特許第6330186号(P6330186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330186
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】亜鉛含有廃液処理剤
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20060101AFI20180521BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C02F1/52 K
   B01D21/01 108
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-151843(P2013-151843)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-20132(P2015-20132A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年8月25日
【審判番号】不服2017-3208(P2017-3208/J1)
【審判請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】濱 理奈
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 大橋 賢一
【審判官】 山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−12435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52-1/56 B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機凝集剤と、
水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一方と、
カチオン系有機凝集剤と、を含み、
前記無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤。
【請求項2】
さらに、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つ、及び/またはアニオン系有機凝集剤を含む、請求項1記載の処理剤。
【請求項3】
さらに、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1又は2に記載の処理剤。
【請求項4】
フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液から亜鉛の除去処理を行うためのキットであって、
無機凝集剤と、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも一方とを含むA剤と、
カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含み、
前記無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット。
【請求項5】
前記A剤は、さらに、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つを含み、及び/または、前記B剤は、さらに、アニオン系有機凝集剤を含む、請求項記載のキット。
【請求項6】
カチオン系有機凝集剤と、無機凝集剤と、水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムの少なくとも一方とを、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含み、
前記無機凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理方法。
【請求項7】
さらに、前記廃液に、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つ、及び/またはアニオン系有機凝集剤を混合することを含む、請求項記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、亜鉛含有廃液処理剤、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤、亜鉛含有廃液処理用キット、及び亜鉛含有廃液の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水生生物の保全の観点から環境基準が設定され、種々の金属等について排水基準が設定されている。その一つとして亜鉛がある。亜鉛は食品類や生活用品等に幅広く含まれており、亜鉛を含む排水の排出源も多岐にわたっている。その一つとしてフロアーポリッシュの剥離洗浄廃液がある。
【0003】
フロアーポリッシュは、床等に塗布して乾燥させると、床表面に皮膜層を形成し、床表面の保護及び美観を向上させることから、例えば、オフィスビル、地下街、及びスーパーマーケット等の床で広く使用されている。近年、フロアーポリッシュの耐久性及び剥離容易性の向上の点から、フロアーポリッシュに含まれる合成樹脂の架橋剤として亜鉛が広く使用されている。
【0004】
フロアーポリッシュによって形成された皮膜は、通常、定期的に洗浄を行うことによって汚れ等を落とし美観が維持されているが、定期的な洗浄では落ちない汚れが残り、美観の維持が困難になった場合に、ポリッシャー等を用いて剥離洗浄が行われる。
【0005】
この定期洗浄及び剥離洗浄を行った際に洗浄廃液が生じる。特に、剥離剤は、ワックス成分の架橋結合を壊すためにpHが高く、剥離洗浄によって生じる廃液はアルカリ性である。また、洗浄廃液は、剥離剤成分に加え、フロアーポリッシュのワックス成分等が含まれている。このため、環境への影響等を考慮し、様々な廃液処理剤及びは廃液処理方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3等)。特許文献1は、凝集剤と炭酸ガス発生剤とを含む廃液処理剤を開示する。特許文献2及び3は、まず、凝集剤を用いて剥離皮膜及び汚れ等を凝集させた後、中和剤で中和することを含む廃液の処理方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−86137号公報
【特許文献2】特開2002−45868号公報
【特許文献3】特開2000−288554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ビルメンテナンス作業等で発生する洗浄廃液に十分な処理がされることなく排出されると、環境に影響を及ぼすという問題が起こる。また、上述の通り、亜鉛を含むフロアーポリッシュが広く使用されているため、フロアーポリッシュを洗浄後の廃液には亜鉛が含まれることになる。亜鉛が十分に除去されていない洗浄廃液が排出されると、亜鉛が下水等に流れ込み、下水処理場の有機物の分解が阻害されるという問題が生じる。また、土壌等に流入すると農作物の発育に悪影響を及ぼす懸念がある。このため、亜鉛の除去率が向上された廃液処理剤/処理方法が求められている。
【0008】
洗浄廃液の処理は、大規模な工場等で行うだけでなく、小規模な事務所等で行われる場合も多いことから、特別な設備を用いることなく、簡便に処理可能な処理剤/処理方法が求められている。
【0009】
そこで、本開示は、亜鉛の除去率及び濾水性に優れ、かつ簡便に処理可能な亜鉛含有廃液処理剤、処理用キット及び処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、一又は複数の実施形態において、亜鉛含有廃液から亜鉛を除去するための亜鉛含有廃液処理剤であって、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む、亜鉛含有廃液処理剤に関する。
【0011】
本開示は、一又は複数の実施形態において、亜鉛含有廃液から亜鉛の除去処理を行うためのキットであって、無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、亜鉛含有廃液処理用キットに関する。
【0012】
本開示は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩を、亜鉛含有廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、亜鉛含有廃液の処理方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、操作が簡便であり、また亜鉛の除去率及び濾水性に優れる亜鉛含有廃液処理剤、処理用キット及び処理方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カニオン系有機凝集剤とを組み合わせて使用して処理することにより、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液等の亜鉛を含有する廃液から亜鉛を十分除去できるとの知見に基く。また、本開示は、処理後の濾水性に優れるため、固液分離が容易になる、との知見に基づく。
【0015】
本開示において「亜鉛含有廃液」は、一又は複数の実施形態において、亜鉛を含有する排水及び廃液を含む。亜鉛含有廃液は、一又は複数の実施形態において、洗浄剤成分を含む洗浄廃液であってもよい。亜鉛含有廃液としては、一又は複数の実施形態において、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液、亜鉛めっき処理廃液、生活廃液、及びレンジフード廃液等が挙げられる。
【0016】
[亜鉛含有廃液処理剤]
本開示は、一態様において、亜鉛含有廃液から亜鉛を除去するための亜鉛含有廃液処理剤であって、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む、亜鉛含有廃液処理剤(以下、「本開示の廃液処理剤」ともいう)。本開示の廃液処理剤は、固液分離がさらに容易になり、亜鉛の除去率を向上させる点から、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩を含むことが好ましい。本開示の廃液処理剤は、形成されるフロックが大きくなり、脱水がさらに容易になる点から、一又は複数の実施形態において、アニオン性有機凝集剤を含んでもよい。
【0017】
無機凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウム等が挙げられ、亜鉛含有廃液の処理効果の点から、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムが好ましい。無機凝集剤は、これらを単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の廃液処理剤における無機凝集剤の含有量は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、10〜90重量%であり、亜鉛含有廃液の処理効果の点から、30〜80重量%が好ましい。
【0018】
マグネシウム塩としては、一又は複数の実施形態において、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及び塩化マグネシウム等が挙げられ、水への溶解性の点から、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムが好ましい。マグネシウム塩は、これらを単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の廃液処理剤におけるマグネシウム塩の含有量は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、1〜20重量%であり、亜鉛の除去効果の点から、1〜10重量%が好ましい。
【0019】
カルシウム塩としては、一又は複数の実施形態において、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウム等が挙げられる。カルシウム塩は、これらを単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の廃液処理剤におけるカルシウム塩の含有量は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、1〜30重量%であり、亜鉛含有廃液の処理効果の点から、1〜20重量%が好ましい。
【0020】
カチオン性有機凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、ポリアクリル酸エステル系カチオン凝集剤、ポリアクリルアミド系アニオン凝集剤、ポリアミン系高分子凝集剤、ポリジアルキルジメチルアンモニウムクロライド系高分子凝集剤、ジシアンジアミド系高分子凝集剤、アミノ縮合系高分子凝集剤、ポリエチレンイミン、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、第4級アンモニウム塩、ポリビニルピリジン類、ポリチオ尿素、水溶性アニリン樹脂等が挙げられる。カチオン性有機凝集剤は、これらを単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の廃液処理剤におけるカチオン性有機凝集剤の含有量は、特に限定されるものではないが、一又は複数の実施形態において、0.01〜10重量%であり、濾水性の点から、0.01〜5重量%が好ましい。
【0021】
アニオン性有機凝集剤としては、一又は複数の実施形態において、アクリル酸ナトリウム/アクリルアミド共重合物、アルキルスルホン酸/アクリルアミド共重合物、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、マレイン酸共重合物等が挙げられる。アニオン性有機凝集剤は、これらを単独で使用してもよいし、任意の2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本開示の廃液処理剤におけるアニオン性有機凝集剤の含有量は、特に限定されるものではない。
【0022】
本開示の廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カルシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む。本開示の廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、アニオン系有機凝集剤を含む。本開示の廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カルシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、アニオン系有機凝集剤とを含む。
【0023】
本開示の廃液処理剤は、廃液に対する凝集剤の溶解性を向上させ、フロックの形成を促進させる点から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0024】
本開示の廃液処理剤の形態としては、一又は複数の実施形態において、粉末、顆粒及び錠剤等の固形、及び液体が挙げられ、狭いスペースで保管でき、廃液への分散性に優れる点から、粉末及び顆粒が好ましい。
【0025】
本開示の廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、上述の成分すべてを混合して一体化された1つの剤の形態であってもよいし、無機凝集剤及びマグネシウム塩等の無機系薬剤を混合した薬剤Aと、有機凝集剤といった有機系薬剤を混合した薬剤Bといった2つの剤の形態であってもよい。
【0026】
本開示の廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、亜鉛含有廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることによって、亜鉛含有廃液から亜鉛を除去することができる。よって、本開示は、一態様において、亜鉛含有廃液から亜鉛を除去するための亜鉛除去剤であって、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む、亜鉛除去剤に関する。
【0027】
[亜鉛含有廃液処理用キット]
本開示は、一態様において、無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、亜鉛含有廃液処理用キット(以下、「本開示の廃液処理用キット」ともいう)に関する。本開示の廃液処理用キットによれば、簡便な操作で、亜鉛含有廃液の処理を行うことができる。
【0028】
本開示の廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、A剤はさらにカルシウム塩を含んでもよい。また、本開示の廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、A剤は、さらに、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つを含んでもよい。本開示の廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、B剤はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。本開示の廃液処理用キットにおいて、無機凝集剤、マグネシウム塩、カルシウム塩、カチオン系有機凝集剤、及びアニオン系有機凝集剤等の上述の成分及び含有量は、本開示の廃液処理剤と同様である。
【0029】
本開示の廃液処理用キットの形態としては、一又は複数の実施形態において、粉末、顆粒及び錠剤等の固形、及び液体が挙げられ、狭いスペースで保管でき、廃液への分散性に優れる点から、粉末及び顆粒が好ましい。
【0030】
[亜鉛含有廃液の処理方法]
本開示は、一態様において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩を、亜鉛含有廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、亜鉛含有廃液の処理方法(以下、「本開示の廃液処理方法」ともいう)に関する。
【0031】
本開示の廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、亜鉛含有廃液と混合することを含んでもよい。処理剤は、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩、及び/又はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。処理剤は、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩、及び/又はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。よって、本開示の廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、マグネシウム塩、及びカルシウム塩が混合された処理剤を、亜鉛含有廃液と混合することを含みうる。また、本開示の廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、アニオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、亜鉛含有廃液と混合することを含みうる。
【0032】
処理剤は、一又は複数の実施形態において、廃液に対する凝集剤の溶解性を向上させ、フロックの形成を促進させる点から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0033】
本開示の廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、亜鉛含有廃液と混合すること、及び前記処理剤を混合した廃液にカチオン系有機凝集剤を含む有機系処理剤を混合することを含んでもよい。有機系処理剤は、一又は複数の実施形態において、アニオン系有機凝集剤を含んでもよい。
【0034】
本開示の廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、亜鉛含有廃液と混合すること、前記処理剤を混合した廃液にカチオン系有機凝集剤を含む有機系処理剤を混合すること、及び前記カチオン系有機凝集剤を混合した廃液に、アニオン系有機凝集剤を混合することを含んでもよい。
【0035】
本開示の廃液処理方法は、本開示の廃液処理剤又は本開示の廃液処理用キットを用いて行うことができる。このため、本開示の廃液処理方法は、その他の態様において、本開示の廃液処理剤又は本開示の廃液処理用キットを用いて亜鉛含有廃液を処理することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、亜鉛含有廃液の処理方法に関する。
【0036】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤]
本開示の廃液処理剤は、上述の通り、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理に用いることができる。また、本開示の廃液処理剤は、小スペースで、簡便に廃液の処理を行うことができることから、フロアーポリッシュ洗浄廃液の処理に好ましく適用できる。よって、本開示は、一態様において、無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤(以下、「本開示のFP廃液処理剤」ともいう)。本開示のFP廃液処理剤は、固液分離がさらに容易になり、亜鉛の除去率を向上させる点から、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩を含むことが好ましい。本開示のFP廃液処理剤は、形成されるフロックが大きくなり、脱水がさらに容易になる点から、一又は複数の実施形態において、アニオン性有機凝集剤を含んでもよい。
【0037】
本開示において「フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液」は、一又は複数の実施形態において、フロアーポリッシュが塗布された床に、洗浄剤を用いた洗浄を行うことによって回収された廃液、及びフロアーポリッシュによって形成された被膜に剥離剤を用いて剥離し洗浄することによって回収された廃液を含む。本開示において「フロアーポリッシュ」としては、一又は複数の実施形態において、油性フロアーポリッシュ、乳化性フロアーポリッシュ及び水性フロアーポリッシュなどが挙げられ、ワックスタイプ及びポリマータイプのいずれのタイプも含みうる。フロアーポリッシュの組成は特に制限されるものではなく、アクリル系樹脂、及びウレタン系樹脂等を主成分としたものが挙げられる。
【0038】
本開示のFP廃液処理剤において、無機凝集剤、マグネシウム塩、カルシウム塩、カチオン系有機凝集剤、及びアニオン性有機凝集剤の種類及び含有量は、本開示の廃液処理剤と同様である。
【0039】
本開示のFP廃液処理剤は、廃液に対する凝集剤の溶解性を向上させ、フロックの形成を促進させる点から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0040】
本開示のFP廃液処理剤の形態としては、一又は複数の実施形態において、粉末、顆粒及び錠剤等の固形、及び液体が挙げられ、狭いスペースで保管でき、廃液への分散性に優れる点から、粉末及び顆粒が好ましい。
【0041】
本開示のFP廃液処理剤は、一又は複数の実施形態において、上述の成分すべてを混合して一体化された1つの剤の形態であってもよいし、無機凝集剤及びマグネシウム塩等の無機系薬剤を混合した薬剤Aと、有機凝集剤といった有機系薬剤を混合した薬剤Bといった2つの剤の形態であってもよい。
【0042】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット]
本開示は、一態様において、無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット(以下、「本開示のFP廃液処理用キット」ともいう)に関する。本開示のFP廃液処理用キットによれば、簡便な操作で、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理を行うことができる。
【0043】
本開示のFP廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、A剤はさらにカルシウム塩を含んでもよい。また、本開示のFP廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、A剤は、さらに、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つを含んでもよい。本開示のFP廃液処理用キットは、一又は複数の実施形態において、B剤はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。本開示のFP廃液処理用キットにおいて、無機凝集剤、マグネシウム塩、カルシウム塩、カチオン系有機凝集剤、及びアニオン系有機凝集剤等の上述の成分及び含有量は、本開示の廃液処理剤と同様である。
【0044】
本開示のFP廃液処理用キットの形態としては、一又は複数の実施形態において、粉末、顆粒及び錠剤等の固形、及び液体が挙げられ、狭いスペースで保管でき、廃液への分散性に優れる点から、粉末及び顆粒が好ましい。
【0045】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理方法]
本開示は、一態様において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理方法(以下、「本開示のFP廃液処理方法」ともいう)に関する。
【0046】
本開示のFP廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することを含んでもよい。処理剤は、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩、及び/又はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。処理剤は、一又は複数の実施形態において、カルシウム塩、及び/又はアニオン系有機凝集剤を含んでもよい。よって、本開示のFP廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、マグネシウム塩、及びカルシウム塩が混合された処理剤を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することを含みうる。また、本開示のFP廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、カチオン系有機凝集剤、アニオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することを含みうる。
【0047】
処理剤は、一又は複数の実施形態において、廃液に対する凝集剤の溶解性を向上させ、フロックの形成を促進させる点から、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウム等の少なくとも一つをさらに含んでもよい。
【0048】
本開示のFP廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合すること、及び前記処理剤を混合した廃液にカチオン系有機凝集剤を含む有機系処理剤を混合することを含んでもよい。有機系処理剤は、一又は複数の実施形態において、アニオン系有機凝集剤を含んでもよい。
【0049】
本開示のFP廃液処理方法は、一又は複数の実施形態において、無機凝集剤及びマグネシウム塩が混合された処理剤を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合すること、前記処理剤を混合した廃液にカチオン系有機凝集剤を含む有機系処理剤を混合すること、及び前記カチオン系有機凝集剤を混合した廃液に、アニオン系有機凝集剤を混合することを含んでもよい。
【0050】
本開示のFP廃液処理方法は、本開示のFP廃液処理剤又は本開示のFP廃液処理用キットを用いて行うことができる。このため、本開示のFP廃液処理方法は、その他の態様において、本開示のFP廃液処理剤又は本開示のFP廃液処理用キットを用いてフロアーポリッシュ剥離洗浄廃液を処理することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理方法に関する。
【0051】
本開示は、さらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
[A1] 亜鉛含有廃液から亜鉛を除去するための亜鉛含有廃液処理剤であって、
無機凝集剤と、
マグネシウム塩と、
カチオン系有機凝集剤と、を含む、亜鉛含有廃液処理剤。
[A2] さらに、カルシウム塩及び/またはアニオン系有機凝集剤を含む、[A1]記載の処理剤。
[A3] 前記無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A1]又は[A2]に記載の処理剤。
[A4] 前記マグネシウム塩が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A1]から[A3]のいずれかに記載の処理剤。
[A5] 前記カルシウム塩が、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A2]から[A4]のいずれかに記載の処理剤。
[A6] 前記カチオン系有機凝集剤が、ポリアクリル酸エステル系カチオン凝集剤、ポリアクリルアミド系アニオン凝集剤、ポリアミン系高分子凝集剤、ポリジアルキルジメチルアンモニウムクロライド系高分子凝集剤、ジシアンジアミド系高分子凝集剤、アミノ縮合系高分子凝集剤、ポリエチレンイミン、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、第4級アンモニウム塩、ポリビニルピリジン類、ポリチオ尿素、及び水溶性アニリン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A1]から[A5]のいずれかに記載の処理剤。
[A7] 前記アニオン系有機凝集剤が、アクリル酸ナトリウム/アクリルアミド共重合物、アルキルスルホン酸/アクリルアミド共重合物、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、及びマレイン酸共重合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A2]から[A6]のいずれかに記載の処理剤。
[A8] さらに、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A1]から[A7]のいずれかに記載の処理剤。
[A9] 前記亜鉛含有廃液が、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液、亜鉛めっき処理廃液、生活廃液、及びレンジフード廃液等からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[A1]から[A8]のいずれかに記載の処理剤。
[A10] 亜鉛含有廃液から亜鉛の除去処理を行うためのキットであって、
無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、
カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、亜鉛含有廃液処理用キット。
[A11] 前記A剤は、さらに、カルシウム塩を含み、及び/または、前記B剤は、さらに、アニオン系有機凝集剤を含む、[A10]記載のキット。
[A12] カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩を、亜鉛含有廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、亜鉛含有廃液の処理方法。
[A13] さらに、前記亜鉛含有廃液に、カルシウム塩及び/またはアニオン系有機凝集剤を混合することを含む、[A12]記載の処理方法。
[B1] 無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤。
[B2] さらに、カルシウム塩及び/またはアニオン系有機凝集剤を含む、[B1]記載の処理剤。
[B3] 無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カルシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤。
[B4] 無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、アニオン系有機凝集剤と、を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤。
[B5] 無機凝集剤と、マグネシウム塩と、カルシウム塩と、カチオン系有機凝集剤と、アニオン系有機凝集剤と、を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤。
[B6] 前記無機凝集剤が、ポリ塩化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B1]から[B5]に記載の処理剤。
[B7] 前記マグネシウム塩が、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、及び塩化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B1]から[B6]のいずれかに記載の処理剤。
[B8] 前記カルシウム塩が、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム、及び酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B2]から[B7]のいずれかに記載の処理剤。
[B9] 前記カチオン系有機凝集剤が、ポリアクリル酸エステル系カチオン凝集剤、ポリアクリルアミド系アニオン凝集剤、ポリアミン系高分子凝集剤、ポリジアルキルジメチルアンモニウムクロライド系高分子凝集剤、ジシアンジアミド系高分子凝集剤、アミノ縮合系高分子凝集剤、ポリエチレンイミン、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、第4級アンモニウム塩、ポリビニルピリジン類、ポリチオ尿素、及び水溶性アニリン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B1]から[B8]のいずれかに記載の処理剤。
[B10] 前記アニオン系有機凝集剤が、アクリル酸ナトリウム/アクリルアミド共重合物、アルキルスルホン酸/アクリルアミド共重合物、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、及びマレイン酸共重合物からなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B2]から[B9]のいずれかに記載の処理剤。
[B11] さらに、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムからなる群から選択される少なくとも一つを含む、[B1]から[B10]のいずれかに記載の処理剤。
[B12] 無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット。
[B13] 前記A剤は、さらに、カルシウム塩を含み、及び/または、前記B剤は、さらに、アニオン系有機凝集剤を含む、[B12]記載のキット。
[B14] 無機凝集剤、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット。
[B15] 無機凝集剤及びマグネシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤及びアニオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット。
[B16] 無機凝集剤、マグネシウム塩及びカルシウム塩を含むA剤と、カチオン系有機凝集剤及びアニオン系有機凝集剤を含むB剤を含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理用キット。
[B17] カチオン系有機凝集剤、無機凝集剤、及びマグネシウム塩を、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液と混合することにより、前記廃液から亜鉛を含む凝集物を形成させることを含む、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理方法。
[B18] さらに、前記フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液に、カルシウム塩及び/またはアニオン系有機凝集剤を混合することを含む、[B17]記載の処理方法。
【0052】
以下の実施例及び比較例に基いて本開示を説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理剤の調製]
下記表1に記載の組成となるように各成分を混合して実施例1〜5及び比較例1〜7の処理剤を調製した。なお、表1に示す各成分の数字は、重量%を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理試験(その1)]
フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液(pH;10.1、亜鉛濃度;180mg/L)に、実施例1〜5及び比較例1〜7の処理剤を3g添加し、スターラーで10分間攪拌した後、下記の評価を行った。その結果及び攪拌後の処理液のpHを上記表1に示す。なお、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液は、某所清掃時に発生した廃液を使用した。このフロアーポリッシュ(亜鉛架橋型アクリル樹脂エマルジョンを含むワックス)が塗布された床を、水酸化アルカリ金属塩等のアルカリ剤及びアルコール系溶剤を含有する洗浄液を用いて剥離洗浄して得られたものを使用した。
【0056】
[評価]
1.亜鉛濃度の測定
亜鉛濃度は、攪拌後の処理液を、5A濾紙で濾過し、その濾液をJIS K−0102−53.3 ICP発光分光分析法により測定した。なお、上記表1に示す評価は、下記基準に基くものである。
2.濾水性
濾水性は、攪拌後の処理液を、50ml量り取り、5A濾紙で濾過し、濾過開始1分後の濾水量を測定した。なお、上記表1に示す評価は、下記基準に基くものである。
【表2】
【0057】
表1に示すように、無機凝集剤である硫酸アルミニウムと、マグネシウム塩と、カチオン系有機凝集剤とを含む実施例1〜5の処理剤は、比較例の処理剤と比較して濾水性に優れ、また亜鉛を十分除去できた。さらにカルシウム塩を含む実施例1〜3の処理剤は、亜鉛の除去率がさらに向上した。カルシウム塩に加えてさらにアニオン系有機凝集剤を含む実施例3の処理剤は、亜鉛の除去率の向上に加えて、さらに優れた濾水性を示した。
【0058】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理試験(その2)]
下記表3に記載の組成となるように各成分を混合して実施例6〜8の処理剤を調製し、調製した処理剤を用いた以外は、上述の処理試験(その1)と同様に、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液の処理及びその評価を行った。その結果を実施例3の結果とあわせて下記表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示すように、異なる基本骨格を有するカチオン系有機凝集剤を用いた実施例3、6及び7のいずれの処理剤においても、優れた濾水性及び高い亜鉛除去率を示した。また、異なる基本骨格を有するアニオン系有機凝集剤を用いた実施例3及び8のいずれの処理剤においても、優れた濾水性及び高い亜鉛除去率を示した。
【0061】
[フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液処理試験(その3)]
実施例9の処理剤として、硫酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム・2水和物及び硫酸ナトリウムを含むA剤と、カチオン系有機凝集剤及びアニオン系有機凝集剤を含むB剤との2つの薬剤に分かれた処理剤を調製した。組成は、下記表4に記載の組成となるようにした。
フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液に、A剤を2.96g添加し、スターラーで5分間攪拌した後、B剤を0.04g添加し、さらに5分間スターラーで攪拌した。その後、上述の処理試験(その1)と同様に上述の評価を行った。その結果を実施例3の結果とあわせて下記表4示す。なお、フロアーポリッシュ剥離洗浄廃液は、上述の処理試験(その1)と同じものを使用した。
【0062】
【表4】
【0063】
表4に示すとおり、無機系凝集剤等を含む無機系の薬剤と、有機系凝集剤とを別々に添加した場合であっても、同時に添加した場合と同様に、優れた濾水性及び高い亜鉛除去率を示した。