駆動させる。例えば、工具140がヤットコ142であれば、操作部81を回転させたり戻したりすることにより、ヤットコ142を開閉する。また、工具140が皮剥ぎ器144であれば、操作部81を回転させたり戻したりすることにより、カッターを回転または停止させたり、操作部81の回転度合に応じてカッターの回転速度を変更する。
【0045】
工具140を操作する工具操作部に関しては、操作部81に代えて、図17および図18に示すようなレバーユニット120に備えられるレバー122を採用することができる。
【0046】
レバーユニット120は、レバー122と、カバー124と、リンク部126と、抵抗駆動部128と、負荷計測部130と、弾性部材132と、第一角度計測部134と、第二角度計測部136と、を備えている。
レバー122は、操作部81の前方において、上記操作ユニット80に連結するカバー124に横方向を軸として回転可能に支持されており、前後方向に引き押しできるようになっている。レバー122は、操作部81を抑える親指以外の指で操作することができる位置に設けることが好ましい。このような位置にレバー122を設けると、レバー122を操作しやすくなり、操作部81とレバー122の両方を片手で操作することができる。
【0047】
カバー124には、横方向を軸として回転可能に取り付けられた帯状のリンク部126と、リンク部126を回転させる抵抗駆動部128が設けられている。また、工具駆動部79には、工具駆動部79にかかる負荷を計測する負荷計測部130が設けられている。抵抗駆動部128には、モータが用いられている。また負荷計測部130には、工具駆動部79に流れる電流を計測する電流センサが用いられている。
【0048】
リンク部126の先端部とレバー122の上端部は弾性部材132で連結されている。弾性部材132には、コイルばねが用いられている。
図18(A)に示すように、リンク部126が回転し、その先端がレバー122から離れると、弾性部材132が伸び、その復元力がレバー122の回転に対する抵抗として作用する。弾性部材132の伸びが大きくなるに従って、レバー122の回転に対する抵抗が大きくなる。
【0049】
レバー122には、レバー122の回転角を計測するために、第一角度計測部134が備えられている。また、リンク部126には、リンク部126の回転角を計測するために、第二角度計測部136が備えられている。第一角度計測部134および第二角度計測部136には、エンコーダが用いられている。
【0050】
負荷計測部130、第一角度計測部134、第二角度計測部136および抵抗駆動部128は、図16に示すように、制御部100や工具駆動部79と電気的に接続している。
【0051】
上記リンク部126、抵抗駆動部128、負荷計測部130、弾性部材132、第一角度計測部134および第二角度計測部136は、抵抗付与手段として、レバー122(工具操作部)の操作に対し抵抗を付与する。
【0052】
次に上記レバーユニット120の操作について説明する。作業者がレバー122を回転(引き押し)してレバー122を操作すると、第一角度計測部134で計測されるレバー122の回転角の信号に基づいて、制御部100の工具制御部108が工具駆動部79の駆動速度を制御する。また負荷計測で計測された工具駆動部79の負荷の信号に基づいて制御部100の抵抗制御部109が抵抗駆動部128を制御してリンク部126を回転させる。この際、制御部100の抵抗制御部109は、リンク部126の回転角を第二角度計測部136で計測した信号に基づいて制御する。制御部100の抵抗制御部109は、図18(A)に示すように、負荷計測部130で計測される工具駆動部79の負荷が大きくなるに従い、抵抗駆動部128を制御してリンク部126の先端をレバー122から離れるようにリンク部126を回転させる。これによりリンク部126の先端がレバー122から離れるに従って弾性部材132が伸びてレバー122に作用する抵抗が大きくなるため、レバー122の回転に要する力も大きくなる。逆に、図18(B)に示すように、リンク部126の先端がレバー122に近づくと、弾性部材132が縮み、レバー122の回転に対する抵抗が小さくなるため、レバー122の回転に要する力も小さくなる。
【0053】
上記アーム装置1は、図19に示すように、例えば高所に設けられた電線Cの間接活線工事に用いることができる。アーム装置1の第二アーム部70の着脱部78には、工事の目的に応じた工具140を取り付ける。作業者は、高所作業車150のバケット152に乗り、操作部81とレバー122によりアーム装置1と工具140を操作して所定の工事を行う。
【0054】
アーム装置1は、従来の装置に比べ、非常に低コストで製造することができる。また、アーム装置1によると、工事に従事する作業者の人数を削減することができる。
アーム装置1によると、工事に従事する作業者は、従来のように工具を持ちながら作業を行う必要がないので、作業者の負担や疲労が著しく軽減される。
アーム装置1によると、アーム部40が2段階で進退するので、効率よくアームを伸縮することができ、アーム部40を後退した状態ではアーム部40をコンパクトにすることができる。
【0055】
アーム装置1は、第一アーム部50および第二アーム部70の進退にプーリ54とベルト60の組み合わせを用いると、アーム装置1がより電気的に故障しにくくなる。
【0056】
アーム装置1は、操作部81に対し、基部10及びアーム部40が移動する方向、アーム部40が傾斜する方向またはアーム部40が進退する方向の力を作用させることにより、基部10及びアーム部40の移動し、アーム部40が傾斜し、またはアーム部40が進退するので、直感的に操作することができ、操作に熟練していない作業者であっても容易にアーム装置1を操作することができる。
【0057】
アーム装置1は、工具操作部を備えることにより、工具140の駆動を操作することができる。また、抵抗付与手段を備えることにより、工具操作部に作用する抵抗により作業対象などに対する工具140の作用状況などを把握することができる。
【0058】
本発明のアーム装置は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 アーム装置
10 基部
12 レール
14 ラック
16 ピニオン
18 移動駆動部
20 アーム支持部
22 傾斜部
24 アーム連結部
26 スライド部
30 ねじ軸
32 傾斜駆動部
34 ナット
36 昇降部
38 傾斜支持部
40 アーム部
50 第一アーム部
52 ハウジング
53 溝部
54 プーリ
56 進退駆動部
60 ベルト
62 架渡部
64 第一シャフト
66 第一ガイド部
70 第二アーム部
72 第二シャフト
74 第二ガイド部
76 連結片
78 着脱部
79 工具駆動部
80 操作ユニット
81 操作部
82 外枠部
84 弾性部材
86 外枠支持部
88 変位計測部
100 制御部
102 移動制御部
104 傾斜制御部
106 進退制御部
108 工具制御部
109 抵抗制御部
120 レバーユニット
122 レバー
124 カバー
126 リンク部
128 抵抗駆動部
130 負荷計測部
132 弾性部材
134 第一角度計測部
136 第二角度計測部
140 工具
142 ヤットコ
144 皮剥ぎ器
150 高所作業車
152 バケット
154 ブーム
160 第一ねじ軸
162 第一ナット
164 第一歯車
170 第二ねじ軸
172 第二ナット
174 第二歯車
C 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19