(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6330187
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】盤用機器の配線構造
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20180521BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
H02B1/40 D
H02B1/20 S
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-210709(P2013-210709)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-76944(P2015-76944A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】松隈 裕史
(72)【発明者】
【氏名】田中 健次
(72)【発明者】
【氏名】宮川 貴行
(72)【発明者】
【氏名】杉原 宏樹
【審査官】
太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−182963(JP,A)
【文献】
特開平09−107608(JP,A)
【文献】
実公昭48−014581(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40− 1/44
H02B 1/00− 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの機器取り付け面に取り付けた盤用機器の複数の端子部から、リードバーを介して、電線の出線を行う盤用機器の配線構造であって、
前記リードバーは、
前記端子部と接続され、前記機器取り付け面と平行配置される端子接続部と、この端子接続部とは別部材として構成された延設部とを備え、
前記延設部は、前記機器取り付け面と反対方向に向けて折り曲げ形成した折り曲げ辺を有する略L字形状であり、
前記折り曲げ辺に、電線を接続する電線接続部を、電線出線方向に対して垂直方向に並設して複数形成し、前記端子部への接続方向から電線を出線可能としたことを特徴とする盤用機器の配線構造。
【請求項2】
前記延設部は、
前記端子接続部に重ねて配置される接合辺と、該接合辺を、前記機器取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成した折り曲げ辺からなることを特徴とする請求項1記載の盤用機器の配線構造。
【請求項3】
前記盤用機器の端部には、端子部の上端及びリードバーを被覆するように前記機器取り付け面と平行配置される保護カバーを備え、
前記延設部を、該保護カバーと前記端子接続部との間に形成される空間に配置したことを特徴とする請求項1または2記載の盤用機器の配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤用機器の配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムで用いられる太陽光接続箱には、各ソーラーパネルで発電した電気が、複数本のケーブルを介して集められる。通常、各ケーブルは、太陽光接続箱の内部で接続され、遮断器を経て、1本の大容量の電線として出線される(例えば、特許文献1の
図1)。
【0003】
しかし、大容量の電線はケーブル径が大きくなるため、法的にケーブルサイズの制約等がある場合には、遮断器から複数本の電線(例えば、4条配線)として出線されることとなる。
【0004】
遮断器の端子部と電線とは、電線の端部に設けた圧着端子を遮断器の端子部に圧着させて接続されるが、上記のように、出線する電線数を増加させる場合、一つの端子部に複数の圧着端子を圧着させて使用するか、あるいは、遮断器に隣接して、出線する電線数分の端子部を備えた端子台を新たに設けて配線を行っていた。
【0005】
しかし、一つの端子部に複数の圧着端子を圧着させて使用する場合には、一つの端子部に一つの圧着端子を圧着させて使用する場合と比べて、圧着に用いているネジに緩みが発生しやすく、複数本の電線の荷重による端子部への負荷が大きくなる問題があった。
【0006】
また、出線する電線数分の端子部を備えた端子台を新たに設けて配線を行う場合には、端子台の追加分、太陽光接続箱を大型化する必要があり、コンパクトな太陽光接続箱を実現できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−135721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は前記問題を解決し、盤用機器の端子部から出線する電線数を増加させる場合にも、新たな端子台の増加という手段によらず、かつ、端子部と圧着端子との圧着に緩みを生じることなく、かつ、端子部への負担を増加させることなく出線を行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、キャビネットの機器取り付け面に取り付けた盤用機器の
複数の端子部から、リードバーを介して、電線の出線を行う盤用機器の配線構造であって、前記リードバーは、前記端子部と接続され、前記機器取り付け面と平行配置される端子接続部と
、この端子接続部とは別部材として構成された延設部とを備え、前記延設部は、前記機器取り付け面と反対方向に向けて折り曲げ形成した折り曲げ辺を有する略L字形状であり、前記折り曲げ辺に、電線を接続する電線接続部を、
電線出線方向に対して垂直方向に並設して複数形成し、前記端子部への接続方向から電線を出線可能としたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の盤用機器の配線構造において、
前記延設部は、前記端子接続部に重ねて配置される接合辺と、該接合辺を、前記機器取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成した折り曲げ辺からなることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の盤用機器の配線構造において、前記盤用機器の端部には、端子部の上端及びリードバーを被覆するように前記機器取り付け面と平行配置される保護カバーを備え、前記延設部を、該保護カバーと前記端子接続部との間に形成される空間に配置したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る盤用機器の配線構造は、キャビネットの機器取り付け面に取り付けた盤用機器の
複数の端子部から、リードバーを介して、電線の出線を行う盤用機器の配線構造であって、
前記リードバーは、
前記端子部と接続され、
前記機器取り付け面と平行配置される端子接続部と
、この端子接続部とは別部材として構成された延設部とを備え、前記延設部は、前記機器取り付け面と反対方向に向けて折り曲げ形成した折り曲げ辺を有する略L字形状であり、前記折り曲げ辺に、電線を接続する電線接続部を、
電線出線方向に対して垂直方向に並設して複数形成し、前記端子部への接続方向から電線を出線可能とした。これにより、電線の圧着端子を重ねることなく、1つの相に複数の電線を省スペースで配線することが可能となり、端子部と圧着端子との圧着に緩みを生じることなく、かつ、端子部への負担を増加させることのない出線が実現可能となる。
【0016】
また、
本発明によれば、端子接続部に対して垂直方向の空間を、複数の電線を配線するスペースとすることができるとともに、電線同士の重なりを防止することが可能となる。
【0017】
なお、端子接続部と延設部を別部材として構成し、延設部は、端子接続部に重ねて配置される接合辺と、接合辺を機器取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成した折り曲げ辺からなるものとしてもよい。これにより、使用されない無駄な材料を減らすことができ、材料効率が良い。
【0018】
また、折り曲げ辺に、電線接続部として、複数の孔部を、折り曲げ方向に並列して形成することが好ましく、これにより端子接続部に対して垂直方向の空間を利用して複数の電線を接続可能とするとともに、各圧着端子を確実に締め付けることが可能となる。
【0019】
なお、盤用機器の端部には、端子部の上端及びリードバーを被覆するように機器取り付け面と平行配置される保護カバーを備え、延設部を、保護カバーと端子接続部との間に形成される空間に配置することがより好ましい。これにより、導電部への異物の侵入や手の接触等を防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1において、キャビネット1は太陽光接続箱である。キャビネット1内部には、図示しない太陽光パネルからの電流が入力される入力開閉器2が取り付けられており、入力開閉器2のP極からは、逆流防止ダイオード3とP極銅バー4とを介して、キャビネット1内部の出力側に取り付けられた出力側遮断器5の入力端子部6へと入力線7を介して電流が入力される。また、入力開閉器2のN極からは、N極銅バー8を介して、出力側遮断器5の入力端子部6へと、入力線7を介して電流が入力される。出力側遮断器5の入力端子部6と同側には、出力端子部9が形成されており、この出力端子部9から出力線10を
図1の紙面下方向に出線することにより、客先である図示しないパワーコンディショナや集電箱等に電流が出力される。また、本実施形態では、入力端子部6と出力端子部9の反対側の端子部で入力端子部6と出力端子部9を直列に接続し、その直列回路内に2つの接点を設けることで、大きい電流容量が必要とされる使用環境に対応している。なお、本明細書において、上下方向、左右方向とは、
図1のように出力側遮断器5をキャビネット1内部に取り付けた際の方向を、各々意味するものとする。
【0022】
出力側遮断器5における
複数の出力端子部9と出力線10との配線構造は、第1の実施形態として
図2に示すように、リードバー11を介して行われる。リードバー11は、出力端子部9と接続され、出力側遮断器5の取り付け面と平行に配置される端子接続部12と、端子接続部12に別部材として取り付けられる略L字状の延設部13とからなるものである。なお、延設部13は、
図3のように、端子接続部12に重ねて配置される接合辺14と、接合辺14を出力側遮断器5の取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成した折り曲げ辺15とからなるものとした。なお、折り曲げ辺15は、出力側遮断器5の取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成したものに限定されず、出力側遮断器5の取り付け面と反対側に折り曲げ形成していればよいものである。さらに、延設部13の折り曲げ辺15には接続孔16を形成し、この接続孔16に出力線10の圧着端子を固定してなる電線接続部17を形成し、電線接続部17の電線を接続する面は
図1の紙面下方向と並列して形成した。これらの電線接続部17は、
電線出線方向に対して垂直方向に並設して複数形成されることとなる。接続孔16は、使用環境に応じて折り曲げ辺15の折り曲げ方向に複数形成されたものであり、第1の実施形態においては1つの相に各々2つの接続孔16を形成することにより、各々2つの電線接続部17を備えるものとした。
【0023】
前記構成により、出力線10の圧着端子を重ねることなく、1つの相に複数の出力線10を省スペースで配線することが可能となり、電線接続部17における圧着端子の圧着に緩みを生じることなく、かつ、電線接続部17への負担を増加させることのない出線が実現可能となる。また、電線接続部17の電線を接続する面を
図1の紙面下方向と並列して形成することで、出力線10は同一方向すなわち
図1の紙面下方向に出線可能となり、出力線10を1箇所にまとめて出線することができるので、客先での配線が容易となる。一方、P極とN極のそれぞれの出力線10を分岐して配線する場合、端子接続部12に対する延設部13の取付角度を変更するなど、出力線10を異方向に出線することも可能である。また、延設部13には出力側遮断器5の取り付け面と反対側に折り曲げ形成した折り曲げ辺15を備えたことにより、
図3のように端子接続部12に対して出力側遮断器5の取り付け面と反対側の空間を複数の出力線10を配線するスペースとすることができることから、入力線7と電線接続部17とが重複せず、また出力線10同士の重なりも防止することが可能となる。さらに、折り曲げ辺15の折り曲げ方向に複数の接続孔16を形成したことにより、端子接続部12に対して出力側遮断器5の取り付け面と反対側の空間を利用して複数の出力線10を接続可能とするとともに、各圧着端子を確実に締め付けることが可能となる。
【0024】
また、異極間の短絡防止のため、
図3のように各相の電線接続部17が離れた位置となるよう折り曲げ辺15を形成することが好ましい。なお、接続孔16の両側に圧着端子を取り付けて、1つの電線接続部17とすることもできる。
【0025】
出力側遮断器5の端部には、
図3のように出力端子部9の上端及びリードバー11を被覆するように出力側遮断器5の取り付け面と平行配置される保護カバー18を備え、延設部13を保護カバー18と端子接続部12との間に形成される空間に配置するものとした。これにより、導電部への異物の侵入や手の接触等を防止することが可能となる。
【0026】
第1の実施形態において、
図2及び
図3のようにリードバー11と出力側遮断器5の取り付け面との間に形成される空間には、碍子19を介してリードバー11を固定するための土台部20が形成されている。これにより、リードバー11と出力側遮断器5の取り付け面との間の絶縁を図ることが可能となると同時に、出力線10やリードバー11の荷重による、出力端子部9への負荷を軽減させることができる。
【0027】
図4には、
第1の参考形態を示す。延設部13は、端子接続部12に重ねて配置される接合辺14と、接合辺14を出力側遮断器5の取り付け面と反対方向に向けて垂直に折り曲げ形成した折り曲げ辺15と、折り曲げ辺15の端部から、出力側遮断器5の取り付け面と平行配置される平行辺21を左右方向に延設したクランク形状とすることができる。これにより、第1の実施形態と同様に、端子接続部12に対して出力側遮断器5の取り付け面と反対側の空間を複数の出力線10を配線するスペースとすることができることから、入力線7と電線接続部17とが重複せず、また出力線10同士の重なりも防止することが可能となる。このとき、接続孔16は平行辺21に延設方向に亘って並列に形成されるが、使用環境に応じて接続孔16を折り曲げ辺15に形成してもよい。なお、その他の構造については、前述した第1の実施形態と同様である。
【0028】
図5には、
第2の参考形態を示す。これは、前述した
第1の参考形態の平行辺21を、出力線10の出線方向、すなわち下方向に延びるよう形成したものである。このとき、電線接続部17は、端子接続部12の端部と平行辺21の端部とに形成するものとしたが、使用状況に応じて変更可能である。なお、その他の構造については、前述した第1の実施形態と同様である。
【0029】
以上のよ
うに、出力線10は
図1の紙面下方向に出線するものであるが、例えば屋内設置等の理由から
図1の紙面左右方向への出線を行う際には、
第3の参考形態として
図6に示すように、延設部13の取り付け方向を変更することによって出力線10の出線方向を変更することができる。なお
、第1の実施形態においては、リードバー11を構成する端子接続部12と延設部13とを別部材とすることにより、使用されない無駄な材料を減らし材料効率を良くしたが、
図6の
第3の参考形態に示すように、端子接続部12と延設部13とを一体形成してもよい。
【0030】
また、電線接続部17が端子接続部12に対して出力側遮断器5の取り付け面と反対側に延びる位置に形成され、かつ入力線7と重ならない位置であり、かつ保護カバー18内に形成していれば、延設部13の形状は限定されることはない。
【0031】
以上のように、本発明は太陽光接続箱に取り付けられた出力側遮断器5の配線構造に関するものであるが、その他にも、他の機器を収めた電気機器収納用箱においても適用可能であり、また出力側遮断器5のみならず、その他端子部を備えた機器にも本発明の配線構造は適用できるものである。
【符号の説明】
【0032】
1 キャビネット
2 入力開閉器
3 逆流防止ダイオード
4 P極銅バー
5 出力側遮断器
6 入力端子部
7 入力線
8 N極銅バー
9 出力端子部
10 出力線
11 リードバー
12 端子接続部
13 延設部
14 接合辺
15 折り曲げ辺
16 接続孔
17 電線接続部
18 保護カバー
19 碍子
20 土台部
21 平行辺